A.序説
本発明者らは、外部電源により作動する低温保存またはインキュベーターを使用せずに、初代哺乳動物細胞を培養するためのシステムおよび方法を発見した。システムおよび方法は、例えば、接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物を、起点から目的地へと搬送するのに有用である。本発明は部分的に、接着性初代哺乳動物肝細胞を含む培養物を、培養基質への接着を保ちながら、第1の培養時間中に、37℃未満の培養温度、および培養温度の変動を特徴とする条件下で維持しうるという、本発明者らの発見に基づく。この発見内容は、本発明の培養法を部分的に可能とする。本発明者らはまた、細胞が培養基質への接着を保つ、第1の培養時間中の、37℃未満の培養温度、および培養温度の変動を特徴とする条件下における、接着性初代哺乳動物肝細胞の培養をもたらす培養システムも発見した。本明細書では、本発明のこれらの態様および他の態様が提供される。
電流により作動する従来の細胞培養インキュベーターは、一定の細胞培養温度を維持するように設計され、機能する。哺乳動物細胞を培養するために使用される、標準的な実験室用インキュベーターは、培養温度を、0.2℃以内に維持する。哺乳動物細胞を培養する場合の標準的な慣行は、培養時間を通して、培養される各細胞型に最適の培養温度で細胞を維持することである。本発明者らは、本発明の開発において、これらの標準的な慣行のいずれにも従わないこととした。
本発明のシステムは、細胞培養環境をもたらす、温度緩衝のいくつかの形態の新規の組合せに基づく。本発明者らは、容器設計の範囲内にある容器を活用するシステムを使用して、初代哺乳動物細胞を、2〜24時間またはこれを超える時間にわたり培養しうることを発見した。システムは、初代哺乳動物細胞培養物を含む細胞培養プレートを取り囲む内部容器と、内部容器を取り囲む外部容器とを含む。熱源は任意選択で、内部容器と外部容器との間に位置させる;すなわち、熱源は、内部容器の外側、かつ外部容器の内側に位置させる。熱源は、外部容器の外側のエネルギー源へと機能的に接続されていない。これは、本発明のシステムの実施形態を、外部電源により作動する従来の細胞培養インキュベーターから差別化する、いくつかの特徴のうちの1つである。
このようにして、熱源を、内部容器と外部容器との間に位置させることにより、本発明のシステムのいくつかの実施形態の携行性が、従来の細胞培養インキュベーターと比較して増強される。熱源はまた、培養物中の初代哺乳動物細胞の、培養基質への接着を維持するのに十分な温度制御を細胞培養プレートにもたらす。
本発明のシステムの使用を介して、本発明者らはまた、初代哺乳動物細胞を培養する方法も発見した。一部の実施形態では、方法は、接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物を含む細胞培養プレートを含む、本発明の細胞培養システムを用意するステップと、細胞培養システムを、第1の容器の内側の温度が、第1の培養時間にわたり、18℃〜38℃の範囲内である条件下で維持するステップとを含む。本発明者らは、このような方法が、第1の培養時間の終了時において、接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物をもたらすことを発見した。接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物は、初代哺乳動物細胞の機能に依拠するアッセイにおいて、数時間以内に使用する準備ができている。
また、初代哺乳動物細胞を培養する代替的な方法であって、本発明の細胞培養システムを活用しない方法も提供される。本発明の細胞培養システムの使用を介して、部分的に、本発明者らは、細胞培養温度と、培養される初代哺乳動物細胞の機能状態との関係が、当技術分野で一般に察知されているほど制約的ではないことを発見した。特に、本発明者らは、初代哺乳動物細胞培養物を、培養温度が、第1の培養時間にわたり、18℃〜38℃の範囲内である条件下で維持して、第1の培養時間の終了時において、接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物をもたらしうることを発見した。
B.初代哺乳動物の細胞培養システム
本発明は、細胞培養システムを包含する。システムは、外部電源へと機能的に連結されたインキュベーターを使用せずに、初代哺乳動物細胞を培養することが有用な、任意の文脈で使用することができる。1つのこのような適用は、初代哺乳動物細胞を含む培養物の、供給源から目的地への搬送における適用、例えば、製造業者が、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、顧客へと搬送することを所望する場合の適用である。
一部の実施形態では、細胞培養システムは、第1の容器が第2の容器内に配置されている、第1の容器および第2の容器と;第1の容器内に配置された細胞培養プレートと;第2の容器の内側、かつ第1の容器の外側に配置された熱源とを含む。一部の実施形態では、第1の容器および/または第2の容器の壁は、押出ポリスチレン(EPS)発泡体から作られている。一部の実施形態では、第1の容器と、第2の容器とは、第2の容器の内壁と、第1の容器の外壁との間に、空間をもたらすような寸法である。一部の実施形態では、システムは、第2の容器の内壁に隣接する第1のエッジと、第1の容器の外壁に隣接する第2のエッジとを含む、少なくとも1つの安定化材をさらに含む。一部の実施形態では、熱源は、第2の容器の内壁と、第1の容器の外壁との間に位置する。一部の実施形態では、細胞培養プレートは、接着性初代哺乳動物細胞を含む培養物を含有する。一部の実施形態では、接着性初代哺乳動物細胞は、肝細胞である。一部の実施形態では、細胞培養プレートは、基部、カバー、およびウェル内の培養培地を保持する液体バリアをもたらすように基部とカバーとの間に配置されたエラストマー材料の層を含む。一部の実施形態では、エラストマー材料は、ガス透過性である。一部の実施形態では、エラストマー材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。一部の実施形態では、熱源は、発熱性化学プロセスである。一部の実施形態では、熱源は、第3の容器を含む。一部の実施形態では、熱源は、発熱性化学プロセスの基質および/または生成物を含む第3の容器を含む。一部の実施形態では、第3の容器のピーク表面温度は、34℃〜40℃である。一部の実施形態では、第1の容器は、インターロックする基部および蓋を含む。一部の実施形態では、第2の容器(200)は、インターロックする基部および蓋を含む。
第1の容器:第1の容器は一般に、熱絶縁特性、軽量、化学的不活性性、衝撃耐性、および製造の容易さのうちの少なくとも1つを含む、有用な特性を特徴とする材料から作られる。例えば、第1の容器は、発泡スチロール(EPS;Styrofoam)、ポリウレタン(PUR)、ポリエチレン発泡体、およびグラスウールから選択される、少なくとも1つの材料から作ることができる。一部の実施形態では、第1の容器は、押出ポリスチレン(EPS)発泡体製である。一部の実施形態では、第1の容器と、第2の容器とは、同じ材料で作られる。一部の実施形態では、第1の容器と、第2の容器とは、異なる材料で作られる。一部の実施形態では、第1の容器および/または第2の容器は、1つを超える材料で作られる。第1の容器の内寸は、第1の容器が、第2の容器内にはまることが可能であり、任意選択で、第1の容器の外壁と、第2の容器の内壁との間に空間をもたらすように、また、第1の容器が、第1の容器の内側に、少なくとも1つの細胞培養プレートを収容しうるように選択される。第1の容器の壁の厚さは、典型的には、1〜2インチなど、0.5〜3インチである。一部の実施形態では、第2の容器の壁は、1.5インチ厚である。一部の実施形態では、第1の容器の壁の厚さと、第2の容器の壁の厚さとは、同じである。一部の実施形態では、第1の容器の壁の厚さと、第2の容器の壁の厚さとは、異なる。一部の実施形態では、容器の一方または両方は、異なる厚さの壁を含む。第1の容器の、内部の長さ、幅、および高さは一般に、独立に、4〜30インチとなる。一部の実施形態では、第1の容器の内法は、独立に5〜9インチである。一部の実施形態では、第1の容器および第2の容器の寸法は、第2の容器を、第1の容器の内側に入れる場合、第1の容器と、第2の容器との間に、空間をもたらす。空隙は、熱緩衝材として作用し、熱源を活用する実施形態における、任意選択の熱源の機能と、熱源により発生する熱の循環とを容易にする。第1の容器の目的はまた、二通りある。第1に、第1の容器は、第1の容器の内部を、第2の容器から隔離して、第1の容器の内側における、時間経過にわたる温度のばらつきの度合いを制限する。第2に、内部は、初代哺乳動物細胞を含む培養物を含む細胞培養プレートを、培養時間にわたり維持するための半制御環境をもたらす。第1の容器は、インターロックする上部および下部を含みうる。上部と下部とがインターロックするのであれ、しないのであれ、上部と下部とは、テープなど、任意の適する材料を使用して、互いと接触させて固定することができる。この配置は、初代哺乳動物細胞を含む培養物を含む細胞培養プレートを、第1の容器の内側に入れることを可能とする。一部の実施形態では、第2の容器の下部のへりと、上部のへりとは、緊密なシーリングを提供するだけでなく、第1の容器と、第2の容器との間の熱移動も低減する、合致するロック溝構造を有する。
第2の容器:第2の容器は一般に、熱絶縁特性、軽量、化学的不活性性、衝撃耐性、および製造の容易さのうちの少なくとも1つを含む、有用な特性を特徴とする材料から作られる。例えば、第1の容器は、発泡スチロール(EPS;Styrofoam)、ポリウレタン(PUR)、ポリエチレン発泡体、およびグラスウールから選択される、少なくとも1つの材料から作ることができる。一部の実施形態では、第2の容器は、押出ポリスチレン(EPS)発泡体製である。第2の容器の壁の厚さは、典型的には、1〜2インチなど、0.5〜3インチである。一部の実施形態では、第2の容器の壁は、約1.5インチ厚である。第2の容器の内寸は、第1の容器を収容するように、かつ初代哺乳動物細胞を含む培養物を航空機、トラック、および/または列車で輸送するためにシステムを使用する上での一助となるように第2の容器のサイズを最小化することを視野に入れて、選択される。第2の容器の、内部の長さ、幅、および高さは一般に、独立に、8〜36インチとなろう。一部の実施形態では、第2の容器の内法は、独立に10〜15インチである。第2の容器の目的は、少なくとも二通りある。第1に、第2の容器は、容器の内側を、容器の外側の周囲条件から部分的に隔離し、周囲条件の、容器の内側の温度に対する影響を、培養時間の時間経過にわたり緩衝する。第2に、第2の容器は、任意選択の熱源により発生する熱を、第2の容器の内側に保持する。第2の容器は、インターロックする上部および下部を含みうる。上部と下部とがインターロックするのであれ、しないのであれ、上部と下部とは、テープまたはゴムバンドなど、任意の適する材料を使用して、互いと接触させて固定することができる。この配置は、第1の容器を、第2の容器の内側に入れることを可能とする。一部の実施形態では、下部のへりと、上部のへりとは、緊密なシーリングを提供するだけでなく、第2の容器からの熱の喪失も低減する、合致するロック溝構造を有する。
安定化材:任意選択の熱源の使用を伴う、容器内容器構成は、内部容器である第1の容器の内部温度を、培養時間にわたり、18℃〜38℃など、12℃〜38℃に維持する。安定化材を使用して、第1の容器の場所を、第2の容器の内側に固定化することができる。安定化材(複数可)は一般に、熱絶縁特性、軽量、化学的不活性性、衝撃耐性、および製造の容易さのうちの少なくとも1つを含む、有用な特性を特徴とする材料から作られる。例えば、第1の容器は、発泡スチロール(EPS;Styrofoam)、ポリウレタン(PUR)、ポリエチレン発泡体、およびグラスウールから選択される、少なくとも1つの材料から作ることができる。これは、第1の容器の外部表面と、第2の容器の内部表面との間に間隙を形成する。間隙は、典型的には、空気で充填するが、組成が空気とは異なると決定されているガスなど、任意の材料で充填することができる。間隙の内側に存在するガス(例えば、空気)は、熱源の機能を容易にする。安定化材は、熱源のピーク温度、およびそれらが定格温度をもたらす時間の持続の両方に影響を及ぼす、2つの容器の間の間隙の容量を減少させる。安定化材は、安定化材と接触した、内部にある第1の容器の外部表面の表面積を制限することによって、熱パックから、第1の容器の内側への、均一の様式による熱の移動を最大化しながら、2つのチャンバーの間の空隙を著しく低減せずに、内部チャンバーを、定位置に固定化するように、注意深く設計する。安定化材の寸法は、第1の容器および第2の容器の寸法と共に選択し、広範にわたり変動させることができる。典型的には、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ超の安定化材を、システム内で使用する。
熱源:本発明のシステムは任意選択で、熱源を含む。一部の実施形態では、熱源は、発熱性化学反応物を含む。一部の実施形態では、熱源は、発熱性化学反応物からなる。熱源は、熱エネルギーを提供して、細胞培養プレートの温度を、培養時間中に、18℃〜38℃など、12℃〜38℃に維持する。
一部の実施形態では、システムは、発熱性化学反応物;相が変化すると、熱をゆっくりと吸収および放出する、相変化材料、すなわち、ゲルパック;および蓄電池へと接続された電熱素子から選択される、少なくとも1つの熱源を含む。
発熱性化学反応物は、熱を放出する、任意の化学プロセスでありうる。いくつかの適切な例が公知である。第1の種類では、空気を媒介する発熱性酸化により、熱を産生する。一部の実施形態では、鉄、セルロース、または酸化マグネシウムを、還元剤として使用する。一実施形態では、発熱性化学反応は、鉄、水、活性炭(熱を均等に分配する)、バーミキュライト(水レザバー)、および塩(触媒)を含む組成物であって、空気へと曝露されると、鉄の発熱性酸化から熱を産生する組成物中で生じる。第2の例では、過飽和溶液(例えば、酢酸ナトリウム)の発熱性結晶化により、熱をもたらす。この第2の種類は、内容物が均一に流動性となるまで、溶液を含む容器を、高温水中に浸漬し、次いで、これを冷ますことによりリチャージすることができる。熱の放出は、小型の金属ディスクを、容器の内側で屈曲させ、これにより、結晶化を開始させる核化中心を発生させることにより誘起する。熱は、それ自身の結晶化水中に、塩を溶解させることを必要とする。結晶化が開始するときに放出されるのは、この熱である。
一部の実施形態では、熱源は、容器を含む。一部の実施形態では、熱源は、発熱性化学プロセスの基質および/または生成物を含む容器を含む。一部の実施形態では、容器のピーク表面温度は、34℃〜45℃、35℃〜44℃、36℃〜43℃、37℃〜42℃、38℃〜46℃、40℃〜44℃、41℃〜43℃、または約42℃である。一部の実施形態では、熱源の表面温度は、28℃、24℃、20℃、16℃、12℃、8℃、または4℃でインキュベートするとき、熱源のピーク表面温度から5℃以内の表面温度を、2〜24時間、2〜20時間、2〜16時間、2〜12時間、2〜8時間、2〜4時間、4〜24時間、4〜20時間、4〜16時間、4〜12時間、4〜8時間、8〜24時間、8〜20時間、8〜16時間、または8〜12時間にわたり維持する。一部の実施形態では、熱源の表面温度は、28℃、24℃、20℃、16℃、12℃、8℃、または4℃でインキュベートするとき、熱源のピーク表面温度から5℃以内の表面温度を、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、または24時間にわたり維持する。
熱源は、例えば、内壁へと固定されたパウチを使用して、第2の容器の壁の内部表面上に搭載することができる。熱源は、例えば、外壁へと固定されたパウチを使用して、第1の容器の壁の外部表面上に搭載することができる。一部の実施形態では、熱源は、壁の隣接部分と同一の壁面上に搭載する。一部の実施形態では、熱源は、壁の凹部内に搭載する。本明細書で使用される、容器の「壁」とは、容器を、使用のために方向付ける場合の、容器の側方部分、上方部分、または下方部分でありうる。
熱源を、第1の容器の外側、かつ第2の容器の内側に位置させることにより、熱源から放出される熱のうちの一部が、伝導により、第1の容器の壁を透過することが可能となる。熱源により放出される熱のうちの一部は、2つの容器の間の領域内に、ある時間にわたり保持される。こうして、この構成は、熱パックから、第1の容器の内部への、熱波の直接的な伝搬を防止する。したがって、第1の容器の内部で達せられるピーク温度は、2つの容器の間の領域内の熱源に隣接して達せられるピーク温度より低い。第1の容器の内側の温度を、12℃〜38℃など、または12℃〜38℃などの温度範囲に維持するのに必要とされる熱源の数は、2つのチャンバーの寸法と、2つのチャンバーの間の領域の寸法とに依存する。いくつかの因子が、システムへと組み込まれる熱源の種類および熱源の数の選択に影響するであろう。例えば、システムを使用して、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、培養時間にわたり維持する場合、培養時間の長さは、熱源の種類および/または数に影響を与えうる。培養時間が短い(例えば、6時間である)場合は、単一の熱源を選択することができる。培養時間が長い(例えば、18時間である)場合は、複数(例えば、4つ)の熱源を選択することができる。熱源のピーク表面温度が、高温である場合は、熱源と接触する第1の容器の壁の厚さを増大させることが望ましいのに対し、熱源のピーク表面温度が、低温である場合は、熱源と接触する第1の容器の壁の厚さを減少させることが望ましい。一部の実施形態では、システムは、複数の異なる種類の熱源を含む。
一部の実施形態では、熱源による熱産生の開始を制御し、第1の培養時間が始まった後にこれを行う。例えば、熱源は、第1の容器および/または第2の容器の内側の温度が、ある特定の閾値を下回って下降するとき/場合に限り熱産生を開始するサーモスタットへとカップリングさせることができる。発熱性化学反応物を熱源として活用する一部の実施形態では、発熱性化学反応の開始は、このやり方で制御することができる。
発熱性化学反応物を熱源として活用する一部の実施形態では、熱の産生速度を、時間経過にわたり変化させることができる。一部の実施形態では、熱源による熱の産生速度を、化学反応物への、さらなる成分の添加、および/または化学反応基質を徐々に放出することによりモジュレートする。
一部の実施形態では、熱源は、蓄電池または電気エネルギーの他の供給源と、この電気エネルギーを熱へと転換するための手段とを含む。一部の実施形態では、システムは、a)発熱性化学反応物を含む熱源;およびb)蓄電池または電気エネルギーの他の供給源と、この電気エネルギーを熱へと転換するための手段とを含む熱源を含む。一部の実施形態では、単一の熱源は、発熱性化学反応物と;蓄電池または電気エネルギーの他の供給源と、この電気エネルギーを熱へと転換するための手段との両方を含む。例えば、蓄電池または電気エネルギーの他の供給源と、この電気エネルギーを熱へと転換するための手段とは、発熱性化学反応物による熱の形成速度を調節するように構成することができる。
一部の実施形態では、システムは、第1の容器および/または第2の容器の内側の温度の変化を測定する手段をさらに含む。例えば、システムは、スイッチへとカップリングさせた温度計を含みうる。一部の実施形態では、システムは、熱源による熱の発生を増大させるかまたは減少させる手段をさらに含む。一部の実施形態では、熱源による熱の発生を増大させるかまたは減少させる手段を、第1の容器および/または第2の容器の内側の温度の変化を測定する手段へとカップリングさせる。
細胞培養プレート:少なくとも1つの細胞培養プレートを、第2の容器の内側に入れる。細胞培養プレートは、初代哺乳動物細胞を含む培養物を含む、少なくとも1つのウェルを含む。培養物は、本開示で記載される、任意の培養物でありうる。一部の実施形態では、培養物中の初代哺乳動物細胞を、少なくとも1つのウェルの表面へと接着させる。一部の実施形態では、培養プレートは、ウェル内の培養培地を保持する液体バリアをもたらすように培養プレートの下部と上部との間に配置されたエラストマー材料の層をさらに含む。一部の実施形態では、エラストマー材料は、ガス透過性である。一部の実施形態では、エラストマー材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。一部の実施形態では、エラストマー材料を、生体適合性ゴムシート、PMMA、Teflon、およびシリコーンゴムから選択する。
システムの熱特性:システム熱特性は、システムを、周囲温度を含む環境へと、ある時間にわたり曝露することにより特徴付けることができる。システムの一部の実施形態では、システムを、4℃の周囲温度を含む環境内で10、15、20、25、または30時間にわたり維持する場合、当初37℃である細胞培養プレートを、12℃〜35℃、12℃〜30℃、12℃〜25℃、12℃〜20℃、12℃〜15℃、15℃〜35℃、15℃〜30℃、15℃〜25℃、15℃〜20℃、20℃〜35℃、20℃〜30℃、20℃〜25℃、25℃〜35℃、25℃〜30℃、または30℃〜35℃の温度で維持する。
システムの一部の実施形態では、システムを、4℃の周囲温度を含む環境内で10、15、20、25、または30時間にわたり維持する場合、当初37℃である細胞培養プレートを、35℃を超えない、34℃を超えない、32℃を超えない、30℃を超えない、28℃を超えない、26℃を超えない、24℃を超えない、22℃を超えない、20℃を超えない、18℃を超えない、16℃を超えない、14℃を超えない、または12℃を超えない温度で維持する。
システムの一部の実施形態では、第1の培養時間中に、当初37℃である細胞培養プレートを、少なくとも2℃、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも11℃、少なくとも12℃、少なくとも13℃、少なくとも14℃、または少なくとも15℃の範囲の温度で維持する。一部の実施形態では、細胞培養物の温度は、システムを、4℃の周囲温度を含む環境内で10、15、20、25、または30時間にわたり維持する場合、2℃〜16℃、2℃〜14℃、2℃〜12℃、2℃〜10℃、2℃〜8℃、2℃〜6℃、2℃〜4℃、4℃〜16℃、4℃〜14℃、4℃〜12℃、4℃〜10℃、4℃〜8℃、4℃〜6℃、6℃〜16℃、6℃〜14℃、6℃〜12℃、6℃〜10℃、6℃〜8℃、8℃〜16℃、8℃〜14℃、8℃〜12℃、8℃〜10℃、10℃〜16℃、10℃〜14℃、10℃〜12℃、12℃〜16℃、または12℃〜14℃の範囲にわたり変化する。
システムの熱特性は、初代哺乳動物細胞を含む培養物を輸送するためのシステムの有用性に寄与する。例えば、システムの熱特性は、空路による搬送中に、初代哺乳動物細胞を含む接着性培養物の維持を可能とした。
C.初代哺乳動物細胞を含む培養物
本明細書で使用される「初代細胞」とは、対象に直接由来する細胞である。初代細胞の寿命は、限定されている。ある特定の数の集団倍化(ヘイフリック限界と呼ばれる)の後、細胞は、一般に生存能力を保持しながら、老化過程を経、分裂を停止させる。初代細胞は、ランダム突然変異、またはテロメラーゼ遺伝子の人工的発現など、意図的な修飾を介して、無際限に増殖する能力を獲得した、確立された細胞株または不死化細胞株と対照をなしうる。
本発明のシステムは、初代哺乳動物細胞の培養物を含む。当技術分野では、初代哺乳動物細胞を単離する多数の方法が公知であり、当業者は、周知の技法を適用して、新たな初代哺乳動物細胞型を単離し、培養することが可能である。したがって、本発明で使用される初代哺乳動物細胞は、任意の種類の初代哺乳動物細胞でありうる。また、異なる種類の初代哺乳動物細胞も、LIFE TECHNOLOGIES CORPORATIONなどの販売元から入手可能である。LIFE TECHNOLOGIES CORPORATIONから購入されうる初代細胞型の例は、角膜上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、角質細胞、乳腺上皮細胞、メラニン細胞、微小血管内皮細胞、大血管内皮細胞、神経細胞、グリア細胞、神経幹細胞、骨格筋芽細胞、および平滑筋細胞を含む。一部の実施形態では、初代細胞を、低温保存形態で提供し、次いで、融解させてから、播種して、初代哺乳動物細胞を含む培養物を確立する。
初代哺乳動物細胞は、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長動物(カニクイザルなど)、農場動物(ブタ、ウマ、ウシ、およびヒツジなど)、愛玩哺乳動物(イヌ、ネコ、モルモット、およびウサギなど)、および齧歯動物(マウスおよびラットなど)を含む、任意の哺乳動物に由来しうる。
一部の実施形態では、初代細胞は、肝細胞である。培養物を確立するのに使用される初代肝細胞は、低温保存形態で供給しうるが、そうしなくてもよい。低温保存されたヒト肝細胞は、LIFE TECHNOLOGIES CORPORATIONから得ることができる。低温保存された非ヒト霊長動物肝細胞は、LIFE TECHNOLOGIES CORPORATIONから得ることができる。低温保存されたイヌ肝細胞は、IVT BIORECLAMATIONから得ることができる。低温保存されたラット肝細胞は、LIFE TECHNOLOGIES CORPORATIONから得ることができる。一部の実施形態では、培養物を確立するのに使用される初代肝細胞は、単離したてであり、単離後低温保存されていない。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の培養物は、単一種類の初代哺乳動物細胞だけを含む。一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の培養物は、複数の初代哺乳動物細胞型を含む。一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の培養物は、初代哺乳動物細胞だけからなる。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の培養物は、初代哺乳動物細胞と、少なくとも1つの非初代細胞型とを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの非初代細胞型は、細胞株である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非初代細胞型は、間質細胞である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非初代細胞型は、非間質細胞である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非初代細胞型は、実質細胞である。一部の実施形態では、少なくとも1つの非初代細胞型は、非実質細胞である。
一部の実施形態では、培養物は、単一の培養物中に一緒に、1つを超える種類の哺乳動物に由来する初代細胞を含む。例えば、ヒトに由来する初代細胞およびイヌに由来する初代細胞である。一部の実施形態では、培養物中の初代細胞の全ては、同じ種類の哺乳動物、例えば、ヒトに由来する。
一部の実施形態では、培養物は、少なくとも1つの非初代細胞型を含み、少なくとも1つの非初代細胞型は、培養物中の初代細胞の少なくとも1つの種類と同じ種類の哺乳動物に由来する。一部の実施形態では、培養物は、少なくとも1つの非初代細胞型を含み、少なくとも1つの非初代細胞型は、培養物中の初代細胞と異なる種類の哺乳動物に由来する。一部の実施形態では、培養物中の細胞の全ては、同じ種類の哺乳動物に由来する。
一部の実施形態では、培養物は、初代哺乳動物細胞の少なくとも1つの種類と、非初代哺乳動物細胞の少なくとも1つの種類とを含む共培養物である。共培養物の一部の実施形態では、単一種類の初代細胞および単一種類の非初代細胞は、共培養物中の細胞のうちの少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.99%を占める。典型的には、初代細胞および非初代細胞は、1:10〜10:1の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、2:10〜10:2の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、2:10〜4:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、4:10〜6:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、6:10〜8:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、8:10〜1:1の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、1:1〜10:8の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、10:8〜10:6の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、10:6〜10:4の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、10:4〜10:2の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、初代細胞および非初代細胞は、10:1、10:2、10:3、10:4、10:5、:10:6、10:7、10:8、10:9、1:1、9:10、8:10、7:10、6:10、5:10、4:10、3:10、2:10、または1:10の比で、共培養物中に存在する。
一部の実施形態では、初代細胞/非初代細胞の共培養物は、少なくとも2つの初代細胞型を含む。一部の実施形態では、共培養物中の初代細胞は、各々が、共培養物中の細胞のうちの少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%を占める、2つの初代細胞型を含む。
一部の実施形態では、初代細胞/非初代細胞の共培養物は、少なくとも2つの非初代細胞型を含む。一部の実施形態では、初代細胞/非初代細胞の共培養物は、各々が、共培養物中の細胞のうちの少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%を占める、2つの非初代細胞型を含む。
一般に、培養物中の初代細胞を、培養基質の表面へと接着させる。例えば、初代細胞を、培養プレートの少なくとも1つのウェルの底部へと接着させることができる。一般に、共培養物の場合、また、共培養物中の非初代細胞も、培養基質の表面へと接着させる。例えば、非初代細胞を、培養プレートの少なくとも1つのウェルの底部へと接着させることができる。誤解を回避するために述べると、第1の細胞が、表面に直接接触し、付着する場合、または第1の細胞が、第2の細胞に直接接触し、付着し、第2の細胞が、表面に直接接触し、付着する場合、第1の細胞は、培養基質の表面へと接着している。全てのこのような細胞を、表面へと接着させ、本明細書で使用される接着性細胞と考える。
一部の実施形態では、培養物は、初代肝細胞を含む。一部の実施形態では、培養物は、初代肝細胞と、非実質細胞とを含む共培養物である。一部の実施形態では、非実質細胞は、間質細胞である。一部の実施形態では、初代肝細胞および間質細胞を、固体基質の表面上に配置する。一部の実施形態では、肝細胞を、固体基質の表面にわたり実質的に分散させる。一部の実施形態では、培養物は、2つの細胞型を含む共培養物であって、1つの細胞型が、初代肝細胞であり、他の細胞型が、クッパー細胞である共培養物である。一部の実施形態では、培養物は、2つの細胞型を含む共培養物であって、1つの細胞型が、初代肝細胞であり、他の細胞型が、異なる細胞型である共培養物である。一部の実施形態では、培養物は、3つの異なる細胞型を含む共培養物である。一部の実施形態では、培養物は、3つを超える異なる細胞型を含む共培養物である。一部の実施形態では、培養物は、組織切片を含む。一部の実施形態では、培養物は、細胞構成要素または細胞材料を含む。
肝細胞−間質細胞共培養物の一部の実施形態では、肝細胞および単一の間質細胞型は、共培養物中の細胞のうちの少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.99%を占める。典型的には、肝細胞および間質細胞は、1:10〜10:1の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、2:10〜10:2の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、2:10〜4:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、4:10〜6:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、6:10〜8:10の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、8:10〜1:1の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、1:1〜10:8の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:8〜10:6の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:6〜10:4の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:4〜10:2の比で、共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:1、10:2、10:3、10:4、10:5、:10:6、10:7、10:8、10:9、1:1、9:10、8:10、7:10、6:10、5:10、4:10、3:10、2:10、または1:10の比で、共培養物中に存在する。
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、少なくとも2つの間質細胞型を含む。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、各々が、共培養物中の細胞のうちの少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%を占める、2つの間質細胞型を含む。
一部の実施形態では、間質細胞型は、肝細胞と同じ種類の哺乳動物に由来する。一部の実施形態では、間質細胞型は、肝細胞と異なる種類の哺乳動物に由来する。
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、第3の細胞型を含む。一部の実施形態では、第3の細胞型は、間質細胞である。一部の実施形態では、第3の細胞型は、間質細胞ではない。一部の実施形態では、第3の細胞型は、実質細胞である。一部の実施形態では、第3の細胞型は、非実質細胞ではない。一部の実施形態では、第3の細胞型を、伊東細胞、内皮細胞、胆管細胞、免疫媒介細胞、および幹細胞から選択する。一部の実施形態では、免疫媒介細胞を、マクロファージ、T細胞、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および好塩基球から選択する。
一部の実施形態では、第3の細胞型は、クッパー(Kueppfer)細胞である。一部の実施形態では、クッパー細胞は、共培養物中の細胞のうちの少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%を占める。
一部の実施形態では、間質細胞型は、内皮細胞である。一部の実施形態では、間質細胞型は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、間質細胞は、初代細胞である。一部の実施形態では、間質細胞を、細胞株から得る。一部の実施形態では、間質細胞は、形質転換細胞である。一部の実施形態では、間質細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞など、幹細胞から、in vitroにおいて分化させる。当技術分野では、線維芽細胞など、間質細胞の多数の供給源が公知であり、肝細胞−間質細胞共培養物中で活用することができる。1つの例は、NIH 3T3−J2細胞株である(例えば、US2013/0266939A1を参照されたい)。
当技術分野では、細胞アイランド構成の第1のステップにおいて、肝細胞を、基質へと付着させるように、肝細胞および間質細胞を、固体基質へと配置することにより、培養物中の肝細胞機能の一部の側面が改善されることについて教示されている(US2013/0266939A1を参照されたい)。具体的に述べると、このような方法は、間質細胞型など、非実質細胞型に囲まれた肝細胞アイランドである、基質上の肝細胞による細胞アイランドの形成に依拠する。肝細胞アイランドは、まず、細胞外マトリックスの成分または派生物を、固体基質へと、アイランドパターンで置き、次いで、肝細胞を、細胞外マトリックスの成分または派生物へと接着させることにより形成する。次いで、非実質細胞型を添加し、肝細胞を含有しない基質部分を「埋め」させる。このような系の根本的特徴は、肝細胞を、基質表面にわたり分散させないことである。
本発明のシステムおよび方法で活用される、肝細胞−間質細胞共培養物の一部の実施形態では、肝細胞を、US2013/0266939A1に記載されている細胞アイランド構成などの細胞アイランド構成で分布させる。しかし、他の実施形態では、肝細胞を、固体基質の表面にわたり実質的に分散させる。
固体支持体上、肝細胞−間質細胞共培養物中の肝細胞の配置に言及して本明細書で使用される「表面にわたり分散させた」とは、以下の基準:1)固体基質の表面のうちの、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%が、少なくとも1つの肝細胞により覆われていること;2)共培養物中の肝細胞のうちの少なくとも2%、少なくとも5%、または少なくとも10%が、固体基質と接触する間質細胞の上に位置していること;および3)固体基質へと付着させた肝細胞のアイランドを創出するのに、肝細胞を、少なくとも1つの細胞外マトリックス成分のアイランドを含む固体基質へと添加することにより、肝細胞が固体基質へと播種しなかったことのうちの少なくとも1つが、共培養物に該当することを意味する。単一の肝細胞は、基準1および基準2を満たすとみなしうることに注意されたい。
一般に、培養物中または共培養物中の初代細胞のうちの実質的な比率を、培養基質へと接着させる。接着の維持は、細胞の機能状態および健康が完全であることを反映する。一部の実施形態では、初代細胞は、肝細胞である。一部の実施形態では、培養物は、肝細胞−間質細胞共培養物である。
初代哺乳動物肝細胞を、培養物中の初代哺乳動物細胞型として活用する一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、共培養物中の肝細胞について、遺伝子の発現、細胞の機能、代謝活性、形態学、およびこれらの組合せから選択される活性を測定することにより決定する。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルを測定することにより決定する。少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルは、CYP450酵素のmRNAの発現を測定することにより、CYP450酵素のタンパク質の発現を測定することにより、またはCYP450酵素の活性についての機能的アッセイにより測定することができる。一部の実施形態では、代謝活性は、CYP450酵素の活性である。一部の実施形態では、CYP450酵素は、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C、CYP2D6、CYP2E1、CYP2F1、CYP2J2、CYP3A4、CYP4A、およびCYP4Bから選択されるCYP450酵素である。一部の実施形態では、少なくとも1つのCYP450酵素は、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、およびCYP3A4のうちの、1つ、2つ、3つ、または4つ全てである。
一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、少なくとも7日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、少なくとも14日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、少なくとも21日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、少なくとも28日間にわたり持続する。
一部の実施形態では、培養物は、組織切片を含む。一部の実施形態では、組織切片は、初代哺乳動物細胞を含む。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、無血清培地または本質的な無血清培地中で培養する。一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、血清を含有する培地中で培養する。一部の実施形態では、培地は、0.1%の血清、0.2%の血清、0.3%の血清、0.4%の血清、0.5%の血清、0.6%の血清、0.7%の血清、0.8%の血清、0.9%の血清、1%の血清、2%の血清、3%の血清、4%の血清、5%の血清、6%の血清、7%の血清、8%の血清、9%の血清、または10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、少なくとも0.1%の血清、少なくとも0.2%の血清、少なくとも0.3%の血清、少なくとも0.4%の血清、少なくとも0.5%の血清、少なくとも0.6%の血清、少なくとも0.7%の血清、少なくとも0.8%の血清、少なくとも0.9%の血清、少なくとも1%の血清、少なくとも2%の血清、少なくとも3%の血清、少なくとも4%の血清、少なくとも5%の血清、少なくとも6%の血清、少なくとも7%の血清、少なくとも8%の血清、少なくとも9%の血清、または少なくとも10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、0.1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、または10%未満であるかもしくはこれに等しい血清を含む。
D.初代哺乳動物細胞を培養する方法
本明細書で開示される本発明は、初代哺乳動物細胞の生存能力と、高度な機能を遂行する潜在的能力とを保持しながら、初代哺乳動物細胞を、少なくとも12℃(少なくとも13℃、少なくとも14℃、少なくとも15℃、少なくとも16℃、少なくとも17℃、または少なくとも18℃など)であるが、細胞が由来する哺乳動物の体温を下回る温度の培養物中で維持しうることという、本発明者らの驚くべき発見に部分的に基づく。初代細胞は、脆弱であり、当技術分野では一般に、機能的コンピテンシーの高い状態を達成および維持する能力を保持する初代細胞を維持するには、特殊なケアが必要であると考えられているため、この結果は、驚くべきことである。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の生存能力と、高度な機能を遂行する潜在的能力とを保持しながら、初代哺乳動物細胞を、12℃〜35℃、12℃〜30℃、12℃〜25℃、12℃〜20℃、12℃〜15℃、15℃〜35℃、15℃〜30℃、15℃〜25℃、15℃〜20℃、18℃〜35℃、18℃〜30℃、18℃〜25℃、18℃〜20℃、20℃〜35℃、20℃〜30℃、20℃〜25℃、25℃〜35℃、25℃〜30℃、または30℃〜35℃の温度で、第1の培養時間にわたり維持する。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞の生存能力と、高度な機能を遂行する潜在的能力とを保持しながら、初代哺乳動物細胞を、35℃を超えない、34℃を超えない、32℃を超えない、30℃を超えない、28℃を超えない、26℃を超えない、24℃を超えない、22℃を超えない、20℃を超えない、18℃を超えない、16℃を超えない、14℃を超えない、または12℃を超えない温度で、第1の培養時間にわたり維持する。
一部の実施形態では、第1の培養時間は、1〜24時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜24時間、4〜24時間、6〜24時間、8〜24時間、10〜24時間、12〜24時間、14〜24時間、16〜24時間、18〜24時間、20〜24時間、または2〜24時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜20時間、4〜20時間、6〜20時間、8〜20時間、10〜20時間、12〜20時間、14〜20時間、16〜20時間、または18〜20時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜4時間である。
一部の実施形態では、第1の培養時間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、または少なくとも24時間である。
一部の実施形態では、第1の培養時間中、初代細胞を、1または複数の時間にわたり、ある特定の温度閾値における培養温度またはこれを下回る培養温度で維持する。こうして、例えば、一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を、第1の培養時間にわたり、X℃を超えない温度で維持し、第1の培養時間中の部分時間にわたり、初代哺乳動物細胞を、Y℃を超えない温度[温度表記中、Yは、Xより低温である]で維持する。一部の実施形態では、Yは、Xより1℃低く、Xより2℃低く、Xより3℃低く、Xより4℃低く、Xより5℃低く、Xより6℃低く、Xより1℃低く、Xより7℃低く、Xより8℃低く、Xより9℃低く、Xより10℃低く、Xより11℃低く、Xより12℃低く、Xより13℃低く、Xより14℃低く、またはXより15℃低い。第1の培養時間中の部分時間は、1〜12時間、1〜10時間でありうる。
一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜4時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、1〜2時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。
初代哺乳動物細胞を培養する標準的な方法と比較した、第1の培養時間の別の固有の特徴は、第1の培養時間中の、細胞培養物の温度の範囲である。一部の実施形態では、細胞培養物の温度は、第1の培養時間中に、少なくとも2℃、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも11℃、少なくとも12℃、少なくとも13℃、少なくとも14℃、または少なくとも15℃の範囲にわたり変化する。一部の実施形態では、細胞培養物の温度は、第1の培養時間中に、2℃〜16℃、2℃〜14℃、2℃〜12℃、2℃〜10℃、2℃〜8℃、2℃〜6℃、2℃〜4℃、4℃〜16℃、4℃〜14℃、4℃〜12℃、4℃〜10℃、4℃〜8℃、4℃〜6℃、6℃〜16℃、6℃〜14℃、6℃〜12℃、6℃〜10℃、6℃〜8℃、8℃〜16℃、8℃〜14℃、8℃〜12℃、8℃〜10℃、10℃〜16℃、10℃〜14℃、10℃〜12℃、12℃〜16℃、または12℃〜14℃の範囲にわたり変化する。
本発明の方法は、第1の培養時間の終了時における初代哺乳動物細胞であって、35℃を上回る温度でインキュベートする場合に、高度な機能の遂行を達成する能力を保持する初代哺乳動物細胞を提供する。一部の実施形態では、35℃を上回る温度は、初代細胞が由来する哺乳動物に正常であると考えられる体温の範囲であるか、またはこれに近い。ヒト初代細胞では、細胞は、典型的には、37℃など、36℃〜38℃で培養する。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を培養する方法は、第1の培養時間にわたり、35℃を超えない温度で維持された、初代哺乳動物細胞を含む培養物を用意するステップと;初代哺乳動物細胞を含む培養物を、35℃を上回る温度で、第2の培養時間にわたりインキュベートして、これにより、初代哺乳動物細胞の培養物に、高度な機能の遂行をもたらすステップとを含む。一部の実施形態では、第2の培養時間は、1〜24時間にわたる。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜24時間、4〜24時間、6〜24時間、8〜24時間、10〜24時間、12〜24時間、14〜24時間、16〜24時間、18〜24時間、20〜24時間、または2〜24時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜20時間、4〜20時間、6〜20時間、8〜20時間、10〜20時間、12〜20時間、14〜20時間、16〜20時間、または18〜20時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜4時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、1〜5日間、1〜4日間、1〜3日間、または1〜2日間である。
一部の実施形態では、第1の培養時間後において、培養物中の初代細胞のうちの実質的な比率を、培養基質へと接着させる。接着の維持は、細胞の機能状態および健康が完全であることを反映する。一部の実施形態では、培養物中または共培養物中の初代細胞のうちの少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%は、第1の培養時間後においても、培養基質への接着を保つ。一部の実施形態では、初代細胞は、肝細胞である。一部の実施形態では、培養物は、肝細胞−間質細胞共培養物である。
初代哺乳動物肝細胞を、培養物中の初代哺乳動物細胞型として活用する一部の実施形態では、培養された初代肝細胞の代謝活性のレベルは、第1の培養時間、または第1の培養時間および第2の培養時間においても保持される。一部の実施形態では、第2の培養時間は、初代細胞型に最適の培養温度(例えば、ヒト初代細胞では37℃)における培養を含む。
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は、第1の培養時間後において、または第1の培養時間および第2の培養時間後において、長時間にわたり持続する。一部の実施形態では、第2の培養時間は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、または少なくとも28日間にわたる。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、共培養物中の肝細胞について、遺伝子の発現、細胞の機能、代謝活性、形態学、およびこれらの組合せから選択される活性を測定することにより決定する。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルを測定することにより決定する。少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルは、CYP450酵素のmRNAの発現を測定することにより、CYP450酵素のタンパク質の発現を測定することにより、またはCYP450酵素の活性についての機能的アッセイにより測定することができる。一部の実施形態では、代謝活性は、CYP450酵素の活性である。一部の実施形態では、CYP450酵素は、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C、CYP2D6、CYP2E1、CYP2F1、CYP2J2、CYP3A4、CYP4A、およびCYP4Bから選択されるCYP450酵素である。
一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも7日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも14日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも21日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも28日間にわたり持続する。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、第1の培養時間および/または第2の培養時間において、無血清培地または本質的な無血清培地中で培養する。一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、第1の培養時間および/または第2の培養時間において、血清を含有する培地中で培養する。一部の実施形態では、培地は、0.1%の血清、0.2%の血清、0.3%の血清、0.4%の血清、0.5%の血清、0.6%の血清、0.7%の血清、0.8%の血清、0.9%の血清、1%の血清、2%の血清、3%の血清、4%の血清、5%の血清、6%の血清、7%の血清、8%の血清、9%の血清、または10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、少なくとも0.1%の血清、少なくとも0.2%の血清、少なくとも0.3%の血清、少なくとも0.4%の血清、少なくとも0.5%の血清、少なくとも0.6%の血清、少なくとも0.7%の血清、少なくとも0.8%の血清、少なくとも0.9%の血清、少なくとも1%の血清、少なくとも2%の血清、少なくとも3%の血清、少なくとも4%の血清、少なくとも5%の血清、少なくとも6%の血清、少なくとも7%の血清、少なくとも8%の血清、少なくとも9%の血清、または少なくとも10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、0.1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、または10%未満であるかもしくはこれに等しい血清を含む。
E.培養される初代哺乳動物細胞を搬送する方法
本発明はまた、初代哺乳動物細胞を含む培養物を搬送する方法も包含する。初代哺乳動物細胞を含む培養物は、本発明の、任意の初代哺乳動物細胞の培養物でありうる。方法は、典型的には、
A)初代哺乳動物細胞を含む細胞培養物を含む細胞培養マイクロプレートを用意するステップと;
B)Aの細胞培養マイクロプレートを、細胞を培養するためのシステムへと組み込むステップであって、製造物が、インターロックする上部および下部を含む第1の容器;インターロックする上部および下部を含む第2の容器であって、第1の容器が、第2の容器内に配置されている、第2の容器;ならびに第2の容器内、かつ第1の容器の外側に配置された熱源を含み;細胞培養マイクロプレートを、第1の容器内に入れるステップと;
C)細胞培養マイクロプレートを含有するシステムを、陸路および/または海路で、起点から目的地へと輸送するステップであって、細胞培養マイクロプレートを、起点から目的地への運搬において、38℃を超えない温度で維持するステップと
を含む。
一部の実施形態では、方法は、初代哺乳動物細胞を、培養マイクロプレートの少なくとも1つのウェルの培養物表面へと播種して、Aの初代哺乳動物細胞を含む細胞培養物を含む細胞培養マイクロプレートを用意するステップをさらに含む。
一部の実施形態では、目的地への着荷時に、初代哺乳動物細胞の培養物は、初代細胞に最適のインキュベーション温度でインキュベートする場合に、高度な機能の遂行を達成する能力を保持する。
方法で使用されるシステムは、本明細書で開示される任意のシステムでありうる。
初代哺乳動物細胞を含む細胞培養物は、本明細書で開示される、任意の細胞培養物でありうる。
一部の実施形態では、輸送中、初代哺乳動物細胞の生存能力と、高度な機能を遂行する潜在的能力とを保持しながら、初代哺乳動物細胞を、10℃〜35℃、10℃〜30℃、10℃〜25℃、10℃〜20℃、10℃〜15℃、15℃〜35℃、15℃〜30℃、15℃〜25℃、15℃〜20℃、20℃〜35℃、20℃〜30℃、20℃〜25℃、25℃〜35℃、25℃〜30℃、または30℃〜35℃の温度で、第1の培養時間にわたり維持する。
一部の実施形態では、輸送中、初代哺乳動物細胞の生存能力と、高度な機能を遂行する潜在的能力とを保持しながら、初代哺乳動物細胞を、35℃を超えない、34℃を超えない、32℃を超えない、30℃を超えない、28℃を超えない、26℃を超えない、24℃を超えない、22℃を超えない、20℃を超えない、18℃を超えない、16℃を超えない、14℃を超えない、または12℃を超えない温度で、第1の培養時間にわたり維持する。
一部の実施形態では、輸送中、第1の培養時間は、1〜24時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜24時間、4〜24時間、6〜24時間、8〜24時間、10〜24時間、12〜24時間、14〜24時間、16〜24時間、18〜24時間、20〜24時間、または2〜24時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜20時間、4〜20時間、6〜20時間、8〜20時間、10〜20時間、12〜20時間、14〜20時間、16〜20時間、または18〜20時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間は、2〜4時間である。
一部の実施形態では、輸送中、第1の培養時間は、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、または少なくとも24時間である。
一部の実施形態では、輸送中の第1の培養時間中、初代細胞を、1または複数の時間にわたり、ある特定の温度閾値における培養温度またはこれを下回る培養温度で維持する。こうして、例えば、一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を、第1の培養時間にわたり、X℃を超えない温度で維持し、第1の培養時間中の部分時間にわたり、初代哺乳動物細胞を、Y℃を超えない温度[温度表記中、Yは、Xより低温である]で維持する。一部の実施形態では、Yは、Xより1℃低く、Xより2℃低く、Xより3℃低く、Xより4℃低く、Xより5℃低く、Xより6℃低く、Xより1℃低く、Xより7℃低く、Xより8℃低く、Xより9℃低く、Xより10℃低く、Xより11℃低く、Xより12℃低く、Xより13℃低く、Xより14℃低く、またはXより15℃低い。第1の培養時間中の部分時間は、1〜12時間、1〜10時間でありうる。
一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、2〜4時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、1〜2時間である。一部の実施形態では、第1の培養時間中の部分時間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。
初代哺乳動物細胞を輸送する標準的な方法と比較した、第1の培養時間の別の固有の特徴は、第1の培養時間中の、細胞培養物の温度の範囲である。一部の実施形態では、細胞培養物の温度は、第1の培養時間中に、少なくとも2℃、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも6℃、少なくとも7℃、少なくとも8℃、少なくとも9℃、少なくとも10℃、少なくとも11℃、少なくとも12℃、少なくとも13℃、少なくとも14℃、または少なくとも15℃の範囲にわたり変化する。一部の実施形態では、細胞培養物の温度は、第1の培養時間中に、2℃〜16℃、2℃〜14℃、2℃〜12℃、2℃〜10℃、2℃〜8℃、2℃〜6℃、2℃〜4℃、4℃〜16℃、4℃〜14℃、4℃〜12℃、4℃〜10℃、4℃〜8℃、4℃〜6℃、6℃〜16℃、6℃〜14℃、6℃〜12℃、6℃〜10℃、6℃〜8℃、8℃〜16℃、8℃〜14℃、8℃〜12℃、8℃〜10℃、10℃〜16℃、10℃〜14℃、10℃〜12℃、12℃〜16℃、または12℃〜14℃の範囲にわたり変化する。
本発明の方法は、輸送の終了時における初代哺乳動物細胞であって、35℃を上回る温度でインキュベートする場合に、高度な機能の遂行を達成する能力を保持する初代哺乳動物細胞を提供する。一部の実施形態では、35℃を上回る温度は、初代細胞が由来する哺乳動物に正常であると考えられる体温の範囲であるか、またはこれに近い。ヒト初代細胞では、細胞は、典型的には、37℃など、36℃〜38℃で培養する。
一部の実施形態では、輸送後において、方法は、第1の培養時間にわたり、35℃を超えない温度で維持された、初代哺乳動物細胞を含む培養物を用意するステップと;初代哺乳動物細胞を含む培養物を、35℃を上回る温度で、第2の培養時間にわたりインキュベートして、これにより、初代哺乳動物細胞の培養物に、高度な機能の遂行をもたらすステップとをさらに含む。一部の実施形態では、第2の培養時間は、1〜24時間にわたる。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜24時間、4〜24時間、6〜24時間、8〜24時間、10〜24時間、12〜24時間、14〜24時間、16〜24時間、18〜24時間、20〜24時間、または2〜24時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜20時間、4〜20時間、6〜20時間、8〜20時間、10〜20時間、12〜20時間、14〜20時間、16〜20時間、または18〜20時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜16時間、4〜16時間、6〜16時間、8〜16時間、10〜16時間、12〜16時間、または14〜16時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜12時間、4〜12時間、6〜12時間、8〜12時間、または10〜12時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜10時間、4〜10時間、6〜10時間、または8〜10時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜8時間、4〜8時間、または6〜8時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜6時間または4〜6時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、2〜4時間である。一部の実施形態では、第2の培養時間は、1〜5日間、1〜4日間、1〜3日間、または1〜2日間である。
一部の実施形態では、第1の培養時間後において、培養物中の初代細胞のうちの実質的な比率を、培養基質へと接着させる。接着の維持は、細胞の機能状態および健康が完全であることを反映する。一部の実施形態では、培養物中または共培養物中の初代細胞のうちの少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%は、第1の培養時間後においても、培養基質への接着を保つ。一部の実施形態では、初代細胞は、肝細胞である。一部の実施形態では、培養物は、肝細胞−間質細胞共培養物である。
初代哺乳動物肝細胞を、培養物中の初代哺乳動物細胞型として活用する一部の実施形態では、培養された初代肝細胞の代謝活性のレベルは、第1の培養時間、または第1の培養時間および第2の培養時間においても保持される。一部の実施形態では、第2の培養時間は、初代細胞型に最適の培養温度(例えば、ヒト初代細胞では37℃)における培養を含む。
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は、第1の培養時間後において、または第1の培養時間および第2の培養時間後において、長時間にわたり持続する。一部の実施形態では、第2の培養時間は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、または少なくとも28日間にわたる。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、共培養物中の肝細胞について、遺伝子の発現、細胞の機能、代謝活性、形態学、およびこれらの組合せから選択される活性を測定することにより決定する。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能を、少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルを測定することにより決定する。少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルは、CYP450酵素のmRNAの発現を測定することにより、CYP450酵素のタンパク質の発現を測定することにより、またはCYP450酵素の活性についての機能的アッセイにより測定することができる。一部の実施形態では、代謝活性は、CYP450酵素の活性である。一部の実施形態では、CYP450酵素は、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C、CYP2D6、CYP2E1、CYP2F1、CYP2J2、CYP3A4、CYP4A、およびCYP4Bから選択されるCYP450酵素である。
一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも7日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも14日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも21日間にわたり持続する。一部の実施形態では、培養物中の初代肝細胞の代謝機能は、第2の培養時間中、少なくとも28日間にわたり持続する。
一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、第1の培養時間および/または第2の培養時間において、無血清培地または本質的な無血清培地中で培養する。一部の実施形態では、初代哺乳動物細胞を含む培養物を、第1の培養時間および/または第2の培養時間において、血清を含有する培地中で培養する。一部の実施形態では、培地は、0.1%の血清、0.2%の血清、0.3%の血清、0.4%の血清、0.5%の血清、0.6%の血清、0.7%の血清、0.8%の血清、0.9%の血清、1%の血清、2%の血清、3%の血清、4%の血清、5%の血清、6%の血清、7%の血清、8%の血清、9%の血清、または10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、少なくとも0.1%の血清、少なくとも0.2%の血清、少なくとも0.3%の血清、少なくとも0.4%の血清、少なくとも0.5%の血清、少なくとも0.6%の血清、少なくとも0.7%の血清、少なくとも0.8%の血清、少なくとも0.9%の血清、少なくとも1%の血清、少なくとも2%の血清、少なくとも3%の血清、少なくとも4%の血清、少なくとも5%の血清、少なくとも6%の血清、少なくとも7%の血清、少なくとも8%の血清、少なくとも9%の血清、または少なくとも10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、0.1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、0.9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、1%未満であるかもしくはこれに等しい血清、2%未満であるかもしくはこれに等しい血清、3%未満であるかもしくはこれに等しい血清、4%未満であるかもしくはこれに等しい血清、5%未満であるかもしくはこれに等しい血清、6%未満であるかもしくはこれに等しい血清、7%未満であるかもしくはこれに等しい血清、8%未満であるかもしくはこれに等しい血清、9%未満であるかもしくはこれに等しい血清、または10%未満であるかもしくはこれに等しい血清を含む。
(実施例1)
本発明のシステムの実施形態
初代哺乳動物細胞の培養物を搬送するためのシステムを設計した。製造物の設計において、目標は、細胞培養プレートの温度を、12℃〜38℃に維持することであった。製造物は、細胞培養プレートの温度を、少なくとも30時間にわたり、搬送中の周囲温度と独立に維持するように設計する。製造物は、図1〜3に示される、容器内容器構成をとる。加えて、製造物は、細胞培養プレートの温度を、12℃を上回って維持する熱エネルギーの供給源としての化学的熱パックを組み込む。システムは、インターロックする上部(101)および下部(102)を含む第1の容器(100);インターロックする上部(201)および下部(202)を含む第2の容器(200)であって、第1の容器(100)が、第2の容器(200)内に配置されている、第2の容器;第1の容器内に配置された細胞培養マイクロプレート(300);第2の容器内、かつ第1の容器の外側に配置された、2つの化学的熱パック(410);ならびに第1のチャンバーの外壁に隣接する第1のエッジと、第2のチャンバーの内壁に隣接する第2のエッジとを含む4つの安定化材(401)を含む。後続の実施例で使用される製造物の各構成要素については、下記でより完全に記載する。
第1の容器:第1の容器(100)はまた、1.5インチ厚のEPS製である。第1の容器の内寸は、8インチの長さ、6インチの幅、および7インチの高さである。第1の容器の寸法は、第1の容器を、第2の容器の内側に入れる場合、第1の容器と第2の容器との間に空隙をもたらす。空隙は、熱パックの機能と、熱パックにより発生する熱の循環とを容易にする。第1の容器の目的は、二通りある。第1に、第1の容器は、第1の容器の内部を、第2の容器から隔離して、第1の容器の内側における、時間経過にわたる温度のばらつきの度合いを制限する。第2に、内部は、初代哺乳動物細胞を含む培養物を含む細胞培養プレートを、培養時間にわたり維持するための半制御環境をもたらす。第1の容器はまた、インターロックする上部(102)および下部(101)も含む。この配置は、細胞培養プレートを、第1の容器の内側に容易に入れ、後で第1の容器から取り出すことを可能とする。下部のへりと、上部のへりとは、緊密なシーリングを提供するだけでなく、熱移動も低減する、合致するロック溝構造を有する。
第2の容器:第2の容器(200)は、押出ポリスチレン(EPS)発泡体製である。第2の容器の壁の厚さは、1.5インチである。第2の容器の内寸は、12インチの長さ、12インチの幅、および13インチの高さである。第2の容器の目的は、二通りある。第1に、第2の容器は、容器の内側を、容器の外側の周囲条件から隔離し、周囲条件の、チャンバーの内側の温度に対する影響を、培養時間の時間経過にわたり低減する。第2に、第2の容器は、熱パックにより発生する熱を、第2の容器の内側に保持する。第2の容器は、インターロックする上部(202)および下部(201)を含む。この配置は、第1の容器を、第2の容器の内側に入れることを可能とする。下部のへりと、上部のへりとは、緊密なシーリングを提供するだけでなく、第2の容器からの熱の喪失も低減する、合致するロック溝構造を有する。
安定化材:熱パックの使用を伴う容器内容器構成は、内部容器である第1の容器の内部温度を、12℃〜38℃に維持する。安定化材(401)を使用して、第1の容器(100)の場所を、第2の容器(200)の内側に固定化した。これは、第1の容器の外部表面と、第2の容器の内部表面との間の空隙を形成する。空隙の内側に存在する空気は、熱パックの機能を容易にする。安定化材は、2つの容器の間の空隙の容量であって、熱パックのピーク温度、およびそれらが定格温度をもたらす時間の持続の両方に影響を及ぼす容量を減少させる。安定化材は、安定化材と接触した、内部にある第1の容器の外部表面の表面積を制限し、こうして、熱パックから、第1の容器の内側への、均一の様式による熱の移動を最大化しながら、2つの容器の間の空隙を著しく低減せずに、第1の容器を、第2の容器内の定位置に固定化するように、注意深く設計する。安定化材の設置については、図1に明示する。
熱パック:熱パックを、システムへと組み込み、細胞培養プレートの温度を、18℃〜38℃など、12℃〜38℃に維持するための熱エネルギーの供給源として使用する。熱パックからの熱エネルギーは、30時間にわたり、第1の容器の内側の温度12℃を上回るように維持する。例は、American Pioneer International LLCにより市販されている、Uniheat 40+ hours Shipping Warmerである。熱パックは、4時間で46℃の表面温度に達し、次いで、少なくとも次の40時間にわたり、少なくとも38℃の温度を維持する。
熱パック(410)は、テープ(430)により内壁(複数可)へと固定された紙製封筒(420)を使用して、第2の容器(210)の内部の、垂直方向の側壁(複数可)のうちの1つまたは複数に搭載する。一般に、細胞培養物を搬送する場合、2〜12個の熱パックを、システムへと組み込む。数は、運搬形式、天候、および一般的な運搬時間に依存する。第2の容器の壁への熱パックの搭載を、図2に示す。この構成は、熱パックから放出される熱のうちの一部が、伝導により、第1の容器の壁を透過することを可能とする。熱のうちの著明な部分はまた、2つの容器の間に、ある時間にわたり保持もされる。こうして、この構成は、熱パックから、第1の容器の内部への、熱波の直接的な伝搬を防止する。したがって、第1の容器の内部で達せられるピーク温度は、2つの容器の間の空間内で達せられるピーク温度より低い。内部チャンバーの内側の温度を、12℃〜38℃(18℃〜38℃など)に維持するのに必要とされる熱パックの数は、時間経過にわたりシステムが帯びる温度に依存する。
細胞培養プレート:低温保存されたヒト肝細胞を、液体窒素から取り出し、融解させた。融解の後、細胞を、培地中に再懸濁させ、トリパンブルー排除法を使用して、細胞数および細胞生存率を決定した。間質細胞を、CO2インキュベーター内で、実験のための平板培養に使用するまで継代培養した。平板培養の日に、細胞を、プレートから剥離し、洗浄し、培地中に再懸濁させた。トリパンブルー排除法を使用して、細胞数および細胞生存率を決定した。
肝細胞および間質細胞を、コラーゲンでコーティングされた96ウェルプレートへと、ウェル1つ当たりの肝細胞30,000個の密度で播種した。間質細胞は、成長を停止させてから、播種した。培養物を、5〜6日間にわたり維持し、代表的なCYP450遺伝子の発現を評価した。CYP450の発現は、qPCRを使用して、mRNA含量を介して測定した。実施例2で記載される通り、搬送のために、細胞培養培地を交換し、次いで、細胞培養プレートをシーリングした。
段ボール箱:次いで、細胞培養培地(601)のボトルおよび投入培地(602)のボトルと併せて、かつ第1の容器の上部と下部とを接合させて、シーリングされたマイクロプレートであって、確立された肝細胞/間質細胞共培養物を含むマイクロプレートを、第1の容器に入れた。次いで、第1の容器を、化学的熱パックを取り付けた第2の容器に入れ、第2の容器の上部と下部とを接合させた。次いで、搬送のために、組み立てられた第2の容器を、テープでシーリングされた段ボール箱に入れた。
(実施例2)
シーリングされた細胞培養プレートの調製
A)PDMSシートの調製:
PDMS elastomer & curing agent(Sylgard 184、Dow corning、MI−48648)を、10:1の比率で混合した。混合物を、コンテインメントエッジを伴うガラスプレートであって、プレートの寸法を124×79mmとするガラスプレートへと移した(図4A)。混合物を、2〜3mmの厚さの層がガラスプレート上に存在するように注入した。混合物を、ガラスプレート上で均一に広げ、次いで、これを、30分間にわたり、真空下のデシケーター内に入れて、気泡を除去した。従来型のオーブンを、65℃へとあらかじめ加熱し、ガラスプレートを、その中で2時間にわたりインキュベートした。次いで、PDMS混合物で覆われたガラスプレートを、従来のオーブン内、65℃で、一晩にわたり硬化して、PDMSポリマーの完全な架橋を確保した。ガラスプレートを、オーブンから取り出し、硬化されたPDMSシートを、ガラスプレートから取り出し、標準的な96ウェル培養プレートを均一に覆うように、115×74mmへと切断した。PDMSシートは、直接使用するか、または代わりに、使用まで4℃で保存した。PDMSシートは、使用前に、20分間にわたりUVで滅菌した。
B)吸収剤シートの調製
吸収剤シート(ZORB66、Thermosafe、USA)は、156×116mmへと切断した。吸収剤シートは、細胞と直接接触しないので、使用前に滅菌する必要はない。
C)細胞のパッキング
ヒト初代肝細胞/間質細胞共培養物を、96ウェル細胞培養プレート内で確立した。パッキングの前に、各プレートを、インキュベーターから、フードへと移した。培養培地は、吸引により除去した。次いで、マルチピペットチャネルを使用して、各ウェルに、あらかじめ加熱された培地を、培地が、溢出はしないが、各ウェルのへりの上まで満たすように、過剰充填した。
UV照射されたPDMSシート(303)を、プレート(301)の基部の上に置いて、各ウェルの上面を覆った。次に、吸収紙(304)4枚を、PDMSシートの上に置いた(図4A)。次いで、プレートの蓋(302)を、層状に重ねられた吸収剤紙の上に置いた。次いで、圧力を加えて、緊密なシールの形成を確保した。次いで、2本のゴムバンド(サイズ3.5L×3/4W)を使用して、蓋を、プレートと緊密となるように把持した。ゴムバンドは、それらが、互いと平行に、プレートの幅を把持するようにパッキングした(図4B)。この構成により、培養プレートの各ウェルを、培養培地で満たすことを確保し、これにより、初代哺乳動物細胞が、搬送中、培養培地と持続的に接触することを確保する。
(実施例3)
初代ヒト肝細胞による細胞培養物の搬送
実施例1および2で記載した通り、肝細胞/間質細胞共培養物を調製し、培養システムへと構成した。この実験のために、温度プローブを、第1の容器の内側に入れて、時間経過にわたる温度を記録した。温度プローブは、1分ごとに温度を記録する、標準的な電気的温度ロガーであった。温度ロガーであるLIBERO Ti1−Sは、ELPRO Services Inc.、Marietta OHから購入し、そのまま使用した。LIBERO Ti1−Sは、携行型(95×40×12mm/38g)の、蓄電池作動型温度記録デバイスである。LIBERO Ti1−Sは、内部チャンバーの温度を、1分ごとに、11日間にわたり記録する。
次いで、組み立てられた細胞培養システムを、小包で、ニュージャージーからカリフォルニアへと搬送した。時間経過にわたる温度についてのグラフを、図7Aに示す。まず、第1の容器の内側の温度は、システムを構成したときの室温である、約22℃である。システムは、トラックにより、約2時間にわたり運搬された。この時間中、第1の容器の内側の温度は、約28.5℃超へと急速に上昇した。次いで、システムを、航空機へと積載した。約3時間後の標点で、航空機が離陸した。この時点で、システムは、航空機貨物倉の低周囲温度へと曝露された。5時間後の標点までに、第1の容器の内側の温度は、約20℃へと下降した。航空機が高度を下げ、着陸すると、第1の容器の内側の温度は、約29.5℃へと上昇した。次いで、システムを、目的地へと配送し、容器を開梱した。残る温度記録は、細胞培養物が経た条件を表さない。
システムを開梱した後で、細胞培養プレートを取り出し、培地を交換し、プレートを、37℃でインキュベートした。目視により、培養物中の肝細胞の実質的に全てが、細胞培養プレートのウェルの底部への接着を保っていることを確認した。
CYP450 3A4のクリアランスは、6、11、および14日目に評価した。データを、図5Bに示す。
このデータは、初代肝細胞−間質細胞共培養物の搬送後における、長期にわたる、高度な肝細胞性能を実証する。
(実施例4)
初代ヒト肝細胞による細胞培養物の搬送
実施例1および2で記載した通り、肝細胞/間質細胞共培養物を調製し、培養システムへと構成した。この実験のために、温度プローブを、第1の容器の内側に入れて、時間経過にわたる温度を記録した。
次いで、組み立てられた細胞培養システムを、小包で、ニュージャージーから欧州へと搬送した。この搬送中の、時間経過にわたる温度についてのグラフを、図6Aおよび6Bに示す。
システムを開梱した後で、細胞培養プレートを取り出し、培地を交換し、プレートを、37℃でインキュベートした。目視により、培養物中の肝細胞の実質的に全てが、細胞培養プレートのウェルの底部への接着を保っていることを確認した。
CYP450 3A4のクリアランスは、1および7日目に評価した。データを、図6Cに示す。
このデータは、初代肝細胞−間質細胞共培養物の搬送後における、長期にわたる、高度な肝細胞性能を実証する。
(実施例5)
初代ヒト肝細胞による細胞培養物の搬送
実施例1および2で記載した通り、肝細胞/間質細胞共培養物を調製し、培養システムへと構成した。この実験のために、温度プローブを、第1の容器の内側に入れて、時間経過にわたる温度を記録した。
次いで、組み立てられた細胞培養システムを、小包で、ニュージャージーからイリノイへと、3つの異なる搬送により搬送した。これらの搬送中の、時間経過にわたる温度についてのグラフを、図7A〜7Cに示す。この場合、上述の実験より、搬送距離が短く、室外の周囲温度が高かったことに注目されたい。この結果として、搬送中のシステムからの熱の喪失は減少した。
(実施例6)
熱源としての電熱器
実施例3〜5で提示したデータは、化学的熱パックを熱源として活用する、本発明のシステムの実施形態の有用性を実証する。代替法として、ニクロム線抵抗による特製の抵抗型発熱素子を使用する電熱機構の使用について試験した。ニクロム発熱素子は、蓄電池により、温度制御装置を介して作動させた。実験を実施して、第1の容器の内側で所望される温度を、24時間にわたり維持するために、発熱素子を作動させるのに必要とされる、蓄電池のサイズを決定した。12Vのリチウムイオン蓄電池(10ポンドの重量で20Ahおよび5ポンドの重量で10Ah)および鉛酸蓄電池(10ポンドの重量で9Ah)について試験した。
第1の実験では、12Vの20Ahリチウムイオン蓄電池を使用して、電熱機構を作動させた。図8Aは、システムを、室温条件下に置いた場合の、時間経過にわたる、搬送システムの第1の容器の内側の温度を示す。第1の容器の内側の温度が、30℃〜36℃の間で維持されたのは、11時間にかけてに過ぎず、次いで、温度は、22℃を下回って下降した。これにより、蓄電池により作動させた発熱素子は、周囲温度が低い場合に、必要な温度を維持するのに十分ではないことが示唆された。
次の実験では、システムを、冷蔵庫内に入れることにより、航空機による搬送中の条件を模倣した。システムは、冷蔵庫内で、24時間にわたり維持した。図8Bに示される結果は、12Vの20Ahリチウムイオン蓄電池に、18℃〜36℃の間の温度を維持することが可能なのは、数時間に過ぎないことを示す。
これらの結果は、18℃〜36℃の間の搬送温度を、必要な時間にわたり維持するように、電熱機構を作動させるには、10ポンドを超える蓄電池が必要であることを示した。加えて、リチウムイオン蓄電池または鉛酸蓄電池の搬送には、爆発防止パッケージングが必要とされるが、これは、高価で、かつ煩雑である。結果として、被験の蓄電池および発熱素子による機構は、本発明のシステムにおける使用に適さない。
(実施例7)
熱源を伴わない搬送
実施例3〜5で提示したデータは、化学的熱パックを熱源として活用する、本発明のシステムの実施形態の有用性を実証する。化学的熱パックの、第1の容器の内側の温度に対する影響について評価するために、実施例3で使用したシステムと類似のシステムを、熱パックを組み入れずに構成する対照実験を実施した。次いで、システムを、小包で、ニュージャージーからカリフォルニアへと搬送した。この搬送中の、時間経過にわたる温度についてのグラフを、図9に示す。示される通り、熱パックを組み入れなかった場合、温度は、飛行中、長時間にわたる、4℃の周囲温度への曝露の結果として、約11℃へと下降した。目的地において、システムを解体したところ、温度の急激な下降に起因して、培養物中の初代肝細胞が、培養物表面から剥離していることが観察された。
多様な例示的実践について記載してきたが、前出の記載は、例示的なものであるに過ぎず、本発明の範囲を制限する物ではないことを理解されたい。本開示では、いくつかの例を提示したが、開示されるシステムおよび方法は、本開示の範囲から逸脱しない限りにおいて、他の多くの特殊な形態でも実施しうることを理解されたい。
開示される例は、本明細書で記載される1つまたは複数の他の特徴と組み合わせて、またはこれと部分的に組み合わせて実践することができる。本開示に基づき、様々なシステムおよび方法を実践することができるが、これらもやはり、本発明の範囲内にある。また、上記で記載または例示した多様な特徴を、他のシステム内または方法において組み合わせるか、または統合することもでき、ある特定の特徴を省略するか、または実践せずにおくこともできる。
本明細書では、本開示の多様な実施形態を示し、これらについて記載してきたが、当業者には、このような実施形態が、例だけを目的として提示されていることが明らかであろう。今や、当業者は、本開示から逸脱しない、多数の変更、変化、および代替に想到するであろう。本発明の実施においては、本明細書で記載される本開示の実施形態に対する多様な代替法を利用しうることを理解されたい。