JP2018002691A - 多価グリシジル化合物の製造方法 - Google Patents

多価グリシジル化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を有する低分子量の芳香族化合物を、工業的に簡便で、安全、低コスト、高収率かつ低塩素含有量で製造する方法を提供する。【解決手段】分子内に芳香環を有し、かつ、特定の2−アルケニル基及び特定の2−アルケニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する、分子量が170〜300の芳香族化合物(a)へ、過酸化水素(b)をニトリル化合物(c)存在下で作用させ、前記芳香族化合物(a)を均一相の反応液中で酸化する。【選択図】なし

Description

本発明は、多価グリシジル(エポキシ)化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、硬度、強度、耐熱性などに優れ、特に、電子材料分野に適した硬化性樹脂組成物の原料となる多価グリシジル化合物の製造方法に関する。
グリシジル(エポキシ)化合物は電気特性、接着性、耐熱性などに優れるために、塗料分野、土木分野、電気分野などの多くの用途で使用されている。特に、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族グリシジル(エポキシ)化合物は、耐水性、接着性、機械物性、耐熱性、電気絶縁性、経済性などが優れることから種々の硬化剤と組み合わせて広く使用されている。
グリシジル化合物及び硬化剤を含む樹脂の硬化物の耐熱性、接着性などを向上させる手法として、グリシジル化合物の多官能化が知られている。樹脂中の反応性官能基の密度(一分子あたりに含まれる官能基の量)を増加させることで、グリシジル化合物と硬化剤の間の反応架橋点を増加することができる。このことにより硬化物の単位体積当たりの架橋密度が増加するため、分子のミクロ運動が制御されて硬化物の外部影響に対する耐性が高まる。その結果、硬化物の耐熱性の向上、硬化物への剛性、接着性などの付与が可能となる。
グリシジル化合物の多官能化の一つの手法として、芳香環骨格を有するグリシジル化合物の芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を導入し、架橋密度を向上させる方法が知られている。例えば、特許文献1には、ビスフェノールを母骨格とする化合物のフェノール部位に結合したグリシジルエーテル基に対し、オルト位又はパラ位にグリシジル基を有する多価グリシジル化合物が、金属への良好な接着性、低吸湿性、及び良好な機械的特性を有することが開示されている。これらの化合物は、ビスフェノール−Fなどのフェノール類を出発原料として、フェノールヒドロキシ基の2−アルケニル化、それによって生じた2−アルケニルエーテル基のクライゼン転位によるオルト位又はパラ位の2−アルケニル化、続くエピクロロヒドリンを用いるグリシジルエーテル化、及び側鎖2−アルケニル基の酸化(グリシジル化)により合成されている。
中でも、低分子量の芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を有する化合物は、官能基価を容易に高められることから注目されている(非特許文献1、及び特許文献2)。また、そのような化合物は、電子デバイス等の高い電気的信頼性が求められる分野への使用が期待されることから、エピクロロヒドリンのような有機塩素化合物を使用しない製法が検討されている。例えば、非特許文献1では有機過酸化物であるm−クロロ過安息香酸(mCPBA)で2−アルケニル基を有する化合物であるアセチルオイゲノールを酸化する方法が開示されている。しかし、これらの化合物合成の最終段階で行われる酸化(グリシジル化)反応においては、反応点である2−アルケニル基に対し、過酢酸、過ギ酸、m−クロロ過安息香酸、ペルオキソフタル酸等の有機過酸化物、又は過モリブデン酸、過バナジン酸、過タングステン酸等の無機過酸化物を化学当量以上必要とする。そのため、目的物からこれら酸化剤の残渣を除去することが困難である、又は酸化剤のコストが高いことから、これらの酸化反応を用いた上記化合物の工業的生産は実現が困難であった。
一方、酸化剤に過酸化水素を用いる手法は、反応における副生成物が、水分子のみであり、反応後の副生成物の除去も容易で、酸化剤のコストも低いことから、環境に調和し、プロセスコストの低い理想的な手法といえる。
過酸化水素を用いたオレフィン類の酸化方法としては、特許文献3に示されるようなタングステン触媒を使用する方法(以下、「タングステン法」という。)、非特許文献2に示されるようなニトリル類を用いる方法(以下、「ニトリル酸化法」という。)などが知られる。これらは大量の酸化剤の残渣を除去する必要が無いため、生成物の純度が高く、工業的に利用しやすい。
タングステン法では、有機溶媒と水の2層中、タングステン化合物、第四級アンモニウム塩、及び相間移動触媒を用いて強酸性条件で2−アルケニル基のエポキシ化を行う。しかし、タングステン法は2相間での移動が必要なため、分子量が小さい化合物には適用が困難であった。
ニトリル酸化法では、ニトリル類を用い、塩基共存下、過酸化水素を用いて2−アルケニル基のエポキシ化を行う。ニトリル類に対して過酸化水素が作用し、酸化反応に活性な過イミド酸が形成し、過イミド酸が反応活性種となって酸化反応が進行する。この方法では、中性から塩基性下で反応を行うことが可能である。そのため、汎用性が高く、特殊な試薬を使用しないのでコスト的に有利である。
ニトリル酸化法では、反応に活性な過イミド酸の安定化のため、アルコールが反応溶媒として使用される。ニトリル−アルコール溶媒は、極性が高いため、脂肪族系アリルエーテル化合物の酸化反応には有効であることが知られる(例えば特許文献4)。一方、芳香族系のアリルフェニルエーテル化合物は、上記ニトリル−アルコール溶媒への相溶性が低く、過酸化水素水溶液を酸化剤として使用したときに相分離が起こりやすいため、アリルフェニルエーテル化合物へのニトリル酸化法の適用は困難であると考えられていた。
特開昭63−142019号公報 特開平3−106927号公報 特開2014−240377号公報 特開平10−212281号公報
Polymer International, 63(4), 760-765 (2014) G. B. Payne, P. H. Williams, J. Org. Chem., 26, 651 (1961)
上記のとおり、これらの方法を用いた低分子量の芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を有する化合物の合成についてはこれまでに示されていない。
本発明は上記従来の実情を鑑みてなされたものであり、芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を有する低分子量の芳香族化合物を、工業的に簡便で、安全、低コスト、高収率かつ低塩素含有量で製造する方法を提供する。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究し、実験を重ねた結果、分子内に芳香環を有し、かつ、特定の2−アルケニル基及び特定の2−アルケニルエーテル基をそれぞれ1つ以上有する、分子量が170〜300の芳香族化合物(a)へ、過酸化水素(b)をニトリル化合物(c)の存在下で作用させ、前記芳香族化合物(a)を均一相の反応液中で酸化させることにより、高効率かつ低塩素含有量で低分子量の芳香環骨格に2つ以上のグリシジル基を有する化合物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[10]を包含する。
[1]
分子内に芳香環を有し、かつ式(1)で表される基及び式(2)で表される基をそれぞれ1つ以上有し、これらの基が同じ芳香環に直接結合している、分子量が170〜300の芳香族化合物(a)に対し、過酸化水素(b)をニトリル化合物(c)の存在下で作用させ、前記芳香族化合物(a)を均一相の反応液中で酸化させることを特徴とする多価グリシジル化合物の製造方法。
Figure 2018002691
Figure 2018002691
(式(1)のR〜R及び式(2)中のR〜Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表し、*は芳香環を構成する炭素原子との結合部を示す。)
[2]
前記芳香族化合物(a)において、式(1)で表される基に対して式(2)で表される基がオルト位又はパラ位に結合している[1]に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[3]
前記芳香族化合物(a)が、式(3)で表される化合物である[1]又は[2]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
Figure 2018002691
(式中、R及びRは、各々独立して、式(1)で表される基であり、Xは0〜4個の芳香環上の置換基であって、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーレン基のいずれかを表す。)
[4]
前記芳香族化合物(a)が、2−アリルフェノールアリルエーテル又はオイゲノールアリルエーテルである[1]〜[3]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[5]
前記過酸化水素(b)の反応系内存在濃度が、芳香族化合物(a)に対して0.01〜0.5モル当量である[1]〜[4]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[6]
前記ニトリル化合物(c)のニトリル基が、前記芳香族化合物(a)の炭素−炭素二重結合に対して2〜15モル当量となる量で、前記ニトリル化合物(c)を使用する[1]〜[5]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[7]
前記ニトリル化合物(c)が、アセトニトリルである[1]〜[6]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[8]
前記芳香族化合物(a)に対し、プロトン供与性溶媒(d)存在下で前記過酸化水素(b)を作用させることを含む[1]〜[7]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[9]
前記プロトン供与性溶媒(d)の使用量が、前記ニトリル化合物(c)100質量部に対して20〜500質量部である[8]に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[10]
前記プロトン供与性溶媒(d)がアルコールを含む[8]又は[9]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[11]
前記芳香族化合物(a)の反応開始時の濃度が、反応液全体に対して5〜40質量%である[1]〜[10]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[12]
前記芳香族化合物(a)に対してアルカリ化合物(e)存在下で前記過酸化水素(b)を作用させることを含む[1]〜[11]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
[13]
前記芳香族化合物(a)を含む反応液のpHが、反応中の任意の時点において8.0〜12.0である[1]〜[12]のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
本発明の多価グリシジル化合物の製造方法によれば、過酸化水素を使用して、高収率かつ低塩素含有量で官能基価の高い芳香族多価グリシジル化合物を安全に低コストで得ることができる。本発明の方法によって得られる官能基価の高い芳香族多価グリシジル化合物は、高耐熱性の樹脂組成物に使用することができる。また、本発明の方法は、反応工程において、有機塩素化合物を使用しないため、高い電気的信頼性が求められる電子デバイスへの適用が可能である。
実施例1で得られた生成物のH−NMRスペクトルである。 実施例2で得られた生成物のH−NMRスペクトルである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の多価グリシジル化合物の製造方法は、分子内に芳香環を有し、かつ、式(1)で表される基及び式(2)で表される基をそれぞれ1つ以上有する芳香族化合物(a)を基質として用い、ニトリル化合物(c)存在下で過酸化水素(b)により均一相の反応液中でこれらの基をグリシジル(エポキシ)化する反応を用いる。
本明細書において「均一相」とは、必要に応じて固形物を除去した反応液を静置して1分後に目視した時に、相分離により反応液が有機層と水層の2つの層に分離していない又は白濁しておらず、反応液が全体として均一に見えることを意味する。反応液が「白濁していない」とは、具体的には、濁度計により測定したときの濁度が5000NTU以下であることを意味する。
[芳香族化合物(a)]
本発明に用いられる芳香族化合物(a)は、分子内に芳香環を有し、かつ式(1)で表される基及び式(2)で表される基をそれぞれ1つ以上有し、これらの基が同じ芳香環に直接結合している、分子量が170〜300の化合物であれば特に制限は無い。好ましくは、分子量170〜280であり、さらに好ましくは分子量170〜250である。芳香族化合物(a)の分子量が170〜300であることにより、反応溶媒としても作用しうるニトリル化合物(c)に対する溶解性、及びニトリル化合物(c)と任意成分であるプロトン供与性溶媒(d)との混合溶媒に対する溶解性が良好であり、反応液に過酸化水素を一定量以上添加した際にも相分離しないため、グリシジル(エポキシ)化反応の効率が高い。
Figure 2018002691
Figure 2018002691
式(1)のR〜R及び式(2)中のR〜Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表し、*は芳香環を構成する炭素原子との結合部を示す。
芳香族化合物(a)において、式(1)で表される基に対して式(2)で表される基がオルト位又はパラ位に結合していることが、反応性の面から好ましい。
芳香族化合物(a)が、式(3)で表される化合物であることが、溶解性の観点から好ましい。
Figure 2018002691
式(3)中、R及びRは、各々独立して、式(1)で表される基であり、Xは0〜4個の芳香環上の置換基であって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーレン基のいずれかを表す。
反応性の観点より、R〜Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。Xの置換基は炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。Xの数は0又は1個が好ましい。
具体的な芳香族化合物(a)の例としては、2−アリルフェノールアリルエーテル、4−アリルフェノールアリルエーテル、オイゲノールアリルエーテル等の芳香族アリルアルコールのアリルエーテル化体が挙げられる。中でも、溶解性の観点から2−アリルフェノールアリルエーテル又はオイゲノールアリルエーテルが好ましい。
芳香族化合物(a)の反応開始時の仕込み量は、反応液全体に対し5〜40質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは12〜25質量%の範囲である。過酸化水素の添加により反応液中の芳香族化合物(a)の濃度は相対的に低下するが、反応終了時点において、芳香族化合物(a)及びそれに対応する反応生成物の合計濃度が、反応液全体に対し1〜30質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜25質量%、さらに好ましくは5〜15質量%の範囲である。芳香族化合物(a)の濃度が30質量%以下であれば高い安全性を担保することができ、1質量%以上であれば生産効率が良好である。
[過酸化水素(b)]
本発明では、アリル基の酸化剤として過酸化水素(b)を用いるが、過酸化水素源としては過酸化水素水溶液が好適に用いられる。過酸化水素水溶液の濃度には特に制限はないが、一般的には1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。1質量%以上であれば工業的な生産性の観点、及び分離の際のエネルギーコストの点で良好であり、80質量%以下であれば経済性、安全性などの点で良好である。
過酸化水素(b)の使用量には特に制限はないが、反応の進行により、過酸化水素は消費されるため、継続的に追補充することにより、反応系内の濃度を一定に維持することが望ましい。芳香族化合物(a)に対して、過酸化水素(b)の反応系内存在濃度を0.01〜0.5モル当量、より好ましくは0.02〜0.2モル当量、さらに好ましくは0.05〜0.1モル当量の範囲に保持することが好ましい。過酸化水素(b)の系内存在濃度が芳香族化合物(a)に対して0.01モル当量以上であれば生産性が良好であり、0.5モル当量以下であれば溶媒と水の混合組成中でも十分な安全性を確保できる。反応初期に反応系内に一度に多量の過酸化水素を仕込むと反応が急激に進行して危険な場合があるため、後述するように過酸化水素は反応系内にゆっくり添加することが好ましい。反応終期の反応系内の過酸化水素濃度に制限は無く、過酸化水素(b)の系内存在濃度を芳香族化合物(a)に対して0.01モル当量以下とすることもできる。
[ニトリル化合物(c)]
本発明におけるニトリル化合物(c)は分子内にニトリル基(シアノ基)があれば特に制限は無く、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ジクロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル、ヘキサンジニトリル、オクタンジニトリル、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、3−ニトロベンゾニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。中でも、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルが溶解性の観点から好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
ニトリル化合物(c)の反応開始時の仕込み量は、芳香族化合物(a)の炭素−炭素二重結合に対して、ニトリル基を2〜15モル当量の範囲とすることが好ましく、3.0〜10モル当量がより好ましく、4.0〜8.0モル当量がより好ましい。芳香族化合物(a)の構造により一概に定められないが、芳香族化合物(a)の炭素−炭素二重結合に対して、ニトリル化合物(c)のニトリル基が2〜15モル当量の範囲となる量でニトリル化合物(c)を用いることで、反応液が均一相になりやすいため好ましい。また、ニトリル化合物(c)のニトリル基の上記量が2モル当量以上であれば収率が良好であり、15モル当量以下であれば過酸化水素のグリシジル(エポキシ)化選択率及びコストが良好である。
反応中にニトリル化合物(c)を追添することも可能である。追添する場合の反応に用いる芳香族化合物(a)の総使用量に対するアセトニトリルの総使用量の割合(ニトリル化合物(c)/芳香族化合物(a)の炭素−炭素二重結合(モル比))も上記範囲、すなわち2〜15が好ましく、より好ましくは3.0〜10であり、さらに好ましくは4.0〜8.0である。
[プロトン供与性溶媒(d)]
ニトリル化合物(c)存在下でグリシジル(エポキシ)化反応を行うときに、反応液中にプロトン供与性溶媒(d)を共存させて、プロトン供与性溶媒(d)の存在下で芳香族化合物(a)に対して過酸化水素(b)を作用させることが好ましい。プロトン供与性溶媒(d)は芳香族化合物(a)の溶媒として機能する。芳香族化合物(a)の粘度が高い場合には、プロトン供与性溶媒(d)は芳香族化合物(a)への過酸化水素(b)の移動速度を高めるための粘度希釈剤としても機能する。
具体的なプロトン供与性溶媒としては、アルコール、アミン、チオール等が挙げられる。これらのプロトン供与性溶媒を組み合わせて使用してもよい。中でも、アルコールは、特に芳香族化合物(a)の親水性が低い場合に、芳香族化合物(a)及びニトリル化合物(c)を含む有機相と過酸化水素(b)を含む水相への分離を抑制し、反応液を均一相にして反応速度を高める作用があるため好ましい。アルコールの中でも、炭素数1〜4のアルコールが好ましく、炭素数1〜4の1級アルコールがより好ましく、メタノール、エタノール、及び1−プロパノールがさらに好ましい。
プロトン供与性溶媒(d)の使用量は、芳香族化合物(a)100質量部に対して10〜1000質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは80〜800質量部の範囲であり、さらに好ましくは100〜500質量部の範囲である。芳香族化合物(a)の構造により一概に定められないが、芳香族化合物(a)100質量部に対してプロトン供与性溶媒(d)を10〜1000質量部の範囲で用いることで、反応液が均一相になりやすいため好ましい。また、プロトン供与性溶媒(d)の使用量が、芳香族化合物(a)100質量部に対して50質量部以上であれば反応系の相溶性が良好であり、1000質量部以下であれば反応速度が良好である。
プロトン供与性溶媒(d)の使用量は、ニトリル化合物(c)100質量部に対して20〜500質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは25〜400質量部の範囲であり、さらに好ましくは33〜300質量部の範囲である。より疎水性が高く、アセトニトリルなどの有機溶剤に対する溶解性の高い芳香族化合物(a)に対しては、ニトリル化合物(c)の比率を増量させる、つまりニトリル化合物(c)100質量部に対してプロトン供与性溶媒(d)の量を20質量部に近づけて反応を実施することが好ましい。
[アルカリ化合物(e)]
本発明の多価グリシジル化合物の製造方法において、芳香族化合物(a)を含む反応液の任意の時点のpHを8〜12の範囲とすることが好ましく、より好ましくは9〜11、さらに好ましくは9.5〜11の範囲である。pHが8以上であれば反応速度が良好で高い生産性を保つことができ、12以下であれば反応時に十分な安全性及び収率を確保することができる。過酸化水素は高アルカリ雰囲気下で分解が活発に起こるため、反応初期の段階ではpHを9〜10程度とし、過酸化水素の添加とともに必要に応じて徐々に反応液のpHを10〜11程度に制御することがより好ましい。
反応液のpHを調製するためにアルカリ化合物(e)を用いて、芳香族化合物(a)に対してアルカリ化合物(e)存在下で過酸化水素(b)を作用させてもよい。反応液のpH調整に用いることができるアルカリ化合物(e)としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等の無機塩基塩、及びカリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基塩が挙げられる。炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、及びナトリウムエトキシドは、pH調整が容易である点で好ましい。水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムは水及びアルコールへの溶解性が高く、反応性も良いためより好ましい。
アルカリ化合物(e)は、水又はプロトン供与性溶媒の溶液に溶解させて用いることができ、かつそのように溶解させて用いることが好ましい。プロトン供与性溶媒としてはアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられ、前述のプロトン供与性溶媒(d)と同一のものを使用することが好ましい。アルカリ化合物(e)の溶液は、反応液のpHが過酸化水素の添加に伴い9を下回らないように追加することが好ましい。
[多価グリシジル化合物の製造方法]
芳香族化合物(a)、過酸化水素(b)及びニトリル化合物(c)、並びに任意成分であるプロトン供与性溶媒(d)及びアルカリ化合物(e)の反応系への添加の順序及び態様に特に制限はないが、工業的に安定に生産を行うことを考えると、芳香族化合物(a)、ニトリル化合物(c)及び任意にプロトン供与性溶媒(d)を最初に反応器に仕込み、反応温度を極力一定に保ちつつ、過酸化水素(b)については反応で消費されているのを確認しながら過酸化水素水を徐々に加えることが、グリシジル(エポキシ)化反応を促進することができ、反応生成物の分離及び精製が容易である点で好ましい。このような方法を採れば、反応器内で過酸化水素が異常分解して酸素ガスが発生したとしても、過酸化水素の蓄積量が少なく圧力上昇を最小限に留めることができる。
反応は均一相で行う。反応液を均一相にすることで、芳香族化合物(a)とグリシジル化に必要な過酸化水素(b)及びニトリル化合物(c)を、相間移動を介することなく効率良く反応させることができる。そのため、反応後の未反応物が少なくなり、多価グリシジル化合物の高収率での製造が可能となる。反応液を均一相にするための各成分の量比は、芳香族化合物(a)の構造により変化するため一概に定められない。しかし、前述のとおりニトリル化合物(c)及び/又はプロトン供与性溶媒(d)を適切な量に変更することにより調整可能である。
前述のとおり反応液の任意の時点でのpHが8〜12となることが好ましい。液のpH調整のために任意成分であるアルカリ化合物(e)を追加する時期に特に制限は無い。アルカリ化合物(e)を最初に反応器に所定量仕込んでおいてもよく、この場合反応中に追加してもしなくてもよい。アルカリ化合物(e)を最初に反応器に仕込まずに、反応中に追加するのみでもよい。過酸化水素は高アルカリ雰囲気下で分解が活発に起こるため、反応初期の段階ではpHを9〜10程度とし、過酸化水素の添加とともに必要に応じて徐々に反応液のpHを10〜11程度に制御することがより好ましい。
本発明の多価グリシジル化合物の製造方法において、反応温度は0℃〜60℃の範囲が好ましく、より好ましくは10℃〜50℃、さらに好ましくは20℃〜40℃である。反応温度が0℃以上であれば反応が良好に進行し、60℃以下であれば、ニトリル化合物(c)及びプロトン供与性溶媒(d)の揮発又は沸騰を抑制できる。
反応時間は、反応温度により左右され、一概に定めることはできないが、通常は2〜100時間の範囲、好ましくは4〜80時間、より好ましくは6〜60時間の範囲である。
反応終了後、反応生成物を含む有機層を回収し、濃縮することにより反応粗生成物が得られる。反応液は通常過酸化水素を含有するため、反応液中の水分を除去した後に反応生成物を含む有機層を回収する際には、過酸化水素の濃縮による爆発の危険性を避けるために前もって過酸化水素を還元除去することが望ましい。還元除去に用いる還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらの還元剤に限定されるものではない。また、反応生成物を含む有機層を回収する際は、反応液中の水分を、反応生成物を含む有機層と効率的に分離除去するために、水との相溶性が低い適量の有機溶媒を反応液に加えることが好ましい。用いる有機溶媒の例としてはトルエン、酢酸エチル、ジクロロメタンなどが挙げられるが、これらの有機溶媒に限定されるものではない。この処理により反応液中に残存する過酸化水素を除去するとともに水層と有機溶媒を含む有機層を分離できる。
上記のようにして水層と分離した有機層を濃縮した後、蒸留、クロマト分離、再結晶、昇華等の通常の方法によって、生成した多価グリシジル(エポキシ)化合物を取り出すことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
[評価方法]
H−NMR測定>
400MHz、CDCl、27℃の条件で、日本電子株式会社製のH−NMR測定装置によって測定する。
<エポキシ化合物の相対含有率(EP ratio)>
EP ratioは、芳香族化合物(a)が有する式(1)及び式(2)で表される基のうち、反応によってグリシジル(エポキシ)化された割合を示す。実測によるエポキシ当量をJIS K 7236:2001に従い測定し、以下の式より算出する。理論エポキシ当量は、芳香族化合物(a)の式(1)及び式(2)で表される基を全てグリシジル(エポキシ)化したときのエポキシ当量である。結果を表1に示す。
EP ratio(%)=(理論エポキシ当量/実測によるエポキシ当量)×100
<収率>
反応及び後処理の後、目的とするエポキシ化合物を含む混合物の取得量の質量を測定し、以下の式より算出した値を収率とみなす。結果を表1に示す。
収率(%)=(混合物の取得量/反応率100%で酸化反応が進行した際に得られる物質量)×100
<反応液の観察>
30質量%過酸化水素水溶液滴下中の反応液が均一相であるか相分離しているかを目視で観察する。
合成例1:基質(2−アリルフェノールアリルエーテル)の合成
3L三口丸底フラスコに、炭酸カリウム(日本曹達株式会社製)567g(4.10mol)を純水750gに溶解した溶液、式(4)で表される2−アリルフェノール(東京化成工業株式会社製)500g(3.73mol)を仕込み、反応器を窒素ガス置換し85℃に加熱した。窒素気流下、酢酸アリル(昭和電工株式会社製)448g(4.47mol)、トリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製)9.77g(37.3mmol)、及び50%含水5%−Pd/C−STDタイプ(エヌ・イーケムキャット株式会社製)3.17g(0.750mmol(Pd原子として))を入れ、窒素ガス雰囲気中、105℃に昇温して4時間反応させた後、酢酸アリル44.8g(0.447mol)を追添し、加熱を12時間継続した。反応終了後、反応系を室温まで冷却したのち、析出した塩がすべて溶解するまで純水を加え、分液処理した。有機層を分離し、有機溶媒(70℃、50mmHg、2時間)を留去した。純水(500g)を添加した後、トルエン500gを加え、80℃以上の温度に保持して白色沈殿が析出していないことを確認した後、Pd/Cを濾過(1ミクロンのメンブランフィルター(アドバンテック社製KST−142−JAを用いて加圧(0.3MPa))により回収した。この濾滓をトルエン100gで洗浄するとともに、水層を分離した。50℃以上で有機層を純水500gで2度洗浄し、水層が中性であることを確認した。有機層を分離後、減圧下、濃縮し、式(5)で表される2−アリルフェノールアリルエーテルを主成分とする淡黄色液体(669g、3.66mol、98.0%収率)を得た。この褐色液体をH−NMR測定した結果、式(5)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。式(5)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
H−NMR{400MHz,CDCl,27℃},δ3.32(2H,dt,PhC CH=CH),δ4.54(2H,dt,PhOC CH=CH),δ5.01−5.09(2H,m,PhCHCH=C ),δ5.27(1H,dq,PhOCHCH=CH),δ5.42(1H,dq,PhOCHCH=CH),δ5.95(1H,m,PhCH=CH),δ6.06(1H,m,PhOCH=CH),δ6.92(m,2H,aromatic),δ7.09(2H,m,aromatic).
Figure 2018002691
Figure 2018002691
実施例1:2−グリシジルフェニル−グリシジルエーテルの合成
2L三口丸底フラスコに、上記合成例1で得られた2−アリルフェノールアリルエーテル300g(1.72mol)、アセトニトリル(純正化学株式会社製)980g(23.9mol)、メタノール(純正化学株式会社製)330g(10.3mol)を5L三口フラスコに仕込み、50質量%水酸化カリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を少量加え、反応液のpHを約10.5に調整した後、内温35℃で30質量%過酸化水素水溶液(三菱瓦斯化学株式会社製)1170g(10.3mol)を、内温が45℃を超えないように18時間かけて滴下した。なお、過酸化水素水溶液を加えるとpHが下がるので、pHが9.0〜11に維持されるように50質量%水酸化カリウム水溶液も別途滴下した。反応後、10%亜硫酸ナトリウム水溶液500g(和光純薬工業株式会社製の亜硫酸ナトリウムを純水に溶解したもの)とトルエン750gを加え、室温で30分間攪拌した。水層を分離後、有機層(トルエン)を純水500gで2回洗浄した後、溶媒を留去することにより、反応生成物(目的物)を得た。この生成物をH−NMR測定した結果を図1に示す。式(6)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
H−NMR{400MHz,CDCl,27℃},δ2.58(2H,dd,PhOC ),δ2.67(2H,m,PhC ),δ2.80−3.01(2H,m,PhOCHCHCHO,PhCHCHCHO),δ3.21(1H,m,PhOCHCHCHO),δ3.37(1H,m,PhCHCHCHO),δ3.96(1H,m,PhCH),δ4.26(1H,m,PhOCH),δ6.84(d,1H,aromatic),δ6.92(m,1H,aromatic),δ7.20−7.23(m,2H,aromatic).
このことから、式(6)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。
Figure 2018002691
合成例2:基質(オイゲノールアリルエーテル)の合成
合成例1と同様の条件下、基質を2−アリルフェノールからオイゲノールに変更し、反応を実施した。以下、反応に用いた試薬の物質量、得られた目的物のアリルエーテル体の物性データを以下に示す。
3L三口丸底フラスコに、炭酸カリウム(日本曹達株式会社製)463g(3.35mol)を純水750gに溶解した溶液、式(7)で表されるオイゲノール(東京化成工業株式会社製)500g(3.04mol)を仕込み、反応器を窒素ガス置換し85℃に加熱した。窒素気流下、酢酸アリル(昭和電工株式会社製)366g(3.65mol)、トリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製)8.00g(30.5mmol)、及び50%含水5%−Pd/C−STDタイプ(エヌ・イーケムキャット株式会社製)2.59g(0.610mmol(Pd原子として))を入れ、窒素ガス雰囲気中、105℃に昇温して4時間反応させた後、酢酸アリル36.6g(0.365mol)を追添し、加熱を12時間継続した。反応終了後、反応系を室温まで冷却したのち、純水を析出した塩がすべて溶解するまで加え、分液処理した。有機層を分離し、有機溶媒(70℃、50mmHg、2時間)を留去した。純水(500g)を添加した後、トルエン500gを加え、80℃以上の温度に保持して白色沈殿が析出していないことを確認した後、Pd/Cを濾過(1ミクロンのメンブランフィルター(アドバンテック社製KST−142−JAを用いて加圧(0.3MPa))により回収した。この濾滓をトルエン100gで洗浄するとともに、水層を分離した。50℃以上で有機層を純水500gで2度洗浄し、水層が中性であることを確認した。有機層を分離後、減圧下、濃縮し、式(8)で表されるオイゲノールのアリルエーテル化生成物]を主成分とする淡黄色液体(611g,2.99mol、98.5%収率)を得た。
Figure 2018002691
Figure 2018002691
実施例2:オイゲノール−グリシジルエーテルの合成
2L三口丸底フラスコに、上記合成例2で得られたオイゲノールのアリルエーテル化生成物300g(1.47mol)、アセトニトリル(純正化学株式会社製)707g(17.2mol)、メタノール(純正化学株式会社製)1240g(38.6mol)を5L三口フラスコに仕込み、50質量%水酸化カリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)を少量加え、反応液のpHを約10.5に調整した後、内温35℃で30質量%過酸化水素水溶液(三菱瓦斯化学株式会社製)1040g(9.18mol)を、内温が45℃を超えないように18時間かけて滴下した。なお、過酸化水素水溶液を加えるとpHが下がるので、pHが9.0〜11に維持されるように50質量%水酸化カリウム水溶液も別途滴下した。反応後、10%亜硫酸ナトリウム水溶液500g(和光純薬工業株式会社製の亜硫酸ナトリウムを純水に溶解したもの)とトルエン750gを加え、室温で30分間攪拌した。水層を分離後、純水500gで2回洗浄した後、溶媒を留去することにより、反応生成物(目的物)が得られた。この生成物をH−NMR測定した結果を図2に示す。式(9)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
H−NMR{400MHz,CDCl,27℃},δ2.54(2H,m,PhOC ),δ2.72(2H,m,PhC ),δ2.76−2.91(2H,m,PhOCHCHCHO,PhCHCHCHO),δ3.14(1H,m,PhOCHCHCHO),δ3.36(1H,m,PhCHCHCHO),δ3.87(3H,s,OCH),δ4.02(1H,m,PhCH),δ4.23(1H,m,PhOCH),δ6.77(m,2H,aromatic),δ6.87(m,1H,aromatic).
このことから、式(9)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。
Figure 2018002691
比較例1
反応基質を2,2’−ジアリルビスフェノール−A−ジアリルエーテルとした以外は、実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。反応開始から5時間の時点で相分離により形成された有機層と水層の2層境界面が確認された。特開2014−240376号公報に記載の本発明とは別の方法で合成した化合物のNMRスペクトルデータと比較し、目的の化合物を得たことを確認した。
比較例2
反応基質を2,2’−ジアリルビスフェノール−S−ジアリルエーテルとし、実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。反応開始の時点で相分離により形成された有機層と水層の2層境界面が確認された。
比較例3
アセトニトリルの量を10分の1倍(98g(2.39mol))とした以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。反応初期において、添加した過酸化水素の遊離による有機層/水層の2層に別れた相分離による白濁が確認された。
比較例4
メタノールの量を10分の1倍(33g(1.03mol)))とした以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。反応初期において、添加した過酸化水素の遊離による有機層/水層の2層に別れた相分離による白濁が確認された。
比較例3
酸化剤をm−クロロ過安息香酸、溶媒をジクロロメタンとしてグリシジル化反応を行った。エポキシ当量が259、EP ratioが45.6%である生成物52.2g(収率150%)を得た。
Figure 2018002691
以上の結果より、実施例1及び2は高い収率でグリシジル化を行うことができた。EP ratioが高く、官能基価が高いといえ、さらに生成物中にグリシジル基の加水分解物を殆ど含まないことが示唆される。一方、比較例1〜4は相分離が生じ、EP ratioが低かった。相分離による反応効率の低下が原因と考えられる。比較例5もEP ratioが低く、みなし収率が100%を超過し、目的物質を純度よく得ることができなかった。
本発明の多価グリシジル化合物の製造方法によれば、分子内に芳香環を有し、かつ、式(1)で表される基及び式(2)で表される基をそれぞれ1つ以上有する、分子量が170〜300の芳香族化合物(a)に対し、過酸化水素(b)をニトリル化合物(c)存在下で作用させることで、官能基価の高い芳香族グリシジル化合物を安全、低コストで高収率、低塩素含有量で得ることができるため、工業的に有用である。また、反応工程において、有機塩素化合物を使用しないため、高い電気的信頼性が求められる電子デバイスへの適用が可能である。

Claims (13)

  1. 分子内に芳香環を有し、かつ式(1)で表される基及び式(2)で表される基をそれぞれ1つ以上有し、これらの基が同じ芳香環に直接結合している、分子量が170〜300の芳香族化合物(a)に対し、過酸化水素(b)をニトリル化合物(c)の存在下で作用させ、前記芳香族化合物(a)を均一相の反応液中で酸化させることを特徴とする多価グリシジル化合物の製造方法。
    Figure 2018002691
    Figure 2018002691
    (式(1)のR〜R及び式(2)中のR〜Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表し、*は芳香環を構成する炭素原子との結合部を示す。)
  2. 前記芳香族化合物(a)において、式(1)で表される基に対して式(2)で表される基がオルト位又はパラ位に結合している請求項1に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  3. 前記芳香族化合物(a)が、式(3)で表される化合物である請求項1又は2のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
    Figure 2018002691
    (式中、R及びRは、各々独立して、式(1)で表される基であり、Xは0〜4個の芳香環上の置換基であって、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数6〜10のアリーレン基のいずれかを表す。)
  4. 前記芳香族化合物(a)が、2−アリルフェノールアリルエーテル又はオイゲノールアリルエーテルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  5. 前記過酸化水素(b)の反応系内存在濃度が、芳香族化合物(a)に対して0.01〜0.5モル当量である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  6. 前記ニトリル化合物(c)のニトリル基が、前記芳香族化合物(a)の炭素−炭素二重結合に対して2〜15モル当量となる量で、前記ニトリル化合物(c)を使用する請求項1〜5のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  7. 前記ニトリル化合物(c)が、アセトニトリルである請求項1〜6のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  8. 前記芳香族化合物(a)に対し、プロトン供与性溶媒(d)存在下で前記過酸化水素(b)を作用させることを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  9. 前記プロトン供与性溶媒(d)の使用量が、前記ニトリル化合物(c)100質量部に対して20〜500質量部である請求項8に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  10. 前記プロトン供与性溶媒(d)がアルコールを含む請求項8又は9のいずれかに記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  11. 前記芳香族化合物(a)の反応開始時の濃度が、反応液全体に対して5〜40質量%である請求項1〜10のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  12. 前記芳香族化合物(a)に対してアルカリ化合物(e)存在下で前記過酸化水素(b)を作用させることを含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
  13. 前記芳香族化合物(a)を含む反応液のpHが、反応中の任意の時点において8.0〜12.0である請求項1〜12のいずれか一項に記載の多価グリシジル化合物の製造方法。
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