JP2018030088A - 地熱発電装置用スケール防止剤及び地熱水のスケール防止方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなシリカスケールを抑制する方法として、地熱発電装置の配管内を流れる熱水中に酸を注入する方法(特許文献2参照)や、カチオン性窒素含有化合物と酸とスケール防止剤とを添加する方法(特許文献3参照)、及び、所定の構造を有する重合体を地熱発電用のスケール防止剤として使用する方法(特許文献4〜7参照)が提案されている。
本発明はまた、地熱発電装置に使用される水のスケールを防止する方法であって、上記方法は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを水に添加することを特徴とする地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の地熱発電装置用スケール防止剤は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と(b)無機酸とを含むことを特徴とする。
シリカスケールの析出は、地熱貯留層から汲み上げた地熱水に含まれるシリカ分が重合してシリカの大きな分子が生成することにより生じると考えられる。カチオン性基を有する重合体は、重合前のシリカに吸着して重合反応が起こることを阻害し、ノニオン性基を有する重合体は、重合反応途中のシリカの成長点に吸着してシリカ重合体の成長を阻害することでシリカの大きな分子が生成し、シリカスケールが析出することを防止すると考えられる。また、シリカスケールは水の液性がアルカリ性側になると析出するため、無機酸を添加して液性を酸性にすることでシリカスケールを防止することができる。
ここで、酸を添加して液性を酸性にすることはシリカスケールを防止する1つの方法であるが、pHを下げすぎると地熱発電装置が酸により腐食するおそれがあるため、酸の使用のみでシリカスケールを防止するのには限界がある。また、上述した特許文献4〜7に記載されているように、スケール防止剤として機能する重合体を用いる方法のみでは充分なシリカスケール防止効果を得ることはできない。これに対し、本発明の地熱発電装置用スケール防止剤は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と(b)無機酸との相乗効果により、酸や重合体を単独で用いた場合には達成できない優れたシリカスケール防止効果を得ることができるものである。
(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の質量に対する(b)無機酸の質量の割合は、より好ましくは、0.007〜150であり、更に好ましくは、0.01〜100であり、特に好ましくは、0.1〜80である。
なお、ここで「カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の質量」とは、スケール防止剤がカチオン性基を有する重合体又はノニオン性基を有する重合体のいずれか一方のみを含む場合にはその重合体の質量を意味し、スケール防止剤がカチオン性基を有する重合体とノニオン性基を有する重合体の両方を含む場合にはそれらの重合体の合計質量を意味する。
本発明の地熱発電装置用スケール防止剤は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体を含む。すなわち、カチオン性基を有する重合体、ノニオン性基を有する重合体のいずれか一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
カチオン性基を有する重合体は、構造中にカチオン性基を有する限り、ノニオン性基やアニオン性基を有していてもよいが、カチオン性基が官能基全体(カチオン性基、ノニオン性基及びアニオン性基)の主成分であることが好ましい。すなわち、重合体が有する官能基(カチオン性基、ノニオン性基及びアニオン性基)の合計100モル%に対して、カチオン性基が50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、70モル%以上であり、特に好ましくは、80モル%以上であり、最も好ましくは、90モル%以上である。
本発明において、ノニオン性基を有する重合体が更にアニオン性基を有する場合、ノニオン性基とアニオン性基とを官能基全体の主成分とすることが好ましい。すなわち、重合体が有する官能基(カチオン性基、ノニオン性基及びアニオン性基)の合計100モル%に対して、ノニオン性基とアニオン性基との合計が50モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、70モル%以上である。
また、ノニオン性基を有する重合体がノニオン性基とアニオン性基とを有する場合、重合体が有する官能基(カチオン性基、ノニオン性基及びアニオン性基)の合計100モル%に対して、アニオン性基の割合が10〜98モル%であることが好ましい。より好ましくは、20〜95モル%であり、更に好ましくは、30〜92モル%である。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン等の炭素数2〜4のアルキレンイミン由来のポリアルキレンイミンが好ましい。
その他の単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等のスルホン酸基含有単量体;ジエチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステルやその第4級アンモニウム誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、ビニルステアレート、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
構造中に第1〜3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する重合体がその他の単量体由来の構造単位を有する場合、その他の単量体は上記のものの中でも、官能基を有さないエチレンや、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、芳香族ビニル系単量体、エチレン以外のオレフィン系単量体、アルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルステアレート、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル等のノニオン性基含有単量体が好ましい。
ノニオン性基を有する不飽和単量体としては、上述したものの他、下記式(3);
上記式(3)で表される単量体としては、ビニルピロリドンが好ましい。上記式(4)で表される単量体としては、下記式(5)で表される1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール(PAB)が好ましい。
重合体のK値は実施例に記載の方法により測定することができる。
その他の単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸やそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等のスルホン酸基含有単量体;ジエチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステルやその第4級アンモニウム誘導体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物;N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記ノニオン性基を有する重合体がノニオン性基を有し、アニオン性基を有さない重合体である場合、ノニオン性基を有する重合体におけるノニオン性基を有する不飽和単量体由来の構造単位の割合は、重合体を構成する全構造単位100質量%に対して、70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、80質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%、すなわち、ノニオン性基を有する不飽和単量体のみからなることである。
また、ノニオン性基を有する重合体におけるアニオン性基を有する不飽和単量体由来の構造単位の割合は、重合体を構成する全構造単位100質量%に対して、5〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜98質量%であり、更に好ましくは、10〜97質量%であり、特に好ましくは、20〜95質量%であり、中でも特に好ましくは、30〜92質量%であり、最も好ましくは、30〜90質量%である。
なお、アニオン性基としては、アニオンを有する基又は水中でアニオンを発生させる基であればよく、カルボキシル基、スルホニル基等のいずれのものであってもよく、これらの1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
カチオン性基を有する重合体やノニオン性基を有する重合体の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記重合反応に用いる重合開始剤は特に制限されず、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等を用いることができる。
重合開始剤の使用量は、重合反応を開始させることができる量であれば特に制限されないが、例えば、重合反応に使用する全単量体の総量1モルに対して1〜12gの範囲で適宜調整して用いることができる。
連鎖移動剤の使用量は特に制限されず、求められる重合体の分子量等に応じて適宜調整して用いることができるが、例えば、重合反応に使用する全単量体の総量1モルに対して1〜20gの範囲で適宜調整して用いることができる。
本発明における(b)無機酸としては特に制限されず、塩酸、硫酸、硝酸等のいずれの無機酸も用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上述したように、カチオン性基を有する重合体、ノニオン性基を有する重合体のいずれか少なくとも一方と無機酸とを地熱発電装置で使用される地熱水に添加すると地熱発電装置内のシリカスケールの析出を効果的に防止することができるため、これらを水に添加して得られる組成物はシリカスケールの析出が効果的に防止された液体組成物として地熱発電装置において好適に用いることができる。このような液体組成物、すなわち、地熱発電装置に用いられる液体組成物であって、該液体組成物は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と(b)無機酸と(c)水とを含むことを特徴とする地熱発電装置用液体組成物もまた、本発明の1つである。
特に、カチオン性基を有する重合体を用いる場合、カチオン性基を有する重合体の含有量は10〜900,000ppmであることが好ましい。より好ましくは、15〜900,000ppmであり、更に好ましくは、20〜900,000ppmである。
また特にノニオン性基を有する重合体を用いる場合、ノニオン性基を有する重合体の含有量は0.1〜800,000ppmであることが好ましい。より好ましくは、0.2〜600,000ppmであり、更に好ましくは、0.5〜500,000ppmである。
また、経済性も考慮すると、カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の含有量は、0.1〜1000ppmとすることが特に好ましい。最も好ましくは、0.1〜100ppmである。
なお、ここで「カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の含有量」とは、カチオン性基を有する重合体又はノニオン性基を有する重合体のいずれか一方のみを含む場合にはその重合体の含有量を意味し、スケール防止剤がカチオン性基を有する重合体とノニオン性基を有する重合体の両方を含む場合にはそれらの重合体の合計含有量を意味する。後述する本発明のスケール防止方法における水中のカチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の含有量も同様である。
地熱発電装置用液体組成物のpHは、pH電極を用いたpHメーターにより測定することができる。
したがって、上記地熱発電装置用液体組成物に含まれる水は、シリカ分を10〜2000ppm含むものであってもよく、炭酸ナトリウムを1〜1000ppm含むものであってもよい。
本発明の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを水に添加する方法であるが、重合体や無機酸とを添加する方法は特に制限されず、これらを同時に添加してもよく、別々に添加してもよい。また、重合体、無機酸とも、全量を一括で添加してもよく、少量ずつに分けて添加してもよい。
また、重合体や無機酸は、液体状態の水のみが存在する状態の水に対して添加してもよく、少なくとも液体状態の水が存在している限り、液体状態の水と蒸気の両方が存在する状態の水に対して添加してもよい。
水中のシリカ分の含有量は、プラズマ発光分光分析装置(ICP)(セイコー電子工業株式会社製SPS4000)を使用して、濾液中のSi量を定量し、SiO2濃度に換算することにより測定することができる。
なお、スケール防止方法を80〜120℃の水に対して使用するとは、80〜120℃の水に対して(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを添加することのみを意味するものではなく、添加した時点では80〜120℃の範囲外であったとしても(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを含む水の温度が80〜120℃となった場合には、80〜120℃の水に対して本発明のスケール防止方法を使用していることになる。
上述したように、バイナリーシステム型の地熱発電装置は、地熱貯留層から汲み上げた地熱水を蒸気と液体の水分とに分けて蒸気分を発電に利用するとともに、液体の水分も再度蒸気化して更に発電に利用する構造の装置である。バイナリーシステム型の地熱発電装置では、地熱貯留層から汲み上げた地熱水の蒸気分のみを発電に用いる通常の地熱発電装置に比べて地熱発電装置のより多くの部分が液体状態の地熱水と接触することになり、地熱発電装置の中にシリカスケールの析出の問題が発生し得る部分も多いことになる。したがって、本発明のスケール防止方法は、地熱発電装置の中でもこのようなバイナリーシステム型の地熱発電装置に使用される場合に、発明の効果をより顕著に発揮することできるといえ、バイナリーシステム型の地熱発電装置に使用されることは本発明のスケール防止方法の好適な実施形態の1つである。
<重合体のK値>
K値が20未満である場合には5%(g/100ml)溶液の粘度を測定し、K値が20以上の場合は1%(g/100ml)溶液の粘度を測定した。試料濃度は乾燥物換算した。K値が20以上の場合、試料は1.0gを精密に計りとり、100mlのメスフラスコに入れ、室温で蒸留水を加え、振とうしながら完全に溶かして蒸留水を加えて正確に100mlとした。この試料溶液を恒温槽(25±0.2℃)で30分放置後、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。溶液が2つの印線の間を流れる時間を測定する。数回測定し、平均値をとった。相対粘度を測定するために、蒸留水についても同様に測定した。2つの得られた流動時間をハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach−Couette)の補正に基づいて補正した。
重合体の残存単量体量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー法)にて測定した。
<重合体の重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により、下記の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex Asahipak GF−310−HQ、
GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム水溶液
マックスブレンド(住友重機械工業社の登録商標)型の撹拌翼、ガラス製の蓋を備えたSUS304製反応容器に、イオン交換水430.0重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」と称する)0.16重量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物(以下、「SHP」と称する)4.25重量部(酸型換算(次亜リン酸換算)2.65重量部)を仕込み、90℃に昇温した。N−ビニルピロリドン(以下、「NVP」と称する)500重量部、イオン交換水55.6重量部からなる単量体水溶液を180分かけて、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩(以下、「V−50」と称する)1.5重量部、イオン交換水8.5重量部からなる重合開始剤水溶液を210分かけて反応容器に添加した。重合開始から240分後、88%ギ酸水溶液3.05重量部を添加し、更に80分間90℃を維持して、重合体(1)を含む固形分50.9%の重合体水溶液(1)を得た。重合体(1)のK値は、28であり、重合体(1)は、主鎖に次亜リン酸(塩)基を有していた。
日本触媒社製のポリエチレンイミンSP018をイオン交換水を用いて固形分50.0%に希釈し、ポリエチレンイミンを重合体(2)として含む重合体水溶液(2)を得た。
(単量体の合成)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製4つ口フラスコにn−ブチルアルコール370.0gと、ペレット状の水酸化ナトリウム4.27gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」とも称する。)57.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。この溶液を容量1,000mLのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレータで脱溶剤した。析出してきた塩を濾過により取り除き、単量体(1)を得た。
還流冷却器、撹拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水128.4g及びモール塩0.0187gを仕込み、撹拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)270.0g、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液(以下、「40%HAPS」とも称する。)192.0g、単量体(1)15.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)100g、及び、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)40gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。80%AAの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)193.3gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、本発明の重合体(3)を含む固形分濃度45%の重合体水溶液(3)を得た。重合体(3)の重量平均分子量は8,200であった。また、残存アクリル酸は、80ppm、残存HAPSは、850ppm、残存単量体(1)は、0.21%であった。
還流冷却器、撹拌機(パドル翼)を備えた容量1,000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水128.4g及びモール塩0.0187gを仕込み、撹拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)270.0g、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液(以下、「40%HAPS」とも称する。)192.0g、単量体(1)15.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)20g、及び、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)20gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、単量体(1)については120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。80%AAの滴下終了後、更に30分間、前記反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)193.3gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、本発明の重合体(4)を含む固形分濃度45%の重合体水溶液(4)を得た。重合体(4)の重量平均分子量は46,000であった。また、残存アクリル酸は、100ppm、残存HAPSは、900ppm、残存単量体(1)は、0.11%であった。
還流冷却器、撹拌機を備えた容量25LのSUS製反応容器に、40%HAPSを6024gを装入し、撹拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで、撹拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AAを5670gと40%HAPSを6024g、15%NaPSを2128g滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜90分の間、40%HAPSを0分〜60分の間、それぞれ一定時間で滴下した。開始剤である15%NaPSは、9.7g/分で滴下し、開始55分で滴下速度を3倍の29.1g/分に変更し、0分〜110分の間に滴下した。次いで脱イオン水4940gを50分〜90分の間、一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、撹拌下、沸点還流状態に保った。上記15%NaPSの滴下終了後、更に30分間反応液を沸点還流状態に保持し重合を完結させ、固形分40重量%の重合体水溶液(5)を得た。重合体(5)の重量平均分子量は、95,000であった。
250mlの内容量のポリプロピレン製容器にシリカ濃度1000mg/L(SiO2換算、メタケイ酸ナトリウム・9水和物で調整)、炭酸ナトリウム濃度300mg/Lの試験水を入れた。そこに重合体水溶液(1)を固形分換算で5mg/Lとなるように添加し、硫酸を純分換算で200mg/Lになるように添加した。
この溶液を、密閉可能な120mlの内容量のポリプロピレン製溶液中に空気が混入しないように仕込んで密閉し、85℃で4時間静置した。その後、0.1μmメンブランフィルターを用いて濾過し、プラズマ発光分光分析装置(ICP)(セイコー電子工業株式会社製SPS4000)を使用して、濾液中のSi量を定量し、SiO2濃度に換算して、下記式によりスケール抑制率(スケール防止能)(%)を算出した。また、pHメーターにより、溶液のpHを測定した。
スケール抑制率(%)=((X−Y)/(Z−Y))×100
X:試験後のろ液中のSiO2濃度(mg/L)
Y:ポリマー無添加で試験したろ液中のSiO2濃度(mg/L)
Z:試験前のSiO2濃度(mg/L)
評価結果を表1に示した。
実施例1において、重合体水溶液(1)の添加量を固形分換算で5mg/L使用する代わりに、表1に記載の重合体水溶液(2)−(5)を表1記載の量で使用した以外は、実施例1と同様に実験を実施した。結果を表1に記載した。
実施例1において、硫酸を使用しなかった以外は実施例1と同様に実験を実施した。結果を表1に記載した。
実施例1において重合体水溶液(1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に実験を実施した。結果を表1に記載した。
Claims (12)
- 地熱発電装置に用いられるスケール防止剤であって、
該スケール防止剤は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と(b)無機酸とを含むことを特徴とする地熱発電装置用スケール防止剤。 - 前記ノニオン性基を有する重合体は、更にアニオン性基を有することを特徴とする請求項1に記載の地熱発電装置用スケール防止剤。
- 前記地熱発電装置用スケール防止剤における、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の質量に対する(b)無機酸の質量の割合(b)/(a)は、0.001〜200であることを特徴とする請求項1又は2に記載の地熱発電装置用スケール防止剤。
- 地熱発電装置に用いられる液体組成物であって、
該液体組成物は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と(b)無機酸と(c)水とを含むことを特徴とする地熱発電装置用液体組成物。 - 前記地熱発電装置用液体組成物は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の含有量が0.1〜990,000ppmであることを特徴とする請求項4に記載の地熱発電装置用液体組成物。
- 前記地熱発電装置用液体組成物は、pHが1.5〜10であることを特徴とする請求項4又は5に記載の地熱発電装置用液体組成物。
- 地熱発電装置に使用される水のスケールを防止する方法であって、
該方法は、(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを水に添加することを特徴とする地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。 - 前記スケール防止方法は、水中のシリカ分の含有量が300ppm以上である水に対して(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体と、(b)無機酸とを添加する方法であることを特徴とする請求項7に記載の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。
- 前記スケール防止方法は、水中の(a)カチオン性基を有する重合体及び/又はノニオン性基を有する重合体の含有量を0.1〜990,000ppmに調整する方法であることを特徴とする請求項7又は8に記載の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。
- 前記スケール防止方法は、水のpHを1.5〜10に調整する方法であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。
- 前記スケール防止方法は、80〜120℃の水に対して使用されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。
- 前記スケール防止方法は、バイナリーシステム型の地熱発電装置に使用されることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の地熱発電装置に使用される水のスケール防止方法。
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