以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.発振器
1−1.第1実施形態
[発振器の構成]
図1は第1実施形態の発振器の機能ブロック図である。図1に示すように、第1実施形態の発振器1は、温度補償型発振回路2と振動子3とを含んで構成されており、温度補償型発振回路2と振動子3は不図示のパッケージに収容されている。
本実施形態の発振器1は、温度補償型発振器であり、電源端子であるVCC端子,接地端子であるVSS端子、内部信号のモニター用の端子であるMON端子及び出力端子であるOUT端子の4個の外部端子が設けられている。VCC端子には電源電圧が供給され、VSS端子は接地される。MON端子からは後述する温度センサー21の出力信号(出力電圧)が出力され、OUT端子からは温度補償された発振信号が出力される。
本実施形態では、振動子3は、基板材料として水晶を用いた水晶振動子であり、例えば、ATカットやSCカットの水晶振動子が用いられる。振動子3は、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子であってもよい。また、振動子3の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。振動子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。
温度補償型発振回路2は、6個の端子P1〜P6を有しており、P1端子はVC端子と電気的に接続され、P2端子はOUT端子と電気的に接続され、P3端子はVCC端子と電気的に接続され、P4端子はVSS端子と電気的に接続されている。また、P5端子は振動子3の一方の端子と電気的に接続され、P6端子は振動子3の他方の端子と電気的に接続されている。
本実施形態では、温度補償型発振回路2は、温度センサー21、基準温度調整回路22、n次近似温度補償回路23(「第1の補正回路」の一例)、補償残差補正回路24(「第2の補正回路」の一例)、スイッチ回路25、発振回路26、出力バッファー27、記憶部28及びシリアルインターフェース(I/F)回路29を含んで構成されている。なお、本実施形態の温度補償型発振回路2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。温度補償型発振回路2は、例えば、1チップの集積回路(IC:Integrated Circuit)で実現されていてもよい。
温度センサー21は、その周辺の温度に応じて電圧が変化する温度検出信号TSENを出力する。温度センサー21は、温度が高いほど出力電圧が高い正極性のものであってもよいし、温度が高いほど出力電圧が低い負極性のものであってもよい。温度センサー21は、発振器1の動作が保証される所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)において、温度変化に対して出力電圧ができるだけ線形に変化するものが望ましく、例えば、バンドギャップリファレンス回路の温度特性を利用した温度センサーであってもよい。
基準温度調整回路22は、記憶部28に記憶されているデータ(基準温度調整値)に基づいて、基準温度TO(例えば、+25℃)における温度検出信号TSENの電圧を所望の電圧値に近づけるように調整するための回路である。
n次近似温度補償回路23は、発振回路26が出力する発振信号の周波数温度特性を補正(温度補償)するための回路であり、温度検出信号TSENに基づいて温度補償電圧VCOMPを発生させる。
補償残差補正回路24は、n次近似温度補償回路23によって補正(温度補償)される発振信号の周波数温度特性をさらに補正するための回路であり、温度センサー21が出力する温度検出信号TSENに基づいて残差補正電圧Vzanを発生させる。
本実施形態では、n次近似温度補償回路23は、0次成分発生回路231−0、1次成分発生回路231−1、3次成分発生回路231−3、・・・、n次成分発生回路231−n、1次ゲイン調整回路232−1、3次ゲイン調整回路232−3、・・・、n次ゲイン調整回路232−n及び加算器233を含んで構成されている。
0次成分発生回路231−0は、記憶部28に記憶されている0次係数値(オフセット値)A0に基づいて、振動子3の周波数温度特性の0次成分を近似する0次電圧VS0を出力する。例えば、VS0=A0であってもよい。
1次成分発生回路231−1は、温度検出信号TSEN(温度T)の1次関数に相当する電流を出力し、1次ゲイン調整回路232−1は、1次成分発生回路231−1が出力する電流と記憶部28に記憶されている1次係数値A1とに基づいて、振動子3の周波数温度特性の1次成分に起因する発振信号の周波数偏差を補正(温度補償)するための1次電圧VS1を出力する。例えば、任意の温度Tに対して、VS1=A1(T−TO)であってもよい。
3次成分発生回路231−3は、温度検出信号TSEN(温度T)の3次関数に相当する電流を出力し、3次ゲイン調整回路232−3は、3次成分発生回路231−3が出力する電流と記憶部28に記憶されている3次係数値A3とに基づいて、振動子3の周波数温度特性の3次成分に起因する発振信号の周波数偏差を補正(温度補償)するための3次電圧VS3を出力する。例えば、任意の温度Tに対して、VS3=A3(T−TO)3であってもよい。
n次成分発生回路231−nは、温度検出信号TSEN(温度T)のn次関数に相当する電流を出力し、n次ゲイン調整回路232−nは、n次成分発生回路231−nが出力する電流と記憶部28に記憶されているn次係数値Anとに基づいて、振動子3の周波数温度特性のn次成分に起因する発振信号の周波数偏差を補正(温度補償)するためのn次電圧VSnを出力する。例えば、任意の温度Tに対して、VSn=An(T−TO)nであってもよい。
加算器233は、0次電圧VS0、1次電圧VS1、3次電圧VS3、・・・、n次電圧VSnを加算し、スイッチ回路25がオン状態(スイッチ回路25の両端が導通している状態)のときはさらに残差補正電圧Vzanを加算し、温度補償電圧VCOMPを出力する。
スイッチ回路25のオン/オフは、記憶部28に記憶されているデータ(補償残差補正有効/無効選択ビット値)によって制御される。
スイッチ回路25がオフ状態(スイッチ回路25の両端が非導通の状態)のときは、任意の温度Tに対して、温度補償電圧VCOMPは、例えば、次式(1)で表される。
また、スイッチ回路25がオン状態のときは、任意の温度Tに対して、温度補償電圧VCOMPは、例えば、次式(2)で表される。
このように、本実施形態では、スイッチ回路25がオフ状態のときは温度補償電圧VCOMPに残差補正電圧Vzanが含まれず、スイッチ回路25がオン状態のときは温度補償電圧VCOMPに残差補正電圧Vzanが含まれる。すなわち、本実施形態では、温度補償型発振回路2は、記憶部28に記憶される補償残差補正有効/無効選択ビット値により、補償残差補正回路24による補正を有効にするか無効にするかを選択可能である。
記憶部28は、不揮発性メモリー281とレジスター282とを有し、不揮発性メモリー281には、前述した0次係数値A0、1次係数値A1、3次係数値A3、・・・、n次係数値An(「第1の補正情報」の一例)、基準温度調整値及び補償残差補正有効/無効選択ビット値が記憶されている。そして、発振器1の外部端子VCC(温度補償型発振回路2のP3端子)に所望の電源電圧が供給されると、不揮発性メモリー281に記憶されている係数値A0〜An、基準温度調整値及び補償残差補正有効/無効選択ビット値がレジスター282に転送され、n次近似温度補償回路23、基準温度調整回路22あるいはスイッチ回路25に供給される。0次係数値A0、1次係数値A1、3次係数値A3、・・・、n次係数値Anは、例えば、振動子3の周波数温度特性を近似するn次関数の各次数の係数値であり、振動子3の周波数温度特性に基づいて算出され、不揮発性メモリー281に書き込まれる。なお、不揮発性メモリー281としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリーなどを適用することできる。
シリアルインターフェース(I/F)回路29は、温度補償型発振回路2のP1端子、P2端子、P3端子及びP4端子(発振器1の4つの外部端子)のいずれかを用いて、シリアルクロック信号とシリアルデータ信号を受け付け、記憶部28が有する不揮発性メモリー281あるいはレジスター282に対してデータの読み書きを行う。例えば、シリアルインターフェース(I/F)回路29は、P3端子(VCC端子)の電圧が閾値よりも高いか低いかを判定し、P3端子(VCC端子)の電圧が閾値よりも高い時に、P1端子(MON端子)から入力されるシリアルクロック信号とP2端子(OUT端子)から入力されるシリアルデータ信号を受け付けてもよい。
発振回路26は、P5端子及びP6端子と接続され、振動子3を発振させる。図1の例では、発振回路26は、NPN型のバイポーラトランジスター261、抵抗262,263、コンデンサー264,265、バラクター(可変容量ダイオード)266,267、抵抗268及び抵抗269を含んで構成されている。
バイポーラトランジスター261は、ベース端子がP6端子と接続され、コレクター端子がP5端子と接続され、エミッター端子が接地されている。
抵抗262は、バイポーラトランジスター261のベース端子とコレクター端子との間に接続されており、抵抗263は、電源とバイポーラトランジスター261のコレクター端子との間に接続されている。
コンデンサー264は、バイポーラトランジスター261のコレクター端子とバラクター266のカソード端子との間に接続されており、コンデンサー265は、バイポーラトランジスター261のベース端子とバラクター267のカソード端子との間に接続されている。
バラクター266のアノード端子及びバラクター267のアノード端子は接地されている。
抵抗268は、加算器233の出力端子とバラクター266のカソード端子との間に接続されており、抵抗269は、加算器233の出力端子とバラクター267のカソード端子との間に接続されている。
発振回路26の出力信号である、バイポーラトランジスター261のコレクター端子の信号は出力バッファー27に入力され、出力バッファー27の出力信号はP2端子を介してOUT端子から発振器1の外部に出力される。
このように構成されている発振回路26は、バイポーラトランジスター261を増幅素子として、P6端子から入力される振動子3の出力信号を増幅し、P5端子を介してこの増幅した信号を振動子3の入力信号として供給する。そして、コンデンサー264,265とともに発振回路26の負荷容量を構成するバラクター266,267は、その容量値が温度補償電圧VCOMPに応じて変化し、その結果、負荷容量値が変化するため、発振回路26の出力信号の周波数が変化する。本実施形態では、温度補償電圧VCOMPは、振動子3の周波数温度特性に応じた式(1)又は式(2)で表されるため、発振回路26は所望の温度範囲において温度補償された周波数偏差の小さい(周波数精度の高い)発振信号となる。
なお、発振回路26は、増幅素子として、PNP型のバイポーラトランジスター、電界効果トランジスター(FET:Field Effect Transistor)、金属酸化膜型電界効果トランジスター(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、サイリスター等を用いて実現されてもよい。
図2は、補償残差補正回路24による補正が無効(スイッチ回路25がオフ状態)のときの温度補償電圧VCOMP(式(1)で表される)の温度特性の一例を示す図であり、横軸は温度、縦軸は電圧である。また、図3は、補償残差補正回路24による補正が無効(スイッチ回路25がオフ状態)のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性の一例を示す図であり、横軸は温度、縦軸は周波数偏差(目標周波数に対する誤差)である。
図3に示すように、n次近似温度補償回路23は、温度に対して、目標周波数(周波数偏差が0ppb)よりも低い周波数から高い周波数へと増加する単調増加と目標周波数よりも高い周波数から低い周波数へと減少する単調減少とを交互に繰り返す周波数温度特性となるように補正する。このように、振動子3の周波数温度特性をn次関数で近似して温度補償しても、補償しきれずに周波数偏差(補償残差)が残っている。例えば、−40℃〜+85℃の温度範囲において、n次近似温度補償回路23による補正後の周波数偏差(補償残差)は100ppb程度である。補償残差補正回路24は、この補償残差をさらに補正するための残差補正電圧Vzanを出力するものである。さらに、本件発明者は、発振器1の多数の試作品を用いてこの補償残差の傾向を調べたところ、残差パターンは調整方法などをさまざまに工夫することで、うねるようなパターン(うねりの数やピークの位置など)を制御できることを発見し、簡易な構成で補償残差補正回路24を実現可能であることに想到した。なお、発振回路26が出力する発振信号の周波数偏差は、−40℃〜+85℃の温度範囲において20ppm程度以下であることが望ましい。例えば、振動子3がATカットの水晶振動子であれば20ppm程度以下の周波数偏差を満たす。また、−40℃〜+85℃の温度範囲において、うねりの数は周波数の高い方のピーク数で3〜8個程度が望ましい。
[補償残差補正回路の構成]
図4は、第1実施形態における補償残差補正回路24の構成例を示す図である。図4の例では、補償残差補正回路24は、NPN型のバイポーラトランジスター241−1〜241−7、NPN型のバイポーラトランジスター242−1〜242−7、抵抗243−1〜243−7、抵抗244−1〜244−7、定電流源245−1〜245−7、演算増幅器246、抵抗247及び電圧発生回路248を含んで構成されている。
電圧発生回路248は、第1基準電圧VR1、第2基準電圧VR2、第3基準電圧VR3、第4基準電圧VR4、第5基準電圧VR5、第6基準電圧VR6及び第7基準電圧VR7を発生させる。例えば、電圧発生回路248は、第1基準電圧VR1〜第7基準電圧VR7を発生させてもよい。
バイポーラトランジスター241−1(「第1のトランジスター」の一例)とバイポーラトランジスター242−1(「第2のトランジスター」の一例)とで差動対(「第1の差動対」の一例)が構成されている。バイポーラトランジスター241−1は、ベース端子に第1基準電圧VR1(「第1の基準信号」の一例)が入力され、コレクター端子が基準電圧VREGを供給する基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−1を介して定電流源245−1と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−1は、ベース端子に温度検出信号TSEN(「第1の温度信号」の一例)が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−1を介して定電流源245−1と電気的に接続されている。定電流源245−1(「第1の電流源」の一例)は、抵抗243−1,244−1を介して、バイポーラトランジスター241−1とバイポーラトランジスター242−1とで構成される差動対に一定電流Io1(「第1の電流」の一例)を流す。
同様に、バイポーラトランジスター241−3とバイポーラトランジスター242−3とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−3は、ベース端子に第3基準電圧VR3が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−3を介して定電流源245−3と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−3は、ベース端子に温度検出信号TSENが入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−3を介して定電流源245−3と電気的に接続されている。定電流源245−3は、抵抗243−3,244−3を介して、バイポーラトランジスター241−3とバイポーラトランジスター242−3とで構成される差動対に一定電流Io3を流す。
同様に、バイポーラトランジスター241−5とバイポーラトランジスター242−5とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−5は、ベース端子に第5基準電圧VR5が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−5を介して定電流源245−5と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−5は、ベース端子に温度検出信号TSENが入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−5を介して定電流源245−5と電気的に接続されている。定電流源245−5は、抵抗243−5,244−5を介して、バイポーラトランジスター241−5とバイポーラトランジスター242−5とで構成される差動対に一定電流Io5を流す。
同様に、バイポーラトランジスター241−7とバイポーラトランジスター242−7とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−7は、ベース端子に第7基準電圧VR7が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−7を介して定電流源245−7と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−7は、ベース端子に温度検出信号TSENが入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−7を介して定電流源245−7と電気的に接続されている。定電流源245−7は、抵抗243−7,244−7を介して、バイポーラトランジスター241−7とバイポーラトランジスター242−7とで構成される差動対に一定電流Io7を流す。
また、バイポーラトランジスター241−2(「第3のトランジスター」の一例)とバイポーラトランジスター242−2(「第4のトランジスター」の一例)とで差動対(「第2の差動対」の一例)が構成されている。バイポーラトランジスター241−2は、ベース端子に第2基準電圧VR2(「第2の基準信号」の一例)が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−2を介して定電流源245−2と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−2は、ベース端子に温度検出信号TSEN(「第2の温度信号」の一例)が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−2を介して定電流源245−2と電気的に接続されている。定電流源245−2(「第2の電流源」の一例)は、抵抗243−2,244−2を介して、バイポーラトランジスター241−2とバイポーラトランジスター242−2とで構成される差動対に一定電流Io2(「第2の電流」の一例)を流す。
同様に、バイポーラトランジスター241−4とバイポーラトランジスター242−4とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−4は、ベース端子に第4基準電圧VR4が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−4は、ベース端子に温度検出信号TSENが入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。定電流源245−4は、抵抗243−4,244−4を介して、バイポーラトランジスター241−4とバイポーラトランジスター242−4とで構成される差動対に一定電流Io4を流す。
同様に、バイポーラトランジスター241−6とバイポーラトランジスター242−6とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−6は、ベース端子に第6基準電圧VR6が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−6を介して定電流源245−6と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−6は、ベース端子に温度検出信号TSENが入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−6を介して定電流源245−6と電気的に接続されている。定電流源245−6は、抵抗243−6,244−6を介して、バイポーラトランジスター241−6とバイポーラトランジスター242−6とで構成される差動対に一定電流Io6を流す。
演算増幅器246の非反転入力端子(+端子)にはリファレンス電圧Vref(演算増幅器246の動作の基準となる電圧)が入力される。また、演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と出力端子とは抵抗247を介して接続されており、この演算増幅器246の出力電圧が残差補正電圧Vzanとして補償残差補正回路24から出力される。
ここで、図5に示すように、温度検出信号TSENの電圧値は、温度Tに対してほぼ線形に減少し、温度TがT1,T2,T3,T4,T5,T6,T7(T1<T2<T3<T4<T5<T6<T7)のときに、それぞれVR1,VR2,VR3,VR4,VR5,VR6,VR7と一致するものとする。
このとき、演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続されているバイポーラトランジスター242−1,241−2,242−3,241−4,242−5,241−6,242−7の各々のコレクター−エミッター間に流れる電流I1,I2,I3,I4,I5,I6,I7の和をIzanとすると、電流Izanの温度特性は図6のようになる。
温度TがT1よりも十分に低いときは、温度検出信号TSENの電圧値はVR1〜VR7よりも十分に高いので(図5参照)、I1≒Io1,I2≒0,I3≒Io3,I4≒0,I5≒Io5,I6≒0,I7≒Io7となり、Izan≒Io1+Io3+Io5+Io7である。
また、温度TがT1に近い範囲では、電流I2〜I7はほとんど変化せず、電流I1のみが温度Tに対してほぼ線形に減少する。そして、I1≒0となると、Izan≒Io3+Io5+Io7となる。
また、温度TがT2に近い範囲では、電流I1,I3〜I7はほとんど変化せず、電流I2のみが温度Tに対してほぼ線形に増加する。そして、I2≒Io2となると、Izan≒Io2+Io3+Io5+Io7となる。
また、温度TがT3に近い範囲では、電流I1,I2,I4〜I7はほとんど変化せず、電流I3のみが温度Tに対してほぼ線形に減少する。そして、I3≒0となると、Izan≒Io2+Io5+Io7となる。
また、温度TがT4に近い範囲では、電流I1〜I3,I5〜I7はほとんど変化せず、電流I4のみが温度Tに対してほぼ線形に増加する。そして、I4≒Io4となると、Izan≒Io2+Io4+Io5+Io7となる。
また、温度TがT5に近い範囲では、電流I1〜I4,I6,I7はほとんど変化せず、電流I5のみが温度Tに対してほぼ線形に減少する。そして、I5≒0となると、Izan≒Io2+Io4+Io7となる。
また、温度TがT6に近い範囲では、電流I1〜I5,I7はほとんど変化せず、電流I6のみが温度Tに対してほぼ線形に増加する。そして、I6≒Io6となると、Izan≒Io2+Io4+Io6+Io7となる。
また、温度TがT7に近い範囲では、電流I1〜I6はほとんど変化せず、電流I7のみが温度Tに対してほぼ線形に減少する。そして、I7≒0となると、Izan≒Io2+Io4+Io6となる。
そして、抵抗247の抵抗値をRとすると、残差補正電圧Vzanは次式(3)で表されるため、残差補正電圧Vzanの温度特性は図7のようになる。
補償残差補正回路24による補正が無効のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性は、図3に示したように、概ね一定のうねりのパターンを有する。従って、補償残差補正回路24による補正を有効にして、加算器233(図1参照)によって図7に示すような温度特性を有する残差補正電圧Vzanが加算された温度補償電圧VCOMPを発生させることで、所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)において、発振器1の出力信号(発振信号)の周波数偏差を小さくする(周波数精度を高くする)ことが可能となる。図8に、補償残差補正回路24による補正が有効(スイッチ回路25がオン状態)のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性の一例を示す。図8において、横軸は温度、縦軸は周波数偏差(目標周波数に対する誤差)である。このように、第1実施形態における補償残差補正回路24は、バイポーラトランジスター242−1,241−2,242−3,241−4,242−5,241−6,242−7の各信号(電流I1〜I7)に基づいて、n次近似温度補償回路23によって補正(温度補償)される発振信号の周波数温度特性をさらに補正するための信号(残差補正電圧Vzan)を出力する。例えば、−40℃〜+85℃の温度範囲において、補償残差補正回路24による補正後の周波数偏差は50ppb以下である。
[発振器の製造方法]
図9は、第1実施形態の発振器の製造方法の一例を示すフローチャート図である。本実施形態の発振器の製造方法は、図9に示す工程S10〜S40を含む。ただし、本実施形態の発振器の製造方法は、工程S10〜S40の一部を省略又は変更し、あるいは、他の工程を追加してもよい。
図9に示すように、本実施形態では、まず、振動子3の周波数温度特性を取得する(工程S10)。この工程S10では、例えば、振動子3を恒温槽に収容し、恒温槽の温度を所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で変えながら基準温度To(例えば、+25℃)を含む5点(4点でもよい)の温度で振動子3の特性を測定し、当該測定結果より周波数温度特性を取得する。
次に、振動子3と温度補償型発振回路2とを含む発振器1を組み立てる(工程S20)。
次に、補償残差補正回路24による補正を無効にした状態での複数の温度における発振信号の周波数に基づいて、0次〜n次の各係数値A0〜Anと基準温度調整値を算出して記憶部28に書き込む(工程S30)。この工程S30では、例えば、発振器1を恒温槽に収容し、恒温槽の温度を所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で変えながら基準温度To(例えば、+25℃)を含むn+1点以上の温度で発振器1のOUT端子から出力される発振信号の周波数を測定し、当該測定結果より各係数値A0〜Anを算出する。また、恒温槽の温度が基準温度TOのときに発振器1のMON端子から出力される温度検出信号TSENの電圧値を測定し、当該測定結果より基準温度調整値を算出する。
最後に、補償残差補正回路24による補正を有効にした状態で、発振器1の周波数温度特性を測定する(複数の温度における発振信号の周波数を検査する)(工程S40)。この工程S40では、例えば、発振器1を恒温槽に収容し、恒温槽の温度を所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で変えながら基準温度To(例えば、+25℃)を含むn+1点以上の温度で発振器1のOUT端子から出力される発振信号の周波数を測定し、周波数偏差が仕様を満たすか否かを検査する。発振器1が周波数偏差の仕様を満たさない場合は、不合格品として破棄してもよいし、各係数値A0〜Anを変更して工程S40の検査を再度行ってもよい。
なお、工程S30において、各係数値A0〜Anと基準温度調整値を記憶部28の不揮発性メモリー281に書き込んでもよいし、レジスター282に書き込んでもよい。後者の場合は、例えば、工程S40の後に、各係数値A0〜Anと基準温度調整値を不揮発性メモリー281に書き込めばよい。
[作用効果]
以上に説明したように、第1実施形態によれば、発振器1の製造工程において、補償残差補正回路24を無効にした状態で、振動子3の周波数温度特性を近似するn次関数の各次数の係数値A0〜Anを算出してn次近似温度補償回路23による温度補償動作を適切に設定することができる。また、補償残差補正回路24による補正を有効にした状態で発振器1の周波数温度特性を検査するので、製造された発振器1は、補償残差補正回路24がn次近似温度補償回路23による補正後の発振信号の周波数偏差を適切に補正し、所望の周波数特性が満たされることを保証することができる。
そして、第1実施形態によれば、n次近似温度補償回路23による補正後の発振信号の周波数偏差を補償残差補正回路24によってさらに補正することができるので、n次近似温度補償回路23による温度補償の次数nを上げることなく、周波数精度を向上させることが可能な温度補償型発振回路2及び発振器1を実現することができる。また、温度補償の次数nを上げなくてもよいので、n次近似温度補償回路23の規模や消費電流の増加(及びこれに伴う位相雑音の増加)を抑制することができる。さらに、補償残差補正回路24は、n次近似温度補償回路23による補正後の周波数偏差の傾向に特化した補正を行えばよいので、補償残差補正回路24の規模や消費電流も比較的小さく抑えることができる。従って、第1実施形態によれば、回路規模や位相雑音の増加を抑えながら周波数精度を向上させることが可能な温度補償型発振回路2及び発振器1できる。
特に、補償残差補正回路24は、温度検出信号TSENの電圧が第1基準電圧VR1,第3基準電圧VR3,第5基準電圧VR5,第7基準電圧VR7のいずれかに近い温度範囲では、温度の上昇とともにほぼ線形に減少し、温度検出信号TSENの電圧が第2基準電圧VR2,第4基準電圧VR4,第6基準電圧VR6のいずれかに近い温度範囲では、温度の上昇とともにほぼ線形に増加する残差補正電圧Vzanを発生させることができる。従って、第1実施形態の温度補償型発振回路2及び発振器1によれば、このようなうねりのパターンを有する温度特性の残差補正電圧Vzanによって、n次近似温度補償回路23による補正後の周波数偏差を補正することができるので、回路規模や位相雑音の増加を抑えながら周波数精度をより向上させることができる。
なお、例えば、n次近似温度補償回路23による振動子3の周波数温度特性を近似するn次関数の次数nが5の場合と6以上の場合とで発振信号の周波数偏差が大きく変化しないのであれば、周波数精度の向上と回路面積の増加(コストアップ)とのトレードオフを考慮して、次数n=5としてもよい。
1−2.第2実施形態
発振信号の周波数偏差をより小さくして周波数精度をより高くするために、第2実施形態では、発振器1毎に残差補正電圧Vzanの温度特性を調整可能な構成にする。以下、第2実施形態の発振器1について、第1実施形態と同様の説明は省略又は簡略し、主として第1実施形態と異なる内容について説明する。
図10は、第2実施形態の発振器1における補償残差補正回路24の構成例を示す図である。図10の例では、図4に示した構成に対して、さらに、電圧調整回路249、ゲイン調整回路250及び電流調整回路251が付加されている。
電圧調整回路249(「基準信号調整回路」の一例)は、第1基準電圧VR1〜第7基準電圧VR7を調整するための回路である。例えば、電圧調整回路249は、記憶部28に記憶されている電圧調整値VADJに基づいて、電圧発生回路248が出力する7種類の電圧をそれぞれ増減させて調整された第1基準電圧VR1〜第7基準電圧VR7を出力してもよい。この第1基準電圧VR1〜第7基準電圧VR7は、それぞれ、バイポーラトランジスター241−1〜241−7のベース端子に入力される。例えば、第1基準電圧VR1を調整することにより、図11に示すように、電流Izanに含まれる電流I1がほぼ線形に変化する温度Tの範囲を変更することができる。図示を省略するが、同様に、第2基準電圧VR2〜第7基準電圧VR7をそれぞれ調整することにより、電流I2〜I7がほぼ線形に変化する温度Tの範囲をそれぞれ変更することができる。従って、第1基準電圧VR1〜第7基準電圧VR7をそれぞれ調整することにより、残差補正電圧Vzanが温度変化によってほぼ線形に変化する温度範囲を変更することができる。
ゲイン調整回路250(「温度信号調整回路」の一例)は、第1温度検出信号TSEN1〜第7温度検出信号TSEN7を調整するための回路である。例えば、ゲイン調整回路250は、記憶部28に記憶されているゲイン調整値GADJに基づいて、温度検出信号TSENの電圧をそれぞれG1倍〜G7倍にすることにより調整された第1温度検出信号TSEN1〜第7温度検出信号TSEN7を出力してもよい。第1温度検出信号TSEN1(「第1の温度信号」の一例)は、バイポーラトランジスター242−1〜242−7のベース端子に入力される。第2温度検出信号TSEN2(「第2の温度信号」の一例)は、バイポーラトランジスター242−2のベース端子に入力される。同様に、第3温度検出信号TSEN3〜第7温度検出信号TSEN7は、それぞれ、バイポーラトランジスター242−3〜242−7のベース端子に入力される。例えば、第1温度検出信号TSEN1を調整することにより、図12に示すように、電流Izanに含まれる電流I1がほぼ線形に変化する傾きを変更することができる。図示を省略するが、同様に、第2温度検出信号TSEN2〜第7温度検出信号TSEN7をそれぞれ調整することにより、電流I2〜I7がほぼ線形に変化する傾きをそれぞれ変更することができる。従って、第1温度検出信号TSEN1〜第7温度検出信号TSEN7をそれぞれ調整することにより、残差補正電圧Vzanが温度変化によってほぼ線形に変化する傾きを変更することができる。
電流調整回路251(「電流調整回路」の一例)は、一定電流Io1〜Io7を調整するための回路である。例えば、電流調整回路251は、記憶部28に記憶されている電流調整値IADJに基づいて、定電流源245−1〜245−7をそれぞれ制御して、一定電流Io1〜Io7を調整してもよい。例えば、電流Io1を調整することにより、図13に示すように、電流Izanに含まれる電流I1の最大値を変更することができる。図示を省略するが、同様に、電流Io2〜Io7をそれぞれ調整することにより、電流I2〜I7の最大値をそれぞれ変更することができる。従って、電流Io1〜Io7をそれぞれ調整することにより、残差補正電圧Vzanが温度変化によってほぼ線形に変化するピーク値を変更することができる。
第2実施形態の発振器1では、記憶部28(不揮発性メモリー281)には、前述した0次係数値A0、1次係数値A1、3次係数値A3、・・・、n次係数値An、基準温度調整値及び補償残差補正有効/無効選択ビット値とともに、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)(「第2の補正情報」の一例)が記憶されている。そして、発振器1の外部端子VCC(温度補償型発振回路2のP3端子)に所望の電源電圧が供給されると、不揮発性メモリー281に記憶されている係数値A0〜An、基準温度調整値、補償残差補正有効/無効選択ビット値、電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJがレジスター282に転送され、n次近似温度補償回路23、基準温度調整回路22、スイッチ回路25あるいは補償残差補正回路24に供給される。電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJは、例えば、補償残差補正回路24による補正が無効のときの発振器1の発振信号の周波数温度特性に基づいて算出され、不揮発性メモリー281に書き込まれる。
図14は、第2実施形態の発振器の製造方法の一例を示すフローチャート図である。図14において、図9と同様の工程には同じ符号を付している。本実施形態の発振器の製造方法は、図14に示す工程S10〜S60を含む。ただし、本実施形態の発振器の製造方法は、工程S10〜S60の一部を省略又は変更し、あるいは、他の工程を追加してもよい。
図14に示すように、本実施形態では、まず、第1実施形態(図9)と同様、工程S10〜工程S30を行う。
次に、補償残差補正回路24による補正を無効にした状態で、発振器1の周波数温度特性を測定する(複数の温度における発振信号の周波数を検査する)(工程S32)。この工程S32では、例えば、発振器1を恒温槽に収容し、恒温槽の温度を所望の温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で変えながら基準温度To(例えば、+25℃)を含むn+1点以上の温度で発振器1のOUT端子から出力される発振信号の周波数を測定し、補償残差補正回路24による補正を有効にした場合に周波数偏差が仕様を満たす見込みがあるか否かを検査する。補償残差補正回路24による補正を有効にしても周波数偏差が仕様を満たす見込みがない場合は、後続の工程S34以降を行わずに、発振器1を不合格品として破棄してもよい。
次に、工程S32における発振器1の周波数温度特性の測定結果に基づいて、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を算出して記憶部28に書き込む(工程S34)。
次に、第1実施形態(図9)と同様、補償残差補正回路24による補正を有効にした状態で、発振器1の周波数温度特性を測定する(複数の温度における発振信号の周波数を検査する)(工程S40)。
そして、発振器1が工程S40の検査に不合格の場合(発振器1が周波数偏差の仕様を満たさない場合)(工程S50のN)、工程S40の検査の実施が所定回数未満であれば(工程S60のN)、工程S40における発振器1の周波数温度特性の測定結果に基づいて、工程S34以降を再び行う。工程S40の検査が所定回数実施されても発振器1が合格しなければ、不合格品として破棄してもよい。
なお、工程S34において、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を記憶部28の不揮発性メモリー281に書き込んでもよいし、レジスター282に書き込んでもよい。後者の場合は、例えば、発振器1が工程S40の検査に合格した後に、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を不揮発性メモリー281に書き込めばよい。
図15は、第2実施形態の発振器の製造方法の他の一例を示すフローチャート図である。図15において、図14と同様の工程には同じ符号を付している。本実施形態の発振器の製造方法は、図15に示す工程S10〜S70を含む。ただし、本実施形態の発振器の製造方法は、工程S10〜S70の一部を省略又は変更し、あるいは、他の工程を追加してもよい。
図15の例では、まず、図14の例と同様、工程S10〜工程S30を行う。
次に、工程S30における0次〜n次の各係数値A0〜Anの算出結果に基づいて、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を算出(予測)して記憶部28に書き込む(工程S36)。この工程S36では、例えば、プログラムにより、補償残差補正回路24による補正を無効にした場合の発振器1の周波数温度特性を算出し、当該算出結果に基づき、補償残差補正回路24による補正を有効にした場合に周波数偏差が仕様を満たすための調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を予測する。補償残差補正回路24による補正を有効にしても周波数偏差が仕様を満たす見込みがない場合は、後続の工程S40以降を行わずに、発振器1を不合格品として破棄してもよい。
次に、図14の例と同様、工程S40の検査を行い、発振器1が工程S40の検査に不合格の場合(発振器1が周波数偏差の仕様を満たさない場合)(工程S50のN)、工程S40の検査の実施が所定回数未満であれば(工程S60のN)、工程S40における発振器1の周波数温度特性の測定結果に基づいて、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を算出して記憶部28に書き込む(工程S70)。そして、工程S40以降を再び行う。工程S40の検査が所定回数実施されても発振器1が合格しなければ、不合格品として破棄してもよい。
なお、工程S36及び工程S70において、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を記憶部28の不揮発性メモリー281に書き込んでもよいし、レジスター282に書き込んでもよい。後者の場合は、例えば、発振器1が工程S40の検査に合格した後に、補償残差補正回路24の調整値(電圧調整値VADJ、ゲイン調整値GADJ及び電流調整値IADJ)を不揮発性メモリー281に書き込めばよい。
図14の例の発振器1の製造方法の場合、必ず工程S32の測定が必要であるが、初回の補償残差補正回路24の調整値は、工程S32における実測結果に基づいて算出されるので、工程S40の検査の繰り返し回数を減らすことができる。一方、図14の例の発振器1の製造方法の場合、初回の補償残差補正回路24の調整値を予測によって算出するので、図14の例と比較すると工程S40の検査の繰り返し回数が増えやすいが、図14の工程S32の測定を省くことができる。
以上に説明したように、第2実施形態によれば、発振器1の製造工程において、n次近似温度補償回路23よって補正された発振信号の周波数温度特性に基づいて補償残差補正回路24の調整値を算出して補償残差補正回路24による補正動作を適切に設定することができる。特に、第2実施形態の温度補償型発振回路2及び発振器1によれば、n次近似温度補償回路23による補正後の発振信号の周波数偏差に応じて、残差補正電圧Vzanが温度変化によってほぼ線形に変化する温度範囲、傾き及びピーク値を調整することができるので、補償残差補正回路24による補正精度が向上し、発振信号の周波数精度をより向上させることができる。
1−3.第3実施形態
第1実施形態や第2実施形態では、広い温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で高い周波数精度を有する発振器1を実現するために、補償残差補正回路24は図4に示すような7つの差動対を有する構成であったが、第3実施形態では、基準温度To(例えば、+25℃)に近い温度範囲(例えば、+10℃〜+45℃の範囲)でのみ高い周波数精度が要求されるものとし、補償残差補正回路24を簡略化した構成とする。以下、第3実施形態の発振器1について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の説明は省略又は簡略し、主として第1実施形態又は第2実施形態と異なる内容について説明する。
図16は、第3実施形態の発振器1における補償残差補正回路24の構成例を示す図である。図16の例では、図10に示した構成に対して、バイポーラトランジスター241−1〜241−3,241−5〜241−7、バイポーラトランジスター242−1〜242−3,242−5〜242−7、抵抗243−1〜243−3,243−5〜243−7、抵抗244−1〜244−3,244−5〜244−7及び定電流源245−1〜245−3,245−5〜245−7が削除されている。
バイポーラトランジスター241−4(「第1のトランジスター」の一例)とバイポーラトランジスター242−4(「第2のトランジスター」の一例)とで差動対(「第1の差動対」の一例)が構成されている。バイポーラトランジスター241−4は、ベース端子に第4基準電圧VR4(「第1の基準信号」の一例)が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−4は、ベース端子に第4温度検出信号TSEN4(「第1の温度信号」の一例)が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。定電流源245−4(「第1の電流源」の一例)は、抵抗243−4,244−4を介して、バイポーラトランジスター241−4とバイポーラトランジスター242−4とで構成される差動対に一定電流Io4(「第1の電流」の一例)を流す。
演算増幅器246の非反転入力端子(+端子)にはリファレンス電圧Vrefが入力され、演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と出力端子とは抵抗247を介して接続されており、この演算増幅器246の出力電圧が残差補正電圧Vzanとして補償残差補正回路24から出力される。
電圧調整回路249(「基準信号調整回路」の一例)は、第4基準電圧VR4を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されている電圧調整値VADJに基づいて、電圧発生回路248が出力する電圧を増減させて調整された第4基準電圧VR4を出力してもよい。
ゲイン調整回路250(「温度信号調整回路」の一例)は、第4温度検出信号TSEN4を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されているゲイン調整値GADJに基づいて、温度検出信号TSENの電圧をG4倍にすることにより調整された第4温度検出信号TSEN4を出力してもよい。
電流調整回路251(「電流調整回路」の一例)は、一定電流Io4を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されている電流調整値IADJに基づいて、定電流源245−4を制御して、一定電流Io4を調整してもよい。
本実施形態では、基準温度TO(例えば、+25℃)に近い温度T4のときに第4温度検出信号TSEN4の電圧値が第4基準電圧VR4と一致するように構成されており、残差補正電圧Vzanは、Izan=I4として前出の式(3)で表されるため、残差補正電圧Vzanの温度特性は図17のようになる。
本実施形態でも、補償残差補正回路24による補正が無効のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性が図3に示したようなうねりのパターンを有する。従って、補償残差補正回路24による補正を有効にして、加算器233(図1参照)によって図17に示すような温度特性を有する残差補正電圧Vzanが加算された温度補償電圧VCOMPを発生させることで、基準温度TO(例えば、+25℃)に近い所望の温度範囲(例えば、+10℃〜+45℃の範囲)において、発振器1の出力信号(発振信号)の周波数偏差を小さくする(周波数精度を高くする)ことが可能となる。図18に、補償残差補正回路24による補正が有効のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性の一例を示す。図18において、横軸は温度、縦軸は周波数偏差である。このように、第3実施形態における補償残差補正回路24は、バイポーラトランジスター241−4の信号(電流I4)に基づいて、n次近似温度補償回路23によって補正(温度補償)される発振信号の周波数温度特性をさらに補正するための信号(残差補正電圧Vzan)を出力する。
なお、第3実施形態の発振器1の製造方法は、図14あるいは図15に示したのと同様の手順で実現される。
以上に説明したように、第3実施形態によれば、補償残差補正回路24の構成を簡略化することでコストを削減しながら、基準温度TO(例えば、+25℃)に近い所望の温度範囲(例えば、+10℃〜+45℃の範囲)において発振信号の周波数精度を向上させることが可能な温度補償型発振回路2及び発振器1を実現することができる。
1−4.第4実施形態
第1実施形態や第2実施形態では、広い温度範囲(例えば、−40℃〜+85℃)で高い周波数精度を有する発振器1を実現するために、補償残差補正回路24は図4に示すような7つの差動対を有する構成であったが、第4実施形態では、基準温度To(例えば、25℃)を含むより狭い温度範囲(例えば、−10℃〜+60℃)でのみ高い周波数精度が要求されるものとし、補償残差補正回路24を簡略化した構成とする。以下、第4実施形態の発振器1について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の説明は省略又は簡略し、主として第1実施形態又は第2実施形態と異なる内容について説明する。
図19は、第4実施形態の発振器1における補償残差補正回路24の構成例を示す図である。図19の例では、図10に示した構成に対して、バイポーラトランジスター241−1,241−2,241−6,241−7、バイポーラトランジスター242−1,242−2,242−6,242−7、抵抗243−1,243−2,243−6,243−7、抵抗244−1,244−2,244−6,244−7及び定電流源245−1,245−2,245−6,245−7が削除されている。
バイポーラトランジスター241−3(「第1のトランジスター」の一例)とバイポーラトランジスター242−3(「第2のトランジスター」の一例)とで差動対(「第1の差動対」の一例)が構成されている。バイポーラトランジスター241−3は、ベース端子に第3基準電圧VR3(「第1の基準信号」の一例)が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−3を介して定電流源245−3と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−3は、ベース端子に第3温度検出信号TSEN3(「第1の温度信号」の一例)が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−3を介して定電流源245−3と電気的に接続されている。定電流源245−3(「第1の電流源」の一例)は、抵抗243−3,244−3を介して、バイポーラトランジスター241−3とバイポーラトランジスター242−3とで構成される差動対に一定電流Io3(「第1の電流」の一例)を流す。
また、バイポーラトランジスター241−4(「第3のトランジスター」の一例)とバイポーラトランジスター242−4(「第4のトランジスター」の一例)とで差動対(「第2の差動対」の一例)が構成されている。バイポーラトランジスター241−4は、ベース端子に第4基準電圧VR4(「第2の基準信号」の一例)が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−4は、ベース端子に第4温度検出信号TSEN4(「第2の温度信号」の一例)が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−4を介して定電流源245−4と電気的に接続されている。定電流源245−4(「第2の電流源」の一例)は、抵抗243−4,244−4を介して、バイポーラトランジスター241−4とバイポーラトランジスター242−4とで構成される差動対に一定電流Io4(「第2の電流」の一例)を流す。
また、バイポーラトランジスター241−5とバイポーラトランジスター242−5とで差動対が構成されている。バイポーラトランジスター241−5は、ベース端子に第5基準電圧VR5が入力され、コレクター端子が基準電圧供給線240と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗243−5を介して定電流源245−5と電気的に接続されている。バイポーラトランジスター242−5は、ベース端子に第5温度検出信号TSEN5が入力され、コレクター端子が演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗244−5を介して定電流源245−5と電気的に接続されている。定電流源245−5は、抵抗243−5,244−5を介して、バイポーラトランジスター241−5とバイポーラトランジスター242−5とで構成される差動対に一定電流Io5を流す。
演算増幅器246の非反転入力端子(+端子)にはリファレンス電圧Vrefが入力され、演算増幅器246の反転入力端子(−端子)と出力端子とは抵抗247を介して接続されており、この演算増幅器246の出力電圧が残差補正電圧Vzanとして補償残差補正回路24から出力される。
電圧調整回路249(「基準信号調整回路」の一例)は、第3基準電圧VR3〜第5基準電圧VR5を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されている電圧調整値VADJに基づいて、電圧発生回路248が出力する3種類の電圧をそれぞれ増減させて調整された第3基準電圧VR3〜第5基準電圧VR5を出力してもよい。
ゲイン調整回路250(「温度信号調整回路」の一例)は、第3温度検出信号TSEN3〜第5温度検出信号TSEN5を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されているゲイン調整値GADJに基づいて、温度検出信号TSENの電圧をそれぞれG3倍〜G5倍にすることにより調整された第3温度検出信号TSEN3〜第5温度検出信号TSEN5を出力してもよい。
電流調整回路251(「電流調整回路」の一例)は、一定電流Io3〜Io5を調整するための回路であり、例えば、記憶部28に記憶されている電流調整値IADJに基づいて、定電流源245−3〜245−5をそれぞれ制御して、一定電流Io3〜Io5を調整してもよい。
本実施形態では、温度T3のときに第3温度検出信号TSEN3の電圧値が第3基準電圧VR3と一致し、基準温度TO(例えば、+25℃)に近い温度T4(>T3)のときに第4温度検出信号TSEN4の電圧値が第4基準電圧VR4と一致し、温度T5(>T4)のときに第5温度検出信号TSEN5の電圧値が第3基準電圧VR3と一致するように構成されている。残差補正電圧Vzanは、Izan=I3+I4+I5として前出の式(3)で表されるため、残差補正電圧Vzanの温度特性は図20のようになる。
本実施形態でも、補償残差補正回路24による補正が無効のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性が図3に示したようなうねりのパターンを有する。従って、補償残差補正回路24による補正を有効にして、加算器233(図1参照)によって図20に示すような温度特性を有する残差補正電圧Vzanが加算された温度補償電圧VCOMPを発生させることで、基準温度TO(例えば、+25℃)を含む所望の温度範囲(例えば、−10℃〜+60℃)において、発振器1の出力信号(発振信号)の周波数偏差を小さくする(周波数精度を高くする)ことが可能となる。図21に、補償残差補正回路24による補正が有効のときの発振器1の出力信号(発振信号)の周波数温度特性の一例を示す。図21において、横軸は温度、縦軸は周波数偏差である。このように、第4実施形態における補償残差補正回路24は、バイポーラトランジスター242−3,241−4,242−5の各信号(電流I3〜I5)に基づいて、n次近似温度補償回路23によって補正(温度補償)される発振信号の周波数温度特性をさらに補正するための信号(残差補正電圧Vzan)を出力する。
なお、第4実施形態の発振器1の製造方法は、図14あるいは図15に示したのと同様の手順で実現される。
以上に説明したように、第4実施形態によれば、補償残差補正回路24の構成を簡略化することでコストを削減しながら、基準温度TO(例えば、+25℃)を含む所望の温度範囲(例えば、−10℃〜+60℃)において発振信号の周波数精度を向上させることが可能な温度補償型発振回路2及び発振器1を実現することができる。
1−5.変形例
第1実施形態〜第4実施形態の発振器1において、加算器233において残差補正電圧Vzanが加算されず、温度補償電圧VCOMPがバラクター266,267の一方のカソードに印加され、残差補正電圧Vzanがスイッチ回路25を介してバラクター266,267の他方のカソードに印加される構成に変形してもよい。このようにすれば、残差補正電圧Vzanが印加されるバラクターの周波数−電圧ゲインを小さくすることができるため、補償残差補正回路24の電圧ゲインを大きく取ることができるので、設計の容易化や低ノイズ化が可能となる。
また、第2実施形態〜第4実施形態の発振器1において、補償残差補正回路24を、電圧調整回路249、ゲイン調整回路250及び電流調整回路251の一部のみを有する構成に変形してもよい。
また、第1実施形態〜第4実施形態の発振器1において、補償残差補正回路24は、演算増幅器246を備えていなくてもよい(抵抗247のみでも電流電圧変換は可能である)。
2.電子機器
図22は、本実施形態の電子機器の構成の一例を示す機能ブロック図である。また、図23は、本実施形態の電子機器の一例であるスマートフォンの外観の一例を示す図である。
本実施形態の電子機器300は、発振器310、CPU(Central Processing Unit)320、操作部330、ROM(Read Only Memory)340、RAM(Random Access Memory)350、通信部360、表示部370を含んで構成されている。なお、本実施形態の電子機器は、図22の構成要素(各部)の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
発振器310は、温度補償型発振回路312と振動子313とを備えている。温度補償型発振回路312は、振動子313を発振させて発振信号を発生させる。この発振信号は発振器310の外部端子からCPU320に出力される。
CPU320は、ROM340等に記憶されているプログラムに従い、発振器310から入力される発振信号をクロック信号として各種の計算処理や制御処理を行う処理部である。具体的には、CPU320は、操作部330からの操作信号に応じた各種の処理、外部装置とデータ通信を行うために通信部360を制御する処理、表示部370に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理等を行う。
操作部330は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号をCPU320に出力する。
ROM340は、CPU320が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶する記憶部である。
RAM350は、CPU320の作業領域として用いられ、ROM340から読み出されたプログラムやデータ、操作部330から入力されたデータ、CPU320が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する記憶部である。
通信部360は、CPU320と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
表示部370は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、CPU320から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。表示部370には操作部330として機能するタッチパネルが設けられていてもよい。
発振器310として例えば上述した各実施形態の発振器1を適用し、あるいは、温度補償型発振回路312として上述した各実施形態における温度補償型発振回路2を適用することにより、CPU320は周波数偏差の小さい(周波数精度の高い)発振信号に基づいて各種の処理を行うことができるので、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
このような電子機器300としては種々の電子機器が考えられ、例えば、パーソナルコンピューター(例えば、モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター)、スマートフォンや携帯電話機などの移動体端末、ディジタルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えば、インクジェットプリンター)、ルーターやスイッチなどのストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、移動体端末基地局用機器、テレビ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、リアルタイムクロック装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲーム用コントローラー、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(歩行者位置方位計測)等が挙げられる。
本実施形態の電子機器300の一例として、上述した発振器310を基準信号源として用いて、例えば、端末と有線または無線で通信を行う端末基地局用装置等として機能する伝送装置が挙げられる。発振器310として、例えば上述した各実施形態の発振器1を適用することにより、例えば通信基地局などに利用可能な、周波数精度の高い、高性能、高信頼性を所望される電子機器300を従来よりも低コストで実現することも可能である。
また、本実施形態の電子機器300の他の一例として、通信部360が外部クロック信号を受信し、CPU320(処理部)が、当該外部クロック信号と発振器310の出力信号(内部クロック信号)とに基づいて、発振器310の周波数を制御する周波数制御部と、を含む、通信装置であってもよい。この通信装置は、例えば、ストレータム3などの基幹系ネットワーク機器やフェムトセルに使用される通信機器であってもよい。
3.移動体
図24は、本実施形態の移動体の一例を示す図(上面図)である。図24に示す移動体400は、発振器410、エンジンシステム、ブレーキシステム、キーレスエントリーシステム等の各種の制御を行うコントローラー420,430,440、バッテリー450、バックアップ用バッテリー460を含んで構成されている。なお、本実施形態の移動体は、図24の構成要素(各部)の一部を省略し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
発振器410は、不図示の温度補償型発振回路と振動子とを備えており、温度補償型発振回路は振動子を発振させて発振信号を発生させる。この発振信号は発振器410の外部端子からコントローラー420,430,440に出力され、例えばクロック信号として用いられる。
バッテリー450は、発振器410及びコントローラー420,430,440に電力を供給する。バックアップ用バッテリー460は、バッテリー450の出力電圧が閾値よりも低下した時、発振器410及びコントローラー420,430,440に電力を供給する。
発振器410として例えば上述した各実施形態の発振器1を適用し、あるいは、発振器410が備える温度補償型発振回路として上述した各実施形態における温度補償型発振回路2を適用することにより、コントローラー420,430,440は周波数偏差の小さい(周波数精度の高い)発振信号に基づいて各種の制御を行うことができるので、信頼性の高い移動体を実現することができる。
このような移動体400としては種々の移動体が考えられ、例えば、自動車(電気自動車も含む)、ジェット機やヘリコプター等の航空機、船舶、ロケット、人工衛星等が挙げられる。
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。