JP2018026205A - 負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】正負極間での水酸化物イオンの効率的な伝導経路を確保し、かつ、電池内のスペース効率を向上しながら、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を効果的に防止することが可能な負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池を提供する。【解決手段】亜鉛二次電池用の負極構造体であって、多孔質金属で構成される多孔質集電板と、多孔質集電板の一面側に設けられ、亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む負極活物質層と、多孔質集電板の負極活物質層と反対側に設けられ、貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定される高緻密性を有する水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータとを備えた、負極構造体。【選択図】図1
Description
本発明は、負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池に関するものである。
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極ないしその集電体から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
上記問題に対処すべく、水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータを搭載した亜鉛二次電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、層状複水酸化物(以下、LDHという)で構成される緻密なセパレータで正極及び負極間を隔離した亜鉛二次電池が開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、絶縁体である多孔質基材の表面に形成されたLDH膜で構成されるセラミックスセパレータと、外周部材とを備えたセパレータ構造体が開示されており、セラミックスセパレータが透水性や通気性を有しない程の高い緻密性を有することが開示されている。
ところで、最近、亜鉛デンドライトを負極集電板の裏側(すなわち正極と反対側)に析出させることにより、亜鉛デンドライトに起因する短絡を回避する手法が提案されている。すなわち、非特許文献1(Shougo Higashi et al., Nature Communications 7, Article number: 11801, doi:10.1038/ncomms11801, published 6 June 2016)には、負極集電体(銅板)の正極と向かい合う面に絶縁体(ポリプロピレン)を貼り付け、亜鉛デンドライトを負極集電体の正極と反対側にのみ析出させる電池構造が開示されている。
Shougo Higashi et al., "Avoiding short circuits from zinc metal dendrites in anode by backside-plating configuration", Nature Communications 7, Article number: 11801, doi:10.1038/ncomms11801, published 6 June 2016
しかしながら、非特許文献1に開示される電池構造は、亜鉛の析出量が厚さにして数μmと少ない上、電池反応に必要な水酸化物イオンが、負極集電体に貼り付けられた絶縁体の外周を迂回して電極に到達するといった非効率な移動経路を経る必要があり、大型で大容量の設計には適していない。
本発明者らは、今般、負極活物質層、多孔質集電板、及び水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータをこの順に備えた負極構造体を亜鉛二次電池に組み込むことにより、正負極間での水酸化物イオンの効率的な伝導経路を確保し、かつ、電池内のスペース効率を向上しながら、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を効果的に防止することができるとの知見を得た。その結果、大型化、大容量化及び高出力化に適した無駄の無い設計でありながら、亜鉛二次電池の信頼性を大いに高められるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、正負極間での水酸化物イオンの効率的な伝導経路を確保し、かつ、電池内のスペース効率を向上しながら、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を効果的に防止することが可能な負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池を提供することにある。
本発明の一態様によれば、亜鉛二次電池用の負極構造体であって、
多孔質金属で構成される多孔質集電板と、
前記多孔質集電板の一面側に設けられ、亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む負極活物質層と、
前記多孔質集電板の前記負極活物質層と反対側に設けられ、貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定される高緻密性を有する水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータと、
を備えた、負極構造体が提供される。
多孔質金属で構成される多孔質集電板と、
前記多孔質集電板の一面側に設けられ、亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む負極活物質層と、
前記多孔質集電板の前記負極活物質層と反対側に設けられ、貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定される高緻密性を有する水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータと、
を備えた、負極構造体が提供される。
本発明の他の一態様によれば、
正極と、
前記負極構造体と、
アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液と、
を備え、前記セパレータを介して前記正極と前記負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池が提供される。
正極と、
前記負極構造体と、
アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液と、
を備え、前記セパレータを介して前記正極と前記負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池が提供される。
負極構造体及び亜鉛二次電池
本発明の負極構造体は、亜鉛二次電池用の負極構造体である。亜鉛二次電池は、亜鉛を負極として用い、かつ、アルカリ金属水酸化物水溶液を電解液として用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。中でも、重量あたりの理論容量密度が高く、原料価格も低いことから、ニッケル亜鉛二次電池が好ましい。例えば、市販の酸化銀亜鉛一次電池のエネルギー密度が116Wh/kgであり、市販の酸化マンガン亜鉛一次電池のエネルギー密度が160Wh/kgであるが、ニッケル亜鉛二次電池の理論エネルギー密度は334Wh/kgとかなり高い。
本発明の負極構造体は、亜鉛二次電池用の負極構造体である。亜鉛二次電池は、亜鉛を負極として用い、かつ、アルカリ金属水酸化物水溶液を電解液として用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。中でも、重量あたりの理論容量密度が高く、原料価格も低いことから、ニッケル亜鉛二次電池が好ましい。例えば、市販の酸化銀亜鉛一次電池のエネルギー密度が116Wh/kgであり、市販の酸化マンガン亜鉛一次電池のエネルギー密度が160Wh/kgであるが、ニッケル亜鉛二次電池の理論エネルギー密度は334Wh/kgとかなり高い。
図1に、本発明の一態様による負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池の構成を模式的に示す。図1に示される亜鉛二次電池10は本発明の電池構成を概念的に説明するためのものであり、ニッケル亜鉛二次電池を始めとする上記各種の亜鉛二次電池に概ね当てはまる。図1に示されるように、亜鉛二次電池10は、正極12と、負極構造体14と、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液24とを備える。負極構造体14は、負極活物質層16と、多孔質集電板18と、水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータ20(以下、セラミックスセパレータ20という)とを備えており、セラミックスセパレータ20を介して正極12と負極活物質層16が互いに隔離される。多孔質集電板18は多孔質金属で構成される集電板である。負極活物質層16は、多孔質集電板18の一面側に設けられ、亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む。セラミックスセパレータ20は、多孔質集電板18の負極活物質層16と反対側に設けられ、高緻密性及び水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス製のセパレータである。かかるセラミックスセパレータ20の高緻密性は、貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定されるものであり、特許文献2においても知られているように、亜鉛二次電池の電池反応で必要とされる水酸化物イオンの正負極間の移動を許容しながら、亜鉛デンドライト貫通の阻止に寄与する。
そして、本発明においては、負極活物質層16、多孔質集電板18、及びセラミックスセパレータ20をこの順に備えた負極構造体14を亜鉛二次電池10に組み込むことにより、正負極間での水酸化物イオンの効率的な伝導経路を確保し、かつ、電池内のスペース効率を向上しながら、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡を効果的に防止することができる。その結果、大型化、大容量化及び高出力化に適した無駄の無い設計でありながら、亜鉛二次電池の信頼性を大いに高められる。
すなわち、前述のとおり、非特許文献1に開示される電池構造は、亜鉛の析出量が厚さにして数μmと少ない上、電池反応に必要な水酸化物イオンが、負極集電体に貼り付けられた絶縁体の外周を迂回して電極に到達するといった非効率な移動経路を経る必要があり、大型で大容量の設計には適していない。これに対し、本発明の構成によれば、負極の充放電反応は多孔質集電板18内及び負極活物質層16内に浸入した電解液24中で起こり、その際反応に必要な水酸化物イオンは、電極ないし絶縁体の外周を迂回することなく、セラミックスセパレータ20を通して最短経路で正負極間を移動することができる。しかも、金属亜鉛が多孔質集電板18内に生成してデンドライト状に成長するものの、セラミックスセパレータ20に阻止されて正極12には到達することができず、亜鉛デンドライトによる短絡が効果的に防止される。
また、特許文献2に開示されるような、絶縁体である多孔質基材の表面に形成されたLDH膜で構成されるセラミックスセパレータは、多孔質基材の中に電解液を染み込ませる必要がある。しかし、電池反応においては、多孔質基材の厚さ分のスペース及びそこに含まれる電解液は無駄となる。その意味で多孔質基材はできるだけ薄い方が良いが、薄すぎると構造的強度が弱くなるというトレードオフがある。これに対し、本発明の構成によれば、集電体として機能しうる多孔質金属で多孔質基材を構成することにより、電池内の無駄な空間を排除することができ、その結果、電解液の抵抗が小さくなり、出力が増大するという利点がある。すなわち、大型化、大容量化及び高出力化に適した無駄の無い電池設計を可能とする。
負極構造体14は、負極活物質層16と、多孔質集電板18と、セラミックスセパレータ20とをこの順に備える。したがって、多孔質集電板18は負極活物質層16に対して集電体として機能すると同時に、セラミックスセパレータ20に対して強度補強及び電解液保持のための多孔質基材として機能する。
多孔質集電板18は多孔質金属で構成される集電板である。多孔質金属の形態は特に限定されず、不織布、発泡金属、メッシュ、及びエキスパンドメタルからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。多孔質金属の材質は、負極集電体として利用可能な金属であれば特に限定されず、好ましくは銅及び真鍮の少なくともいずれか一方であるのが好ましい。
負極活物質層16は亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む。亜鉛は、負極に適した電気化学的活性を有するものであれば、亜鉛金属、亜鉛化合物及び亜鉛合金のいずれの形態で含まれていてもよい。負極材料の好ましい例としては、酸化亜鉛、亜鉛金属、亜鉛酸カルシウム等が挙げられるが、亜鉛金属及び酸化亜鉛の混合物がより好ましい。負極活物質層16はゲル状に構成してもよいし、電解液と混合して負極合材としてもよい。
セラミックスセパレータ20は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス(すなわち無機固体電解質)製のセパレータである。セラミックスセパレータ20は多孔質集電板18を基材として、その一面側に膜状に形成することができる。セラミックスセパレータ20は高度な緻密性を有するものであり、この高緻密性は貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定される。なお、本明細書において「通気性を有しない」とは、後述する例2の評価5で採用される「緻密性判定試験」又はそれに準ずる手法ないし構成で通気性を評価した場合に、水中で測定対象物(すなわちセラミックスセパレータ20及び/又は多孔質集電板18)の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。こうすることで、セラミックスセパレータ20は、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。電池用固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、バルク形態のLDH緻密体では高抵抗であるとの問題があったが、本発明の好ましい態様においては、多孔質集電板により強度を付与できるため、セラミックスセパレータ20を薄くして低抵抗化を図ることができる。その上、多孔質集電板18は透水性及び通気性を有しうるため、電池用固体電解質セパレータとして使用された際に電解液24がセラミックスセパレータ20に到達可能な構成となりうる。すなわち、本態様のセラミックスセパレータ20は、亜鉛二次電池に適用可能なセパレータとして、極めて有用な材料となりうる。
セラミックスセパレータ20は、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。このような範囲内のHe透過度を有するセラミックスセパレータは緻密性が極めて高いといえる。したがって、He透過度が10cm/min・atm以下であるセラミックスセパレータは、亜鉛二次電池においてセパレータとして適用した場合に、水酸化物イオン以外の物質の通過を高いレベルで阻止することができる。例えば、電解液中において亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオンの透過を極めて効果的に抑制することができる。こうして亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオンの透過が顕著に抑制されることで、亜鉛二次電池に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。He透過度は、セパレータないし機能層の一方の面にHeガスを供給してセパレータないし機能層にHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出してセパレータないし機能層の緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータないし機能層に加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こす亜鉛イオン及び/又は亜鉛酸イオン)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、セラミックスセパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。He透過度の測定は、後述する例2の評価6に示される手順に従って好ましく行うことができる。
セラミックスセパレータ20は層状複水酸化物(LDH)を含むのが好ましく、より好ましくはLDHで構成される。一般的に知られているように、LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH−及び/又はCO3 2−を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
一般的に、LDHは、M2+ 1−xM3+ x(OH)2An− x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH−及びCO3 2−が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH−及び/又はCO3 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Ti、OH基、及び場合により不可避不純物で構成されてもよい。LDHの中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層を主としてNi、Ti及びOH基で構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHにはアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられる元素(例えばAl)が意図的又は積極的に添加されていないためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+ 1−xTi4+ x(OH)2An− 2x/n・mH2O(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+やTi4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層をNi、Al、Ti及びOH基を含む所定の元素ないしイオンで構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHは、従来はアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられていたAlが、Ni及びTiとの何らかの相互作用によりアルカリ溶液に溶出しにくくなるためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+ 1−x−yAl3+ xTi4+ y(OH)2An− (x+2y)/n・mH2O(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
LDHは複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質集電板18の表面(多孔構造に起因する微細凹凸を無視できる程度に巨視的に観察した場合における多孔質集電板の板面)と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向しているのが好ましい。なお、セラミックスセパレータ20は多孔質集電板18の孔内に少なくとも部分的に組み込まれていてもよく、その場合、多孔質集電板18の孔内にもLDH板状粒子は存在しうる。
LDH結晶は層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記垂直又は斜めの配向は、セラミックスセパレータ20にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有セパレータは、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いことが既に知られている。すなわち、上記垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわちセラミックスセパレータ20又は多孔質集電板18の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH含有セパレータは層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH含有セパレータは、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。
セラミックスセパレータ20は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでセラミックスセパレータの低抵抗化を実現できる。上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。セラミックスセパレータ20の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
LDH含有セラミックスセパレータの製造方法は特に限定されず、既に知られるLDHセラミックスセパレータの製造方法(例えば特許文献1及び2を参照)を参照することにより作製することができる。例えば、特許文献2には、多孔質基材付きLDHセパレータの製造方法が開示されており、多孔質基材の代わりに(あるいは多孔質基材として)多孔質集電板を用いることで多孔質集電板付きLDHセパレータを製造することができる。すなわち、(a)多孔質集電板を用意し、(b)所望により、この多孔質集電板に、LDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、(c)多孔質集電板に水熱処理を施してLDH膜を形成させることにより、多孔質集電板付きLDHセパレータを好ましく製造することができる。あるいは、(1)多孔質集電板を用意し、(2)多孔質集電板に酸化チタンゾル或いはアルミナ及びチタニアの混合ゾルを塗布して熱処理することで酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を形成させ、(3)ニッケルイオン(Ni2+)及び尿素を含む原料水溶液に多孔質集電板を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質集電板を水熱処理して、LDH含有セラミックスセパレータを多孔質集電板上及び/又は多孔質集電板中に形成させることにより、LDH含有セラミックスセパレータを製造してもよい。特に、上記工程(2)において酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を多孔質集電板に形成することで、LDHの原料を与えるのみならず、LDH結晶成長の起点として機能させて多孔質集電板の表面に高度に緻密化されたLDH含有セラミックスセパレータをムラなく均一に形成することができる。また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
図1に示されるように、負極構造体14はセラミックスセパレータ20及び/又は多孔質集電板18の外縁に沿って枠26を備えるのが好ましく、それにより電池容器を構成する可撓性フィルム28と負極構造体14とが枠26を介して液密に接着されているのが好ましい。枠26が樹脂枠であるのが好ましく、可撓性フィルム28と樹脂枠26とが熱融着及び/又は接着剤により接着されているのがより好ましい。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点で好ましい。ホットメルト接着剤を用いてもよい。いずれにしても、可撓性フィルム28と枠26の接合部分では液密性が確保されることが望まれる。枠26を構成する樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、PP樹脂、PE樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂、PP樹脂、PE樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルである。
本発明の好ましい態様において、枠26は、セラミックスセパレータ20及び所望により多孔質集電板18を収容可能な開口部を有する外枠部26aと、外枠部26aの正極12側の端部及び/又はその近傍から開口部に向かって延在する内枠部26bとを備える。そして、内枠部26bが負極構造体14のセラミックスセパレータ20と係合する。そして、セラミックスセパレータ20と枠26(すなわち外枠部26a及び内枠部26b)との間、又はセラミックスセパレータ20及び多孔質集電板18の両方と枠26(すなわち外枠部26a及び内枠部26b)との間が接着剤22で液密に封止されているのが好ましい。かかる構成によれば、負極活物質層16に由来して亜鉛デンドライトが成長してセラミックスセパレータ20に到達した場合に、亜鉛デンドライトの成長に伴い発生しうる応力が、セラミックスセパレータ20を内枠部26bに押し付ける方向に働くことになり、その結果、セラミックスセパレータ20と内枠部26bとの間で接着剤22を圧縮して接着剤22による液密封止効果及び接着効果を向上させることができる。すなわち、接着剤22を引っ張る方向ではなく圧縮する方向に上記応力を作用させることができるので、仮に亜鉛デンドライトによる応力が加わったとしても、接着剤22の引っ張りによる枠26の剥離を効果的に回避することができる。
亜鉛二次電池10は、正極12と、負極構造体14と、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液24とを備え、セラミックスセパレータ20を介して正極12と負極活物質層16が互いに隔離される。
正極12は、採用される亜鉛二次電池の種類に応じて適宜選択され、例えば、ニッケル亜鉛二次電池の場合には水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを、酸化銀亜鉛二次電池の場合には酸化銀を、酸化マンガン亜鉛二次電池の場合には二酸化マンガンを、亜鉛空気二次電池にあっては空気中の酸素を取り込む空気極を含むものであることができる。
電解液24は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛及び/又は酸化亜鉛の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物を添加してもよい。前述のとおり電解液24は正極12及び/又は負極活物質層16と混合させて正極合材及び/又は負極合材の形態で存在させてもよい。また、電解液の漏洩を防止するために電解液をゲル化してもよい。
正極12、負極構造体14、電解液24等の電池構成部材が収容される電池容器は、硬い容器であってもよいし、可撓性の容器であってもよい。いずれにしても、電池容器は、液密性及び気密性を有する構造を有するのが好ましい。もっとも、亜鉛空気二次電池の場合、正極として機能する空気極は外気と接触可能となるように電池容器に固定されうる。硬い容器の場合、容器の材質は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有するものであれば特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂製であるのが好ましく、より好ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテルである。一方、可撓性容器の場合、電池容器は図1に示されるように可撓性フィルム28を含む可撓性袋体であるのが好ましい。可撓性袋体を構成する可撓性フィルム28は樹脂フィルムを含むのが好ましい。樹脂フィルムは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有し、かつ、熱融着による接合が可能なものであるのが好ましく、例えば、PP(ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムを含む可撓性フィルムとして、市販のラミネートフィルムが使用可能であり、好ましいラミネートフィルムとしては、ベースフィルム(例えばPETフィルムやPPフィルム)及び熱可塑性樹脂層を備えた2層以上の構成の熱ラミネートフィルムが挙げられる。図1に示されるように、電池容器である可撓性袋体は一対の可撓性フィルム28及び所望により枠26からなり、一対の可撓性フィルム28の外周縁の少なくとも上端部(図1の紙面上方向の端部)以外の部分が熱融着及び/又は接着剤により封止されるのが好ましい。上記外周縁の少なくとも上端部以外の部分が封止されることで電解液24を液漏れ無く確実に可撓性袋体内に保持することができる。可撓性袋体の上端部も熱融着及び/又は接着剤により封止され、電池容器全体として液密性が確保されるのがより好ましく、その場合は可撓性袋体に電解液を注入した後に可撓性袋体の上端部を熱融着及び/又は接着剤により封止すればよい。熱融着による接合ないし封止は市販のヒートシール機等を用いて行えばよい。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点で好ましい。ホットメルト接着剤を用いてもよい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1
負極構造体を備えたニッケル亜鉛二次電池を以下の手順で作製する。
負極構造体を備えたニッケル亜鉛二次電池を以下の手順で作製する。
(1)正極の作製
水酸化ニッケル等の電極活物質を含むペーストを正極集電体である発泡ニッケルシートの細孔内に充填する。活物質が充填された発泡ニッケルシートを乾燥させた後、圧延及び切断して、正極活物質及び正極集電体からなる角板状の正極12を得る。得られた正極12にはタブリード(図示せず)が、正極12の1辺から(図1における紙面上方向に)延在するように設けられる。
水酸化ニッケル等の電極活物質を含むペーストを正極集電体である発泡ニッケルシートの細孔内に充填する。活物質が充填された発泡ニッケルシートを乾燥させた後、圧延及び切断して、正極活物質及び正極集電体からなる角板状の正極12を得る。得られた正極12にはタブリード(図示せず)が、正極12の1辺から(図1における紙面上方向に)延在するように設けられる。
(2)負極構造体の作製
角状の真鍮製多孔質板の一面にMg及びAl含有LDHの緻密膜を形成し、その反対面に酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含む混合物を塗布する。こうして、負極活物質層16、多孔質集電板18、及びセラミックスセパレータ20をこの順に備えた負極構造体14を得る。得られた負極構造体14にはタブリード(図示せず)が、負極構造体14の1辺から(図1における紙面上方向に)延在するように設けられる。
角状の真鍮製多孔質板の一面にMg及びAl含有LDHの緻密膜を形成し、その反対面に酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含む混合物を塗布する。こうして、負極活物質層16、多孔質集電板18、及びセラミックスセパレータ20をこの順に備えた負極構造体14を得る。得られた負極構造体14にはタブリード(図示せず)が、負極構造体14の1辺から(図1における紙面上方向に)延在するように設けられる。
(3)ニッケル亜鉛電池の作製
1対の可撓性フィルム28として、ラミネートフィルム(厚さ:50μm、材質:PP樹脂(ベースフィルム)及びPE樹脂(熱可塑性樹脂))を用意する。負極構造体14を樹脂製枠26にエポキシ系接着剤22で接着し、可撓性フィルム28上に、(枠26が既に接着された)負極構造体14、正極12及び可撓性フィルム28をこの順に積層する。このとき、負極構造体14はセラミックスセパレータ20が正極12と向かい合うように配置する。可撓性フィルム28の外周縁3辺(上端部以外の辺)と、枠26の外周縁3辺(上端部以外の辺)は重なっており、この可撓性フィルム28と枠26をヒートシール機を用いて約200℃で熱融着接合する。その後、正極12側の空間、負極構造体14側の空間に6MのKOH水溶液(すなわち電解液)を注入し、タブリード(図示せず)を挟んた形で一対の可撓性フィルム28とそれらの間の枠26を上端部の辺で熱融着する。こうして負極構造体14を備えたニッケル亜鉛電池10を得る。
1対の可撓性フィルム28として、ラミネートフィルム(厚さ:50μm、材質:PP樹脂(ベースフィルム)及びPE樹脂(熱可塑性樹脂))を用意する。負極構造体14を樹脂製枠26にエポキシ系接着剤22で接着し、可撓性フィルム28上に、(枠26が既に接着された)負極構造体14、正極12及び可撓性フィルム28をこの順に積層する。このとき、負極構造体14はセラミックスセパレータ20が正極12と向かい合うように配置する。可撓性フィルム28の外周縁3辺(上端部以外の辺)と、枠26の外周縁3辺(上端部以外の辺)は重なっており、この可撓性フィルム28と枠26をヒートシール機を用いて約200℃で熱融着接合する。その後、正極12側の空間、負極構造体14側の空間に6MのKOH水溶液(すなわち電解液)を注入し、タブリード(図示せず)を挟んた形で一対の可撓性フィルム28とそれらの間の枠26を上端部の辺で熱融着する。こうして負極構造体14を備えたニッケル亜鉛電池10を得る。
例2(参考)
Mg及びAl含有LDHを含む機能層及び複合材料を以下の手順により作製し、評価した。なお、本例における機能層は水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータに相当するものである。
Mg及びAl含有LDHを含む機能層及び複合材料を以下の手順により作製し、評価した。なお、本例における機能層は水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータに相当するものである。
(1)多孔質基材の作製
アルミナ粉末(住友化学社製、AES−12)100重量部に対して、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)70重量部、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製BM−2)11.1重量部、可塑剤(DOP:黒金化成株式会社製)5.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製レオドールSP−O30)2.9重量部を混合し、この混合物を減圧下で攪拌して脱泡することにより、スラリーを得た。このスラリーを、テープ成型機を用いてPETフィルム上に、乾燥後膜厚が220μmとなるようにシート状に成型してシート成形体を得た。得られた成形体を2.0cm×2.0cm×厚さ0.022cmの大きさになるよう切り出し、1300℃で2時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。
アルミナ粉末(住友化学社製、AES−12)100重量部に対して、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)70重量部、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製BM−2)11.1重量部、可塑剤(DOP:黒金化成株式会社製)5.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製レオドールSP−O30)2.9重量部を混合し、この混合物を減圧下で攪拌して脱泡することにより、スラリーを得た。このスラリーを、テープ成型機を用いてPETフィルム上に、乾燥後膜厚が220μmとなるようにシート状に成型してシート成形体を得た。得られた成形体を2.0cm×2.0cm×厚さ0.022cmの大きさになるよう切り出し、1300℃で2時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。
得られた多孔質基材について、多孔質基材の気孔率をアルキメデス法により測定したところ、40%であった。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ0.3μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
(2)ポリスチレンスピンコート及びスルホン化
ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlをアルミナ多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
ポリスチレン基板0.6gをキシレン溶液10mlに溶かして、ポリスチレン濃度0.06g/mlのスピンコート液を作製した。得られたスピンコート液0.1mlをアルミナ多孔質基材上に滴下し、回転数8000rpmでスピンコートにより塗布した。このスピンコートは、滴下と乾燥を含めて200秒間行った。スピンコート液を塗布した多孔質基材を95%硫酸に25℃で4日間浸漬してスルホン化した。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を70mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3 −=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO3)2・6H2O、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO3)3・9H2O、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を70mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3 −=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)でスルホン化した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面にLDH配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、LDHを含む機能層を、その一部が多孔質基材中に組み込まれた形で得た。得られた機能層の厚さは(多孔質基材に組み込まれた部分の厚さを含めて)約3μmであった。
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)でスルホン化した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面にLDH配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、LDHを含む機能層を、その一部が多孔質基材中に組み込まれた形で得た。得られた機能層の厚さは(多孔質基材に組み込まれた部分の厚さを含めて)約3μmであった。
(5)評価結果
得られた機能層ないし複合材料に対して以下の評価を行った。
得られた機能層ないし複合材料に対して以下の評価を行った。
評価1:機能層の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、機能層の結晶相を測定してXRDプロファイルを得た。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載されるLDH(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。その結果、得られたXRDプロファイルから、機能層はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、機能層の結晶相を測定してXRDプロファイルを得た。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載されるLDH(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。その結果、得られたXRDプロファイルから、機能層はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
評価2:微構造の観察
機能層の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。また、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000によって、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面を得た後に、この断面研磨面の微構造を表面微構造の観察と同様の条件でSEMにより観察した。その結果、機能層の表面微構造及び断面微構造のSEM画像はそれぞれ図2A及び2Bに示されるとおりであった。図2Bに示されるとおり、機能層は、LDH膜からなる膜状部と、膜状部の下に位置するLDH及び多孔質基材からなる複合部とから構成されていることが分かった。また、膜状部を構成するLDHは、複数の板状粒子の集合体で構成され、これら複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(多孔構造に起因する微細凹凸を無視できる程度に巨視的に観察した場合における多孔質基材の面)と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向していた。一方、複合部は、多孔質基材の孔内にLDHが充填されて緻密な層を構成していた。
機能層の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。また、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000によって、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面を得た後に、この断面研磨面の微構造を表面微構造の観察と同様の条件でSEMにより観察した。その結果、機能層の表面微構造及び断面微構造のSEM画像はそれぞれ図2A及び2Bに示されるとおりであった。図2Bに示されるとおり、機能層は、LDH膜からなる膜状部と、膜状部の下に位置するLDH及び多孔質基材からなる複合部とから構成されていることが分かった。また、膜状部を構成するLDHは、複数の板状粒子の集合体で構成され、これら複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(多孔構造に起因する微細凹凸を無視できる程度に巨視的に観察した場合における多孔質基材の面)と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向していた。一方、複合部は、多孔質基材の孔内にLDHが充填されて緻密な層を構成していた。
評価3:元素分析評価(EDS)
クロスセクションポリッシャ(CP)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面が観察できるように研磨した。FE−SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面イメージを10000倍の倍率で1視野取得した。この断面イメージの基材表面のLDH膜と基材内部のLDH部分(点分析)についてEDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧15kVの条件にて、元素分析を行った。その結果、機能層に含まれるLDH、すなわち基材表面のLDH膜と基材内のLDH部分のいずれにおいても、LDH構成元素であるC、Mg及びAlが検出された。すなわち、Mg及びAlは水酸化物基本層の構成元素である一方、CはLDHの中間層を構成する陰イオンであるCO3 2−に対応する。
クロスセクションポリッシャ(CP)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面研磨面が観察できるように研磨した。FE−SEM(ULTRA55、カールツァイス製)により、機能層(LDH膜からなる膜状部とLDH及び基材からなる複合部)の断面イメージを10000倍の倍率で1視野取得した。この断面イメージの基材表面のLDH膜と基材内部のLDH部分(点分析)についてEDS分析装置(NORAN System SIX、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)により、加速電圧15kVの条件にて、元素分析を行った。その結果、機能層に含まれるLDH、すなわち基材表面のLDH膜と基材内のLDH部分のいずれにおいても、LDH構成元素であるC、Mg及びAlが検出された。すなわち、Mg及びAlは水酸化物基本層の構成元素である一方、CはLDHの中間層を構成する陰イオンであるCO3 2−に対応する。
評価4:イオン伝導率の測定
電解液中での機能層の伝導率を図3に示される電気化学測定系を用いて以下のようにして測定した。複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)を両側から厚み1mmシリコーンパッキン40で挟み、内径6mmのPTFE製フランジ型セル42に組み込んだ。電極46として、#100メッシュのニッケル金網をセル42内に直径6mmの円筒状にして組み込み、電極間距離が2.2mmになるようにした。電解液44として、6MのKOH水溶液をセル42内に充填した。電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタット−周波数応答アナライザ、ソーラトロン社製1287A型及び1255B型)を用い、周波数範囲は1MHz〜0.1Hz、印加電圧は10mVの条件で測定を行い、実数軸の切片を複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)の抵抗とした。上記同様の測定をLDH膜の付いていない多孔質基材のみに対しても行い、多孔質基材のみの抵抗も求めた。複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)の抵抗と基材のみの抵抗の差をLDH膜の抵抗とした。LDH膜の抵抗と、LDHの膜厚及び面積を用いて伝導率を求めた。その結果、機能層の伝導率は2.0mS/cmであった。
電解液中での機能層の伝導率を図3に示される電気化学測定系を用いて以下のようにして測定した。複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)を両側から厚み1mmシリコーンパッキン40で挟み、内径6mmのPTFE製フランジ型セル42に組み込んだ。電極46として、#100メッシュのニッケル金網をセル42内に直径6mmの円筒状にして組み込み、電極間距離が2.2mmになるようにした。電解液44として、6MのKOH水溶液をセル42内に充填した。電気化学測定システム(ポテンショ/ガルバノスタット−周波数応答アナライザ、ソーラトロン社製1287A型及び1255B型)を用い、周波数範囲は1MHz〜0.1Hz、印加電圧は10mVの条件で測定を行い、実数軸の切片を複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)の抵抗とした。上記同様の測定をLDH膜の付いていない多孔質基材のみに対しても行い、多孔質基材のみの抵抗も求めた。複合材料試料S(LDH膜付き多孔質基材)の抵抗と基材のみの抵抗の差をLDH膜の抵抗とした。LDH膜の抵抗と、LDHの膜厚及び面積を用いて伝導率を求めた。その結果、機能層の伝導率は2.0mS/cmであった。
評価5:緻密性判定試験
機能層が通気性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図4A及び4Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具132とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。また、アルミナ治具132には直径5mmの開口部132aが形成されており、この開口部132aの外周に沿って試料載置用の窪み132bが形成されてなる。アルミナ治具132の窪み132bにエポキシ接着剤134を塗布し、この窪み132bに複合材料試料136の機能層136b側を載置してアルミナ治具132に気密かつ液密に接着させた。そして、複合材料試料136が接合されたアルミナ治具132を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、複合材料試料136の機能層136b側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、複合材料試料136の多孔質基材136a側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御して機能層136b内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、複合材料試料136から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、機能層136bは通気性を有しない程に高い緻密性を有するものと判定した。その結果、機能層及び複合材料は通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
機能層が通気性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図4A及び4Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具132とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。また、アルミナ治具132には直径5mmの開口部132aが形成されており、この開口部132aの外周に沿って試料載置用の窪み132bが形成されてなる。アルミナ治具132の窪み132bにエポキシ接着剤134を塗布し、この窪み132bに複合材料試料136の機能層136b側を載置してアルミナ治具132に気密かつ液密に接着させた。そして、複合材料試料136が接合されたアルミナ治具132を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、複合材料試料136の機能層136b側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、複合材料試料136の多孔質基材136a側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御して機能層136b内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、複合材料試料136から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、機能層136bは通気性を有しない程に高い緻密性を有するものと判定した。その結果、機能層及び複合材料は通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
評価6:He透過測定
He透過性の観点から機能層の緻密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、図5A及び図5Bに示されるHe透過度測定系310を構築した。He透過度測定系310は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計312及び流量計314(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ316に供給され、この試料ホルダ316に保持された機能層318の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
He透過性の観点から機能層の緻密性を評価すべくHe透過試験を以下のとおり行った。まず、図5A及び図5Bに示されるHe透過度測定系310を構築した。He透過度測定系310は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計312及び流量計314(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ316に供給され、この試料ホルダ316に保持された機能層318の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
試料ホルダ316は、ガス供給口316a、密閉空間316b及びガス排出口316cを備えた構造を有するものであり、次のようにして組み立てた。まず、機能層318の外周に沿って接着剤322を塗布して、中央に開口部を有する治具324(ABS樹脂製)に取り付けた。この治具324の上端及び下端に密封部材326a,326bとしてブチルゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材326a,326bの外側から、フランジからなる開口部を備えた支持部材328a,328b(PTFE製)で挟持した。こうして、機能層318、治具324、密封部材326a及び支持部材328aにより密閉空間316bを区画した。なお、機能層318は多孔質基材320上に形成された複合材料の形態であるが、機能層318側がガス供給口316aに向くように配置した。支持部材328a,328bを、ガス排出口316c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段330で互いに堅く締め付けた。こうして組み立てられた試料ホルダ316のガス供給口316aに、継手332を介してガス供給管334を接続した。
次いで、He透過度測定系310にガス供給管334を経てHeガスを供給し、試料ホルダ316内に保持された機能層318に透過させた。このとき、圧力計312及び流量計314によりガス供給圧と流量をモニタリングした。Heガスの透過を1〜30分間行った後、He透過度を算出した。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F(cm3/min)、Heガス透過時に機能層に加わる差圧P(atm)、及びHeガスが透過する膜面積S(cm2)を用いて、F/(P×S)の式により算出した。Heガスの透過量F(cm3/min)は流量計314から直接読み取った。また、差圧Pは圧力計312から読み取ったゲージ圧を用いた。なお、Heガスは差圧Pが0.05〜0.90atmの範囲内となるように供給された。
その結果、機能層及び複合材料のHe透過度は0.0cm3/min・atmであった。
なお、アルミナ製多孔質基材の代わりに、角状の真鍮製多孔質体を用いること以外は本例と同様にして、Mg及びAl含有LDHを含む機能層(セラミックスセパレータ)及び複合材料(セラミックスセパレータ及び多孔質集電板の複合材料)を作製することができる。こうして作製される機能層(セラミックスセパレータ)は本例で作製されたものと同等ないし類似の性能を有することができ、例1における負極構造体14の一部として好ましく使用可能である。
10 亜鉛二次電池
12 正極
14 負極構造体
16 負極活物質層
18 多孔質集電板
20 セラミックスセパレータ
22 接着剤
24 電解液
26 枠
26a 外枠部
26b 内枠部
28 可撓性フィルム
12 正極
14 負極構造体
16 負極活物質層
18 多孔質集電板
20 セラミックスセパレータ
22 接着剤
24 電解液
26 枠
26a 外枠部
26b 内枠部
28 可撓性フィルム
Claims (9)
- 亜鉛二次電池用の負極構造体であって、
多孔質金属で構成される多孔質集電板と、
前記多孔質集電板の一面側に設けられ、亜鉛及び/又は酸化亜鉛を含む負極活物質層と、
前記多孔質集電板の前記負極活物質層と反対側に設けられ、貫通孔を有しないこと又は通気性を有しないことによって規定される高緻密性を有する水酸化物イオン伝導セラミックスセパレータと、
を備えた、負極構造体。 - 前記多孔質金属が、不織布、発泡金属、メッシュ、及びエキスパンドメタルからなる群から選択される少なくとも1種の形態である、請求項1に記載の負極構造体。
- 前記多孔質金属が、銅及び真鍮の少なくともいずれか一方である、請求項1又は2に記載の負極構造体。
- 前記セラミックスセパレータが層状複水酸化物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の負極構造体。
- 前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記多孔質集電板の表面と垂直に又は斜めに交差するような向きに配向している、請求項4に記載の負極構造体。
- 前記セラミックスセパレータは、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の負極構造体。
- 正極と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の負極構造体と、
アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液と、
を備え、前記セパレータを介して前記正極と前記負極活物質層が互いに隔離される、亜鉛二次電池。 - 前記亜鉛二次電池が、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、及びその他のアルカリ亜鉛二次電池からなる群から選択される、請求項7に記載の亜鉛二次電池。
- 前記亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池である、請求項7に記載の亜鉛二次電池。
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JP2016155515A JP2018026205A (ja) | 2016-08-08 | 2016-08-08 | 負極構造体及びそれを備えた亜鉛二次電池 |
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WO2023063260A1 (ja) | 2021-10-12 | 2023-04-20 | 学校法人同志社 | 二次電池用負極構造体及び該構造体を備えた二次電池 |
-
2016
- 2016-08-08 JP JP2016155515A patent/JP2018026205A/ja active Pending
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