JP2018020935A - 光学ガラス及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】高屈折率で特に短波長域での透過率が高く、かつ大径化が容易である新規な光学ガラスの提供。【解決手段】モル%で、La2O3:23〜35%(ただし35%を含まない)、TiO2:10〜40%、Nb2O5:25〜67%を含有する光学ガラス。製造法としては、成形型10の噴出孔10bからガスを上向きに噴出させて、ガラス原料塊12を浮上させ、浮遊保持した状態で、レーザー光照射装置13よりレーザー照射して加熱溶解させて行う製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は光学ガラスに関し、特に高屈折率かつ可視域での透過率に優れた光学ガラスに関する。
近年、カメラ、顕微鏡及び内視鏡等に用いられる光学系の小型化や軽量化に伴い、使用される光学レンズに用いられるガラスの光学特性として、より高屈折率かつ、可視域の広い範囲(短波長域)で光を透過することが求められている。
ガラスをより高屈折率にするためには、ガラス骨格成分であるSiOやBの含有量を少なくし、La、Gd、Ta等の希土類酸化物またはNbやTiOを多量に含有させる必要がある。しかしながら、この場合ガラス化が困難になる。これは、一般に、光学ガラスは原料を坩堝等の溶融容器内で溶融し、冷却することで作製されるため、ガラス骨格成分が少ないガラス系では、溶融容器との接触界面を起点として結晶化が進行しやすくなるためである。
ガラス化しにくい組成であっても、溶融容器との界面での接触をなくすことによりガラス化が可能となる。このような方法として、原料を浮遊させた状態で溶融、冷却する無容器浮遊法(無容器凝固法)が知られている。当該方法を用いると、溶融ガラスが溶融容器にほとんど接触することがないため、溶融容器との界面を起点とする結晶化を防止することができ、ガラス化が可能となる。例えば、特許文献1では、無容器浮遊法により、ガラス組成としてLaとTiOを含有するガラスが作製されている。
特許第4953234号公報
特許文献1に記載のガラスは、比較的失透しやすいため、無容器浮遊法を用いた場合であっても、大径化(例えば直径2mm以上)が困難であり、また特に可視光の短波長域(約380〜400nm)での透過率が低いという問題がある。
以上に鑑み、本発明は、高屈折率で特に短波長域での透過率が高く、かつ大径化が容易である新規な光学ガラスを提供することを目的とする。
本発明者等が鋭意検討した結果、La、TiO及びNbを含有する特定組成を有する光学ガラスにより前記課題を解決できることを見出した。
本発明の光学ガラスは、モル%で、La 23〜35%(ただし35%を含まない)、TiO 10〜40%、Nb 25〜67%を含有することを特徴とする。
本発明の光学ガラスは、さらに、モル%で、Al 0〜20%、Ta 0〜20%、ZrO 0〜20%、Gd 0〜20%、Y 0〜20%、またはYb 0〜20%を含有することが好ましい。
本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)が2.15〜2.30であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、厚さ1mmの試料において、波長400nmの光に対する透過率が60%以上、波長380nmの光に対する透過率が25%以上であることが好ましい。
本発明の光学ガラスは、例えば球形状または回転楕円体形状である。
本発明の光学ガラスの製造方法は、上記の光学ガラスを製造するための方法であって、原料塊を浮遊させて保持した状態で、原料塊を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、溶融ガラスを冷却する工程を備えることを特徴とする。
本発明の光学ガラスは、従来よりも高屈折率で特に短波長域での透過率が高く、かつ大径化が容易である。
本発明の光学ガラスを製造するための装置の一実施形態を示す模式的断面図である。
本発明の光学ガラスは、モル%で、La 23〜35%(ただし35%を含まない)、TiO 10〜40%、Nb 25〜67%を含有することを特徴とする。ガラス組成範囲をこのように限定した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り「%」は「モル%」を意味する。」
Laはガラス骨格を形成する成分であり、透過率を低下させることなく屈折率を高める成分である。また、耐候性を向上させる効果もある。Laの含有量は23〜35%(ただし35%を含まない)であり、好ましくは24〜33%、より好ましくは25〜30%である。Laの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、Laの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。
TiOは屈折率を高める効果が大きい成分であり、化学的耐久性を高める効果もある。TiOの含有量は10〜40%であり、好ましくは11〜39%、より好ましくは15〜35%である。TiOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。TiOの含有量が多すぎると、吸収端が長波長側にシフトするため短波長域の透過率が低下しやすくなる。また、ガラス化しにくくなる。
Nbは屈折率を高める効果が大きい成分であり、ガラス化範囲を広げる効果もある。Nbの含有量は25〜67%であり、好ましくは27〜66%、より好ましくは30〜65%である。Nbの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、Nbの含有量が多すぎると、吸収端が長波長側にシフトするため短波長域の透過率が低下しやすくなる。また、ガラス化しにくくなる。
本発明の光学ガラスには、上記成分以外にも、Al、Ta、ZrO、Gd、YまたはYbを含有させることができる。これらの成分を導入することで、所望の光学特性を有するガラスを容易に作製することができる。
Alはガラス骨格を形成し、ガラス化範囲を広げる成分である。ただし、Alの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性が得られにくくなる。従って、Alの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
Taは屈折率を高める効果が大きい成分であり、化学的耐久性を高める効果も有する。ただし、Taの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。また、原料コストが高くなる傾向がある。従って、Taの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜15%である。
ZrOは屈折率を高める成分であり、化学的耐久性を高める効果も有する。ただし、ZrOの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。従って、ZrOの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
Gdは屈折率を高める成分である。ただし、Gdの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。従って、Gdの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
は屈折率を高める成分である。ただし、Yの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。従って、Yの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
Ybは屈折率を高める成分である。ただし、Ybの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。また、原料コストが高くなる傾向がある。従って、Ybの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
本発明の光学ガラスには、上記成分以外にも、以下に示すような種々の成分を含有させることができる。
SiOはガラス骨格となり、ガラス化範囲を広げる成分である。また、耐候性を向上させる効果もある。ただし、SiOの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性が得られにくくなる。従って、SiOの含有量は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
はガラス骨格となり、ガラス化範囲を広げる成分である。ただし、Bの含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性が得られにくくなる。従って、Bの含有量は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
GeOは屈折率を高める成分であり、ガラス化範囲を広げる効果もある。ただし、GeOの含有量が多すぎると、原料コストが高くなる傾向がある。従って、GeOの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%である。
WOは屈折率を高める効果がある。また、中間酸化物としてガラス骨格を形成するため、ガラス化範囲を広げる効果もある。ただし、WOの含有量が多すぎると、失透しやすくなり大径化が困難になる傾向がある。従って、WOの含有量は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
SnOは屈折率を高める効果が大きい成分である。ただし、還元されやすく着色の原因となる。従って、SnOの含有量は好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%である。
はガラス骨格を構成する成分であり、ガラス化範囲を広げる効果がある。ただし、その含有量が多すぎると、分相しやすくなる。従って、Pの含有量は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜3%である。
ZnO、MgO、CaO、SrO及びBaOはガラス化の安定性を向上させたり、化学的耐久性を高める効果がある。ただし、その含有量が多すぎると、屈折率が低下して所望の光学特性が得られにくくなる。従って、これらの成分の含有量は好ましくは各々0〜10%、より好ましくは各々0〜5%である。
LiO、NaO、KO及びCsOは溶融温度を低下させる効果があるが、屈折率を低下させるため、好ましくは合量で0〜10%、より好ましくは合量で0〜5%である。
清澄剤としてSbを含有させることができる。ただし、着色を避けるため、あるいは環境面を考慮して、Sbの含有量は0.1%以下であることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
PbOは環境への負荷を考慮し、実質的に含有しないことが好ましい。
なお、本発明において「実質的に含有しない」とは、意図的に原料として含有させないことを意味し、不可避的不純物の混入までをも排除するものではない。より客観的には、含有量が0.1%未満であることを意味する。
本発明の光学ガラスの屈折率は、好ましくは2.15以上、より好ましくは2.17以上、さらに好ましくは2.19以上である。例えば、本発明の光学ガラスをレンズとして使用する場合、屈折率を高めるほどレンズを薄くすることが可能となり、光学デバイスを小型化する上で有利となる。なお、屈折率の上限は、ガラス化の安定性を考慮して、好ましくは2.30以下、より好ましくは2.29以下である。
本発明の光学ガラスにおいてアッベ数は特に限定されず、例えば10〜25の範囲で適宜調整される。
本発明の光学ガラスの厚さ1mmの試料での波長400nmにおける透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上であり、波長380nmにおける透過率は、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。このようにすれば、可視域の広い範囲で透過率が高くなり、光学レンズとして好適となる。
本発明の光学ガラスは、例えば球形状や回転楕円体形状を有する。その場合、直径(あるいは長径)が2mm以上、2.5mm以上、特に3mm以上であることが好ましい。そのようにすれば、レンズ等の光学素子として適用しやすくなる。
本発明の光学ガラスは例えば無容器浮遊法により作製することができる。図1は、無容器浮遊法によりガラス材を作製するための製造装置の一例を示す模式的断面図である。以下、図1を参照しながら、本発明の光学ガラスの製造方法について説明する。
ガラス材の製造装置1は成形型10を有する。成形型10は溶融容器としての役割も果たす。成形型10は、成形面10aと、成形面10aに開口している複数のガス噴出孔10bとを有する。ガス噴出孔10bは、ガスボンベなどのガス供給機構11に接続されている。このガス供給機構11からガス噴出孔10bを経由して、成形面10aにガスが供給される。ガスの種類は特に限定されず、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
製造装置1を用いてガラス材を製造するに際しては、まず、上記組成のガラスとなるように調製したガラス原料塊12を成形面10a上に配置する。ガラス原料塊12としては、例えば、原料粉末をプレス成形等により一体化したものや、原料粉末をプレス成形等により一体化した後に焼結させた焼結体や、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体等が挙げられる。
次に、ガス噴出孔10bからガスを噴出させることにより、ガラス原料塊12を成形面10a上で浮遊させる。すなわち、ガラス原料塊12を、成形面10aに接触していない状態で保持する。その状態で、レーザー光照射装置13からレーザー光をガラス原料塊12に照射する。これによりガラス原料塊12を加熱溶融してガラス化させ、溶融ガラスを得る。その後、溶融ガラスを冷却することにより、ガラス材を得ることができる。ガラス原料塊12を加熱溶融する工程と、溶融ガラス、さらにはガラス材の温度が少なくとも軟化点以下となるまで冷却する工程とにおいては、少なくともガスの噴出を継続し、ガラス原料塊12、溶融ガラス、さらにはガラス材と成形面10aとの接触を抑制することが好ましい。なお、加熱溶融する方法としては、レーザー光を照射する方法以外にも、輻射加熱であってもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1および2は本発明の実施例及び比較例をそれぞれ示している。
各試料は次のようにして調製した。まず表に示すガラス組成になるように調合した原料粉末を用いて原料塊を作製した。原料塊は、原料粉末をプレス成型して1100〜1400℃で12時間焼結する方法により作製した。なお、原料塊は、乳鉢を用いて粗粉砕し、0.1〜0.6gの小片にした状態で用いた。
上記で得られた原料塊を用いて、図1に準じた装置を用いた無容器浮遊法によって略球形状のガラス材(長径4.5〜6mm)を作製した。なお、熱源としては100W COレーザー発振器を用いた。また、ガラス原料塊を浮遊させるためのガスとして酸素ガスを用い、流量1〜15L/minで供給した。
得られたガラス材について、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、透過率を測定した。結果を表1および2に示す。
屈折率は、ガラス材を厚さ5mmのソーダ板基板上に接着後、直角研磨を行い、島津製作所製KPR−2000用いて、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で評価した。
アッベ数は、上記d線に対する屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)及びC線(656.3nm)に対する屈折率の値を用い、アッベ数(νd)={(nd−1)/(nF−nC)}の式から算出した。
透過率は、ガラス材を1mmの厚さに加工後、両面鏡面加工を行い、島津製作所製UV−3100を用いて波長300〜800nmの範囲で測定した。表には、波長400nm及び380nmにおける透過率を示した。
表1、2に示すように、実施例1〜10の試料は、屈折率が2.1757〜2.2779と高く、波長400nmにおける透過率が60.8〜64.2%、波長380nmにおける透過率が28.6〜53.2%と可視光の短波長域において高い透過率を示した。
一方、比較例1、2の試料は、波長400nmにおける透過率が57.2%以下、波長380nmにおける透過率が22.3%以下と短波長における透過率が低かった。また、比較例3の試料はガラス化しなかった。
1:ガラス材の製造装置
10:成形型
10a:成形面
10b:ガス噴出孔
11:ガス供給機構
12:ガラス原料塊
13:レーザー光照射装置

Claims (6)

  1. モル%で、La 23〜35%(ただし35%を含まない)、TiO 10〜40%、Nb 25〜67%を含有することを特徴とする光学ガラス。
  2. さらに、モル%で、Al 0〜20%、Ta 0〜20%、ZrO 0〜20%、Gd 0〜20%、Y 0〜20%、またはYb 0〜20%を含有することを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
  3. 屈折率(nd)が2.15〜2.30であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
  4. 厚さ1mmの試料において、波長400nmの光に対する透過率が60%以上、波長380nmの光に対する透過率が25%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  5. 球形状または回転楕円体形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学ガラスを製造するための方法であって、
    原料塊を浮遊させて保持した状態で、前記原料塊を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、前記溶融ガラスを冷却する工程を備えることを特徴とする、光学ガラスの製造方法。
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