以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1に示されるように、放射線検出器1Aは、パネル(基板)10と、放射線吸収層4と、電圧印加電極6と、保護部材7と、防湿層8と、を備えている。放射線検出器1Aは、例えばX線透過画像を形成するために、放射線としてX線を検出する固体撮像装置である。
図2に示されるように、パネル10は、ガラス等の絶縁性材料によって形成された支持基板11と、複数の画素Pが設けられた機能層12と、を有している。各画素Pは、電荷収集電極13と、キャパシタ14と、薄膜トランジスタ15と、を含んでいる。キャパシタ14の一方の電極は、電荷収集電極13に電気的に接続されている。キャパシタ14の他方の電極は、グランド電位に電気的に接続されている。薄膜トランジスタ15の一方の電流端子は、キャパシタ14の一方の電極と電荷収集電極13とを電気的に接続する配線に電気的に接続されている。薄膜トランジスタ15の他方の電流端子は、読出用配線Rに電気的に接続されている。薄膜トランジスタ15の制御端子は、行選択用配線Qに電気的に接続されている。
薄膜トランジスタ15は、電界効果トランジスタ(FET)又はバイポーラトランジスタとしての構成を有している。薄膜トランジスタ15がFETとしての構成を有している場合には、制御端子はゲートに相当し、電流端子はソース又はドレインに相当する。薄膜トランジスタ15がバイポーラトランジスタとしての構成を有している場合には、制御端子はベースに相当し、電流端子はコレクタ又はエミッタに相当する。
図3に示されるように、パネル10において、複数の画素Pは、マトリックス状に配置されている。画素Pm,nは、第m行第n列に位置する画素を意味する。mは1以上M(2以上の整数)以下の整数であり、nは1以上N(2以上の整数)以下の整数である。第m行に配置されたN個の画素Pm,nのそれぞれが含む薄膜トランジスタ15の制御端子は、第m行に配置された1本の行選択用配線Qmと電気的に接続されている。第n列に配置されたM個の画素Pm,nのそれぞれが含む薄膜トランジスタ15の他方の電流端子は、第n列に配置された1本の読出用配線Rnと電気的に接続されている。
図1及び図2に示されるように、放射線吸収層4は、パネル10における一方の側の表面10aに配置されている。つまり、放射線吸収層4は、パネル10に対して一方の側に配置されている。放射線吸収層4は、ペロブスカイト材料によって形成されている。当該ペロブスカイト材料としては、CH3NH3PbClxBryI(3-x-y)(0<x+y<3)、CH3NH3PbClxI(3-x)(0<x<3)、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbI3等のハロゲン化メチルアンモニウム鉛が例示される。放射線吸収層4では、入射したX線が吸収されると、その吸収量に応じて電荷(電子及び正孔)が生じる。
放射線吸収層4の厚さ(より具体的には、後述する平坦面41aにおける放射線吸収層4の厚さ)は、例えば1μm〜2mmである。放射線吸収層4の厚さが100μm以上であると、X線の吸収効率が向上する。放射線吸収層4の厚さが1mm以下であると、X線の吸収によって生じた電荷の消滅(つまり、電子と正孔との再結合による消滅)が抑制されて電荷の収集効率が向上する。
電圧印加電極6は、放射線吸収層4における一方の側の表面41に配置されている。つまり、電圧印加電極6は、放射線吸収層4に対して一方の側に配置されている。電圧印加電極6は、導電性材料によって形成されている。当該導電性材料としては、アルミニウム、金、銀、白金、チタン等の金属、スズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO2)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)等の導電性金属酸化物、導電性高分子等を含む有機系の導電性材料等が例示される。電圧印加電極6には、バイアス電圧供給電源21によってバイアス電圧が印加される。これにより、放射線吸収層4を介して互いに対向する電圧印加電極6と各画素Pの電荷収集電極13との間には、負の電位差が生じる。
図1に示されるように、保護部材7は、パネル10における一方の側の表面10aに配置されている。つまり、保護部材7は、パネル10に対して一方の側に配置されている。保護部材7は、放射線吸収層4の側面42を環状に包囲しており、放射線吸収層4の側面42に全周に渡って接触している。保護部材7は、放射線吸収層4及び電圧印加電極6に対して一方の側に開口領域Aを形成している。つまり、保護部材7は、放射線吸収層4及び電圧印加電極6を一方の側から覆っていない。保護部材7は、絶縁性材料によって形成されていてもよいし、或いは、導電性材料によって形成されていてもよい。保護部材7の材料としては、樹脂、フォトレジストの材料、ガラス、金属等が例示される。保護部材7が導電性材料によって形成されている場合には、保護部材7が定電位(例えば、グランド電位、基準電位等)に電気的に接続されていてもよい。
放射線吸収層4の表面41は、平坦面41aと、湾曲面41bと、を含んでいる。平坦面41aは、表面41のうち電圧印加電極6が配置されている領域である。平坦面41aに配置された電圧印加電極6は、保護部材7から離間している。平坦面41aは、保護部材7における一方の側の端面7aに対してパネル10側に位置している。つまり、パネル10の表面10aから放射線吸収層4の平坦面41aまでの距離(すなわち、平坦面41aにおける放射線吸収層4の厚さ)は、パネル10の表面10aから保護部材7の端面7aまでの距離(すなわち、保護部材7の高さ)よりも小さい。湾曲面41bは、平坦面41aと保護部材7における放射線吸収層4側の表面7b(すなわち、放射線吸収層4の側面42に接触している表面)との間に位置する領域である。本実施形態では、保護部材7が環状に形成されているため、X線の入射方向から見た場合に、湾曲面41bは、保護部材7の内側において環状に延在している。湾曲面41bは、平坦面41aから離れるほど保護部材7の端面7aに近づくように、且つ平坦面41aに接するように、湾曲している。
なお、平坦面41aに配置された電圧印加電極6は、一部の電荷収集電極13を除いた残りの電荷収集電極13に、放射線吸収層4を介して対向している。その場合、例えばX線透過画像を形成する際に、当該一部の電荷収集電極13を含む一部の画素Pにおいて電荷を読み出すことが不要となるため、電荷を読み出す速度を上げることができる。また、保護部材7の材料が放射線吸収層4の材料と異なることから、保護部材7近傍の領域は電気的に不均一となり易いものの、当該一部の電荷収集電極13を利用することで、当該領域で発生する電荷、暗電流等を制御することができる。勿論、平坦面41aに配置された電圧印加電極6は、全ての電荷収集電極13に、放射線吸収層4を介して対向していてもよい。
防湿層8は、パネル10、放射線吸収層4、電圧印加電極6及び保護部材7の外表面の全体を覆っている。防湿層8は、例えば、パリレン等によって形成された樹脂膜、Al2O3等によって形成された酸化膜、SiN等によって形成された窒化膜によって構成されている。
以上のように構成された放射線検出器1Aは、次のように使用される。図3に示されるように、放射線検出器1Aの電圧印加電極6がバイアス電圧供給電源21に電気的に接続される。また、放射線検出器1Aの行選択用配線Qmがゲートドライバ22に電気的に接続され、放射線検出器1Aの読出用配線Rnが電荷−電圧変換器群23を介してマルチプレクサ24に電気的に接続される。更に、マルチプレクサ24が画像処理部25に電気的に接続され、画像処理部25が画像表示部26に電気的に接続される。なお、ゲートドライバ22、電荷−電圧変換器群23及びマルチプレクサ24等は、放射線検出器1Aの構成として、パネル10に形成される場合もある。
この状態で、図2に示されるように、撮像対象に照射されたX線が放射線吸収層4に入射し、当該X線が放射線吸収層4で吸収されると、放射線吸収層4では、X線の吸収量に応じて電荷(電子及び正孔)が生じる。このとき、バイアス電圧供給電源21によって、放射線吸収層4を介して互いに対向する電圧印加電極6と各画素Pの電荷収集電極13との間に負の電位差が生じるように、電圧印加電極6にバイアス電圧が印加されている。そのため、X線の吸収によって放射線吸収層4において生じた電荷のうち、電子は、バイアス電圧の作用によって各画素Pの電荷収集電極13に収集され、各画素Pのキャパシタ14に蓄積される。その一方で、X線の吸収によって放射線吸収層4において生じた電荷のうち、正孔は、電圧印加電極6に輸送される。
そして、図2及び図3に示されるように、ゲートドライバ22から、第m行の行選択用配線Qmを介して制御信号が送信されて、第m行の各画素Pm,nの薄膜トランジスタ15がONとされる。ゲートドライバ22は、この制御信号の送信を全ての行選択用配線Qmについて順次に実施する。これにより、第m行の各画素Pm,nのキャパシタ14に蓄積された電荷が、対応する各読出用配線Rnを介して電荷−電圧変換器群23に入力され、その電荷量に応じた電圧信号がマルチプレクサ24に入力される。マルチプレクサ24は、各画素Pm,nのキャパシタ14に蓄積された電荷量に応じた電圧信号を画像処理部25に順次に出力する。画像処理部25は、マルチプレクサ24から入力された電圧信号に基づいて撮像対象のX線透過画像を形成し、当該X線透過画像を画像表示部26に表示させる。
以上説明したように、放射線検出器1Aでは、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4の側面42に保護部材7が接触している。当該側面42は、機械的強度及び防湿性を確保することが特に困難な領域であるため、当該側面42に保護部材7が接触していることは、放射線吸収層4の機械的強度及び防湿性を確保する上で有効である。よって、放射線検出器1Aによれば、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4において十分な機械的強度及び防湿性を確保することができる。特に、放射線検出器1Aでは、保護部材7が、放射線吸収層4の側面42を環状に包囲しており、放射線吸収層4の側面42に全周に渡って接触している。そのため、放射線吸収層4の側面42において十分な機械的強度及び防湿性がより確実に確保されている。
上述したような直接変換型の放射線検出器1Aでは、例えば100μm以上というように、放射線吸収層4の厚さが大きいことが望ましい。その一方で、ペロブスカイト材料は、脆く湿気に弱いため、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4では、機械的強度及び防湿性を確保することが重要である。しかし、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4では、その厚さが大きくなるほど、特に放射線吸収層4の側面42において、機械的強度及び防湿性を確保することが困難となる。その理由は、放射線吸収層4の厚さが大きくなることで面積が増加した放射線吸収層4の側面42に、層状に結晶化する傾向にあるペロブスカイト材料が露出するためである。放射線検出器1Aでは、その点に着目し、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4の側面42に保護部材7を接触させることで、防湿層8のみでは確保し得ない十分な機械的強度及び防湿性を、放射線吸収層4の側面42において確保している。なお、放射線吸収層4をその周縁部において徐々に薄く形成することで、当該周縁部を防湿層8で十分に覆うことも考えられるが、その場合、デッドスペースが増えると共に、放射線検出器1Aが大型化してしまう。
また、放射線検出器1Aでは、保護部材7が、放射線吸収層4及び電圧印加電極6に対して一方の側に開口領域Aを形成している。これにより、放射線吸収層4及び電圧印加電極6に対して一方の側に保護部材7を配置することが不要となるため、放射線検出器1Aの構成を簡易化することができる。
また、放射線検出器1Aでは、保護部材7が、絶縁性材料又は導電性材料によって形成されている。保護部材7が絶縁性材料によって形成されていると、保護部材7近傍の電荷収集電極13と電圧印加電極6との間に生じる電界が保護部材7の影響を受け難くなるため、保護部材7近傍の電荷収集電極13において電気的特性が低下するのを抑制することができる。保護部材7が導電性材料によって形成されていると、例えば保護部材7を定電位に電気的に接続することで、保護部材7近傍の電荷収集電極13と電圧印加電極6との間に生じる電界が保護部材7の影響を受け難くなるため、保護部材7近傍の電荷収集電極13において電気的特性が低下するのを抑制することができる。
また、放射線検出器1Aでは、電圧印加電極6が、保護部材7から離間している。これにより、電圧印加電極6と保護部材7との接触に起因して電荷収集電極13と電圧印加電極6との間に生じる電界の均一性が損なわれるような事態を防止することができる。
また、放射線検出器1Aでは、放射線吸収層4及び電圧印加電極6が防湿層8によって覆われている。これにより、放射線吸収層4及び電圧印加電極6において十分な防湿性をより確実に確保することができる。
また、放射線検出器1Aでは、放射線吸収層4の表面41のうち、電圧印加電極6が配置された平坦面41aが、保護部材7の端面7aに対してパネル10側に位置している。そして、放射線吸収層4の表面41のうち、平坦面41aと保護部材7の表面7bとの間に位置する湾曲面41bが、平坦面41aから離れるほど保護部材7の端面7aに近づくように、湾曲していている。これにより、放射線吸収層4から保護部材7が剥がれ難くなると共に、保護部材7に外力が作用したとしても、当該外力が電圧印加電極6に伝わり難くなる。また、湾曲面41bが存在することで、電圧印加電極6と保護部材7との接触がより確実に防止される。更に、湾曲面41bが存在することで、湾曲面41bが存在せずに平坦面41aが保護部材7の表面7bに至るような場合に比べ、防湿層8が放射線吸収層4及び電圧印加電極6に付着し易くなる。
また、放射線検出器1Aでは、放射線吸収層4の厚さが、100μm以上1mm以下である。これにより、X線の吸収効率及び電荷の収集効率の両方を向上させることができる。
次に、放射線検出器1Aの製造方法について説明する。まず、アルキルアンモニウムハライド(CH3NH3X(XはI,Br及びClの少なくとも1つを示す。以下、同じ。))及びハロゲン化鉛(PbY2(XはI,Br及びClの少なくとも1つを示す。以下、同じ。))を有機溶媒中で混合し、ペロブスカイト材料であるハロゲン化メチルアンモニウム鉛(CH3NH3PbZ3(ZはI,Br及びClの少なくとも1つを示す。以下、同じ。))の前駆体溶液を作成する。混合比は、モル比でCH3NH3X:PbY2=2:1〜1:3であることが望ましく、モル比でCH3NH3X:PbY2=1:1であることが特に望ましい。有機溶媒は、CH3NH3X,PbY2及びCH3NH3PbZ3を溶解させることができるものであれよく、1種類の溶媒からなるものであってもよいし、或いは、混合された2種類以上の溶媒からなるものであってもよい。有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が例示される。
その一方で、パネル10の表面10aに、ディスペンサーによって樹脂を塗布することで、例えば300μmの高さを有する環状の枠部材を形成する。つまり、パネル10に対して一方の側に環状の枠部材を配置する(第1工程)。当該枠部材は、保護部材7に相当する部材である。枠部材の材料は、絶縁性材料でもよいし、或いは、導電性材料でもよい。枠部材の材料としては、樹脂、フォトレジストの材料、ガラス、金属等が例示される。要は、高さを保持することができ、且つパネル10の表面10aとの密着性が良く、且つ上述した溶媒と反応しない材料であれば、枠部材の材料として用いることができる。導電性材料によって枠部材を形成した場合において、枠部材を定電位(例えば、グランド電位、基準電位等)に電気的に接続したときには、枠部材がガードリングとして機能する。枠部材の高さは、30μm以上であることが望ましく、100μm以上であることが特に望ましい。
続いて、枠部材が形成されたパネル10をアニールする。このアニールは、例えば、ホットプレート、恒温槽、電気炉等を使用して実施することができる。アニールの温度は、60℃〜160℃であることが望ましく、100℃〜140℃であることが特に望ましい。このアニールを実施している最中に、パネル10の表面10aに形成された枠部材の内側に、準備しておいたペロブスカイト材料の前駆体溶液を流し込む。つまり、ペロブスカイト材料及び溶媒を含む前駆体溶液を枠部材の内側に配置する(第2工程)。なお、流し込む前駆体溶液の量は、最終的に得たい放射線吸収層4の厚さに応じて適宜調整することができる。
そして、アニールによって前駆体溶液中の溶媒を揮発させることで、放射線吸収層4を形成する。つまり、前駆体溶液から溶媒を除去し、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4を形成する(第3工程)。アニールによって前駆体溶液中の溶媒が揮発する際に、放射線吸収層4の中央部は徐々に低くなり、放射線吸収層4の周縁部は、枠部材との間に作用する表面張力によって、徐々に低くなることが制限される。これにより、放射線吸収層4の表面41が、平坦面41aと、湾曲面41bと、を含む形状となる。なお、このアニールは、空気中で実施してもよいし、或いは、雰囲気制御された環境下(例えば、乾燥空気中、不活性ガス中、溶剤雰囲気中等)で実施してもよい。
続いて、放射線吸収層4の平坦面41aに電圧印加電極6を形成する。つまり、放射線吸収層4に対して一方の側に電圧印加電極6を配置する(第4工程)。電圧印加電極6は、スプレーコート、スクリーン印刷、スピンコート等を用いて形成することができる。或いは、電圧印加電極6は、蒸着法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。なお、電圧印加電極6は、保護部材7から1μm以上離間させることが望ましい。
続いて、パネル10、放射線吸収層4、電圧印加電極6及び保護部材7の外表面の全体を覆うように、防湿層8を形成する。つまり、枠部材の全部を、放射線吸収層4の側面42に接触している保護部材7として残した状態で、放射線吸収層4及び電圧印加電極6を覆う防湿層8を形成する(第5工程)。一例として、蒸着等によって樹脂膜を形成したり、或いは、ALD、CVD等によって酸化膜又は窒化膜を形成したりすることで、防湿層8とすることができる。
以上説明したように、放射線検出器1Aの製造方法によれば、ペロブスカイト材料によって形成された放射線吸収層4において十分な機械的強度及び防湿性が確保された放射線検出器1Aを得ることができる。特に、パネル10に枠部材を形成した後に放射線吸収層4を形成して当該枠部材を保護部材7として用いるため、パネル10に放射線吸収層4を形成した後に保護部材7を形成する場合に比べ、放射線吸収層4と保護部材7との密着性が向上する。特にペロブスカイト材料は層状に結晶化する傾向にあるため、この効果は顕著に表れる。これにより、機械的強度を向上させることができると共に、保護部材7が放射線吸収層4の側面42を環状に包囲していれば、より確実な防湿を達成することができる。
[第2実施形態]
図4に示されるように、放射線検出器1Bは、放射線吸収層4の表面41が保護部材7の端面7aに面一な平坦面である点で、上述した放射線検出器1Aと相違している。つまり、放射線検出器1Bでは、パネル10の表面10aから放射線吸収層4の表面41までの距離(すなわち、放射線吸収層4の厚さ)が、パネル10の表面10aから保護部材7の端面7aまでの距離(すなわち、保護部材7の高さ)と略等しい。
放射線検出器1Bの製造方法は、次の点を除き、上述した放射線検出器1Aの製造方法と同様である。すなわち、ペロブスカイト材料及び溶媒を含む前駆体溶液を枠部材の内側に配置する工程(第2工程)において、表面張力を利用して、前駆体溶液の液面が枠部材の上面から盛り上がるように、枠部材の内側に前駆体溶液を流し込む。このとき、流し込む前駆体溶液の量を、最終的に得たい放射線吸収層4の厚さに応じて適宜調整する。
以上の放射線検出器1Bによれば、上述した放射線検出器1Aと同様の作用効果が奏される。
また、放射線検出器1Bでは、放射線吸収層4の厚さを大きくすることができると共に、放射線吸収層4における保護部材7近傍の部分を有効領域として利用することができる。
[変形例]
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明は、第1実施形態及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、保護部材7が環状に形成されていたが、放射線吸収層4の側面42のうち少なくとも互いに対向する部分に接触していれば、保護部材7の一部が切り欠かれていてもよい。一部が切り欠かれた保護部材7を備える放射線検出器は、上述したように、環状の枠部材の内側に前駆体溶液を流し込んで放射線吸収層4を形成した後に、枠部材の一部を切り落とすことで、製造することができる。或いは、一部が切り欠かれた保護部材7を備える放射線検出器は、一部が切り欠かれた枠部材の内側に前駆体溶液を流し込んで放射線吸収層4を形成することで、製造することができる。その場合、枠部材において切り欠かれた部分の幅は、当該部分から前駆体溶液が表面張力によって漏れ出さない程度に調整される。つまり、枠部材の形状は、連続した環状、又は、前駆体溶液が表面張力によって漏れ出さない幅を有するように一部が切り欠かれた環状であればよい。
また、放射線吸収層4の側面42のうち少なくとも互いに対向する部分に接触していれば、複数の保護部材7を放射線検出器が備えていてもよい。放射線吸収層4の側面42のうち互いに対向する部分に接触している複数の保護部材7を備える放射線検出器は、図5に示されるように、環状の枠部材Fの内側に前駆体溶液を流し込んで放射線吸収層4を形成した後に、パネル10、放射線吸収層4、電圧印加電極6及び枠部材Fの両側部を切り落とすことで、製造することができる。その場合、枠部材Fの少なくとも一部を、放射線吸収層4の側面42のうち少なくとも互いに対向する部分に接触している保護部材7として残した状態で、少なくとも放射線吸収層4及び電圧印加電極6を覆う防湿層8を形成する(第5工程)。このように、放射線吸収層4の側面42のうち少なくとも互いに対向する部分に保護部材7が接触していることは、放射線吸収層4の機械的強度を確保する上で有効である。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、パネル10、放射線吸収層4、電圧印加電極6及び保護部材7の外表面の全体を覆っていたが、防湿層8は、少なくとも放射線吸収層4及び電圧印加電極6を覆っていればよい。その場合にも、放射線吸収層4及び電圧印加電極6において十分な防湿性をより確実に確保することができる。
また、電圧印加電極6には、各電荷収集電極13との間に正の電位差が生じるようにバイアス電圧が印加されてもよい。その場合、各電荷収集電極13は、X線の吸収によって放射線吸収層4において生じた正孔を収集する。また、各放射線検出器1A,1Bは、X線以外の放射線を検出することも可能である。
また、支持基板11としては、ガラス基板だけでなく、シリコン基板等を用いることも可能である。その場合、薄膜トランジスタではなく、シリコン基板に形成されたFETを用いて、CMOSASICを構成してもよい。つまり、パネル10は、複数の電荷収集電極を有する基板であって、電圧印加電極と各電荷収集電極との間に電位差が生じさせられるものであれば、何でもよい。