JP2018039967A - 接着剤およびそれを用いてなる積層体 - Google Patents

接着剤およびそれを用いてなる積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリプロピレン樹脂部材、特に表層部分が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材の接合において、接合性に優れ、工程が簡略で汎用性があり、耐水性や耐薬品性にも優れ、低温での熱圧着が可能で、かつ環境に配慮された接着剤を提供する。【解決手段】表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材のための接着剤であって、ポリオレフィン樹脂(I)と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体からなり、ポリオレフィン樹脂(I)が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、オレフィン成分が、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)とからなり、(B)がブテンを含み、エチレンを含まず、(A)と(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、(A)と(B)との合計100質量部に対し、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が、1質量部以上であることを特徴とする接着剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン樹脂部材用の接着剤、それから形成された接着層を有するポリプロピレン樹脂部材や金属部材、およびその接着層を介して接合された積層体に関する。
自動車、家電製品、OA機器等には、鋼板を始めとする多くの金属部材が使用されている。金属板のプレス加工により所定の形状が付与された金属部材は、多くの場合、他の金属部材や樹脂部材と接合された複合成形体として使用されており、樹脂部材としては、特に機械的性質、成形性等に優れ、軽量かつ低コストであるポリプロピレン樹脂が広く用いられている。
ポリプロピレン樹脂は、分子内に極性基を持たず、化学的に安定であるために、接着剤による接合がしにくい樹脂であり、特に、射出成形等により成形したポリプロピレン樹脂部材においては、射出成形の際の射出応力によって、表層部分の高分子鎖が高度に配向・結晶化するため、より一層接着が困難になることが知られている。
特許文献1や2には、前記した表層部分の高分子鎖が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂と金属部材とを、熱圧着やインサート成形などにより接合する技術が開示されている。
すなわち、特許文献1では、金属部材とポリプロピレン樹脂部材が塩素化された酸変性ポリプロピレン樹脂を介して接着された積層体が開示されている。また、金属部材に塩素化された酸変性ポリプロピレン樹脂を含む塗料を塗布して接着層を形成し、ポリプロピレン樹脂をインサート成形もしくは熱圧着することで金属部材とを接合している。
また、特許文献2では、下地処理皮膜を有するアルミニウム合金部材上に、変性ポリプロピレン接着剤を塗布して接着層を形成し、次いで特定物性のポリプロピレンフィルムを熱ラミネートで積層し、この積層体に対してポリプロピレン樹脂をインサート成形することで、樹脂部材と金属部材とを接合している。
一方、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材との複合成形体は、様々な環境で利用されるため、例えば、その接合部分には、接合強度以外に、耐熱性、耐水性、耐候性、耐湿熱性、耐薬品性(例えば、耐インク性、耐アルコール性、耐ガソリン性など)などの多くの性能が求められている。
特開2014−159125号公報 特開2016−016584号公報
しかしながら、特許文献1においては、塩素化ポリプロピレンの水分散体を用いて形成された酸変性ポリプロピレン層と、射出成形され表層部分が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材との接合強度が十分ではなく、得られる複合成形体は、使用可能な用途が限られていた。また、圧着時に比較的高温の熱を要するため、ポリプロピレン樹脂部材が変形したり、劣化する恐れがあった。さらに、塩素化ポリプロピレン水分散体から形成された層は、耐水性や耐薬品性に劣るため、接合部は耐水性や耐薬品性に劣る傾向にあった。加えて、塩素を構造中に含む塩素化ポリプロピレンは、焼却によって廃棄する際、酸性ガスやダイオキシン等の有害物質を発生するため、近年では環境配慮の観点から使用が控えられる傾向にある。
特許文献2においては、変性ポリプロピレン接着剤は、変性ポリプロピレンのトルエン分散体が使用されている。昨今では、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の観点から、トルエンなどの有機溶剤の使用が制限される傾向にある。また、特許文献2においては、アルミニウム部材上に変性ポリプロピレン接着剤を塗布して形成した層の外側に、さらに熱ラミネートで特定物性のポリプロピレン樹脂層を設ける必要があるなど、前処理の工程が多く、製造工程が複雑化して生産性が低下したり、それに伴ってコストが高くなるという問題があった。
本発明の課題は、上記問題を解決し、ポリプロピレン樹脂部材、特に表層部分が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材(表面融解熱量が80J/g以上)の接合において、接合性に優れ、工程が簡略で汎用性があり、耐水性や耐薬品性にも優れ、低温での熱圧着が可能で、かつ環境に配慮された接着剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定構造の酸変性ポリプロピレン樹脂を含有する水性分散体が、表層部分が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材用の接着剤として好適であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材のための接着剤であって、
ポリオレフィン樹脂(I)と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体からなり、
ポリオレフィン樹脂(I)が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
オレフィン成分が、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)とからなり、
プロピレン以外のオレフィン(B)がブテンを含み、エチレンを含まず、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、
プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との合計100質量部に対し、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が、1質量部以上であることを特徴とする接着剤。
(2)さらに、ポリオレフィン樹脂水性分散体が、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする(1)記載の接着剤。
(3)さらに、ポリオレフィン樹脂水性分散体が、オレフィン成分と(メタ)アクリル酸エステル成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有するポリオレフィン樹脂(II)を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の接着剤。
(4)表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材であって、
(1)〜(3)のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層が積層されていることを特徴とするポリプロピレン樹脂部材。
(5)金属部材であって、
(1)〜(3)のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層が積層されていることを特徴とする金属部材。
(6)表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが、(1)〜(3)のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層を介して接合されていることを特徴とする積層体。
(7)上記(6)記載の積層体であって、
接着層を介して、熱圧着法またはインサート成形法によって、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが接合されていることを特徴とする積層体。
本発明のポリプロピレン樹脂部材用接着剤は、表面融解熱量が80J/g以上というように表層部分が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材の接合に有用であり、部材に複雑な前処理を施さずとも、優れた接合性を示す。さらに、その接合部分は、耐水性および耐薬品性にも優れ、低温での熱圧着が可能となっている。加えて、本発明の接着剤は、塩素化ポリプロピレンや有機溶剤を使用せずとも上記課題を解決できるため、環境に与える影響は極めて小さい。
本発明の接着剤をポリプロピレン樹脂部材と金属部材との接合に用いることで、幅広い用途において適用可能な接合強度を有する、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが接合された積層体を得ることが可能となる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン樹脂用接着剤(以下、接着剤と略することがある)は、ポリオレフィン樹脂(I)と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体からなるものである。
<ポリオレフィン樹脂(I)>
本発明におけるポリオレフィン樹脂(I)は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものであり、オレフィン成分は、プロピレン(A)とプロピレン以外のオレフィン(B)とを含有する。
本発明において、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)は、ポリオレフィン樹脂(I)の分散粒子径を小さくする観点、および接着層のポリプロピレン樹脂部材への接着性を向上させる観点から、60/40〜95/5であることが必要であり、60/40〜80/20であることが好ましい。プロピレン(A)の割合が60質量%未満であると、ポリプロピレン樹脂部材への接着性が低下し、一方、95質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂(I)の分散粒子径が大きくなり、樹脂の水性分散化が困難となることがある。
ポリオレフィン樹脂(I)を構成するプロピレン以外のオレフィン(B)は、ブテンを含むことが必要であり、エチレンを含まないものである。
プロピレン以外のオレフィン(B)としてブテン(1−ブテン、イソブテンなど)を含むことによって、ポリオレフィン樹脂(I)の製造や水性化が容易となり、ポリプロピレン樹脂部材に対する接着性、特に表面融解熱量が80J/g以上という高結晶化のポリプロピレン樹脂部材に対する接着性に優れている。
ポリオレフィン樹脂(I)は、プロピレン以外のオレフィン(B)として、エチレンを含まないものである。一般的に、ポリオレフィン樹脂は、共重合成分としてエチレンを含むと、ポリプロピレン樹脂部材への接着性が低下する傾向にある。また、共重合成分としてエチレンを含むポリオレフィン樹脂は、後述するような方法で不飽和カルボン酸成分を共重合させる際に、競争的に架橋反応が起こることが知られている。架橋反応が進行すると、酸変性により得られるポリオレフィン樹脂の高分子量化が起こり、酸変性の操業性が低下することがある。また水性分散体中のポリオレフィン樹脂の粒子径が増大することがあり、さらには、エチレンの含有量によっては、ポリオレフィン樹脂の水性分散化が困難になることがある。そのため、本発明においては、ポリオレフィン樹脂(I)のオレフィン成分は、エチレン以外で構成されることが必要である。
プロピレン以外のオレフィン(B)として、ブテン以外に、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類や、ブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられるが、プロピレン以外のオレフィン(B)における、これらブテン以外のオレフィンの含有量は、20質量%以下であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(I)において、各成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられるが、重合のし易さの点から、ランダム共重合もしくはグラフト共重合されていることが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(I)は、上記オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有する樹脂である。共重合成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、水性媒体への分散性の観点から、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との合計100質量部に対し、1質量部以上であることが必要であり、1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜8質量部であることがさらに好ましく、1.5〜7質量部であることが最も好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が1質量部未満であると、ポリオレフィン樹脂(I)を水性化することが困難となり、また、通常は、含有量が15質量部を超えると、樹脂の水性化は容易になるが、ポリプロピレン樹脂部材への接着性が低下することがある。
不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物も用いることができる。中でも、不飽和カルボン酸成分を含んでいないポリオレフィン樹脂(以下、未変性ポリオレフィン樹脂と称する)への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
したがって、本発明では、ポリオレフィン樹脂(I)として、上述のようにプロピレン以外のオレフィン(B)としてブテンを使用することから、ポリオレフィン樹脂(I)として、プロピレン/ブテン/無水マレイン酸三元共重合体を使用することが好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂(I)中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではない。例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
なお、ポリオレフィン樹脂(I)に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造を取りやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中ではその一部または全部が開環し、カルボン酸またはその塩となる傾向がある。
不飽和カルボン酸成分を、未変性ポリオレフィン樹脂(I)へ導入する方法は特に限定されず、例えば、ラジカル発生剤存在下、未変性ポリオレフィン樹脂(I)と不飽和カルボン酸成分とを未変性ポリオレフィン樹脂(I)の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、未変性ポリオレフィン樹脂(I)と不飽和カルボン酸成分を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、未変性ポリオレフィン樹脂(I)に不飽和カルボン酸成分をグラフト共重合する方法が挙げられる。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは反応温度によって、適宜選択して使用すればよい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(I)には、必要に応じて上記以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類並びにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。これら他の成分の含有量は、一般に、ポリオレフィン樹脂(I)の10質量%以下であることが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(I)は、重量平均分子量が、5,000〜200,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましく、20,000〜120,000であることがさらに好ましく、30,000〜100,000であることが特に好ましく、35,000〜80,000であることが最も好ましい。ポリオレフィン樹脂(I)の重量平均分子量が5,000未満であると、部材との接着性が低下したり、得られる接着層が硬くてもろくなる傾向があり、一方、重量平均分子量が200,000を超えると、樹脂の水性化が困難になる傾向がある。なお、樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン樹脂を標準として求めることができる。
一般にポリオレフィン樹脂は、溶剤に対して難溶であり、このため分子量測定が困難となる場合がある。そのような場合には、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート値を分子量の目安とするのがよい。
<水性媒体>
本発明の接着剤は、上記のポリオレフィン樹脂(I)と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体からなり、ポリオレフィン樹脂(I)は、水性媒体中に分散もしくは一部溶解されている。本発明において、水性媒体とは、水を主成分とする液体であり、ポリオレフィン樹脂(I)の水性化促進のため、後述する有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。
塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等が挙げられる。塩基性化合物の配合量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量がより好ましく、0.9〜3.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、10倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下したりすることがある。
本発明においては、ポリオレフィン樹脂(I)の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に親水性有機溶剤を配合することが好ましい。親水性有機溶剤の含有量としては、水性媒体全体に対し50質量%以下が好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%がさらに好ましく、3〜35質量%が特に好ましい。親水性有機溶剤の含有量が50質量%を超える場合には、実質的に水性媒体と見なせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する親水性有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下することがある。
親水性有機溶剤としては、分散安定性良好な水性分散体を得るという点から、20℃の水に対する溶解性が10g/L以上のものが好ましく、20g/L以上のものがより好ましく、50g/L以上のものがさらに好ましい。
親水性有機溶剤としては、製膜の過程で効率よく塗膜から除去させる観点から、沸点が150℃以下のものが好ましい。沸点が150℃を超える親水性有機溶剤は、塗膜から乾燥により飛散させることが困難となる傾向にあり、特に低温乾燥時の接着層の耐水性や部材との接着性等が低下することがある。
好ましい親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、ポリオレフィン樹脂の水性化促進により効果的であり、好ましい。
本発明では、これらの親水性有機溶剤を複数混合して使用してもよい。
ポリオレフィン樹脂(I)の水性化をより促進させるために、疎水性有機溶剤をさらに添加してもよい。疎水性有機溶剤としては、20℃の水に対する溶解性が10g/L未満であり、上記と同じ理由で、沸点が150℃以下である有機溶剤が好ましい。このような疎水性有機溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等のオレフィン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの疎水性有機溶剤の添加量は、水性分散体に対して15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。疎水性有機溶剤の添加量が15質量%を超えると、ゲル化等を引き起こすことがある。
<ポリオレフィン樹脂水性分散体>
本発明の接着剤を構成するポリオレフィン樹脂水性分散体において、水性分散体中に分散しているポリオレフィン樹脂(I)粒子の粒子径は、特に限定されないが、低温造膜性、塗膜の緻密性や透明性、他材料との混合安定性の観点から、重量平均粒子径が0.50μm以下であることが好ましく、0.30μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましく、0.001〜0.10μmであることが特に好ましい。
また、本発明では、水性分散体におけるポリオレフィン樹脂(I)の粒子径分布にかかる分散度(重量平均粒子径/数平均粒子径)は、2.6以下であることが好ましく、特に塗膜の平滑性の観点から、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
本発明では、ゼータ電位は、−20mV以下であることが好ましく、−30mV以下であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂水性分散体は、ゼータ電位が−20mV以下であると、分散安定性に優れ、さらに種々の添加剤と混合した際の混合安定性にも優れる。
本発明において、水性分散体におけるポリオレフィン樹脂(I)の含有量は、製膜条件や塗膜の厚さ、性能等に応じて適宜選択でき、特に限定されるものでないが、水性分散体の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。
本発明における水性分散体は、不揮発性の水性化助剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明は、不揮発性水性化助剤の使用を排除するものではないが、水性化助剤を用いずとも、ポリオレフィン樹脂(I)を水性媒体中に微細かつ安定的に分散することができる。このため、低温乾燥における接着層特性、特に耐水性、部材との接着性、ヒートシール性が優れており、これらの性能は長期的にもほとんど変化しない。
ここで、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、こうした水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
本発明でいう不揮発性水性化助剤としては、例えば、後述する乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子などが挙げられる。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス、カルボキシル基含有ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレン−プロピレンワックスなどの数平均分子量が通常5000以下の酸変性ポリオレフィンワックス類およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の不飽和カルボン酸含有量が10質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂水性分散体を構成するポリオレフィン樹脂(I)は、上記のように、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合成分として含有するものであり、共重合成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量は、水性媒体への分散性の観点から、不飽和カルボン酸成分以外の成分合計100質量部に対し、1質量部以上であることが必要である。
<ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造方法>
次に、ポリオレフィン樹脂水性分散体の製造方法について、一例を説明する。
本発明において、ポリオレフィン樹脂水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、既述の各成分、すなわち、ポリオレフィン樹脂(I)、水性媒体、必要に応じて有機溶剤、塩基性化合物等を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が採用でき、この方法が最も好ましい。
容器としては、固/液撹拌装置や乳化機として使用されている装置を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂(I)が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。
例えば、上記装置に、ポリオレフィン樹脂(I)、水性媒体等の原料を投入し、好ましくは40℃以下の温度で攪拌混合しておく。次いで、槽内の温度を80〜240℃、好ましくは100〜220℃、さらに好ましくは110〜200℃、特に好ましくは110〜190℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで攪拌を続ける(例えば、5〜300分間)。
その後、さらに系内に塩基性化合物、有機溶剤および水から選ばれる少なくとも1種を加え、密閉容器中で、再度、80〜240℃の温度下で加熱、攪拌する。このように、水性媒体を構成するものを追加し、再度加熱、攪拌することで、ポリオレフィン樹脂(I)の重量平均粒子径を0.15μm以下にすることができる。また、このように2段階の工程によって樹脂を水性化することは、粒子径分布にかかる分散度を好ましい範囲に調整するうえでも好ましい。
なお、塩基性化合物、有機溶剤、水を追加配合する方法は特に限定されないが、ギヤポンプなどを用いて加圧下で配合する方法や、一旦系内温度を下げ常圧になってから配合する方法などがある。
追加配合する塩基性化合物と、有機溶剤と、水との割合は、所望する固形分濃度、粒子径、分散度等に応じて適宜決めればよい。また、塩基性化合物、有機溶剤、水の合計は、配合した後の固形分濃度が1〜50質量%となるよう調整することが好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量が特に好ましい。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、ポリオレフィン樹脂(I)の水性化が進行し難くなり、一方、槽内の温度が240℃を超えると、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下することがある。
水性分散体の製造時に上記の有機溶剤を用いた場合には、樹脂の水性化の後に、その一部を、一般に「ストリッピング」と呼ばれる脱溶剤処理によって系外へ留去させ、有機溶剤の含有量を低減させてもよい。ストリッピングにより、水性分散体中の有機溶剤含有量は、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすればより好ましく、1質量%以下とすることが、環境上より好ましい。ストリッピングの工程では、水性化に使用した有機溶剤を実質的に全て留去することもできるが、装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くしたりする必要があるため、こうした生産性を考慮した場合、有機溶剤含有量の下限は0.01質量%程度が好ましい。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇して作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
水性分散体の固形分濃度は、例えば、水性媒体を留去する方法や、水で希釈する方法により調整することができる。
上記製造方法を採用することで、ポリオレフィン樹脂(I)が水性媒体中に効率よく分散または一部溶解された、均一な液状の水性分散体を調製することが可能となる。ここで、均一な液状であるとは、外観上、水性分散体中に沈殿、相分離あるいは皮張りといった、固形分濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることをいう。
<添加剤>
本発明の接着剤を構成する水性分散体には、性能をさらに向上させるために、さらにポリウレタン樹脂、架橋剤、ポリオレフィン樹脂(II)などを含有してもよい。
ポリウレタン樹脂としては、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子が使用でき、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られる高分子が使用できる。
本発明において、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子量グリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド単位を有するポリオール化合物、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類等の高分子量ジオール類、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類、ダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が挙げられる。
ポリイソシアネート成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族に属する公知のジイソシアネート類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例としては、トリレンジジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。また、ジイソシアネート類には、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート類を用いてもよい。
本発明において、市販の水系のポリウレタン樹脂としては、三井化学社製のタケラックシリーズ(品番:W−615、W−6010、W−511等)、アデカ社製のアデカボンタイターシリーズ(品番:HUX−232、HUX−320、HUX−380、HUX−401等)、第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズ(品番:500、550、610、650等)、大日本インキ化学工業社製のハイドランシリーズ(品番:HW−311、HW−350、HW−150等)が挙げられる。
本発明で用いる架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、不飽和カルボン酸成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができる。
具体的には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられ、必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。中でも、取り扱い易さおよび密着性の観点から、オキサゾリン基を含有する化合物および/またはエポキシ基を含有する化合物および/またはシランカップリング剤を添加することが好ましい。
オキサゾリン基含有化合物としては、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものが好ましく使用できる。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド等のオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いのし易さからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、一般に2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。オキサゾリン基含有ポリマーには、必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、公知の重合方法を採用することができる。オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられる。具体的な商品名としては、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有しているものであれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAβ−ジメチルグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラヒドロキシフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クロル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂等のグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸グリシジルエーテル・エステル等のグリシジルエーテル・エステル型;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、アクリル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型;グリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルアミノフェノール等のグリシジルアミン型;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、リモネンジオキサイド等の脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
市販のエポキシ化合物としては、本発明に適した水系のものとして、例えば、長瀬ケムテック社製のデナコールシリーズ(EM−150、EM−101など)、旭電化工業社製のアデカレジンシリーズ等が挙げられ、UVインキ密着性や耐スクラッチ性向上の点から多官能エポキシ樹脂エマルションである旭電化社製のアデカレジンEM−0517、EM−0526、EM−11−50B、EM−051Rなどが好ましい。
シランカップリング剤としては既知のものを使用することができ、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのグリシドキシ基(もしくはエポキシ基)含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどのビニル基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;γ−クロロプロピルメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中では、最終的に得られる金属板複合樹脂成形品全体の接合強度が良好な点で、アミノ基含有シランカップリング剤、グリシドキシ基(もしくはエポキシ基)含有シランカップリング剤が好ましい。
本発明における水性分散体は、ポリウレタン樹脂または架橋剤のいずれか、あるいは両方を含有していてもよい。
水性分散体において、架橋剤を用いずにポリウレタン樹脂を用いる場合、その含有量は、ポリオレフィン樹脂(I)100質量部に対して1〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜150質量部、更に好ましくは2〜130質量部、特に好ましくは3〜100質量部である。ポリウレタン樹脂の含有量が1質量部未満では、金属部材と接着層との間の密着性が不十分となり、積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。一方、300質量部を超えると、ポリプロピレン樹脂部材と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。
水性分散体において、ポリウレタン樹脂を用いずに架橋剤を用いる場合、その含有量は、ポリオレフィン樹脂(I)100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、架橋が不十分であるため金属部材と接着層との間の密着性が劣り、積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。一方、50質量部を超えると、ポリプロピレン樹脂部材と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。
水性分散体にポリウレタン樹脂と架橋剤の両方を含む場合は、ポリオレフィン樹脂(I)100質量部に対して、架橋剤50質量部以下およびポリウレタン樹脂300質量部以下の範囲とし、但し、いずれか一方の成分を0.1質量部以上含有していることが好ましい。いずれの成分も0.1質量部未満であると、金属部材と接着層との間の密着性が不十分となり、積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。一方、いずれか一方の成分が上記範囲を超えると、ポリプロピレン樹脂部材と接着層の間の密着性が不十分となり、同じく積層体として十分な接着性、耐熱性が得難くなる。
本発明の接着剤を構成する水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(I)とともに、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分と(メタ)アクリル酸エステル成分とを共重合成分として含有するポリオレフィン樹脂(II)を含有することが好ましい。ポリオレフィン樹脂(II)を含有することにより、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材との接合強度が向上するとともに、耐水性、耐薬品性に優れた積層体を得ることができる。
ポリオレフィン樹脂(II)のオレフィン成分は特に限定されず、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類や、ブタジエンやイソプレン等のジエン類などを好適に利用することができ、エチレンであることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(II)は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが必要である。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(II)が(メタ)アクリル酸エステル成分を含むことにより、接合部は、耐水性および耐薬品性が向上する傾向にある。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂(II)の50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、1〜20質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が50質量%を超えると、接合部は、初期強度が低下する傾向にある。
ポリオレフィン樹脂(II)は、オレフィン成分と(メタ)アクリル酸エステル成分とが上記のものであればよく、その他の構成、物性、水性化方法、水性分散体の物性等は、既述のポリオレフィン樹脂(I)のそれらに準ずるものである。
ポリオレフィン樹脂(II)の具体例としては、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体が好ましい。
ポリオレフィン樹脂(II)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(I)に対して100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
また、本発明の接着剤を構成する水性分散体には、目的に応じて性能をさらに向上させるために、上記以外の他の重合体が少量含有されていてもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。必要に応じて複数のものを混合使用してもよい。上記ポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とを主成分とするものが好ましく、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸が共重合されていてもよい。
以上のような添加剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また添加剤は、添加、混合のしやすさの観点から、水溶性または水性分散性のものを用いることが好ましい。
添加剤を含有したポリオレフィン樹脂水性分散体を調製する方法は限定されない。たとえば、ポリオレフィン樹脂(I)と(II)とを含有する水性分散体は、事前に調製したポリオレフィン樹脂(I)水性分散体とポリオレフィン樹脂(II)水性分散体とを混合することで調製してもよく、また、ポリオレフィン樹脂(I)と(II)とを同時に水性分散化することで調製してもよい。
<接着剤の使用>
本発明のポリプロピレン樹脂部材は、表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材であって、本発明の接着剤にて形成された接着層が積層されたものである。また、本発明の金属部材は、本発明の接着剤にて形成された接着層が積層されたものである。
上記接着層は、本発明の接着剤をポリプロピレン樹脂部材もしくは金属部材に塗布し、水性媒体を乾燥除去することにより形成することができる。
ポリプロピレン樹脂部材を構成する樹脂としては、主成分がポリプロピレンであれば特に限定されず、ポリプロピレン単独重合体やポリプロピレン共重合体を使用することができる。
射出成形されたポリプロピレン樹脂部材は、射出時の応力により表層部分のポリプロピレン樹脂が高度に配向・結晶化するため、ポリプロピレン樹脂部材の表層0.5mm程度を切り取って測定した表面融解熱量が80J/g以上となる。このように表面融解熱量が高く、表面が高度に配向・結晶化したポリプロピレン樹脂部材は、接合性が極度に低下する傾向にある。本発明の接着剤は、特定の水性分散体からなるため、一般に接合が困難とされる表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材に対して、優れた接合性を有するものとなる。
なお、表面融解熱量は示差走査熱量測定(DSC)などで測定することができる。
ポリプロピレン樹脂部材には、必要に応じてガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維、炭酸カルシウムやシリカ等の無機フィラー、セルロースや木粉等の有機フィラー、顔料や染料、難燃剤、抗菌剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤等の公知の添加剤が添加されてもよい。
ポリプロピレン樹脂部材の表面は、接合する前に、表面処理や前処理が施されてもよい。表面処理や前処理としては、例えば、脱脂、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、オゾン処理、およびプライマー処理などが挙げられる。ポリプロピレン樹脂部材の表面に、表面処理や前処理を行うことで、接着剤の濡れ性が改善し、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材との接合強度を向上させることができる。
金属部材を構成する金属板としては、冷延鋼板、溶融純亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融Zn−Feめっき鋼板(GA)、合金化溶融Zn−5%Alめっき鋼板(GF)、電気純亜鉛めっき鋼板(EG)、電気Zn−Niめっき鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、チタン板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等が挙げられる。
金属部材の厚みは用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
金属部材の表面は接着性向上やその他目的のための処理を行っていてもよく、例えば洗浄処理、研磨処理、レーザー処理、クロメート処理などの化学薬品処理、電気化学的処理、プラズマ処理などの活性ガス処理、プライマー処理などを行うことができる。
本発明の接着剤を塗布する方法は、部材の形状により適宜選択でき、特に限定されないが、公知の方法、例えばスプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法、ワイヤーバーコーティング、カーテンフローコーティング、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、エアナイフコーティング等が採用できる。
本発明の接着剤の塗布量は、その用途によって適宜選択され、乾燥膜厚(接着層厚)として1〜100μmであることが好ましく、3〜70μmであることがより好ましく、5〜50μmであることがさらに好ましい。
なお、均一な厚みの接着層を得るためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、装置や使用条件に応じて濃度や粘度が調整された接着剤を使用することが好ましい。
部材に塗布した接着剤を乾燥する加熱装置として、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。
加熱温度や加熱時間は、部材の特性や、接着剤に含有させた添加剤の量により適宜選択される。加熱温度は、50〜250℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましく、100〜180℃であることがさらに好ましい。加熱時間は、5秒〜180分であることが好ましく、30秒〜120分であることがより好ましく、1分〜60分であることがさらに好ましい。
なお、添加剤として架橋剤を含む場合は、ポリプロピレン樹脂や他の重合体のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
本発明の積層体は、表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが、本発明の接着剤にて形成された接着層を介して接合されたものであり、具体的には、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材がこの順に積層されてなるものである。
本発明の接着剤を用いてポリプロピレン樹脂部材と金属部材を接合する方法は特に限定されず、熱圧着、インモールド成形やインサート成形といった射出成形方法もしくは摩擦攪拌接合などの方法が挙げられる。
熱圧着による接合の場合、例えば、ポリプロピレン樹脂部材もしくは金属部材に本発明の接着剤を塗布、乾燥して接着層を形成し、相手部材と貼りあわせて熱と圧力をかけることにより、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材を接合した積層体を得ることができる。
熱圧着の条件は、接着剤に含有される樹脂成分の種類や、ポリプロピレン樹脂部材および金属部材の大きさや形状により適宜選択すればよい。熱圧着時の温度は60〜180℃が好ましく、70〜150℃がより好ましく、75〜140℃がさらに好ましい。また、熱圧着時の圧力は、5MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましい。熱圧着時の温度や圧力が高いと、接合強度が高くなる傾向にあるが、ポリプロピレン樹脂部材が変形したり熱分解することがある。一方、熱圧着時の温度や圧力が低いと、接合強度が低くなる傾向にある。
射出成形による接合の場合、例えば、まず、本発明の接着剤を塗布、乾燥して接着層を形成した金属板を目的とする形状に加工して金属部材を作製しておく。その後、射出成形機の金型内にこの金属部材を装入し、型締めして、溶融ポリプロピレン樹脂を型内に射出し、樹脂を冷却固化することで、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材を接合した積層体を得ることができる。射出成形(インモールド成形またはインサート成形)法を採用することにより、短時間・高効率で、積層体を大量製造することができる。
射出成形の条件は、使用する部材の種類や目的応じて適宜選択すればよい。例えば、添加剤が添加されていないポリプロピレン樹脂の場合は、シリンダー温度を230〜250℃、金型温度を45〜55℃、射出保持時間を5〜8秒、冷却時間を20〜30秒程度とすることでポリプロピレン樹脂部材と金属部材を接合した積層体を得ることができる。
摩擦攪拌接合による接合の場合、例えば、まず、本発明の接着剤を塗布、乾燥して接着層を形成したポリプロピレン樹脂部材もしくは金属部材を用意しておく。その接着層を介してポリプロピレン樹脂部材と金属部材を重ね合わせ、摩擦攪拌接合装置を用い、接合ツールを金属部材背面に押し付けた際の摩擦熱により接合することで、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材を接合した積層体を得ることができる。
本発明の接着剤を使用して接着しているため、本発明の積層体を構成するポリプロピレン樹脂部材と金属部材の接着強度を2MPa以上とすることができ、接着強度は6MPa以上であることが好ましい。積層体は、接着強度が2MPa以上であれば、本発明の接着剤の使用が想定される家電製品やOA機器などの一部用途において十分な性能を発揮することができ、6MPa以上であれば、自動車部材など種々の用途において十分な性能を発揮することができる。
また、本発明の積層体は、耐水性試験や耐薬品性試験などにおいて接合強度の保持率を50%以上とすることができ、保持率は70%以上であることが好ましく、90%以上あることがより好ましい。積層体は、保持率が70%以上あれば、水や各種薬品が接触する環境下でも十分な接合強度を維持することができる。
接着強度は、既知の方法で評価することができ、一例として、引張試験機にて引張剪断応力を測定することで評価することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性は、以下の方法により測定または評価した。
1.ポリオレフィン樹脂(I)、(II)
(1)不飽和カルボン酸成分の含有量
ポリオレフィン樹脂に含まれる不飽和カルボン酸成分の含有量は、赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer System−2000 フーリエ変換赤外分光光度計、分解能4cm−1)により求めた。
(2)不飽和カルボン酸成分以外の樹脂の構成
ポリオレフィン樹脂に含まれる不飽和カルボン酸成分以外の成分の質量比は、オルトジクロロベンゼン(d)中、120℃にてH−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法に基づき測定した。
(3)重量平均分子量
重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはSHODEX社製KF−804L2本、KF805L1本を連結して用いた。)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1mL/min、40℃の条件で測定した。約10mgの樹脂をテトラヒドロフラン5.5mLに溶解し、PTFEメンブランフィルターでろ過したものを測定用試料とした。ポリスチレン標準試料で作成した検量線から重量平均分子量を求めた。テトラヒドロフランに溶解し難い場合はオルトジクロロベンゼンで溶解した。
2.ポリオレフィン樹脂(I)、(II)の水性分散体
(1)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径、重量平均粒子径、および分散度
日機装社製、Nanotrac Wave−UZ152粒度分布測定装置を用いて、数平均粒子径(mn)、重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
分散度は、下記式に基づき算出した。
分散度=重量平均粒子径(mw)/数平均粒子径(mn)
(2)ゼータ電位
上記(1)記載の装置を用いて測定した。
(3)粘度
300メッシュ濾過後の水性分散体を、B型粘度計(トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計)を用い、温度20℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
3.積層体(ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材)
(1)初期強度
各実施例、比較例および参考例で作製した積層体(ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材)を引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度100mm/分の条件で、積層体の接合強度を引張剪断試験により測定した。測定はサンプル数15で行い、その平均値を、接着強度(初期強度)とし、下記基準により評価した。
◎:6MPa以上
○:2MPa以上、6MPa未満
×:2MPa未満
(2)耐水性
各実施例、比較例および参考例で作製した積層体を50℃の温水中に24時間浸漬した。
浸漬後、室温で24時間乾燥した積層体について、前記(1)と同様の方法で引張剪断試験をおこない、接合強度を測定した。温水浸漬前後の接合強度から、下記計算式に基づき接合強度の保持率を算出し、下記基準により耐水性を評価した。
[接合強度保持率](%)=[温水浸漬後の接合強度]/[初期強度]×100
◎:接合強度保持率が90%以上
○:接合強度保持率が90%未満、70%以上
△:接合強度保持率が70%未満、50%以上
×:接合強度保持率が50%未満
(3)耐インク性
各実施例、比較例および参考例で作製した積層体を50℃のインク(エプソン社製プリンター用インクカートリッジICY54L収容のイエローインク)中に24時間浸漬した。
浸漬後、室温で24時間乾燥した積層体について、前記(1)と同様の方法で引張剪断試験をおこない、接合強度を測定した。インク浸漬前後の接合強度から、下記計算式に基づき接合強度の保持率を算出し、下記基準により耐インク性を評価した。
[接合強度保持率](%)=[インク浸漬後の接合強度]/[初期強度]×100
◎:接合強度保持率が90%以上
○:接合強度保持率が90%未満、70%以上
△:接合強度保持率が70%未満、50%以上
×:接合強度保持率が50%未満
(4)耐アルコール性
各実施例、比較例および参考例で作製した積層体を50℃のイソプロパノール中に24時間浸漬した。
浸漬後、室温で24時間乾燥した積層体について、前記(1)と同様の方法で引張剪断試験をおこない、接合強度を測定した。アルコール浸漬前後の接合強度から、下記計算式に基づき接合強度の保持率を算出し、下記基準により耐アルコール性を評価した。
[接合強度保持率](%)=[アルコール浸漬後の接合強度]/[初期強度]×100
◎:接合強度保持率が90%以上
○:接合強度保持率が90%未満、70%以上
△:接合強度保持率が70%未満、50%以上
×:接合強度保持率が50%未満
(5)表面融解熱量
各実施例、比較例および参考例で作製した積層体(ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材)から、接着層に接するポリプロピレン樹脂部材の表層約0.5mm程度を切り出して約8mgを精秤し、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Diamond DSC型、検出範囲:−50℃〜200℃)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線(ファーストラン)中の融解ピークの面積を求め、表面融解熱量とした。
下記の方法により、ポリオレフィン樹脂(I)、(II)用の樹脂を製造した。
製造例1:ポリオレフィン樹脂P−1
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でキシレン470gに加熱溶解させた後、系内温度を140℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後6時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。
この析出させた樹脂を、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−1を得た。得られた樹脂の特性を表1に示す。
製造例2、4、5、6、7:ポリオレフィン樹脂P−2、4、5、6、7
製造例2では、質量比がプロピレン/1−ブテン=65/35であるプロピレン−ブテン共重合体を、製造例4では、質量比がプロピレン/エチレン=92/8であるプロピレン−エチレン共重合体を、製造例5では、質量比がプロピレン/1−ブテン/エチレン=65/24/11であるプロピレン−ブテン−エチレン共重合体を、製造例6では、質量比がプロピレン/1−ブテン=97/3であるプロピレン−ブテン共重合体を、製造例7では、質量比がプロピレン/1−ブテン=50/50であるプロピレン−ブテン共重合体を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行って、それぞれ、ポリオレフィン樹脂P−2、4、5、6、7を得た。
製造例3:ポリオレフィン樹脂P−3
プロピレン−ブテン共重合体(質量比:プロピレン/1−ブテン=80/20)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下でクロロベンゼン470gに加熱溶解させた後、系内温度を130℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸9.5gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド10.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後10時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させ、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂P−3を得た。
製造例8:ポリオレフィン樹脂P−8
無水マレイン酸の添加量を40.0gに代えて2.0gとし、ジクミルパーオキサイドの添加量を28.0gに代えて1.4gとした以外は、製造例1と同様の方法を行って、ポリオレフィン樹脂P−8を得た。
製造例9、10:ポリオレフィン樹脂PA−1、PA−2
英国特許2091745、米国特許4617366および米国特許4644044に記載された方法をもとに、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体を作製し、トリエチルアミンのアセトン溶液(質量比:トリエチルアミン/アセトン=1/4)で1回洗浄し、その後アセトンで洗浄することで未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、ポリオレフィン樹脂PA−1、PA−2を得た。
製造例1〜10で得られたポリオレフィン樹脂P−1〜8、PA−1〜2の構成、特性を表1に示す。
下記の方法により、ポリオレフィン樹脂(I)、(II)の水性分散体を調製した。
調製例1
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂P−1、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)および137.0gの蒸留水を、ガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。
その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却し、開封して、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのDMEAおよび30.0gの蒸留水を添加した。その後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。
そして、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体E−1を調製した。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。
調製例2〜7
ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、調製例2ではP−2を、調製例3ではP−3、調製例4ではP−4を、調製例5ではP−5を、調製例6ではP−6を、調製例7ではP−7を用いた以外は調製例1と同様の操作を行って、水性分散体E−2〜7を調製した。
調製例8
ポリオレフィン樹脂P−1に代えて、P−8を用いた以外は調製例1と同様の操作を行ったところ、フィルター上に多量の樹脂を確認した。ポリオレフィン樹脂P−8は、実質的に分散せず、ポリオレフィン樹脂P−8の水性分散体を調製できなかった。
調製例9
撹拌機とヒーターを備えた2L容ガラス容器に、50gのポリオレフィン樹脂PA−1、150gのn−プロパノール、3gのDMEAおよび297gの蒸留水を仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を130℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約80℃まで冷却したところで、系内を徐々に減圧して、n−プロパノールと水を除去した。n−プロパノールと水を300g以上除去した後、系内温度が35℃になったところで、水を添加して水性分散体中のポリオレフィン樹脂の濃度が20質量%となるように調整し、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、水性分散体EA−1を調製した。
調製例10
ポリオレフィン樹脂PA−1に代えて、PA−2を用いた以外は調製例9と同様の操作を行って、水性分散体EA−2を調製した。
調製例11
不揮発性の水性化助剤であるノイゲンEA−190D(第一工業製薬社製、ノニオン性界面活性剤)を、ポリオレフィン樹脂に対して3質量%となるように添加した以外は、調製例1に準じた方法で樹脂の水性化を行い、水性分散体E−9を調製した。
調製例1〜11で調製した水性分散体の物性を表1に示す。
Figure 2018039967
架橋剤、ウレタン樹脂として、下記のものを使用した。
オキサゾリン基含有架橋剤:エポクロスWS−500(日本触媒社製、固形分濃度39質量%)
エポキシ基含有架橋剤:アデカレジンEM−0517(アデカ社製、固形分濃度51質量%)
シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業社製、有効成分100%)
ウレタン樹脂エマルション:タケラックW−6010(三井化学社製、固形分濃度30質量%)
実施例1
接着剤として、ポリオレフィン樹脂P−1の水性分散体E−1を使用し、厚さ1.0mmのアルミニウム合金板(クロメート処理済み、アセトン脱脂済み)の表面に、バーコーターで乾燥後の樹脂層の厚みが30μmとなるように塗布し、120℃で10分間加熱し、接着層を有する金属板を得た。
次に、上記接着層を有する金属板を、100mm×25mmにカットし、ガラス繊維を30質量%含有したポリプロピレン樹脂成形片(プライムポリマー社製;プライムポリプロE7000、100mm×23mm×3mmの射出成型品、コロナ処理済み、アセトン脱脂済み)と、16mm長さ×23mm幅で重ね、プレス機にて130℃、0.1MPaの条件で3分間熱圧着して、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。
実施例2〜20、比較例1〜8
ポリオレフィン樹脂(I)、(II)、架橋剤、ポリウレタン樹脂の種類と、固形分(有効成分)の質量部とが、表2、3に示すものとなるように、それぞれの水性分散体などを混合してポリオレフィン樹脂水性分散体を調製した。
得られた水性分散体を接着剤として使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。
実施例21〜24、比較例9
実施例1、14、16、20、比較例6と同様にして、それぞれ、接着層を有する金属板を得た。
次に、射出成形機(日精樹脂工業社製;NEX−110)を用いて、インサート成形を行った。すなわち、上記接着層を有する金属板を、100mm×25mmにカットし、金型に入れ、ガラス繊維を30質量%含有したポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製;プライムポリプロE7000)を溶融させて、100mm×23mm×3mm厚となるように射出成形を行った。樹脂と金属板とは、8mm長さ×23mm幅で重なるように接着させ、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。この時、射出条件は、シリンダー温度240℃、樹脂成形温度240℃、金型温度50℃、射出圧力50MPa、射出保持時間6.5秒、冷却時間25秒とした。
実施例25〜27、比較例10
実施例1、16、20、比較例6と同様にして、それぞれ、接着層を有する金属板を得た。
次に、上記接着層を有する金属板を、100mm×25mmにカットし、ガラス繊維を30質量%含有したポリプロピレン樹脂成形片(プライムポリマー社製;プライムポリプロE7000、100mm×23mm×3mmの射出成型品、コロナ処理済み、アセトン脱脂済み)と、16mm長さ×23mm幅で重ね、プレス機にて100℃、0.1MPaの条件で10分間熱圧着して、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。
参考例1〜3
実施例1、比較例1、3と同様にして、それぞれ、接着層を有する金属板を得た。
次に、上記接着層を有する金属板を、100mm×25mmにカットし、未延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製;CP GHC、長さ方向100mm×幅方向23mm×厚み50μm、コロナ処理済み、アセトン脱脂済み、以下「CPP」と称す)と、16mm長さ×23mm幅で重ね、プレス機にて100℃、0.1MPaの条件で1分間熱圧着して、その後、重ね合わせ部分の長さ方向で1mmが接合するようにCPPに切れ込みを入れてポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。積層体における接合面積は1mm長さ×23mm幅である。
参考例4〜6
実施例1、比較例1、3と同様にして、それぞれ、接着層を有する金属板を得た。
次に、上記接着層を有する金属板を、100mm×25mmにカットし、延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製;OP U−1、長さ方向100mm×幅方向23mm×厚み50μm、コロナ処理済み、アセトン脱脂済み、以下「OPP」と称す)と、16mm長さ×23mm幅で重ね、プレス機にて120℃、0.1MPaの条件で1分間熱圧着して、その後、重ね合わせ部分の長さ方向で1mmが接合するようにOPPに切れ込みを入れてポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。積層体における接合面積は1mm長さ×23mm幅である。
参考例7
実施例1において、水性分散体E−1に代えて水性分散体E−9を使用した以外は同様に操作し、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を得た。
実施例1〜27、比較例1〜10および参考例1〜7で得られた、ポリプロピレン樹脂部材/接着層/金属部材からなる積層体を用いた試験結果を表2、3に示す。
また、得られた積層体における、接着層に接するポリプロピレン樹脂部材の表面融解熱量は、射出成形品では103J/g、CPPでは57J/g、OPPでは78J/gであった。
Figure 2018039967
Figure 2018039967
実施例1〜24の積層体は、本発明で規定するポリオレフィン樹脂(I)を含む接着剤から得られる接着層を介して接合されており、表面融解熱量が大きいポリプロピレン樹脂部材に対する接合強度に優れ、かつ耐水性、耐インク性、耐アルコール性にも優れるものであった。熱圧着およびインサート成形のいずれの接合方法でも、積層体は良好な接合性を示し、特にインサート成形された積層体は強固な接合性を示した。また、熱圧着を低温で行った実施例25〜27の積層体においても十分な接合強度が得られ、かつ耐水性、耐インク性、耐アルコール性にも優れるものであった。
実施例4〜14、19〜20、22、24、27の積層体は、接着剤が架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含むため、耐水性、耐インク性、耐アルコール性が向上していた。
実施例15〜20、23〜24、26〜27の積層体は、接着剤がポリオレフィン樹脂(II)を含むため、耐水性、耐インク性、耐アルコール性が飛躍的に向上していた。
一方、比較例1〜6、9〜10では、ポリオレフィン樹脂(I)の構成が本発明の規定する範囲から外れており、積層体は、初期の接合強度に劣り、また、耐水性、耐インク性、耐アルコール性にも劣るものであった。
比較例7〜8では、接着剤のポリオレフィン樹脂がポリオレフィン樹脂(II)のみであり、ポリオレフィン樹脂(I)を含んでいないため、積層体は、初期の接合強度に劣っていた。
参考例1〜6は、表面融解熱量が本発明の規定未満であるCPPやOPPをポリプロピレン樹脂部材として用いて接合を行なった例である。表面融解熱量が小さいポリプロピレン樹脂部材に対しては、本発明で規定するポリオレフィン樹脂(I)を含む接着剤はもちろんのこと、規定外のポリプロピレン樹脂を含む接着剤を用いても、良好な接合性が得られている。
水性分散体に界面活性化剤を含む参考例7の接着剤においては、初期接合強度は良好であるものの、耐水性、耐インク性、耐アルコール性が発現されなかった。

Claims (7)

  1. 表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材のための接着剤であって、
    ポリオレフィン樹脂(I)と水性媒体とを含有するポリオレフィン樹脂水性分散体からなり、
    ポリオレフィン樹脂(I)が、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有し、
    オレフィン成分が、プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)とからなり、
    プロピレン以外のオレフィン(B)がブテンを含み、エチレンを含まず、
    プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との質量比(A/B)が、60/40〜95/5であり、
    プロピレン(A)と、プロピレン以外のオレフィン(B)との合計100質量部に対し、共重合体成分としての不飽和カルボン酸成分の含有量が、1質量部以上であることを特徴とする接着剤。
  2. さらに、ポリオレフィン樹脂水性分散体が、架橋剤および/またはポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の接着剤。
  3. さらに、ポリオレフィン樹脂水性分散体が、オレフィン成分と(メタ)アクリル酸エステル成分と不飽和カルボン酸成分とを共重合体成分として含有するポリオレフィン樹脂(II)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の接着剤。
  4. 表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層が積層されていることを特徴とするポリプロピレン樹脂部材。
  5. 金属部材であって、
    請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層が積層されていることを特徴とする金属部材。
  6. 表面融解熱量が80J/g以上であるポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤にて形成された接着層を介して接合されていることを特徴とする積層体。
  7. 請求項6記載の積層体であって、
    接着層を介して、熱圧着法またはインサート成形法によって、ポリプロピレン樹脂部材と金属部材とが接合されていることを特徴とする積層体。

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