JP2018030929A - エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、bステージシート、硬化物、cステージシート、樹脂付金属箔、及び金属基板 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、bステージシート、硬化物、cステージシート、樹脂付金属箔、及び金属基板 Download PDF

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一也 木口
慎吾 田中
Shingo Tanaka
慎吾 田中
智雄 西山
Tomoo Nishiyama
智雄 西山
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Yoshitaka Takezawa
由高 竹澤
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Abstract

【課題】低融点化及び硬化物としたときの熱伝導性の向上の両立が可能なエポキシ樹脂組成物を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂組成物は、3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物との双方を含むエポキシ化合物と、硬化剤と、無機充填材と、を含有する。【選択図】なし

Description

本発明はエポキシ樹脂組成物、樹脂シート、Bステージシート、硬化物、Cステージシート、樹脂付金属箔、及び金属基板に関する。
近年、電子及び電気機器の小型化に伴い発熱量が増大傾向にあることから、絶縁材料においていかにその熱を放散させるかが重要な課題となっている。これらの機器に用いられている絶縁材料としては、絶縁性、耐熱性等の観点から、樹脂硬化物が広く使われている。しかし、一般的に樹脂硬化物の熱伝導率は低く、熱放散を妨げている大きな要因となっていることから、熱伝導性に優れる樹脂硬化物が望まれている。
熱伝導性に優れる樹脂硬化物として、例えば、分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含む組成物の硬化物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、熱伝導性に優れ軟化点(融点)の低い熱硬化性樹脂として、4,4’−ジヒドロキシビフェニルメタンのグリシジル化物とビフェノールのグリシジル化物からなる混合エポキシ樹脂に対し、ビフェノールを反応させることで得られる変性エポキシ樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を用いた場合であっても樹脂硬化物を製造する際の硬化温度の範囲が広く、容易に液晶性を有する樹脂硬化物を製造可能な樹脂組成物として、分子構造中に特定のメソゲン骨格を有する複数のエポキシ化合物を含む樹脂組成物が報告されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
また、液晶性ポリマーと熱硬化性樹脂とが相分離した状態で存在している絶縁組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照)。特許文献5に記載の絶縁組成物では、液晶性ポリマーが高熱伝導性に関与し、熱硬化性樹脂が銅等の金属との密着性に関与していると報告されている。
特許第4118691号公報 特開2007−332196号公報 特開2008−239679号公報 特開2008−266594号公報 特開2010−18679号公報
しかしながら、分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ化合物は、高熱伝導性であるほど融点も高くなることが一般的であり、成形条件等が厳しくなって作業性が低下する場合がある。特にエポキシ化合物が高融点であると、エポキシ化合物の溶融に高温を要するため、熱硬化温度が高くなる。溶融のためにエポキシ化合物の温度を高くすると、硬化剤との反応速度が速くなる。そのため、高融点のエポキシ化合物は、十分に溶融する前に、硬化剤との反応が開始されやすい。したがって、特許文献3及び特許文献4に記載の樹脂組成物は熱硬化温度が高くなり、メソゲン骨格の配向が揃う前に硬化してしまうため、これを硬化したときの硬化物は、本来持つ熱伝導性を十分に発揮できない場合もある。また、特許文献2に記載の変性エポキシ樹脂は、合成が容易ではない。
このように、低融点化と、硬化物としたときの熱伝導性の向上とを両立させるエポキシ樹脂組成物の開発が望まれている。
上記状況を鑑み、本発明は、低融点化及び硬化物としたときの熱伝導性の向上の両立が可能なエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いる樹脂シート、Bステージシート、硬化物、Cステージシート、樹脂付金属箔、及び金属基板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物との双方を含むエポキシ化合物と、硬化剤と、無機充填材と、を含有するエポキシ樹脂組成物。
<2> 前記3環型エポキシ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含む<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。

[一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
<3> 前記エポキシ化合物の全量に対するビフェニル型エポキシ化合物の含有率が、30モル%以下である<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
<4> 前記硬化剤は、フェノールノボラック樹脂を含む<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<5> 前記硬化剤が、下記一般式(II−1)及び下記一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有するフェノールノボラック樹脂を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。

[一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R22、R23、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。m21及びm22は、それぞれ独立に、0〜2の整数を示す。n21及びn22は、それぞれ独立に、1〜7の整数を示す。]
<6> 前記硬化剤が、下記一般式(III−1)〜下記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有するフェノールノボラック樹脂を含む<1>〜<4>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。




[一般式(III−1)〜一般式(III−4)中、m31〜m34及びn31〜n34は、それぞれ独立に、正の整数を示す。Ar31〜Ar34は、それぞれ独立に、下記一般式(III−a)又は下記一般式(III−b)で表される基のいずれかを示す。]

[一般式(III−a)及び一般式(III−b)中、R31及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
<7> 前記フェノールノボラック樹脂は、前記フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーを含有し、前記モノマーの含有率が、前記フェノールノボラック樹脂中5質量%〜80質量%である<4>〜<6>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<8> 前記無機充填材は、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<9> 前記無機充填材の含有率が、50体積%を超える<1>〜<8>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
<10> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体である樹脂シート。
<11> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体の半硬化物であるBステージシート。
<12> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
<13> <1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体の硬化物であるCステージシート。
<14> 金属箔と、前記金属箔上に配置される<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である半硬化物層と、を有する樹脂付金属箔。
<15> 金属支持体と、前記金属支持体上に配置される<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である硬化物層と、前記硬化物層上に配置される金属箔と、を有する金属基板。
本発明によれば、低融点化及び硬化物としたときの熱伝導性の向上の両立が可能なエポキシ樹脂組成物、並びにこのエポキシ樹脂組成物を用いるBステージシート、硬化物、樹脂シート、樹脂付金属箔、及び金属基板を提供することができる。
実施例1〜5及び比較例1のエポキシ化合物又はエポキシ混合物の融点(相転移温度)の測定結果を示すグラフである。 実施例1〜5及び比較例1で得られた樹脂シート硬化物のX線回折スペクトルである。 実施例1〜5及び比較例1で得られた樹脂シート硬化物を偏光顕微鏡で観察した写真である。 実施例3〜5、比較例1等で得られた樹脂シート硬化物の熱伝導率を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
<エポキシ樹脂組成物>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物との双方を含むエポキシ化合物と、硬化剤と、無機充填材と、を含有する。エポキシ樹脂組成物は、上記成分の他に、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、かかる構成により、低融点化及び硬化物としたときの熱伝導性の向上の両立が可能となる。その理由は明らかではないが、次のように推測される。
3環型エポキシ化合物は、硬化させるとスメクチック構造を形成しやすく、熱伝導性が向上する傾向にある。但し、3環型エポキシ化合物は、その配向性の高さゆえに、融点が高くなりやすい。ここで、3環型エポキシ化合物に、ビフェニル型エポキシ化合物を併用すると、3環型エポキシ化合物の配向性を大きく乱すことなく、エポキシ樹脂組成物の低融点化を実現することができる。
以下、エポキシ樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
[エポキシ化合物]
エポキシ樹脂組成物はエポキシ化合物を含む。そして、エポキシ化合物は、3環型エポキシ化合物及びビフェニル型エポキシ化合物の双方を含む。
本実施形態に係るエポキシ化合物はエポキシモノマーであっても、エポキシ樹脂であってもよく、硬化物としたときの高次構造の形成性(高熱伝導性)の観点から、エポキシモノマーであることが好ましい。2種以上のエポキシ化合物の組み合わせは、エポキシモノマーとエポキシモノマーとの組み合わせ、エポキシモノマーとエポキシ樹脂との組み合わせ、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂との組み合わせであってもよく、高次構造の形成性(高熱伝導性)の観点から、エポキシモノマーとエポキシモノマーとの組み合わせであることが好ましい。
(3環型エポキシ化合物)
3環型エポキシ化合物は、ベンゼン環及びシクロヘキサン環からなる群より選択される3つの環を有するエポキシ化合物であれば特に限定されない。ベンゼン環及びシクロヘキサン環からなる群より選択される3つの環は、それぞれ単結合で結合していてもよいし、2価の基で結合していてもよい。2価の基としては、酸素原子、エーテル基、エステル基等が挙げられる。3環型エポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
3環型エポキシ化合物としては、具体的には、ターフェニル骨格を有するエポキシ化合物、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−ベンゼン、下記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。硬化物としたときに熱伝導率がより向上する観点から、3環型エポキシ化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「特定エポキシ化合物」ともいう。)が好ましい。

一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R〜Rで表されるアルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は非置換の炭素数1又は2のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R〜Rのうちの2個〜4個が水素原子であることが好ましく、3個又は4個が水素原子であることがより好ましく、4個すべてが水素原子であることがさらに好ましい。R〜Rのいずれかが炭素数1〜3のアルキル基である場合、R及びRの少なくとも一方が炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
具体的に、特定エポキシ化合物としては、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−エチルベンゾエート、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−イソプロピルベンゾエート、及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンゾエートを挙げることができ、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート及び4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3−メチルベンゾエートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
特定エポキシ化合物は、特開2011−74366号公報に記載の方法により合成することができる。
一般式(I)で表される化合物は、エポキシ基が開環し重合した下記一般式(I−1)で表されるエポキシ樹脂であってもよい。
一般式(I−1)中のR〜Rは、一般式(I)におけるR〜Rと同義である。nは1以上の整数を示し、1〜3であることが好ましい。
エポキシ化合物の全量に対する3環型エポキシ化合物の含有率は、熱伝導率の観点から、70モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
(ビフェニル型エポキシ化合物)
ビフェニル型エポキシ化合物は、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物であればよく(但し、3環型エポキシ化合物を除く)、ビフェニル骨格の2つのベンゼン環以外に環を有さないことが好ましい(つまり、ビフェニル型エポキシ化合物は2環型エポキシ化合物であることが好ましい)。ビフェニル型エポキシ化合物は、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を示す。R〜R8で表される一価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。
炭素数1〜10の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。アリール基の置換基としては、アルキル基、水酸基、及びハロゲン原子が挙げられる。
炭素数1〜10の一価の炭化水素基としては、置換若しくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、非置換の炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
置換若しくは非置換の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
一般式(1)におけるR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子又は非置換の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、エポキシ基が開環し重合した下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂であってもよい。
一般式(2)中のR〜Rは、一般式(1)におけるR〜Rと同義である。nは1以上の整数を示し、1〜3であることが好ましい。
ビフェニル型エポキシ化合物としては、具体的には、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ化合物等が挙げられる。ビフェニル型エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビフェニル型エポキシ化合物の市販品としては、「YX4000」、「YX4000H」、「YL6121H」(以上、三菱化学株式会社製)、「NC−3000」、「NC−3100」(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。低融点化及び熱伝導性の向上の観点から、「YL6121H」(三菱化学株式会社製)が好ましい。
エポキシ化合物の全量に対するビフェニル型エポキシ化合物の含有率は、熱伝導率の観点から、30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましい。
(その他のエポキシ化合物)
エポキシ化合物は、3環型エポキシ化合物及びビフェニル型エポキシ化合物以外のその他のエポキシ化合物を含んでいてもよい。その他のエポキシ化合物は、メソゲン骨格を有するものであっても、有さないものであってもよい。
本明細書において「メソゲン骨格」とは、液晶性を発現する可能性のある分子構造を示す。具体的には、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、これらの誘導体等が挙げられる。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化時に高次構造を形成し易く、硬化物としたときに熱伝導率が向上する傾向にある。
ここで、高次構造とは、その構成要素がミクロに配列している状態のことであり、例えば、結晶相及び液晶相が相当する。このような高次構造が存在しているか否かは、偏光顕微鏡での観察によって容易に判断することが可能である。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉模様が見られる場合は高次構造が存在していると判断できる。
高次構造は、通常では樹脂中に島状に存在しており、ドメイン構造を形成している。そして、ドメイン構造を形成している島のそれぞれを高次構造体という。高次構造体を構成する構造単位同士は、一般的には共有結合で結合されている。
メソゲン骨格を有さないエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、トリフェニルメタン型エポキシ化合物等が挙げられ、入手性及びコストの観点からは、ビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましい。
ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ化合物の市販品としては、「ZX1059」、「VSLV−80XY」(以上、新日鉄住友化学株式会社製)、「828EL」(以上、三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
トリフェニルメタン型エポキシ化合物としては、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ化合物であれば特に制限はなく、市販品としては、「1032H60」(三菱化学株式会社製)、「EPPN−502H」(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ化合物の全量中のその他のエポキシ化合物の含有率は、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
(エポキシ化合物又はエポキシ混合物の融点)
3環型エポキシ化合物にビフェニル型エポキシエポキシ化合物を併用したエポキシ混合物では、3環型エポキシ化合物のみのときに比べて、融点が低下する。ここでいう融点とは、液晶相を有するエポキシ化合物又はエポキシ混合物では、エポキシ化合物が液晶相から等方相へと相転移するときの温度を指す。また、液晶相を有さないエポキシ化合物又はエポキシ混合物では、物質が固体(結晶相)から液体(等方相)へと状態変化するときの温度を指す。
液晶相とは、結晶状態(結晶相)と液体状態(等方相)との中間に位置する相のひとつであり、分子の配向方向は何らかの秩序は保っているものの、3次元的な位置の秩序を失った状態を指す。
液晶相の有無は、室温(例えば、25℃)から昇温させていく過程における物質の状態変化を、偏光顕微鏡を用いて観察する方法によって判別できる。クロスニコル状態での観察において、結晶相及び液晶相は、偏光解消による干渉縞が見られ、等方相は暗視野に見える。また、結晶相から液晶相への転移は、流動性の有無により確認できる。つまり、液晶相を発現するとは、流動性を有し、かつ偏光解消による干渉縞が観察される温度領域を有していることである。
すなわち、クロスニコル状態での観察において、エポキシ化合物又はエポキシ混合物が流動性を有し、且つ偏光解消による干渉縞が観察される温度領域を持っていることが確認されれば、エポキシ化合物又はエポキシ混合物は液晶相を有すると判断する。
3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物とのエポキシ混合物は、液晶相を示すことが好ましい。液晶層を示す温度領域の幅は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。液晶層を示す温度領域が10℃以上であると、熱伝導率がより向上する傾向にある。さらに、液晶層を示す温度領域の幅は広ければ広いほど、より高熱伝導率が得られ易く好ましい。
また、エポキシ化合物又はエポキシ混合物の融点は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて、25℃〜350℃までの温度範囲を、10℃/分の昇温速度の条件で示差走査熱量測定を行い、相転移に伴うエネルギー変化(吸熱反応)が起こる温度として測定される。作業性及び反応性の観点から、エポキシ化合物又はエポキシ混合物の融点が120℃以下であることが好ましい。
[硬化剤]
エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤は、エポキシ化合物と硬化反応が可能な化合物であれば特に制限されず、通常用いられる硬化剤を適宜選択して用いることができる。
硬化剤の具体例としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の触媒型硬化剤などが挙げられる。これらの硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
中でも耐熱性の観点から、硬化剤としては、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、さらに、保存安定性の観点からは、フェノール系硬化剤の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
アミン系硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化剤として通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販されているものを用いてもよい。中でも硬化性の観点から、アミン系硬化剤としては、2以上の官能基を有する多官能硬化剤であることが好ましく、さらに熱伝導性の観点から、剛直な骨格を有する多官能硬化剤であることがより好ましい。
2官能のアミン系硬化剤としては、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
中でも、熱伝導率の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及び1,5−ジアミノナフタレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、1,5−ジアミノナフタレンであることがより好ましい。
フェノール系硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化剤として通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販されているものを用いてもよい。例えば、フェノール及びそれらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。
フェノール系硬化剤としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能の化合物;カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2官能の化合物;1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能の化合物などが挙げられる。また、硬化剤としては、これらフェノール系硬化剤をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂を用いることができる。
フェノールノボラック樹脂としては、具体例には、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ヒドロキノンノボラック樹脂等の1種のフェノール化合物をノボラック化した樹脂;カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールヒドロキノンノボラック樹脂等の2種又はそれ以上のフェノール化合物をノボラック化した樹脂などが挙げられる。
フェノール系硬化剤としてフェノールノボラック樹脂が用いられる場合、フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(II−1)及び(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有するフェノールノボラック樹脂を含むことが好ましい。
一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。R21又はR24で表されるアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。アリール基、及びアラルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
21及びR24は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜13のアラルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
m21及びm22は、それぞれ独立に、0〜2の整数を示す。m21が2の場合、2つのR21は同一であっても異なっていてもよく、m22が2の場合、2つのR24は同一であっても異なっていてもよい。本実施形態において、m21及びm22は、それぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、n21及びn22は、それぞれ独立に、1〜7の整数を示し、一般式(II−1)で表される構造単位又は一般式(II−2)で表される構造単位の含有数をそれぞれ示す。
一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R22、R23、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R22、R23、R25又はR26で表されるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。アリール基及びアラルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
22、R23、R25及びR26としては、エポキシ樹脂組成物の保存安定性と硬化物の熱伝導性の観点から、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
さらに、硬化物の耐熱性の観点から、R22及びR23の少なくとも一方、又はR25及びR26の少なくとも一方はアリール基であることもまた好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましい。
なお、アリール基は芳香族基にヘテロ原子を含んでいてもよく、ヘテロ原子と炭素の合計数が6〜12となるヘテロアリール基であることが好ましい。
フェノールノボラック樹脂は、一般式(II−1)で表される構造単位又は一般式(II−2)で表される構造単位を有する化合物を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。フェノールノボラック樹脂は、硬化物の熱伝導性の観点から、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物を少なくとも含むことが好ましく、一般式(II−1)で表され、レゾルシノールに由来する構造単位を有する化合物を少なくとも含むことがより好ましい。
一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物が、レゾルシノールに由来する構造単位を有する場合、レゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物におけるレゾルシノール以外のフェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物は、これらのフェノール化合物に由来する部分構造を1種単独でも、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
また、一般式(II−2)で表され、カテコールに由来する構造単位を有する化合物においても、カテコール以外のフェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも1種を含んでいてもよい。
ここで、フェノール化合物に由来する部分構造とは、フェノール化合物の芳香環部分から一個又は二個の水素原子を取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。なお、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物において、レゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造としては、硬化物の熱伝導性並びにエポキシ樹脂組成物の接着性及び保存安定性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選択される少なくとも1種に由来する部分構造であることがより好ましい。
また、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物がレゾルシノールに由来する構造単位を含む場合、レゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、一般式(II−1)で表される構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率は、55質量%以上であることが好ましく、硬化物のTgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、硬化物の熱伝導性の観点から、90質量%以上であることが特に好ましい。
さらに、フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(III−1)〜下記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物を含むことも好ましい。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)中、m31〜m34及びn31〜n34は、それぞれ独立に、正の整数を示す。Ar31〜Ar34は、それぞれ独立に、下記一般式(III−a)で表される基又は下記一般式(III−b)で表される基を示す。
一般式(III−a)及び一般式(III−b)中、R31及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)で表される構造を有するフェノールノボラック樹脂は、2価のフェノール化合物をノボラック化する際に副生成的に生成可能なものである。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)で表される構造は、フェノールノボラック樹脂の主鎖骨格として含まれていてもよく、また、側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、一般式(III−1)〜一般式(III−4)を構成するそれぞれの構造単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
また、一般式(III−1)〜一般式(III−4)において、水酸基の置換位置は芳香環上であれば特に制限されない。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)のそれぞれについて、複数存在するAr31〜Ar34はすべて同一の原子団であってもよいし、2種以上の原子団を含んでいてもよい。なお、Ar31〜Ar34は、それぞれ独立に、一般式(III−a)で表される基又は一般式(III−b)で表される基を示す。
一般式(III−a)及び一般式(III−b)におけるR31及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基であり、硬化物の熱伝導性の観点から水酸基であることが好ましい。また、R31及びR34の置換位置は特に制限されない。
また、一般式(III−a)におけるR32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。R32及びR33における炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、一般式(III−a)におけるR32及びR33の置換位置は特に制限されない。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるAr31〜Ar34は、それぞれ独立に、硬化物としたときに熱伝導性が向上する観点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(すなわち、一般式(III−a)においてR31が水酸基であって、R32及びR33が水素原子である基)、及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(すなわち、一般式(III−b)においてR34が水酸基である基)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ここで「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から2つの水素原子を取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。また、「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」等についても同様の意味である。
また、エポキシ樹脂組成物の生産性及びBステージ状態である場合のハンドリング性の観点からは、Ar31〜Ar34は、それぞれ独立に、ジヒドロキシベンゼンに由来する基であることが好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。硬化物の熱伝導性を特に高める観点から、Ar31〜Ar34はレゾルシノールに由来する基を少なくとも含むことが好ましい。
また、硬化物の熱伝導性を特に高める観点から、含有数がn31〜n34で表される構造単位は、レゾルシノールに由来する部分構造を少なくとも含んでいることが好ましい。
フェノールノボラック樹脂がレゾルシノールに由来する部分構造を含む場合、レゾルシノールに由来する部分構造の含有率は、一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有する化合物の総質量中、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)におけるm31〜m34及びn31〜n34は、エポキシ樹脂組成物がBステージ状態である場合のハンドリング性の観点から、それぞれ、m/n=1/5〜20/1であることが好ましく、5/1〜20/1であることがより好ましく、10/1〜20/1であることがさらに好ましい。また、(m+n)は、エポキシ樹脂組成物がBステージ状態である場合のハンドリング性の観点から20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。なお、(m+n)の下限値は特に制限されない。ここでnがn31の場合、mはm31であり、nがn32の場合、mはm32であり、nがn33の場合、mはm33であり、nがn34の場合、mはm34である。
一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有するフェノールノボラック樹脂は、特にAr31〜Ar34が置換又は非置換のジヒドロキシベンゼン、及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレンの少なくとも1種である場合、これらを単純にノボラック化したノボラック樹脂等と比較してその合成が容易であり、軟化点の低いノボラック樹脂が得られる傾向にある。よって、このようなノボラック樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物の製造及び取り扱いも、容易になるという利点がある。
なお、フェノールノボラック樹脂が一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有するか否かは、電界脱離イオン化質量分析法(FD−MS)によってそのフラグメント成分として一般式(III−1)〜一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造に相当する成分が含まれるか否かによって判断することができる。
フェノールノボラック樹脂の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350〜1500であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400〜1500であることがさらに好ましい。Mn及びMwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いた通常の方法により測定される。
フェノールノボラック樹脂の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50g/eq〜150g/eqであることが好ましく、50g/eq〜120g/eqであることがより好ましく、55g/eq〜120g/eqであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、水酸基当量は、JIS K0070:1992に準拠して測定された値をいう。
フェノールノボラック樹脂は、フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーを含んでいてもよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーの含有率(以下、「モノマー含有率」ともいう。)は、特に制限されない。熱伝導性及び成形性の観点から、フェノールノボラック樹脂中のモノマー含有率は、5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
モノマー含有率が80質量%以下であると、硬化反応の際に架橋に寄与しないモノマーが少なくなり、架橋に寄与する高分子量体が多くを占めることになるため、より高密度な高次構造が形成され、熱伝導率が向上する傾向にある。また、モノマー含有率が5質量%以上であることで、成形の際に流動し易いため、無機充填材との密着性がより向上し、熱伝導性と耐熱性が向上する傾向にある。
エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に制限されない。例えば、硬化剤がアミン系硬化剤の場合は、アミン系硬化剤の活性水素の当量数と、エポキシ化合物のエポキシ基の当量数との比(活性水素/エポキシ基)が0.5〜2.0となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。また、硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、フェノール系硬化剤のフェノール性水酸基の当量数と、エポキシ化合物のエポキシ基の当量数との比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が0.5〜2.0となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。
(硬化促進剤)
エポキシ樹脂組成物においてフェノール系硬化剤を用いる場合、必要に応じて硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤を併用することで、さらに十分に硬化させることができる。硬化促進剤の種類及び含有量は特に制限されず、反応速度、反応温度及び保管性の観点から、適切なものを選択することができる。
具体的には、イミダゾール化合物、第3級アミン化合物、有機ホスフィン化合物、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、有機ホスフィン化合物、及び有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
また、有機ホスフィン化合物と有機ボロン化合物との錯体としては、具体的には、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ−p−トリルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・n−ブチルトリフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられる。
これら硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、エポキシ樹脂組成物中の硬化促進剤の含有率は特に制限されない。成形性の観点からは、硬化促進剤の含有率は、エポキシ化合物と硬化剤の合計質量の0.5質量%〜1.5質量%であることが好ましく、0.5質量%〜1質量%であることがより好ましく、0.6質量%〜1質量%であることがさらに好ましい。
(無機充填材)
エポキシ樹脂組成物は無機充填材を含む。エポキシ樹脂組成物が無機充填材を含むことにより、硬化物としたときの熱伝導率が、より向上する傾向にある。
無機充填材は非導電性であっても、導電性であってもよい。非導電性の無機充填材を使用することによって絶縁性の低下が抑制される傾向にある。また導電性の無機充填材を使用することによって熱伝導性がより向上する傾向にある。
非導電性の無機充填材として具体的には、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、シリカ(酸化ケイ素)、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。また、導電性の無機充填材としては、金、銀、ニッケル、銅等が挙げられる。中でも熱伝導率の観点から、無機充填材は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、シリカ(酸化ケイ素)及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、窒化ホウ素及び酸化アルミニウム(アルミナ)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
これら無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機充填材は、2種以上の互いに体積平均粒子径の異なるものを混合して用いることが好ましい。これにより大粒子径の無機充填材の空隙に小粒子径の無機充填材がパッキングされることによって、単一粒子径の無機充填材のみを使用するよりも無機充填材が密に充填されるため、熱伝導率がより向上する傾向にある。
具体的には、無機充填材として酸化アルミニウムを使用する場合、無機充填材中に、体積平均粒子径16μm〜20μmの酸化アルミニウムを60体積%〜80体積%、体積平均粒子径2μm〜6μmの酸化アルミニウムを15体積%〜25体積%、体積平均粒子径0.3μm〜0.5μmの酸化アルミニウムを5体積%〜15体積%の範囲の割合で混合することによって、最密充填化がより向上する傾向にある。この場合、レーザー回折法を用いて測定される粒子径分布は少なくとも3つのピークを有し、前記ピークが、16μm〜20μm、2μm〜6μm、及び0.3μm〜0.5μmのそれぞれの範囲に存在し、3つのピークとも酸化アルミニウムを含有し、3つのピークのうち16μm〜20μmの範囲に存在するピークの占める割合が、60体積%〜80体積%、2μm〜6μmの範囲に存在するピークの占める割合が、15体積%〜25体積%、0.3μm〜0.5μmの範囲に存在するピークの占める割合が、5体積%〜15体積%であることが好ましい。
さらに、無機充填材として窒化ホウ素及び酸化アルミニウムを併用する場合、無機充填材中に、体積平均粒子径20μm〜100μmの窒化ホウ素を60体積%〜90体積%、体積平均粒子径2μm〜6μmの酸化アルミニウムを5体積%〜20体積%、体積平均粒子径0.3μm〜0.5μmの酸化アルミニウムを5体積%〜20体積%の範囲の割合で混合することによって、熱伝導化がより向上する傾向にある。この場合、レーザー回折法を用いて測定される粒子径分布は少なくとも3つのピークを有し、前記ピークが、16μm〜20μm、2μm〜6μm、及び0.3μm〜0.5μmのそれぞれの範囲に存在し、16μm〜20μmの範囲に存在するピークが窒化ホウ素粒子を含有し、2μm〜4μm、及び0.3μm〜0.5μmの範囲に存在するピークは酸化アルミニウムを含有し、3つのピークのうち16μm〜20μmの範囲に存在するピークの占める割合が、60体積%〜80体積%、2μm〜6μmの範囲に存在するピークの占める割合が、10体積%〜20体積%、0.3μm〜0.5μmの範囲に存在するピークの占める割合が、10体積%〜20体積%であることが好ましい。
無機充填材の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折法を用いて測定することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物中の無機充填材を抽出し、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、商品名:LS230)を用いて測定する。具体的には、有機溶剤、硝酸、王水等を用い、エポキシ樹脂組成物中から無機充填材成分を抽出し、超音波分散機等で十分に分散して分散液を調製し、この分散液を用いて、25℃で、アルミナの屈折率を1.77、窒化ホウ素の屈折率を2.17、として、体積累積粒度分布曲線を測定する。体積平均粒子径(D50)は、上記測定より得られた体積累積粒度分布曲線において、小径側から累積が50%となる粒子径をいう。
エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の含有率は特に制限されない。中でも熱伝導性の観点から、無機充填材の含有率は、エポキシ樹脂組成物中、50体積%を超えることが好ましく、65体積%を超え90体積%以下であることがより好ましい。
無機充填材の含有率が50体積%を超えると、熱伝導率がより向上する傾向にある。一方、無機充填材の含有率が90体積%以下であると、エポキシ樹脂組成物の柔軟性の低下、及び絶縁性の低下が抑制される傾向にある。
なお、エポキシ樹脂組成物中における無機充填材の体積基準の含有率は、以下のようにして測定される。
まず、25℃におけるエポキシ樹脂組成物の質量(Wc)を測定し、そのエポキシ樹脂組成物を、空気中、400℃で2時間、次いで700℃で3時間加熱し、樹脂分を分解及び燃焼して除去した後、25℃における残存した無機充填材の質量(Wf)を測定する。次いで、電子比重計又は比重瓶を用いて、25℃における無機充填材の密度(df)を求める。次いで、同様の方法で25℃におけるエポキシ樹脂組成物の密度(dc)を測定する。次いで、エポキシ樹脂組成物の体積(Vc)及び残存した無機充填材の体積(Vf)を求め、(式1)に示すように残存した無機充填材の体積をエポキシ樹脂組成物の体積で除すことで、無機充填材の体積比率(Vr)を求める。
(式1)
Vc=Wc/dc
Vf=Wf/df
Vr(%)=(Vf/Vc)×100
Vc:エポキシ樹脂組成物の体積(cm
Wc:エポキシ樹脂組成物の質量(g)
dc:エポキシ樹脂組成物の密度(g/cm
Vf:無機充填材の体積(cm
Wf:無機充填材の質量(g)
df:無機充填材の密度(g/cm
Vr:無機充填材の体積比率(%)
(シランカップリング剤)
エポキシ樹脂組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤は、無機充填材の表面とその周りを取り囲む樹脂との間で共有結合を形成する役割(バインダ剤に相当)、熱伝導性の向上、及び水分の侵入を妨げることによって絶縁信頼性を向上させる働きを果たすと考えることができる。
シランカップリング剤の種類としては特に限定されず、市販されているものを用いてもよい。メソゲン骨格を有するエポキシ化合物と硬化剤との相溶性、及びエポキシ樹脂組成物層と無機充填材との界面での熱伝導欠損を低減することを考慮すると、本実施形態においては、末端にエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基及び水酸基を有するシランカップリング剤を用いることが好適である。
シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、商品名:SC−6000KS2に代表されるシランカップリング剤オリゴマ(日立化成テクノサービス株式会社製)等も挙げられる。これらシランカップリング剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物がシランカップリング剤を含有する場合、エポキシ樹脂組成物におけるシランカップリング剤の含有率は、0.01質量%〜0.1質量%であることが好ましい。
(その他の成分)
エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分に加えてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、溶剤、エラストマ、分散剤、及び沈降防止剤を挙げることができる。溶剤としては、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、通常用いられる有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
<樹脂シート>
本実施形態の樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体である。樹脂シートは、例えば、支持体上に、エポキシ樹脂組成物にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の有機溶剤を添加して調製したワニス状のエポキシ樹脂組成物(以下、「樹脂ワニス」ともいう。)を付与してエポキシ樹脂組成物層を形成した後、エポキシ樹脂組成物層から有機溶剤の少なくとも一部を乾燥により除去することで製造することができる。支持体としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の離型フィルムを挙げることができる。
樹脂ワニスの付与は、公知の方法により実施することができる。具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法により行うことができる。所定の厚さのエポキシ樹脂組成物層を形成する方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調節した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等が挙げられる。例えば、乾燥前のエポキシ樹脂組成物層の厚さが50μm〜500μmである場合は、コンマコート法を用いることが好ましい。
乾燥方法は、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、通常用いられる乾燥方法から、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤に応じて適宜選択することができる。一般には、80℃〜150℃程度で熱処理する方法が挙げられる。
樹脂シートの密度は特に制限されず、例えば、3g/cm〜3.4g/cmとすることができる。樹脂シートの柔軟性と熱伝導率との両立を考慮すると、3g/cm〜3.3g/cmが好ましく、3.1g/cm〜3.3g/cmがより好ましい。
樹脂シートの密度は、例えば、無機充填材配合量で調整することができる。
樹脂シートの厚さは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂シートの厚さは、50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。
樹脂シート(エポキシ樹脂組成物層)は、硬化反応がほとんど進行していない。このため、可とう性を有するものの、シートとしての柔軟性に乏しい。したがって、PETフィルム等の支持体を除去した状態ではシート自立性に乏しく、取り扱いが困難な場合がある。そこで、樹脂シートは、これを構成するエポキシ樹脂組成物が半硬化状態になるまで、さらに熱処理されてなることが好ましい。
ここで、エポキシ樹脂組成物を乾燥して得られる樹脂シートをAステージシートとも称する。また、Aステージシートをさらに熱処理して得られる半硬化状態の樹脂シートをBステージシートとも称し、Aステージシート又はBステージシートをさらに熱処理して得られる硬化状態のシートをCステージシートとも称する。なお、Aステージ、Bステージ、及びCステージについては、JIS K6900:1994に規定を参照するものとする。
<Bステージシート>
本実施形態のBステージシートは、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体の半硬化物である。
Bステージシートは、例えば、樹脂シートをBステージ状態まで熱処理する工程を含む製造方法により製造することができる。樹脂シートを熱処理して形成することで、熱伝導率及び電気絶縁性に優れ、Bステージシートとしての可とう性及び可使時間に優れる。
本実施形態のBステージシートとは、エポキシ樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、粘度が常温(25℃)においては10Pa・s〜10Pa・sであり、100℃で10Pa・s〜10Pa・sである樹脂シートを意味する。なお、上記粘度は、動的粘弾性測定(周波数1Hz、荷重40g、昇温速度3℃/分)によって測定される。
樹脂シートを熱処理する条件は、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態にまで半硬化することができれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。熱処理は、樹脂ワニスを塗工する際に生じたエポキシ樹脂組成物層中の空隙(ボイド)を減らす目的から、熱真空プレス、熱ロールラミネート等から選択される方法により行うことが好ましい。これにより、表面が平坦なBステージシートを効率よく製造することができる。
具体的には、例えば、減圧下(例えば、1MPa)、温度50℃〜180℃で、1秒間〜30秒間、1MPa〜30MPaのプレス圧で加熱及び加圧処理することで、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態に半硬化させることができる。
Bステージシートの厚さは、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及び可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。また、2層以上の樹脂シートを積層しながら熱プレスすることによりエポキシ樹脂組成物層を有する樹脂シート作製することもできる。
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、エポキシ樹脂組成物の硬化物である。エポキシ樹脂組成物を硬化する方法としては、特に制限はなく、通常用いられる方法を適宜選択することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を熱処理することでエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。
エポキシ樹脂組成物を熱処理する方法としては特に制限はなく、また熱条件についても特に制限はない。熱処理の温度範囲は、エポキシ樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜選択することができる。また、熱処理の時間としては、特に制限はなく、硬化物の形状、厚み等に応じて適宜選択される。
本実施形態の硬化物は熱伝導性に優れる。これは、硬化物中にスメクチック構造が形成されやすいためと考えることができる。
メソゲン骨格に由来する規則性の高い高次構造には、ネマチック構造、スメクチック構造等がある。ネマチック構造は分子長軸が一様な方向に向いており、配向秩序のみを持つ液晶構造である。これに対して、スメクチック構造は配向秩序に加えて一次元の位置の秩序を持ち、一定周期の層構造を有する液晶構造である。また、スメクチック構造の同一の周期の構造内部では、層構造の周期の方向が一様である。すなわち、分子の秩序性は、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高い。秩序性の高い高次構造が半硬化物又は硬化物中に形成されると、熱伝導の媒体であるフォノンが散乱するのを抑制することができる。このため、ネマチック構造よりもスメクチック構造の方が、熱伝導率が高くなる。
すなわち、分子の秩序性はネマチック構造よりもスメクチック構造の方が高く、硬化物の熱伝導性もスメクチック構造を示す場合の方が高くなる。本実施形態の硬化物中にはスメクチック構造が形成されているため、高い熱伝導率を発揮できると考えられる。
硬化物中にスメクチック構造が形成されているか否かは、下記の方法により判断することができる。
CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θが0.5°〜30°の範囲で、X線回折(X‐ray diffraction、XRD)装置(例えば、株式会社リガク製)を用いてX線回折測定を行う。2θが1°〜10°の範囲に回折ピークが存在する場合には、周期構造がスメクチック構造を含んでいると判断される。なお、メソゲン構造に由来する規則性の高い高次構造を有する場合には、2θが1°〜30°の範囲に回折ピークが現れる。
硬化物は、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物又は半硬化状態のエポキシ樹脂組成物を硬化処理して得ることができる。硬化処理の方法は、エポキシ樹脂組成物の成分、硬化物の目的等に応じて適宜選択することができ、熱処理及び加圧処理であることが好ましい。
例えば、未硬化状態又は半硬化状態のエポキシ樹脂組成物を100℃〜250℃で1時間〜10時間、好ましくは130℃〜230℃で1時間〜8時間加熱することで硬化物が得られる。
<Cステージシート>
本実施形態のCステージシートは、本実施形態のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体の硬化物である。
Cステージシートは、例えば、樹脂シート又はBステージシートをCステージ状態まで熱処理する工程を含む製造方法で製造することができる。
樹脂シート又はBステージシートを熱処理する条件は、樹脂シート又はBステージシートをCステージ状態にまで硬化することができれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。熱処理は、Cステージシート中のボイドの発生を抑制し、Cステージシートの耐電圧性を向上させる観点から、熱真空プレス等の熱処理方法が好ましい。これにより平坦なCステージシートを効率よく製造することができる。
具体的には、例えば、加熱温度150℃〜220℃で、1分間〜30分間、1MPa〜20MPaで加熱プレス処理することで樹脂シート又はBステージシートをCステージ状態に硬化することができる。
Cステージシートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm〜350μmとすることができ、熱伝導率、電気絶縁性及びシート可とう性の観点から、60μm〜300μmであることが好ましい。また、2層以上の樹脂シート又はBステージシートを積層した状態で熱プレスすることによりCステージシートを作製することもできる。
<樹脂付金属箔>
本実施形態の樹脂付金属箔は、金属箔と、金属箔上に配置される本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である半硬化物層と、を有する。樹脂付金属箔が、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である半硬化物層を有することで、熱伝導性に優れる。半硬化物層は、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態になるまで熱処理して得ることができる。
金属箔としては、特に制限されず、金箔、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、一般的には銅箔が用いられる。
金属箔の厚さとしては、例えば、1μm〜35μmが挙げられ、可とう性の観点から、20μm以下であることが好ましい。
また、金属箔としては、ニッケル、ニッケル−リン合金、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に銅層を設けた3層構造の複合箔、アルミニウム箔と銅箔とを複合した2層構造の複合箔などが挙げられる。中間層の両面に銅層を設けた3層構造の複合箔では、一方の銅層の厚さを0.5μm〜15μmとし、他方の銅層の厚さを10μm〜300μmとすることが好ましい。
樹脂付金属箔は、例えば、エポキシ樹脂組成物(好ましくは、樹脂ワニス)を金属箔上に付与及び乾燥することによりエポキシ樹脂組成物層(樹脂シート)を形成し、これを熱処理してBステージ状態とすることで製造することができる。エポキシ樹脂組成物層の形成方法は上述の通りである。
樹脂付金属箔の製造条件は特に制限はなく、乾燥後の樹脂シートにおいて、樹脂ワニスに使用した有機溶剤の80質量%以上が揮発していることが好ましい。乾燥温度としては、特に制限はなく、80℃〜180℃程度が好ましい。乾燥時間としては、樹脂ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜選択することができる。樹脂ワニスの付与量は、乾燥後のエポキシ樹脂組成物層の厚さが50μm〜350μmとなるように付与することが好ましく、60μm〜300μmとなることがより好ましい。
乾燥後の樹脂シートは、さらに熱処理されることでBステージ状態になる。樹脂組成物を熱処理する条件はBステージシートにおける熱処理条件と同様である。
<金属基板>
本実施形態の金属基板は、金属支持体と、金属支持体上に配置されるエポキシ樹脂組成物の硬化物である硬化物層と、硬化物層上に配置される金属箔と、を有する。金属基板が、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物である硬化物層を有するため、熱伝導率に優れる。
金属支持体は、目的に応じて、その素材及び厚さ等は適宜選択することができる。具体的には、アルミニウム、鉄等の金属を用い、厚さを0.5mm〜5mmとすることができる。
金属基板における金属箔は、樹脂付金属箔で説明した金属箔と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
本実施形態の金属基板は、例えば、以下のようにして製造することができる。
金属支持体上に、エポキシ樹脂組成物を付与し乾燥することでエポキシ樹脂組成物層を形成し、さらにエポキシ樹脂組成物層上に金属箔を配置して、これを熱処理及び加圧処理することでエポキシ樹脂組成物層を硬化して、金属基板を製造することができる。金属支持体上にエポキシ樹脂組成物を付与し乾燥する方法としては、樹脂付金属箔で説明した方法と同様の方法を用いることができる。また、金属支持体上に、樹脂付金属箔をエポキシ樹脂組成物層が金属支持体に対向するように張り合わせた後、これを熱処理及び加圧処理することでエポキシ樹脂組成物層を硬化して、金属基板を製造することもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下にエポキシ樹脂組成物の作製に用いた材料とその略号を示す。
(エポキシ化合物)
・3環型エポキシ化合物:樹脂A
4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル=4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート、エポキシ当量:212g/eq、特開2011−74366号公報に記載の方法により製造した。
・ビフェニル型エポキシ化合物
・YL6121H:三菱化学株式会社製、エポキシ当量:172g/eq
・YX4000:三菱化学株式会社製、エポキシ当量:186g/eq
・YX4000H:三菱化学株式会社製、エポキシ当量:195g/eq
・NC−3000:日本化薬株式会社製、エポキシ当量:275g/eq
(無機充填材)
・AA−3
アルミナ粒子、住友化学株式会社製、D50:3μm
・AA−04
アルミナ粒子、住友化学株式会社製、D50:0.40μm
・HP−40
窒化ホウ素粒子、水島合金鉄株式会社製、D50:40μm
(硬化剤)
・CRN
カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、質量基準の仕込み比:カテコール/レゾルシノール=5/95、シクロヘキサノン50質量%含有
<CRNの合成方法>
撹拌機、冷却器及び温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコに、レゾルシノール627g、カテコール33g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液316.2g、シュウ酸15g、水300gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。104℃前後で還流し、還流温度で4時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を170℃に昇温した。170℃を保持しながら8時間反応を続けた。反応後、減圧下20分間濃縮を行い、系内の水等を除去し、目的であるフェノールノボラック樹脂CRNを得た。
また、得られたCRNについて、FD−MS(電界脱離イオン化質量分析法)により構造を確認したところ、一般式(III−1)〜一般式(III−4)で表される構造すべての存在が確認できた。
なお、上記反応条件では、一般式(III−1)で表される構造を有する化合物が最初に生成し、これがさらに脱水反応することで一般式(III−2)〜一般式(III−4)のうちの少なくとも1つで表される構造を有する化合物が生成すると考えられる。
得られたCRNについて、Mn(数平均分子量)及びMw(重量平均分子量)の測定を次のようにして行った。
Mn及びMwの測定は、高速液体クロマトグラフィ(株式会社日立製作所製、商品名:L6000)及びデータ解析装置(株式会社島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて行った。分析用GPCカラムは東ソー株式会社製のG2000HXL及びG3000HXL(以上、商品名)を使用した。試料濃度は0.2質量%、移動相にはテトラヒドロフランを用い、流速1.0mL/minで測定を行った。ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを計算した。
得られたCRNについて、水酸基当量の測定を次のようにして行った。
水酸基当量は、塩化アセチル−水酸化カリウム滴定法により測定した。なお、滴定終点の判断は溶液の色が暗色のため、指示薬による呈色法ではなく、電位差滴定によって行った。具体的には、測定樹脂の水酸基をピリジン溶液中塩化アセチル化した後に、過剰の試薬を水で分解し、生成した酢酸を水酸化カリウム/メタノール溶液で滴定したものである。
得られたCRNは、一般式(III−1)〜一般式(III−4)のうちの少なくとも1つで表される構造を有する化合物の混合物であり、Arが、一般式(III−a)においてR31が水酸基であり、R32及びR33が水素原子である1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基であり、低分子希釈剤として単量体成分(レゾルシノール)を35質量%含む硬化剤(水酸基当量62g/eq、数平均分子量422、重量平均分子量564)を含むフェノールノボラック樹脂であった。
(硬化促進剤)
・TPP
トリフェニルホスフィン、和光純薬工業株式会社製
(添加剤)
・KBM−573
3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製
(溶剤)
・CHN:シクロヘキサノン
(支持体)
・PETフィルム
帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:A53、厚さ50μm
・銅箔
古河電気工業式会社製、厚さ105μm、GTSグレード
<エポキシ混合物の調製>
表1に示すエポキシ化合物を表1に示すモル比で混合してエポキシ混合物を得た。
<融点の測定>
エポキシ混合物について、示差走査熱量測定装置DSC7(パーキンエルマ製)を用いて測定した。測定温度範囲25℃〜350℃、昇温速度10℃/分、流量20±5ml/minの窒素雰囲気下の条件で、アルミニウム製のパンに密閉した3mg〜5mgの試料の示差走査熱量測定を行い、相転移に伴うエネルギー変化が起こる温度(吸熱反応ピークの温度)を融点(相転移温度)とした。結果を図1に示す。
図1に示すように、3環型エポキシ化合物にビフェニル型エポキシ化合物を添加したエポキシ混合物とすることで、融点が低下することが分かった。
<実施例1のエポキシ樹脂組成物の調製>
上記のエポキシ混合物を9.03質量%と、硬化剤としてCRNを5.65質量%と、硬化促進剤としてTPPを0.09質量%と、無機充填材としてHP−40を36.93質量%、AA−3を8.35質量%、AA−04を8.35質量%と、添加剤としてKBM−573を0.05質量%と、溶剤としてCHNを31.55質量%と、を混合して、エポキシ樹脂組成物を調製した。
<実施例2〜5及び比較例1のエポキシ樹脂組成物の調製>
実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調整した。
窒化ホウ素(HP−40)の密度を2.20g/cm、アルミナ(AA−3及びAA−04)の密度を3.98g/cm、及びエポキシ化合物と硬化剤との混合物の密度を1.20g/cmとして、エポキシ樹脂組成物の全固形分の全体積に対する無機充填材の割合を算出したところ、68体積%であった。
<Bステージシートの作製>
エポキシ樹脂組成物を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが200μmとなるようにPETフィルム上に付与した後、常温(20℃〜30℃)で5分、さらに130℃で5分間乾燥させた。その後、真空プレスにて熱間加圧(プレス温度:150℃、真空度:1kPa、プレス圧:15MPa、加圧時間:1分)を行い、PETフィルム上に半硬化物層を備えたBステージシートを得た。
<銅箔付樹脂シート硬化物の作製>
上記で得られたBステージシートからPETフィルムを剥がした後、2枚の銅箔で、銅箔のマット面がそれぞれ半硬化物層に対向するようにして挟み、真空プレスにて真空熱圧着(プレス温度:180℃、真空度:1kPa、プレス圧:15MPa、加圧時間:6分)した。その後、大気圧条件下、150℃で2時間、210℃で4時間加熱し、銅箔付樹脂シート硬化物を得た。
<XRDによるスメクチック構造形成の確認>
銅箔付樹脂シート硬化物の銅箔をエッチングして取り除き、樹脂シート硬化物を得た。得られた樹脂シート硬化物を縦10mm、横10mmに切って試料を得た。試料は、CuKα1線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、2θ=0.5〜30°の範囲でXRD測定(株式会社リガク製のX線回折装置を使用)を行い、2θ=1〜10°の範囲での回折ピークの有無により、スメクチック構造が形成されているか否かを確認した。図2に得られたX線回折スペクトルを示す。
図2において2θ=3〜4°に検出されたピークは、形成されたスメクチック構造由来のピークである。ビフェニル型エポキシ化合物を添加せず、3環型エポキシ化合物のみの場合(100:0)では、回折ピークは、2θ=3.3°の1次ピークに加え、6.7°の2次ピークまで検出することができた。ビフェニル型エポキシ化合物を添加した場合(90:10〜50:50)には、2θ=3.3°の1次ピークが検出され、スメクチック構造が形成されていることが確認された。
また、1次ピークは、ビフェニル型エポキシ化合物の含有率が増加するほど、ブロードになる傾向を示した。これは、ビフェニル型エポキシ化合物の含有率が増加するほど、高次構造の規則性が低減するためと考えられる。
さらに、ビフェニル型エポキシ化合物の含有率が増加するほど、1次ピークの回折角度が大きくなる傾向を示した。これは、層間隔が狭いスメクチック構造も形成されていることを意味している。3環型エポキシ化合物よりも分子鎖長の短いビフェニル型エポキシ化合物が混在することで、配向する3環型エポキシ化合物の間をビフェニル型エポキシ化合物が橋架するため、3環型エポキシ化合物単独の場合よりも周期が短い層構造が形成されることがその理由として考えられる。
<偏光顕微鏡によるスメクチック構造形成の確認>
樹脂シート硬化物を、室温(25℃)から昇温させながら、偏光顕微鏡を用いてクロスニコル状態で観察した。
図3に偏光顕微鏡により観察された写真を示す。ビフェニル型エポキシ化合物の含有率が大きくなるほど、スメクチック構造のドメインが小さくなった。
<熱伝導率の測定>
銅箔付樹脂シート硬化物の銅箔をエッチングして取り除き、シート状の樹脂シート硬化物を得た。得られた樹脂シート硬化物を縦10mm、横10mmに切って試料を得た。試料をグラファイトスプレーにて黒化処理した後、キセノンフラッシュ法(NETZSCH社製の商品名:LFA447 nanoflash)にて熱拡散率を評価した。この値と、アルキメデス法で測定した密度と、DSC(示差走査熱量測定装置;Perkin Elmer社製の商品名:DSC Pyris1)にて測定した比熱との積から、樹脂シート硬化物の厚さ方向の熱伝導率を求めた。結果を図4に示す。
図4に示されるように、3環型エポキシ化合物にビフェニル型エポキシ化合物を添加しても、熱伝導率に優れる樹脂シート硬化物が得られることが分かった。
これらの結果より、3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物とを併用することにより、硬化物としたときの熱伝導率を維持しつつ、融点を低下させることができるといえる。
<実施例6〜8>
下記表2のエポキシ混合物を調製し、表1のエポキシ混合物と同様の方法で融点を測定した。結果を表3に示す。
また、表1のエポキシ混合物を下記表2のエポキシ混合物に変えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にしてXRD及び偏光顕微鏡によるスメクチック構造形成の確認、並びに熱伝導率の測定を行った。結果を表3に示す。

表3の結果から、3環型エポキシ化合物に組み合わせるビフェニル型エポキシ化合物の種類を変えても、硬化物としたときの熱伝導率を低下させることなく、融点を低下させることができるといえる。

Claims (15)

  1. 3環型エポキシ化合物とビフェニル型エポキシ化合物との双方を含むエポキシ化合物と、硬化剤と、無機充填材と、を含有するエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記3環型エポキシ化合物は、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。

    [一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。]
  3. 前記エポキシ化合物の全量に対するビフェニル型エポキシ化合物の含有率が、30モル%以下である請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記硬化剤は、フェノールノボラック樹脂を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記硬化剤が、下記一般式(II−1)及び下記一般式(II−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造単位を有するフェノールノボラック樹脂を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。

    [一般式(II−1)及び一般式(II−2)中、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。R22、R23、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。m21及びm22は、それぞれ独立に、0〜2の整数を示す。n21及びn22は、それぞれ独立に、1〜7の整数を示す。]
  6. 前記硬化剤が、下記一般式(III−1)〜下記一般式(III−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表される構造を有するフェノールノボラック樹脂を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。




    [一般式(III−1)〜一般式(III−4)中、m31〜m34及びn31〜n34は、それぞれ独立に、正の整数を示す。Ar31〜Ar34は、それぞれ独立に、下記一般式(III−a)又は下記一般式(III−b)で表される基のいずれかを示す。]

    [一般式(III−a)及び一般式(III−b)中、R31及びR34は、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
  7. 前記フェノールノボラック樹脂は、前記フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーを含有し、前記モノマーの含有率が、前記フェノールノボラック樹脂中5質量%〜80質量%である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 前記無機充填材は、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 前記無機充填材の含有率が、50体積%を超える請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体である樹脂シート。
  11. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体の半硬化物であるBステージシート。
  12. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
  13. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体の硬化物であるCステージシート。
  14. 金属箔と、前記金属箔上に配置される請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化物である半硬化物層と、を有する樹脂付金属箔。
  15. 金属支持体と、前記金属支持体上に配置される請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物である硬化物層と、前記硬化物層上に配置される金属箔と、を有する金属基板。
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