JP2018006027A - 電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケル正極内にNi2O3Hが生成されることにより満充電容量が低下したニッケル水素電池の再利用可否を容易に判定することできる電池システムを提供する。【解決手段】メモリ105は、組電池10の電圧及び温度と、組電池10の正極内におけるNi2O3Hの生成量との関係を示すデータを記憶する。ECU100は、ニッケル水素電池の使用中に、組電池10の電圧及び温度並びに上記データを用いることによって、ニッケル水素電池の正極内におけるNi2O3Hの生成量を推定する。ECU100は、推定された生成量を用いて、組電池10の再利用の可否を判定する。【選択図】図1

Description

この発明は、電池システムに関し、特に、ニッケル水素電池の再利用の可否を判定する電池システムに関する。
特開2011−233423号公報(特許文献1)は、ニッケル正極を備えるアルカリ蓄電池(ニッケル水素電池)を開示する。ニッケル正極内においてNiHが生成されると、電池の満充電容量が低下する。このアルカリ蓄電池においては、ニッケル正極の長さ及び高さ(幅)を適切に設計することによって、ニッケル正極内におけるNiHの生成が抑制される。このアルカリ蓄電池によれば、ニッケル正極内におけるNiHの生成が抑制されるため、アルカリ蓄電池の満充電容量の低下を抑制することができる(特許文献1参照)。
特開2011−233423号公報
上述のように、ニッケル正極内にNiHが生成されると、ニッケル水素電池の満充電容量が低下する。近年、ニッケル水素電池の再利用が注目されており、満充電容量が低下したとしてもニッケル水素電池を再利用することができる可能性がある。
しかしながら、ニッケル水素電池の再利用可否を判定する場合に、改めてNiHの総生成量を測定する必要があるとすると、そのための工数及びコスト負担が大きくなり再利用可否の判定が困難になる。
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ニッケル正極内にNiHが生成されることにより満充電容量が低下したニッケル水素電池の再利用可否を容易に判定することできる電池システムを提供することである。
この発明のある局面に従う電池システムは、ニッケル水素電池と、制御装置とを備える。制御装置は、メモリを含み、ニッケル水素電池の再利用の可否を判定する。メモリは、ニッケル水素電池の電圧及び温度と、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量との関係を示すデータを記憶する。制御装置は、ニッケル水素電池の使用中に、ニッケル水素電池の電圧及び温度並びに上記データを用いることによって、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量を推定する。制御装置は、推定された生成量を用いて、ニッケル水素電池の再利用の可否を判定する。
この電池システムにおいては、NiHの生成量がニッケル水素電池の使用中に推定される。そして、ニッケル水素電池の再利用可否の判定に、その推定されたNiHの生成量が用いられる。したがって、この電池システムによれば、再利用可否の判定時にNiHの生成量を改めて測定しなくても、ニッケル水素電池の使用中に推定されたNiHの生成量を用いることによりニッケル水素電池の再利用可否を容易に判定することができる。
この発明によれば、ニッケル正極内にNiHが生成されることにより満充電容量が低下したニッケル水素電池の再利用可否を容易に判定することできる電池システムを提供することができる。
実施の形態1に従う電池システムが搭載される車両の構成を概略的に示す図である。 監視ユニットの詳細な構成図である。 正極内におけるNiHの存在比率と満充電容量との関係に関する実験結果の一例を示す図である。 第1の実験における処理手順を示すフローチャートである。 意図的にニッケル水素電池にNiHを多く生成させた正極のX線回折法による分析結果(回折パターン)の一例を示す図である。 第1の実験によって求められた、試料内のNiHの割合と、X線回折法におけるピーク面積比との関係の一例を示す図である。 第2の実験における処理手順を示すフローチャートである。 第2の実験によって得られた結果がまとめられたマップの一例を示す図である。 組電池の再利用可否の判定処理手順を示すフローチャートである。 組電池の再利用手順を示すフローチャートである。 実施の形態2における、組電池の再利用手順を示すフローチャートである。
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
(電池システムの構成)
図1は、本実施の形態1に従う電池システム2が搭載される車両1の構成を概略的に示す図である。以下では、車両1がハイブリッド車両である場合について説明するが、本実施の形態1による電池システム2は、ハイブリッド車両に搭載されるものに限定されず、ニッケル水素電池を搭載した車両全般、さらには車両以外の用途にも適用可能である。
図1を参照して、車両1は、電池システム2と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)30と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)41,42と、エンジン50と、動力分割機構60と、駆動軸70と、駆動輪80とを備える。電池システム2は、組電池10と、監視ユニット20と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)100とを備える。
エンジン50は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギによって、クランクシャフトを回転させる駆動力を発生する。MG41,42は、発電機としても電動機としても機能する。
MG41は、主として、動力分割機構60を通じて伝達されるエンジン50の出力の一部を用いて発電する発電機として動作する。MG41が発電した電力は、PCU30を通じてMG42又は組電池10に供給される。
MG42は、組電池10からの電力及びMG41の発電電力の少なくとも一方によって駆動される。MG42の駆動力は、駆動軸70に伝達される。また、車両1の制動時には、MG42は、駆動輪80の回転力により駆動されることによって発電機として動作する。MG41,42の発電電力は、PCU30を通じて組電池10に充電される。
組電池10は、MG41,42を駆動するための電力を蓄える。組電池10は、直列に接続された複数のニッケル水素単電池(単セル)を含む。監視ユニット20は、電圧センサ群21と、電流センサ22と、温度センサ群23とを含む。電圧センサ群21及び温度センサ群23は、複数の電圧センサ及び複数の温度センサをそれぞれ含む(後述)。
図2は、監視ユニット20の詳細な構成図である。図2を参照して、組電池10は、複数のニッケル水素単電池10B1〜10BXを含む。電圧センサ群21は、複数の電圧センサ21B1〜21BXを含む。温度センサ群23は、複数の温度センサ23B1〜23BXを含む。
電圧センサ21B1〜21BXは、ニッケル水素単電池10B1〜10BXの端子間電圧(電圧VBi(「i」は、1〜Xのいずれかの自然数である。))をそれぞれ検出する。電流センサ22は、組電池10の充放電電流(電流IB)を検出する。温度センサ23B1〜23BXは、ニッケル水素単電池10B1〜10BXの温度(温度TBi)をそれぞれ検出する。各センサは、検出結果を示す信号をECU100に出力する。
再び図1を参照して、PCU30は、ECU100からのスイッチング指令に従って、組電池10とMG41,42との間で双方向の電力変換を実行するように構成される。PCU30は、MG41,42の状態をそれぞれ別々に制御可能に構成されており、たとえば、MG41を回生(発電)状態にしつつ、MG42を力行状態にすることができる。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、入出力インターフェイスと(いずれも図示せず)、メモリ105とを含んで構成される。ECU100は、各センサからの信号及びメモリ105に記憶された情報に基づいてエンジン50及びPCU30を制御することによって、組電池10の充放電を制御する。
(ニッケル水素電池の再利用可否判定)
組電池10に高電圧が印加されると、組電池10の正極内にNiHが生成される。また、特に高温環境下でNiHの生成は顕著である。すなわち、組電池10の使用状況に応じて、NiHは正極内に徐々に蓄積される。正極内に蓄積されるNiHが増加するほど、組電池10の満充電容量は低下する。
図3は、正極内におけるNiHの存在比率と満充電容量との関係に関する実験結果の一例を示す図である。図3を参照して、横軸は正極内におけるNiHの存在比率を示し、縦軸は満充電容量を示す。この実験結果から、NiHの存在比率が高まると満充電容量が低下することが分かる。
近年、ニッケル水素電池の再利用が注目されており、満充電容量が低下したとしても組電池10を再利用することができる可能性がある。しかしながら、組電池10の再利用判定をする場合に改めて正極内におけるNiHの総生成量を測定する必要があるとすると、そのための工数及びコストの負担が大きくなり再利用可否の判定が困難になる。
そこで、本実施の形態1に従う電池システム2においては、以下の構成が採用される。メモリ105は、組電池10の電圧及び温度と、正極内におけるNiHの生成量との関係を示すマップ(データ)を記憶する。ECU100は、組電池10の使用中(たとえば、車両1のシステム作動中)に、組電池10の電圧及び温度並びに上記マップを用いることによって、NiHの生成量を推定する。ECU100は、推定された生成量を用いて、組電池10の再利用の可否を判定する。
電池システム2においては、NiHの生成量が組電池10の使用中に推定される。そして、組電池10の再利用可否の判定に、その推定されたNiHの生成量が用いられる。したがって、電池システム2によれば、再利用可否の判定時にNiHの生成量を改めて測定しなくても、組電池10の使用中に推定されたNiHの生成量を用いることにより組電池10の再利用可否を容易に判定することができる。
上述のマップは、複数の実験を通じて予め作成される。以下に、マップの作成方法についてまず説明し、その後、組電池10の再利用について説明する。
(マップ作成)
マップ作成のための実験は、たとえば次の順に行なわれる。まず、正極内のNiHの混入量と、X線回折法を用いて正極を分析した場合のピーク面積比との関係を調べるための実験(以下「第1の実験」とも称する。)が行なわれる。その後、耐久試験(後述)を経たニッケル水素単電池及び第1の実験の結果を用いて、耐久条件(電圧及び温度)と、正極内におけるNiHの生成量との関係を調べるための実験(以下「第2の実験」とも称する。)が行なわれる。第2の実験においては、最終的に、耐久条件(電圧及び温度)と、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量との関係を示すマップが作成される。以下、第1及び第2の実験について順に説明する。
図4は、第1の実験における処理手順を示すフローチャートである。図4を参照して、このフローチャートに示される処理は、実験者により行なわれる。
実験者は、新品の電極(正極)粉末に所定量(たとえば、所定量Q1)のNiH粉末を均一に混ぜ込んだ試料を作製する(ステップS100)。その後、実験者は、X線回折法により試料の分析を行なう(ステップS110)。具体的には、実験者は、予め定めた回折角度のX線のピーク面積を測定する。X線の回折角度をどのように定めるかについて次に説明する。
図5には、意図的に組電池10にNiHを多く生成させた後、X線回折法によって正極を分析した結果(回折パターン)を一例として示す。図5を参照して、横軸は回折角度(2θ)を示し、縦軸は回折強度を示す。極端にNiHを生成させた正極の完全放電時には、NiH、β−Ni(OH)、及び金属Ni(集電体)が含まれ得る。なお、完全放電されていない場合は、β−NiOOHも含まれ得る。
「◇」の位置に対応する回折角度における回折ピークは、NiHによる回折の影響を含む。「○」の位置に対応する回折角度における回折ピークは、β−Ni(OH)による回折の影響を含む。「×」の位置に対応する回折角度における回折ピークは、金属Niによる回折の影響を含む。
たとえば、回折角度D1,D2,D3、及びD4における回折ピークは、主にNiH(「◇」)による回折の影響を受け、その他の化合物による回折の影響をほとんど受けない。したがって、実験者は、D1,D2,D3、及びD4のいずれかの回折角度のX線を用いることにより、NiHに起因する回折ピークの面積を測定することができる。本実施の形態1においては、たとえば、回折角度D1のX線ピークがX線回折法による分析に用いられる。また、たとえば、回折角度D1,D2,D3、及びD4の合算面積をX線回折法における分析に用いてもよい。
再び図4を参照して、ステップS110においてX線回折法による試料の分析が行なわれると、実験者は、分析結果である回折角度D1におけるピーク面積を記録する(ステップS120)。以上のように、ステップS100〜S120の処理を通じて、所定量(たとえば、所定量Q1)のNiHが試料内に混入している場合の、回折角度D1におけるピーク面積が求められる。
次に、NiHと同様、Ni(OH)に帰属される回折ピーク(たとえば、図5に示したD’1,D’2)に着目して、NiHが所定量(Q1)混入されたときのD’1面積を算出する。
第1の実験においては、試料内に混入するNiHの量を変更して(たとえば、所定量Q2,Q3等)、ステップS100〜S120の処理が複数回行なわれる。その結果、試料内のNiHの割合(NiH量/(Ni(OH)量+NiH量))と、回折角度D1におけるピーク面積比(D1/(D1+D’1))との関係を求めることができる。
図6は、第1の実験を通じて求められた、試料内のNiHの割合と、X線回折法におけるピーク面積比との関係の一例を示す図である。図6を参照して、横軸は試料内のNiHの割合(NiH量/(Ni(OH)量+NiH量))を示し、縦軸はX線回折法におけるピーク面積比(D1/(D1+D’1))を示す。
試料内に所定量Q1,Q2,Q3のNiHを混入させた場合には、回折角度D1におけるピーク面積比がそれぞれS1,S2,S3となった。以上の実験結果から、試料内のNiHの割合と回折角度D1におけるピーク面積比との関係として、たとえば、図6に示される関係を求めることができる。試料内のNiHの割合と回折角度D1におけるピーク面積比との関係を求めることにより、第1の実験は終了する。なお、ここではピーク面積に基づいて図6の関係を規定したが、たとえば、ピーク強度に基づいて図6の関係を規定してもよい。
図7は、第2の実験における処理手順を示すフローチャートである。図7を参照して、このフローチャートに示される処理は、実験者により行なわれる。
実験者は、耐久条件(電圧及び温度)を設定した上で、新品の組電池10内の単セルについて耐久試験を行なう(ステップS200)。たとえば、この耐久試験において、単セルは、恒温槽内に設けられた充電システムに設置される。恒温槽内の温度は、実験者により設定された温度に維持される。そして、一定電圧による単セルの充電が行なわれる。この一定電圧のうち、金属抵抗により上昇する電圧は、単セルの正極内におけるNiHの生成に寄与しないと考えられる。
耐久試験は、たとえば、単セルのSOC値が所定範囲内(たとえば、50%〜80%)に収まるように、所定時間の充電と所定時間の放電とを繰り返すことにより行なわれる。所定範囲は、たとえば、電池システム2においてSOC値が制御される制御範囲である。なお、耐久試験は、たとえば、全体として数日〜数ヵ月かけて行なわれる。
ステップS200において耐久試験が終了すると、実験者は、セルを解体して正極を取り出し、X線回折法による分析を行なう(ステップS210)。その後、実験者は、電極内のNiHの割合とX線回折法におけるピーク面積比との関係(第1の実験において導出(図6))と、分析結果であるピーク面積比とを用いることによって、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量を推定する(ステップS220)。
たとえば、ピーク面積がS10である場合には、NiHの生成比はQ10と推定される(図6)。推定されたNiHの生成比(Q10)から算出することができるNiHの生成量を耐久試験における総充電時間で除算することにより、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位充電時間当たりの生成量を算出することができる。なお、耐久試験の時間ではなく、耐久試験における総充電時間で除算が行なわれる理由は、NiHは組電池10にある程度の電圧が印加されなければ生成されず、放電時には生成されにくいものと考えられるからである。本実施の形態1において、単位時間は、たとえば1秒である。
その後、実験者は、ステップS220において推定されたNiHの単位時間当たりの生成量を、設定された耐久条件(電池電圧及び電池温度)から導かれるセルの電圧及び温度における結果として記録する(ステップS230)。以上のように、ステップS200〜S230の処理を通じて、設定された耐久条件における、ニッケル水素単電池でのNiHの単位時間当たりの生成量が求められる。
第2の実験においては、耐久条件を変更して、ステップS200〜S230の処理が複数回行なわれる。その結果、セルの電圧及び温度と、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量との関係を求めることができる。これにより、第2の実験は終了する。
図8は、第2の実験を通じて得られた結果がまとめられたマップの一例を示す図である。図8を参照して、横軸は耐久条件の温度を示し、縦軸は耐久条件の電圧を示す。
マップ200においては、セル温度(T0,T1,T2・・・)とセル電圧(V0,V1,V2・・・)との組み合わせごとに、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量(W00,W01,W10・・・)が対応付けられている。なお、電圧(V0,V1,V2・・・)は、セル電圧から金属抵抗に由来する電圧上昇分が除かれた値である。NiHの単位時間当たりの生成量(W00,W01,W10・・・)は、第2の実験を通じて得られた結果である。本実施の形態1に従う電池システム2においては、第1及び第2の実験を通じてマップ200が予め作成され、作成されたマップ200はメモリ105に記憶される。以下、マップ200を用いることによる、組電池10の再利用可否の判定処理手順及び再利用手順について順に説明する。
(再利用可否の判定処理)
図9は、組電池10の再利用可否の判定処理手順を示すフローチャートである。図9を参照して、このフローチャートに示される処理は、上記単位時間を1サイクルとしてECU100により繰り返し実行される。なお、1サイクル前に推定された各セル(10B1〜10BX)におけるNiHの総生成量は、メモリ105に記憶されている。
ECU100は、ステップS300〜S330の処理を繰り返し実行することにより、各セルにおけるNiHの総生成量を順に更新する。これにより、各セルのNiHに起因する劣化度合いが認識される。セルごとに劣化度合いを認識する理由は、組電池10内の温度ばらつきにより、セルごとに劣化ばらつきが生じる可能性があるからである。たとえば、ステップS300〜S330の処理は、車両1の走行中等の車両システムの作動中に実行される。
ECU100は、たとえば、ニッケル水素単電池10B1に対応する電圧センサ21B1及び温度センサ23B1、並びに電流センサ22から、電圧VB1、温度TB1、及び電流IBを示す信号をそれぞれ取得する(ステップS300)。ECU100は、電圧VB1から金属抵抗による電圧上昇分を減算した電圧を算出する。なお、電圧上昇分の電圧は、予め認識されている金属抵抗と電流IBとに基づいて算出される。
その後、ECU100は、メモリ105に記憶されたマップ200を参照して、上記で算出された電圧及び温度TB1に対応する、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量を示す情報を取得する(ステップS310)。ECU100は、メモリ105に記憶された1サイクル前の、ニッケル水素単電池10B1におけるNiHの総生成量に、ステップS310において算出されたNiHの生成量を加算することにより、ニッケル水素単電池10B1におけるNiHの総生成量を更新する(ステップS320)。
その後、ECU100は、すべてのニッケル水素単電池10B1〜10BXにおいて、NiHの総生成量が更新されたか否かを判定する(ステップS330)。いずれかのセルについてNiHの総生成量が更新されていないと判定されると(ステップS330においてNO)、処理は再びステップS300に移行し、NiHの総生成量が更新されていないセルに関して処理が継続される。
すべてのセルにおいてNiHの総生成量が更新されたと判定されると(ステップS330においてYES)、ECU100は、操作部(不図示)を通じて作業者(たとえば、車両1の使用者やリサイクル業者)から組電池10の再利用可否判定の指示を受けたか否かを判定する(ステップS340)。再利用可否判定の指示を受けていないと判定されると(ステップS340においてNO)、処理はリターンに移行する。
一方、再利用可否判定の指示を受けたと判定されると(ステップS340においてYES)、ECU100は、更新されたNiHの総生成量がセルの各々において所定量Q1以下であるか否かを判定する(ステップS350)。所定量Q1は、たとえば、セルが再利用に値する最低限の満充電容量を有している場合のNiHの総生成量である。
更新されたNiHの総生成量がセルの各々において所定量Q1以下であると判定されると(ステップS350においてYES)、ECU100は、組電池10が電池パックのまま再利用可能であると判定する(ステップS360)。一方、少なくともいずれかのセルにおいてNiHの総生成量が所定量Q1を上回っていると判定されると(ステップS350においてNO)、ECU100は、組電池10に含まれる一部又は全部のセル(NiHの総生成量が所定量Q1を上回っているセル)が再利用不可能であると判定する(ステップS370)。たとえば、ステップS360,S370における判定結果は、作業者が用いる端末に転送され、端末に設けられたディスプレイ(不図示)に表示される。たとえば、ステップS370においては、いずれのセルが再利用可能で、いずれのセルが再利用不可能であるかを示す画像がディスプレイに表示される。また、たとえば、再利用可能なセルの満充電容量又はNiHの総生成量を示す画像がディスプレイに表示される。
このように、本実施の形態1に従う電池システム2において、ECU100は、たとえば車両1のシステム作動中等の組電池10の使用中にセル毎のNiHの総生成量を推定する。そして、ECU100は、推定された総生成量を用いることによって、組電池10の再利用可否を判定する。したがって、電池システム2によれば、組電池10の再利用可否の判定時にNiHの総生成量を改めて測定しなくても、既に推定されているNiHの総生成量を用いることにより組電池10の再利用可否を容易に判定することができる。
(再利用手順)
図10は、組電池10の再利用手順を示すフローチャートである。図10を参照して、このフローチャートに示される作業は、車両1において組電池10の再利用可否の判定処理が行なわれた後に、作業者により行なわれる。
作業者は、組電池10の再利用可否の判定結果を確認することにより、組電池10がその電池パックのまま再利用可能であるか否かを判定する(ステップS400)。組電池10が電池パックのまま再利用可能であると判定されると(ステップS400においてYES)、作業者はステップS430(後述)の作業を行なう。
一方、組電池10が電池パックのまま再利用することができないと判定されると(ステップS400においてNO)、作業者は、電池パックを解体し、NiHの総生成が所定量Q1以下のセルのみを回収する(ステップS410)。また、作業者は、並行して他の電池パックにおいても、NiHの総生成が所定量Q1以下のセルを回収する。
その後、作業者は、満充電容量が近いセル(ステップS410において回収されたセルを含む。)を集めて電池パックを再構成する(ステップS420)。これは、電池パックに含まれる各セルの満充電容量が近いほど、車両1上において電池パックを効率的に利用することができるからである。なお、作業者は、各セルについて、NiHの総生成量から満充電容量を推定することができる。
電池パックが再構成されると、作業者は、再構成された電池パックのリフレッシュ充放電を行なう。また、ステップS400において組電池10がその電池パックのまま再利用可能であると判定されると(ステップS400においてYES)、作業者は、組電池10のリフレッシュ充放電を行なう(ステップS430)。これにより、電池内部で生じたメモリ効果に由来する放電時の電圧降下や充電時の電圧上昇を解消することができる。その後、作業者がリフレッシュ充放電が完了した電池パックを車両1に搭載することにより、電池パックは再利用される(ステップS440)。
上述のように、本実施の形態1に従う電池システム2においては、NiHの総生成量が車両1上における組電池10の使用中に予め推定されている。したがって、予め推定されているNiHの総生成量を用いて行なわれる組電池10の再利用可否判定の結果を参照することにより、作業者は、組電池10の再利用を容易に行なうことができる。
[実施の形態2]
本実施の形態2においては、再利用される電池パックのグレード(ハイグレード又はノーマルグレード)がさらに認定される。以下、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
図11は、実施の形態2における、組電池10の再利用手順を示すフローチャートである。図11を参照して、このフローチャートに示される作業は、車両1において組電池10の再利用可否が判定された後に、作業者により行なわれる。なお、組電池10の再利用可否の判定は実施の形態1と同様の方法で行なわれる。
ステップS500〜S520及びステップS560〜S570の作業は、図10におけるステップS400〜S420,S430〜S440の作業とそれぞれ同様である。ステップS530において、作業者は、電池パックに含まれるすべてのセルの満充電容量が所定量F1以上であるか否かを判定する(ステップS530)。なお、所定量F1は、図9のステップS350で用いられた所定量Q1より大きい値である。
すべてのセルの満充電容量が所定量F1以上であると判定されると(ステップS530においてYES)、作業者は、再利用の対象となっている電池パックをハイグレードに認定する(ステップS540)。一方、いずれかのセルの満充電容量が所定量F1未満であると判定されると(ステップS530においてNO)、作業者は、再利用の対象となっている電池パックをノーマルグレードに認定する(ステップS550)。その後の処理は、実施の形態1(図10のステップS430〜S440)と同様である。
このように、本実施の形態2においては、再利用の対象となる電池パックのグレードが認定される。たとえば、このような電池パックを販売する業者は、使用者の様々なニーズ(電池パックの長期的利用や短期的利用等)に応じたグレードの電池パックを適正価格で販売することができる。
[他の実施の形態]
以上のように、この発明の実施の形態として上記の実施の形態1,2を説明した。しかしながら、この発明は必ずしも上記の実施の形態1,2に限定されない。ここでは、他の実施の形態の一例について説明する。
上記の実施の形態1,2においては、ニッケル水素単電池(10B1〜10BX)ごとに電圧及び温度を検知することとした。しかしながら、電圧及び温度を検知する単位は、これに限定されない。たとえば、隣接する複数(たとえば2つ)のセルを1つの監視単位として電圧及び温度を検知するようにしてもよい。ただし、監視単位に含むセルの数を決定する場合には、組電池10内での温度ばらつきが問題とならない範囲で決定することが好ましい。また、この場合には、監視単位(複数セル)毎に再利用可否を判定するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1,2においては、ニッケル水素単電池(単セル)を用いることによって、第2の実験における耐久試験が行なわれた。しかしながら、耐久試験を行なう単位は、単セルに限定されない。たとえば、組電池10(電池パック)を用いることによって、耐久試験を行なうこととしてもよいし、複数のニッケル水素単電池を1つの単位として耐久試験を行なうこととしてもよい。
また、実施の形態1,2においては、ニッケル水素単電池(10B1〜10BX)の電圧及び温度と、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量との関係がマップ200としてメモリ105に記憶された。しかしながら、上記関係は必ずしもマップ200としてメモリ105に記憶される必要はない。たとえば、第1及び第2の実験を通じて得られた結果を関係式として表し、その関係式(データ)をメモリ105に記憶するようにしてもよい。この場合には、この関係式を用いることにより、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量が求められる。
また、上記の実施の形態1,2においては、マップ200は、ニッケル水素単電池におけるNiHの単位時間当たりの生成量を保持することとした。しかしながら、マップ200が保持する対象はこれに限定されない。たとえば、マップ200は、ニッケル水素単電池における、NiHの生成に起因する満充電容量の単位時間当たりの低下量を保持することとしてもよい。この場合には、ECU100は、セルにおける満充電容量の低下量に基づいて、セルが再利用可能か否かを判定する。
また、上記の実施の形態1,2においては、セルの正極内のNiHの生成量がX線回折法を用いて分析された。しかしながら、NiHの生成量の分析方法はこれに限定されない。たとえば、熱分析(DTA−TG(Differential Thermal Analysis-Thermo Gravimetric))測定を用いてもよいし、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)測定を用いてもよい(Niの平均価数変化に着目する。)。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、2 電池システム、10 組電池、10B1,10B2,10BX ニッケル水素単電池、20 監視ユニット、21 電圧センサ群、21B1,21B2,21BX 電圧センサ、22 電流センサ、23 温度センサ群、23B1,23B2,23BX 温度センサ、30 PCU、41,42 MG、50 エンジン、60 動力分割機構、70 駆動軸、80 駆動輪、100 ECU、105 メモリ、200 マップ。

Claims (1)

  1. ニッケル水素電池と、
    メモリを含み、前記ニッケル水素電池の再利用の可否を判定する制御装置とを備え、
    前記メモリは、前記ニッケル水素電池の電圧及び温度と、前記ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量との関係を示すデータを記憶し、
    前記制御装置は、
    前記ニッケル水素電池の使用中に、前記ニッケル水素電池の電圧及び温度並びに前記データを用いることによって、前記ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量を推定し、
    推定された前記生成量を用いて、前記ニッケル水素電池の再利用の可否を判定する、電池システム。
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