JP2018025236A - ホース - Google Patents

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【課題】搬送するガスに対する耐透過性および耐圧性を確保しつつ、十分な可撓性を確保することができるホースを提供する。【解決手段】90℃での乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下の熱可塑性樹脂製の内面層2と、熱可塑性樹脂製の外面層5との間に、少なくとも2層の補強層3を同軸状に積層し、ブレード構造の補強層3を形成する高強度繊維4の編組角度Aを外周側の補強層3ほど大きく設定して、最内周の補強層3aでの編組角度Aを45°以上51°以下、2番目に内周側の補強層3bの編組角度Aを50°以上56°以下にして、所定の式で算出されるそれぞれの補強層3での編組密度Dを1.0以上4.5以下にする。【選択図】図1

Description

本発明は、主に水素等のガスを搬送するホースに関し、さらに詳しくは、搬送するガスに対する耐透過性および耐圧性を確保しつつ、十分な可撓性を確保することができるホースに関するものである。
近年、燃料電池自動車等の開発が盛んに行なわれている。これに伴って、水素ステーションでは水素ガスを搬送するホースが使用されている。また、工業用ガスをガスボンベ、カードル、輸送トレーラ等に搬送する工業用ガス配管として、金属螺旋管や銅パイプ等の金属配管が使用されている。
これらのガス用のホースや配管では、優れた耐圧性や耐透過性が要求される。また、水素ガスを搬送する場合は、金属部材を使用していると早期に水素脆化するという問題がある。また、金属配管は可撓性が低いため配管作業性が著しく悪くなる。
水素脆化の問題を解決するために、ホースのすべての補強材をポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維を編組して形成することが提案されている(特許文献1、2参照)。PBO繊維を編組して形成された繊維補強層を備えたホースによれば優れた耐圧性を確保することが可能である。しかしながら、搬送するガスに対する耐透過性および耐圧性を確保しつつ、十分な可撓性を確保するには、さらなる工夫をする余地がある。
特開2010−31993号公報 特開2011−158054号公報
本発明の目的は、搬送するガスに対する耐透過性および耐圧性を確保しつつ、十分な可撓性を確保することができるホースを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のホースは、同軸状に積層されている内面層と外面層との間に、少なくとも2層の補強層が同軸状に積層されていて、前記内面層が90℃における乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下の熱可塑性樹脂により形成されていて、前記補強層が高強度繊維を編組して形成されているブレード構造であり、前記外面層が熱可塑性樹脂により形成されていて、前記高強度繊維の編組角度Aが外周側の補強層ほど大きく設定されているホースにおいて、最内周の補強層での編組角度Aが45°以上51°以下、2番目に内周側の補強層の編組角度Aが50°以上56°以下であり、それぞれの補強層における下記(1)式により算出される編組密度Dが1.0以上4.5以下であることを特徴とする。
編組密度D=(高強度繊維の本数/2)/(高強度繊維の配置ピッチP×sinA)・・・(1)
本発明によれば、内面層が、90℃における乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下のガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂により形成されているので、優れた耐透過性を得ることができる。また、それぞれの補強層が高強度繊維により形成されていて、その編組角度Aおよび編組密度Dを所定の範囲に設定することで、補強効率を良好にして耐圧性を確保しつつ、十分な可撓性を確保することが可能になっている。
本発明の発明者は、従来の知見と様々な試行錯誤の結果、それぞれの補強層の編組角度Aの値と、これら編組角度Aの相対的な関係と、編組密度Dとの関係が、ホースの耐圧性(寸法変化率)および可撓性に、今まで想定していたよりも大きな影響があることを知得した。本発明はこの知得した内容に基づいて創作されている。
本発明のホースを一部切開して補強層を模式的に例示する説明図である。 図1のホースの横断面図である。 可撓性試験の概要を示す説明図である。
以下、本発明のホースを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1、図2に例示するように、本発明のホース1は、内周側から順に、内面層2、補強層3(3a、3b、3c)、外面層5が同軸状に積層された構造となっている。図1の一点鎖線CLは、ホース軸心を示している。このホース1を通じてガスGが搬送され、主に水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が搬送される。
搬送されるガスGが直接接触する内面層2は、90℃における乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下の熱可塑性樹脂により形成されている。このガス透過係数は、JIS K7126に準拠して測定した値である。この熱可塑性樹脂としては、ナイロン(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等)、ポリアセタール、エチレンビニルアルコール共重合体等を例示することができる。
このようにガスバリア性が良好な樹脂を内面層2に用いることにより、ホース1により搬送するガスGに対する十分な耐透過性を確保できる。内面層2の内径(即ち、ホース1の内径)は例えば、4.5mm以上12mm以下、より好ましくは6mm以上11mm以下に設定される。内面層2の内径が大きくなる程、ガスGの流量を増大させるには有利になり、内径が小さくなる程、耐圧性を確保するには有利になる。
内面層2の層厚は例えば、0.5mm以上2.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下に設定される。内面層2の寸法変化を抑制するには層厚を厚くすることが好ましい。一方、ホース1の可撓性を確保するには、内面層2の層厚を薄くすることが好ましい。内面層2の耐久性を確保しつつ、搬送するガスGの流量を増大させるには、内面層2の層厚を0.5mm以上1.5mm以下、内径を6mm以上11mm以下にするとよい。
外面層5は、熱可塑性樹脂により形成されている。この熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル等を例示することができる。外面層5の層厚は例えば、0.2mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以上0.8mm以下に設定される。外面層5の外径(即ち、ホース1の外径)は例えば、12mm以上18mm以下、より好ましくは15mm以上17mm以下に設定される。外面層5の層厚が大きくなる程、ホース耐候性を確保するには有利になり、外径が小さくなる程、可撓性を確保するには有利になる。ホース1の耐候性と可撓性を両立させるには、外面層5の層厚および外径を上述した範囲に設定することが好ましい。
補強層3は少なくとも2層設けられ、その数は主にホース1に要求される耐圧性に応じて設定されるが、2層または3層にすることが好ましい。補強層3が1層では十分な耐圧性を確保することが難しく、4層以上にしても数の増加に見合う耐圧性の向上を得ることができず、むしろ可撓性の低下や重量の増加になるためである。実施形態では補強層3として、内周側から順に第1補強層3a、第2補強層3b、第3補強層3cの3層が設けられている。
それぞれの補強層3は、高強度繊維4により形成されている。高強度繊維4とは引張り強度が2GPa以上の繊維である。高強度繊維4としては、例えばポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、アラミド繊維、炭素繊維等を例示できる。補強層3をこのような高強度繊維4で形成することにより、鋼線等の金属を用いる場合に比して高い可撓性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。しかも、金属ではなく、高強度繊維4を用いることで、搬送するガスGが水素であっても脆化を回避するには有利になる。
高強度繊維4の線径は例えば0.10mm以上0.80mm以下にする。線径をこの範囲にすると、内圧によるホース1の寸法変化を抑えつつホース1の可撓性および高強度繊維4の耐久性を確保し易くなる。
この実施形態では、それぞれの補強層3は、高強度繊維4を所定の編組角度A(A1、A2、A3)で編組して形成されたブレード構造になっている。補強層3の構造としては、その他に、高強度繊維4をホース軸心CLを中心にして螺旋状に巻回して形成されたスパイラル構造を採用することができる。
第1補強層3aの編組角度A1は45°以上51°以下であり、第2補強層3bの編組角度A2は50°以上56°以下、第3補強層3cの編組角度A3は54°以上60°以下になっている。本発明では、編組角度Aが外周側の補強層ほど大きく設定されている(A1<A2<A3)。
上記の範囲に編組角度A1、A2、A3が設定されることで、内周側の補強層3ほど耐圧負担が大きくなり、第1補強層3aから第2補強層3b、第3補強層3cに向かって徐々に耐圧負担が小さくなる。これにより、補強層3では内周側から外周側に内圧が効率的に伝達され、それぞれの補強層3を十分に機能させて補強層3の全体としての補強効率を向上させている。これに伴い、内面層2の寸法変化を抑えることができる。
詳述すると、ホース1に内圧が作用した際には、編組角度Aが静止角度(54.7°)以下に設定されている第1補強層3a、または、第1補強層3aおよび第2補強層3bは、その編組角度が静止角度に近づこうとして拡径し、作用した内圧を第2補強層3bおよび第3補強層3c、または、第3補強層3cに効率的に伝える。これにより、特定の補強層3が過度の耐圧負担をすることなく、それぞれの補強層3(3a、3b、3c)の性能をバランスよく機能させることが可能になる。これに加えて、編組角度Aを所定の範囲に設定していることの相乗効果によってホース1の破壊圧が向上する。
隣り合って積層されている補強層3間での編組角度Aの差は4°以上6°以下にするとよい。即ち、編組角度A1とA2との差、編組角度A2とA3との差をそれぞれ、4°以上6°以下にすることで、補強層3の全体としての補強効率をより向上させることができる。
それぞれの補強層3における編組密度Dは1.0以上4.5以下になっている。編組密度Dは下記(1)式により算出される。
編組密度D=(高強度繊維4の本数/2)/(高強度繊維4の配置ピッチP×sinA)・・・(1)
配置ピッチPとは、1本の高強度繊維4におけるホース1の軸方向での配置間隔であり、この実施形態ではいわゆる編組ピッチである。
編組密度Dが1.0未満であると高強度繊維4の密度が過小であり、破壊効率が低下して十分な耐圧性が確保できない。一方、編組密度Dが4.5超であると高強度繊維4の密度が過大であり、耐圧性に対して十分に機能しない無駄な高強度繊維4が存在することになって破壊効率が低下する。また、編組密度Dが高くなるとホース1の可撓性が低下する。
編組密度Dはより好ましくは1.0以上2.0以下にする。これによって、高いレベルの破壊効率および可撓性を確保できる。編組密度Dはすべての補強層3において同じにすることもできるが、異ならせることもできる。内周側の補強層3ほど編組密度Dを大きくすると、破壊効率を向上させるには益々有利になる。例えば、第1補強層3a、第2補強層3b、第3補強層3cにおける編組密度Dをそれぞれ、1.8程度(1.6以上2.0以下)、1.4程度(1.0以上1.6以下)、1.4程度(1.0以上1.6以下)にする。
このホース1によれば、内面層2が、上述したように水素ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂により形成されるので、優れた耐透過性を得ることができる。ホース1によって搬送されるガスGが内面層2によって十分にバリアされるので、内面層2の外周側に透過するガスGの量を低減させることができる。
また、高強度繊維4を用いてそれぞれの補強層3を形成して、それぞれの補強層3での編組角度Aおよび編組密度Dを上述した所定の範囲に設定することで、補強効率を良好にして高い耐圧性を確保できる。加えて、十分な可撓性を有するホース1にすることが可能になっている。
工業用のガス配管(金属螺旋管や銅パイプ等)の使用内圧は20MPa程度である。水素ガスステーションで使用される水素充填用ホースの使用内圧は35MPa〜70MPa程度である。ただし、70MPa程度の超高圧になると、さらなる耐圧性を考慮する余地もある。そのため、本発明のホース1の使用内圧は、例えば20MPa以上40MPa以下であることが望ましい。
このホース1の可撓性は従来のガス配管に比して非常に高くなっているので、配管の施工性が大幅に向上する。また、このホース1は、従来のガス配管に比して軽量化できるので、この観点からも配管の施工性が向上して取扱い易くなる。
ホース1を通じて搬送するガスGが水素ガスの場合には、用途により非常に低温(例えばマイナス40℃〜マイナス20℃)の水素ガスが内面層2に接触して流れるので内面層2は低温脆化する。また、35MPa程度の高圧の水素ガスが内面層2に作用すると、内面層2は寸法変化するが低温脆化しているので、常温では問題とならない小さな寸法変形量であっても、この使用条件では破損し易くなる。
さらには、最も小さい分子である水素は、比較的容易に内面層2に侵入することができるので、内面層2の損傷が微小であっても、そこを起点にして水素ガスが作用し損傷が進行する。ところが、本発明のホース1のように、内面層2の拡径変形を十分に抑えることができれば、水素ガス用のホース1としては極めて実用性が高くなる。
図1に例示したホース(補強層がブレード構造)と同様のホースの試験サンプルを、内面層および外面層の仕様を共通にして、表1に示すように補強層の仕様のみを異ならせて9種類を製造して下記項目の評価試験を行った。内面層の仕様は、材質がナイロン11、層厚が1.0mm、内径が9.8mmであった。このナイロン11は、90℃における乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下である。外面層の仕様は、材質がポリエステル、層厚が0.8m、外径が16.6mmであった。
[耐圧性]
耐圧性の評価試験は、JIS K6330−2に記載の方法に準拠して破壊圧を測定した。これらの評価結果を表1に示す。破壊圧の合格基準値は190MPaである。
[内面層の拡径変化率]
ホース内圧を35MPaにした場合の内面層の内径の拡径変化率を示した。内径の拡径変化率の合格基準値は、+1.5%以下である。
[可撓性]
図3に示すように平板の上でホースの片端を水平に固定し、固定点から基標Lを設定する。基標Lは最小曲げ半径をRとした場合、L=π×Rである。ホースの他端にばね秤を取り付け、ホースに直角に力Fを加えて図3の破線で示す最小曲げ半径Rの形状にした時の力Fを測定した。比較例5を基準の100として指数評価した。指数が小さい程、可撓性に優れていることを示す。
Figure 2018025236
表1の結果から、実施例1〜4は破壊圧および内径の拡径変化率について合格基準値を満たし、破壊圧、内面層の拡径変化が比較例1〜5に比して、バランスよく高い性能を有していることが分かる。また、実施例1〜4は十分な可撓性を有している。
1 ホース
2 内面層
3 補強層
3a 第1補強層
3b 第2補強層
3c 第3補強層
4 高強度繊維
5 外面層
CL ホース軸心

Claims (4)

  1. 同軸状に積層されている内面層と外面層との間に、少なくとも2層の補強層が同軸状に積層されていて、前記内面層が90℃における乾燥水素ガスのガス透過係数が1×10-8cc・cm/cm2・sec.・cmHg以下の熱可塑性樹脂により形成されていて、前記補強層が高強度繊維を編組して形成されているブレード構造であり、前記外面層が熱可塑性樹脂により形成されていて、前記高強度繊維の編組角度Aが外周側の補強層ほど大きく設定されているホースにおいて、
    最内周の補強層での編組角度Aが45°以上51°以下、2番目に内周側の補強層の編組角度Aが50°以上56°以下であり、
    それぞれの補強層における下記(1)式により算出される編組密度Dが1.0以上4.5以下であることを特徴とするホース。
    編組密度D=(高強度繊維の本数/2)/(高強度繊維の配置ピッチP×sinA)・・・(1)
  2. 前記補強層が3層であり、最外周の補強層での編組角度Aが54°以上60°以下である請求項1に記載のホース。
  3. 最内周の補強層と2番目に内周側の補強層の編組角度Aの差が4°以上6°以下である請求項1または2に記載のホース。
  4. ホースの使用内圧が20MPa以上40MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載のホース。
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