JP2018044067A - 無機フィラーを含有する硬化性組成物を封止剤として用いてなる光半導体装置 - Google Patents

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文康 石黒
Fumiyasu Ishiguro
文康 石黒
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貴雄 眞鍋
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Abstract

【課題】ヒドロシリル化硬化性樹脂を用いて封止して作成した光半導体装置において、冷熱衝撃試験を実施した際に、封止樹脂のクラック及びLEDの不灯の発生を防止することを目的とする。【解決手段】光半導体素子を、(A)1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物(B)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(C)ヒドロシリル化触媒(D)無機フィラーを含有する硬化性組成物の硬化物により封止してなる光半導体装置であり、無機フィラー(D)の25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることを特徴とする光半導体装置。【選択図】なし

Description

ヒドロシリル化硬化してなる硬化性組成物を封止剤として用いた光半導体装置関するものである。
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、長寿命、低消費電力、耐衝撃性、高速応答性、軽薄短小化の実現等の特徴を有しており、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末等のバックライト、車載照明、屋内外広告、屋内外照明等、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。また、用途の多様性と共により一層の信頼性の向上が求められている。
特に、冷熱衝撃試験における、クラック及び不灯発生の抑制は、製品の長期信頼性を担保する上で重要である。冷熱衝撃試験における、クラック及び不灯発生の抑制方法としては、例えば、シリコーンパウダーによる機械特性の向上が試みられている(特許文献1)が、未だ十分であるとは言い切れない。
特開2013−216849
ヒドロシリル化硬化性樹脂を用いて封止して作成した光半導体装置において、冷熱衝撃試験を実施した際に、封止樹脂のクラック及びLEDの不灯の発生を防止することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、
冷熱衝撃試験を実施した際の封止樹脂のクラック及びLEDの不灯発生は、発光素子と封止樹脂の界面より生じる微細なクラック発生、または、発光素子と封止樹脂との界面における剥離発生、または、封止樹脂とリードフレームとの界面における剥離発生に起因することを見出した。また、前記微細なクラック及び界面剥離の発生部分周辺の応力を効果的に緩和することで、封止樹脂のクラック及びLEDの不灯発生を抑制できることを見出した。より具体的には、(A)1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物と(B)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物と(C)ヒドロシリル化触媒と(D)無機フィラーからなる硬化性組成物を用い、かつ当該組成物の硬化物よりなる光半導体装置を作成した際に、無機フィラー(D)の25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることにより、冷熱衝撃試験を実施した際の封止樹脂のクラック及びLEDの不灯発生を効果的に抑制できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
1).光半導体素子を、
(A)1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物
(B)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)無機フィラーを含有する硬化性組成物の硬化物により封止してなる光半導体装置であり、無機フィラー(D)の25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることを特徴とする光半導体装置。
2).無機フィラー(D)の50vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることを特徴とする、1)に記載の光半導体装置。
ヒドロシリル化硬化してなる封止剤に、無機フィラーを添加し、無機フィラーの25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることにより、冷熱衝撃試験を実施した際の封止樹脂のクラック及びLEDの不灯発生を効果的に抑制する。
本発明の光半導体装置の一例である、表面実装型の発光ダイオード(LED)の概略断面図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置としては、特に限定はされないが、例えば図1に示す構造が挙げられる。図1は、光半導体装置の概略断面図である。
本発明の図1中の光半導体素子1は、特に限定されず、半導体発光装置のLEDとして汎用されているもの等を用いることができる。例えば、放射した光を特に変換することなく利用するタイプのLEDや、あるいは放射した光により蛍光体を励起して可視光を発光させるタイプのLEDや、可視光発光タイプのLEDや、紫外発光タイプのLEDなどが挙げられる。本発明の光半導体素子1は、1つの半導体発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類のLEDを実装してもよい。
本発明の図1中のリフレクター2は、必要に応じて用いても良く、光半導体素子1からの光半導体装置を効率よく反射させることを目的とするものである。材質としては、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂や、ガラスエポキシや、セラミックスなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
本発明の図1中の硬化性組成物の硬化物3は、光半導体素子1からの光半導体装置を効率よく外部に浸透させる、外力や埃などから光半導体素子やワイヤなどを保護する、腐食性ガスの装置内への侵入を防ぐ、といった作用を有する。
本発明の図1中のリード4は、LED実装時の導電性確保とLEDの反射効率を高めるためのものである。特に、可視光領域での反射率が高いことから、金属の表面に銀メッキをしたものが用いられることが多いが、銀メッキに限定されるものではない。
本発明の図1中のワイヤ5は、光半導体素子1とリード4を電気的に接続するものであり、材質としては導電性のものであれば特に限定しないが、金や金合金や銅等が挙げられる。また、ワイヤ5を用いる代わりに、導電性接着剤や共晶ハンダを用いて電気的接続を行ってもよい。
本発明の図1中の蛍光体6は、必要に応じて用いても良く、光半導体素子1から放射された光を吸収し、異なる波長を発光するものである。用いる蛍光体の組成には特に制限はないが、400nm〜800nmの可視光を発する蛍光体が一般的に用いられている。また、硬化物3中で蛍光体が沈降しているか浮遊しているかにも制限はない。
本発明の図1中の無機フィラー7は、冷熱衝撃試験時の応力を緩和し、クラック及び不灯の発生を抑制する効果がある。また、硬化物3との屈折率差が存在する場合には、光を拡散する効果を有する。
<1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物(A)>
本発明の硬化性組成物に用いられる1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物(A)としては、例えば、シルフェニレン化合物や直鎖状ポリシロキサンや環状ポリシロキサンやヒドロシリル基を含有するポリシロキサン変性体(A−1)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用しても良い。
ヒドロシリル基を有するシルフェニレン化合物としては、芳香環状の水素が、SiH基を有する置換基に置換された構造が挙げられる。具体的には、1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,3−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,5−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,6−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,7−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,8−ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、などが例示される。
ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。
<ヒドロシリル基を含有するポリシロキサン変性体(A−1))>
本発明におけるヒドロシリル基を含有するポリシロキサン変性体(A−1)は、分子骨格内にヒドロシリル基を含有するポリシロキサン化合物であれば、特に限定されないが、例えばアルケニル基を含有するポリシロキサン化合物に対して、ヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基を有する化合物を変性して得ることが可能である。本発明において得られるポリシロキサン変性体は、ハンドリング性、成形加工性の観点から、温度20℃で液状とすることが好ましい。
本発明における好ましいポリシロキサン変性体(A−1)について、具体的に説明する。本発明における好ましいポリシロキサン変性体は、反応可能な官能基を有するシロキサン単位として[XR SiO−SiO3/2]を必須単位として構成されることを特徴とし、必要に応じて、物性調整ユニットとしての任意のシロキサン単位[R SiO−SiO3/2]を構成単位として含有し、以下の一般式(1)、
[XR SiO−SiO3/2][R SiO−SiO3/2] (1)
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Xは下記一般式(2)
あるいは下記一般式(3)
で表される基;Rは、アルキル基またはアリール基、;Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他のポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン変性体が例示される。ここで、aは平均して1以上、好ましくは2以上であることが好ましく、また、bは、0または1以上の整数である。a+bは6〜24の整数、好ましくは、6〜12の整数である。
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介してポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介してポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つはアルケニル基または水素原子である;Rは、アルキル基またはアリール基;また、Xが複数ある場合は式(2)あるいは式(3)の構造が異なっていても良くまた式(2)あるいは式(3)の構造が混在していても良い)
以下、反応可能な官能基を有するシロキサン単位
[XR SiO−SiO3/2]
について詳細に説明する。
反応可能な官能基を有するシロキサン単位は、例えば、後述のヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化反応により硬化剤との架橋反応を発生させる、あるいは、熱硬化開始剤あるいは光硬化開始剤の存在下、架橋し、硬化させる役割を担うユニットである。
本発明のヒドロシリル基を含有するポリシロキサン変性体とは、反応性官能基を有する基Xとして、式(2)あるいは式(3)の構造を有し、少なくとも1つのヒドロシリル基を含有する変性体であれば特に限定はないが、mは1〜7の整数であることが好ましく、nは2〜4の整数であることが好ましい。
反応可能な官能基を有するシロキサン単位におけるRとしては、実質的に反応性を有しない置換基、具体的に例えば、アルキル基、アリール基を使用することができる。
本発明における反応可能な官能基を有するシロキサン単位は、多面体骨格を構成する全シロキサン単位のうち、平均して2つ以上含有することが好ましい。すなわち、一般式(1)におけるaは2以上が好ましい。含有する反応可能な官能基を含有するシロキサン単位が少ないと硬化性が不十分となり、さらには、得られる硬化物の強度が低下する恐れがある。
次に、任意のシロキサン単位
[R SiO−SiO3/2]
について説明する。
本シロキサン単位は、本発明におけるポリシロキサン変性体および得られる硬化物の物性調整を行うためのユニットである。本シロキサン単位は、実質的に、反応可能な置換基を含有しないため、架橋密度の調整、皮膜性、レベリング性、脆さ改善などが可能となる。
本シロキサン単位におけるRとしては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他のポリシロキサンと連結している基を好適に用いることができる。前記アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基などが例示されるが、さらには実質的に反応性を有しない置換基で一部を置き換えられていてもよい。実質的に反応性を有しない置換基で一部を置き換えられたアルキル基としては、具体的に例えば、ポリシロキサニルアルキル基が例示され、レベリング性や皮膜性、また、後述の硬化剤や硬化開始剤との相溶性などの付与も可能となり、また、化合物の性状を液状にすることも可能である。
本発明におけるポリシロキサン変性体(A−1)としては、ガスバリア性の観点から、後述の有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´であることが好ましい。
<有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´>
本発明における有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基を有するポリシロキサン化合物(a)と、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(c)および/または1分子中にアルケニル基を1個有する環状オレフィン化合物(d)を、ヒドロシリル基を有する化合物(b)とヒドロシリル化反応させることにより得られる。本発明の有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´を得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、予め(a)成分と(b)成分を反応させた後、(c)および/または(d)成分を反応させても良いし、予め(c)および/または(d)成分と(b)成分を反応させた後、(a)成分を反応させても良いし、(a)成分と(c)および/または(d)成分を共存させて(b)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(c)および/または(d)成分と(b)成分のみが反応した、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(b)成分を反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(c)および/または(d)成分を反応させる方法が好ましい。
こうして得られた有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´には反応に用いた(a)成分のアルケニル基が一部残存していてもよい。
有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分及び(c)および/または(d)成分のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
このようにして得られた有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていることから、各種アルケニル基を有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の1分子中にアルケニル基を2個以上有する化合物(B−3)と反応させることにより、硬化物を得ることができる。
また本発明における有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´は、温度20℃において液状とすることも可能である。有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
本発明における有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´は一般式(4)
[XR SiO−SiO3/2][R SiO−SiO3/2](4)
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(5)あるいは一般式(6)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(5)あるいは一般式(6)の構造が異なっていても良くまた一般式(5)あるいは一般式(6)の構造が混在していても良い。
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介してポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介してポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(7)の構造を有する。
−[CH]−R (7)
(lは0以上の整数;Rは有機ケイ素構造または環状オレフィン構造を含有する基);Rは、アルキル基またはアリール基}]で表されるシロキサン単位から構成されるポリシロキサン系化合物である。
このようにして得られたポリシロキサン変性体(A−1)´は、(a)〜(d)成分の添加量、反応順序、反応時間、反応温度等を制御することにより、有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´の粘度制御が可能である。また、ポリシロキサン変性体(A−1)´の粘度制御を行うことで、ポリシロキサン組成物(B)の粘度を調整することも可能である。ポリシロキサン変性体(A−1)´の粘度に関しては、特に限定されないが、ポリシロキサン変性体(A−1)´が温度20℃において液状である場合、20℃での粘度が0.01Pa・s〜500Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは1Pa・s〜300Pa・sである。ポリシロキサン変性体(A−1)´の粘度が低すぎると後述のポリシロキサン組成物の粘度が低くなり、蛍光体等の添加剤が分散せずに沈降する恐れがある。また、粘度が高すぎるとハンドリング性が悪化する恐れがある。
また、有機変性されたポリシロキサン変性体(A−1)´は、得られる硬化物の強度や硬度、さらには、耐熱性・耐光性等の観点から、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することが好ましい。
<アルケニル基を有するポリシロキサン系化合物(a)>
本発明におけるアルケニル基を有するポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基を有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、下記一般式(8)
[RSiO3/2[R10SiO3/2 (8)
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;Rはアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;R10は、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができ、さらには、下記一般式(9)
[AR SiO−SiO3/2][R SiO−SiO3/2] (9)
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
R6は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
R7は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR7としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
(a)成分の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、R11SiXa(式中R11は、上述のR、Rを表し、Xaは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、R11SiXaの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様のポリシロキサンを得ることが可能である。
<ヒドロシリル基を有する化合物(b)>
本発明で用いるヒドロシリル基を有する化合物(b)は、分子中に1個以上のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、得られるポリシロキサン変性体の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンあるいは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。特にガスバリア性の観点からは、環状シロキサンであることが好ましい。
ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
特に、ヒドロシリル基を有する直鎖状ポリシロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
ヒドロシリル基を有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
これら(b)成分である、ヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(c)>
本発明における1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(c)はヒドロシリル基を有する化合物(b)のヒドロシリル基と反応する。(c)成分を用いることで、得られる硬化物の弾性率を低下させることができ、耐冷熱衝撃性を向上させることができる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
本発明における(c)成分は、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物であれば特に限定はされないが、1分子中に少なくともアリール基を1個以上含有していることが、ガスバリア性や屈折率の観点から好ましく、さらには、該アリール基が直接ケイ素原子に結合していることが、耐熱性、耐光性の観点から、さらに好ましい。
本発明における(c)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(c)成分が、1分子中にアルケニル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
また(c)成分がポリシロキサンである場合、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
(c)成分が、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
(c)成分が、アルケニル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
これら(c)成分である、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<1分子中にアルケニル基を1個有する環状オレフィン化合物(d)>
本発明における(d)成分は、1分子中に炭素−炭素2重結合を1個有する環状オレフィン化合物であればよく、この炭素−炭素2重結合は、ビニレン基、ビニリデン基、アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
また、本発明における(d)成分は、平均分子量が1000以下であることが(b)成分との反応性の観点から好ましい。このような環状オレフィン化合物として、脂肪族環状オレフィン化合物、置換脂肪族環状オレフィン化合物等が挙げられる。
脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、シクロへキセン、シクロへプテン、シクロオクテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、アリルシクロヘキサン、アリルシクロヘプタン、アリルシクロオクタン、メチレンシクロヘキサン等が挙げられる。
置換脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、2−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、z2−ビニルノルボルナン、7−ビニルノルボルナン、2−アリルノルボルナン、7−アリルノルボルナン、2−メチレンノルボルナン、7−メチレンノルボルナン、カンフェン、ビニルノルカンフェン、6−メチル−5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、3−メチル−2−メチレン−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタン、α−ピネン、β−ピネン、6、6−ジメチル−ビシクロ〔3,1,1〕−2−ヘプタエン、2−ビニルアダマンタン、2−メチレンアダマンタン等が挙げられる。
中でも入手性の観点から、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、カンフェン、ピネンが好ましい例として挙げられる。
これら、1分子中にアルケニル基を1個有する環状オレフィン化合物(d)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
1分子中にアルケニル基を1個有する環状オレフィン化合物(d)の添加量は、後述のヒドロシリル基を有する化合物(b)のヒドロシリル基1個あたり、(d)成分のアルケニル基の数が、0.01〜0.5個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合があり、添加量が多いと、得られる硬化物に硬化不良が生じる場合がある。
<1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(B)>
本発明に用いられる1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物(B)は、例えば、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)や、後述する有機化合物(B2)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、(B1)成分と(B2)成分とは併用してもよい。
化合物(B)の添加量は種々設定できるが、化合物(B)のアルケニル基1個あたり、化合物(A)に含まれるヒドロシリル基が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。アルケニル基の割合が少ないと、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、アルケニル基の割合が多いと、硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
<1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)>
本発明の硬化性組成物が含有しえる、1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン(B1)のシロキサンのユニット数は、特に限定されないが、2つ以上が好ましく、さらに好ましくは、2〜10個である。1分子中のシロキサンのユニット数が少ないと、組成物から揮発しやすくなり、硬化後に所望の物性が得られないことがある。また、シロキサンのユニット数が多いと、得られた硬化物のガスバリア性が低下する場合がある。
1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、アリール基を有していることが、ガスバリア性の観点から好ましい。また、アリール基を有する1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上に直接アリール基が結合していることが好ましい。また、アリール基は分子の側鎖または末端いずれにあってもよく、このようなアリール基含有ポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば直鎖状、分岐鎖状、一部分岐鎖状を有する直鎖状の他に、環状構造を有してもよい。
このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、3−tブチルフェニル基、4−tブチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、ビフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、3−エポキシフェニル基、4−エポキシフェニル基、3−グリシジルフェニル基、4−グリシジルフェニル基等が挙げられる。中でも、耐熱・耐光性の観点から、フェニル基が好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上併用して用いてもよい。
本発明における1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンとしては、耐熱性、耐光性の観点から、アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサン、アルケニル基を2個以上有する環状シロキサンなどが好ましい例として挙げられる。
アルケニル基を2個以上有する直鎖状ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
分子末端にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルビニルシロキサン単位2つ以上とSiO単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
アルケニル基を2個以上有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1−フェニル−3,5,7−トリメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,3−ジフェニル−5,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,5−ジフェニル−3,7−ジメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−ビニル−1,3,5−トリフェニル−7−メチルシクロテトラシロキサン、1−フェニル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3−ジフェニル−5,7−ジビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
これら1分子中にアルケニル基を2個以上有するポリシロキサンは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
<有機化合物(B2)>
本発明の硬化性組成物が含有しえる、有機化合物(B2)は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物であれば、特に制限はないが、例えば、下記一般式(10)で表される有機化合物であって、かつ、1分子中にアルケニル基を2個以上有する有機化合物が挙げられる。
(式中R12は炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのR12は異なっていても同一であってもよい。)
(B2)成分は、1分子中にアルケニル基を平均して2個以上含有しているため、得られる硬化物の強度やガスバリア性、耐熱性、耐光性等が優れることとなる。また、ガスバリア性の観点から、数平均分子量900未満であることが好ましい。
また、(B2)成分の骨格中にアルケニル基以外の官能基を有していても構わないが、ポリシロキサン化合物(A)との相溶性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖上の脂肪族炭化水素系基をはじめとする極性の低い官能基であるほうが好ましく、耐熱性、耐光性の観点から、特にメチル基が好ましい。
(B2)成分は、例えば組成物を基材と硬化させた場合の基材との接着性の観点から、上記一般式(10)で表され、かつ、1分子中にアルケニル基を2個以上含有するイソシアヌル酸誘導体であることが好ましく、さらに耐熱性・耐光性のバランスの観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、特に耐冷熱衝撃性の観点からジアリルモノメチルイソシアヌレートがさらに好ましい。これらは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
<ヒドロシリル化触媒(C)>
本発明で用いることができるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック、高分子等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
<無機フィラー(D)>
本発明で用いることができる無機フィラーとしては、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば、特に制限はない。
具体的には例えば、石英、ヒュームドシリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、アモルファスシリカ、アルコキシシランを縮合してなるフィラー、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ガラス、シリコーンゴム、シリコーンレジン、酸化チタン、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、銀粉、等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
無機フィラーは、適宜表面処理を施してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤、機械的処理等による処理が挙げられるが、特に限定されるものではない。
無機フィラーの形状としては例えば、真球状、球状、りん片状、平板状、針状、繊維状、無定形、中空状、これら形状のフィラーを破砕してなる形状、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、体積平均における平均粒径(D50)が、0.005〜60μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。無機フィラーの平均粒径が小さすぎると、応力を緩和する効果が減少し、結果として冷熱衝撃試験中のクラック及び不灯の発生を抑制する効果が得られない場合がある。一方で、無機フィラーの平均粒径が大きすぎると、無機フィラーを基点とするクラックが発生しやすくなり、結果として冷熱衝撃試験中のクラック及び不灯の発生を抑制する効果が得られない場合がある。
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、0.0001〜1000重量部、よりこの好ましくは、0.001〜500重量部、さらに好ましくは、0.01〜100重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、礼熱衝撃試験中のクラック及び不灯の発生を抑制する効果が得られない場合がある。
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
無機フィラーの光半導体装置内での分布に関しては、特に限定はされないが、冷熱衝撃試験におけるクラック及び不灯の抑制のためには、好ましくは添加されている無機フィラーの25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることであり、より好ましくは添加されている無機フィラーの50vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることである。
無機フィラーを光半導体装置内で光半導体素子上面の高さよりも下部に存在させる方法としては、無機フィラーと硬化性組成物との比重差を利用して、無機フィラーを沈降させる方法がある。更に、硬化前に、硬化性組成物がゲル化しない温度で一定時間静置することで、より沈降しやすくすることができる。その他の方法としては、硬化前に、遠心力等の外力を使用して、沈降させることが可能である。
<硬化性組成物>
本発明の半導体発光装置に用いられるヒドロシリル化硬化性組成物は、必要に応じて、蛍光体や硬化遅延剤等を混合することにより得ることができる。
蛍光体は前記発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであり、本発明の半導体発光装置に用いられる蛍光体としては、特に限定されず、一般的に公知の無機蛍光体や有機蛍光体を用いることができる。具体的に、例えば、YAG系蛍光体、TAG系蛍光体、オルトシリケートアルカリ土類系蛍光体、α−サイアロン系蛍光体、β−サイアロン系蛍光体、CASN系蛍光体、S−CASN系蛍光体、ニトリドおよびオキシニトリド系蛍光体、KSF系蛍光体、などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。蛍光体の使用量には特に制限は無く、半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意の量を使用することができるが、あえて例示するならば、硬化性組成物中に好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、好ましくは150重量%以下、より好ましくは100重量%以下である。蛍光体の使用量が少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色が得られなくなる場合があり、蛍光体の使用量が多いと、組成物のハンドリング性が低下したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなったりする可能性がある。
蛍光体を硬化性組成物に混合する方法としては、蛍光体の結晶構造に損傷を与えず蛍光体を均一に混合することが可能な方法であれば特に制限はなく、例えばミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、2本ロール、ニーダー、ビーズミル等、従来公知の方法を用いることが出来る。上記の中でも特に、遊星攪拌ミキサー、3本ロール、2本ロール、など混合にあたり発熱の少ないものや混合機由来の金属磨耗粒子の混入が少ないものが好ましく、なかでも遊星攪拌ミキサーが蛍光体の損傷少なく脱泡しながら混合できるので好ましい。これらの混合方法は、一種のみ行ってもよく、また二種以上を組み合わせて行ってもよい。
本発明に用いられる硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において0.1Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは0.3Pa・s〜200Pa・sである。硬化性組成物の粘度が低いと、蛍光体が沈降し個体間の色度ズレが大きくなる恐れがあり、粘度が高いと、硬化性組成物のハンドリング性が悪化する恐れがある。
硬化性組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、80℃、120℃、150℃、170℃、220℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、0.1分〜24時間、好ましくは1分〜12時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
本発明で用いられる硬化性組成物の保存安定性の改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応性を調整するために硬化遅延剤を用いても良い。硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10−1〜10モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて接着性付与剤を添加することができる。
接着性付与剤は、例えば、本発明におけるポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
シランカップリング剤の添加量としては、硬化性組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることもできる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤を用いることにより、得られる光半導体装置のヒートサイクル試験や高温保管試験や通電試験といった各種信頼性試験での信頼性を向上させることができる。酸化防止剤としては例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、n−オクタデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス[3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ジアミン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等を挙げることができる。
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりしてもよい。
本発明の光半導体装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
(SiH価)
ポリシロキサン変性体0.200g、ジブロモエタン0.200g、重クロロホルム1.000gの混合溶液を作成した。ポリシロキサン変性体のSiH価は、得られた溶液を、バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製 400MHz NMRを用いて測定し、下記計算式(1)
SiH価(mol/kg)=[ポリシロキサン変性体のSiH基に帰属されるピークの積分値]/[ジブロモエタンのメチル基に帰属されるピークの積分値]×4×[混合物中のジブロモエタン重量]/[ジブロモエタンの分子量]/[混合物中のポリシロキサン変性体重量] (1)
を用いることで算出した。
(フィラー沈降性)
無機フィラーの光半導体装置内での分布を、断面SEM測定により観察した。添加されている無機フィラーに対して、光半導体素子上面と同一の高さよりも下部に沈降している無機フィラーが25vol%未満の場合をC、添加されている無機フィラーに対して、光半導体素子上面と同一の高さよりも下部に沈降している無機フィラーが25vol%以上50vol%未満の場合をB、添加されている無機フィラーに対して、光半導体素子上面と同一の高さよりも下部に沈降している無機フィラーが50vol%以上の場合をA、とした。
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
ジメチルビニルクロロシラン1149g、トリメチルシリルクロリド830gおよびヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を4個有するアルケニル基を含有するポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1175.8)を白色固体として760g得た。
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基を有するポリシロキサン系化合物30.0gをトルエン123.0gに溶解させ、ビニルジフェニルメチルシラン31.5g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)1.46μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.6g、トルエン24.6gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール2.8μl、マレイン酸ジメチル0.65μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状のポリシロキサン変性体(反応物I)を80.8g(SiH価数1.8mol/kg)得た。
(製造例3)
5Lの二口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン340gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート180g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール2.95mgを加えた後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物724gを得た。1HNMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(反応物II)(部分反応物Xと称す。部分反応物Xは混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。
(配合例1)
東レダウコーニング社製フェニルシリコーンOE6630A/Bの、A剤2.00g、B剤8.00gを均一に撹拌混合し一液を作成した。
(配合例2)
信越化学工業社製変性シリコーンSCR1012A/Bの、A剤5.00g、B剤5.00gを均一に撹拌混合し一液を作成した。
(配合例3)
製造例2で得られたポリシロキサン変性体10.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン0.89g、ジアリルモノメチルイソシアヌレート1.33g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)1.40μL、エチニルシクロヘキサノール2.67μl、マレイン酸ジメチル0.62μlを加えて均一に撹拌混合し一液を作成した。
(配合例4)
製造例3で得られた反応物II12.01gに、トリアリルイソシアヌレート14.99g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)8.0μL、エチニルシクロヘキサノール4.3μlを加えて均一に攪拌混合し一液を作成した。
(配合例5)
製造例2で得られたポリシロキサン変性体10.00gと、製造例3で得られた部分反応物II2.06gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン1.8g、ジアリルモノメチルイソシアヌレート2.47g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)4.30μL、エチニルシクロヘキサノール8.00μl、マレイン酸ジメチル0.52μlを加えて均一に撹拌混合し一液を作成した。
(実施例1)
配合例1で作成した一液5.0gに、Intematix社製蛍光体NYAG4454ELを0.50g、平均粒径(D50)7μmの破砕シリカを0.50g添加し、Thinky社製あわとり練太郎ARV−300を用いて、減圧下、1200rpmで5分、500rpmで5分、1200rpmで5分の順に攪拌を行うことで、無機フィラーを含有する硬化性組成物を作成した。
別途、ジェネライツ社製9mil×21mil角 青色LEDチップ(品番:B2040)を実装したSDI社製リフレクター(品番:SDI4G41)を100個準備した。得られた硬化性組成物を、上記の撹拌と脱泡から4時間以内に、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーML−5000XII、武蔵エンジニアリング社製クリアシリンジ3ml(品番:PSY−3E)、武蔵エンジニアリング社製2条ネジプラスチックニードル(品番:DPN−23G−1)を用いて注入し、注入後4時間分以内に、対流式オーブンで80℃60分、120℃120分、150℃180分の順に昇温して硬化した。
得られた光半導体装置の点灯確認を兼ねて、テクノローグ社製LEDテスタ(品番:LX4652C)を用いて、温度25℃、電流20mA、の条件で通電して発光させ、その発光色の全光束を測定し、100個の平均値を算出した。
前記10個の光半導体装置を、ダイセン電子工業製ガラスエポキシ基板(品番:D006)の0.95mmピッチ面に、藤倉化成製導電性ペースト(FA−705BN)を用いて150℃30分加熱して接着し、日立アプライアンス株式会社製、冷熱衝撃試験機を用いて、低温側温度−40℃に30分と高温側100℃に30分の2つの温度域を、30分毎に切り替えることで、冷熱衝撃試験を実施した。試験回数は1000サイクルで実施した。
試験後の光半導体素子を23℃の温度下テクノローグ社製LEDテスタ(品番:LX4652C)を用いて、温度25℃、電流20mA、の条件で通電して発光させ、その点灯有無を確認した。また、光学顕微鏡を用いて、クラックの発生有無を確認した。不灯もしくはクラックの少なくともいずれか一方が発生したサンプルを、冷熱衝撃試験後NGとした。
(実施例2〜37、比較例1〜8)
実施例1と同様の手順で、一液、蛍光体、無機フィラーをそれぞれ表1の通りに配合し、同様に試験を実施した。
(実施例38〜42)
蛍光体としてデンカ株式会社製のβ―サイアロン蛍光体(GR−MW540H)1.1gとデンカ株式会社製のKSF蛍光体(KR−sampleB3)2.0gを用いた以外は、実施例1と同様の手順で、一液、蛍光体、無機フィラーをそれぞれ表1の通りに配合し、同様に試験を実施した。
(比較例9〜14)
無機フィラーを含まないこと以外は、実施例1と同様の手順で、一液、蛍光体をそれぞれ表1の通りに配合し、同様に試験を実施した。
(比較例15〜19)
蛍光体としてデンカ株式会社製のβ―サイアロン蛍光体(GR−MW540H)1.1gとデンカ株式会社製のKSF蛍光体(KR−sampleB3)2.0gを用いたこと、および、無機フィラーを含まないこと以外は、実施例1と同様の手順で、一液、蛍光体をそれぞれ表1の通りに配合し、同様に試験を実施した。
以上の結果より、本発明の硬化性組成物を使用した半導体発光装置は、比較例に対して冷熱衝撃試験におけるクラック及び不灯の発生が抑制された。
1 LEDチップ
2 リフレクター
3 ポリシロキサン系組成物の硬化物
4 リード
5 ボンディングワイヤ
6 蛍光体
7 無機フィラー

Claims (2)

  1. 光半導体素子を、
    (A)1分子中に2個以上のSiH基を有する化合物
    (B)1分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物
    (C)ヒドロシリル化触媒
    (D)無機フィラーを含有する硬化性組成物の硬化物により封止してなる光半導体装置であり、無機フィラー(D)の25vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることを特徴とする光半導体装置。
  2. 無機フィラー(D)の50vol%以上が、光半導体装置内において、光半導体素子上面の高さよりも下部に存在していることを特徴とする、請求項1に記載の光半導体装置。
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