JP2018044142A - 半導体ナノ粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低毒性の組成とし得る三元系ないし四元系の量子ドットからバンド端発光が得られる構成を備えた、半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コアと、コアの表面を覆いコアよりもバンドギャップエネルギーが大きくかつコアとヘテロ接合するシェルと、を備え、光が照射されると発光する半導体ナノ粒子であって、コアが、M、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなり、シェルが、第13族元素および第16族元素を含む半導体である半導体ナノ粒子である。
【選択図】なし

Description

本開示は、半導体ナノ粒子およびその製造方法、ならびに当該半導体ナノ粒子を使用した発光デバイスに関する。
液晶表示装置のバックライト等に用いられる白色発光デバイスとして、量子ドット(半導体量子ドットとも呼ばれる)の発光を利用したものが提案されている。半導体の微粒子はその粒径が例えば10nm以下になると、量子サイズ効果が発現することが知られており、そのようなナノ粒子は量子ドットと呼ばれる。量子サイズ効果とは、バルク粒子では連続とみなされる価電子帯と伝導帯のそれぞれのバンドが、粒径をナノサイズとしたときに離散的となり、粒径に応じてバンドギャップエネルギーが変化する現象を指す。
量子ドットは、光を吸収して、そのバンドギャップエネルギーに対応する光を発するので、発光デバイスにおける波長変換物質として用いることができる。量子ドットを用いた発光デバイスは、例えば、特許文献1、2において提案されている。具体的には、LEDチップから発せされる光の一部を量子ドットに吸収させて、別の色の光を発光させ、量子ドットから発光される光と量子ドットに吸収されなかったLEDチップからの光とを混合して白色光を得ることが提案されている。これらの特許文献では、CdSeおよびCdTe等の第12族−第16族、PbSおよびPbSe等の第14族−第16族の量子ドットを使用することが提案されている。また、特許文献3では、CdやPbを含む化合物の毒性を考慮して、これらの元素を含まないコアシェル構造型半導体量子ドットを使用した波長変換フィルムが提案されている。なお、コアシェル化については、非特許文献1にも記載されている。
特開2012−212862号公報 特開2010−177656号公報 WO2014/129067
Chem, Commun. 2010, vol. 46, pp 2082−2084
発光デバイスにおいて量子ドットを用いることの利点の一つは、バンドギャップに相当する波長の光が、比較的狭い半値幅のピークとして得られることである。しかしながら、波長変換物質として提案されている量子ドットのうち、バンドギャップに相当する波長の光、すなわちバンド端発光が確認されているものは、CdSe等の第12族−第14族に代表される二元系の半導体からなる量子ドットである。しかし、三元系の量子ドット、特に、第11族−第13族−第16族の量子ドットについてはバンド端発光が確認されていない。
第11族−第13族−第16族の量子ドットから発せられる光は、粒子表面や内部の欠陥準位、あるいはドナー・アクセプター対再結合に由来するものであるために、発光ピークがブロードであって半値幅が広く、その発光寿命も長いものである。そのような発光は、特に液晶表示装置で用いる発光デバイスには適していない。液晶表示装置に用いる発光デバイスに対しては、高い色再現性を確保するために、三原色(RGB)に対応するピーク波長を有する半値幅の狭い発光が要求されるからである。そのため、三元系の量子ドットは、低毒性の組成とし得るにもかかわらず、その実用化は進んでいない。
本発明に係る実施形態は、低毒性の組成とし得る三元系ないし四元系の量子ドットからバンド端発光が得られる構成を備えた、半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る実施形態は、コアと、前記コアの表面を覆い前記コアよりもバンドギャップエネルギーが大きくかつ前記コアとヘテロ接合するシェルと、を備え、光が照射されると発光する半導体ナノ粒子であって、前記コアが、M、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなり、前記シェルが、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体である半導体ナノ粒子である。
さらに、本発明に係る実施形態は、M、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなる一次半導体ナノ粒子を、溶媒中に分散させた分散液を準備すること、
前記分散液に、第13族元素を含む化合物および第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物を加えて、前記一次半導体ナノ粒子の表面に、実質的に前記第13族元素と前記第16族元素をとからなる半導体の層を形成することを含む、半導体ナノ粒子の製造方法である。
本発明に係る実施形態の半導体ナノ粒子は、特定の三元系の半導体からなるコアの表面が、当該半導体よりもバンドギャップエネルギーが大きい、第13族元素および第16族元素を含む半導体からなるシェルで覆われていることを特徴とする。この特徴により、当該三元系の量子ドットでは従来得られなかった、発光寿命の短い発光、すなわちバンド端発光が得られることを可能にしている。この半導体ナノ粒子は、コアおよびシェルの両方を、毒性が高いとされているCdおよびPbを含まない組成のものとすることができ、Cd等の使用が禁じられている製品等にも適用可能である。したがって、この半導体ナノ粒子は、液晶表示装置等に用いる発光デバイスの波長変換物質として、また、生体分子マーカーとして好適に用いることができる。さらに、上記の半導体ナノ粒子の製造方法によれば、バンド端発光を与える三元系の半導体ナノ粒子を比較的簡易に製造することが可能となる。
実施例1で作製した一次半導体ナノ粒子(コア)のXRDパターンである。 実施例1で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例1で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の吸収および励起スペクトルである。 実施例1で作製した一次半導体ナノ粒子(コア)の発光スペクトルである。 実施例1で作製した一次半導体ナノ粒子(コア)の吸収スペクトルである。 実施例2で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例2で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の吸収および励起スペクトルである。 実施例3で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例3で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の吸収および励起スペクトルである。 比較例1で作製した半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 比較例1で作製した半導体ナノ粒子の吸収スペクトルである。 実施例4A〜4Dで作製した半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例5A〜5Fで作製した半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例4A〜4D、実施例5A〜5Fで作製した半導体ナノ粒子のバンド端発光のピーク強度と、保持時間との関係を示すグラフである。 実施例4A〜4D、実施例5A〜5Fで作製した半導体ナノ粒子のバンド端発光のピーク波長と、保持時間との関係を示すグラフである。 実施例5Fで作製した半導体ナノ粒子のHRTEM像である。 実施例5Fで作製した半導体ナノ粒子のHAADF像である。 実施例6で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光スペクトルである。 実施例6で作製したコアシェル構造の半導体ナノ粒子の吸収スペクトルである。
以下、実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す形態に限定されるものではない。また、各実施形態およびその変形例において説明した事項は、特に断りのない限り、他の実施形態および変形例にも適用することができる。
(本実施形態の概要)
本発明者らは、三元系の量子ドット、特に、第11族−第13族−第16族の量子ドットであって、一般的な製造方法で製造されたものについては、バンド端発光が確認されていなかったために、この量子ドットからバンド端発光を得るための構成を検討した。その検討の過程で、本発明者らは、三元系ないし四元系の量子ドットの表面の状態を変化させることによって、バンド端発光が得られる可能性を検討し、特に、該量子ドットの表面を適当な半導体で被覆することによって表面状態を変化させることを検討した。その結果、第13族元素と第16元素とを含む半導体で、三元系ないし四元系の量子ドットを被覆することにより、当該量子ドットからバンド端発光が得られることを見出し、本実施形態に至った。
なお、バンド端発光が確認されているCdSeについては、そのバンド端発光をより強くするために、その表面をCdS等で被覆する構成が既に提案されている。また、三元系の量子ドットについても、その表面をZnSまたはZnSe等で被覆する構成が提案されている。しかしながら、バンド端発光を生じない又は発光スペクトルにおいてバンド端発光がほとんど観測されない三元系ないし四元系の量子ドットをコアとし、当該コアの表面を、特定の半導体から成るシェルで被覆することによって、バンド端発光が得られるようになったという報告はこれまでのところなされていない。
本実施形態の半導体ナノ粒子は、M、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなるコアの表面を、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体であり、コアよりも大きなバンドギャップエネルギーを有するシェルが覆い、当該シェルがコアとヘテロ接合している構成を有する。以下においては、まず、コア(三元系および四元系)ならびにシェルについて説明する。
[コア]
(三元系のコア)
三元系の半導体から成るコアは、M、M、およびZを含む半導体から成り、それ自体粒子の形態をとるものであるから、半導体ナノ粒子である。
ここで、Mは、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、好ましくはAgまたはCuであり、特に好ましくはAgである。MがAgであると、コア(後述する製造方法で用いられる一次半導体ナノ粒子に相当する)の合成が容易となる。Mとして二以上の元素が含まれていてよい。
コアの結晶構造は、正方晶、六方晶、または斜方晶からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
は、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、好ましくはIn、またはGaであり、特に好ましくはInである。Inは副生成物を生じにくいことから好ましい。Mとして二以上の元素が含まれていてよい。
Zは、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、好ましくはSである。ZがSであるコアはZがSeやTeであるものと比較してバンドギャップが広くなるため、可視光領域の発光を与えやすいことから好ましい。Zとして二以上の元素が含まれていてよい。
、MおよびZの組み合わせは特に限定されない。M、MおよびZの組み合わせ(M/M/Z)は、好ましくは、Cu/In/S、Ag/In/S、Ag/In/Se、およびAg/Ga/Sである。
上記特定の元素を含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、または斜方晶である半導体は、一般的には、Mの組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。なお、Mの組成式で表される半導体であって、六方晶の結晶構造を有するものはウルツ鉱型であり、正方晶の結晶構造を有する半導体はカルコパイライト型である。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。具体的には、コアから得られたXRDパターンを、Mの組成で表される半導体ナノ粒子のものとして既知のXRDパターン、または結晶構造パラメータからシミュレーションを行って求めたXRDパターンと比較する。既知のパターンおよびシミュレーションのパターンの中に、コアのパターンと一致するものがあれば、当該半導体ナノ粒子の結晶構造は、その一致した既知またはシミュレーションのパターンの結晶構造であるといえる。
半導体ナノ粒子の集合体においては、コアの結晶構造が異なる複数種の半導体ナノ粒子が混在していてよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。
尤も、三元系の半導体から成るコアは、実際には、上記一般式で表される化学量論組成のものではなく、特にMの原子数対Mの原子数の比(M/M)が1よりも小さくなる。また、Mの原子数とMの原子数の和が、Zの原子数と同じとはならないことがある。本実施形態の半導体ナノ粒子において、三元系の半導体から成るコアは、そのような非化学量論組成の半導体から成るものであってよい。本明細書では、特定の元素を含む半導体について、それが化学量論組成であるか否かを問わない場面では、M−M−Zのように、構成元素を「−」でつないだ式で半導体組成を表す。
コアは、M、MおよびZのみから実質的に成っていてよい。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にM、MおよびZ以外の元素が含まれることを考慮して使用している。
あるいは、コアは他の元素を含んでいてよい。例えば、Mの一部は他の金属元素により置換されていてよい。他の金属元素は+3価の金属イオンになるものであってよく、具体的には、Cr、Fe、Al、Y、Sc、La、V、Mn、Co、Ni、Ga、In、Rh、Ru、Mo、Nb、W、Bi、AsおよびSbから選択される一または複数の元素であってよい。その置換量は、Mと置換元素とを合わせた原子の数を100%としたときに、10%以下であることが好ましい。
(四元系のコア)
四元系の半導体から成るコアは、M、M、M、およびZを含む半導体からなり、三元系の半導体から成るコアと同様、それ自身半導体ナノ粒子である。四元系の半導体からなるコアの結晶構造は、正方晶、六方晶、または斜方晶からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。ナノ粒子の集合体においては、コアの結晶構造が異なる複数種のナノ粒子が混在していてよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。
、MおよびZは、三元系のコアに関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。
は、ZnおよびCdからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である。Mは好ましくはZnである。MがZnであれば、本実施形態の半導体ナノ粒子を低毒性の組成のものとして提供できる。またCdを採用した場合においても、Cdを用いた二元系のコアと比べてCdの量を減らすことができることから、低毒性の組成のものとして提供できる。
、M、MおよびZの組み合わせ(M/M/M/Z)は、特に限定されない。M、M、MおよびZの組み合わせ(M/M/M/Z)は好ましくは、Cu/In/Zn/S、Ag/In/Zn/Sである。
上記特定の四種類の元素を含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、または斜方晶である半導体は、一般的には、(M (式中、x+y=2)の組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。すなわち、この組成式で表される半導体は、三元系の半導体から成るコアに関連して説明したMの組成式で表される半導体においてMがドープされたもの、またはMとMZとが固溶体を形成しているものであるといえる。
四元系の半導体から成る場合にも、実際には、コアは上記一般式で表される化学量論組成のものではなく、特にMの原子数対Mの原子数の比(M/M)が1よりも小さくなる。また、x+yも2とはならないことがある。本実施形態の半導体ナノ粒子において、四元系の半導体から成るコアは、そのような非化学量論組成の半導体から成るものであってよい。よって、本明細書では、四元系の半導体についても、それが化学量論組成であるか否かを問わない場面では、M−M−M−Zのように、構成元素を「−」でつないだ式で半導体組成を表すことがある。
四元系の半導体の結晶構造の同定方法は、三元系の半導体から成るコアに関連して説明したとおりである。
四元系の半導体から成るコアは、M、M、MおよびZのみから実質的に成っている。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にM、M およびZ以外の元素が含まれることを考慮して使用している。あるいは、四元系の半導体から成るコアは、他の元素を含んでいてよい。
例えば、Mの一部は他の金属元素により置換されていてよい。他の金属元素の例およびその置換量は三元系のコアに関連して説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。
加えて/あるいは、Mの一部が他の金属元素により置換されていてよい。他の金属元素は+2価の金属イオンになるものであってよく、具体的には、Co、Ni、Pd、Sr、Ba、Fe、Cr、Mn、Cu、Cd、Rh、W、Ru、Pb、Sn、MgおよびCaから選ばれる少なくとも一種の元素であってよい。その置換量は、Mと置換元素とを合わせた原子の数を100%としたときに、10%以下であることが好ましい。
[シェル]
本実施形態において、シェルは、コアを構成する半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体であって、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体である。第13族元素としては、B、Al、Ga、In、およびTlが挙げられ、第16族元素としては、O、S、Se、TeおよびPoが挙げられる。シェルを構成する半導体には、第13族元素が1種類だけ、または2種類以上含まれてよく、第16族元素が1種類だけ、または2種類以上含まれていてもよい。具体的には、「実質的に」とは、シェルに含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、第13族元素および第16族元素以外の元素の割合が例えば5%以下であることを示す。
コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーはその組成にもよるが、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体ないしはこれをベースとする四元系の半導体は一般に、1.0eV〜3.5eVのバンドギャップエネルギーを有し、特に、Ag−In−Sから成る半導体は、1.8eV〜1.9eVのバンドギャップエネルギーを有し、Ag−In−Zn−Sから成る半導体は、1.8eV〜3.9eVのバンドギャップエネルギーを有する。したがって、シェルは、コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成するとよい。あるいは、シェルの組成等が先に決定されている場合には、コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーがシェルのそれよりも小さくなるように、コアを設計してよい。
具体的には、シェルは、例えば2.0eV〜5.0eV、特に2.5eV〜5.0eVのバンドギャップエネルギーを有してよい。また、シェルのバンドギャップエネルギーは、コアのバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV〜3.0eV程度、特に0.3eV〜3.0eV程度、より特には0.5eV〜1.0eV程度大きいものであってよい。シェルのバンドギャップエネルギーとコアのバンドギャップエネルギーとの差が小さいと、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が多くなり、バンド端発光の割合が小さくなることがある。
さらに、コアおよびシェルのバンドギャップエネルギーは、コアとシェルのヘテロ接合において、シェルのバンドギャップエネルギーがコアのバンドギャップエネルギーを挟み込むtype−Iのバンドアライメントを与えるように選択されることが好ましい。type−Iのバンドアライメントが形成されることにより、コアからのバンド端発光をより良好に得ることができる。type−Iのアライメントにおいて、コアのバンドギャップとシェルのバンドギャップとの間には、少なくとも0.1eVの障壁が形成されることが好ましく、特に0.2eV以上、より特には0.3eV以上の障壁が形成されてよい。障壁の上限は、例えば1.8eVであり、特に1.1eVである。障壁が小さいと、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が多くなり、バンド端発光の割合が小さくなることがある。
本実施形態において、シェルは、第13族元素としてInまたはGaを含むものであってよい。また、本実施形態において、シェルは、第16族元素としてSを含むものであってよい。InまたはGaを含む、あるいはSを含む半導体は、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。
シェルはまた、その半導体の晶系がコアの半導体の晶系となじみのあるものであってよく、またその格子定数が、コアの半導体のそれと同じまたは近いものであってよい。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、シェルの格子定数の倍数がコアの格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)半導体からなるシェルは、コアの周囲を良好に被覆することがある。例えば、第11族−第13族−第16族の三元系の半導体であるAg−In−Sは、一般に正方晶系であるが、これになじみのある晶系としては、正方晶系、斜方晶系が挙げられる。Ag−In−S半導体が正方晶系である場合、その格子定数は5.828Å、5.828Å、11.19Åであり、これを被覆するシェルは、正方晶系または立方晶系であって、その格子定数またはその倍数が、Ag−In−S半導体の格子定数と近いものであることが好ましい。
あるいは、シェルはアモルファス(非晶質)であってもよい。
アモルファス(非晶質)のシェルが形成されているか否かは、本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子を、HAADF−STEMで観察することにより確認できる。具体的には、規則的な模様(例えば、縞模様ないしはドット模様等)を有する部分が中心部に観察され、その周囲に規則的な模様を有するものとしては観察されない部分がHAADF−STEMにおいて観察される。HAADF−STEMによれば、結晶性物質のように規則的な構造を有するものは、規則的な模様を有する像として観察され、非晶性物質のように規則的な構造を有しないものは、規則的な模様を有する像としては観察されない。そのため、シェルがアモルファスである場合には、規則的な模様を有する像として観察されるコア(前記のとおり、正方晶系等の結晶構造を有する)とは明確に異なる部分として、シェルを観察することができる。
また、コアがAg−In−Sからなり、シェルがGaSからなる場合、GaがAgおよびInよりも軽い元素であるために、HAADF−STEMで得られる像において、シェルはコアよりも暗い像として観察される傾向にある。
アモルファスのシェルが形成されているか否かは、高解像度の透過型電子顕微鏡(HRTEM)で本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子を観察することによっても確認できる。HRTEMで得られる画像において、コアの部分は結晶格子像(規則的な模様を有する像)として観察され、シェルの部分は結晶格子像として観察されず、白黒のコントラストは観察されるが、規則的な模様は見えない部分として観察される。
一方、シェルはコアと固溶体を構成しないものであることが好ましい。シェルがコアと固溶体を形成すると両者が一体のものとなり、シェルによりコアを被覆して、コアの表面状態を変化させることによりバンド端発光を得るという、本実施形態のメカニズムが得られなくなる。例えば、Ag−In−Sからなるコアの表面を、化学量論組成ないしは非化学量論組成の硫化亜鉛(Zn−S)で覆っても、コアからバンド端発光が得られないことが確認されている。Zn−Sは、Ag−In−Sとの関係では、バンドギャップエネルギーに関して上記の条件を満たし、type−1のバンドアライメントを与えるものである。それにもかかわらず、前記特定の半導体からバンド端発光が得られなかったのは、前記特定の半導体とZnSとが固溶体を形成して、コア−シェルの界面が無くなったことによると推察される。
シェルは、第13族元素および第16族元素の組み合わせとして、InとSの組み合わせ、GaとSとの組み合わせ、またはInとGaとSとの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されるものではない。InとSとの組み合わせは硫化インジウムの形態であってよく、また、GaとSとの組み合わせは硫化ガリウムの形態であってよく、また、InとGaとSの組み合わせは硫化インジウムガリウムであってよい。本実施形態においてシェルを構成する硫化インジウムは、化学量論組成のもの(In)でなくてよく、その意味で、本明細書では硫化インジウムを式InS(xは整数に限られない任意の数字、例えば0.8〜1.5)で表すことがある。同様に、硫化ガリウムは化学量論組成のもの(Ga)でなくてよく、その意味で、本明細書では硫化ガリウムを式GaS(xは整数に限られない任意の数字、例えば0.8〜1.5)で表すことがある。硫化インジウムガリウムは、In2(1−y)Ga2y(yは0よりも大きく1未満である任意の数字)で表される組成のものであってよく、あるいは、InGa1−a(aは0よりも大きく1未満である任意の数字であり、bは整数に限られない任意の数値である)で表されるものであってよい。
硫化インジウムは、そのバンドギャップエネルギーが2.0eV〜2.4eVであり、晶系が立方晶であるものについては、その格子定数は10.775Åである。硫化ガリウムは、そのバンドギャップエネルギーが2.5eV〜2.6eV程度であり、晶系が正方晶であるものについては、その格子定数が5.215Åである。ただし、ここに記載された晶系等は、いずれも報告値であり、実際のコアシェル構造の半導体ナノ粒子において、シェルがこれらの報告値を満たしているとは限らない。
硫化インジウムおよび硫化ガリウムは、第11族−第13族−第16族の三元系ないしは四元系の半導体、特にAg−In−SないしはAg−In−Zn−Sがコアである場合に、シェルを構成する半導体として好ましく用いられる。特に、硫化ガリウムは、バンドギャップエネルギーがより大きいことから好ましく用いられる。硫化ガリウムを使用する場合には、硫化インジウムを使用する場合と比較して、より強いバンド端発光を得ることができる。
シェルは、その表面が任意の化合物で修飾されていてよい。シェルの表面がコアシェル構造の半導体ナノ粒子の露出表面である場合には、当該表面を修飾することによって、ナノ粒子を安定化させて半導体ナノ粒子の凝集または成長を防止することができ、ならびに/あるいは半導体ナノ粒子の溶媒中での分散性を向上させることができる。
表面修飾剤は、例えば、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含酸素化合物等であってよい。炭素数4〜20の炭化水素基としては、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ナフチルメチル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基や不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。含窒素化合物としてはアミン類やアミド類が挙げられ、含硫黄化合物としてはチオール類が挙げられ、含酸素化合物としては脂肪酸類などが挙げられる。
表面修飾剤としては、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含窒素化合物が好ましい。そのような含窒素化合物は、例えばn−ブチルアミン、イソブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキルアミンや、オレイルアミンなどのアルケニルアミンである。特に純度の高いものが入手しやすい点と沸点が290℃を超える点から、n‐テトラデシルアミンが好ましい。
表面修飾剤としては、また、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含硫黄化合物が好ましい。そのような含硫黄化合物は、例えば、n−ブタンチオール、イソブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等である。
表面修飾剤は、異なる二以上のものを組み合わせて用いてよい。例えば、上記において例示した含窒素化合物から選択される一つの化合物(例えば、オレイルアミン)と、上記において例示した含硫黄化合物から選択される一つの化合物(例えば、ドデカンチオール)とを組み合わせて用いてよい。
[コアシェル構造]
上記において説明したコアおよびシェルから成る、本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子の構成を以下に説明する。
本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子は、例えば、50nm以下の平均粒径を有してよい。平均粒径は、1nm〜20nmの範囲内、特に1nm〜10nmの範囲内にあってよい。
ナノ粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めてよい。ナノ粒子の粒径は、具体的には、TEM像で観察される粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の中心を通過する線分のうち、最も長いものを指す。
ただし、粒子がロッド状の形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド状の形状の粒子とは、長方形状を含む四角形状(断面は、円、楕円、または多角形状を有する)、楕円形状、または多角形状(例えば鉛筆のような形状)等として観察されるものであって、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長いものを指し、長方形状または多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長いものを指す。短軸の長さは、外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分を指す。
平均粒径は、任意に選択したグリッド上の3箇所以上で、50000倍〜150000倍のTEM像を取得し、取得したTEM像それぞれにおいて、すべての計測可能なナノ粒子について粒径を測定し、それらの粒径の算術平均とする。ここで、「計測可能な」粒子は、TEM像において粒子全体が観察できるものである。したがって、TEM像において、その一部が撮像範囲に含まれておらず、「切れて」いるような粒子は計測可能なものではない。TEM像の数は3以上とし、選択したTEM像に含まれるナノ粒子が合計100点以上となるようにする。したがって、例えば、3つのTEM画像に100点以上のナノ粒子が含まれるように見えたが、実際には100点に満たなかった場合には、撮像箇所を増やす必要がある。あるいは、2つのTEM画像に100点以上のナノ粒子が含まれていても、ナノ粒子の平均粒径の測定は、3つ以上のTEM画像を用いて行うものとする。
コアシェル構造の半導体ナノ粒子において、コアは、例えば、10nm以下、特に、8nm以下の平均粒径を有してよい。コアの平均粒径は、2nm〜10nmの範囲内、特に2nm〜8nm、より特に2nm〜6nmの範囲内にあってよく、あるいは4nm〜10nm、5nm〜8nmの範囲内にあってよい。コアの平均粒径が大きすぎると、量子サイズ効果が得られにくくなり、バンド端発光が得られにくくなる。
シェルは、0.1nm以上の厚さを有してよい。シェルの厚さは0.1nm〜50nmの範囲内、特に0.1nm〜20nmの範囲内、より特には0.2nm〜10nmの範囲内にあってよい。あるいは、シェルの厚さは、0.1nm〜3nmの範囲内にあってよく、特に0.3nm〜3nmの範囲内にあってよい。シェルの厚さが小さすぎる場合には、シェルがコアを被覆することによる効果が十分に得られず、バンド端発光が得られにくくなる。
コアの平均粒径およびシェルの厚さは、コアシェル構造の半導体ナノ粒子を、例えば、HAADF−STEMで観察することにより求めてよい。特に、シェルがアモルファスである場合には、HAADF−STEMによって、コアとは異なる部分として観察されやすいシェルの厚さを容易に求めることができる。その場合、コアの粒径は半導体ナノ粒子について上記で説明した方法に従って求めることができる。シェルの厚さが一定でない場合には、最も小さい厚さを、当該粒子におけるシェルの厚さとする。
あるいは、コアの平均粒径は、シェルによる被覆の前に予め測定しておいてよい。それから、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の平均粒径を測定し、当該平均粒径と予め測定したコアの平均粒径との差を求めることにより、シェルの厚さを求めてよい。
本実施形態の半導体ナノ粒子は、光が照射されると発光するものであって、具体的には、紫外光、可視光または赤外線が照射されると、照射された光よりも長い波長の光を発するものである。本実施形態の半導体ナノ粒子の発光は蛍光であってよく、または蛍光を含んでいてよい。その場合、本実施形態の半導体ナノ粒子は、蛍光を発する蛍光体として機能し得る。また、本実施形態の半導体ナノ粒子は、特定の族の元素を含むシェルによってコアが被覆されていることに起因して、シェルで被覆されていない場合にはバンド端発光を発光しないコアから、バンド端発光を与えることができる。具体的には、本実施形態の半導体ナノ粒子は、例えば、紫外光、可視光または赤外線が照射されると、照射された光よりも長い波長の発光を有し、かつ、主成分の発光の寿命が200ns以下および/または発光スペクトルの半値幅が50nm以下である発光をすることができる。ここで、「発光寿命」とは、後述する実施例のように、蛍光寿命測定装置と称される装置を用いて測定される発光の寿命をいう。
上記「主成分の発光寿命」は、次の手順に従って求める。まず、半導体ナノ粒子に励起光を照射して発光させ、発光スペクトルのピーク付近の波長、例えば、(ピークの波長±50nm)の範囲内にある波長の光について、その減衰(残光)の経時変化を測定する。経時変化は、励起光の照射を止めた時点から測定する。得られる減衰曲線は一般に、発光や熱等の緩和過程に由来する複数の減衰曲線を足し合わせたものとなっている。そこで、本実施形態では、3つの成分(すなわち、3つの減衰曲線)が含まれると仮定して、発光強度をI(t)としたときに、減衰曲線が下記の式で表せるように、パラメータフィッティングを行う。パラメータフィッティングは、専用ソフトを使用して実施する。
I(t)=Aexp(−t/τ)+Aexp(−t/τ)+Aexp(−t/τ
上記の式中、各成分のτ、τ、τは、発光強度が初期の1/e(36.8%)に減衰するのに要する時間であり、これが各成分の発光寿命に相当する。発光寿命の短い順にτ、τ、τとする。また、A、AおよびAは、各成分の寄与率である。本実施形態では、Aexp(−t/τ)で表される曲線の積分値が最も大きいものを主成分としたときに、主成分の発光寿命τが200ns以下である。そのような発光は、バンド端発光であると推察される。なお、主成分の特定に際しては、Aexp(−t/τ)のtの値を0から無限大まで積分することによって得られるA×τを比較し、この値が最も大きいものを主成分とする。
なお、本実施形態では、発光の減衰曲線が3つ、4つ、または5つの成分を含むものと仮定してパラメータフィッティングを行って得られる式がそれぞれ描く減衰曲線と、実際の減衰曲線とのずれは、それほど変わらない。そのため、本実施形態では、主成分の発光寿命を求めるにあたり、発光の減衰曲線に含まれる成分の数を3と仮定し、それによりパラメータフィッティングが煩雑となることを避けている。
バンド端発光は、欠陥発光とともに得られてよい。欠陥発光は一般に発光寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。あるいは、本実施形態の半導体ナノ粒子は、欠陥発光のみを発光し、バンド端発光を発しないものであってよい。そのような半導体ナノ粒子であっても、コアがシェルで被覆されることによって、表面における電気的な欠陥が無くなるために、光電変換を目的として、電荷分離を行い、再結合を抑制する材料(特に、太陽電池の構成材料)により適したものとなり、有用である。
本実施形態の半導体ナノ粒子が発光するバンド端発光は、半導体ナノ粒子の粒径を変化させることによって、その強度およびピークの位置を変化させることができる。例えば、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすれば、バンド端発光の強度(バンド端発光/欠陥発光強度の比)をより大きくすることができる。また、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のピーク波長が短波長側にシフトする傾向にある。さらに、半導体ナノ粒子の粒径をより小さくすると、バンド端発光のスペクトルの半値幅がより小さくなる傾向にある。
本実施形態の半導体ナノ粒子はまた、その吸収スペクトルまたは励起スペクトル(蛍光励起スペクトルともいう)がエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトルまたは励起スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子であることを意味する。エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味し、したがって、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。本実施形態の半導体ナノ粒子の吸収スペクトルまたは励起スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、350nm〜1000nmの範囲内で観察される。エキシトンピークの有無を見るための励起スペクトルは、観測波長をピーク波長付近に設定して測定してよい。
[コアシェル構造の半導体ナノ粒子の製造方法]
本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子は、
− コアとなる半導体ナノ粒子(本明細書において、シェルで被覆する前のコアを便宜的に「一次半導体ナノ粒子」と呼ぶ)を溶媒中に分散させた分散液を準備すること、および
− 当該分散液に、第13族元素の源(ソース)となる同元素を含む化合物、および第16族元素の源(ソース)となる同元素の単体または同元素を含む化合物を加えて、一次半導体ナノ粒子の表面に、実質的に第13族元素と第16族元素とからなる半導体の層を形成すること
を含む。
(一次半導体ナノ粒子の準備)
一次半導体ナノ粒子は、上記コアに相当し、三元系のものである場合には、M、M、およびZを含む半導体からなるナノ粒子であり、四元系のものである場合には、M、M、MおよびZを含む半導体からなるナノ粒子である。一次半導体ナノ粒子は、市販されているものをそのまま用いてよく、あるいは試験的に生産されたものがあればそれを用いてよく、あるいはM源、M源、およびZ源、ならびに場合によりM源を反応させることにより作製してよい。本実施形態の製造方法では、一次半導体ナノ粒子を作製した後、直ちにシェルによる被覆を実施しなければならないということはなく、別に作製された一次半導体ナノ粒子を、時間を置いて用いてよい。
三元系の一次半導体ナノ粒子は、例えば、元素Mの塩と元素Mの塩と元素Zを配位元素とする配位子とを混合することにより錯体とし、この錯体を熱処理することを含む方法で作製してよい。Mの塩およびMの塩はいずれも、その種類は特に限定されず、有機酸塩および無機酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩は、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、およびスルホン酸塩のいずれであってよく、好ましくは酢酸塩等の有機酸塩である。有機酸塩は有機溶媒への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
Zが硫黄(S)である場合、Zを配位元素とする配位子としては、例えば、2,4−ペンタンジチオンなどのβ−ジチオン類;1,2−ビス(トリフルオロメチル)エチレン−1,2−ジチオールなどのジチオール類;ジエチルジチオカルバミド酸塩;チオ尿素がある。
Zがテルル(Te)である場合、Zを配位元素とする配位子は、例えば、ジアリルテルライド、ジメチルジテルライドである。Zがセレン(Se)である場合、Zを配位元素とする配位子としては、例えば、ジメチルジセレノカルバミド酸、2−(ジメチルアミノ)エタンセレノールである。
錯体は、Mの塩、Mの塩、およびZを配位元素とする配位子とを混合することにより得られる。錯体の形成は、Mの塩およびMの塩の水溶液と配位子の水溶液とを混合する方法で実施してよく、あるいは、Mの塩、Mの塩および配位子を、有機溶媒(特に、エタノール等の極性の高い有機溶媒)中に投入して混合する方法で実施してよい。有機溶媒は表面修飾剤、または表面修飾剤を含む溶液であってよい。Mの塩、Mの塩およびZを配位元素とする配位子の仕込み比は、Mの組成式に対応して、1:1:2(モル比)とすることが好ましい。
次に、得られた錯体を熱処理して、一次半導体ナノ粒子を形成する。錯体の熱処理は、得られた錯体を沈殿させて分離した後、乾燥させて粉末とし、粉末を例えば100℃〜300℃の温度で加熱することにより実施してよい。この場合、熱処理して得られる一次半導体ナノ粒子は、さらに表面修飾剤である溶媒、または表面修飾剤を含む溶媒中で熱処理して、その表面が修飾されることが好ましい。あるいは、錯体の熱処理は、粉末として得た錯体を、表面修飾剤である溶媒、または表面修飾剤を含む溶媒中で、例えば100℃〜300℃の温度で加熱することにより実施してよい。あるいはまた、Mの塩、Mの塩および配位子を、有機溶媒中に投入して混合する方法で錯体を形成する場合には、有機溶媒を表面修飾剤または表面修飾剤を含む溶媒として、塩および配位子を投入した後、加熱処理を実施することにより、錯体の形成、熱処理および表面修飾を連続的に又は同時に実施してよい。
あるいは、一次半導体ナノ粒子は、Mの塩、Mの塩、およびZの供給源となる化合物を有機溶媒に投入して形成しても良い。あるいはまた、有機溶媒とMの塩とを反応させて錯体を形成し、次に、有機溶媒とMの塩とを反応させて錯体を形成するとともに、これらの錯体とZの供給源となる化合物とを反応させ、得られた反応物を結晶成長させる方法で製造してよい。Mの塩、およびMの塩については、上記錯体の形成を含む作製方法に関連して説明したとおりである。これらの塩と反応して錯体を形成する有機溶媒は、例えば、炭素数4〜20のアルキルアミン、アルケニルアミン、アルキルチオール、アルケニルアミン、アルキルホスフィン、アルケニルホスフィンである。これらの有機溶媒は、最終的には、得られる一次半導体ナノ粒子を表面修飾するものとなる。これらの有機溶媒は他の有機溶媒と混合して用いてよい。この製造方法においても、Mの塩、Mの塩およびZの供給源となる化合物の仕込み比は、Mの組成式に対応して、1:1:2(モル比)とすることが好ましい。
Zの供給源となる化合物は、Zが硫黄(S)である場合には、例えば、硫黄、チオ尿素、チオアセトアミド、アルキルチオールである。Zがテルル(Te)である場合には、例えば、トリアルキルホスフィンにTe粉末を加えた混合液を200〜250℃で熱処理して得られるTe−ホスフィン錯体を、Zの供給源となる化合物として用いてよい。Zがセレン(Se)である場合には、例えば、トリアルキルホスフィンにSe粉末を加えた混合液を200〜250℃で熱処理して得られるSe−ホスフィン錯体を、Zの供給源となる化合物として用いてよい。
あるいは、一次半導体ナノ粒子の製造方法は、いわゆるホットインジェクション法であってよい。ホットインジェクション法は、100℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した溶媒に、一次半導体ナノ粒子を構成する各元素の供給源となる化合物(例えば、Mの塩、Mの塩、およびZの供給源となる化合物(またはZを配位元素とする配位子))を溶解または分散させた液体(前駆体溶液とも呼ぶ)を比較的短い時間(例えばミリ秒オーダー)で投入して、反応初期に多くの結晶核を生成させる半導体ナノ粒子の製造方法である。あるいは、ホットインジェクション法においては、一部の元素の供給源となる化合物を有機溶媒中に予め溶解または分散させておき、これを加熱してから、その他の元素の前駆体溶液を投入してよい。溶媒を表面修飾剤、または表面修飾剤を含む溶媒とすれば、表面修飾も同時に実施できる。ホットインジェクション法によれば、粒径のより小さいナノ粒子を製造することができる。
一次半導体ナノ粒子の表面を修飾する表面修飾剤は、先に、シェルに関連して説明したとおりである。一次半導体ナノ粒子が表面修飾されていると、粒子が安定化されて、粒子の凝集または成長が防止され、ならびに/あるいは粒子の溶媒中での分散性が向上する。一次半導体ナノ粒子が表面修飾されている場合、シェルは、表面修飾剤が脱離したタイミングで成長する。したがって、一次半導体ナノ粒子を修飾している表面修飾剤は、最終的に得られるコアシェル構造のナノ粒子においては、コアの表面(コアとシェルとの界面)には通常存在しない。
なお、いずれの製造方法を採用する場合でも、一次半導体ナノ粒子の製造は不活性雰囲気下、特にアルゴン雰囲気下または窒素雰囲気下で実施される。これは、酸化物の副生および一次半導体ナノ粒子表面の酸化を、低減ないしは防止するためである。
一次半導体ナノ粒子を、M、M、およびZに加えて、Mをさらに含むもの、すなわち四元系とする場合には、上記において説明した一次半導体ナノ粒子の製造において、Mの塩を、Mの塩およびMの塩とともに用いる。Mの塩、Mの塩、Mの塩、およびZを配位元素とする配位子またはZの供給源となる化合物の仕込み比は、(M Te(式中、x+y=2)の化学量論組成の組成式に対応して、x:x:y:2(モル比)とすることが好ましい。Mの塩は、有機酸塩および無機酸塩のいずれであってもよい。具体的には、Mの塩は、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、およびスルホン酸塩のいずれであってよい。その他は三元系の一次半導体ナノ粒子の製造方法と同様であるから、ここではその詳細な説明を省略する。
三元系または四元系の半導体ナノ粒子をMの一部が他の金属元素で置換された組成のものとする場合には、一次半導体ナノ粒子の製造の際に、当該他の金属元素の塩を用いる。その場合、金属元素の置換量が所望のものとなるように、Mの塩および金属元素の塩の仕込み比を調整する。同様に、四元系の半導体ナノ粒子を製造する場合に、その組成をMの一部が他の金属元素で置換されたものとするときには、一次半導体ナノ粒子の製造の際に、当該他の金属元素の塩を用いる。
上記の方法で作製した三元系または四元系の一次半導体ナノ粒子は、反応終了後、溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製してよい。分離は、例えば、粒子を作製した後、混合液を遠心分離に付して、上澄み液を取り出すことにより行う。精製は、上澄み液にアルコールを加えて、遠心分離に付して沈殿させ、その沈殿を取り出し(あるいは上澄み液を除去して)、分離した沈殿を、例えば真空脱気または自然乾燥により乾燥させる、あるいは有機溶媒に溶解させる方法で実施してよい。精製(アルコールの添加と遠心分離)は必要に応じて複数回実施してよい。精製に用いるアルコールとして、メタノール、エタノール、n−プロパノール等の低級アルコールを用いてよい。沈殿を有機溶媒に溶解させる場合、有機溶媒として、クロロホルム、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等を用いてよい。
一次半導体ナノ粒子を精製した後、乾燥させる場合、乾燥は真空脱気により実施してよく、あるいは自然乾燥により実施してよく、あるいはまた、真空脱気と自然乾燥との組み合わせにより実施してよい。自然乾燥は、例えば、大気中に常温常圧にて放置することにより実施してよく、その場合、20時間以上、例えば、30時間程度放置してよい。
(一次半導体ナノ粒子の分散液)
一次半導体ナノ粒子をシェルで被覆するに際しては、これを適切な溶媒に分散させた分散液を調製し、当該分散液中でシェルとなる半導体層を形成する。一次半導体ナノ粒子が分散した液体においては、散乱光が生じないため、分散液は一般に透明(有色または無色)のものとして得られる。一次半導体ナノ粒子を分散させる溶媒は特に限定されず、一次半導体ナノ粒子を作製するときと同様、任意の有機溶媒(特に、エタノール等の極性の高い有機溶媒)であってよい。有機溶媒は、表面修飾剤、または表面修飾剤を含む溶液であってよい。例えば、有機溶媒は、シェルに関連して説明した表面修飾剤である、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つであってよく、あるいは、炭素数4〜20の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つであってよく、あるいは炭素数4〜20の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つと炭素数4〜20の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとの組み合わせであってよい。含窒素化合物としては、特に、特に純度の高いものが入手しやすい点と沸点が290℃を超える点から、n‐テトラデシルアミンが好ましい。具体的な有機溶媒としては、オレイルアミン、n‐テトラデシルアミン、ドデカンチオール、またはその組み合わせがある。
一次半導体ナノ粒子の分散液は、分散液に占める粒子の割合が、例えば、0.02質量%〜1質量%、特に0.1質量%〜0.6質量%となるように調製してよい。分散液に占める粒子の割合が小さすぎると貧溶媒による凝集・沈澱プロセスによる生成物の回収が困難になり、大きすぎるとコアを構成する材料のオストワルド熟成、衝突による融合の割合が増加し、粒径分布が広くなる傾向にある。
(シェルの形成)
シェルとなる半導体の層の形成は、第13族元素を含む化合物と、第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物とを、上記分散液に加えて実施する。
第13族元素を含む化合物は、第13族元素源となるものであり、例えば、第13族元素の有機塩、無機塩、および有機金属化合物等である。具体的には、第13族元素を含む化合物としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナト錯体が挙げられ、好ましくは酢酸塩等の有機塩、または有機金属化合物である。有機塩および有機金属化合物は有機溶媒への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物は、第16族元素源となるものである。例えば、第16族元素として硫黄(S)をシェルの構成元素とする場合には、高純度硫黄のような硫黄単体を用いることができ、あるいは、n−ブタンチオール、イソブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のチオール、ジベンジルジスルフィドのようなジスルフィド、チオウレア、チオカルボニル化合物等の硫黄含有化合物を用いることができる。
第16族元素として、酸素(O)をシェルの構成元素とする場合には、アルコール、エーテル、カルボン酸、ケトン、Nオキシド化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、セレン(Se)をシェルの構成元素とする場合には、セレン単体、またはセレン化ホスフィンオキシド、有機セレン化合物(ジベンジルジセレニドやジフェニルジセレニド)もしくは水素化物等の化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、テルル(Te)をシェルの構成元素とする場合には、テルル単体、テルル化ホスフィンオキシド、または水素化物を、第16族元素源として用いてよい。
第13族元素源および第16族元素源を分散液に添加する方法は特に限定されない。例えば、第13族元素源および第16族元素源を、有機溶媒に分散または溶解させた混合液を準備し、この混合液を分散液に少量ずつ、例えば、滴下する方法で添加してよい。この場合、混合液は、0.1mL/時間〜10mL/時間、特に1mL/時間〜5mL/時間の速度で添加してよい。また、混合液は、加熱した分散液に添加してよい。具体的には、例えば、分散液を昇温して、そのピーク温度が200℃〜290℃となるようにし、ピーク温度に達してから、ピーク温度を保持した状態で、混合液を少量ずつ加え、その後、降温させる方法で、シェル層を形成してよい(スローインジェクション法)。ピーク温度は、混合液の添加を終了した後も必要に応じて保持してよい。
ピーク温度が低すぎると、一次半導体ナノ粒子を修飾している表面修飾剤が十分に脱離しない、またはシェル生成のための化学反応が十分に進行しない等の理由により、半導体の層(シェル)の形成が不十分となることがある。ピーク温度が高すぎると、一次半導体ナノ粒子に変質が生じることがあり、シェルを形成してもバンド端発光が得られないことがある。ピーク温度を保持する時間は、混合液の添加が開始されてからトータルで1分間〜300分間、特に10分間〜60分間であってよい。ピーク温度の保持時間は、ピーク温度との関係で選択され、ピーク温度がより低い場合には保持時間をより長くし、ピーク温度がより高い場合には保持時間をより短くすると、良好なシェル層が形成されやすい。昇温速度および降温速度は特に限定されず、降温は、例えばピーク温度で所定時間保持した後、加熱源(例えば電気ヒーター)をoffとして放冷することにより実施してよい。
あるいは、第13族元素源および第16族元素源は、直接、全量を分散液に添加してよい。それから、第13族元素源および第16族元素源が添加された分散液を加熱することにより、シェルである半導体層を一次半導体ナノ粒子の表面に形成してよい(ヒーティングアップ法)。具体的には、第13族元素源および第16族元素源を添加した分散液は、例えば、徐々に昇温して、そのピーク温度が200℃〜290℃となるようにし、ピーク温度で1分間〜300分間保持した後、徐々に降温させるやり方で加熱してよい。昇温速度は例えば1℃/分〜50℃/分としてよく、降温速度は例えば1℃/分〜100℃/分としてよい。あるいは、昇温速度を特に制御することなく、所定のピーク温度となるように加熱してよく、また、降温を一定速度で実施せず、加熱源をoffとして放冷することにより実施してもよい。ピーク温度が低すぎる、または高すぎる場合の問題点は上記混合液を添加する方法で説明したとおりである。
ヒーティングアップ法によれば、スローインジェクション法でシェルを形成する場合と比較して、より強いバンド端発光を与えるコアシェル構造の半導体ナノ粒子が得られる傾向にある。
いずれの方法で第13族元素源および第16族元素源を添加する場合でも、両者の仕込み比は、第13族元素と第16族元素とからなる化合物半導体の化学量論組成比に対応させることが好ましい。例えば、第13族元素源としてIn源を、第16族元素源としてS源を用いる場合には、Inの組成式に対応して、仕込み比は1:1.5(In:S)とすることが好ましい。同様に、第13族元素源としてGa源を、第16族元素源としてS源を用いる場合には、Gaの組成式に対応して、仕込み比は1:1.5(Ga:S)とすることが好ましい。尤も、仕込み比は、必ずしも化学量論組成比にしなくてよく、目的とするシェルの生成量よりも過剰量で原料を仕込む場合には、例えば、第16族元素源を化学量論組成比より少なくしてよく、例えば、仕込み比を1:1(第13族:第16族)としてもよい。
また、分散液中に存在する一次半導体ナノ粒子に所望の厚さのシェルが形成されるように、仕込み量は、分散液に含まれる一次半導体ナノ粒子の量を考慮して選択する。例えば、一次半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、第13族元素および第16族元素から成る化学量論組成の化合物半導体が0.01mmol〜10mmol、特に0.1mmol〜1mmol生成されるように、第13族元素源および第16族元素源の仕込み量を決定してよい。ただし、粒子としての物質量というのは、粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル量であり、分散液に含まれるナノ粒子の個数を、アボガドロ数(N=6.022×1023)で除した値に等しい。
本実施形態の製造方法においては、第13族元素源として、酢酸インジウムまたはガリウムアセチルアセトナトを用い、第16族元素源として、硫黄単体またはジベンジルジスルフィドを用いて、分散液として、n‐テトラデシルアミンを用いて、硫化インジウムまたは硫化ガリウムを含むシェルを形成することが好ましい。
ヒーティングアップ法で、ジベンジルジスルフィドを第16族元素源(硫黄源)として用いると、ピーク温度到達後の保持時間が短くても(例えば、20分以上30分以下)、シェルが十分に形成されて、強いバンド端発光を与える半導体ナノ粒子が得られやすい。硫黄単体を用いてシェルを形成する場合、ピーク温度到達後の保持時間が短いと、バンド端発光の強い半導体ナノ粒子は得られにくいが、保持時間を長くすると(例えば、40分以上、特に50分以上、上限は例えば60分以下)、バンド端発光の強い半導体ナノ粒子が得られやすくなる。また、硫黄単体を用いて、保持時間を長くした場合には、ジベンジルジスルフィドを用いて作製した半導体ナノ粒子よりも高い発光強度のバンド端発光を得ることができる。さらに、硫黄単体を使用したヒーティングアップ法によれば、保持時間を長くすることにより、欠陥発光に由来するブロードなピークの強度がバンド端発光のピークの強度よりも十分に小さい発光スペクトルを与える半導体ナノ粒子が得られる。さらにまた、硫黄源の種類によらず、保持時間を長くするほど、得られる半導体ナノ粒子が発するバンド端発光のピークが長波長側にシフトする傾向にある。
また、ヒーティングアップ法で、分散液にn‐テトラデシルアミンを用いると、欠陥発光に由来するブロードなピークの強度がバンド端発光のピークの強度よりも十分に小さい発光スペクトルを与える半導体ナノ粒子が得られる。
上記の傾向は、第13族元素源としてガリウム源を使用した場合に、有意に認められる。
このようにして、シェルを形成してコアシェル構造の半導体ナノ粒子が形成される。得られたコアシェル構造の半導体ナノ粒子は、溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製および乾燥してよい。分離、精製および乾燥の方法は、先に一次半導体ナノ粒子に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
(発光デバイス)
次に、本発明に係る別の実施形態として、上記において説明したコアシェル構造の半導体ナノ粒子を用いた、発光デバイスを説明する。
本発明の実施形態である発光デバイスは、光変換部材および半導体発光素子を含む発光デバイスであって、光変換部材に上記において説明したコアシェル構造の半導体ナノ粒子を含むものである。この発光デバイスによれば、例えば、半導体発光素子からの発光の一部を、コアシェル構造の半導体ナノ粒子が吸収してより長波長の光が発せられる。そして、コアシェル構造の半導体ナノ粒子からの光と半導体発光素子からの発光の残部とが混合され、その混合光を発光デバイスの発光として利用できる。
具体的には、半導体発光素子としてピーク波長が400nm〜490nm程度の青紫色光または青色光を発するものを用い、コアシェル構造の半導体ナノ粒子として青色光を吸収して黄色光を発光するものを用いれば、白色光を発光する発光デバイスを得ることができる。あるいは、コアシェル構造の半導体ナノ粒子として、青色光を吸収して緑色光を発光するものと、青色光を吸収して赤色光を発光するものの2種類を用いても、白色発光デバイスを得ることができる。
あるいは、ピーク波長が400nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子を用い、紫外線を吸収して青色光、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する、三種類のコアシェル構造の半導体ナノ粒子を用いる場合でも、白色発光デバイスを得ることができる。この場合、発光素子から発せられる紫外線が外部に漏れないように、発光素子からの光をすべて半導体ナノ粒子に吸収させて変換させることが望ましい。
あるいはまた、ピーク波長が490nm〜510nm程度の青緑色光を発するものを用い、コアシェル構造の半導体ナノ粒子として上記の青緑色光を吸収して赤色光を発するものを用いれば、白色光を発光するデバイスを得ることができる。
あるいはまた、半導体発光素子として波長700nm〜780nmの赤色光を発光するものを用い、コアシェル構造の半導体ナノ粒子として、赤色光を吸収して近赤外線を発光するものを用いれば、近赤外線を発光する発光デバイスを得ることもできる。
コアシェル構造の半導体ナノ粒子は、他の半導体量子ドットと組み合わせて用いてよく、あるいは他の量子ドットではない蛍光体(例えば、有機蛍光体または無機蛍光体)と組み合わせて用いてよい。他の半導体量子ドットは、例えば、背景技術の欄で説明した二元系の半導体量子ドットである。量子ドットではない蛍光体として、アルミニウムガーネット系等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。他にユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β−SiAlON系蛍光体、CASN系又はSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSiN11系又はLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi:Eu系又はBaSi12:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa系、SrAl系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl:Eu蛍光体、SrMgSiN:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのKSiF:Mn蛍光体などを用いることができる。
発光デバイスにおいて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子を含む光変換部材は、例えばシートまたは板状部材であってよく、あるいは三次元的な形状を有する部材であってよい。三次元的な形状を有する部材の例は、表面実装型の発光ダイオードにおいて、パッケージに形成された凹部の底面に半導体発光素子が配置されているときに、発光素子を封止するために凹部に樹脂が充填されて形成された封止部材である。
または、光変換部材の別の例は、平面基板上に半導体発光素子が配置されている場合にあっては、前記半導体発光素子の上面および側面を略均一な厚みで取り囲むように形成された樹脂部材である。
あるいはまた、光変換部材のさらに別の例は、半導体発光素子の周囲にその上端が半導体発光素子と同一平面を構成するように反射材を含む樹脂部材が充填されている場合にあっては、前記半導体発光素子および前記反射材を含む樹脂部材の上部に、所定の厚さで平板状に形成された樹脂部材である。
光変換部材は半導体発光素子に接してよく、あるいは半導体発光素子から離れて設けられていてよい。具体的には、光変換部材は、半導体発光素子から離れて配置される、ペレット状部材、シート部材、板状部材または棒状部材であってよく、あるいは半導体発光素子に接して設けられる部材、例えば、封止部材、コーティング部材(モールド部材とは別に設けられる発光素子を覆う部材)またはモールド部材(例えば、レンズ形状を有する部材を含む)であってよい。
また、発光デバイスにおいて、異なる波長の発光を示す2種類以上のコアシェル構造の半導体ナノ粒子を用いる場合には、1つの光変換部材内で前記2種類以上のコアシェル構造の半導体ナノ粒子が混合されていてもよいし、あるいは1種類の量子ドットのみを含む光変換部材を2つ以上組み合わせて用いてもよい。この場合、2種類以上の光変換部材は積層構造を成してもよいし、平面上にドット状ないしストライプ状のパターンとして配置されていてもよい。
半導体発光素子としてはLEDチップが挙げられる。LEDチップは、GaN、GaAs、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、及びZnO等から成る群より選択される一種又は二種以上から成る半導体層を備えたものであってよい。青紫色光、青色光、または紫外線を発光する半導体発光素子は、好ましくは、一般式がInAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を半導体層として備えたものであることが好ましい。
本実施形態の発光デバイスは、光源として液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。コアシェル構造の半導体ナノ粒子によるバンド端発光は発光寿命の短いものであるため、これを用いた発光デバイスは、比較的速い応答速度が要求される液晶表示装置の光源に適している。また、本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子は、バンド端発光として半値幅の小さい発光ピークを示し得る。したがって、発光デバイスにおいて:
− 青色半導体発光素子によりピーク波長が420nm〜490nmの範囲内にある青色光を得るようにし、コアシェル構造の半導体ナノ粒子により、ピーク波長が510nm〜550nm、好ましくは530nm〜540nmの範囲内にある緑色光、およびピーク波長が600nm〜680nm、好ましくは630〜650nmの範囲内にある赤色光を得るようにする;または、
− 発光デバイスにおいて、半導体発光素子によりピーク波長400nm以下の紫外光を得るようにし、コアシェル構造の半導体ナノ粒子によりピーク波長430nm〜470nm、好ましくは440〜460nmの範囲内にある青色光、ピーク波長が510nm〜550nm、好ましくは530〜540nmの緑色光、およびピーク波長が600〜680nm、好ましくは630〜650nmの範囲内にある赤色光を得るようにする
ことによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。本実施形態の発光デバイスは、例えば、直下型のバックライトとして、またはエッジ型のバックライトとして用いられる。
あるいは、コアシェル構造の半導体ナノ粒子を含む、樹脂もしくはガラス等からなるシート、板状部材、またはロッドが、発光デバイスとは独立した光変換部材として液晶表示装置に組み込まれていてよい。
(実施例1)
(1)一次半導体ナノ粒子(Ag−In−S)の作製
酢酸銀(AgOAc)、酢酸インジウム(In(OAc))をそれぞれ0.4mmol、チオ尿素を0.8mmol、11.8mLのオレイルアミン、および0.2mLの1−ドデカンチオールを、二つ口フラスコに入れ、真空脱気(常温にて3min)した後Ar雰囲気下にて、10℃/minの昇温速度で、200°Cに達するまで昇温した。得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径150mm、2500rpm、10分間)に付し、上澄みである濃い赤色の溶液を取り出した。これにナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)に付し、沈殿物を常温で真空乾燥し、半導体ナノ粒子(一次半導体ナノ粒子)を得た。
得られた一次半導体ナノ粒子についてXRDパターンを測定し、正方晶(カルコパイライト型)のAgInS、六方晶(ウルツ鉱型)のAgInS、および斜方晶のAgInSと比較した。測定したXRDパターンを図1に示す。XRDパターンより、この一次半導体ナノ粒子の結晶構造は、正方晶のAgInSとほぼ同じ構造であることがわかった。XRDパターンは、リガク社製の粉末X線回折装置(商品名SmartLab)を用いて測定した(以下の実験例において同じ)。
また、得られた一次半導体ナノ粒子の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名H−7650)を用いて観察するとともに、その平均粒径を8〜20万倍のTEM像から測定した。ここでは、TEMグリッドとして、商品名ハイレゾカーボン HRC−C10 STEM Cu100Pグリッド(応研商事(株)を用いた。得られた粒子の形状は、球状もしくは多角形状であった。
平均粒径は、3以上のTEM像を選択し、これらに含まれているナノ粒子のうち、計測可能なものをすべて、すなわち、画像の端において粒子の像が切れているようなものを除くすべての粒子について、粒径を測定し、その算術平均を求める方法で求めた。本実施例を含む全ての実施例および比較例において、3以上のTEM像を用いて、合計100点以上のナノ粒子の粒径を測定した。
この一次半導体ナノ粒子の平均粒径は5.3nmであった。
(1)で得た一次半導体ナノ粒子に含まれるインジウムの物質量をICP発光分光(島津製作所、ICPS−7510)測定により求めたところ、52.2μmolであった。
平均粒径が5.3nmである場合の一次半導体ナノ粒子の体積は、球状とした場合に77.95nmと算出される。また、正方晶である場合の硫化銀インジウム結晶の単位格子体積は0.38nm(格子定数 5.828Å、5.828Å、11.19Å)と算出されることから、一次半導体ナノ粒子の体積を単位格子体積にて除することにより一次半導体ナノ粒子1個の中に205個の単位格子が含まれていることが算出される。次に正方晶である場合の硫化銀インジウム結晶の1個の単位格子には4個のインジウム原子が含まれているため、ナノ粒子1個あたりには820個のインジウム原子が含まれていることが算出される。
インジウムの物質量をナノ粒子1個あたりのインジウム原子数で除することにより一次半導体ナノ粒子の、ナノ粒子としての物質量は、63.6nmolであると算出される。
(2)シェルの被覆
(1)で得た一次半導体ナノ粒子をコアとして、これらのうち、ナノ粒子としての物質量で20nmolを、5.9mLのオレイルアミンと0.1mLのドデカンチオールの混合溶媒に分散させた分散液を得、これをAr雰囲気下で200℃に保った。これとは別に、酢酸インジウム(In(OAc))0.8mmol(233mg)および硫黄粉末1.2mmol(38.4mg)をオレイルアミン8mLに加え、100℃で10分間撹拌することにより、酢酸インジウムおよび硫黄粉末を溶解させて混合液を得た。上記加熱した分散液に、混合液を5mL/h(In基準で0.5mmol/h)の速度で5ml滴下した。混合液の添加が終わった時点で、加熱源をoffにして常温まで放冷し、その後、溶液にメタノールを加えて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の析出物を得た後、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)により固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の平均粒径は11.4nmであり、一次半導体ナノ粒子の平均粒径との差からシェルの厚さは平均で約3.0nmであった。
(3)吸収、発光および励起スペクトルの測定
発光、吸収および励起スペクトルを測定した。その結果を順に図2および図3に示す。
発光スペクトルは、マルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、商品名PMA12)を用いて、励起波長500nmにて測定した。吸収スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製、商品名V−670)を用いて、波長を350nm〜850nmとして測定した。励起スペクトルは、蛍光分光光度計(堀場製作所製、Fluoromax−4)を用いて、観測波長593nmおよび780nm(発光スペクトルで観察されたピークに対応)にて測定した。
図2に示すように、実施例1で得たコアシェル構造の半導体ナノ粒子では、593nm付近に半値幅が約38nmである急峻な発光ピークが観察された。また、図3に示すように、観測波長593nmでの励起スペクトルにおいては、540nm付近にてエキシトンピークが観察された。参考として、図4および図5に、一次半導体ナノ粒子(Ag−In−S)の発光スペクトルおよび吸収スペクトルを示す。シェルで被覆されていないAg−In−Sの発光スペクトルは、820nm付近にピークを有するブロードなものであり、また、吸収・励起スペクトルにおいて、エキシトンピークは観察されなかった。
実施例1において、急峻なピークとして観察される発光の発光寿命を測定した。発光寿命の測定は、浜松ホトニクス株式会社製の蛍光寿命測定装置(商品名Quantaurus−Tau)を用いて、波長470nmの光を励起光として、コアシェル構造の半導体ナノ粒子に照射して、急峻な発光ピークのピーク波長付近の発光の減衰曲線を求めた。得られた減衰曲線を浜松ホトニクス株式会社製の蛍光寿命測定/解析ソフトウェアU11487−01を用いてパラメータフィッティングにより、3つの成分に分けた。その結果、τ、τ、およびτ、ならびに各成分の寄与率(A、AおよびA)は以下の表1に示すとおりとなった。
表1に示すように、主成分(τ3、A3)は121.7nsであったが、発光寿命が28.0nsの成分(τ2、A2)も、これと同じ程度の強度で観測された。この発光寿命は、バンド端発光が確認されているCdSe(ナノ粒子)が発する蛍光で、寄与率の最も大きい成分の蛍光寿命(30ns〜60ns)と同程度であった。
(実施例2)
実施例1と同様の手順で作製した一次半導体ナノ粒子のうち、ナノ粒子としての物質量で10nmolを、12mLのオレイルアミンに分散させた分散液を得、これをAr雰囲気下で260℃に保った。これとは別に、ガリウムアセチルアセトナト(Ga(acac))および硫黄粉末を、それぞれオレイルアミン中に0.1mmol/mLおよび0.15mmol/mLの濃度となるように加え、100℃で10分間撹拌することにより、ガリウムアセチルアセトナトおよび硫黄粉末を溶解させて混合液を得た。上記加熱した分散液に、混合液を5mL/h(Ga基準で0.5mmol/h)の速度で4ml滴下した。混合液の添加が終わった時点で、加熱源をoffにして常温まで放冷し、その後、溶液にメタノールを加えて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の析出物を得て、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)により固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。
また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の平均粒径は6.65nmであった。この実施例で作製した一次半導体ナノ粒子の平均粒径は5.99nmであり、これとの差からシェルの厚さは平均で約0.33nmであった。
なお、一次半導体ナノ粒子を実施例1と同様の手順で作製したにもかかわらず、その平均粒径は実施例1で作製したものと異なっている。これは、試薬混合後、加熱を開始するまでの時間が実施例1とはわずかに異なり、その間に生成すると予想される銀―チオール錯体の物質量が異なることによるものと考えられた。以下の実施例等においても同じことがいえる。
実施例1で用いた装置と同じ装置を使用して、発光スペクトル(励起波長450nm)、吸収スペクトル、および観測波長580nmおよび730nmでの励起スペクトルを測定した。その結果を図6および図7に示す。図6に示すように、実施例2で得たコアシェル構造の半導体ナノ粒子では、584nm付近に半値幅が約39nmである急峻な発光ピークが観察された。また、図7に示すように、観測波長580nmでの励起スペクトルにおいて、530nm付近にてエキシトンピークが観察された。
また、実施例1と同じマルチチャンネル分光器(励起波長450nm)を用いて、バンド端発光であると考えられる急峻なピーク(530−650nm)における発光量子収率を測定したところ、1.9%であった。
また、実施例1と同様の手順で、急峻なピークとして観察される発光の発光寿命を測定したところ、τ、τ、およびτ、ならびに各成分の寄与率(A、AおよびA)は以下の表2に示すとおりとなった。表2に示すとおり、主成分(τ、A)の発光寿命は39.1nsであった。
(実施例3)
実施例1と同様の手順で作製した一次半導体ナノ粒子のうち、ナノ粒子としての物質量で30nmolと、ガリウムアセチルアセトナト(Ga(acac))0.1mmolと、ジベンジルジスルフィド0.05mmolと、オレイルアミン12mLとを、フラスコに入れて、10℃/minの昇温速度で260℃まで加熱し、260℃にて20分間保持した後、加熱源をoffにして放冷した。その後、溶液にメタノールを加えて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の析出物を得て、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)により固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。
また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の平均粒径は8.0nmであった。この実施例で作製した一次半導体ナノ粒子の平均粒径は6.0nmであり、これとの差からシェルの厚さは平均で約1nmであった。
実施例1で用いた装置と同じ装置を使用して、発光スペクトル(励起波長450nm)、吸収スペクトル、および励起スペクトルを測定した。その結果を順に図8および図9に示す。図8に示すように、実施例3で得たコアシェル構造の半導体ナノ粒子では、586nm付近に半値幅が約39nmである急峻な発光ピークが観察された。また、図9に示すように、観測波長585nmでの励起スペクトルにおいては、535nm付近にてエキシトンピークが観察された。また、実施例2と同様にして発光量子収率を測定したところ、発光量子収率は14.3%であった。
また、実施例1と同様の手順で、急峻なピークとして観察される発光の発光寿命を測定したところ、τ、τ、およびτ、ならびに各成分の寄与率(A、AおよびA)は以下の表3に示すとおりとなった。表3に示すとおり、主成分(τ、A)の発光寿命は51.4nsであった。
実施例1で得られた半導体ナノ粒子と、実施例2で得られた半導体ナノ粒子について、その発光スペクトルを比較すると、実施例2では、急峻なピークの発光強度(バンド端発光の強度)が、ブロードなピークの発光強度(欠陥発光の強度)よりも明らかに大きくなっていた。このことから、GaSによるシェル形成が、InSによるシェル形成よりも、コアからのバンド端発光を得るのにより有利であることがわかる。
実施例2で得られた半導体ナノ粒子と、実施例3で得られた半導体ナノ粒子について、発光量子収率を比較したところ、実施例3は実施例2の7.5倍であることが確認された。また、シェル形成時において、シェル形成のためのGa源の一次半導体ナノ粒子に対するモル比が同じであるにもかかわらず、実施例3ではシェルの厚さが約1nmと大きくなっていた。これらのことを考慮すると、硫黄源としてジベンジルジスルフィドを用いた場合には、シェルが途切れることなくコアの表面を覆ってコアの表面欠陥が効果的に除去され、それによりバンド端発光の強度がより大きくなったものと推察される。
(比較例1)
実施例1と同様の手順で作製した一次半導体ナノ粒子のうち、ナノ粒子としての物質量で10nmolを、12mLのオレイルアミンに分散させ分散液を得、これをAr雰囲気下に260℃に保った。これとは別に、酢酸亜鉛(Zn(OAc))、硫黄粉末を、それぞれオレイルアミン中に0.1mmol/mLとなるように加え、100℃で10分間加熱することによって酢酸亜鉛および硫黄粉末を溶解させて混合液を得た。上記加熱した分散液に、混合液を5mL/h(Zn基準で0.5mmol/h)の速度で2ml滴下した。混合液の添加が終わった時点で、加熱源をoffにして常温まで放冷し、その後、溶液にメタノールを加えて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の析出物を得て、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)により固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、実施例1で用いた装置と同じ装置を使用して、発光スペクトル(励起波長450nm)および吸収スペクトルを測定した。その結果を図10および図11に示す。
図10に示すように、比較例1で得たナノ粒子では、実施例1〜3で見られたような急峻な発光ピークは観察されず、ブロードなスペクトルが観察された。すなわち、ZnSはAg−InーSよりも大きいバンドギャップエネルギーを有し、type−1のバンドアライメントを与え得るにも関わらず、バンド端発光が観察されなかった。これは、コア−シェル間で固溶体が形成され、コアシェル構造が形成されなかったことによると考えられる。
(実施例4A〜4D)
実施例1と同様の手順で作製した一次半導体ナノ粒子のうち、ナノ粒子としての物質量で30nmolと、ガリウムアセチルアセトナト(Ga(acac))0.1mmolと、ジベンジルジスルフィド0.05mmolと、オレイルアミン12mLとを、フラスコに入れて、10℃/minの昇温速度で260℃まで加熱した。260℃に達した直後(実施例4A)、それぞれ260℃にて10分間(実施例4B)、20分間(実施例4C)、30分間(実施例4D)保持した後、加熱源をoffにして放冷した。その後、反応生成物を含む液体を、遠心分離(半径150mm、2500rpm、10分間)に付し、上澄みを取り出した。これにナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径150mm、2500rpm、5分間)に付し、固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。
(実施例5A〜5F)
実施例1と同様の手順で作製した一次半導体ナノ粒子のうち、ナノ粒子としての物質量で30nmolと、ガリウムアセチルアセトナト(Ga(acac))0.1mmolと、硫黄0.15mmolと、オレイルアミン12mLとを、フラスコに入れて、10℃/minの昇温速度で260℃まで加熱した。260℃に達した直後(実施例5A)、それぞれ260℃にて10分間(実施例5B)、30分間(実施例5C)、40分間(実施例5D)、50分間(実施例5E)、60分間(実施例5F)保持した後、加熱源をoffにして放冷した。その後、反応生成物を含む液体を、遠心分離(半径150mm、2500rpm、10分間)に付し、上澄みを取り出した。これにナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径150mm、2500rpm、5分間)に付し、固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。
実施例1で用いた装置と同じ装置を使用して、実施例4A〜4D、および実施例5A〜5Fで得た半導体ナノ粒子の発光スペクトル(励起波長400nm)を得た。発光スペクトルを図12(実施例4A〜4D)および図13(実施例5A〜5F)に示す。なお、いずれの図面にも、参考例としてシェルを形成していない1次半導体ナノ粒子(コア)の発光スペクトルを合わせて示している。
図12に示すとおり、ジベンジルジスルフィドを硫黄源としてシェルを形成した実施例4A〜4Cのうち、バンド端発光のピーク強度が最も大きかったのは実施例4C(保持時間20分間)であった。実施例4D(保持時間30分間)は実施例4Cよりも低いバンド端発光のピーク強度を示した。このことから、ジベンジルジスルフィドを用いてシェルを形成すると、比較的短い保持時間によってバンド端発光強度を向上させ得ることがわかった。このことは、実施例4A〜4Cのバンド端発光のピーク強度と、保持時間との関係を示す図14によっても確認され得る。
図13に示すとおり、硫黄単体を硫黄源としてシェルを形成した実施例5A〜5Fのうち、バンド端発光のピーク強度が最も大きかったのは実施例5E(保持時間50分間)であった。このことから、硫黄単体を硫黄源としてシェルを形成する場合には、バンド端発光のピーク強度がより大きいコアシェル構造の粒子を得るのに、長い保持時間が必要であることが分かる。このことは、実施例5A〜5Fのバンド端発光のピーク強度と、保持時間との関係を示す図14によっても確認され得る。また、図14に示されるとおり、硫黄単体を使用して保持時間を長くしてシェルを形成すると、ジベンジルジスルフィドの使用時に達成されるバンド端発光のピーク強度の最大値よりも大きいバンド端発光のピーク強度を達成できる。
さらにまた、図13に示すように、硫黄単体を用いて保持時間を長くしてシェルを形成すると、バンド端発光の強度(バンド端発光/欠陥発光強度の比)をより大きくすることができた(特に、実施例5E、5F)。
図15は、実施例4A〜4D、実施例5A〜5Fについて、バンド端発光のピーク波長と保持時間との関係を示すグラフである。ジベンジルジスルフィドおよび硫黄単体を用いるいずれの場合にも、保持時間が長くなるにつれて、ピーク波長が長波長側にシフトすることがわかる。
[HRTEMおよびHAADFによる観察]
実施例5Fのコアシェル構造の半導体ナノ粒子を、HRTEMおよびHAADF(日本電子製、商品名ARM―200F)により観察した。HRTEM像を図16に、HAADF像を図17に示す。いずれにおいても、規則的な模様を有する結晶性のコアと、その周囲に位置する規則的な模様を有しないシェルが観察され、実施例5Fの半導体ナノ粒子においてシェルがアモルファスであることが観察された。
[XPSによる分析]
実施例5Fのコアシェル構造の半導体ナノ粒子を、X線光電子分光(島津製作所製、商品名KRATOS AXIS−165X)により分析した。銀、インジウムは、3d軌道由来のピーク位置をデータベースと比較した場合に、硫化物の位置と一致し、硫黄は、2p軌道由来のピーク位置をデータベースと比較した場合に、金属硫化物の位置と一致することを確認した。また、ガリウムについては、硫化物のデータベースが入手できないため硫化物であることを確認できなかったが、ガリウムの3d軌道由来のピーク位置が、金属ガリウムとは明らかに異なり、酸化ガリウムとセレン化ガリウムの間に位置することから、硫化物である可能性が高いことを確認した。
[エネルギー分散型X線分析装置による分析]
実施例5Fのコアシェル構造の半導体ナノ粒子に含まれる各元素の原子百分率を、エネルギー分散型X線分析装置(EDAX製、商品名OCTANE)により分析した。その結果を表4に示す。組成をAgInS・Gaとした場合に、表4のAgおよびGaの結果より計算した硫黄の原子百分率は、53.9(17.2×2+13.1÷2×3=53.9)となり、表4のSの値に対して良い一致を示した。
(実施例6)
(1)一次半導体ナノ粒子(Ag−In−S)の作製
酢酸銀(AgOAc)、酢酸インジウム(In(OAc))をそれぞれ0.4mmol、チオ尿素を0.8mmol、35.8mmolのn‐テトラデシルアミン、および0.2mLの1−ドデカンチオールを、二つ口フラスコに入れ、真空脱気(常温にて3 min)した後Ar雰囲気下にて、5℃/minの昇温速度で、150°Cに達するまで昇温した。得られた懸濁液を放冷し、90℃を下回ったあたりで少量のヘキサンを加えた後、遠心分離(半径150mm、4000rpm、10分間)に付し、上澄みである濃い赤色の溶液を取り出した。これにナノ粒子の沈殿が生じるまでメタノールを加えて、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)に付し、沈殿物を常温で真空乾燥し、半導体ナノ粒子(一次半導体ナノ粒子)を得た。
(2)シェルの被覆
(1)で得た一次半導体ナノ粒子をコアとして、これらのうち、ナノ粒子としての物質量で30nmolを、ガリウムアセチルアセトナト(Ga(acac))0.1mmolと、硫黄0.15mmolと、n-テトラデシルアミン36.48mmolとを、フラスコに入れて、10℃/minの昇温速度で260℃まで加熱し、260℃にて50分間保持した後、加熱源をoffにして放冷した。その後、溶液にメタノールを加えて、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の析出物を得て、遠心分離(半径150mm、2500rpm、3分間)により固体成分を回収した。これをクロロホルムに溶かし、各種測定を行った。
また、シェルで被覆された粒子の平均粒径を測定したところ、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の平均粒径は8.6nmであった。この実施例で作製した一次半導体ナノ粒子の平均粒径は7.1nmであり、これとの差からシェルの厚さは平均で約0.75nmであった。
実施例1で用いた装置と同じ装置を使用して、発光スペクトル(励起波長450nm)、吸収スペクトルを測定した。その結果を順に図18および図19に示す。図18に示すように、実施例6で得たコアシェル構造の半導体ナノ粒子では、581nm付近に半値幅が約28nmである急峻な発光ピークが観察された。また、図19に示すように、観測波長585nmでの励起スペクトルにおいては、535nm付近にてエキシトンピークが観察された。また、実施例1と同じマルチチャンネル分光器(励起波長450nm)を用いて、バンド端発光であると考えられる急峻なピーク(530−630nm)における発光量子収率を測定したところ、21.1%であった。
本発明に係る実施形態は、バンド端発光可能な半導体ナノ粒子であり、発光デバイスの波長変換物質として、あるいは生体分子マーカーとして利用可能である。

Claims (16)

  1. コアと、前記コアの表面を覆い前記コアよりもバンドギャップエネルギーが大きくかつ前記コアとヘテロ接合するシェルと、を備え、光が照射されると発光する半導体ナノ粒子であって、
    前記コアが、M、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなり、
    前記シェルが、実質的に第13族元素および第16族元素からなる半導体である半導体ナノ粒子。
  2. 前記シェルが、前記第13族元素としてInを含む請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
  3. 前記シェルが、前記第13族元素としてGaを含む請求項1に記載の半導体ナノ粒子。
  4. 前記シェルが、前記第16族元素としてSを含む請求項2または3に記載の半導体ナノ粒子。
  5. 前記コアが、MとしてAgを含み、MとしてInを含み、ZとしてSを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
  6. 前記コアが、Mをさらに含み、Mが、ZnおよびCdからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
  7. 発光スペクトルの半値幅が50nm以下であるピークを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
  8. 発光寿命が200ns以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
  9. 前記半導体ナノ粒子の励起または吸収スペクトルがエキシトンピークを示すものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子。
  10. 、M、およびZを含む半導体であって、Mが、Ag、CuおよびAuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Mが、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であり、Zが、S、SeおよびTeからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である半導体からなる一次半導体ナノ粒子を、溶媒中に分散させた分散液を準備すること、
    前記分散液に、第13族元素を含む化合物および第16族元素の単体または第16族元素を含む化合物を加えて、前記一次半導体ナノ粒子の表面に、実質的に前記第13族元素と前記第16族元素とからなる半導体の層を形成することを含む、半導体ナノ粒子の製造方法。
  11. 前記第16族元素を含む化合物がジベンジルジスルフィドである請求項10に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  12. 前記分散液に、前記第13族元素を含む化合物および前記第16族元素の単体または前記第16族元素を含む化合物を加えた後、前記分散液を一定の速度で200℃〜290℃の範囲内にあるピーク温度まで昇温させた後、前記ピーク温度にて一定時間保持することを含む、請求項10または11に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  13. 前記第16族元素の単体が硫黄の単体であり、前記ピーク温度にて前記分散液が保持される時間が40分間以上60分間以下である、請求項12に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  14. 前記分散液がn−テトラデシルアミンを含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  15. 光変換部材および半導体発光素子を含む発光デバイスであって、前記光変換部材に請求
    項1〜9のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子が含まれる、発光デバイス。
  16. 前記半導体発光素子はLEDチップである、請求項15に記載の発光デバイス。
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