JP2007125797A - ポリプロピレン系樹脂多層発泡シートおよびその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、成形性に優れ、かつ、従来よりもさらに高い剛性を有することで、熱成形により丼や皿などの成形体としても十分な剛性を有するポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを提供することである。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に押出ラミネート法により非発泡層が積層されてなる多層発泡シートであって、該非発泡層を構成する樹脂の示差走査熱量測定によって得られる結晶融解熱量ΔHが90J/g以上のポリプロピレン系樹脂を用いることにより、上記特性を有するポリプロピレン系多層発泡シートおよびその成形体を得ることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂多層発泡シートおよびその成形体に関するものである。
熱可塑性樹脂からなる発泡シートは、一般に軽量で、断熱性、緩衝性が良好である。また、いわゆる熱成形により各種形状の成形体を得ることができるため、ポリスチレン系樹脂を中心に、食品容器、緩衝材などとして広く利用されている。
その中で、近年、コンビニエンスストアやスーパー等で販売されている弁当等の食品用容器の用途においては、従来のポリスチレン系樹脂発泡シートでは対応できない耐熱性や耐油性が求められるようになってきており、それらの特性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡シートが使用されるようになっている。
ポリプロピレン系樹脂発泡シートは、前記耐熱性や耐油性に優れる他、ポリスチレン系樹脂発泡シートの特長である、優れた軽量性、断熱性、緩衝性等をあわせ持つことが知られている。
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートに比べて剛性が低いという欠点がある。
この欠点に対し、ポリプロピレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂層を熱ラミネートにより積層する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この方法により得られる多層発泡シートによる剛性向上効果は必ずしも十分でなく、さらに、より剛性を高めるために非発泡樹脂層を厚くしようとしてもその厚みに限界があることから、剛性を高めるためにはポリプロピレン系樹脂発泡シートの面積あたりの重量(以下、目付けともいう)を大きくせざるを得ず、結果として、発泡シートの特長である、優れた軽量性を損ねてしまうという問題があった。
また、ポリプロピレン系樹脂発泡シートに特定のメルトフローレート及び溶融張力を有するポリプロピレン系樹脂層を押出ラミネート法により形成する方法、また、さらに前記ポリプロピレン系樹脂層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する方法(特許文献2)が提案されている。
この方法により、剛性向上効果は熱ラミネート法により積層する方法に比べて向上するものの、一方で、該多層発泡シートを熱成形して丼や皿などの成形体とした場合、該成形体の剛性はまだ十分でなく、容器を持ったときの感触が柔らかいという問題があった。
また、さらに剛性を高める目的で前記ポリプロピレン系樹脂フィルムの厚みを大きくした多層発泡シートを用いると、熱成形時に加熱不足により伸びが不足するためシートが破れたり、一方、加熱を強めた条件の成形においては、シートのドローダウンが激しくなり、成形体にしわが入る等、良好な成形体が得られないという問題がある。
以上のように、十分な剛性と成形性を両立できるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートがないのが現状である。
特許第3140847号公報 特開2001−310429号公報
本発明の課題は、成形性に優れ、かつ、従来よりもさらに高い剛性を有することにより、熱成形により丼や皿などの成形体としても十分な剛性を有するポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に押出ラミネート法により非発泡層が積層されてなるポリプロピレン系多層発泡シートであって、該非発泡層を構成する樹脂が、示差走査熱量測定によって得られる結晶融解熱量ΔHが90J/g以上のポリプロピレン系樹脂であるポリプロピレン系樹脂多層発泡シート(請求項1)、
前記非発泡層を構成する樹脂が、結晶融解熱量ΔHが100J/g以上のポリプロピレン系樹脂であるポリプロピレン系樹脂多層発泡シート(請求項2)、
前記非発泡層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムがさらに積層されている、請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂多層発泡シート(請求項3)および
請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂多層発泡シートを熱成形して得られる成形体(請求項4)
に関する。
本発明により、軽量性、断熱性、緩衝性、耐油、耐熱性を損なうことなく、さらには外観、意匠性に優れ、従来より優れた剛性と良好な成形性を有する多層発泡シートを得ることができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂多層発泡シートは、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に押出ラミネート法により非発泡層が積層されてなる多層発泡シートであって、該非発泡層を構成する樹脂が、示差走査熱量測定によって得られる結晶融解熱量ΔHが90J/g以上のポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする。
本発明においては、非発泡層を形成するポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量ΔHを90J/g以上とすることにより、好ましくは100J/g以上とすることにより、良好な成形性を保持しながら、得られるポリプロピレン系樹脂多層発泡シートの剛性を高めることができる。
非発泡層を形成するポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量ΔHが90J/g未満である場合、本発明の特長である高い剛性が十分でなくなる傾向がある。なお、現在入手可能なポリプロピレン系樹脂の融解熱量ΔHは、おおむね120J/g未満である。
なお、本発明における結晶融解熱量ΔHは、以下のようにして測定することができる。非発泡層を構成する樹脂を3〜5mg切りだし、精秤する。これをサンプルとして、示差走査熱量測定装置内で、窒素気流下、10℃/分の速度にて、室温から210℃まで加熱後、次いで、同じく10℃/分の速度にて210℃から30℃まで冷却する。これに続いて10℃/分の速度にて加熱しながら、示差走査熱量測定を行い、時間を横軸にとってJIS K7121に定義されているDSC曲線を得る。そのようなDSC曲線の模式図を図1に示す。
結晶融解熱量ΔHは、前記DSC曲線のピークをはさんだ、実質的に直線とみなせる部分を延長した際に、DSC曲線が該直線と離れる点(図1中の点AおよびB)を結んだ線とDSC曲線により囲まれる部分の面積で表される熱量の値を算出し、それをサンプルの重量で割った値として得ることができる。
樹脂の種類によっては、DSC曲線が複数のピークを有することがあるが、このな場合は全てのピークが含まれるように、点AおよびBを決めて得られる値を結晶融解熱量ΔHとする。
本発明に用いられる特定の結晶融解熱量ΔHを有するポリプロピレン系樹脂を得るための方法としては、例えば、プロピレンを重合する際の触媒として、立体規則性の高いポリプロピレン系樹脂を与える触媒を使用する方法、また、市販の汎用ポリプロピレンに、いわゆる結晶核剤を添加する方法等があげられる。
結晶核剤を添加する方法においては、結晶核剤としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂用結晶核剤として市販されている、リン酸塩エステル系核剤、ソルビトール系核剤、安息香酸ナトリウム等、もしくはそれらのマスターバッチがあげられ、具体的には、旭電化工業(株)製のNA−11、大日精化(株)製のMillad3988、大日精化(株)製のクリアマスターPP−RM H200が好ましい例としてあげられる。結晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリプロピレン系樹脂の具体的としては、プライムポリマー(株)製のポリプロピレン系樹脂「CJ700」などがあげられる。
非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム重合体などがあげられる。これらのうちでは、剛性が高く、安価であるという点からは、ポリプロピレン単独重合体が好ましい。また、耐衝撃性に優れるという点からは、前記プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。
前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム重合体である場合、ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性および良好な耐薬品性を保持する点から、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であることがさらに好ましい。
本発明における非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を単独で用いるだけでなく、2種類以上を混合して用いることもできる。更に、該ポリプロピレン系樹脂には、本発明の範囲において、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ブテン系樹脂などを混合したものも使用できる。
本発明における非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂は、JIS K7210に規定されている、230℃および試験荷重21.18Nの条件下で測定されたメルトフローレートが2.0〜20g/10分であることが好ましく、5〜15g/10分であることがより好ましい。
非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが2.0g/10分より小さい場合は、非発泡層の厚みむらが大きくなる傾向にあり、メルトフローレートが20g/10分より大きい場合は、加工上作業性が悪化する傾向がある。
本発明において用いられる非発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂は、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してあってもよい。
本発明のポリプロピレン系樹脂多層発泡シートは、後述するポリプロピレン系樹脂発泡シートに、押出ラミネート法により、前記したポリプロピレン系樹脂からなる非発泡層を形成したもの、または、前記非発泡層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムをさらに積層せしめたものである。
押出ラミネート法で前記非発泡層を形成することにより、ポリプロピレン系発泡シートと非発泡層とを、または、非発泡層とフィルム層とを強固に接着することができ、成形時の加熱による火膨れ(部分的な接着不良)を防止することができる。
次に、本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを得るための具体的な実施形態の例について、図2を用いて説明する。
図2は、本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを製造する押出ラミネート設備の概略図である。ここで、1:発泡シート、2:ニップロール、3:冷却ロール、4:Tダイ、5:Tダイから出た非発泡樹脂層が発泡シートに圧着されるまでの距離(以降、エアギャップと称する)、6:ニップロール2と冷却ロール3とで形成される隙間、7:非発泡層、8:フィルム、9:フィルムのシワを取るためのロール(以降エキスパンダーロールと称する)、10:積層発泡シートを示す。
押出ラミネート法により本発明のポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法としては、例えば、発泡シート1をニップロール2に沿わせながら、ニップロール2と冷却ロール3との間に繰り出し、Tダイ4から非発泡層7をフィルム状に押出し、さらに、フィルム8を使用する場合にはエキスパンダーロール9を通してフィルム8をニップロール2と冷却ロール3との隙間6に繰り出し、ニップロール2と冷却ロール3とで(フィルム8と)非発泡層7と発泡シート1とを圧着、引取りすることにより、本発明の積層発泡シート10を得ることができる。
この際、Tダイから押出された直後の非発泡層樹脂の温度は、210℃以上、250℃以下の範囲にあることが好ましい。非発泡ポリプロピレン系樹脂層の樹脂温度が210℃未満であると、発泡シートと非発泡層との接着力が弱く、高温下での使用に耐えうるに十分な発泡シートとの接着強度が得られない場合があり、一方、非発泡ポリプロピレン系樹脂層の樹脂温度が250℃を超えると、樹脂の熱劣化による異物が発生しやすくなる傾向がある。
なお、Tダイから押出された直後の非発泡層樹脂の温度を測定する具体的方法としては、例えば、非接触式温度センサー(オプテックス社製、THERMO−HUNTER PT−3LFなど)を用いて、Tダイからフィルム状に押出された非発泡層の中央部と端部の表面温度を測定する方法があげられる。
本発明においては、非発泡層(およびポリプロピレン系樹脂フィルム)は、Tダイから押出されてから2秒以内にポリプロピレン系樹脂発泡シートへ積層することが好ましい。発泡シートへ積層するまでの時間が2秒を超えてしまうと、Tダイから押出された直後のポリプロピレン系樹脂非発泡樹脂層の樹脂温度を210℃〜250℃に調節しても、発泡シートと非発泡樹脂層との接着力が十分得られない場合がある。なお、ポリプロピレン系樹脂非発泡樹脂層がTダイから押出されてからポリプロピレン系樹脂発泡シートへ積層されるまでの時間は、主に押出機からの樹脂の吐出量、発泡シートの引取速度、および図1におけるエアギャップ5により調節することができる。発泡シートへ積層するまでの時間Sは、次式により求めることができる。
S=エアギャップ/(吐出量/非発泡樹脂層厚み×非発泡樹脂層幅)・・(1)
ただし、発泡シートへ積層するまでの時間Sの単位は秒(s)、吐出量は1秒間に押出された樹脂量をポリプロピレンの樹脂密度0.91(g/cm)で除した値であり、その単位はcm/sである。また、エアギャップ、非発泡樹脂層厚み、非発泡樹脂層幅の単位はcmである。
本発明の積層発泡シートは、前述した非発泡層がポリプロピレン系樹脂発泡シートの片面のみならず、両面に形成されていてもよく、その際は、前記の押出しラミネート工程を二度繰り返す、若しくは前記押出ラミネート設備が複数、直列に配置されたラインを用いる方法を用いることができる。
本発明の積層発泡シートにおいて、ポリプロピレン系樹脂からなる非発泡層(フィルムを使用する場合はその厚みを含まない)の厚みは、20μm〜150μmが好ましく、25μm〜120μmがより好ましく、30μm〜100μmがさらに好ましい。
非発泡層の厚みが20μmより小さい場合は、外観を損ないやすくなる傾向があると共に、本発明の効果である、高い剛性が十分でなくなる傾向にある。一方、非発泡層の厚みが150μmを超える場合は、軽量性が犠牲になる傾向にある。
また、非発泡層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムを用いる場合、好ましく用いられるフィルムとしては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム重合体などのうち、含有されるプロピレン単量体成分が全体の75重量%以上、より好ましくは全体の90重量%以上であるポリプロピレン系樹脂からなる無延伸、または延伸されたフィルムがあげられ、これらは2層以上の多層フィルムであってもよい。
前記フィルムは、表面に意匠性を高めるために印刷が施されたり、接着性を高めるためにコロナ処理等の表面処理を施されたりしたものであってもよい。
前記フィルムの厚みは、15μm〜80μmが好ましく、20μm〜70μmがより好ましく、25μm〜60μmがさらに好ましい。フィルムの厚みが15μmより小さい場合は、熱成形時の延伸に伴いフィルムが破れやすくなる傾向がある。また、厚みが150μmを超える場合は、成形条件の幅が狭くなる傾向にあるとともに、軽量性が犠牲になる傾向にある。
本発明の積層発泡シートに用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートとしては、線状のポリプロピレン系樹脂に電子線を照射して長鎖分岐を導入したものや、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン樹脂を主たる成分とするポリプロピレン系樹脂組成物を基材として発泡させたものが好ましく用いられる。
特に、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン樹脂を基材の主たる成分とした場合、独立気泡率が高く、成形性に優れた発泡シートを容易に得ることができる。
電子線を照射して長鎖分岐を導入したポリプロピレン系樹脂の具体例として、サンアロマー社製のポリプロピレン系樹脂「PF−814」、「SD−632」などをあげることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練してえられる改質ポリプロピレン樹脂の具体例として、特許第3623585号公報に開示された改質ポリプロピレン系樹脂をあげることができる。
前記ポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材であるポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の範囲において、必要に応じて、他の樹脂またはゴムを添加してもよい。これら他の樹脂またはゴムの添加量は、樹脂の種類またはゴムの種類により異なるが、通常、基材のうちの40重量%以下であることが好ましい。
本発明において使用できる他の樹脂またはゴムの具体例としては、例えば、前記電子線を照射して長鎖分岐を導入したポリプロピレン系樹脂や改質ポリプロピレン系樹脂以外のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ブテン系樹脂などがあげられる。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材基材には、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または、架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。
本発明の積層発泡シートに用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートは、前記基材を発泡させて得られ、その方法は特に制限はない。
好ましい具体例として、押出機内で基材ポリプロピレン系樹脂組成物と発泡剤を溶融混練後、押出機内において発泡温度に調節し、環状のリップを有するサーキュラーダイスを用い、そのダイスのリップから大気圧中に押し出して円筒状の発泡体を得、次いでその円筒状発泡体を引き取りながら、冷却筒(マンドレル)による成形加工によって、延伸・冷却後、切り開いて、シート状にする方法があげられる。
前記発泡剤としては、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、無機ガス、水などがあげられる。また、それらの1種または2種以上を組み合わせて用いても良い。
発泡剤の添加量(混練量)は発泡剤の種類および目標発泡倍率により異なるが、ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲内にあることが好ましい。
また、発泡シートの気泡径を適宜の大きさにコントロールするために、必要に応じて、重炭酸ソーダ−クエン酸混合物またはタルクなどの造核剤を併用してもよい。必要に応じて用いられる該造核剤の添加量は、特に制限はないが、通常、基材樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部であることが好ましい。
また、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートは、所望の気泡構造を得る目的で、例えば、押出発泡した後に空気の吹き付けなどによりシート表面の冷却を促進させたり、マンドレルへの引き取り時に延伸してもよい。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートの密度としては、40〜500kg/mが好ましく、90〜300kg/mがより好ましく、100kg/m〜200kg/mがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡シートの密度が40kg/mより小さい場合には、剛性が不十分になる傾向があり、500kg/mより大きい場合には軽量性や断熱性が不十分となる傾向にある。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートの独立気泡率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。独立気泡率が60%より小さい場合には、剛性が不十分になる傾向がある。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚さとしては、1〜7mmが好ましく、1〜5mmがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚さが1mmより小さくなると断熱性、剛性が不十分になる傾向にあり、7mmより大きくなると成形性に劣る傾向にある。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡シートの厚み方向のセル数は、5個以上が好ましく、7個以上がより好ましく、9個以上がさらに好ましい。厚み方向のセル数が5個より小さくなると、断熱性、表面性に劣る傾向にある。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂発泡シートの目付は、150〜400g/mが好ましく、180〜380g/mがより好ましく、200〜370g/mがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂発泡シートの目付が150g/mより小さいと剛性や断熱性が十分でなくなる傾向にあり、また、400g/mより大きいと軽量性が十分でなくなる傾向にある。
本発明のポリプロピレン系樹脂多層発泡シートは、熱成形により、容易にカップ、トレー、ボウルなどの成形体とすることができる。
本発明の積層発泡シートを用いることにより、より軽量であっても必要な剛性が確保され、ドローダウンしにくいことから良好な熱成形が可能となる。
熱成形の例としては、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法があげられる。
熱成形によって得られた本発明の成形体は、ポリプロピレン系樹脂の特長である耐油性、耐熱性と共に、発泡体の特徴である軽量性、断熱性、緩衝性をあわせ持つものである。
さらに、本発明の成形体は、丼や皿といった形状とした場合に、従来のものと比べて手で持ったときの剛性感に優れたものとなることから、食品を入れた状態でも安心して持てる容器となる。
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例にて使用したポリプロピレン系樹脂の結晶融解熱量ΔHおよびメルトフローレートを、表1に示す。
Figure 2007125797
(製造例1)
樹脂Cは、以下のようにして製造したものである。ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製Y−700GV)100重量部に対し、リン酸エステル系核剤(旭電化社製、NA−11)0.5重量部をドライブレンドしたものを200℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練し、溶融押出することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
実施例における評価方法は、以下のとおりである。
<発泡シートの密度の測定>
JIS−K6767に準じ測定した。
(発泡シートの独立気泡率の測定)
ASTM D2856に記載の方法に準じエアピクノメータにより測定した。
<発泡シートの厚み測定>
発泡シートの幅方向に30mm間隔で測定点を設け、厚みゲージ(teclock社製厚みゲージ)を用いて各測定点の厚みを測定した後、各点の測定値の平均を発泡シートの厚みとした。
<発泡シートの厚み方向のセル数測定>
発泡シートの幅方向に等間隔に10点の測定点を設け、ルーペ(peacock社製pocket・micro×10)を用いて、測定点における厚み方向のセル数を測定した。その後、各点の測定値の平均を厚み方向のセル数とした。
<発泡シートの目付測定>
発泡シートの幅×100mmのサンプルを切り出し、その重量w(g)から、下式(2)に従って算出した。
(目付)=w/(0.1×発泡シートの幅(m))・・(2)
<ポリプロピレン系多層発泡シートの成形条件>
得られたポリプロピレン系多層発泡シートを、浅野研究所社製m巾連続真空成形機FLC415型に付随する、1ゾーンに巾方向に9個、流れ方向に9個の遠赤外線セラミックヒータを備えた2ゾーン式の加熱炉を用い、連続した発泡シートを送りチェーンでクランプし、加熱時間を20秒として成形位置方向に送りながら加熱した。この際、該成形機の加熱炉の最終ゾーン中央に備えられている非接触式放射温度計(パイロメータ)を用いて、加熱中の発泡シートの上下表面温度を測定したところ、発泡シート表面温度は154℃であった。
加熱後のシートを、さらに成形機の成形ゾーンに送り、開口部内寸170mmφ×底部内寸100mmφ×容器内面高さ50mmの丼形状、25個取りの金型を用い、非発泡層が内面となるように熱成形した。さらに、成形された発泡シートの開口部周縁を打ち抜いて、該多層発泡シートの成形体を得た。
得られた多層発泡シートの成形性および成形体の剛性を、以下の基準に従って評価を行った。その評価結果を表2に示す。
<多層発泡シートの成形性評価>
得られた成形体の内面および外面について目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:25個全ての成形体について、シート破れが見られない。
×:一部の成形体について、シートが部分的に破れているものがある。
<多層発泡シートの剛性評価>
得られた成形体(破れが発生した多層発泡シートについては破れの見られない成形体を用いた)を、開口部におけるリップ中央部二箇所にて固定した。次にIMADA(株)製DIGITAL FORCE GAUGE(MODEL No.MD−2000(SV−2))を用い、前記二箇所の固定部を結ぶ直線と直交する方向のリップ端部より圧縮速度10mm/秒で圧縮し、10mm圧縮させたときの荷重Nを測定し、その荷重Nを多層発泡シートの目付(kg/m)で除した値を剛性値とし、以下の基準で評価した。
○:剛性値が20N・m/kg以上
△:剛性値が15N・m/kg以上20N・m/kg未満
×:剛性値が15N・m/kg未満
また、官能評価として、500mlの水を入れた成形体の側面を手で保持した際の感触を以下の評価基準で評価した。
○:安定して成形体を保持できる。
×:成形体が柔らかすぎて安定して成形体を保持することができない。
実施例における、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの製造方法、ポリプロピレン系樹脂多層発泡シート、および成形体の成形条件は、以下のとおりである。
(発泡シートの製造方法)
ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製F113G)100重量部、ラジカル重合開始剤(t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.35重量部をリボンブレンダーで攪拌混合した配合物を、計量フィーダを用いて二軸押出機に供給し、液添ポンプを用いて押出機途中からイソプレンを0.5重量部供給し、前記二軸押出機中で溶融混練し、溶融押出することにより、改質ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
前記二軸押出機は、同方向二軸タイプであり、スクリュー径が44mmφであり、最大スクリュー有効長(L/D)が38であった。この二軸押出機のシリンダー部の設定温度を、イソプレン単量体圧入までは180℃、イソプレン圧入以降は200℃とし、スクリュー回転速度を140rpmに設定した。
前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部、ブレンドオイル0.05重量部、気泡核形成剤(永和工業社製セルボンSC/K)0.5重量部を、リボンブレンダーで撹拌混合した配合物を90−125mmφタンデム型押出機に供給し、樹脂温度200℃に設定した第1段押出機(90mmφ)中にて溶融させたのち、発泡剤としてイソブタンを前記改質ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対し1.7重量部圧入混合し、160℃(ダイスの樹脂流入部に設置した温度センサーによって測定)に設定した第2段押出機(125mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(127mmφ)より大気圧下に吐出し、外径335mm、本体長さ800mmの冷却筒にて成形しながら4.2m/分で引き取りつつ、延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより1035mm幅の発泡シートを得た。
得られた発泡シートは、密度150kg/m、独立気泡率82%、平均厚み3.1mm、セル数9.1個/厚み、目付240g/mであった。
(押出ラミネート法によるポリプロピレン系樹脂多層発泡シートの製造方法)
図2に示す押出ラミネート設備を用いて、発泡シート1を繰り出し、非発泡樹脂層7をTダイ4からフィルム状に押出すと共に、さらに、フィルム8を使用する場合には、エキスパンダーロール9を通して、フィルム8をロール2と冷却ロール3との間に繰り出し、ロール2と冷却ロール3とで発泡シート1と非発泡樹脂層7と、使用する場合はフィルムを圧着、引取りすることにより、発泡シートと非発泡樹脂層(とフィルム)からなる積層発泡シートを製造した。
(ポリプロピレン系多層発泡シートの成形条件)
得られたポリプロピレン系多層発泡シートを、浅野研究所社製m巾連続真空成形機FLC415型に付随する、1ゾーンに巾方向に9個、流れ方向に9個の遠赤外線セラミックヒータを備えた2ゾーン式の加熱炉を用い、連続した発泡シートを送りチェーンでクランプし、加熱時間を20秒として成形位置方向に送りながら加熱した。この際、該成形機の加熱炉の最終ゾーン中央に備えられている非接触式放射温度計(パイロメータ)を用いて、加熱中の発泡シートの上下表面温度を測定したところ、発泡シート表面温度は154℃であった。
加熱後のシートを、さらに成形機の成形ゾーンに送り、開口部内寸170mmφ×底部内寸100mmφ×容器内面高さ50mmの丼形状、25個取りの金型を用い、非発泡層が内面となるように熱成形した。さらに、成形された発泡シートの開口部周縁を打ち抜いて、該多層発泡シートの成形体を得た。
得られた多層発泡シートの成形性および成形体の剛性は、前述の評価方法に従って評価を行った。
(実施例1)
得られたポリプロピレン系樹脂発泡シートに、非発泡層として樹脂Aを用い、前記の押出ラミネート法に従い、樹脂温度235℃、エアギャップ10cm、非発泡樹脂層の厚み60μmおよび、発泡シートへ積層されるまでの時間1.7秒の条件にて押出ラミネートし、ポリプロピレン系多層発泡シートを得た。得られたポリプロピレン系樹脂多層発泡シートを、前述の成形条件に従って熱成形して、成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(実施例2)
実施例1において、発泡シートの引取速度を調節して非発泡樹脂層の厚みを120μmとした以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(実施例3)
実施例2において、樹脂Aに代えて樹脂Bを用いた以外は、実施例2と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(実施例4)
実施例1において、樹脂Aに代えて樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(実施例5)
前記の発泡シートに、樹脂Aを非発泡層として、さらにフィルムとしてサントックス(株)製、厚み20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム「Kタイプ」(フィルムa)を使用して、前記の押出ラミネート法に従い、温度235℃、エアギャップ10cm、非発泡樹脂層が発泡シートへ積層されるまでの時間1.7秒の条件で押出ラミネートし、ポリプロピレン系多層発泡シートを得た。
多層発泡シートを用い、実施例1と同様にして熱成形を行い、成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例1)
実施例1において、樹脂Aに代えて樹脂Dを用いた以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例2)
実施例1において、樹脂Aに代えて樹脂Eを用いた以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例3)
実施例1において、樹脂Aに代えて樹脂Fを用いた以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例4)
実施例2において、樹脂Aに代えて樹脂Dを用いた以外は、実施例2と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例5)
実施例1において、樹脂Aに代えて樹脂Dを用い、発泡シートの引取速度を調節して非発泡樹脂層の厚みを200μmとした以外は、実施例1と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例6)
実施例5において、樹脂Aに代えて樹脂Dを用いた以外は、実施例5と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
(比較例7)
実施例5において、樹脂Aに代えて樹脂Dを用い、フィルムaの代わりに、厚み50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム「Kタイプ」(フィルムb)を用いた以外は、実施例5と同様にして多層発泡シートおよび成形体を得た。
得られた多層発泡シートおよび成形体の評価結果を、表2に示す。
Figure 2007125797
以上より、結晶融解熱量ΔHが90J/g以上である樹脂A〜Cを用いた場合は、剛性に優れたポリプロピレン系多層発泡シートが得られることが判る。一方、ΔHが90J/g未満である樹脂D〜Fを用いて得られたポリプロピレン系多層発泡シートは剛性が十分でなく、また、さらに非発泡層や積層するフィルムの厚みを大きくして剛性を高めようとした場合には成形性に劣るものとなってしまうことが判る。
示差走査熱量測定により得られる、結晶融解熱量ΔHを算出するためのDSC曲線の模式図である。 押出ラミネート法の一例を示す図である。
符号の説明
1 発泡シート
2 ニップロール
3 冷却ロール
4 Tダイ
5 エアギャップ
6 ニップロール2と冷却ロール3とで形成される隙間
7 非発泡層
8 積層フィルム
9 エキスパンダーロール
10 積層発泡シート

Claims (4)

  1. ポリプロピレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、押出ラミネート法により非発泡層が積層されてなるポリプロピレン系多層発泡シートであって、該非発泡層を構成する樹脂が、示差走査熱量測定によって得られる結晶融解熱量ΔHが90J/g以上のポリプロピレン系樹脂であるポリプロピレン系樹脂多層発泡シート。
  2. 前記非発泡層を構成する樹脂が、結晶融解熱量ΔHが100J/g以上のポリプロピレン系樹脂である、請求項1記載のポリプロピレン系樹脂多層発泡シート。
  3. 前記非発泡層を介してポリプロピレン系樹脂フィルムがさらに積層されている、請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂多層発泡シート。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂多層発泡シートを熱成形して得られる成形体。
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