JP2018035896A - 等速自在継手および等速自在継手製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両のNVH性能は維持したままで、車両への取付け作業性の向上を図れるクロスグローブ型等速自在を提供する。【解決手段】ケージの最小内径よりも内側継手部材の最大外径を小さく設定したノンフロートタイプのクロスグローブ型の等速自在継手である。使用状態におけるボールの移動範囲を有し、この移動範囲における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の中央部隙間をδ1とし、移動範囲外における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の端部隙間をδ2としたときに、δ1<δ2とした。中央部隙間がしまりばめを構成し、端部隙間が中央部隙間の締め代よりも小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成する。【選択図】図3
Description
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達装置で利用される等速自在継手に関し、特に、ノンフロートタイプのクロスグルーブ型等速自在継手および等速自在継手製造方法に関する。
4WD車やFR車などの自動車で使用されるプロペラシャフトは、トランスミッションとデファレンシャル間で相対位置変化による軸方向変位と角度変位に対応できる構造とするために等速自在継手を具備する。この場合、通常、車両全体の重量軽減という観点から、軽量で、しかも回転バランスおよび振動特性がよいレブロ型(クロスグルーブ型)と称される摺動式等速自在継手が組み込まれる。クロスグルーブ型等速自在継手は、軸方向変位の規制機構(ストッパ)の違いによって、フロートタイプとノンフロートタイプの2種類がある。
クロスグルーブ型等速自在継手(以下、単にLJと呼ぶ場合がある)は、フロートタイプを示し、図7(a)(b)に示すように、外周面1に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝2(2a、2b)(図8参照)を円周方向に交互に形成した内側継手部材3と、内周面4に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝5(5a、5b)(図8参照)を円周方向に交互に形成した外側継手部材6と、対となる内側継手部材3のボール溝2a、2bと外側継手部材6のボール溝5a、5bとの交差部に組み込んだ複数個のトルク伝達ボール7と、内側継手部材3の外周面1と外側継手部材6の内周面4との間に介在してトルク伝達ボール7を円周方向で所定間隔に保持するケージ8とを有する。ケージ8には窓部11が設けられ、この窓部11にてボール7が支持される。
図7(a)は、内部部品(内側継手部材3とボール7とケージ8とで構成される)が外側継手部材6に対して中立状態(非スライド状態)を示し、図7(b)は、内部部品が中立状態から後述する密封装置側へスライドしたスライド状態を示す。この等速自在継手は、フロートタイプであるので、内側継手部材3とケージ8の干渉によって軸方向変位を規制するようにしている。すなわち、ケージ8の最小内径よりも内側継手部材3の最大外径を大きく設定し、内側継手部材3とケージ8の干渉によって軸方向変位を規制するようにしている。
また、図9はノンフロートタイプを示し、軸方向変位を大きくとれるようにケージ8の最小内径よりも内側継手部材3の最大外径を小さく設定している。なお、このノンフロートタイプの等速自在継手も、前記図7に示すフロートタイプの等速自在継手と同様な構成であるので、他の構成については、図7と同一符号を付してそれらの説明を省略する。
このノンフロートタイプでは、ケージ8と内側継手部材3とが干渉しないので、内部部品は図9に示すように、後述する密封装置13にボール7が接触するまで、スライド可能となる。このスライド量をL2とし、図7に示すフロートタイプの等速自在継手のスライド量をL1としたときに、L1<L2となる。なお、図7と図9において、Lは、中立状態において、ボール中心Obが通るラインである。
ところで、このような等速自在継手では、図10と図11に示すように、内側継手部材3の中心孔(内径孔)9にシャフト10を挿入してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。すなわち、内側継手部材3の中心孔9に雌スプライン9aを形成し、この中心孔9にシャフト10の端部雄スプライン10aを嵌入し、雌スプライン9aとスプライン10aとを嵌合させる。また、シャフト10の雄スプライン10aの端部には止め輪20が装着され、シャフト10の抜けを記載している。
外側継手部材6の軸方向一端側(反シャフト突出側の開口部)には、エンドキャップ12が嵌着され、シャフト突出側の外輪開口部は密封装置13にて塞がれている。密封装置13は、外側継手部材6に取り付けた金属製アダプタ14と、このアダプタ14とシャフト10間に配設されるゴムブーツ15とを備える。
ブーツ15は、小端部15bと、大端部15aと、小端部15bと大端部15aとを連結するV字形乃至U字形の折り返し部15cとを備える。金属製アダプタ14は、筒状の本体部14cと、この本体部14cにリング状平板14bを介して連設されて外側継手部材6に外嵌される大径筒部14aとを備えるものである。また、ブーツ15の小端部15bはシャフト10に取付けてブーツバンド16で締付けられている。ブーツ15の大端部15aは金属製アダプタ14の本体部14cの端部を加締めて保持されている。
エンドキャップ12は、外側継手部材6に外嵌される筒部12aと、反継手側に膨出する深皿状部12cと、筒部12aと深皿状部12cとを連設するリング状平板12bとからなる。そして、外側継手部材6には図示省略のボルト部材が装着され、このボルト部材の装着によって、密封装置13の金属製アダプタ14とエンドキャップ12とが外側継手部材6に支持される。すなわち、エンドキャップ12のリング状平板12b、アダプタ14のリング状平板14bにはそれぞれ貫孔12e、14eが設けられるとともに、外側継手部材6には貫通孔19(図9等参照)が設けられ、エンドキャップ12及び密封装置13の貫孔12e、14e及び貫通孔19にボルト部材が嵌入されることになる。
図10と図11はノンフロートタイプを示し、図10はプロペラシャフトに用いて車両搭載時のスライド範囲を示し、図11は等速自在継手自体のスライド可能範囲(車両非搭載時)を示している。この車両非搭載時のスライド可能範囲は、図11に示すようにスライドイン側にM2i、スライドアウト側にM2oで合計M2o+M2iとなる。この場合、M2oとM2iとは同一寸である。スライドイン側への内部部品のスライドは、ボール7が、エンドキャップ12のリング状平板12bと深皿状部12cとの間のコーナアール部12dに当接するまである。また、スライドアウト側への内部部品のスライドは、密封装置13の金属製アダプタ14の本体部14cとリング状平板14bとの間のコーナアール部14dに当接するまである。
また、図10に示す車両搭載時のスライド範囲は、スライドイン側にM1i、スライドアウト側にM1oで合計M1o+M1iとなる。この場合、M1oとM1iとは同一寸である。なお、図10において、S1iはスライドイン側へのボールの移動量であり、S1oはスライドアウト側へのボールの移動量である。このため、ボールの移動範囲SがS1o+S1i=2×S1o(2×S1i)となる。
この場合、M1o(M1i)<M2o(M2i)となる。このように、両搭載時のスライド範囲が、等速自在継手自体のスライド可能範囲よりも小さく設定される。
ところで、クロスグルーブ型等速自在継手は、外輪トラック(外側継手部材6のボール溝5)および内輪トラック(内側継手部材3のボール溝2)が互いに軸方向でクロスしている構造上、ジョイント内部すきま(PCDすきま)を締代で設定でき、それによりジョイント内部の円周方向ガタがなくなり、高速で回転するプロペラシャフトのNVHに対して適している。
また、特許文献1には、クロスグルーブ型等速自在継手の外側継手部材と内側継手部材のトラック溝を、熱処理後の焼入鋼切削または研削加工で仕上げることが記載されており、これにより、両トラックの精度が向上し、PCDすきまを適度の締め代で設定できるため、スライド抵抗を安定させることができる。
プロペラシャフトの等速自在継手として、フロートタイプのLJを適用する場合は、プロペラシャフトは、一対のフロートタイプLJと、これらを連結するシャフトとで構成できる。ところで、1個のLJのスライド量は比較的小さいが、ノンフロートタイプのLJの場合スライド量が比較的大きい。このため、プロペラシャフトの等速自在継手として、ノンフロートタイプのLJを用いる場合、他方(相手側)の等速自在継手に、例えば、固定式バーフィールドタイプの等速自在継手を用いることができる。
ところが、LJのスライド量としては比較的大きく設定できるが、この大きいスライド量は、プロペラシャフト組立品を車両に取付けるために必要とされるものであって、車両に取付けた後は、LJのスライド範囲はほぼ中央位置範囲のみで使用される場合がほとんどである。
ノンフロートタイプのクロスグローブ型等速自在継手と固定型等速自在継手を用いる場合、プロペラシャフトアッシー(プロペラシャフト組立品)を車両に取付ける際、摺動側の等速自在継手(ノンフロートタイプのクロスグローブ型等速自在継手)を図10の上半部位に示すように、スライドイン状態(シャフトをエンドキャップ12側へ押し込んだ状態)とする。すなわち、プロペラシャフトアッシーの全長を縮めた状態で、車両側のコンパニオンフランジのインローに嵌め込む。
ノンフロートタイプのクロスグローブ型等速自在継手は、この図10に示すように、継手内部のグリースを保持するためのエンドキャップ12が外側継手部材6に取付けてあり、このエンドキャップ12の張り出し分(図11のBで示す範囲)を回避できるまでこの等速自在継手をスライドインさせて取付ける必要がある。
ところで、クロスグローブ型等速自在継手は、車両のNVH(Noise, Vibration, Harshness)性能をよくするために、ジョイント内部すきま(PCDすきま)は締代設計(しまりばめ)とされている。そのため、車両への取付けのためには、作業者はクロスグローブ型等速自在継手をスライドさせるには相当の力を要することになる。このため、車両への取付け作業性が悪いという問題がある。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、車両のNVH性能は維持したままで、車両への取付け作業性の向上を図れるクロスグローブ型等速自在を提供する
本発明の等速自在継手は、外周面に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝を円周方向に交互に形成した内側継手部材と、内周面に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝を円周方向に交互に形成した外側継手部材と、軸線に対して互いに逆方向に傾斜した内側継手部材のボール溝と外側継手部材のボール溝との交差部に組み込んだ複数個のトルク伝達ボールと、内側継手部材の外周面と外側継手部材の内周面との間に介在してトルク伝達ボールを円周方向で所定間隔に保持する窓部を有するケージとを備え、ケージの最小内径よりも内側継手部材の最大外径を小さく設定したノンフロートタイプのクロスグローブ型の等速自在継手であって、車両搭載状態における前記トルク伝達ボールの移動範囲における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の中央部隙間をδ1とし、移動範囲外における外継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の端部隙間をδ2としたときに、δ1<δ2とし、かつ、中央部隙間がしまりばめを構成し、端部隙間が中央部隙間の締め代よりも小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成するものである。
本発明の等速自在継手は、使用状態におけるボールの移動範囲における隙間(中央部隙間)がしまりばめであるので、使用状態において、ガタが生じにくい構成となっている。また、ボールの移動範囲以外における隙間は、小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成しているので、その範囲のスライド抵抗を小さくできる。
中央部隙間の寸法規制を外側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成したり、中央部隙間の寸法規制を内側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成したり、中央部隙間の寸法規制を外側継手部材のボール溝に形成された膨出部及び側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成したりできる。
移動範囲の軸方向長さを20mm以上とすることができる。また、プロペラシャフトに使用されるのが好ましい。
本発明の第1の等速自在継手の製造方法は、外側継手部材の移動範囲のボール溝と内側継手部材の移動範囲のボール溝に、熱処理後の仕上げ加工を施すものである。この場合の等速自在継手は、ケージの最小内径よりも内側継手部材の最大外径を小さく設定したノンフロートタイプのクロスグローブ型の等速自在継手であって、使用状態におけるボールの移動範囲を有し、この移動範囲における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の中央部隙間をδ1とし、移動範囲外における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の端部隙間をδ2としたときに、δ1<δ2とし、かつ、中央部隙間がしまりばめを構成し、端部隙間が中央部隙間の締め代よりも小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成するものである。ここで、仕上げ加工とは、熱処理後の焼入鋼切削や研削加工である。
本発明の第2の等速自在継手の製造方法は、外側継手部材の移動範囲外のボール溝と内側継手部材の移動範囲外のボール溝に、冷鍛仕上げ加工を施すものである。この場合の等速自在継手も前記第1の等速自在継手の製造方法と同じ構成の等速自在継手である。
本発明の等速自在継手では、使用状態において、ガタが生じにくい構成となっているので、振動特性に優れた製品(等速自在継手)を提供できる。また、ボールの移動範囲以外での範囲では、スライド抵抗を小さくできるので、組立作業性に優れる。このため、車両のNVH性能は維持したままで、車両への取付け作業性の向上を図れるクロスグローブ型等速自在を提供できる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1と図5と図6に本発明にかかる等速自在継手を示し、この等速自在継手は、外周面21に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝22(22a、22b)(図2参照)を円周方向に交互に形成した内側継手部材23と、内周面24に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝25(25a、25b)(図2参照)を円周方向に交互に形成した外側継手部材26と、軸線に対して互いに逆方向に傾斜した内側継手部材23のボール溝22と外側継手部材26のボール溝25との交差部に組み込んだ複数個のトルク伝達ボール27と、内側継手部材23の外周面21と外側継手部材26の内周面24との間に介在してトルク伝達ボール27を円周方向で所定間隔に保持するケージ28とを有する。すなわち、ケージ28には窓部31が設けられ、この窓部(ポケット)31にトルク伝達ボール27が嵌合している。
図2におけるβは、軸線に対する各ボール溝22a、22b、25a、25bの交差角を示している。トルク伝達ボール27は、各ボール溝22a、22b、25a、25bの交差部に組み込まれている。
図5と図6に示すように、内側継手部材23の中心孔(内径孔)29にシャフト30を挿入してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。すなわち、内側継手部材23の中心孔29に雌スプライン29aが形成され、シャフト30の軸端部に雄スプライン30aが形成され、シャフト30の軸端部が内側継手部材23の中心孔29に嵌入されて、内側継手部材23の雌スプライン29aと、シャフト30の雄スプライン30aが嵌合する。また、シャフト30の雄スプライン30aの端部には止め輪40が装着され、シャフト30の抜けを規制している。
外側継手部材26の軸方向一端側(反シャフト突出側の開口部)には、エンドキャップ32が嵌着され、シャフト突出側の外輪開口部は密封装置33にて塞がれている。密封装置33は、ゴムや樹脂製のブーツ35と金属製の金属製アダプタ34とからなる。
ブーツ35は、小端部35bと、大端部35aと、小端部35bと大端部35aとを連結するV字形乃至U字形の折り返し部35cとを備える。金属製アダプタ34は、筒状の本体部34cと、この本体部34cにリング状平板34bを介して連設されて外側継手部材26に外嵌される大径筒部34aとを備えるものである。また、ブーツ35の小端部35bはシャフト30に取付けられてブーツバンド36で締付けられている。ブーツ35の大端部35aは金属製アダプタ34の本体部34cの端部を加締めて保持されている。
また、エンドキャップ32は、外側継手部材26に外嵌される筒部32aと、反継手側に膨出する深皿状部材32cと、筒部32aと深皿状部材32cとを連設するリング状平板32bとからなる。そして、外側継手部材26には図示省略のボルト部材が装着され、このボルト部材の装着によって、密封装置33の金属製アダプタ34とエンドキャップ32とが外側継手部材26に支持される。すなわち、エンドキャップ32のリング状平板32b、アダプタ34のリング状平板34bにはそれぞれ貫孔37,38が設けられるとともに、外側継手部材26には貫通孔39(図1参照)が設けられ、この貫孔37,38及び貫通孔39にボルト部材が嵌入されることになる。
ところで、図5はプロペラシャフトに用いて車両搭載時のスライド範囲を示し、図6は等速自在継手自体のスライド可能範囲(車両非搭載時のスライド可能範囲)を示している。車両非搭載時のスライド可能範囲は、図6に示すように、スライドイン側にM2i、スライドアウト側にM2oで合計M2o+M2iとなる。この場合、M2oとM2iとは同一寸であり、両搭載時のスライド範囲は、M2o+M2i=2×M2o(2×M2i)となる。スライドイン側への内部部品(内側継手部材23とボール27とケージ28とで構成される内部部品)のスライドは、ボール27が、エンドキャップ32のリング状平板32bと深皿状部32cとの間のコーナアール部32dに当接するまである。また、スライドアウト側への内部部品のスライドは、密封装置33の金属製アダプタ34の本体部34cとリング状平板34bとの間のコーナアール部34dに当接するまである。
また、図5に示す車両搭載時のスライド範囲は、スライドイン側にM1i、スライドアウト側にM1oで合計M1o+M1iとなる。この場合、M1oとM1iとは同一寸であり、車両搭載時のスライド範囲は、M1o+M1i=2×M1o(2×M1i)となる。なお、図5において、S1iはスライドイン側へのボールの移動量であり、S1oはスライドアウト側へのボールの移動量である。このため、ボールの移動範囲SがS1o+S1i=2×S1o(2×S1i)となる。
この場合、M1o(M1i)<M2o(M2i)となる。このように、車両搭載時のスライド範囲が、等速自在継手自体のスライド可能範囲よりも小さく設定される。そして、図4にこれらのスライド線図を示している。
ところで、本発明に係る等速自在継手では、図3に示すように、内側継手部材23のボール溝22の継手軸方向中央部に、車両搭載時のトルク伝達ボール27の移動範囲Sに対応して膨出部41が設けられ、外側継手部材26のボール溝25の継手軸方向中央部にはトルク伝達ボール27の移動範囲Sに対応して膨出部42が設けられている。以下、車両搭載時のトルク伝達ボール27の移動範囲をボール移動範囲Sと示すこともある。
ところで、外側継手部材26のボール溝25と内側継手部材23のボール溝22との間にすきま(PCDすきまと呼ぶ場合がある)が形成され、ボール移動範囲Sにおける外側継手部材26のボール溝25と内側継手部材23のボール溝22との間の中央部隙間50(膨出部41、42間)のPCDすきまをδ1とし、移動範囲外におる外側継手部材26のボール溝25と内側継手部材23のボール溝22の間の端部隙間51(膨出部41、42間以外の間)のPCDすきまをδ2としたときに、δ1<δ2としている。
この場合、中央部隙間50がしまりばめを構成し、端部隙間51,51がすきまばめを構成している。この中央部隙間50が設けられる範囲、すなわち、ボール移動範囲Sとしては、例えば、20mm以上に設定できる。この場合、ボール中立ラインLからスライドイン側へ10mm以上、ボール中立ラインLからスライドアウト側へ10mm以上としている。また、δ2とδ1との差、すなわち、δ2−δ1を50μm〜100μm程度としている。このため、端部隙間51が中央部隙間50の締め代よりも小さい締め代のしまりばめであってもよい。
ところで、内側継手部材23のボール溝22の膨出部41及び外側継手部材26のボール溝25の膨出部42は、熱処理後の仕上げ加工を施すことによって形成されている。ここで、熱処理後の仕上げ加工とは、熱処理後の焼入鋼切削や研削加工である。
また、外側継手部材26の移動範囲外のボール溝25と内側継手部材23の移動範囲外のボール溝22は、冷鍛仕上げ加工にて形成できる。ここで、冷鍛仕上げ加工とは、冷間鍛造仕上げである。
本発明の等速自在継手は、使用状態におけるボール移動範囲Sにおける隙間(中央部隙間50)がしまりばめであるので、使用状態において、ガタが生じにくい構成となっているので、振動特性に優れた製品(等速自在継手)を提供できる。しかも、ボール27の移動範囲以外における隙間は、小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成しているので、その範囲のスライド抵抗を小さくできる。このため、組立作業性に優れる利点がある。すなわち、車両のNVH性能は維持したままで、車両への取付け作業性の向上を図れるクロスグローブ型等速自在を提供できる。
外側継手部材の移動範囲のボール溝と内側継手部材の移動範囲のボール溝に、熱処理後の仕上げ加工を施すものである。使用状態におけるボールの移動範囲におけるすきまの精度向上を達成でき、このすきまを最適な締め代に設定でき、スライド抵抗をより安定させることができる。
また、外側継手部材26の移動範囲外のボール溝25と内側継手部材23の移動範囲外のボール溝22を冷鍛仕上げ加工を施すことによって形成できる。このため、消費材料の低減(省資源化)、生産性の向上(省エレルギー化)、加工の高精度化等の冷間鍛造の利点をそのまま生かすことができる。
前記実施形態では、内側継手部材23のボール溝22及び外側継手部材26のボール溝25に膨出部41,42を設けたが、他の実施形態として、いずれか一方にのみ設けてもよい。また、熱処理後の仕上げ加工を施す部位としても、前記実施形態では、内側継手部材23のボール溝22の膨出部41と外側継手部材26のボール溝25の膨出部42としていたが、他の実施形態として、いずれか一方のみであってもよい。また、外側継手部材29の移動範囲外のボール溝25と内側継手部材23の移動範囲外のボール溝22を冷鍛仕上げ加工を施していたが、他の実施形態として、いずれか一方のみであってもよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、トルク伝達ボール27の数としても任意に設定できる。外側継手部材26の移動範囲外のボール溝25と内側継手部材23の移動範囲外のボール溝22を研削工程で仕上げてもよい。ところで、この等速自在継手は実施形態で示すように、プロペラシャフトに最適な等速自在継手を構成するが、プロペラシャフトに限るものではなく、ドライブシャフト等に用いても、さらには、自動車以外の航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用することができる。
21 外周面
22、22a、22b ボール溝
23 内側継手部材
24 内周面
25,25a,25b ボール溝
26 外側継手部材
27 トルク伝達ボール
28 ケージ
41、42 膨出部
50 中央部隙間
51 端部隙間
S 移動範囲
22、22a、22b ボール溝
23 内側継手部材
24 内周面
25,25a,25b ボール溝
26 外側継手部材
27 トルク伝達ボール
28 ケージ
41、42 膨出部
50 中央部隙間
51 端部隙間
S 移動範囲
Claims (8)
- 外周面に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝を円周方向に交互に形成した内側継手部材と、内周面に軸線に対して互いに逆方向に傾斜したボール溝を円周方向に交互に形成した外側継手部材と、対となる内側継手部材のボール溝と外側継手部材のボール溝との交差部に組み込んだ複数個のトルク伝達ボールと、内側継手部材の外周面と外側継手部材の内周面との間に介在してトルク伝達ボールを円周方向で所定間隔に保持する窓部を有するケージとを備え、ケージの最小内径よりも内側継手部材の最大外径を小さく設定したノンフロートタイプのクロスグローブ型の等速自在継手であって、
車両搭載状態における前記トルク伝達ボールの移動範囲における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の中央部隙間をδ1とし、移動範囲外における外側継手部材のボール溝と内側継手部材のボール溝との間の端部隙間をδ2としたときに、δ1<δ2とし、かつ、中央部隙間がしまりばめを構成し、端部隙間が中央部隙間の締め代よりも小さい締め代のしまりばめ、又はすきまばめを構成することを特徴とする等速自在継手。 - 中央部隙間の寸法規制を外側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成することを特徴とする請求項1に等速自在継手。
- 中央部隙間の寸法規制を内側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成することを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
- 中央部隙間の寸法規制を外側継手部材のボール溝に形成された膨出部及び内側継手部材のボール溝に形成された膨出部で構成することを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
- 移動範囲の軸方向長さを20mm以上としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手。
- プロペラシャフトに使用されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の等速自在継手。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手を製造する製造方法であって、
外側継手部材の移動範囲のボール溝と内側継手部材の移動範囲のボール溝の少なくともいずれかに、熱処理後の仕上げ加工を施すことを特徴とする等速自在継手製造方法。 - 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の等速自在継手を製造する製造方法であって、
外側継手部材の移動範囲外のボール溝と内側継手部材の移動範囲外のボール溝の少なくともいずれかに、冷鍛仕上げ加工を施すことを特徴とする等速自在継手製造方法。
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JP2016170854A JP2018035896A (ja) | 2016-09-01 | 2016-09-01 | 等速自在継手および等速自在継手製造方法 |
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---|---|---|---|
JP2016170854A JP2018035896A (ja) | 2016-09-01 | 2016-09-01 | 等速自在継手および等速自在継手製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018035896A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112022004371T5 (de) | 2021-09-10 | 2024-07-04 | Hitachi Astemo, Ltd. | Gleichlaufgelenk für Propellerwelle und eine Propellerwelle |
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2016
- 2016-09-01 JP JP2016170854A patent/JP2018035896A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112022004371T5 (de) | 2021-09-10 | 2024-07-04 | Hitachi Astemo, Ltd. | Gleichlaufgelenk für Propellerwelle und eine Propellerwelle |
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