以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るシートスライド装置100の構造を概略的に示す側面図であり、図1(b)はその平面図である。シートスライド装置100は、車両のフロア及びシート(いずれも不図示)との間に設けられ、シートを前後方向にスライド移動可能な状態で支持する装置である。本実施形態では、1対のシートスライド装置100が、例えば3列シートを有する車両すなわち乗用車の2列目のシートに組み込まれる場面を想定する。
図1(a)及び図1(b)においては、車両の後方側から前方側に向かう方向をx方向としてx軸を設定している。また、車両の右側から左側に向かう方向をy方向としてy軸を設定している。さらに、車両の下方側から上方側に向かう方向をz方向としてz軸を設定している。図1以降の図面においても、同様にしてx軸、y軸及びz軸を設定している。従って、車両の前後方向が±x方向、車両の幅方向が±y方向、及び、車両の高さ方向が±z方向である。
シートは、車両の乗員が着座するシートクッションと、乗員の背もたれを構成するシートバックと、乗員の頭を支持するヘッドレストと、を備えている。シートバックは、y軸に平行な揺動軸回りでシートクッションに対して所定の揺動角にわたって揺動することができる。一般に、例えば3列目のシートへの乗降口を確保するために当該2列目のシートを車両の前方に向かってスライド移動させる場合、シートバックは揺動軸回りでシートクッションに対して折り畳まれて折り畳み姿勢を確立する。
シートスライド装置100はロアレール1及びアッパレール2を有している。ロアレール1は、車両のフロアに固定される部材である。アッパレール2は、車両のシートの底面に固定される部材である。1つのシートに固定された2組のロアレール1及びアッパレール2は、それぞれの長手方向を車両の前後方向に沿わせた状態で、車両の左右方向に沿って並ぶよう並列に設けられる。アッパレール2はロアレール1に対してx軸に沿って摺動可能に支持されている。
図2(a)及び図2(b)は図1(a)のII−II線に沿った拡大断面図である。図2(a)は後述のロック状態を示す図であり、図2(b)は後述のアンロック状態を示す図である。図2(a)及び図2(b)を併せて参照すると、ロアレール1は、1枚の金属板から折り曲げ加工によって形成される。ロアレール1は、底板部3と、底板部3の両端からそれぞれ上方に向かって延在する側板部4、4と、側板部4、4の上端から内向きにそれぞれ延在する上板部5、5と、上板部5、5の内側端部からそれぞれ下方に延在する口板部6、6と、を備えている。
図2(a)及び図2(b)から明らかなように、底板部3は上板部5、5に対向しており、側板部4、4は口板部6、6にそれぞれ対向している。口板部6、6同士は互いに離間して配置されている。口板部6、6の下端と底板部3との間には隙間が形成されている。口板部6には例えば矩形の複数の開口7が形成されている。図1(a)に示すように、開口7はx軸に沿って一列に配列されている。
ロアレール1の内部に形成された空間のうち、底板部3、側板部4、上板部5及び口板部6によって囲まれている空間はアッパレール2の収容空間8を構成する。収容空間8は口板部6、6同士の間で上方に開放されている。収容空間8にはアッパレール2の一部すなわち下側部が収容されており、アッパレール2の一部すなわち上側部は、ロアレール1において上方に開放された部位から上方に突出している。
アッパレール2は、互いに重ね合わせられた1対の金属板9、9を備えている。金属板9は、収容空間8内に配置されてロアレール1の口板部6に対向する1対の側板部10、10と、側板部10から屈曲して側板部4及び口板部6に対向する1対の腕板部11、11と、を備える。つまり、1対の腕板部11、11は、側板部10の下方側から屈曲し鉛直上方に向かって伸びるように形成された部分となっている。
1対の側板部10、10のうちy方向側に配置されている側板部10には、例えば矩形の複数の開口10aが形成されている。同様に、1対の腕板部11、11のうちy方向側に配置されている腕板部11には例えば矩形の複数の開口11aが形成されている。開口10a、11aの形状及び配置間隔は、先に述べた開口7の形状及び配置間隔に等しい。
腕板部11にはローラ12が回転自在に支持されている。ローラ12は、ロアレール1の底板部3の上面に配置されており、x軸に沿った方向(すなわち、車両の前後方向)にアッパレール2をスライド移動可能に支持している。図1(a)及び図1(b)に示すように、y方向側の腕板部11には、2個のローラ12、12がx方向に配列されている。その一方で、−y方向側の腕板部11には、1個のローラ12がx方向における中央位置に配置されている。
シートスライド装置100は、x軸に沿ったアッパレール2の移動が規制されるロック状態(図2(a))と、x軸に沿ったアッパレール2の移動が許容されるアンロック状態(図2(b))と、の間を切り換えるロック機構13を備えている。ロック機構13はロック部材14を備えている。ロック部材14は、屈曲した金属板から形成されている。ロック部材14は、1対の金属板9、9のうちy方向側に配置されたものに対して、ブラケット15を介して取り付けられている。ブラケット15は、x軸と平行な回転軸16によりロック部材14を回転自在に支持している。
ロック部材14は爪部14a及び操作部14bを有している。複数の爪部14aがロック部材14の端部に形成されている。それぞれの爪部14aは、短冊状に形成されており、x軸に沿って1列に並ぶよう配列されている。また、それぞれの爪部14aの幅(x方向における寸法)は、開口10a、開口7及び開口11aのそれぞれに挿通し得る幅となっている。さらに、爪部14aの配置間隔は開口10a等の配置間隔に等しい。図2(a)に示すように、ロック状態は、それぞれの爪部14aが開口10a、開口7、及び開口11aを貫通した状態である。これにより、ロアレール1に対するアッパレール2のスライド移動(つまりx軸に沿った移動)が規制される。
操作部14bは、ロック部材14のうち、回転軸16を挟んで爪部14aとは反対側の端部に形成された部分である。操作部14bには、乗員が操作する部分であるハンドル17が連結されている。図2(a)のロック状態から、乗員がハンドル17を押し下げると、ロック部材14は回転軸16回りで回転し、それぞれの爪部14aが開口10a、開口7、及び開口11aから引き抜かれた状態、すなわち図2(b)のアンロック状態に移行する。アンロック状態では、ロアレール1に対するアッパレール2のスライド移動の規制が解除され、アッパレール2がx軸に沿って移動することができる。
図1(a)及び図1(b)に示すように、ロック部材14のうち、操作部14bの近傍にはコイルばね18の一端が接続されている。コイルばね18の他端はアッパレール2のz方向側の端部近傍に接続されている。コイルばね18の弾性復元力によって操作部14bはz方向側に付勢されている。このため、乗員がハンドル17の操作を行っていないときには、それぞれの爪部14aが開口10a、開口7、及び開口11aを貫通した状態、すなわち、図2(a)のロック状態が維持される。
図3及び図4は、シートスライド装置100の内部構造を概略的に示す図である。図3及び図4においては、1対の金属板9、9のうちのy方向側に配置されている方の一部、及び、ロアレール1のうちのy方向側(側板部4、上板部5、口板部6)の一部がそれぞれ切り欠かれた状態が示されている。図3にはロック状態が示されており、図4にはアンロック状態が示されている。
図3及び図4を併せて参照すると、シートスライド装置100は、x軸に沿ってロック部材14の両側の位置に第1レバー20及び第2レバー21が設けられている。第1レバー20及び第2レバー21は概ね平板状の部材であり、その法線方向をy軸に沿わせた状態で、回転軸22を介して金属板9、9に取り付けられている。回転軸22はy軸に平行な軸である。第1レバー20及び第2レバー21は、回転軸22回りに回転自在な状態で金属板9、9にそれぞれ取り付けられている。図2に示すように、第1レバー20及び第2レバー21は1対の金属板9、9の間に収容されている。
ロック部材14よりもx方向側に設けられた第1レバー20は、回転軸22から概ね上方に向かって延在する上腕部20aと、回転軸22を挟んで上腕部20aとは反対向きに回転軸22から概ね下方に向かって延在する下腕部20bと、を有している。上腕部20aには、上腕部20aからロック部材14の上方に向かって突出する伝動部20cが一体的に形成されている。図3及び図4から明らかなように、伝動部20cは、ロック部材14に係合して回転軸16回りのロック部材14の揺動を回転軸22回りの第1レバー20の揺動として伝動する機能を有している。
ロック部材14よりも−x方向側に設けられた第2レバー21は、回転軸22から概ね上方に向かって延在する上腕部21aと、回転軸22から概ね下方に向かって延在する下腕部21bと、を有している。第1レバー20の上腕部20aの先端と第2レバー21の上腕部21aの先端とは、コイルばね23によって互いに接続されている。コイルばね23の弾性復元力によって上腕部20a及び上腕部21aは互いに近づく方向に付勢されている。その結果、第1レバー20の伝動部20cは回転軸22回りでロック部材14に向かって常に付勢されている。
図3から明らかなように、第2レバー21の上腕部21aには、第1レバー20の伝動部20cに対応するものが形成されておらず、従って、第2レバー21にはロック部材14の揺動が伝動されない。代わりに、第2レバー21には、回転軸22から上腕部21aとは異なる上方に向かって延在する伝動部21cが形成されている。伝動部21cの先端にはワイヤ24の一端が接続されている。ワイヤ24の他端は、前述のシートバックに接続されており、シートバックの折り畳み姿勢の確立時の動作に連動して−x方向側に引っ張られる。
第1レバー20の下腕部20b及び第2レバー21の下腕部21bのそれぞれには、支軸25回りで揺動可能にスライダ26の一端が接続される。スライダ26は、その長手方向を概ねx軸に沿わせた状態で配置された棒状の部材である。第1レバー20に接続されたスライダ26は、下腕部20bの下端から+x方向に延在する一方で、第2レバー21に接続されたスライダ26は、下腕部21bの下端から−x方向に延在する。各スライダ26のうち支軸25とは反対側の端部となる位置には、当接部27が一体的に形成されている。スライダ26及び当接部27は例えば樹脂材料から一体成形される。
ロック部材14の操作部14bがz方向側に押し下げられてアンロック状態が確立されると、図4に示すように、ロック部材14が伝動部20cに当接し、ロック部材14とともに伝動部20cが持ち上げられる。これにより、第1レバー20の上腕部20aはコイルばね23の弾性復元力に抗しつつ、第2レバー21の上腕部21aから離れる方向に移動する。その結果、第1レバー20が回転軸22の周りを反時計回りに揺動し、これによって第1レバー20側のスライダ26はロック部材14側(−x方向側)に向かって移動することとなる。なお、その後の動作の詳細は後述する。
図5(a)は図3のV−V線に沿った拡大断面図であり、図5(b)は図4のV−V線に沿った拡大断面図である。図5(a)及び図5(b)を併せて参照すると、当接部27は、中間部27aと、中間部27aの先端で中間部27aに支持されてy方向側及び−y方向側に設けられた1対の腕部27b、27bと、を有している。各腕部27bには、概ねx軸に沿って貫通する矩形の断面を有する貫通孔28が形成されている。貫通孔28には、腕板部11の端部に形成されたガイド部19が挿通されている。
図3及び図4から明らかなように、ガイド部19は、その先端側に行くにつれて上板部5に近づくように、その長手方向がx軸に対して傾斜している。つまり、x方向側に配置されたスライダ26のガイド部19は、x方向側に行くに従って上板部5に近づくように傾斜している。また、−x方向側に配置されたスライダ26のガイド部19は、−x方向側に行くに従って上板部5に近づくように傾斜している。
上記のようにガイド部19は傾斜しているので、ガイド部19のうちz方向側の端面は、アッパレール2の一部に形成された傾斜面19aを形成している。傾斜面19aは、ロック部材14から遠ざかるほどz方向側に向かうように水平面に対して傾斜した面である。貫通孔28の内壁面は、これと対向するガイド部19の表面と概ね平行である。このため、z方向側における貫通孔28の内壁面すなわち天面は、傾斜面19aと同様に傾斜した面を形成している。−z方向側における貫通孔28の内壁面(すなわち底面)についても同様である。
次に、シートスライド装置100の動作について説明する。まず、シートのシートバックがシートクッションに対して折り畳まれていない通常の姿勢が確立されている場面を想定する。シートスライド装置100のロック機構13においてはロック状態が確立されている。乗員は、シートに着座していてもよく、又は、シートに着座していなくてもよい。ロック状態では、図2(a)に示すように、それぞれの爪部14aが開口10a、開口7、及び開口11aを貫通した状態にあり、ロアレール1に対するアッパレール2のスライド移動が規制されている。
このとき、図3に示すように、コイルばね23の弾性復元力によって第1レバー20の上腕部20a及び第2レバー21の上腕部21aはx軸に沿って互いに近づく方向に付勢されている。シートは通常の姿勢を確立しており、シートバックの折り畳み姿勢を確立するためのシートの操作レバーは操作されていない。従って、シートバックはシートクッションに対して折り畳まれておらず、ワイヤ24から伝動部21cには何らの力も作用していない。
図3に示すように、コイルばね23の弾性復元力によって上腕部20a及び上腕部21aがx軸に沿って互いに近づく方向に付勢される。これにより、スライダ26、26はx軸に沿って互いに遠ざかる方向に押し出される。こうして、図5(a)に示すように、各スライダ26の当接部27は、傾斜面19aと上板部5の下面(被当接面)との間に楔のように挟み込まれた状態で維持されている。その結果、当接部27と上板部5との間にはz方向に沿った力及びx方向に沿った摩擦力が働く。これにより、ロアレール1とアッパレール2との間におけるがたつき(z軸に沿った相対変位)が抑制される。
尚、図3、4においては、当接部27のうち、傾斜面19aと上板部5との間に挟み込まれる楔状の部分のみが模式的に示されている。後に説明する図6乃至12、及び図16乃至18においても同様である。
次に、乗員がシートに着座している着座時について説明する(第1条件)。具体的には、シートのシートバック及びシートのシートクッションのうち、一方が他方に対して折り畳まれていない状態となっている状況について説明する。ここでいう「折り畳まれていない状態」とは、シートバック等の角度が走行時の角度(乗員が着座し得る角度)となっている状態のことをいう。
ロック機構13においてロック状態が確立されている場合は上記と同様であるので、重複した説明は省略する。乗員がハンドル17を操作することによってロック機構13においてアンロック状態が確立されると、図2(b)に示すように、それぞれの爪部14aが開口10a、開口7、及び開口11aから引き抜かれ、ロアレール1に対するアッパレール2のスライド移動の規制が解除される。こうしてアッパレール2のx軸に沿ったスライド移動が許容される。
このとき、図4に示すように、ハンドル17の操作によってロック部材14が伝動部20cを持ち上げると、第1レバー20の上腕部20aは、コイルばね23の弾性復元力に抗して第2レバー21から離れる方向に移動する。その結果、第1レバー20が回転軸22の周りを反時計回りに揺動し、これによって第1レバー20側のスライダ26はロック部材14側(−x方向側)に向かって移動することとなる。このスライダ26の移動に伴って、x方向側に配置された当接部27は、上板部5の下面から離間していく。これによって、図4及び図5(b)に示すように、当接部27と上板部5の下面との間に隙間が形成される。
その一方で、第2レバー21はロック部材14と直接的には連動しない。ただし、第2レバー21は、コイルばね23からの力によって回転軸22の周りに回転する。具体的には、第1レバー20の上腕部20aの第2レバー21から遠ざかる方向の移動に伴って、第2レバー21の上腕部21aは、回転軸22の周りを反時計回りに回転するよう、ロック部材14側に向かって付勢される。なお、乗員はシートに着座しているので、前述と同様に、シートは通常の姿勢を確立しており、ワイヤ24から伝動部21cには何らの力も作用していない。
こうして第2レバー21の上腕部21aが、回転軸22の周りを反時計回りに回転するよう、ロック部材14側に向かって付勢されているので、第2レバー21側のスライダ26はx軸に沿って車両の後方に向かって(−x方向側に)押し出される。こうして、ロック状態が確立されている場合と同様に、第2レバー21側のスライダ26の当接部27は、傾斜面19aと上板部5の下面(被当接面)との間に楔のように挟み込まれた状態で維持されている。その結果、当接部27と上板部5との間にはz方向に沿った力及びx方向に沿った摩擦力が働くこととなる。
以上のような状態で、乗員が、シートを車両の前方(第1方向)に向かってスライド移動させる場面、すなわち、ロアレール1に対してアッパレール2を車両の前方に向かって移動させる場面を想定する。図4から明らかなように、車両の後方側のガイド部19の傾斜面19aは、車両の後方に向かうにつれてz方向側に向かうように傾斜しているので、アッパレール2(つまりガイド部19)が車両の前方に向かって移動すると、車両の後方側のスライダ26の当接部27は前述の摩擦力によって傾斜面19aと上板部5の下面との間にさらに進入しようとする。その結果、前述の摩擦力すなわち摺動抵抗は増大する。このとき、車両の前方側のスライダ26の当接部27と上板部5の下面との間には隙間があるので摺動抵抗は0(ゼロ)である。この場合のアッパレール2の摺動抵抗が第1摺動抵抗に相当する。
その一方で、乗員が、シートを車両の後方(第1方向とは反対の第2方向)に向かってスライド移動させる場面、すなわち、ロアレール1に対してアッパレール2を車両の後方に向かって移動させる場面を想定する。図4から明らかなように、車両の後方側のガイド部19の傾斜面19aは、車両の前方に向かうにつれて−z方向側に向かうように傾斜している。このため、アッパレール2(つまりガイド部19)が車両の後方に向かって移動すると、車両の後方側のスライダ26の当接部27は、前述の摩擦力によって傾斜面19aと上板部5の下面との間から離脱しようとする。その結果、前述の摩擦力すなわち摺動抵抗は減少する。このとき、車両の前方側のスライダ26の当接部27と上板部5の下面との間には隙間があるので摺動抵抗は0(ゼロ)である。この場合のアッパレール2の摺動抵抗が第2摺動抵抗に相当する。ここでは、車両の後方側の当接部27の摺動抵抗が、前方側へのスライド時に比べて減少するので、第2摺動抵抗は第1摺動抵抗より小さい。
以上によれば、乗員がシートに着座している時(着座時)にシートスライド装置100のロック機構13においてアンロック状態が確立された場面において、アッパレール2を車両の前方に向かって移動させる際に摺動抵抗が増大する一方で(第1摺動抵抗)、アッパレール2を車両の後方に向かって移動させる際に摺動抵抗が減少する(第2摺動抵抗)。一般に、シートスライド装置100は、車両の前方に向かうにつれて地面に近づくようにわずかに前下がりに傾斜して配置されている。従って、本実施形態のシートスライド装置100によれば、前方へのシートの移動時にシートの急激な移動を抑制することができ、乗員は恐怖感を覚えることなく快適にシートを移動させることができる。
次に、乗員がシートに着座していない時(非着座時)について説明する(第2条件)。具体的には、シートのシートバック及びシートのシートクッションのうち、少なくとも一方が他方に対して折り畳まれた状態となっている状況について説明する。ここでいう「折り畳まれた状態」とは、乗員が後方側のシート(例えばサードシート)に乗り込み得るように、前方側のシート(例えばセカンドシート)のシートバック等の角度を走行時とは異なる角度に変化させることをいう。
ロック機構13においてロック状態が確立されている場合は上記と同様であるので、重複した説明は省略する。ここでは、乗員がシートの操作レバーを操作することによって、シートバックの折り畳み姿勢を確立している場面を想定する。シートバックの折り畳み動作に連動してワイヤ24は車両の後方に向かって引っ張られる。その結果、第2レバー21の伝動部21cは、コイルばね23の弾性復元力に抗してロック部材14から遠ざかる方向に引っ張られる。こうして第2レバー21は回転軸22の周りを時計回り方向に揺動し、第2レバー21側のスライダ26はロック部材14側に向かって移動する。その結果、図6に示すように、第2レバー21側のスライダ26の当接部27と上板部5の下面との間には隙間が形成される。
このとき、ロック機構13においてアンロック状態が確立されると、ハンドル17の操作に伴いロック部材14が伝動部20cを持ち上げることによって、第1レバー20の上腕部20aはコイルばね23の弾性復元力に抗して第2レバー21から離れる方向に移動する。第1レバー20は回転軸22の周りを反時計回り方向に揺動し、第1レバー20側のスライダ26はロック部材14側に向かって移動する。このスライダ26の移動に伴って、第1レバー20側のスライダ26の当接部27は上板部5の下面から離間していく。これによって、当接部27と上板部5の下面との間に隙間が形成される。この場合、シートを車両の前方に向かってスライド移動させる場合のアッパレール2の摺動抵抗が第3摺動抵抗であり、シートを車両の後方に向かってスライド移動させる場合のアッパレール2の摺動抵抗が第4摺動抵抗である。ここでは、車両の前方側及び後方側の両方の当接部27が上板部5の下面から離間しているので、第3摺動抵抗及び第4摺動抵抗は第2摺動抵抗より小さい。
以上によれば、車両の前方側及び後方側の当接部27と上板部5の下面との間で摩擦力は0になるので、ロアレール1に対するアッパレール2の摺動抵抗、具体的には第3摺動抵抗及び第4摺動抵抗を極めて小さく設定することができる。その結果、乗員は、車両の前方及び後方に向かってシートを軽い力で簡単に快適に移動させることできる。また、上述したように、一般に、シートスライド装置100は、車両の前方に向かうにつれて地面に近づくようにわずかに傾斜して配置されているので、例えばシートを前方に移動させる際に乗員がシートに力を加えなくてもシートの自重のみによってシートを車両の前方に移動させることも可能である。よって、本発明によれば、ロック機構13がアンロック状態にあり、かつ、着座時及び非着座時において、アッパレール2の摺動抵抗を動的に調節して摺動抵抗の設定を切り換えることができる。
車両の前方側及び後方側に配置されたそれぞれの当接部27は、アッパレール2に保持される部材であって、摺動抵抗を増加させるためにロアレール1(上板部5)とアッパレール2(ガイド部19)との間に挟み込まれる部材、ということができる。
第1レバー20、第2レバー21、スライダ26、当接部27は、アンロック状態においてロアレール1に対するアッパレール2の摺動の摺動抵抗を調節するための機構、すなわち、本実施形態における「調節機構」を構成するものである。
図7は、本発明の第2実施形態に係るシートスライド装置100Aの内部構造を概略的に示す図である。図7は、ロック機構13においてロック状態が確立された状態を示している。以下においては、第1実施形態と相違する点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
第2実施形態に係るシートスライド装置100Aでは、第1実施形態における第1レバー20の組み込みが省略されている。すなわち、ロック部材14の動作には何も連動しないことになる。図7から明らかなように、コイルばね23の一端は、金属板9に形成された係止孔9aに係止されている。コイルばね23の他端は第2レバー21の上腕部21aに接続されている。このため前述と同様に、コイルばね23の弾性復元力によって上腕部21aは回転軸22の周りを反時計回り方向に回転するようにロック部材14側に付勢されている。従って、車両の後方側のスライダ26の当接部27は−x方向側に付勢されており、傾斜面19aと上板部5の下面との間に楔のように挟み込まれた状態で維持されている。
その一方で、車両の前方側のスライダ26の一端は、x軸に沿って延在するコイルばね30の一端に接続されており、コイルばね30の他端は、金属板9に形成された係止孔9bに係止されている。スライダ26の他端(x方向側の端部)には前述の当接部27が一体的に形成されている。方側のスライダ26は、コイルばね30の弾性復元力により、−x方向側に付勢されている。
本実施形態では、車両の前方側の当接部27及びガイド部19の傾斜面19aは、車両の後方側の当接部27及びガイド部19の傾斜面19aと同様に構成されている。すなわち、車両の前方側のガイド部19の傾斜面19aは、車両の前方に向かうにつれて−z方向側に向かうように傾斜している。従って、車両の前方側のスライダ26の当接部27は、コイルばね30の弾性復元力によって−x方向側に付勢されており、傾斜面19aと上板部5の下面との間に楔のように挟み込まれた状態で維持されている。
以上のように構成されたシートスライド装置100Aによっても前述の第1実施形態のシートスライド装置100と同様の作用効果を実現することができる。すなわち、ロック状態及びアンロック状態に関わらず、コイルばね23の弾性復元力によって、車両の後方側のスライダ26は車両の後方に向かって押し出されるので、当該スライダ26の当接部27は、傾斜面19aと上板部5の下面との間に楔のように挟み込まれた状態で維持される。同様に、コイルばね30の弾性復元力によって、車両の前方側のスライダ26は車両の後方に向かって引っ張られるので、当該スライダ26の当接部27は、傾斜面19aと上板部5の下面との間に楔のように挟み込まれた状態で維持される。
次に、乗員の着座時に(第1条件)、ロック機構13においてアンロック状態が確立された場面を想定する。既に述べたように本実施形態では、車両の前方側及び後方側の両方の傾斜面19a、19aが、車両の後方に向かうにつれてz方向側に向かうように傾斜している。このため、シートすなわちアッパレール2が車両の前方に向かって移動しようとすると、車両の前方側及び後方側の両方の当接部27、27が、上板部5から受ける摩擦力によって傾斜面19aと上板部5の下面との間にさらに進入しようとする。その結果、アッパレール2が受ける摩擦力すなわち摺動抵抗(本実施形態の第1摺動抵抗)は増大する。
その一方で、乗員が、ロアレール1に対してアッパレール2を車両の後方に向かって移動させる場面では、シートすなわちアッパレール2が車両の後方に向かって移動すると、車両の前方側及び後方側の両方の当接部27、27が、上板部5から受ける摩擦力によって傾斜面19aと上板部5の下面との間から離脱しようとする。その結果、前述の摩擦力すなわち摺動抵抗(本実施形態の第2摺動抵抗)は減少する。
また、前述と同様に、シートバックが折り畳み姿勢にある場合には(第2条件)、シートバックの折り畳み動作に連動してワイヤ24は車両の後方に向かって引っ張られる。その結果、第2レバー21の伝動部21cは、コイルばね23の弾性復元力に抗してロック部材14から遠ざかる方向に引っ張られる。また、第2レバー21は回転軸22の周りを時計回り方向に揺動し、第2レバー21側のスライダ26はロック部材14側に向かって移動する。
これによって、車両の後方側のスライダ26の当接部27と上板部5の下面との間には隙間が形成される。車両の後方側の当接部27と上板部5の下面との間の摺動抵抗は、シートの移動方向によらず0になる。一方、車両の前方側の当接部27と上板部5の下面との間の摺動抵抗は、先に述べた乗員の着座時の場合と同様に、移動方向に応じて異なる大きさとなる。つまり、シートを前方側に移動させる際の摺動抵抗が、シートを後方側に移動させる際の摺動抵抗よりも大きくなる。
以上のように、本実施形態では、車両の後方側の当接部27と上板部5の下面との間の摺動抵抗のみを、シートバックの折り畳み動作に連動して変化させる。シートバックが折り畳み姿勢にある場合において、シートを前方側に移動させる際にアッパレール2が受ける摺動抵抗が本実施形態の第3摺動抵抗に該当し、シートを後方側に移動させる際にアッパレール2が受ける摺動抵抗が本実施形態の第4摺動抵抗に該当する。第4摺動抵抗は、第1摺動抵抗、第2摺動抵抗、及び第3摺動抵抗のいずれよりも小さい。
本実施形態においても、車両の前方側及び後方側に配置されたそれぞれの当接部27は、アッパレール2に保持される部材であって、摺動抵抗を増加させるためにロアレール1(上板部5)とアッパレール2(ガイド部19)との間に挟み込まれる部材、ということができる。前方側に配置された方の当接部27は、本実施形態における「第1楔部材」に該当する。また、上記第1楔部材よりも後方側となる位置に配置された方の当接部27は、本実施形態における「第2楔部材」に該当する。
車両の前方側及び後方側に配置されたそれぞれのスライダ26は、当接部27を同一の所定方向(具体的には−x方向)に移動させ、当接部27とロアレール1との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させる部材、ということができる。前方側に配置された方のスライダ26は、第1楔部材を−x方向に移動させ、第1楔部材とロアレール(上板部5)との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させるための「第1支持部材」に該当する。また、上記第1支持部材よりも後方側となる位置に配置された方のスライダ26は、第2楔部材を−x方向に移動させ、第2楔部材とロアレール(上板部5)との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させるための「第2支持部材」に該当する。
以上のようなシートスライド装置100Aには、図8に示すように、車両の前方側のスライダ26と車両の後方側のスライダ26とを連結する連結部材31がさらに組み込まれてもよい。連結部材31のうち−x方向側の端部は、車両の後方側のスライダ26と共に、下腕部21bの下端部に対して回転自在に連結されている。また、連結部材31のうちx方向側の端部は、車両の前方側のスライダ26に対して連結されている。
このため、シートバックの折り畳み動作に連動してワイヤ24が車両の後方に向かって引っ張られた場合には、車両の前方側のスライダ26は、連結部材31によって車両の前方に向かって押し出される。その結果、車両の前方側の当接部27と上板部5の下面との間に隙間が形成される。これにより、車両の前方側においても、(後方側と同様に)当接部27と上板部5の下面との間の摩擦力が0になるので、車両の前方に向かってシートを移動させる際のロアレール1に対するアッパレール2の摺動抵抗をさらに小さく設定することができる。
図9は、本発明の第3実施形態に係るシートスライド装置100Bの内部構造を概略的に示す図である。図9は、ロック機構13においてロック状態が確立された状態を示している。以下においては、第1実施形態及び第2実施形態と相違する点についてのみ説明し、第1実施形態及び第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
第3実施形態に係るシートスライド装置100Bでは、第1実施形態のシートスライド装置100において第2レバー21の構成が変更された。具体的には、第2レバー21の上腕部21aには、棒状の部材である揺動部材32が、y軸に平行に規定される揺動軸33回りに揺動自在に連結される。揺動部材32は、上記の揺動軸33と、直線部32bと、軸部分32aと、を備える。直線部32bは、揺動軸33からy軸に対して垂直な方向に伸びる直線状の部分である。軸部分32aは、直線部32bのうち揺動軸33とは反対側の端部から、図9における紙面奥行方向(つまり−y方向)に向かって伸びる直線状の部分である。軸部分32aは、第2レバー21の上腕部21aのうち、ロック部材14側の側面に沿って配置されている。
本実施形態における揺動軸33は、直線部32bのうち軸部分32aとは反対側の端部から、図9における紙面奥行方向(つまり−y方向)に向かって伸びる直線状の部分となっている。揺動軸33は、例えば上腕部21aに形成された穴に挿通されている。揺動部材32は、第2レバー21に対して、揺動軸33の周りに回転自在な状態で支持されている。
この揺動部材32には、回転軸22に回転自在に支持される伝動部材34が関連付けられる。伝動部材34は、第1レバー20の伝動部20cと同様に、ロック部材14に係合してロック部材14の揺動を第2レバー21の揺動として伝動する機能を有している。伝動部材34の+z方向の上側の側面には+z方向に突出する突部34aが形成される。突部34aを境界にして、伝動部材34の基端側(つまり回転軸22側)の側面に第1領域が規定され、伝動部材34の先端側の側面に第2領域が規定される。図9では揺動部材32の軸部分32aは第1領域に配置されている。
揺動部材32にはさらに、回転軸22に回転自在に支持されるカム部材35が関連付けられる。カム部材35の+z方向の上側の側面にはカム面35aが形成されている。カム面35aには揺動部材32の軸部分32aが関連付けられている。これにより、回転軸22回りのカム部材35の揺動に応じて、揺動部材32の軸部分32aが伝動部材34の第1領域から第2領域にその位置を変化させることができる。なお、カム部材35には、上方に延在するレバー36が一体化されている。例えば乗員がレバー36を手動操作することにより、カム部材35を揺動させることができる。
次に、シートスライド装置100Bの動作について説明する。ロック機構13においてロック状態が確立されている場面では、コイルばね23の弾性復元力によって第1レバー20の上腕部20a及び第2レバー21の上腕部21aはx軸に沿って互いに近づく方向に付勢されている。その結果、スライダ26、26はx軸に沿って互いに遠ざかる方向に押し出される。こうして、それぞれの当接部27が傾斜面19aと上板部5の下面(被当接面)との間に楔のように挟み込まれる結果、当接部27と上板部5との間にはz方向に沿った力及びx方向に沿った摩擦力が働く。
次に、ロック機構13においてアンロック状態が確立されると、図10に示すように、ロック部材14が伝動部20c及び伝動部材34を持ち上げる。第1レバー20の上腕部20aは、コイルばね23の弾性復元力に抗して第2レバー21から離れる方向に揺動する。一方で、揺動部材32の軸部分32aが伝動部材34の突部34aに係止して第1領域に留まるので、伝動部材34の突部34aは第2レバー21をコイルばね23の弾性復元力に抗して第1レバー20から離れる方向に(つまり時計回り方向に)揺動させる。その結果、両方のスライダ26が互いに近づくように移動するので、それぞれの当接部27は上板部5の下面から離間し、当接部27と上板部5の下面との間に隙間が形成される。このため、シートを前方側にスライドさせる際の摺動抵抗(第3摺動抵抗)、及びシートを後方側にスライドさせる際の摺動抵抗(第4摺動抵抗)は、いずれも小さくなる。このような状態は、乗員がシートに着座していないとき(第2条件)に設定される。
その一方で、アンロック状態の確立時、レバー36の操作によってカム部材35を図10において時計回りに揺動させると、カム部材35のカム面35aが揺動部材32の軸部分32aを持ち上げる。カム部材35がさらに時計回りに揺動すると、揺動部材32の軸部分32aは突部34aとの係止から解放される。その結果、コイルばね23の弾性復元力によって第2レバー21の上腕部21aはロック部材14側に揺動する。これによって、図11に示すように、揺動部材32の軸部分32aは伝動部材34の第1領域から第2領域に移動する。
その結果、車両の後方側のスライダ26は車両の後方に向かう方向に押し出される。こうして、後方側の当接部27が傾斜面19aと上板部5の下面(被当接面)との間に楔のように挟み込まれる結果、この当接部27と上板部5との間にはz方向に沿った力及びx方向に沿った摩擦力が働く。従って、前述の第1実施形態と同様に、アッパレール2を車両の前方に向かって移動させる際(第1条件)における摺動抵抗(第1摺動抵抗)を増大させることができる。こうして本実施形態のシートスライド装置100Bは前述の実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
本実施形態におけるレバー36は、ロアレール1に対するアッパレール2の摺動の摺動抵抗を調節するための「調節機構」の一部に該当する。上記のように、当該調節機構は、レバー36に対して使用者が行う操作に基づいて摺動抵抗を変化させるように構成されている。
先に説明した第1及び第2実施形態では、シートスライド装置100、100Aの傾斜を検出するセンサが組み込まれてもよく、このセンサによって検出された傾斜の大きさに応じてアッパレール2の摺動抵抗が動的に調節されてもよい。例えば乗員の着座時に、シートスライド装置100、100Aの傾斜が増大したことがセンサによって検知された場合には、電動アクチュエータによって伝動部21cを反時計回りに揺動させ、車両の後方側のスライダ26の当接部27を傾斜面19aと上板部5の下面との間にさらに進入させるような構成としてもよい。このような構成であっても、アッパレール2の摺動抵抗を適切に増加させることができる。
また、例えば乗員の非着座時にシートスライド装置100、100Aの傾斜が所定の閾値よりも大きくなり過ぎた場合には、アッパレール2の摺動抵抗を増大させるような制御が行われてもよい。このためには、例えば、電動アクチュエータ等によりワイヤ24を引っ張る量を減少させて、当接部27を傾斜面19aと上板部5の下面(被当接面)との間に楔のように挟み込んでいくことが想定される。
また、例えば第1及び第2実施形態では、第2レバー21の伝動部21cの先端にはワイヤ24の一端が接続されており、シートバックの折り畳み動作に連動してワイヤ24が引っ張られるように構成されている。しかしながら、ワイヤ24の他端は例えばシートクッションに接続されてもよい。この場合、ワイヤ24は、例えばシートバックに対してシートクッションが折り畳まれる折り畳み動作(すなわち、シートバックに対してシートクッションを跳ね上げる動作)に連動して引っ張られる。こうした折り畳み動作との連動によってもアッパレール2の摺動抵抗を動的に調節することができる。
ワイヤ24の他端は、例えば乗員が操作可能な操作ハンドル(不図示)等に接続され、例えばシートに着座していない乗員が当該操作ハンドルを操作することによってワイヤ24を引っ張る量、すなわち、アッパレール2の摺動抵抗を動的に調節することができるように構成されてもよい。この場合、シートバックやシートクッションは互いに対して折り畳まれておらず、シートは通常の姿勢を確立しているが、こうした場合にも乗員の操作によって、着座時及び非着座時(第1条件及び第2条件)における摺動抵抗の動的な調節を実現することができる。
また、例えば第3実施形態に係るシートスライド装置100Bには、シートに乗員が着座した場合のシートの沈み込みを検出するセンサが組み込まれてもよい。この変形例では、当該センサによって検出された乗員の着座に応じて、電動アクチュエータ等によりレバー36が操作されることによって、揺動部材32の軸部分32aが伝動部材34の第1領域から第2領域に移動し、シートスライド装置100Bにおいて第1摺動抵抗が設定されてもよい。こうしてシートスライド装置100Bでは、着座時及び非着座時(第1条件及び第2条件)が自動的に切り換えられてもよい。
ところで、図8を参照しながら説明した第2実施形態の変形例においては、第2レバー21の回転により、前後それぞれの当接部27が互いに離間する方向に移動する。このとき、前方側の当接部27が上板部5に押し付けられるタイミングと、後方側の当接部27が上板部5に押し付けられるタイミングとが同時であれば、シートを摺動させる際の摺動抵抗を設計通りの大きさに変化させることができる。
しかしながら、例えば部品の寸法誤差に起因して上記のタイミングが互いに異なってしまった場合には、一方の当接部27が先に上板部5に押し付けられた段階で、それぞれの当接部27がそれ以上変位し得ない状態となってしまう。つまり、一方の当接部27のみが上板部5に押し付けられる一方で、他方の当接部27は上板部5に押し付けられない状態となってしまう。このような状態においては、シートを摺動させる際の摺動抵抗が、設計値よりも小さくなってしまう。
これを解決するための構成例として、本発明の第4実施形態を説明する。図12は、第2実施形態に係るシートスライド装置100Cの内部構造を概略的に示す図である。以下では、図8に示される第2実施形態の変形例と異なる点について主に説明し、当該変形例と共通する点については適宜説明を省略する。
図12では、上板部5の下面に符号5aを付してある。以下では、この下面のことを「下面5a」と表記する。図12では、図示が煩雑となってしまうことを避けるために、ロック部材14やローラ12の外形が点線で示されている。
本実施形態でも、図8に示される変形例と同様に、それぞれのガイド部19の上面には傾斜面19aが形成されている。具体的には、前方側のガイド部19に形成された傾斜面19aは、前方側に行くほど下面5aから遠ざかるように傾斜している。また、後方側のガイド部19に形成された傾斜面19aは、後方側に行くほど下面5aに近づくように傾斜している。
本実施形態においても、車両の前方側及び後方側に配置されたそれぞれの当接部27は、アッパレール2に保持される部材であって、摺動抵抗を増加させるためにロアレール1(上板部5)とアッパレール2(ガイド部19)との間に挟み込まれる部材、ということができる。前方側に配置された方の当接部27は、本実施形態における「第1楔部材」に該当する。また、上記第1楔部材よりも後方側となる位置に配置された方の当接部27は、本実施形態における「第2楔部材」に該当する。
本実施形態では、一対のスライダ26、26に替えて、第1スライダ260と第2スライダ270とが設けられている。第1スライダ260は、前方側の当接部27を支持する部材である。第2スライダ270は、後方側の当接部27を支持する部材である。
第1スライダ260及び第2スライダ270は、それぞれの当接部27を同一の所定方向(具体的には−x方向)に移動させ、当接部27とロアレール1(下面5a)との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させる部材、ということができる。前方側に配置された第1スライダ260は、第1楔部材を−x方向に移動させ、第1楔部材とロアレール(下面5a)との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させるための「第1支持部材」に該当する。また、上記第1支持部材よりも後方側となる位置に配置された第2スライダ270は、第2楔部材を−x方向に移動させ、第2楔部材とロアレール(下面5a)との間に働く摩擦力を増加させることにより摺動抵抗を増加させるための「第2支持部材」に該当する。
第1スライダ260及び第2スライダ270の具体的な構成について、図13乃至15を参照しながら説明する。図13は、互いに組み付けられた状態の第1スライダ260及び第2スライダ270を、下方側から見て描いた斜視図である。図14はその分解組立図である。図15は、第2スライダ270を上方側から見て描いた斜視図である。
第1スライダ260は、棒状に形成された直線部261を有している。直線部261は、その長手方向に対して垂直な断面の外形が矩形となるように形成されている。直線部261のうちx方向側の端部には、図5を参照しながら説明したものと同様の当接部27が形成されている。直線部261のうち−x方向側の端部には、支持部265が形成されている。支持部265は、図12に示されるように、第2レバー21の下腕部21bの下端部に対して回転自在に支持される部分である。
直線部261のうち−z方向側の面には、z方向側に向かって後退するような凹部263が形成されている。図14に示されるように、凹部263は、支持部265のうち−x方向側の部分に形成されている。x方向側における凹部263の端部となる位置には、仕切り板262が形成されている。また、−x方向側における凹部263の端部となる位置には、仕切り板264が形成されている。仕切り板262、264はいずれも、x軸に対して垂直な平板状に形成されている。
図15に示されるように、第2スライダ270は、中間部271と、一対の水平腕272と、一対の垂直腕273とを有している。中間部271は、第2スライダ270のうちy方向における中央の部分である。中間部271には、前方板2711と、後方板2712とが形成されている。前方板2711は、中間部271のうちx方向側の端部となる位置において、z方向側に突出するように形成されている。後方板2712は、中間部271のうち−x方向側の端部となる位置において、z方向側に突出するように形成されている。前方板2711及び後方板2712は、いずれも、x軸に対して垂直な平板状に形成されている。
一対の水平腕272は、中間部271の下端から、それぞれ−y方向及びy方向に向かって伸びるように形成された部分である。それぞれの水平腕272は、いずれも、z軸に対して垂直な平板状に形成されている。
一対の垂直腕273は、それぞれの水平腕272の先端からz方向に向かって伸びるように形成された部分である。それぞれの垂直腕273は、いずれも、y軸に対して垂直な平板状に形成されている。また、それぞれの垂直腕273は、後方板2712よりも更に−x方向側に向かって伸びている。それぞれの垂直腕273のうち−x方向側の端部となる位置には、当接部27が形成されている。この当接部27は、図5に示される構成と異なり、中間部27aを有しておらず腕部27bのみを有する形状となっている(本実施形態の中間部271が、図5の中間部27aに対応するもの、ということもできる)。
図13及び図14に示されるように、第1スライダ260と第2スライダ270とが互いに組み付けられている状態においては、第2スライダ270の中間部271が、第1スライダ260の凹部263に対して下方側から挿入された状態となっている。第2スライダ270は、このように中間部271が凹部263に挿入された状態のまま、第1スライダ260に対しx軸に沿って移動することが可能となっている。
凹部263にはコイルばね280が配置されている。コイルばね280は、その一端が第1スライダ260の仕切り板262に当接しており、その他端が第2スライダ270の前方板2711に当接している。コイルばね280は、仕切り板262と前方板2711とに対し、これらをx軸に沿って互いに押し広げるような方向の力を加えている。換言すれば、コイルばね280は、第1スライダ260をx方向側に付勢しており、第2スライダ270を−x方向側に付勢している。第1スライダ260及び第2スライダ270のそれぞれに外力が加えられていない状態(つまり図13のような状態)においては、第2スライダ270の後方板2712が、第1スライダ260の仕切り板264に対して押し付けられた状態となっている。
このように、コイルばね280は、第1スライダ260(第1支持部材)と第2スライダ270(第2支持部材)との間に設けられており、両者の間を広げるように力を加えている。このようなコイルばね280は、本実施形態における「弾性部材」に該当する。コイルばね280に替えて、他の態様の弾性部材が用いられてもよい。
次に、シートスライド装置100Cの動作について説明する。図12においては、ロック機構13によりロック状態が確立されている。また、ワイヤ24は車両の後方に向かって引っ張られており、第2レバー21は回転軸22の周りを時計回り方向に揺動している。その結果、第1スライダ260及びその先端の当接部27はx方向に移動しており、当該当接部27と上板部5の下面5aとの間には隙間が形成されている。
また、後方板2712と仕切り板264とは互いに当接した状態となっている。このため、第2レバー21が上記のように時計回り方向に揺動したことに伴って、第2スライダ270及びその先端の当接部27は−x方向に移動しており、当該当接部27と上板部5の下面5aとの間にも隙間が形成されている。
以上のように、図12に示される状態では、前方側の当接部27及び後方側の当接部27はいずれも、下面5aに当接していない。このため、シートを前方側に移動させる際の摺動抵抗(第3摺動抵抗)、及び、シートを後方側に移動させる際の摺動抵抗(第4摺動抵抗)は、いずれも小さくなっている。
図12に示される状態から、ワイヤ24が後方側に向かって引っ張られる力が弱められると、コイルばね23の弾性復元力により、第2レバー21は回転軸22の周りを反時計回り方向に揺動する。図16には、その途中の段階が模式的に示されている。図16の状態では、第2レバー21の上記揺動に伴って、第1スライダ260及び第2スライダ270のそれぞれが−x方向側に移動している。これにより、第2スライダ270に設けられた後方側の当接部27は、傾斜面19aと上板部5の下面5aとの間に楔のように挟み込まれた状態となっている。
一方、後方側の当接部27が下面5aに当接した直後の状態(つまり図16の状態)では、前方側の当接部27は、未だ下面5aに当接していない。このように、シートスライド装置100Cでは、後方側の当接部27が先に下面5aに当接した状態となるように、直線部261の長さ等が設計されている。
図16の状態から、ワイヤ24が後方側に向かって引っ張られる力が更に弱められると、コイルばね23の弾性復元力により、第2レバー21は更に反時計回り方向に揺動する。このとき、後方側の当接部27が既に下面5aに当接しているので、第2スライダ270はそれ以上−x方向側には移動しない。つまり、図16の状態から後述の図17の状態に移行するに当たっては、x軸に沿った第2スライダ270の位置は変化しない。
一方、第1スライダ260は、コイルばね280の弾性復元力に抗しながら更に−x方向側に移動する。このとき、第1スライダ260は、(静止している)第2スライダ270に対して相対的に移動することとなる。換言すれば、第2スライダ270の中間部271は、凹部263の内部を相対的にスライド移動することとなる。最終的には図17に示されるように、第1スライダ260に設けられた前方側の当接部27が、傾斜面19aと上板部5の下面5aとの間に楔のように挟み込まれた状態となる。
このように、本実施形態では、第2レバー21が反時計回り方向に回転する際に、先に後方側の当接部27を下面5aに当接させる構成としながらも、前方側の当接部27も下面5aに当接させることができる。第1スライダ260等の寸法に誤差が生じている場合であっても、それぞれの当接部27を下面5aに確実に当接させることができるので、シートを移動させる際の摺動抵抗の大きさを設計通りの大きさとすることができる。
第2レバー21は、第1支持部材である第1スライダ260を−x方向側に移動させ、これにより摺動抵抗を増加させるものである。このような第2レバー21は、本実施形態における「レバー部材」に該当する。
本実施形態では、前方側の当接部27を支持する第1スライダ260と、後方側の当接部27を支持する第2スライダ270とが、互いに別体の部品として構成されている。このような態様に替えて、図18に示される変形例のように、第1スライダ部310と第2スライダ部320とが一体に形成されているような態様であってもよい。第1スライダ部310は、この変形例における「第1支持部材」に該当する部分である。第2スライダ部320は、この変形例における「第2支持部材」に該当する部分である。
この変形例では、第1スライダ部310と第2スライダ部320との間がバネ部330によって繋がれており、第1スライダ部310、第2スライダ部320、及びバネ部330の全体が一体の部品として形成されている。バネ部330は、この変形例における「弾性部材」に該当する部分である。
第1スライダ部310のうちバネ部330寄りの部分には、支持部311が形成されている。支持部311は、第4実施形態(図12)の支持部265と同様に、第2レバー21の下腕部21bの下端部に対して回転自在に支持される部分である。
このような構成においては、第4実施形態について説明したものと同様の効果に加えて、第1支持部材や第2支持部材を構成するための部品点数を削減できるという効果も奏する。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更されてもよい。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせ可能であり、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。