JP6298230B2 - 蛍光体含有シリコーン系組成物および該組成物で封止されてなる発光装置 - Google Patents

蛍光体含有シリコーン系組成物および該組成物で封止されてなる発光装置 Download PDF

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Description

本発明は蛍光体含有シリコーン系組成物および該組成物で封止されてなる発光装置に関する。
発光ダイオード(LED)を用いた発光装置は、長寿命、低消費電力、耐衝撃性、高速応答性、軽薄短小化の実現等の特徴を有しており、液晶ディスプレイ、携帯電話、情報端末等のバックライト、車載照明、屋内外広告、屋内外照明等、多方面への展開が飛躍的に進んでいる。
LEDでは、一般に、一種または複数種の蛍光体を硬化性樹脂に分散させた蛍光体含有組成物で、発光素子を封止するなどの方法により、発光素子から発される青色光や紫外光と、蛍光体がそれらを吸収して発する光とを足し合わすことで、白色光をはじめとする任意の発光色を得ている。しかし、蛍光体含有組成物中の蛍光体は、蛍光体と樹脂の比重差・極性差等の理由により長期的には安定的に分散せず、沈降や凝集等の分散むらを起こす傾向があり、蛍光体の樹脂中への分散による蛍光体含有組成物の作成後は、短期間のうちに発光素子の封止に用いなければ、得られるLEDに、蛍光体含量のむらによる色度ばらつきや蛍光体の凝集による輝度の低下が発生するといった課題があり、またそのために、蛍光体含有組成物に可使期間が生じ、破棄によるロスが起こるといった課題があった。
LEDの色度ばらつきは、例えば、LEDを用いたディスプレイや照明などの機器の製造において、機器の発光むらを抑えるためにLEDを選別する必要を生じさせ、生産性や歩留まりの低下といった課題につながり、また、輝度の低下は、例えば、蛍光体の必要量を増加させるといった課題につながることから、蛍光体含有組成物中で蛍光体を長期的に安定的に分散させる技術が望まれていた。
このような課題に対し、特許文献1では、蛍光体を特定の粘度のエポキシ樹脂中に分散させた組成物を使用することにより、蛍光体の沈降を抑制している。しかしながら、組成物中での蛍光体の凝集が課題となる場合があり、また、エポキシ樹脂を使用していることから、過酷な条件下での耐光性が課題となった。
また、特許文献2では、特定の水酸基濃度を有するシリカを組成物に配合することで、蛍光体の分散性を向上させている。しかしながら、シリカの分散不良による過剰な光散乱により、発光効率が低下したり色度が変化したりすることが課題となる場合や、ディスペンサー等の閉塞が発生することが課題となる場合があった。
一方、多面体構造を有するポリシロキサンで構成された組成物は、その特異的な化学構造から、優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られており、例えば、特許文献3において、多面体構造を有するポリシロキサン系変性体を用いた組成物が開示されている。この組成物は、成型加工性、透明性、耐熱性、耐光性、接着性等に優れており、LED封止材として用いることもできる。しかしながら、蛍光体と併用して蛍光体含有組成物とした場合の、蛍光体の分散安定性については検討の余地が残されていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、耐熱性、耐光性に優れ、時間の経過に伴う蛍光体の沈降・凝集が抑制された、蛍光体が均一に分散した蛍光体含有シリコーン系組成物を提供することを目的とする。
特開2008−198961号公報 特開2008−50593号公報 WO08/133138
耐熱性、耐光性に優れ、時間の経過に伴う蛍光体の沈降・凝集が抑制された、蛍光体が均一に分散した蛍光体含有シリコーン系組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有するポリシロキサン(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)、とを蛍光体の存在下でヒドロシリル化反応することにより得られることを特徴とする蛍光体含有シリコーン系組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
1).アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)、とを蛍光体の存在下でヒドロシリル化反応することにより得られることを特徴とする蛍光体含有シリコーン系組成物。
2).蛍光体が、アルケニル基で表面処理されていることを特徴とする1)に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
3).前記(a)成分、(b)成分および(a’)成分の総量100重量部に対し、蛍光体が5重量部以上200重量部以下であることを特徴とする1)または2)に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
4).前記(a)成分が、多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする1)〜3)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
5).前記(a)成分が、
式[AR1 2SiO−SiO3/2]a[R2 3SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1項に記載蛍光体含有シリコーン系組成物。
6).前記(a)成分が、
式[BR1 2SiO−SiO3/2]a[R2 3SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
7).前記(b)成分が、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
8).前記(b)成分が、分子末端にヒドロシリル基またはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
9).硬化剤(B)を含有することを特徴とする、1)〜8)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
10).1)〜9)のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系硬化性組成物により封止されてなることを特徴とする発光装置。
11).アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)、とを蛍光体の存在下でヒドロシリル化反応することを特徴とする蛍光体含有シリコーン系組成物の製造方法。
耐熱性、耐光性に優れ、時間の経過に伴う蛍光体の沈降・凝集が抑制された、蛍光体が均一に分散した蛍光体含有シリコーン系組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物は、ヒドロシリル基および/またはアルケニル基を有するポリシロキサン(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を有する化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)、とを蛍光体の存在下でヒドロシリル化反応することにより得られる。本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物は、耐熱性、耐光性に優れるともに、時間の経過に伴う蛍光体の沈降・凝集が抑制され、蛍光体が均一に分散していることから、該組成物で封止して得られる発光装置の色度ばらつきや輝度の低下を抑制することが出来る。
<蛍光体>
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物を得るために用いる蛍光体は、発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであれば特に限定されず、一般に公知の蛍光体を用いることができ、本発明の蛍光体含有組成物で封止してなる発光装置に求められる発光色を得るために任意のものを選択することができる。具体的に、例えば、黄色蛍光体としては、(Y,Gd)3Al512;Ce等のYAG系蛍光体、Tb3Al512;Ce等のTAG系蛍光体、CaGa24;Eu等の硫化物系蛍光体、(Sr,Ca,Ba)2SiO4;Eu等のシリケート系蛍光体、Ca−α−Sialon;Eu等のオキシナイトライド系蛍光体が挙げられ、緑色蛍光体としては、Y3(Al,Ga)512;Ce,SrGa24;Eu、(Ba,Sr)2SiO4;Eu、Ca3Sc2Si312;Ce、CaSc24;Ce、β−Sialon;Eu、(Sr,Ba)Si222;Eu、Ba3Si6122;Eu等が挙げられ、赤色蛍光体としては(Ca,Sr)2Si58;Eu、CaAlSiN3;Eu等のナイトライド系蛍光体、(Sr,Ca)S;Eu、(Sr,Ba)3SiO5;Eu、K2SiF6;Mn等が挙げられ、青色蛍光体としては、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2;Eu、(Ba,Sr)MgAl1017;Eu、SrSi9Al19ON31;Eu、(Sr,Ba)3MgSi28;Eu等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。得られるLEDの発光効率の観点からは1種を、演色性の観点からは2種以上の蛍光体を併用することが好ましい。
本発明に用いる蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。中央粒径(D50)が小さいと、蛍光体が励起光を十分に吸収出来ない場合や組成物中で蛍光体が凝集してしまう場合があり、中央粒径(D50)が大きいと、蛍光体に分散むらが生じる場合や封止の際にディスペンサー等の閉塞が発生する場合がある。また蛍光体の粒度分布(QD)は、組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上あり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。また、蛍光体の形状は、特に限定されず、任意の形状のものを用いることが可能である。
本発明に用いる蛍光体は、アルケニル基で表面修飾されていることが本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物中での蛍光体の分散安定性をさらに高めることから好ましい。蛍光体をアルケニル基で表面修飾する方法としては、特に限定されず、一般に公知の方法を用いることが出来るが、例えば、下記式(2)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物を、蛍光体へ加水分解・縮合させる方法が例示される。また、その際、下記式(3)で表される金属アルコキシドまたはその加水分解物あるいはこれらの縮合物を併用して蛍光体に加水分解・縮合してもよく、下記化学式(2)で表される金属アルコキシドと下記式(3)で表される金属アルコキシドの共縮合物を使用して蛍光体に加水分解・縮合してもよい。
1(OR6m-x(R7x (2)
2(OR8n (3)
(M1、M2はそれぞれ、Si,Ti,Al,Zr,Ge,Yから選択される金属であり、すべて同じものであってもよく、異なるものが混在していてもよい。またR6,R8はアルキル基又は水素であり、すべて同じものであってもよく、異なるものが混在していてもよい。またR7はアルケニル基を有する基であり、すべて同じであってもよく、異なるものが混在していてもよい。mはM1の価数と同じ整数,nはM2の価数と同じ整数である。さらにxは1以上の整数であり、m>xである。)
化学式(2)のアルキル置換金属アルコキシドの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルメチルジ−n−プロポキシシラン、ビニルジメチル−n−プロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、ビニルジメチルブトキシシラン、ビニルトリペンチルオキシシシラン、ビニルメチルジペンチルオキシシラン、ビニルジメチルペンチルオキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルメチルジ−n−プロポキシシラン、アリルジメチル−n−プロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン、アリルメチルジブトキシシラン、アリルジメチルブトキシシラン、アリルトリペンチルオキシシシラン、アリルメチルジペンチルオキシシラン、アリルジメチルペンチルオキシシラン、アリルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等を挙げることができる。また金属種がチタン、アルミニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、イットリウムの金属アルコキシド類も同様に用いることができる。
化学式(3)の金属アルコキシドの具体例としては、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シランを挙げることができる。また金属種がチタン、アルミニウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、イットリウムの金属アルコキシド類も同様に用いることができる。
本発明に用いられる蛍光体は、後述の(a)成分、(b)成分および(a’)成分の総量100重量部に対し、5重量部以上200重量部以下であることが好ましく、7.5重量部以上175重量部以下であることがさらに好ましく、10重量部以上150重量部以下であることがさらに好ましい。蛍光体の使用量が少ないと、本発明の蛍光体含有組成物を封止して得られる発光装置に求める発光色を得ることが困難になる場合があり、蛍光体の使用量が多いと、蛍光体含有組成物を得る際のヒドロシリル化反応が遅延する場合がある。
<アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)>
本発明に用いられるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)は、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサンであれば特に制限はなく、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物が例示され、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、本発明の効果をさらに高める点から、(a)成分が後述のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であることが好ましい。
アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン等が例示される。
ヒドロシリル基を有する直鎖構造のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、等が例示される。
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO2/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサン等が例示される。
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO2/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサン等が例示される。
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
<アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物>
本発明の(a)成分に用いられるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物は、分子中にアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式
[R9SiO3/2x[R10SiO3/2y
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;R9はアルケニル基および/またはヒドロシリル基、または、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する基;R10は、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができる。
前記アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、例えば、R11SiXa 3(式中R11は、上述のR9、R10を表し、Xaは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、R11SiXa 3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、合成する方法も知られている。さらには、前記トリシラノール化合物に、1官能性シランおよび/または2官能性シランを反応させることにより、部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンを合成することもできる。
その他の多面体構造ポリシロキサン系化合物の合成方法としては、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下、加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩を得、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するシリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより合成することができる。また、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることも可能である。
本発明に用いられるアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物の好ましい例としては、具体的に例えば、以下の式で表されるアルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物
[AR1 2SiO−SiO3/2]a[R2 3SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体構造ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)が例示される。
このような(a)成分を用いる場合、後述の(b)成分としてヒドロシリル基を有する化合物を用いることにより、蛍光体と後述のヒドロシリル化触媒の存在下、ヒドロシリル化反応によって本発明の蛍光体含有組成物を得ることができる。この際、前記多面体構造シロキサン系化合物のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数の多面体構造ポリシロキサン系化合物と複数のヒドロシリル基を有する化合物(b)が反応していても良い。また、必要に応じて後述のアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)を反応させてもよい。
本発明におけるヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物の好ましい例としては、具体的に例えば、
[BR1 2SiO−SiO3/2]a[R2 3SiO−SiO3/2]b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;R1は、アルキル基またはアリール基;R2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体構造ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)が例示される。
このような(a)成分を用いる場合、後述の(b)成分としてアルケニル基を有する化合物を用いることにより、蛍光体と後述のヒドロシリル化触媒の存在下、ヒドロシリル化反応によって本発明の蛍光体含有組成物を得ることができる。この際、前記多面体構造シロキサン系化合物の水素原子は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数の多面体構造ポリシロキサン系化合物と複数のアルケニル基を有する化合物(b)が反応していても良い。また、必要に応じて後述のアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)を反応させてもよい。
本発明においては、蛍光体と後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物に対して、ヒドロシリル基を有する化合物をヒドロシリル化反応させて得られる蛍光含有シリコーン系組成物が、製造の容易さや生産性の観点から好ましい。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
1は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR1としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
2は、アルケニル基および水素原子以外の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR2としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
<ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)>
本発明に用いられる、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)は、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)と反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物であれば特に限定はなく、蛍光体の存在下で(a)成分と反応して、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物を得るための成分である。
本発明に用いられるヒドロシリル基を有する化合物(b)としては、ヒドロシリル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられ、さらには、工業的入手性や反応させる際の反応性が良好である等の観点からヒドロシリル基を含有する環状シロキサンが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが例示される。
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
本発明に用いられるアルケニル基を有する化合物(b)としては、アルケニル基含有シロキサン化合物、具体的に例えば、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられる。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記、両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリシロキサンの具体例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリもしくはオリゴシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルジビニルトリシロキサンなどが例示される。
アルケニル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
<アルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)>
本発明に用いられる1分子中にアルケニル基またはヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)は、前述のアルケニル基および/またはヒドロシリル基を含有するポリシロキサン(a)とヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)が有する、ヒドロシリル基またはアルケニル基と反応してキャップすることにより、得られる蛍光体含有シリコーン系組成物の架橋密度を制御して物性を調整したり、新たな基を導入したりするための成分である。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
本発明に用いられるアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)としては、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(a’)成分が、1分子中にアルケニル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
また(a’)成分がポリシロキサンである場合、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
(a’)成分が、アルケニル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
これら(a’)成分である、1分子中にアルケニル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるヒドロシリル基を1個有する有機珪素化合物(a’)としては、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンであることが好ましい。このような(a’)成分が、1分子中にヒドロシリル基を1個有するシランである場合、具体的に例えば、トリメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシラン、トリエチルシラン、ジエチルフェニルシラン、エチルジフェニルシラン等が例示される。中でも、耐熱性、耐光性の観点から、トリメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシランが好ましい例として挙げられ、さらに、ガスバリア性や屈折率の観点から、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシランが好ましい例として挙げられる。
また(a’)成分がポリシロキサンである場合、ヒドロシリル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
(a’)成分が、ヒドロシリル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したハイドロジメチルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、SiO2単位、SiO3/2単位、SiO単位、SiO1/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのハイドロジメチルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
(a’)成分が、ヒドロシリル基を1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ハイドロ−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロ−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
これら(a’)成分である、1分子中にヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
<蛍光体含有シリコーン系組成物>
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物は、蛍光体と後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するポリシロキサン(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する化合物(b)、および必要に応じて1分子中にアルケニル基またはヒドロシリル基を1個有する有機ケイ素化合物(a’)とをヒドロシリル化反応させることにより得られる。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物は、分子中にアルケニル基またはヒドロシリル基を3個以上有していることが、後述の硬化剤(B)と反応して良好な硬化物が得られることから好ましい。
本発明の蛍光体含有組成物を得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、蛍光体と(a)成分を混合して(b)成分と反応させても良いし、蛍光体と(b)成分を混合して(a)成分と反応させても良い。(a’)成分を使用する場合は、これらの任意の段階で(a)成分または(b)成分と(a’)成分を反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(a’)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、蛍光体の存在化で(a)成分と(b)成分を反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(a’)成分を反応させる方法が好ましい。また、反応の簡便さからは、(a)成分、(a’)成分および蛍光体を共存させて(b)成分と反応させる方法、または、(a’)成分、(b)成分および蛍光体を共存させて(a)成分と反応させる方法が好ましい。
(b)成分の添加量は、(a)成分が有する(b)成分と反応するアルケニル基またはヒドロシリル基1個に対し、ヒドロシリル基またはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行する場合があり、添加量が多いと、得られる蛍光体含有シリコーン系組成物の硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
(a’)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分が有する(a’)成分と反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基1個に対し、アルケニル基またはヒドロシリル基の数が0.6個以下になるように用いることが好ましい。(a’)成分の使用により前述の効果が得られるが、添加量が多いと蛍光体含有シリコーン系組成物の硬化後の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
蛍光体含有シリコーン系組成物の合成時に用いる後述のヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分、(b)成分、及び(a’)成分が有するアルケニル基1モルに対して10-1〜10-10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になる恐れがあり、また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
このような蛍光体含有シリコーン系組成物は、各種化合物、具体的には、後述の(B)成分との相溶性を確保でき、また、(B)成分と反応させることにより、耐熱性や耐光性等に優れる硬化物を得ることができる。
このような蛍光体含有シリコーン系組成物は、温度20℃において液状とすることも可能である。蛍光体含有シリコーン系組成物を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
本発明で用いることができるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物には硬化遅延剤を添加してもよい。
硬化遅延剤は、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物の保存安定性の改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応性を調整するために用いることができる成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜103モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
<硬化剤(B)>
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物には、硬化剤(B)を加えることができる。
硬化剤(B)は、蛍光体含有シリコーン系組成物の主たる反応性基の種類よって使い分けることができる。蛍光体含有シリコーン系組成物がヒドロシリル基を主たる反応性基として有する場合は、アルケニル基を有する化合物、アルケニル基を主たる反応性基として有する場合は、ヒドロシリル基を有する化合物を硬化剤として用いることができる。
前記、アルケニル基を有する硬化剤は、アルケニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどのシロキサン化合物がさらに好ましく、特には、耐クラック性等の観点より直鎖構造のポリシロキサンであることが好ましい。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,1−ジビニルトリシロキサン等が例示される。
本発明における直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンとしては、得られる硬化物の靭性や耐クラック性の観点から、分子末端にアルケニル基を有することが好ましい。
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO2/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサン等が例示される。
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。
前記、ヒドロシリル基を有する硬化剤は、ヒドロシリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2個含有するものが好ましく、ヒドロシリル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどのシロキサン化合物が特に好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、1,1−ジハイドロジェン−1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン等が例示される。
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH32SiO1/2単位)とSiO2単位、SiO3/2単位、SiO2/2単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサン等が例示される。
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等が例示される。
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
硬化剤の添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、Si原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3.5個となる割合であることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において1Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは2Pa・s〜200Pa・sである。組成物の粘度が低いと、蛍光体が凝集してしまう恐れがあり、粘度が高いと、組成物のハンドリング性が悪化する恐れがある。
組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物には、必要に応じて接着性付与剤を添加することができる。
接着性付与剤は、例えば、基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
シランカップリング剤の添加量としては、蛍光体含有シリコーン系組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることもできる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。無機フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましく、さらに200m2/g以上であることが特に好ましい。
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、蛍光体含有シリコーン系組成物100重量部に対して、0.1〜100重量部、よりこの好ましくは、0.3〜50重量部、さらに好ましくは、0.5〜30重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、所望の物性が得られない場合がある。
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。ただし、混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
また、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりしてもよい。
<発光装置>
本発明の発光装置は、発光素子を本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物で封止して得られる。発光素子を蛍光体含有組成物で封止する方法としては、特に限定されないが、例えば、リフレクターに発光素子を実装し、蛍光体含有組成物を注入・硬化して封止してもよいし、リフレクターを用いずに、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、基盤に実装した発光素子を蛍光体含有組成物で直接封止してもよい。ここで、リフレクターや基盤としては、特に限定されず、汎用されているもの等を用いることができる。また、発光素子としては、特に限定されず、LEDの発光素子として汎用されているもの等を用いることができ、放射した光により蛍光体を励起できるものであれば良く、例えば、青色光発光素子や紫外光発光素子などが挙げられる。本発明の発光装置においては、1つの発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類の発光素子を実装してもよい。
本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物を用いた発光装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス、液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
次に本発明の蛍光体を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<蛍光体含有組成物中の蛍光体の分散安定性評価>
10mlサンプル瓶に下記の蛍光体含有組成物5gを入れ、25℃の室温で48時間静置した後の、蛍光体の沈降・凝集状態を確認した。蛍光体の沈降または凝集が全くみられない場合を○、蛍光体が沈降し液の上部に透明な上澄みを確認、または、目視で蛍光体の凝集が確認された場合を×と評価した。
<耐熱試験>
180℃に温度設定した熱風循環オーブン内にて、下記の硬化物を24時間養生し、外観の変化がみられない場合を○、変色がみられる場合を×と評価した。
<耐光試験>
スガ試験機(株)社製、メタリングウェザーメーター(形式M6T)を用いた。下記の硬化物をブラックパネル温度120℃、放射照度0.53kW/m2で、積算放射照度50MJ/m2まで照射後、外観の変化がみられない場合を○、変色がみられる場合を×と評価した。
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
ジメチルビニルクロロシラン1149g、トリメチルシリクロリド830gおよびヘキサン1400mLの溶液を激しく撹拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を4個有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1178.2)を白色固体として760g得た。
(製造例2)
テトラエトキシシラン70.6g、トリメトキシビニルシラン29.4g、メタノール80.8gの溶液を撹拌しながらに対し、0.1N HCl 3.92gと純水17.2gの混合溶液を滴下した。滴下終了後、さらに室温で24時間反応させた。別途、Intematix社製シリケート系黄色蛍光体 EY4750 30.6gをメタノール107.2gに撹拌して分散させ、そこに、前記の24時間反応させたアルコキシシラン縮合物メタノール溶液62.2gを滴下した。滴下終了後、さらに室温で2時間撹拌した。得られた液をメタノールで洗いながら吸引ろ過し、得られた黄色固体を150℃で2時間感想することにより、アルケニル基で修飾された蛍光体39.2g(理論蛍光体含量25.9g)を得た。
(実施例1)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン20.0gに溶解させ、撹拌しながら製造例2で得られたアルケニル基で修飾された蛍光体5.50g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.50μLを順に加えた。このようにして得られた溶液を撹拌しながら、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン8.17g、トルエン8.17gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間撹拌して反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール9.5μl、マレイン酸ジメチル2.2μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物21,9gを得た。また、得られた組成物5gに対し、硬化剤として1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,1−ジビニルトリシロキサン1.0gを加え、型枠に流し込み、150℃で5h加熱することで硬化物を得た。得られた硬化物について、上記の耐熱試験、耐光試験を行った評価結果を表1に示す。
(実施例2)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン20.0gに溶解させ、撹拌しながら製造例2で得られたアルケニル基で修飾された蛍光体8.68g、ビニルジフェニルメチルシラン10.5g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.50μLを順に加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン8.17g、トルエン8.17gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール9.5μl、マレイン酸ジメチル2.2μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物37.1gを得た。得られた組成物について、上記蛍光体の分散安定性評価を行った結果を下記表1に示す。また、得られた組成物5gに対し、硬化剤と1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,1−ジビニルトリシロキサン1.0gを加え、型枠に流し込み、150℃で5h加熱することで硬化物を得た。得られた硬化物について、上記の耐熱試験、耐光試験を行った評価結果を表1に示す。
(比較例1)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン20.0gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)0.50μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン8.17g、トルエン8.17gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール9.5μl、マレイン酸ジメチル2.2μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン16.5gを得た。
100mlプラカッブに、得られた多面体構造ポリシロキサン15.0g、Intematix社製シリケート系黄色蛍光体 EY4750 3.00gを加え、Thinky社製 あわとり練太郎 ARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分を順に行うことで、蛍光体含有シリコーン系組成物を得た。得られた組成物について、上記蛍光体の分散安定性評価を行った結果を下記表1に示す。また、得られた組成物5gに対し、硬化剤として1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,1−ジビニルトリシロキサン1.0gを加え、型枠に流し込み、150℃で5h加熱することで硬化物を得た。得られた硬化物について、上記の耐熱試験、耐光試験を行った評価結果を表1に示す。
Figure 0006298230
表1に示すように、本発明の蛍光体含有シリコーン系組成物は、時間の経過に伴う蛍光体の沈降・凝集が抑制された、蛍光体の分散安定性に優れた組成物であるとともに、それを用いて得られる硬化物は耐熱性、耐光性に優れる。

Claims (8)

  1. アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状シロキサン化合物(b)、表面処理によってアルケニル基が導入された無機系蛍光体、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)のヒドロシリル化反応物、および、
    アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有するシロキサン化合物を含む硬化剤(B)
    を含有することを特徴とする蛍光体含有シリコーン系組成物であって、
    ヒドロシリル化反応物は、アルケニル基またはヒドロシリル基を有し、
    ヒドロシリル化反応物がアルケニル基を有する場合、硬化剤(B)はヒドロシリル基を有し、ヒドロシリル化反応物がヒドロシリル基を有する場合、硬化剤(B)はアルケニル基を有する蛍光体含有シリコーン系組成物
  2. 前記(a)成分、(b)成分および(a’)成分の総量100重量部に対し、蛍光体が5重量部以上200重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
  3. 前記(a)成分が、
    式[AR SiO−SiO3/2[R SiO−SiO3/2
    (a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つはアルケニル基である;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
  4. 前記(a)成分が、
    式[BR SiO−SiO3/2[R SiO−SiO3/2
    (a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Bはアルケニル基および/または水素原子。ただし、少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基および水素原子以外の置換基、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンやシロキサン化合物と連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
  5. 前記(b)成分が、ヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
  6. 前記(b)成分が、分子末端にヒドロシリル基またはアルケニル基を有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の発光装置封止用蛍光体含有シリコーン系組成物。
  8. アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)、(a)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状シロキサン化合物(b)、および必要に応じてアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する有機ケイ素化合物(a’)を、表面処理によってアルケニル基が導入された無機系蛍光体の存在下でヒドロシリル化反応することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の蛍光体含有シリコーン系組成物の製造方法。
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