JP2018035268A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゴム弾性と流動性にバランスよく優れた熱可塑性エラストマー組成物の提供。【解決手段】少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)と、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)と、ポリオレフィン樹脂(c)(但し成分(a)とは異なる)とを少なくとも含有する熱可塑性エラストマー組成物。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)を0.1〜400質量部、ポリオレフィン樹脂(c)を0.1〜400質量部含有することが好ましい。ポリオレフィン樹脂(c)としては数平均分子量50,000以上250,000以下のポリプロピレン系樹脂が好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関する。詳しくは、本発明は、ゴム弾性と流動性にバランスよく優れる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有するエラストマーをいう。具体的には、成形加工する際には、加工温度において溶融し、容易に周知の熱可塑性樹脂と同様に成形加工することが可能となるが、成形加工後に、実際に各種材料として使用する温度においては、架橋ゴムと同様の物理的性質を有するものである。このように、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、独特のゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であることから、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨等の用途に幅広く用いられている。
熱可塑性エラストマー組成物の代表的なものとして、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)組成物が知られている。動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物とは、結晶性の熱可塑性マトリックス(海相)中に、熱硬化性エラストマーである架橋ゴム粒子がドメイン(島相)として細かく分散した海島構造を特徴とする多相系高分子材料である。常温においてはドメインがTPV組成物に加硫ゴムの機能を与え、高温では熱可塑性マトリックスが流動し塑性変形が可能となるため、熱可塑性プラスチックと同様の成形加工が可能となる。これらの材料は、加硫ゴムが使用される多くの用途、例えばホース、ガスケットなどに用いられる。
TPV組成物は、典型的にはジエン等を含む架橋性のエラストマーが、適当な架橋剤と反応することにより、動的架橋、すなわち混合機や成形機等の内部で混合しながら架橋されることによって、熱可塑性マトリックスに微分散しながら架橋ゴム粒子が形成されることによって得られる。
TPV組成物としては、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体とポリオレフィン樹脂とを架橋剤の存在下に動的熱処理して得られたものが最も多く実用化されており、ジエン量を増やす、架橋剤量を増やす、架橋反応時間を増やす等により、架橋度を上げてゴム弾性の向上を図る研究などが行われてきた。しかし、ゴム弾性を高めると流動性が低下するため、ゴム弾性と流動性の両立を図ることが課題であった。
特許文献1,2には、エチレン・α−オレフィン共重合体又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体よりなる主鎖と、片末端にビニル基を含有する結晶性プロピレン重合体に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン系共重合体を含む熱可塑性エラストマー組成物が提案されている。これらの熱可塑性エラストマー組成物では、高結晶性のポリプロピレンセグメントの側鎖と、エチレン・α−オレフィン共重合体又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の主鎖により、熱可塑性エラストマーとして非常に高い性能が得られるとされているが、特許文献1,2に記載の熱可塑性エラストマー組成物においても、ゴム弾性と流動性の両立は十分に満足し得るものではなかった。
特許第5600219号公報 特開2014−214204号公報
本発明は、ゴム弾性と流動性にバランスよく優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
本発明者が上記課題を解決するために検討した結果、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)とエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)とポリオレフィン樹脂(c)とを含む熱可塑性エラストマー組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[8]の通りである。
[1] 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)と、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)と、ポリオレフィン樹脂(c)(但し成分(a)とは異なる)とを少なくとも含有する熱可塑性エラストマー組成物。
[2] エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)を0.1〜400質量部、ポリオレフィン樹脂(c)を0.1〜400質量部含有する[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 更に、架橋剤(d)及び/又は炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を含有する[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 架橋剤(d)と共に、触媒(f)を含有する[3]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] 架橋剤(d)及び触媒(f)と共に、中和剤(g)を含有する[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)が、片末端にビニル基を有するプロピレン重合体である[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] ポリオレフィン樹脂(c)が数平均分子量50,000以上250,000以下のポリプロピレン系樹脂である[1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[8] JIS K7210に準拠して230℃、荷重49Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が5〜200g/10分であり、JIS K6262に準拠して70℃、22時間、25%圧縮の条件で測定した圧縮永久歪みが60%以下である[1]ないし[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム弾性と流動性とにバランスよく優れる。このため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形加工性に優れた架橋ゴム代替材料として工業的に非常に有用である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、シール、クッション、ブーツ等の自動車分野;ガスケット、パッキン等の建築分野;グリップ、キャスター等の雑貨分野等に好適に用いることができる。
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本発明において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)(以下、「成分(a)」と称す場合がある。)と、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)(以下、「成分(b)」と称す場合がある。)と、成分(a)とは異なるポリオレフィン樹脂(c)(以下、「成分(c)」と称す場合がある。)とを必須成分として含有するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、更に、架橋剤(d)(以下、「成分(d)」と称す場合がある。)、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)(以下、「成分(e)」と称す場合がある。)、触媒(f)(以下、「成分(f)」と称す場合がある。)、中和剤(g)(以下、「成分(g)」と称す場合がある。)を含有するものであり、また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で成分(a)〜(g)以外の他の成分を含有していてもよい。
<作用機構>
少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)とエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)とポリオレフィン樹脂(c)とを含有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、ゴム弾性と流動性とを両立してこれらを共に優れたものとすることができる作用機構の詳細は明らかではないが、以下のように推定される。
熱可塑性エラストマー組成物の調製に当たり、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)とエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)とポリオレフィン樹脂(c)とを混練すると、以下の反応(I)〜(III)が起こると推定される。
(I) エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の架橋反応
(II) 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)へのグラフト化反応(成分(a)に成分(b)がグラフトし、成分(a)の主鎖に対して成分(b)がグラフト鎖を形成する。)
(III) 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)同士の結合反応
このうち、特に上記(II)の反応により生成したグラフト化物が、従来の動的架橋型熱可塑性エラストマーの結晶性熱可塑性マトリックス(海相)に相当するポリオレフィン樹脂(c)相と、架橋ゴム粒子のドメイン(島相)に相当するエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)相との相溶化剤として機能することで、ゴム弾性を維持しながら十分な流動性を付与するものと考えられる。
なお、前述の特許文献2に記載される熱可塑性エラストマー組成物は、本発明で用いる成分(b)に該当するエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体よりなる主鎖と、本発明で用いる成分(a)に該当する片末端にビニル基を有する結晶性プロピレン重合体(結晶性ポリプロピレンマクロモノマー)に由来する側鎖とを有する分岐構造オレフィン共重合体を含むものであり、この特許文献2には、熱可塑性エラストマー組成物を架橋剤の存在下に動的架橋して用いてもよい旨の記載、エラストマーの各種物性の改良の目的で、ジエン共重合体ゴムのようなその他のエラストマー成分、結晶性ポリオレフィン等の結晶性樹脂成分を添加してもよい旨の記載もある。
この特許文献2における分岐構造オレフィン共重合体は、片末端にビニル基を有する結晶性プロピレン重合体と、エチレン、α−オレフィン及びジエンを混合して、特定の遷移金属触媒の存在下に配位重合することにより製造されるものであり、重合後の組成物中には、生成物の分岐構造オレフィン共重合体だけでなく、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体と結晶性ポリプロピレンマクロモノマーも含まれるものとなる。
しかし、特許文献2には、具体的にポリオレフィン樹脂を配合した実施例はなく、また、用いるポリオレフィン樹脂の種類や配合量についても何ら検討されていない。
本発明では、ポリオレフィン樹脂(c)を必須として含有することで、流動性の向上を図り、ゴム弾性と流動性の両立を図るが、特許文献2には、このような効果を示唆する記載はない。
しかも、片末端にビニル基を有する結晶性プロピレン重合体と、エチレン、α−オレフィン及び非共役ジエンを混合して、特定の遷移金属触媒の存在下に配位重合することにより分岐構造オレフィン共重合体を製造した場合、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の架橋反応が同時に進行しないと推定され、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)及びポリオレフィン樹脂(c)を含む本発明の熱可塑性エラストマー組成物、或いは少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)及びポリオレフィン樹脂(c)を含む混合物を動的熱処理して得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物のように、架橋構造に由来するゴム弾性の向上という効果は得られない。
<少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)>
少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)の反応性官能基としては、ビニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、シアノ基、カルボニル基、イミノ基、ハロゲン基等が挙げられる。これらのうち、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体中のジエンとの反応性の観点から、成分(a)は、反応性官能基としてビニル基を有することが好ましい。成分(a)は、これらの反応性官能基の1種のみを含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。
また、成分(a)のポリオレフィンとしては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられるが、耐熱性ならびに成形性向上の観点から、プロピレン系樹脂が好ましい。
特に、成分(a)としては、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体中のジエンとの反応性、耐熱性および成形性の観点から、片末端にビニル基を有する結晶性プロピレン重合体(以下、「結晶性ポリプロピレンマクロモノマー」と称す場合がある。)であることが好ましい。
以下、成分(a)として好適な結晶性ポリプロピレンマクロモノマーについて説明する。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの末端ビニル基とは、プロピレン重合の終了末端において、β−水素脱離やβ−メチル脱離などが起こることによって末端に不飽和結合が生じ、その生じた不飽和結合の4つの置換基のうち3つの置換基が水素原子であることを指す。この末端ビニル基は1−プロペニル基とも呼ばれる。通常、このビニル基以外の不飽和末端、例えばビニリデン基や内部オレフィンなどは、前述のグラフト化反応は困難であるので、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの末端基がビニル基であることが重要である。
本発明で用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーとしては、好ましくは、以下の(a1)又は(a2)が挙げられる。
(a1)片末端にビニル基を有し、アイソタクチックペンタッド分率が0.80以上であり、かつ数平均分子量(Mn)が75,000以下である結晶性プロピレン重合体(以下、「成分(a1)」と称す場合がある。)
(a2)片末端にビニル基を有し、シンジオタクチックペンタッド分率が0.60以上であり、かつ数平均分子量(Mn)が75,000以下である結晶性プロピレン重合体(以下、「成分(a2)」と称す場合がある。)
上記成分(a1)又は成分(a2)を製造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のマクロモノマーの製造方法を適宜用いることができるが、高結晶性のポリプロピレンマクロモノマーを効率よく製造可能な方法が好ましい。より具体的には、遷移金属化合物を用いたプロピレンの配位重合によって製造され、重合終了末端が高い割合でビニル基となる手法が経済的な観点から好ましい。
例えば成分(a1)を製造する方法としては、ステレオリジッドなC2対称架橋メタロセン触媒を用い、高温下でプロピレンを重合することによりβ−メチル基脱離反応が頻発することを利用し、末端にビニル基を導入する方法(例えば特表2001−525461号公報)、特定の部位に嵩高い置換基を有する錯体を用いることにより、または特定の部位に複素環基を有する錯体を用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば特開平11−349634号公報、特開2009−299045号公報等)、アイソタクチック構造選択的メタロセン触媒によるプロピレン中、塩化ビニルなど脱離しやすい官能基を持つビニルコモノマーを共重合させ、このコモノマーが挿入と同時にβ官能基脱離を起こし選択的に末端ビニル基を持つマクロモノマーを製造する方法(Gaynor,S.G.Macromolecules 2003,36,4692−4698)や、プロピレンの2,1−挿入が優先するプロピレン重合触媒(例えば、ピリジルジイミン鉄(II)錯体に代表されるような後周期遷移金属錯体)を用いて、比較的困難なβ−メチル基脱離過程を経ることなく、β−水素脱離を経て末端ビニル基を導入する方法(Brookhart,M.et.al.Macromolecules 1999,32,2120)等を挙げることができる。
このうち特定の部位に複素環基を有する錯体を用いることにより、比較的低温でのβメチル脱離反応の頻度を高めることで高い立体規則性を保ちながら製造する方法(例えば、特開2009−299045号公報)が、高立体規則性と高ビニル選択性の両立の観点から特に好ましい。
成分(a2)を製造する方法としては、非常に嵩高い置換基を持つ非架橋メタロセン触媒を用いる方法(Resconi,L.et.al.J.Am.Chem.Soc.1992,114,1025.)、ステレオリジッドなCs対称架橋メタロセン触媒を用い高温下でプロピレンを重合する方法(特表2001−525461号公報)、シンジオタクチック選択的メタロセン触媒によるプロピレン中、塩化ビニルなど脱離しやすい官能基を持つビニルコモノマーを共重合させ、このビニルコモノマーが挿入と同時にβ官能基脱離を起こし選択的に末端ビニル基を持つマクロモノマーを製造する方法(Kaminsky,W.et.al.Macromol.Chem.Phys.2010,ASAP)、特定の置換基を持つビス(フェノキシイミン)チタン錯体が、プロピレンの2,1−挿入からのβ水素脱離によって、シンジオタクチックポリプロピレンの末端にビニル基が選択的に導入する方法(国際公開第03/025025号、またはCherian,A.E.et.al,Macromolecules 2005,38,6268など)等が挙げられる。
このうち高立体規則性と高ビニル選択性の両立の観点から、特定の置換基を持つビス(フェノキシイミン)チタン錯体を用い、プロピレンの2,1−挿入からのβ水素脱離によって、シンジオタクチックポリプロピレンの末端にビニル基が選択的に導入する方法が好ましい。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、通常、片末端にビニル基を有するが、末端にビニル基を有さない分子を含んでいてもよく、両末端がビニル基である分子を含んでいてもよい。好ましくは、マクロモノマー分子の一方の末端がビニル基であり、もう一方の末端はアルキル基である。
本発明において用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの製造方法としては、制限はされないが、前述の通り、経済的な観点でプロピレンの配位重合によって製造することが好ましい。この方法で製造した場合、結晶性ポリプロピレンマクロモノマー分子の末端は、通常は、重合反応の開始末端がアルキル基、重合反応の終了末端が高い確率でビニル基になるためである。なおこの場合、マクロモノマー分子の両方の末端がビニル基になる可能性は、通常極めて低くなる。
得られた結晶性ポリプロピレンマクロモノマーのうち、片末端にビニル基を有する分子の割合(末端ビニル率)は、通常50%以上であり、80%以上が好ましい。この割合が50%未満では、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーのうち、グラフト化されるものの割合が少なく、得られる熱可塑性エラストマー組成物の性能が不十分となるおそれがある。
ポリプロピレンマクロモノマーの末端ビニル率は、13C−NMRとH−NMRの測定結果より、以下の式に基づいて求められる。
末端ビニル率(%)=ビニル末端数/開始末端数
=ビニル末端数/{(全末端数−長鎖分岐数)/2}
全末端数
=i−ブチル末端数+n−プロピル末端数+n−ブチル末端数+2,3−ジメチルブチル末端数+ビニル末端数+ビニリデン末端数+ビニレン末端数
13C−NMR測定から求めるもの)
イソブチル末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=1000×(22.52,23.79,25.76,47.42ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
n−プロピル末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=1000×(14.47,30.48,39.64ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
n−ブチル末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=1000×(14.11,23.21,36.90ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
2,3−ジメチルブチル末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=1000×(16.23,17.66,36.42,42.99ppmのシグナルの積分値の平均)/Sααの積分値
長鎖分岐数(個/1000プロピレンモノマー)
=1000×(31.60,44.00,44.69ppmのシグナルの積分値の合計)/(4×Sαα)の積分値
H−NMR測定から求めるもの)
ビニル末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=2000×(4.9−5.1,5.7−5.9ppm領域のビニルシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
ビニリデン末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=3000×(4.69,4.74ppmのビニリデンシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
ビニレン末端数(個/1000プロピレンモノマー)
=3000×(5.3−5.5ppm領域のビニレンシグナルの積分値)/(3.0−0.2ppm領域の主鎖由来のシグナルの積分値)
上記特徴を満たすために、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、前記製造方法のような適切な触媒を用いて、適切な重合条件のもとに製造される。
また、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーとしては、剛性及び耐熱性を阻害しない限り、結晶性ポリプロピレンを側鎖に持つ、分岐型の結晶性ポリプロピレンマクロモノマーであってもよい。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの構造については、特に限定されるものではないが、具体的にはそのマクロモノマー中のポリプロピレンが、立体規則性の高い構造を有するものである。ポリプロピレンの立体規則性の高さを表す因子として、「ペンタッド(分率)」が用いられる。ペンタッドはポリプロピレンの隣り合う側鎖メチル基の相対的配置の連続性を示すもので、この値が高ければ高いほど、立体規則性が高いと解釈される。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)とは、5個のプロピレンモノマー単位が連続してメソ結合している連鎖の中心のプロピレン単位の、全プロピレン単位に対する割合を百分率で表したものである。シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)は、5個のプロピレンモノマー単位が連続してラセミ結合している連鎖の中心のプロピレン単位の、全プロピレン単位に対する割合を百分率で表したものである。ペンタッドは通常、13C−NMRによって決定される。なお具体的には特開2003−292700号公報に記載の方法により求められる。本発明において用いられるポリプロピレンマクロモノマーの構造としては、好ましくは、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が高いもの、またはシンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)が高いものである。これらのものは「ハードセグメント」として、より強固な結晶化度の高い結晶を形成することにより、これがより強固な架橋点として作用することで優れたエラストマー性能を与えると考えられるためである。
アイソタクチックペンタッド分率の高い結晶性ポリプロピレンマクロモノマー(以下、「アイソタクチックポリプロピレンマクロモノマー」と称することがある)としては、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が、通常0.80以上、好ましくは0.90以上である。アイソタクチックペンタッド分率が大きくなるほど、融点が上昇し、より耐熱性が向上する点で好ましい。上限は本発明の目的を阻害しない限り特に制限はされないが、通常計算上の上限である1.00が上限である。
シンジオタクチックペンタッド分率の高いポリプロピレンマクロモノマー(以下、「シンジオタクチックポリプロピレンマクロモノマー」と称することがある)としては、シンジオタクチックペンタッド分率(rrrr)が、通常0.60以上であり、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.80以上であり、さらに好ましくは0.90以上である。シンジオタクチックペンタッド分率が大きくなるほど、融点が向上し、より耐熱性が向上する点で好ましい。上限は本発明の目的を阻害しない限り特に制限はされないが、通常計算上の上限である1.00が上限である。
なお、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、エチレンや、プロピレン以外のα−オレフィンに由来する単位を含んでいてもよい。ポリプロピレンを重合する過程で導入されうる若干量の異種結合や重合時の溶解性を補償するための若干量のコモノマーは、側鎖の剛性並びに耐熱性を著しく阻害しない限りにおいて許容される。ただし、剛性ならびに耐熱性を保つ面では、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーはプロピレンの単独重合体が好ましい。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーは、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上の融点を有する。融点は示差熱分析(DSC)によって規定することができ、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの結晶性の指標として用いることができる。非晶性、または低結晶性のポリプロピレンマクロモノマーは物理的架橋点を形成しうるハードセグメントとして働くことができず、前述のグラフト鎖として存在したとしてもエラストマーとしての性能は期待されない。
本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量は特に限定されないが、目的とする物理的及び機械的特性の組成物を得るために任意に調節することができる。
結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量は、GPC測定により求められる。結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は通常200,000以下であり、流動性の観点から好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下である。一方、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は通常1,000以上であり、成形性、物性向上の観点から、好ましくは3,000以上であり、より好ましくは10,000以上である。
本発明に用いられる結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量分布(質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))に特に限定はないが、分子量による精密な物性制御を可能にするため、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの分子量分布はできるだけ狭いことが好ましい。Mw/Mnで通常1以上であり、6以下、好ましくは3以下である。
なお、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、結晶性ポリプロピレンマクロモノマー等の少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
<エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)>
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)におけるα−オレフィン単位としては、プロピレン単位、1−ブテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、1−ペンテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、4−メチル−1−ヘキセン単位、1−ヘプテン単位、1−オクテン単位、1−デセン単位等が挙げられる。これらの中でもプロピレン単位、1−ブテン単位、1−ヘキセン単位が好ましく、特にプロピレン単位が好ましい。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)には、これらのα−オレフィン単位の1種のみが含まれていても2種以上が含まれていてもよい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)における非共役ジエン単位としては、ジシクロペンタジエン単位、1,4−ヘキサジエン単位、シクロオクタジエン単位、メチレンノルボルネン単位、エチリデンノルボルネン単位、ビニリデンノルボルネン単位等が挙げられる。これらの中でもエチリデンノルボルネン単位及び/又はビニリデンノルボルネン単位が含まれているとエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)に適度な架橋構造を与えることができるために好ましい。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)には、これらの非共役ジエン単位の1種のみが含まれていても2種以上が含まれていてもよい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)におけるエチレン単位の含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、一方、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。エチレン単位の含有量が上記範囲であると適度な柔軟性を与えるために好ましい。
また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)におけるα−オレフィン単位の含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、一方、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。α−オレフィン単位の含有量が上記範囲であると適度な柔軟性を与えるために好ましい。
更に、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)における非共役ジエン単位の含有量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、一方、好ましくは10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下である。非共役ジエン単位の含有量が上記下限値以上であると熱可塑性エラストマー組成物の架橋度を高める観点から好ましく、また、上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。
なお、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)における各構成単位の含有量は赤外分光法により求めることができる。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは300,000以上であり、より好ましくは350,000以上であり、更に好ましくは400,000以上である。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは900,000以下であり、更に好ましくは800,000以下である。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の質量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると外観の観点から好ましく、上記下限値以上であるとゴム弾性向上の観点、ブリードアウト防止の観点から好ましい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の質量平均分子量(Mw)の測定方法及び測定条件は、後掲の実施例の項に示される通りである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)の1種のみを含むものであってもよく、含まれる単量体単位やその含有量、物性等の異なる2種以上を含むものであってもよい。
<ポリオレフィン樹脂(c)>
ポリオレフィン樹脂(c)(但し成分(a)とは異なる)としては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられるが、耐熱性、成形加工性等に優れることから、プロピレン系樹脂が好適に用いられる。
ポリプロピレン系樹脂とは、全単量体単位に対するプロピレン単位の含有量が50質量%よりも多いポリオレフィン樹脂である。
ポリプロピレン系樹脂としては、その種類は特に制限ざれず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のいずれも使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂がプロピレンランダム共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を例示することができる。また、ポリプロピレン系樹脂がプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン単位の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。プロピレン単位の含有量が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。一方、ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレン単位の含有量の上限については特に制限されず、通常100質量%である。なお、ポリプロピレン系樹脂のプロピレン単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は通常250,000以下であり、流動性の観点から好ましくは200,000以下である。一方、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は通常50,000以上であり、成形性、耐熱性の観点から、好ましくは60,000以上である。
なお、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた多段重合法を挙げることができる。この多段重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせて製造してもよい。
また、ポリプロピレン系樹脂は市販の該当品を用いることも可能である。市販のポリプロピレン系樹脂としては下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。入手可能な市販品としては、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂(c)の1種のみを含むものであってもよく、含まれる単量体単位の種類や含有量、物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
<架橋剤(d)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の成分(b)を架橋反応させてゴム弾性を高めるために、架橋剤(d)を含むことが好ましい。
架橋剤(d)としては、特に限定はされないが、成分(a)や、成分(a)と成分(b)とのグラフト化物を分解または架橋することなく成分(b)を架橋することのできる架橋剤であれば使用することができる。具体的な架橋剤(d)としてはフェノール系樹脂;過酸化物;アジド;アルデヒド−アミン反応生成物;ビニルシラングラフト化剤;ヒドロシリル化剤;置換基を有していてもよい尿素化合物;置換基を有していてもよいグアニジン;置換基を有していてもよいキサンテート;置換基を有していてもよいジチオカルバメート;硫黄、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラミジスルフィド類等の硫黄化合物;パラキノンジオキシム、ジベンゾパラキノンジオキシム等のオキシム化合物等が用いられ、好ましくはフェノール系樹脂、より好ましくはアルキルフェノール樹脂である。
架橋剤(d)のアルキルフェノール樹脂としては、アルキルフェノール構造単位を複数有する化合物であれば特に制限されない。アルキルフェノール樹脂として具体的には、フェノールのベンゼン環のオルト位またはパラ位に炭素数1〜12のアルキル基が結合した構造単位を複数有する化合物が挙げられる。より具体的には、ゴム用架橋剤として一般的に使用されている下記式(1)で表される化合物が挙げられる(米国特許3287440号公報及び同3709840号公報参照)。
Figure 2018035268
(式(1)中、mは0〜10の整数を表し、X及びYはそれぞれ独立に水酸基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を表し、Rは炭素原子数1〜15の飽和炭化水素基を表す。なお、複数のRは互いに同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
上記式(1)で表される化合物は、置換フェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒で縮重合させることによって製造することができ、その形状は、通常固体である。
アルキルフェノール樹脂としては、好ましくは、アルキルフェノールホルムアルデヒドや、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド等のハロゲン化アルキルフェールホルムアルデヒドが挙げられ、より好ましくは、エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体との相溶性の観点からアルキル基の炭素原子数8以上であるアルキルフェノールホルムアルデヒド及び/又はハロゲン化アルキルフェノールホルムアルデヒドである。
これらの架橋剤(d)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のフェノール系樹脂架橋剤は、通常、触媒と共に使用される。ここで用いることができる触媒としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンのような触媒(f)、及び酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛のような中和剤(g)が用いられる。フェノール系樹脂がハロゲン化されている場合には触媒(f)は用いなくてもよい。
[炭化水素系ゴム用軟化剤(e)]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、得られる熱可塑性エラストマー組成物を軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性、流動性を向上させるために、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を含むことが好ましい。
炭化水素系ゴム用軟化剤(e)としては鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられるが、他の成分との親和性の観点から鉱物油系軟化剤が好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。これらの中でも、本発明の熱可塑性エラストマー組成物はパラフィン系オイルを含むことが好ましい。なお、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)は1種のみで用いてもでも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭化水素系ゴム用軟化剤(e)の40℃における動粘度は、20センチストークス(cSt)以上であることが好ましく、50cSt以上であることが更に好ましく、また、一方、800cSt以下であることが好ましく、600cSt以下であるのが好ましい。また、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)の引火点(COC法)は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であるのが更に好ましい。
なお、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を用いる場合、成分(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)を成分(a)及び(c)成分と混合する前に、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)とエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)とを予め混合して油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとして用いてもよい。
油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを製造する方法(油展方法)としては公知の方法を用いることができる。油展方法としては、例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーを用い、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)と炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を機械的に混練して油展する方法、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)に所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒する方法、クラム状のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)と炭化水素系ゴム用軟化剤(e)の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法等が挙げられる。
油展エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは市販品として入手することが可能である。例えば、JSR社製JSR EPR、三井化学社製三井EPT、住友化学社製エスプレン(登録商標)、LANXESS社製Keltan(登録商標)等から該当品を選択して使用することができる。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分(a)〜(g)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の配合成分を配合することができる。
任意成分としては、例えば、充填材(フィラー)、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物、上記成分以外の他の熱可塑性樹脂、上記成分以外のエラストマーを挙げることができ、これらの中から任意のものを単独でまたは併用して用いることができる。
ここで、他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等の1種又は2種以上を挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が他の熱可塑性樹脂やエラストマーを含む場合、前述の成分(a)〜(c)を含むことによる本発明の効果を有効に得るために、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の他の熱可塑性樹脂やエラストマーの含有量は合計で10質量%以下であることが好ましい。
また、充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック等の1種又は2種以上を挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこれらの充填材を含む場合、熱可塑性エラストマー組成物中の充填材の含有量は20質量%以下であることが好ましい。
<各成分の含有量>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における成分(a)である少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)の含有量は、成分(b)であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して0.1〜400質量部であることが好ましい。
成分(a)の含有量が上記下限以上であると、成分(a)が成分(b)にグラフト鎖として導入されることによる成分(a)と成分(b)との反応生成物であるグラフト化物による前述の相溶化剤としての効果を十分に得ることができ、ゴム弾性と流動性を高いレベルで両立することが可能となる傾向にある。成分(a)の含有量が上記上限以下であると、耐熱性が良好であり好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(a)を、成分(b)の100質量部に対して特に1質量部以上、とりわけ2質量部以上含有することが好ましく、特に300質量部以下、とりわけ200質量部以下含有することが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における成分(c)であるポリオレフィン樹脂(c)の含有量は、成分(b)であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して0.1〜400質量部であることが好ましい。
成分(c)は成形性に寄与する成分であり、成分(c)の含有量が上記下限以上であると、流動性、成形加工性が良好となる傾向にあり好ましい。また、成分(c)の含有量が上記上限以下であると、ゴム弾性、柔軟性が良好となる傾向があり、好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(c)を成分(b)の100質量部に対して特に1質量部以上、とりわけ2質量部以上含有することが好ましく、特に300質量部以下、とりわけ200質量部以下含有することが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(d)の架橋剤(d)を含む場合、成分(d)の含有量は、成分(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して、架橋反応を十分に進行させるために、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは1.5質量部以上である。一方、架橋反応を制御する観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下である。
前述の通り、架橋剤(d)としてアルキルフェノール樹脂等のフェノール系架橋剤を用いる場合、アルキルフェノール樹脂等のフェノール系架橋剤は、触媒(f)及び中和剤(g)と共に用いることが好ましい。この場合、触媒(f)はアルキルフェノール樹脂等のフェノール系架橋剤(d)100質量部に対して20〜100質量部用いることが好ましく、中和剤(g)は触媒(f)100質量部に対して30〜200質量部用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、成分(e)の炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を含む場合、炭化水素系ゴム用軟化剤(e)の含有量は成分(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対し、柔軟性の観点から、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上であり、特に好ましくは30質量部以上である。一方、製造安定性の観点から、好ましくは350質量部以下であり、より好ましくは300質量部以下である。
上記成分(a)〜(g)以外の他の成分については、前述の通り、本発明の効果を損なうことない範囲で用いられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(a)〜(c)を必須成分として含有することによる本発明の効果を確実に得るために、熱可塑性エラストマー組成物中の成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計の含有量が25質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)、ポリオレフィン樹脂(c)及び必要に応じて用いられる炭化水素系ゴム用軟化剤(e)等のその他の成分を所定量含有する混合物を混練することで製造される。好ましくは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、この混練時に、架橋剤(d)の存在下で動的熱処理することにより製造される。
本発明において「動的熱処理」とは溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行う方法が挙げられる。混練に際しては、各成分を一括して混練してもよく、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いてもよい。
また、成分(a)〜(g)以外のその他の成分については動的熱処理前に混合してもよく、動的熱処理後の熱可塑性エラストマー組成物に混合してもよい。
動的熱処理を行う際の温度は、通常180〜280℃、好ましくは190〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
<熱可塑性エラストマー組成物の物性>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7210に準拠した温度230℃、測定荷重49Nでのメルトフローレート(MFR)が、成形性に優れたものとするため、5〜200g/10分、特に7〜150g/10分であることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物のMFRが上記下限値以上であると流動性が良好となる傾向にあり、また、上記上限値以下であると成形時のバリ等を抑えやすいために好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6262に準拠して試験温度70℃、試験時間22時間、25%圧縮の条件で測定した圧縮永久歪みが、ゴム弾性に優れたものとするため、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。
[成形体・用途]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、通常熱可塑性エラストマー組成物に用いられる成形方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができ、これらの中でも射出成形、押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物はゴム弾性及び流動性に優れ、自動車分野(シール、クッション、ブーツ等)、建築分野(ガスケット、パッキン等)、その他各種の雑貨分野、例えばスポーツ用品(ゴルフクラブやテニスラケットのグリップ類等)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類等)、医療用部品(医療用容器、ガスケット、パッキン等)、食品用部品(容器、パッキン等)、医療用機器部品、電線、その他雑貨等の広汎な分野で用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
以下の実施例で使用した原料及び評価方法は次のとおりである。
<原料>
[少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)]
(a−1):結晶性ポリプロピレンマクロモノマー
精製窒素で置換された、攪拌翼を内蔵する内容積24Lの誘導攪拌式オートクレーブ内に、精製ヘキサン(10000mL)、修飾メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーファインケム社「MMAO−3A」 2.1mmol[Al換算原子])を40mL導入した。反応容器を70℃に加熱し、プロピレンを0.40MPaまで導入し、特開2004−2259公報に記載の方法に従って合成したrac−ジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−イソプロピルフェニル)フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロライド(20.0μmol)のトルエン溶液を反応容器に圧入し、重合反応を開始した。反応中、プロピレンを追加して反応器の圧力を0.40MPaに保った。70分後、エタノールを導入して反応を停止させた。得られたポリマーを濾取し、一定量になるまで減圧下乾燥させ、2253gのポリマーを得た。得られたマクロモノマーの数平均分子量([Mn(GPC)])は27,000であり、13C−NMRによって測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は0.978であり、末端ビニル率は82%であった。またDSCによって測定される融点(Tm)は154℃、結晶化温度(Tc)は111℃であった。
[エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)および炭化水素系ゴム用軟化剤(e)]
(b−1):エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)=547,000、エチレン単位の含有量=67質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量=4.5質量%)100質量部に、(e−1):炭化水素系ゴム用軟化剤(パラフィン系オイル(出光興産(株)製 ダイアナプロセスオイル PW−90、40℃の動粘度=95.54cSt、流動点=−15℃、引火点=272℃))100質量部を混合した油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体
[ポリオレフィン樹脂(c)]
(c−1):プロピレン単独重合体(数平均分子量(Mn)=69,000、融点=164℃)
(c−2):プロピレン単独重合体(数平均分子量(Mn)=20,900、融点=163℃)
[架橋剤(d)]
(d−1):両末端がメチロール基であるアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(田岡化学工業(株)製 タッキロール201)
[触媒(f)]
(f−1):塩化第一スズ(和光純薬工業(株)製)
[中和剤(g)]
(g−1):酸化亜鉛(和光純薬工業(株)製)
<評価方法>
以下の方法で物性測定を行った。
1. GPC測定
少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)及びポリオレフィン樹脂(c)の質量平均分子量(Mw)は、GPC測定により求めた。
少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)及びポリオレフィン樹脂(c)のGPC測定は、Waters社製アライアンスGPCV2000を用い、検出器には示差屈折計を用いて行った。カラムは東ソー社製TSKgel GMH6−HTを4本用いた。移動相溶媒にはオルトジクロロベンゼンを用い、135℃、1.0mL/minで流出させた。標準試料として、Polymer Laboratories社製の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびエチレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38×10−4、α=0.70を使用し、エチレン系重合体に対しては、K=4.77×10−4、α=0.70を使用した。
また、結晶性ポリプロピレンマクロモノマーの数平均分子量([Mn(GPC)])については、同じく標準試料として、Polymer Laboratories社製の単分散のポリスチレンを使用し、該ポリスチレン標準試料およびプロピレン系重合体の粘度式から、保持時間と分子量に関する校正曲線を作成し、該校正曲線に基づいて分子量の算出を行った。なお、粘度式としては、[η]=K×Mαを使用し、ポリスチレンに対しては、K=1.38×10−4、α=0.70を使用し、プロピレン系重合体に関しては、K=1.03×10−4、α=0.78を使用した。
エチレン・α−オレフィン・共役ジエン共重合体(b)のGPC法の測定条件は以下の通りである。
機器 :Waters 150C
カラム :Shodex AD806MS×3 (8.0mm内径×300mm長さ) 検出器 :IR(分散型、3.42μm)
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
温度 :140℃
流速 :1.0mL/分
注入量 :200μL
濃度 :10mg/mL
較正試料:多分散標準ポリエチレン
較正法 :Mark−Houwink式を用いてポリプロピレン換算
2. DSC測定
ポリマーの融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、並びにガラス転移点(Tg)の測定は、DSC測定により行った。DSC測定は、PerkinElmer社製「DiamondDSC」を使用し、20℃で1分等温、10℃/分で20〜210℃までの昇温、210℃で5分等温、10℃/分で210〜−70℃まで降温、−70℃で5分等温の後、10℃/分で−70〜210℃までの昇温時の測定により求めた。
3. 物性測定
熱可塑性エラストマー組成物をプランジャータイプ射出成形機(Xplore Instruments社製 小型混練機XploreMC15付属射出成形機)にて、射出圧力3.5bar、シリンダー温度210℃、金型温度40℃で射出成形して得られたシート(横30mm、縦80mm、厚み2mm)を下記(2)の測定に、シート切り出し部を下記(1)の測定に用いた。
(1) MFR
JIS K7210(1999年)に準拠し、230℃、荷重49Nの条件で測定した。
(2) 圧縮永久歪み
JIS K6262に準拠し、試験温度70℃、試験時間22時間、圧縮25%の条件で測定した。
[実施例1]
(a−1)25質量部、(b−1)と(e−1)を混合した油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体400質量部((b−1)を200質量部、(e−1)を200質量部)、(c−1)75質量部、(d−1)4質量部、(f−1)4質量部、及び(g−1)2質量部を配合し、バッチ式同方向二軸混練機(Xplore Instruments社製 小型混練機XploreMC15、容量15mL)へ投入後、設定温度210℃、スクリュウ回転数100rpmで5分間混練(動的熱処理)を行い、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物をプランジャータイプ射出成形機で成形し、前記(1)、(2)の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
[実施例2〜3、比較例1〜2]
表1に示す配合量で各成分を配合し、実施例1と同様に混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物を得た。また、実施例1と同様に、前記(1)、(2)の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
Figure 2018035268
[評価結果]
実施例1〜3と比較例1,2との対比から、(a−1)結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを用いることで、ゴム弾性を維持しながら流動性を向上できることがわかった。比較例1は(a−1)結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを用いなかったものであるが、流動性が低下した。比較例2は実施例3の(a−1)結晶性ポリプロピレンマクロモノマーを同程度の分子量のポリプロピレンに置き換えたものであるが、ゴム弾性が低下(圧縮永久歪みが増大)した。
実施例1〜3において、次の3つの反応が混練中に起こったと推定される。
(推定反応1) エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体の架橋反応
(推定反応2) 結晶性ポリプロピレンマクロモノマーのエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体へのグラフト化反応
(推定反応3) 結晶性ポリプロピレンマクロモノマー末端同士の結合反応
実施例1〜3における熱可塑性エラストマー組成物がゴム弾性を維持しながら流動性を保持できた理由として、(推定反応2)の反応生成物がポリプロピレン相とゴム相との相溶化剤として機能した可能性が考えられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム弾性、及び流動性即ち成形性に優れ、シール、クッション、ブーツ等の自動車分野;ガスケット、パッキン等の建築分野;グリップ、キャスター等の雑貨分野等に有用である。

Claims (8)

  1. 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)と、
    エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)と、
    ポリオレフィン樹脂(c)(但し成分(a)とは異なる)と
    を少なくとも含有する熱可塑性エラストマー組成物。
  2. エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(b)100質量部に対して、少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)を0.1〜400質量部、ポリオレフィン樹脂(c)を0.1〜400質量部含有する請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 更に、架橋剤(d)及び/又は炭化水素系ゴム用軟化剤(e)を含有する請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 架橋剤(d)と共に、触媒(f)を含有する請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 架橋剤(d)及び触媒(f)と共に、中和剤(g)を含有する請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 少なくとも片末端に反応性官能基を有するポリオレフィン(a)が、片末端にビニル基を有するプロピレン重合体である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. ポリオレフィン樹脂(c)が数平均分子量50,000以上250,000以下のポリプロピレン系樹脂である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. JIS K7210に準拠して230℃、荷重49Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が5〜200g/10分であり、JIS K6262に準拠して70℃、22時間、25%圧縮の条件で測定した圧縮永久歪みが60%以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
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