JP2018043936A - ビス−(4−ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩、その製造方法、並びにビス−(4−ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを前駆体とするビス−(4−スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法 - Google Patents

ビス−(4−ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩、その製造方法、並びにビス−(4−ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを前駆体とするビス−(4−スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れたラジカル重合性、カチオン交換能、高い水溶性を有する架橋性モノマーで、イオン交換膜やアルカリ金属イオン電池の固体電解質や燃料電池膜などの製造に極めて有用なビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又は塩の製造方法、並びにその前駆体のビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又は塩とその製造方法の提供。
【解決手段】式(1)で表されるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩、及びその製造方法、並びにビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法。
Figure 2018043936

[X及びYは各々独立に塩素、臭素又はヨウ素;MはH、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオン]
【選択図】なし

Description

本発明は、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩、4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを用いたその製造方法、並びにビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを前駆体としたビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法に関する。
イオン交換膜は、脱塩および減塩による純水製造または海水淡水化、工業的な物質精製、医薬、食品加工、メッキ溶剤処理、廃液処理などに用いられるほか、最近では、固体高分子型燃料電池や固体高分子型二次電池の電解質にも用いられ、幅広い産業用途で利用されている。
これらイオン交換膜は、イオン交換性官能基を有するモノマー類と架橋剤の共重合や、イオン交換性官能基を導入可能な膜状ポリマーを形成後、イオン性官能基を導入する方法等により製造されている。この際、架橋剤は、分子内に複数のラジカル重合性不飽和基を有するモノマー(以下、架橋性モノマーということがある)を使用するが、工業的に効率よくイオン交換膜を製造するには、架橋性モノマーの水溶性が極めて重要となる。
例えば、特許文献1では、水溶性のスチレンスルホン酸リチウムとイオン性官能基を持たない非水溶性のジビニルベンゼンをラジカル重合させることでカチオン交換膜を製造している。しかしながら、モノマーと架橋剤の溶解度の差異から、反応に特殊な高沸点溶媒を必要とすること、また、共重合分子中のイオン交換性官能基の比率が低いことに起因する、カチオン交換膜のイオン交換容量の低下や、電気抵抗の増大などの課題がある。上記のような課題は、イオン性官能基を有する水溶性架橋性モノマーの使用により改善できるが、カルボキシル基やスルホン酸基など、イオン交換性官能基を有する水溶性の架橋性モノマーは市販されておらず、報告例も殆どない。
また、アルカリ金属イオン電池の電解質のようなアルカリ金属イオン伝導性材料の原料として、アルカリ金属伝導性を持つスルホンイミド型モノマー群は、産業上極めて有用である。これらの分子内に単一あるいは複数のラジカル重合性不飽和基とイオン伝導性を持つスルホンイミド構造を有するモノマー類の有用性はこれまでに数例報告されている。
たとえば、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩は、高分子固体電解質の架橋剤として報告例がある(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
特許文献2によれば、リチウムビス(スチレンスルホニル)イミドモノマーによって架橋されたイオン伝導性ポリマーは、液体電解質を有するリチウムイオン電池の課題であった金属リチウムの樹枝状析出を抑制できるため、充放電効率、サイクル寿命、安全性の面で優れている旨記載されている。
また、特許文献3によれば、リチウム4−ニトロ−4‘−ビニルビフェニルスルホニルイミドを含む電解質を用いたリチウムイオン電池において、金属リチウムの樹枝状析出を抑制し、安全性が向上することを報告している。
このように、イオン伝導性材料として有用なスルホンイミド構造、特にビニル基を有するスチレンスルホンイミド構造は、ビニル基を有するスチレンスルホン酸誘導体から製造されている。
Figure 2018043936
例えば、特許文献2では、上記スキーム1で示したように、4−ビニルベンゼンスルホンクロリドと、4−ビニルベンゼンスルホンアミドを、塩基存在下、イミド化することでビススチレンスルホンイミド塩を製造している。また、特許文献3においても、4−ビニルベンゼンスルホンクロリドを出発原料に用いている。
しかしながら、反応基質である4−ビニルベンゼンスルホンクロリドの加水分解物であるスチレンスルホン酸またはその塩とビススチレンスルホンイミド塩の分離が困難であること、反応基質や生成したイミド体のポリマー化、アルカリ金属水素化物のような爆発性や腐食性の高い塩基を用いる等の課題があり、実用性に乏しい。特に、反応基質や生成したイミド体のポリマー化は、収率および純度低下の要因になるだけではなく、反応の進行とともに系内の粘度が上昇し、反応継続やろ過操作が困難となるため、製造上大きな課題となる。また、工業的に入手可能な出発原料としてスチレンスルホン酸ナトリウム塩は半水塩であり、この乾燥工程に非常に時間がかかる点や工程(3)総収率が30%程度と低収率でしか製造できない点に関しても実用性に乏しい。
米国特許第6221248号明細書 欧州特許出願公開第3031798号明細書 欧州特許第2742437号明細書
ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩は、カチオン交換性官能基であるスルホンイミド又はその塩を有する水溶性モノマーであり、加えてイオン伝導性を有する架橋性モノマーであるため、上記課題を解決する上で産業上極めて有用なモノマーである。また、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドはスチレンスルホンイミド骨格形成に極めて重要な前駆体であり、製造上の上記課題を解決するうえで、工業的に有用な化合物である。
Figure 2018043936
上記スキーム2は、本発明の一部を示した製造方法の簡略図である。本発明によれば、上記スキーム2の(i)〜(iv)工程までラジカル重合性不飽和基を持たない反応化合物により構成されるため、反応化合物の重合による収率、純度低下を回避し、スキーム2の(i)〜(iv)工程における総収率も50%程度と高く、前述のスキーム1記載の従来法と比較し高収率でビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩、ならびにビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩を製造できる。
本発明はビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の実用的な製造方法を提供するものであるが、その前駆体として有用なビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩とその製造方法に関する報告例はなく、新規な化合物および製造方法と考えられる。
本発明は、上記の経緯及び課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れたラジカル重合性、カチオン交換能を有する水溶性モノマーであり、架橋剤として産業上極めて有用なビス-(4-スチレンスルホニル)イミド及びその塩(以下「BVBSI」ということがある)の簡便かつ実用的な製造方法、並びにその前駆体であるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド及びその塩とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドと、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドから誘導される4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基と反応させることで得られるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド塩が、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造における前駆体として有用であること、即ち、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドと塩基を反応させてビニル化することによって、高収率かつ高純度で簡便に、ポリマー分の生成を抑制し、あるいはポリマー分が低減されたビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記式(1)
Figure 2018043936
〔式(1)中、XおよびYは、各々独立して塩素、臭素またはヨウ素原子を表し、Mは水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。〕
で表されるビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩に係る。
さらに上記式(1)中、MはLi(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)のようなアルカリ金属のイオン、XおよびYはいずれも臭素であることが好ましく、特にMはLi(リチウム)イオンであることが好ましい。
また本発明は、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基と反応させる、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法の製造方法に係る。
さらに本発明は、下記式(1)
Figure 2018043936
〔式(1)中、XおよびYは、各々独立して塩素、臭素またはヨウ素原子を表し、Mは水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。〕
で表されるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩を、重合禁止剤の存在下で、塩基と反応させる、下記式(2)
Figure 2018043936
〔式(2)中、Mは前記式(1)と同じ。〕
で表されるビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法に係る。ここで、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩は、塩基と反応させることで、ビニル化するものである。
さらに本発明は、4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基と反応させてビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを生成させた後、重合禁止剤の存在下で、塩基と反応させる、下記式(2)
Figure 2018043936
〔式(2)中、Mは前記式(1)と同じ。〕
で表されるビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法に係る。
さらに上記のビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法および、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法においては、式(1)中、MはLi(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)のようなアルカリ金属のイオン、XおよびYはいずれも臭素であることが好ましく、特にMはLi(リチウム)イオンであることが好ましい。
なお上記では、4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドから、式(1)を製造し、その後に式(2)を製造するが、パラ体以外にも、オルト体、メタ体が生成することがあり、これらからパラ体以外も製造できる。さらに、反応原料として4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリド以外の2−ハロエチルベンゼンスルホンクロリド、3−ハロエチルベンゼンスルホンクロリド、あるいは4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド以外の2−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、3−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを、またこれらクロリドとアミドとの任意の組合せにより、式(1)、式(2)のパラ体以外の、オルト体、メタ体や、パラ体も含めたこれらの任意の組合せの構造を有するイミドを製造することも可能である。
ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩は、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の前駆体として、さらに、ビス(4−ヒドロキシエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩、ビス(4−アミノエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩など、ビススルホンイミド構造を持つ機能性ポリマー原料の前駆体として極めて重要な化合物である。
本発明によれば、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを高収率かつ高純度で効率よく得ることができるため、本化合物及び製造法は工業的に極めて有用である。
また、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩は、優れたラジカル重合性、カチオン交換能、高い水溶性を有する架橋性モノマーであり、イオン交換膜などの機能性膜、アルカリ金属イオン電池のイオン伝導性材料などの有用な原料である。
本発明のビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩は前駆体とする製造方法により、高収率かつ高純度でポリマー分を低減したビス-(4-スチレンスルホニル)イミドを製造でき、産業上極めて有用である。
実施例1で得られた4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリド(ClBEBSと略称)のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、Hは、それぞれ図2のプロトンH、H、H、Hに対応している。 実施例1で得られた4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリドのプロトンNMRスペクトルから同定した構造式を示す。 実施例2で得られた4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミド(BEBSAと略称)のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、H、Hは、それぞれ図4のプロトンH、H、H、H、Hに対応している。 実施例2で得られた4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミドのプロトンNMRスペクトルから同定した構造式を示す。 実施例3で得られたカリウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド(BBEBSI−Kと略称)粗結晶のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、Hは、それぞれ図6のプロトンH、H、H、Hに対応している。 実施例3で得られたカリウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド粗結晶のプロトンNMRスペクトルから同定したBBEBSI−Kの構造式を示す。 実施例4で得られたカリウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミド(BVBSI−Kと略称)粗結晶のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、H、Hは、それぞれ図8のプロトンH、H、H、H、Hに対応している。 実施例4で得られたカリウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミド粗結晶のプロトンNMRスペクトルから同定したBVBSI−Kの構造式を示す。 実施例5で得られたリチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド(BBEBSI−Liと略称)粗結晶のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、Hは、それぞれ図10のプロトンH、H、H、Hに対応している。 実施例5で得られたリチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド粗結晶のプロトンNMRスペクトルから同定したBBEBSI−Liの構造式を示す。 実施例6で得られたリチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミド(BVBSI−Liと略称)粗結晶のプロトンNMRスペクトルを示し、図中のプロトンH、H、H、HAA、HABは、それぞれ図12のプロトンH、H、H、HAA、HABに対応している。 実施例6で得られたリチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミド粗結晶のプロトンNMRスペクトルから同定したBVBSI−Liの構造式を示す。
本発明は、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩及びその製造方法、並びにビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩を前駆体として用いたビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法に係る。
<ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法>
ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩の原料となる4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドは、公知の方法より入手できる。例えば、ジクロロメタンに溶解したハロエチルベンゼンにクロロ硫酸を0℃で滴下し、室温で3時間反応させる方法によって製造できる(例えば、Canadian Journal of Chemistry, 1954, vol.32, p.143−145、国際特許出願公開2015/138895号を参照)。また、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドは、公知の方法より入手できる。例えば、テトラヒドロフランに溶解した4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドにアンモニア水溶液を0℃で滴下し、1時間室温で反応させることで製造できる(例えば、Journal of Medicinal Chemistry, 1989 , vol.32, # 5 p. 1108−1118や米国特許第8686147号明細書を参照)。
本発明の製造方法に用いられる、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリド、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドにおいて、ハロエチル基のハロゲンは塩素、臭素、ヨウ素の何れかを用いればよいが、ビニル化反応(アルカリを用いる脱ハロゲン化反応をいう)の反応性の面で臭素が好ましい。
また、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドは(2−ハロエチル)ベンゼンのクロロスルホン化により製造できる。ここで、(2−ハロエチル)ベンゼンの内でも(2−ブロモエチル)ベンゼンは、(2−クロロエチル)ベンゼンや(2−ヨードエチル)ベンゼンと比較して、製造が容易で、工業的な入手が容易であるため、原料の入手容易性の観点からもハロエチル基のハロゲンは臭素が好ましい。
4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基で処理し、イミド化することにより、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩を製造できる。以下、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法について詳しく説明する。
本発明の製造方法において、まず、撹拌機等の撹拌手段、冷却管等の冷却手段を備えた(取り付けた)反応器に、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、上記した4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、塩基、溶媒を仕込み、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリド又はその溶液を滴下等して、イミド化反応を行い、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを製造できる。また、攪拌機等の撹拌手段、冷却管等の冷却手段を備えた(取り付けた)反応器に、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリド、溶媒を仕込み、塩基又はその溶液を滴下等して、イミド化反応を行い、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを製造してもよい。
また本発明の製造方法において、撹拌機等の撹拌手段、冷却管等の冷却手段を備えた(取り付けた)反応器に、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリド、塩基、溶媒を仕込み、イミド化反応を行い、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを製造してもよい。
本発明の製造方法において、イミド化反応時に用いる塩基は特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属類の水素化物、水酸化物や、炭酸塩、リン酸塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩や、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ピリジンのようなアミン類などが挙げられ、アルカリ金属の水酸化物、水素化物、リン酸塩などが好ましく用いられる。また、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩に特に高い水溶性が求められる場合は、水酸化リチウム等のリチウム塩基を用いるのが良い。
塩基の添加量は、特に限定されないが、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドに対して1.0当量〜10.0当量であり、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の純度の観点から、好ましくは2.0当量〜4.0当量である。また、反応促進のため、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、トリエチルアミン等を触媒として上記の塩基とともに用いることもできる。触媒の添加量は、特に限定しないが、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の純度の観点から、0.01当量〜1当量が好ましい。
本発明の製造方法に用いられる、イミド化反応時の溶媒は特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖状脂肪族炭化水素類、2−メチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン等の分岐状脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化合物類、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン等の芳香族ハロゲン化合物類、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性の極性の溶剤を用いることができる。その中でも非プロトン性の極性の溶剤を用いるのが好ましく、テトラヒドロフランまたは酢酸エチル、アセトニトリルを用いるのがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドの濃度は、仕込全量に対して5重量%〜79重量%であり、反応促進と副生成物抑制の観点から10重量%〜70重量%が好ましい。反応温度は−20℃〜120℃であり、好ましくは20℃〜100℃である。
上記の方法で得たビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩は、反応終了後の反応液から、ろ過、抽出、晶析など常法により分離、精製することができる。
反応基質である4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリドは水洗により加水分解し、4−ハロエチルベンゼンスルホン酸またはその塩となって水層に溶解し、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドは有機層に溶解する。この際、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドは、弱酸を用いた洗浄を行うことで塩を形成し、水層への溶解が可能となる。
精製段階において、反応基質の除去が困難となる場合は、水洗、酸洗浄により、反応基質由来の不純物を水層へと除外し、精製を行っても良い。酸洗浄に用いる弱酸は特に限定しないが、10%塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸等が挙げられる。各種水、有機溶剤、水及び有機溶剤混合溶媒等を用いて、再結晶精製やリパルプ精製を行う際は、有機溶剤は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の水溶性溶剤や、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン等の有機溶剤の単一あるいは混合溶媒があげられる。
<ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法>
次に、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法について詳しく説明する。
本発明の製造方法において、まず、撹拌機等の撹拌手段、冷却管等の冷却手段を備えた(取付けた)反応器にビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩と塩基、ラジカル重合禁止剤を仕込み、十分脱酸素し、所定温度まで昇温することでビニル化反応(アルカリを用いる脱ハロゲン化反応をいう)を行い、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩を製造することができる。
また本発明の製造方法において、反応器にビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩とラジカル重合禁止剤を先に仕込み、十分脱酸素し、所定温度まで昇温した後に、塩基または有機溶媒に溶解した塩基を連続的に滴下してビニル化を行っても良い。
本発明の製造方法に用いられることがある重合禁止剤としては特に限定されるものではなく、水溶性タイプを好適に用いることができる。例えば、亜硝酸アルカリ金属塩、ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、アントラキノンスルホン酸塩、アンモニウムニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、2−t−ブチルハイドロキノン、4−t−ブチルカテコールなどがあげられる。重合禁止剤の添加量は、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩に対して10ppm〜1重量%である。
本発明の製造方法に用いられる、塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属類の水素化物、水酸化物や、炭酸塩、リン酸塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属の塩や、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ピリジンのようなアミン類が挙げられる。これらの内でもアルカリ金属の水酸化物が特に好ましい。また、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属を用いる場合、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属と同じ金属種の塩基を用いるのが良い。ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩に特に高い水溶性が求められる場合は、水酸化リチウム等のリチウム塩基を用いるのが良い。
塩基の添加量は、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩に対して1.0当量〜10.0当量であり、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の純度の観点から、好ましくは2.0当量〜4.0当量である。反応温度は20℃〜120℃であり、重合抑制の観点から、好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は1時間〜10時間であり、重合抑制の観点から、好ましくは1時間〜5時間である。
さらに本発明の製造方法において、先述の<ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法>に示したように、撹拌機等の撹拌手段、冷却管等の冷却手段を備えた(取り付けた)反応器に、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、4−ハロエチルベンゼンスルホンアミド、4−ハロエチルベンゼンスルホニルクロリド、塩基、溶媒を仕込み、イミド化反応を行い、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを生成させたのち、引き続いて、ラジカル重合禁止剤を仕込み、十分脱酸素し、所定温度まで昇温した後に、塩基または有機溶媒に溶解した塩基を連続的に滴下してビニル化を行っても良い。
上記反応は、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩の反応終了後の反応液を単離、精製することなく、一つの工程でイミド化反応とビニル化反応を行い、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドを製造するものである。その際、反応温度、反応時間、添加する重合禁止剤の添加量、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドの濃度、ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドに対する塩基の当量などの製造条件は、上記に記載のビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の製造方法に従い、必要に応じて塩基、重合禁止剤の追加添加、有機溶媒の留去による濃度の調整、反応温度の調整を行っても良い。ただし、塩基の添加量としてはイミド化反応とビニル化反応において各々使用するため多目とするのが良く、例えば4.0当量〜8.0当量とするとよい。
また塩基の添加時期としては反応初期に添加してもよいが、反応初期及び重合禁止剤を添加するときの両方に分けて添加してもよい。
以上の反応工程において、脱酸素の条件としては特に制限されるものではなく、公知の減圧法や不活性ガスとの置換などを適宜用いればよい。この目的は原料劣化、重合等を抑制するためである。反応容器内(空間)の酸素濃度は、例えば、ガルバニ電池式センサ(JKO-O2LD3, 株式会社JIKCO製)を用い、酸素濃度が1%以下になるように、窒素やアルゴン等の不活性ガスにて置換するとよい。
上記の方法で得たビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩は、反応終了後の反応液から、ろ過、抽出、晶析など常法により分離、精製することができる。結晶が含水塩として得られる場合、得られる結晶の含水率を低減するために、水溶性溶剤による洗浄や真空乾燥等によりさらに水分を削減しても良い。水溶性溶剤は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等などが挙げられる。
さらに、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩に含まれる無機塩等の無機及び有機不純物を取り除くため、水、有機溶剤、水及び有機溶剤混合溶媒等を用いて再結晶精製やリパルプ精製しても良い。ここで、有機溶剤は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の水溶性溶剤や、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン等があげられる。精製する場合、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミド塩の重合を抑制するため、重合禁止剤を10ppm〜1重量%添加すると良い。
ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのリチウム塩は、上記の方法により支障なく製造、分離、精製できるが、反応終了後の反応溶液を純水による塩溶解、抽出、分液等の精製工程において、リチウム無機塩を用いた、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのリチウム塩の塩析による精製も可能である。すなわち、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのリチウム塩を含んだ反応溶液(有機溶剤溶液または水溶液)に、リチウム無機塩を添加することで、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのリチウム塩の固体または液体層が溶液から遊離され、続いて、ろ過、濃縮等の分離操作を行うことで、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドのリチウム塩を得ることもできる。
リチウム無機塩は特に限定されるものではないが、塩化リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。リチウム無機塩の添加により、溶解熱が発生する場合、重合抑制の観点から、リチウム無機塩添加時の温度を20℃〜50℃に調整し、重合禁止剤を10ppm〜1重量%添加すると良い。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
<核磁気共鳴スペクトルによる目的物の同定と純度の測定>
(1)試料の調製
内部標準物質として約0.05重量%のテトラメチルシランを含むジメチルスルホキシド−d6(99.5重量%)約0.7mLに試料を溶解し、NMR測定用サンプルを調製した。
(2)測定機器
機種=Bruker製AV−400M
積算回数=16
(3)純度の算出
次式によって生成物の純度を算出した。
純度(wt%)=(B/M)×(a/a)/(b/b)×M/S×100
a:任意の目的物ピークの積分値
b:任意の内部標準物質の積分値
:aで選択した任意の生成物ピークの水素数
:bで選択した任意の生成物ピークの水素数
:目的物の分子量
:内部標準物質の分子量
B:内部標準の採取量(g)
S:試料の採取量(g)
実施例1
〔4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管、滴下管を取り付けた100mLガラスフラスコに、2−ブロモエチルベンゼン(東京化成工業製)10.0g、ジクロロメタン30gを加え、室温で撹拌、溶解した。この溶液を、0℃に冷却し、クロロ硫酸(東京化成工業製)10.8gを滴下し、滴下終了後、室温で3時間撹拌した。反応終了後、0℃に冷却したイオン交換水200gに投入し、ジクロロメタン300g×2回で抽出した。続いて、有機層を濃縮し、4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリドの白色固体9.6g(収率62.6%)を得た。化合物の同定はプロトンNMR(H−NHR)で行った。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.54(2H, d)、δ7.24(2H, d)、3.75−3.71(2H,t)、3.14−3.11(2H,t)
実施例2
〔4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管、滴下管を取り付けた100mLガラスフラスコに、実施例1で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリド5.0g、テトラヒドロフラン10gを加え、室温で撹拌、溶解した。この溶液を0℃に冷却し、28%アンモニア水溶液(キシダ化学製)5gを30分かけて滴下し、滴下終了後、室温で2時間撹拌した。反応終了後、イオン交換水30g、酢酸エチル30gを加え、分液操作を行い、4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミドを含む有機層を得た。この有機層を濃縮し、4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミドの白色固体4.1g(収率87.0%)を得た。化合物の同定はプロトンNMRで行った。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.76(2H, d)、δ7.47(2H, d)、δ7.32(2H, s)、3.80−3.76(2H,t)、3.23−3.19(2H,t)
実施例3
〔カリウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた100mLガラスフラスコに、実施例2で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミド1.0g、リン酸三カリウム(和光純薬工業製)1.6g、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(和光純薬工業製)46mg、酢酸エチル9.5gを加え、50℃で撹拌した。
次に、実施例1で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリド1.1gをテトラヒドロフラン9.5gに溶解し、反応器のスラリー溶液に滴下し、滴下終了後、50℃で12時間撹拌した。反応終了後、イオン交換水40gを加え、1時間室温で撹拌し、リパルプ洗浄を行った。リパルプ操作後、スラリー溶液をろ過した。ろ紙上の残渣をイオン交換水10g、酢酸エチル10gでリンス洗浄し、1時間減圧乾燥を行い、カリウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの白色固体1.9g(収率94.0%、純度96.1%)を得た。化合物の同定はプロトンNMRで行った。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.58(2H, d)、δ7.26(2H, d)、3.76−3.72(2H,t)、3.17−3.13(2H,t)
実施例4
〔カリウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた100mlガラスフラスコに上記で得たカリウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド0.5g、水酸化カリウム0.1g、ハイドロキノン(和光純薬製)11.6mg、メタノール10gを仕込んで60℃で3時間加熱撹拌した。
反応終了後、イオン交換水20g、酢酸エチル20gを加え、1時間室温で撹拌し、リパルプ洗浄を行った。リパルプ操作後、スラリー溶液をろ過した。ろ紙上の残渣をイオン交換水10g、酢酸エチル10gでリンス洗浄し、1時間減圧乾燥を行いカリウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミド0.33g(収率95.9%、純度97.0%)を得た。化合物の同定は、プロトンNMRで行った。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.61(4H, d)、δ7.45(4H, d)、δ6.79−6.72(2H, dd)、5.90(2H,d)、5.34(2H,d)
実施例5
〔リチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた100mLガラスフラスコに、実施例2で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミド1.0g、水酸化リチウム(アルドリッチ製)0.18g、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(和光純薬工業製)46mg、テトラヒドロフラン4.5gを加え、窒素雰囲気下室温で撹拌した。
次に、実施例1で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリド1.1gをテトラヒドロフラン4.5gに溶解し、反応器のスラリー溶液に滴下し、滴下終了後、室温で5時間撹拌した。反応終了後、イオン交換水10gと塩化リチウム2.5gを加え、分液操作を行い、リチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドを含む有機層を得た。これを濃縮し、得られたリチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの粗結晶をトルエンで洗浄することで、リチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの白色固体1.7g(収率80.3%、純度93.1%)を得た。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.58(2H, d)、δ7.26(2H, d)、3.76−3.72(2H,t)、3.17−3.13(2H,t)
実施例6
〔リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの合成例〕
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた100mlガラスフラスコに実施例5で製造したリチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミド1.0g、水酸化リチウム0.1g、ハイドロキノン(和光純薬製)23.2mg、メタノール20gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、イオン交換水20g、塩化リチウム5.0g、テトラヒドロフラン20gを加え、分液操作を行い、リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドを含む有機層を得た。これを濃縮し、得られたリチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの白色固体0.63g(収率88.2%、純度95.4%)を得た。化合物の同定はプロトンNMRで行った。
(分析結果)
H−NMR(400MHz、DMSO−d6):δ7.61(4H, d)、δ7.45(4H, d)、δ6.79−6.72(2H, dd)、5.90(2H,d)、5.34(2H,d)
実施例7
〔リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの合成例〕
Figure 2018043936
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた100mLガラスフラスコに、実施例2で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホンアミド1.0g、水酸化リチウム(アルドリッチ製)0.36g、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(和光純薬工業製)46mg、テトラヒドロフラン4.5gを加え、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
次に、実施例1で製造した4−ブロモエチルベンゼンスルホニルクロリド1.1gをテトラヒドロフラン4.5gに溶解し、反応器のスラリー溶液に滴下し、滴下終了後、室温で5時間撹拌した。プロトンNMRにて、リチウムビス-(4-ブロモエチルベンゼンスルホニル)イミドの生成を確認後、ハイドロキノン(和光純薬製)23.2mgを加え、60℃に昇温後、引き続き3時間撹拌した。反応終了後、プロトンNMRにて分析を行うと、反応収率73%でリチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドが得られた。
比較例1
Figure 2018043936
リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの合成は、上記したスキーム1の方法に従い、上記スキーム4に示される方法にて合成した。
スキーム4:6−I及び6−II (4−ビニルベンゼンスルホニルクロリドの合成)
原料には市販の4-スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学製)を使用した。本製品は、半水和物であり、白色湿潤状結晶であるため、1000mlガラスフラスコに4-スチレンスルホン酸ナトリウム50.0gを仕込み、エバポレーターを用いて、ウォーターバス設定温度60℃、減圧度10トールの条件で48時間乾燥させた。乾燥させた4−スチレンスルホン酸ナトリウムの重量は45.0gであった。
次に、還流冷却管、窒素導入管、滴下管を取り付けた500mlガラスフラスコに、上記で乾燥させた4-スチレンスルホン酸ナトリウム45.0g、トルエン90g、N,N−ジメチルホルムアミド16g、Irganox1010(BASF製)1.0gを加え、窒素雰囲気下0℃に冷却し撹拌した。
次に、塩化チオニル(東京化成工業製)35.6gを0℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌し、反応終了後、室温でイオン交換水110gを加えた。次に、分液操作を行ったが、水層と有機層の間に4-スチレンスルホン酸ナトリウムまたは4−ビニルベンゼンスルホニルクロリドのポリマーが中間層として多量に生成したため、このポリマーをろ過で除去し、再度分液操作を行った。分液操作により得られた有機層を、20%塩化ナトリウム水溶液110gで洗浄し、分液操作後、得られた有機層に窒素バブリングを6時間実施し、4−ビニルベンゼンスルホニルクロリドのトルエン溶液78.5g(収率65%、純度36.6%、4−ビニルベンゼンスルホニルクロリド純分換算28.7g)を得た。
スキーム4:6−III (4−ビニルベンゼンスルホンアミドの合成)
還流冷却管、窒素導入管、滴下管を取り付けた100mLガラスフラスコに、上記の4−ビニルベンゼンスルホニルクロリド30.0g、テトラヒドロフラン30gを加え、室温で撹拌、溶解した。この溶液を0℃に冷却し、28%アンモニア水溶液(キシダ化学製)30gを1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で2時間撹拌した。反応終了後、イオン交換水30g、酢酸エチル30gを加え、分液操作を行い、4−ビニルベンゼンスルホンアミドを含む有機層を得た。この有機層を濃縮し、4−ビニルベンゼンスルホンアミドの白色固体6.0g(収率60.9%)を得た。
スキーム4:6−IV (リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドの合成)
還流冷却管、窒素導入管、滴下管を取り付けた100mlガラスフラスコに上記で得た4-ビニルベンゼンスルホンアミド2.0g、水酸化リチウム(アルドリッチ製)0.5g、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(和光純薬工業製)67mg、テトラヒドロフラン20gを加え、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
次に、上記の4−ビニルベンゼンスルホニルクロリドの37%トルエン溶液6.0gをテトラヒドロフラン3gに溶解し、反応器のスラリー溶液に滴下し、滴下終了後、室温で12時間撹拌した。12時間撹拌後、反応系の粘度は反応開始時よりも高く、反応系でのポリマー化が進行し、また、原料の4-ビニルベンゼンスルホンアミドまたは4−ビニルベンゼンスルホニルクロリド由来の副生成物と目的物の分離が困難であったため、リチウムビス-(4-スチレンスルホニル)イミドは低収率、低純度でしか得られなかった。
ビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩は、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩の前駆体として、さらに、ビス(4−ヒドロキシエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩、ビス(4−アミノエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩など、スルホンイミド構造を有する機能性ポリマー原料の前駆体として極めて重要である。特に、ビス-(4-スチレンスルホニル)イミドまたはその塩は、優れたラジカル重合性、カチオン交換能を有する水溶性の架橋性モノマーであり、イオン交換膜などの機能性膜、アルカリ金属イオン電池のイオン伝導性材料などの有用な原料であることから、本発明のビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドまたはその塩は産業上極めて有用である。

Claims (6)

  1. 下記式(1)
    Figure 2018043936
    〔式(1)中、XおよびYは、各々独立して塩素、臭素またはヨウ素原子を表し、Mは水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。〕
    で表されるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩。
  2. 式(1)中、Mはアルカリ金属イオン、XおよびYはいずれも臭素である、請求項1に記載のビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩。
  3. 4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基と反応させる、請求項1または請求項2に記載したビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法。
  4. 下記式(1)
    Figure 2018043936
    〔式(1)中、XおよびYは、各々独立して塩素、臭素またはヨウ素原子を表し、Mは水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す。〕
    で表されるビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミド又はその塩を、重合禁止剤の存在下で、塩基と反応させる、下記式(2)
    Figure 2018043936
    〔式(2)中、Mは前記式(1)と同じ。〕
    で表されるビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法。
  5. 4−ハロエチルベンゼンスルホンクロリドと4−ハロエチルベンゼンスルホンアミドを塩基と反応させてビス-(4-ハロエチルベンゼンスルホニル)イミドを生成させた後、重合禁止剤の存在下で、塩基と反応させる、下記式(2)
    Figure 2018043936
    〔式(2)中、Mは前記式(1)と同じ。〕
    で表されるビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法。
  6. 式(2)中、Mはアルカリ金属イオン、XおよびYはいずれも臭素である、請求項4または請求項5に記載のビス-(4-スチレンスルホニル)イミド又はその塩の製造方法。
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