以下、本発明を適用したダンパー構造1及び耐力壁7を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したダンパー構造1は、図1に示すように、例えば、住宅、学校、事務所、病院施設等の建築物の軸力部材2に設けられる。また、本発明を適用したダンパー構造1は、プラント構造物、鉄塔等の建造物の軸力部材2に設けられてもよい。
本発明を適用したダンパー構造1は、特に、引張荷重Pt又は圧縮荷重Pcが作用する軸力部材2に設けられる。本発明を適用したダンパー構造1は、柱材、梁材又はブレース材20等の軸力部材2に設けられて、建築物の耐力壁7等に導入されるものとなる。
本発明を適用した耐力壁7は、スチールハウス、鉄骨プレハブ又は木造住宅等の建築物の壁体として設けられる。本発明を適用した耐力壁7は、例えば、一対の縦枠71と一対の横枠72とで四方が取り囲まれて、所定の枠内空間70が形成されるものとなる。
本発明を適用した耐力壁7は、ブレース材20となる軸力部材2と、軸力部材2の一部に設けられるダンパー構造1とを備える。本発明を適用した耐力壁7は、図2に示すように、例えば、高さ寸法Hを3000mm程度、幅寸法Wを1000mm程度とする。
本発明を適用した耐力壁7は、図2(a)に示すように、例えば、枠内空間70の上部70a及び下部70bの各々に、ブレース材20となる軸力部材2が傾斜して設けられる。このとき、枠内空間70の上部70aにおいては、右上隅又は左上隅に向けてブレース材20が傾斜して設けられて、また、枠内空間70の下部70bにおいては、右下隅又は左下隅に向けてブレース材20が傾斜して設けられる。
本発明を適用した耐力壁7は、図2(b)に示すように、地震又は風等により水平力Fが作用することで、各々の縦枠71が横方向に傾倒するように変位するものとなる。このとき、本発明を適用した耐力壁7は、例えば、枠内空間70の上部70aではブレース材20に引張荷重Ptが作用するとともに、枠内空間70の下部70bではブレース材20に圧縮荷重Pcが作用するものとなる。
本発明を適用した耐力壁7は、図3に示すように、ブレース材20となる軸力部材2が、枠内空間70の上部70aから下部70bまで跨るように設けられてもよい。このとき、枠内空間70の上部70aにおいては、一方の縦枠71の上側にブレース材20の一方の端部20aが傾斜して取り付けられる。また、枠内空間70の下部70bにおいては、他方の縦枠71の下側にブレース材20の他方の端部20aが傾斜して取り付けられる。
本発明を適用した耐力壁7は、枠内空間70の上部70aから下部70bまでブレース材20が跨る場合に、例えば、図3(a)に示すように、各々の縦枠71が右方向に傾倒するように変位することで、ブレース材20に引張荷重Ptが作用する。また、本発明を適用した耐力壁7は、例えば、図3(b)に示すように、各々の縦枠71が左方向に傾倒するように変位することで、ブレース材20に圧縮荷重Pcが作用する。
本発明を適用した耐力壁7は、例えば、図2に示す耐力壁7で幅寸法Wを1000mm、高さ寸法Hを3000mm、水平力Fを20kNとして、層間変形角を1/50とした場合に、各々のブレース材20の耐力を36kN以上、各々のブレース材20の変形性能を14mm以上確保する必要がある。このため、本発明を適用した耐力壁7は、各々のブレース材20で所定の耐力及び変形性能を確保するために、図4に示すように、ブレース材20となる軸力部材2の軸方向Zの一部にダンパー構造1が設けられる。
軸力部材2は、図4(a)に示すように、断面略矩形状の閉断面形状に形成された角形鋼管が用いられる。また、軸力部材2は、略六角形状又は略八角形状等の断面略多角形状の閉断面形状に形成された角形鋼管が用いられてもよく、図4(b)に示すように、断面略C形状の開断面形状に形成された溝形鋼又はリップ付溝形鋼が用いられてもよい。
軸力部材2は、例えば、角形鋼管等の板厚tpを1.0mm〜6.0mm程度、幅方向Xの外径D1を30mm〜90mm程度、奥行方向Yの外径D2を40mm〜180mm程度とする。軸力部材2は、幅方向Xの片側又は両側に幅方向Xの側面25aが配置されるとともに、奥行方向Yの片側又は両側に奥行方向Yの側面25bが配置されて、幅方向Xの側面25a及び奥行方向Yの側面25bに取り囲まれて内空部26が形成される。
軸力部材2は、幅方向Xの側面25aが奥行方向Yに延びて形成されるとともに、奥行方向Yの側面25bが幅方向Xに延びて形成される。軸力部材2は、幅方向Xの側面25a及び奥行方向Yの側面25bの各々と略直交する方向が、軸力部材2の側面25の面外方向αとなる。そして、軸力部材2は、軸力部材2の内空部26側が面外方向αの内側Aとなるとともに、軸力部材2の外部側が面外方向αの外側Bとなる。
また、軸力部材2は、図5(a)に示すように、軸方向Zの端部27が略平坦状に形成された平鋼等が用いられてもよく、又は、図5(b)に示すように、軸方向Zの端部27を略平坦状に潰して加工した円形鋼管等が用いられてもよい。さらに、軸力部材2は、図5(c)に示すように、必要に応じて、縦枠71及び横枠72等に取り付けられた状態で軸力が作用する接合金物6等が用いられてもよい。
本発明を適用したダンパー構造1は、図6に示すように、ブレース材20等の軸力部材2の側面25より面外方向αに突出させた折曲部4を備える。本発明を適用したダンパー構造1は、必要に応じて、軸力部材2の軸方向Zで折曲部4の両側に設けられる一対の定着部3をさらに備え、また、一対の定着部3の各々に取り付けられる補剛材5をさらに備える。
本発明を適用したダンパー構造1は、特に、降伏点が100MPa〜200MPa程度の低降伏点鋼等を鋼種とする鋼板等に対する折曲加工により折曲部4が形成される。また、本発明を適用したダンパー構造1は、折曲部4の両側に一対の定着部3が設けられる場合には、折曲部4と定着部3とが1枚の鋼板等に対する折曲加工により一体的に形成されて、各々の定着部3が略平板状に形成されるものとなる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図6(a)に示すように、軸力部材2を軸方向Zに分断させて、軸力部材2を分断させた一対の端部27に架設される。本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2を分断させた一対の端部27が軸方向Zで互いに対向して配置されて、軸力部材2の一方の端部27から他方の端部27まで連続して設けられる。
本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2の軸方向Zで互いに対向させた各々の端部27で、軸力部材2の各々の側面25に定着部3が取り付けられる。また、本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2を分断させた一対の端部27が軸方向Zで互いに離間した離間部Sで、各々の定着部3から軸方向Zに連続させた折曲部4が配置される。
定着部3は、軸方向Zで折曲部4の両側に一対となって設けられて、軸力部材2の一方の端部27に一方の定着部3が取り付けられるとともに、軸力部材2の他方の端部27に他方の定着部3が取り付けられる。定着部3は、軸力部材2の側面25に当接させた状態で、軸力部材2の側面25まで連続して貫通させたボルトナット31が設けられることで、軸力部材2の側面25に一対の定着部3の各々がボルト接合で取り付けられる。
定着部3は、図6(b)に示すように、例えば、奥行方向Yで2列に亘って設けられたボルトナット31で、軸力部材2の幅方向Xの側面25に一対の定着部3の各々がボルト接合で取り付けられる。また、定着部3は、ねじ接合、くぎ接合、ピン接合又は溶接接合等で軸力部材2の側面25に取り付けられてもよい。定着部3は、必要に応じて、各々の定着部3とともに補剛材5がボルト接合等で軸力部材2の側面25に取り付けられる。
なお、ボルトナット31は、閉断面形状に形成された軸力部材2又は開断面形状に形成された軸力部材2の何れにおいても、図4(a)に示すように、軸力部材2の一方の側面25から他方の側面25まで連続してボルトが設けられてもよい。そして、ボルトが連続して設けられる場合には、ボルトに張力を導入することができるように、一方の側面25と他方の側面25との間にスペーサーが設けられることが望ましい。また、ボルトナット31は、図4(b)に示すように、軸力部材2の各々の側面25に設けられてもよい。
補剛材5は、所定の板厚tsの平鋼等が、各々の定着部3に当接させた状態で、定着部3とともにボルト接合、ねじ接合等で軸力部材2の側面25に取り付けられる。補剛材5は、例えば、平鋼等の板厚tsを、定着部3及び折曲部4の板厚tの1.5倍〜5倍程度とする。補剛材5は、定着部3及び軸力部材2の側面25まで連続して貫通させたボルトナット31が設けられることで、一対の定着部3の各々にボルト接合で取り付けられる。
補剛材5は、図6に示すように、軸力部材2の側面25との間に定着部3を挟み込んだ状態で、折曲部4に近接させて設けられる。補剛材5は、折曲部4が軸方向Zに伸縮変形するときに、軸力部材2の側面25から定着部3が面外方向αに離間しないように、各々の定着部3の面外変形を抑制するものとなる。なお、補剛材5は、必要に応じて、平鋼等の角部が部分的に切り欠かれて面取り5aが形成される。
折曲部4は、軸力部材2の軸方向Zの一部に設けられて、例えば、板厚tを1.0mm〜6.0mm程度とする。また、折曲部4は、軸方向Zの軸方向外寸bを20mm〜100mm程度、軸力部材2の側面25からの面外方向αの突出高hを10mm〜50mm程度、幅方向X又は奥行方向Yの横幅寸法wを30mm〜180mm程度とする。
折曲部4は、図7に示すように、軸力部材2の軸方向Zで4箇所以上に、面外方向αに折り曲げられた折り目が形成される。折曲部4は、図7(a)に示すように、軸力部材2の側面25より面外方向αの外側Bに向けて突出して形成されるほか、図7(b)に示すように、軸力部材2の側面25より面外方向αの内側Aに向けて突出して形成される。
折曲部4は、軸力部材2の側面25の近傍で、折曲部4の上側及び下側の各々に、面外方向αに折曲した近傍折り目41が2箇所に形成される。そして、折曲部4は、上側及び下側の2箇所の近傍折り目41の間で、面外方向αに折曲した中間折り目42が複数箇所に形成されることで、軸方向Zで4箇所以上に折り目が形成される。
また、折曲部4は、軸力部材2の側面25から面外方向αに最も離間した位置で、軸力部材2の軸方向Zに隣り合った中間折り目42の間に、略面状の外面部40が形成される。そして、折曲部4は、軸力部材2の側面25から面外方向αに最も離間した中間折り目42から、軸方向Zの上方又は下方に連続して延びて外面部40が形成される。
折曲部4は、各々の折り目で湾曲又は屈曲させて折り曲げられるものとなる。折曲部4は、各々の折り目で湾曲して折り曲げられる場合に、例えば、湾曲した折り目の内周側の曲率半径r1を、折曲部4の板厚tの0.5倍以上の大きさとするとともに、湾曲した折り目の外周側の曲率半径r2を、折曲部4の板厚tの1.5倍以上の大きさとする。
折曲部4は、図8に示すように、主に、面外方向αに折り曲げられた折り目が4箇所に形成されて、2箇所の近傍折り目41の間で中間折り目42が2箇所に形成される。このとき、折曲部4は、上側の近傍折り目41から上側の中間折り目42までの上面部44と、下側の近傍折り目41から下側の中間折り目42までの下面部45と、上側の中間折り目42から下側の中間折り目42までの外面部40とで、略矩形状等に形成される。
折曲部4は、2箇所の近傍折り目41の間で中間折り目42が2箇所に形成される場合に、図8(a)に示す略矩形状に形成されてもよく、また、図8(b)に示す略台形状に形成されて、又は、図8(c)に示す略逆台形状に形成されてもよい。このとき、折曲部4は、必要に応じて、略台形状等の傾斜した上面部44又は下面部45が、軸力部材2の軸直交方向に対して15°以上、43°以下の傾斜角度θで傾斜して形成されてもよい。
折曲部4は、図9に示すように、2箇所の近傍折り目41の間で、中間折り目42が3箇所以上に形成されて、略五角形状又は略六角形状等の略多角形状に形成されてもよい。このとき、折曲部4は、例えば、2箇所の近傍折り目41の間で中間折り目42が4箇所に形成される場合に、図9(a)に示す軸方向Zに凸状の略六角形状に形成されてもよく、また、図9(b)に示す軸方向Zに凹状の略六角形状に形成されてもよい。
折曲部4は、図10に示すように、軸方向Zで軸力部材2の側面25と略平行に外面部40が形成される。このとき、折曲部4は、図10(a)に示すように、厳密に軸力部材2の側面25と平行に外面部40が形成されるほか、図10(b)、(c)に示すように、軸力部材2の側面25に対して多少傾斜させて外面部40が形成されてもよい。
また、折曲部4は、軸方向Zで略直線状に延びる略面状の外面部40が形成されるほか、図11に示すように、軸方向Zで略湾曲状に延びる略面状の外面部40が軸力部材2の側面25と略平行に形成されてもよい。このとき、折曲部4は、図11(a)、(b)に示すように、上側の中間折り目42から下側の中間折り目42まで略面状の外面部40が略円弧状等に形成されるほか、図11(c)に示すように、所定の数量の変曲点を有する略S字状等に形成されてもよい。
折曲部4は、図8〜図11に示すように、軸力部材2の軸方向Zで外面部40の両側の中間折り目42まで所定の軸方向外寸bとなって、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係が、下記(1)式により規定される関係を満足する。なお、折曲部4は、図8(b)、図9(a)に示す略台形状等に形成される場合は、板厚tを2倍した値と、外面部40の略平坦状に形成された部分の軸方向寸法b´との和を、折曲部4の軸方向外寸bとする(b=b´+2×t)。
8≦b/t≦28 ・・・(1)
折曲部4は、上側の中間折り目42から下側の中間折り目42まで外面部40の板厚tが略均一に形成されるほか、図12に示すように、軸方向Zに隣り合った中間折り目42の間で、外面部40の板厚tを部分的に薄くした薄肉部40aが形成されてもよい。このとき、折曲部4は、主に、図12(a)に示す外面部40の内側A、又は、図12(b)に示す外面部40の外側Bが部分的に切り欠かれることで、軸方向Zで上側の中間折り目42から下側の中間折り目42までの略中央に薄肉部40aが形成される。また、折曲部4は、図12(c)に示すように、外面部40の内側A及び外側Bの両方が部分的に切り欠かれることで薄肉部40aが形成されてもよい。
折曲部4は、図13に示すように、軸力部材2に軸方向Zの引張荷重Pt又は圧縮荷重Pcが作用することで、近傍折り目41及び中間折り目42が塑性変形する。このとき、折曲部4は、さらに、外面部40の一部が面外方向αに折曲して塑性変形することで、軸力部材2の軸方向Zに伸縮変形するものとなる。
折曲部4は、図13(a)に示すように、軸力部材2に軸方向Zの圧縮荷重Pcが作用する前の段階で、上側の中間折り目42から下側の中間折り目42まで連続して、外面部40が略直線状等に延びた状態となる。そして、折曲部4は、外面部40が略直線状等に延びた状態から、地震又は風等の繰返し外力に起因して、図13(b)に示す圧縮荷重Pcと、図13(c)に示す引張荷重Ptとが、軸力部材2に交互に作用するものとなる。
折曲部4は、図13(b)に示すように、軸力部材2に圧縮荷重Pcが作用したときに、軸力部材2の一対の端部27が、軸方向Zで互いに接近する方向に変位する。このとき、折曲部4は、上面部44及び下面部45が中間折り目42側よりも近傍折り目41側で互いに接近するように傾斜して、軸方向Zに縮長する変形をするものとなる。
折曲部4は、図13(c)に示すように、軸力部材2に引張荷重Ptが作用したときに、軸力部材2の一対の端部27が、軸方向Zで互いに離間する方向に変位する。このとき、折曲部4は、上面部44及び下面部45が中間折り目42側よりも近傍折り目41側で互いに離間するように傾斜して、軸方向Zに伸長する変形をするものとなる。
折曲部4は、図8〜図11に示すように、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係が、上記(1)式により規定される関係を満足し、又は、図12に示すように、外面部40に薄肉部40aが形成される。このとき、折曲部4は、図13に示すように、軸力部材2に圧縮荷重Pcが作用した後の段階で、外面部40に面外方向αの曲げ力及び軸方向Zの軸力が作用して、外面部40の一部が面外方向αで内側A又は外側Bに折曲する。
折曲部4は、外面部40の一部が面外方向αに折曲することで、外面部40が折曲した軸方向Zの一部に追加折り目43が形成される。そして、折曲部4は、外面部40の一部に形成された追加折り目43が、近傍折り目41及び中間折り目42と同様に塑性変形する。このとき、折曲部4は、各々の近傍折り目41、中間折り目42及び追加折り目43が塑性変形して、軸方向Zに伸縮変形するものとなる。
折曲部4は、図6に示すように、特に、軸方向Zで折曲部4の両側に一対の定着部3が設けられる場合には、軸力部材2の側面25に取り付けられた一対の定着部3の各々から連続する2箇所に近傍折り目41が形成される。また、折曲部4は、軸方向Zで折曲部4の両側に一対の定着部3が設けられない場合には、図14に示すように、軸力部材2自体の一部を加工して、近傍折り目41、中間折り目42及び外面部40が形成される。
折曲部4は、折曲部4の両側に定着部3が設けられない場合には、例えば、軸力部材2となる角形鋼管等の各々の隅部28に切れ目を形成して、角形鋼管の隅部28と隅部28との間の側板29を面外方向αに折曲加工する。このとき、折曲部4の両側に定着部3が設けられない場合には、角形鋼管の側板29を折曲加工することで、軸力部材2の軸方向Zの一部に、近傍折り目41、中間折り目42及び外面部40が形成されるものとなる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図4に示すように、軸力部材2の2面の側面25の各々に設けられる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、特に、軸力部材2の幅方向X又は奥行方向Yに対向する2面の側面25の各々に設けられることで、複数の折曲部4が左右対称又は前後対称となるように配置されることが望ましい。
本発明を適用したダンパー構造1は、図15に示すように、軸力部材2の幅方向X及び奥行方向Yに対向する4面の側面25の各々に設けられることで、4つの折曲部4が左右対称及び前後対称となるように配置されてもよい。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、幅方向X及び奥行方向Yの何れか一方又は両方で対称となるように配置されることで、折曲部4が伸縮変形するときの軸方向Zに対する偏心を抑制することができる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図16に示すように、複数枚を重ねて用いることもできる。このとき、各々の折曲部4は、図16(a)に示すように、面外方向αの外側B及び内側Aの何れかにのみ突出させてもよい。また、各々の折曲部4は、図16(b)に示すように、必要に応じて、内側Aに突出した折曲部4同士を干渉させないようにして、内側Aに突出した折曲部4と外側Bに突出した折曲部4とを組み合わせてもよい。
なお、本発明を適用したダンパー構造1は、偶数枚が用いられて左右対称又は前後対称となるように配置されることが望ましいが、奇数枚が用いられて左右対称又は前後対称とならないように配置されてもよい。本発明を適用したダンパー構造1は、特に、奇数枚が用いられて左右対称又は前後対称とならないように配置されることで、軸力部材2の必要な側面25で重点的に折曲部4を設けることができる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図6に示すように、軸力部材2を分断させた一対の端部27が、軸方向Zで互いに離間して離間部Sが形成される。本発明を適用したダンパー構造1は、これに限らず、図17に示すように、軸力部材2を軸方向Zに分断させた何れかの端部27に、縮径部27a又は拡径部27bが形成されることで、軸力部材2の一対の端部27が軸方向Zで互いに離間しなくてもよい。
本発明を適用したダンパー構造1は、図17(a)に示すように、軸力部材2の何れか一方の端部27に形成された縮径部27aが、軸力部材2の何れか他方の端部27に内挿されたままの状態で、折曲部4が伸縮変形する。また、本発明を適用したダンパー構造1は、図17(b)に示すように、軸力部材2の一方の端部27に形成された拡径部27bに、軸力部材2の他方の端部27が内挿されたままの状態で、折曲部4が伸縮変形する。
本発明を適用したダンパー構造1は、必要に応じて、図18に示すように、軸方向Zで少なくとも2箇所の近傍折り目41まで連続する鋼管等の芯材60をさらに備える。このとき、芯材60は、例えば、図18(a)に示すように、軸力部材2の角形鋼管等よりも小径の鋼管等が用いられて、軸力部材2の内側Aの内空部26に挿通される。また、芯材60は、例えば、図18(b)に示すように、軸力部材2の角形鋼管等よりも大径の鋼管等が用いられた芯材60に軸力部材2が挿通されて、軸力部材2の外側Bに設けられる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図17、図18に示すように、軸力部材2の一対の端部27が縮径部27a等で接続されて、又は、軸方向Zで少なくとも2箇所の近傍折り目41まで連続する芯材60が設けられることで、幅方向X又は奥行方向Yの偏心した変形を抑制して、ダンパー構造1の全体座屈を抑制することが可能となる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図13に示すように、地震又は風等の繰返し外力に起因して、軸力部材2に引張荷重Pt及び圧縮荷重Pcが交互に作用したときに、各々の近傍折り目41及び中間折り目42が塑性変形するものとなる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、近傍折り目41及び中間折り目42が塑性変形して、軸方向Zで折曲部4が伸縮変形することで、地震又は風等の繰返し外力に対して、安定したエネルギー吸収性能を確保することが可能となる。
本発明を適用したダンパー構造1は、温度依存性の高い粘弾性ダンパー等を用いることなく、面外方向αに折り曲げて加工した鋼板等が用いられて、軸力部材2に安定したエネルギー吸収性能を付与することができる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、鋼板等に対する折曲加工により折曲部4を容易に製作できるため、低廉な製造コストでダンパー構造1を製造することが可能となる。
また、本発明を適用したダンパー構造1は、外面部40の一部が面外方向αに折曲して追加折り目43が形成されて、軸力部材2に引張荷重Pt及び圧縮荷重Pcが交互に作用したときに、追加折り目43も塑性変形する。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、近傍折り目41及び中間折り目42だけでなく、外面部40の一部となる追加折り目43でも塑性変形することで、地震等の繰返し外力に対するエネルギー吸収性能をさらに向上させることが可能となる。
本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2に圧縮荷重Pcが作用する前の段階では、外面部40が略直線状等に延びた状態となるため、外面部40の一部に当初から追加折り目43が形成されないものとなる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、外面部40の一部に折曲加工するときのひずみが発生しないため、追加折り目43が塑性変形するときの累積歪みが小さくなることで、加工硬化による耐力上昇を抑制するとともに、低サイクル疲労に対する抵抗特性を強化することが可能となる。
ここで、本発明を適用したダンパー構造1において、外面部40の一部が折曲して追加折り目43が形成される条件を検証するため、シェル要素モデルのFEM解析を実施した。このFEM解析では、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係(b/t)から、追加折り目43が形成される条件を規定するものとして、図6(a)に示す軸方向Zの断面で、軸方向外寸bを変数として、板厚tを4.2mm、突出高hを30.2mm、奥行方向Yの横幅寸法wを60mm、降伏強度を約200MPaとした鋼材の応力ひずみ関係を想定した。
b/tの下限は、上側の中間折り目42と下側の中間折り目42との間で、外面部40が面外方向αに折曲する箇所が、中間折り目42と独立して発現する条件から規定される。そして、折曲部4に引張荷重Ptを載荷した場合に、上側及び下側の中間折り目42に発生する塑性化領域と、軸方向Zで外面部40の中央に発生する塑性化領域とが、互いに分断されることで、外面部40が折曲する箇所が中間折り目42と独立して発現する。
図19は、引張荷重Ptを載荷した場合に折曲部4に発生する塑性化領域を示すものである。b/t=7となるときは、図19(a)に示すように、上側及び下側の中間折り目42に発生する塑性化領域と、外面部40の中央に発生する塑性化領域とが、互いに分断されることなく繋がって発現する。これに対して、b/t=8となるときは、図19(b)に示すように、上側及び下側の中間折り目42に発生する塑性化領域と、外面部40の中央に発生する塑性化領域とが、互いに分断されて独立して発現する。
また、b/tの下限が8となることで(8≦b/t)、図20に示すように、上側及び下側の中間折り目42の塑性化領域におけるひずみが、外面部40の中央の塑性化領域におけるひずみよりも十分に大きくなって、各々の塑性化領域が互いに独立して発現する。このため、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係(b/t)は、8≦b/tとなる。
b/tの上限は、折曲部4に圧縮荷重Pcを載荷した場合に、外面部40が軸方向Zに座屈して耐力が低下するとエネルギー吸収性能を発揮しないため、外面部40の軸方向Zの座屈による過度な耐力低下が見られない条件から規定される。そして、折曲部4に圧縮荷重Pcを載荷した場合に、鉛直変位が15mmとなるときの圧縮荷重Pcを外面部40の圧縮耐力Puとすると、その圧縮耐力Puが降伏耐力Pcy に対して1以上となることで(Pu/Pcy≧1)、外面部40の座屈による過度な耐力低下は見られないものとなる。
図21では、軸力部材2に圧縮荷重Pcが作用する前の状態を基準として、折曲部4の軸方向Zの鉛直変位(伸縮変形量)が0mm〜−15mmとなる範囲でFEM解析結果を図示している。ここでは、圧縮荷重Pc(縦軸の負方向)と、折曲部4の圧縮荷重Pcに対する鉛直変位(横軸の負方向)との関係を示す。b/t=12.2となるときは、図21(a)に示すように、Pcy=−4.40kN、Pu=−5.35kNとなるため、Pu/Pcy≧1となるのに対して、b/t=28.6となるときは、図21(b)に示すように、Pcy=−4.13kN、Pu=−4.09kNとなるため、Pu/Pcy<1となる。
そして、図22に示すように、b/tの上限が28となることで(b/t≦28)、Pu/Pcy≧1となる関係が維持されて、外面部40の座屈による過度な耐力低下は見られない。このため、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係(b/t)は、b/t≦28となる。したがって、折曲部4の板厚tと軸方向外寸bとの関係は、上記(1)式により規定される関係を満足することで、外面部40の一部が面外方向αに折曲して追加折り目43が形成されるため、エネルギー吸収性能を向上させることが可能となる。
なお、折曲部4の板厚tと突出高hとの関係は、下記(2)式により規定される関係を満足することが望ましい。このとき、h/tが20未満となることで、軸力部材2の側面25から折曲部4が必要以上に突出しないものとなって、折曲部4のおさまりが合理的なものとなる。また、h/tが3を超えることで、折曲部4に引張荷重Ptを載荷した場合に、折曲部4全体が一体的に引っ張られることを防止して、各々の折り目で塑性変形を確実に実現し、顕著な耐力上昇を抑制することができる。
3<h/t<20 ・・・(2)
また、本発明を適用したダンパー構造1は、図6に示す形状における軸方向Zの断面で、軸方向外寸bを50.5mm、板厚tを4.2mm、突出高hを30.2mm、奥行方向Yの横幅寸法wを60mm、鋼材の降伏強度を200MPa程度とした実大寸法の要素試験の結果によっても、外面部40の一部に追加折り目43が形成されることが確認された。そして、本発明を適用したダンパー構造1は、左右対称に2枚配置された場合の要素試験の結果によっても、図23に示すように、折曲部4の鉛直変位(伸縮変形量)が増大するにもかかわらず、顕著な耐力上昇や座屈による耐力低下等は見られないことから、構造特性(剛性、耐力、変形性能)が優れていることが確認された。
本発明を適用したダンパー構造1は、図6に示すように、軸方向Zで折曲部4の両側に一対の定着部3が設けられて、軸力部材2の側面25に各々の定着部3が取り付けられるため、軸力部材2の軸方向Zの一部に折曲部4が容易に設けられるものとなる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2の一部に折曲部4を容易に設けることができるため、軸力部材2に対する加工度を低減させることが可能となる。
また、本発明を適用したダンパー構造1は、軸力部材2の側面25との間に定着部3を挟み込んだ状態で補剛材5が設けられて、定着部3の面外変形を補剛材5で抑制することができる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、折曲部4が伸縮変形して安定したエネルギー吸収性能を発揮すると同時に、定着部3の面外変形を補剛材5で抑制することで、十分な耐力及び剛性を確保することが可能となる。
本発明を適用したダンパー構造1は、図12に示すように、軸方向Zに隣り合った中間折り目42の間で、外面部40に薄肉部40aが形成されることで、薄肉部40aの箇所に図13に示す追加折り目43が形成され易いものとなる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、上側及び下側の中間折り目42の塑性化領域からなるべく離間するように、軸方向Zの略中央等に薄肉部40aを配置することで、追加折り目43が塑性変形するときの顕著な耐力上昇を抑制し、より安定したエネルギー吸収が可能となる。
また、本発明を適用したダンパー構造1は、図8に示すように、上側の近傍折り目41と下側の近傍折り目41との間で、中間折り目42が2箇所に形成されて、軸力部材2の側面25と略平行に外面部40が形成されることで、折曲部4の外面部40に対する面外方向αの曲げ力及び軸方向Zの軸力が略均等に作用するものとなる。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、外面部40に対する曲げ力及び軸力が略均等に作用することで、軸方向Zで外面部40の略中央等における所定の位置に図13に示す追加折り目43を形成することが可能となる。なお、本発明を適用したダンパー構造1は、外面部40の略中央等で1箇所に追加折り目43が形成されるほか、軸方向Zで外面部40の複数箇所に追加折り目43が形成されてもよい。
本発明を適用した耐力壁7は、図2に示すように、スチールハウス、鉄骨プレハブ又は木造住宅等の建築物の壁体として設けられて、軸力部材2となるブレース材20に本発明を適用したダンパー構造1が設けられる。このため、本発明を適用した耐力壁7は、引張荷重Pt及び圧縮荷重Pcが交互に作用するにもかかわらず、枠内空間70のブレース材20に安定したエネルギー吸収性能を発揮させて、耐震性能を向上させた建築物の壁体を提供することが可能となる。
本発明を適用したダンパー構造1は、スチールハウスの耐力壁7に導入される場合には、薄板軽量形鋼等の軸力部材2に設けられる。また、本発明を適用したダンパー構造1は、鉄骨プレハブの耐力壁7に導入される場合には、図24(a)に示すように、角形鋼管、溝形鋼又はH形鋼等の鉄骨材21の軸力部材2に設けられてもよい。さらに、本発明を適用したダンパー構造1は、木造住宅の耐力壁7に導入される場合には、図24(b)に示すように、木製材24の軸力部材2に設けられてもよい。
このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、図24(a)に示すように、H形鋼等の鉄骨材21に設けられる場合に、鉄骨材21のフランジ22の側面25又はウェブ23の側面25に、定着部3が取り付けられる。そして、本発明を適用したダンパー構造1は、図24(b)に示すように、木製材24に設けられる場合に、木製材24の端部27で外側の側面25に定着部3が取り付けられるほか、木製材24の端部27で部分的に切り欠いた切欠溝61等の内側の側面25に定着部3が取り付けられてもよい。
本発明を適用したダンパー構造1は、図2、図3に示すように、鉛直方向のエネルギー吸収機構として設けられるほか、図25に示すように、水平方向のエネルギー吸収機構として設けられてもよい。このとき、本発明を適用したダンパー構造1は、例えば、図25(a)に示す耐力壁7等に導入されるほか、図25(b)に示す基礎免震等に導入されて、複数の連結部材に架設された軸力部材2に設けられるものとなる。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。