JP2017524128A - 血清試料中の糖タンパク質のグリカンをマッピングするための改善された方法 - Google Patents

血清試料中の糖タンパク質のグリカンをマッピングするための改善された方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析するための方法に関する。具体的には、この方法は、試料から組換え糖タンパク質を親和性精製し、固定化された糖タンパク質からグリカン含有断片を酵素的に放出し、同位体標識されたグリカンを含有する参照標準を添加し、グリカンを蛍光標識し、およびLC−MSを用いてグリカンを分析するステップを含む。本発明はまた、固定化された組換え糖タンパク質断片のグリカンを分析するステップをさらに含み、さらに、液体試料の予備洗浄ステップ、および固定化された組換え糖タンパク質断片からグリカンを放出するステップを含む方法に関する。方法は、96ウェルプレート試料調製などの、少量の試料容積の使用およびハイスループットで操作する可能性を考慮し、したがって、臨床試験または前臨床試験において、哺乳動物の組換え糖タンパク質の薬物動態パラメータを測定するのに適している。

Description

本発明は、哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析するための方法に関する。具体的には、この方法は、試料から組換え糖タンパク質を親和性精製し、固定化された糖タンパク質からグリカン含有断片を酵素的に放出し、同位体標識されたグリカンを含有する参照標準を添加し、グリカンを蛍光標識し、およびLC−MSを用いてグリカンを分析するステップを含む。本発明はまた、固定化された組換え糖タンパク質断片のグリカンを分析するステップをさらに含み、さらに、液体試料の予備洗浄ステップ、および固定化された組換え糖タンパク質断片からグリカンを放出するステップを含む方法に関する。方法は、臨床試験または前臨床試験で哺乳動物において、生物医薬品などの組換え糖タンパク質の薬物動態パラメータを測定するのに適している。本発明は、液体クロマトグラフィー−質量分析、好ましくは逆相ナノ−液体クロマトグラフィー−質量分析(RP−ナノ−LC−MS)技術を用いて使用され得る。方法は、96ウェルプレート試料調製などの、少量の試料容積の使用およびハイスループットで操作する可能性を考慮する。また、高感度を提供し、グリカン構造の分析を個別に行うことができる。
生物学的薬剤は最も複雑な医薬品に属する。生物学的薬剤の1つの重要なクラスは、糖タンパク質、特に、典型的には約150kDaの分子量を有する糖タンパク質であるモノクローナル抗体(mAb)である。近年、いくつかの調査により、これらの構造が、対応する生物学的薬剤の安全性および有効性に影響を及ぼし得ることが示されたため、治療用タンパク質のグリコシル化が注目された。さらに、薬物動態学(PK)におけるグリカン構造が有し得る効果が関心を集めるようになってきた。
IgGは、Fc部分の各々の重鎖上、通常、アミノ酸297付近に保存されたN−グリコシル化部位を有する。これらの部位に結合したN−グリカンの異種性は非常に高く、十数種の異なるグリカンが見いだされている。この混合物からのグリカンの同定および定量は複雑であり、包括的な分析アプローチが必要である。いくつかのグリカンの構造異性体は、識別をさらにより困難にする。
N−グリコシル化は、生物医薬品の安全性および有効性にとって重要な問題であり、治療用抗体または治療用Fc融合タンパク質などの糖タンパク質の薬物動態に影響を及ぼす可能性がある。したがって、薬物動態学上の糖タンパク質の個々のグリカン構造の包括的な分析が必要である。Fcグリカンへの関心は、以下の主要なトピックス、抗体依存的な細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存的な細胞傷害(CDC)におけるFcグリカンの役割、ならびに末端ガラクトース残基に結合するアシアロ糖タンパク質受容体または末端マンノースおよびN−アセチルグルコサミン残基に結合するマンノース受容体などの糖受容体の結果として、循環からのクリアランス速度に対するグリカンの役割を含む。
N−グリコシル化は、液体クロマトグラフィー、質量分析を用いてまたは両方の技術の組み合わせによって、PNGaseFによるグリカンの酵素的放出後に試験することができる(ChenおよびFlynn、Analytical Biochemistry 2007年、370巻、147−61頁)。感度を高めるために、N−グリカンは、多くの場合、蛍光標識で誘導体化される。N−グリカンの定量分析について、還元アミノ化を通じた蛍光色素による標識が広く用いられ、高感度を提供する。すべてのN−グリカンは、サイズまたは分枝とは無関係にただ1つの標識を有し、したがって、蛍光シグナル強度から定量的な情報を得ることができる。このタグは、UVまたは蛍光検出を提供するだけでなく、エレクトロスプレーイオン化における効率を改善することもできる。シアル酸含有グリカンの分析について、2−アミノ安息香酸(2−AA)または8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸(ANTS)などの負に帯電したタグによる標識、および陰イオン化モードにおけるMS検出は頻繁に使用される(Prienら、Analytical Chemistry 2010年、82巻、1498−508頁)。
負に帯電した標識は、MSにおける陰イオン化と組み合わせて、酸性N−グリカンを分析するために頻繁に使用されている(Prienら、Glycobiology 2010年、20巻、629−47頁)。オリゴマンノース構造を特徴付けるために、2−AA誘導体化N−グリカンが、逆相クロマトグラフィーとネガティブモード質量分析法の組み合わせによって分析された(Prienら、Glycobiology 2010年、20巻、629−47頁)。
WO2014/060551において、1つのアプローチにおける、RP−LC−MSによる中性および酸性N−グリカンの効率的および高感度な分析が記載されている。従来の方法は、主に、オリゴマンノース型N−グリカンの異性体分離に限定されていた。WO2014/060551において、アントラニル酸(2−AA)を使用して、N−グリカンを標識した後、ギ酸を用いた酸性条件下で逆相液体クロマトグラフィー(RP−LC)カラムを用いて分離する。負に荷電した2−AAは、RP−LCにおいて2−アミノベンズアミド(2−AB)よりも逆相カラムにおいてより強い保持を生じ、2−AA標識されたN−グリカンの効率的なイオン化および検出を可能にする。RP−LCに使用される酸性条件は、イオン対形成試薬を必要とせずに末端シアリル化を有する酸性2−AA N−グリカンの効率的な分離をもたらす。この方法は、RP−ナノ−LC−MS、ならびにアトモル感度およびハイスループットを可能にする96ウェルプレート試料調製とともに使用することができる。
N−グリコシル化分析は、タンパク質分子に結合され得る無数のN−グリカン改変体およびそれらの相対量の大きな相違のために複雑である。例えば、組換えヒトIgG抗体について、個々のオリゴマンノースN−グリカンの相対量は、最も豊富なN−グリカンに対して0.02%から70%超の範囲であり得、これは三桁の相違である(Higelら、Analytical and Bioanalytical Chemistry 2013年、405巻、2481−93頁)。N−グリカン分析に頻繁に使用される技術は、CE、HPAEC−PAD、HPLC、MALDIおよびESI−MSならびにこれらの技術の様々な組み合わせである(Marinoら、Nature Chemical Biology 2010年、6巻、713−23頁)。LCはグリカン混合物を分離することができるため、LC−MSが有利な組み合わせである;その後、グリカン改変体を個別に同定し、オンラインMSによって定量することができる。しかしながら、様々な分析用途について、従来のLC−MSは、特に試料量が非常に限られている場合には、十分に感度が高くない可能性がある。初期の生物医薬品開発(クローンまたはプール選択)中および前臨床試験中に、マイクロタイタープレートからの微量の組換えタンパク質だけが、通常、タンパク質およびグリカン分析に利用可能である。グリコシル化された生物医薬品の薬物動態におけるグリカン改変体の影響を研究するために、目的の組換え糖タンパク質は、他のタンパク質との混合物中の試料、例えば血清中にさらに存在し、その大部分がまたグリコシル化される。さらに、目的の組換え糖タンパク質の量は経時的に減少する。したがって、高感度、特異性および低い試料消費が必要とされる。典型的には、多数の試料が存在するため、したがって、目的の糖タンパク質は、理想的にはハイスループットフォーマットで再現可能な様式で試料から単離されなければならず、一連の試料内の個々の試料の分析は互いに比較可能でなければならない。さらに、糖タンパク質は、1を超えるN−グリコシル化部位を有し、各々のグリコシル化部位でグリカン構造の差異があってもよい。
プロテオミクスにおいて、例えばナノ−LC−MSの使用によって、分析システムの寸法を縮小することによって、試料容積の制限が回避されている。ナノ−LC−MSの使用によるN−グリカン分析のアプローチは、文献ではまれである。3つの調査が、グリカン分析のためのナノ−LCの実施可能性を報告している。Wuhrerらは、オリゴ糖分析のためにHILIC−MSをナノスケールまで小型化した(Wuhrerら、Analytical Chemistry 2004年、76巻、833−8頁)。彼らは、フェムトモル濃度の感度を有する非誘導体化N−グリカンを分析している。グリカンの誘導体化を避けることは、試料調製を短くするが、標識による改善されたMS検出の利益が失われる(Wuhrerら、Analytical Chemistry 2004年、76巻、833−8頁;Ruhaakら、Analytical and Bioanalytical Chemistry 2010年、397巻、3457−81頁)。Kalayらは、2−AB N−グリカンを分析するために、オンライン蛍光を用いて順相ナノスケールHPLC−MSを使用した(Analytical Biochemistry 2012年、423巻、153−162頁)。彼らのアプローチは、良好なクロマトグラフィー分解能を達成するために、長く時間を費やす勾配を用いることとなった。最近、ナノ−逆相クロマトグラフィー(ナノ−RPC)を利用した一研究が公表されている。Ritamoら(Analytical and Bioanalytical Chemistry 2013年、405巻、2469−80頁)は、過メチル化N−グリカンを分離するためにナノ−LCシステムを使用してきた。彼らは、ナノ−RPカラム上の種々の構造異性体の分離を達成している。しかしながら、N−グリカンの過メチル化は複雑であり、毒性試薬が使用され、副生成物が形成される可能性はむしろ高いため、これが日常的に使用されるかは疑わしい。以前に、オンラインMSを用いたRP−LCは、異なる還元末端標識されたN−グリカンの分析に広く適用可能であることが報告されている(ChenおよびFlynn、Analytical Biochemistry 2007年、370巻、147−61頁;Praterら、Analytical Biochemistry 2009年、385巻、69−79頁)。RP−ナノ−LC−MSを用いた単一の2−AA標識N−グリカン、例えば約400アトモルについて全体的な感度がWO2014/060551に報告されている。さらに、この方法は、96ウェルベースの試料調製ワークフローと組み合わせることができる。
MSによるタンパク質の定量は、安定な重同位体ペプチドまたはタンパク質を用いて行われることが多い。対照的に、N−グリカンの安定重同位体標識は、真核細胞の複雑であり、多数の関連した同化および異化炭水化物経路のためにほとんど不可能である。同位体標識された単糖の制御された取り込みは、リジンまたはアルギニンのような同位体標識されたアミノ酸の取り込みよりはるかに困難である。
循環中のIgG分子のクリアランスにおけるグリカンの役割は、血清クリアランスにおけるFcグリカン変化の影響を決定しようと試みるなかで、前臨床または臨床の薬物動態学(PK)試験を含む様々なグループによって検討されている。2つの一般的なアプローチが、これらの試験に用いられている。1つのアプローチにおいて、遺伝子突然変異、代謝阻害剤の添加、両者の組み合わせ、親和性精製または酵素処理のいずれかを介して、特定のグリカン形態で濃縮される抗体が調製されている。次に、これらの抗体試料を動物に注射し、全体のクリアランス速度への影響を決定する。しかしながら、このアプローチは、濃縮中の分子における唯一の変化がグリカン構造であるという仮定のために限界がある。グリカンの異種性はまた、結果の何らかの曖昧さにつながる可能性がある。また、同じ生成物の異なる改変体を調製し、投与する必要がある。したがって、このアプローチは、治療用組換え抗体または融合タンパク質などの生物医薬品の前臨床または臨床のpK試験には適していない。
別のアプローチにおいて、薬物が投与された後にグリカン形態が分析され、循環時間とともにグリカンパターンへの変化は、クリアランス速度の差として解釈される。投与後の回収アプローチは、より多くのグリカン形態を同時に追跡することができる。単一の投与された試料への変化が追跡されるため、特定の微小不均一性の影響をモニターすることができる。本発明者らの知る限りでは、このアプローチはヒトでのみ使用されてきたが、検体サイズがより制限されている前臨床試験で典型的に使用されるより小型の哺乳動物では使用されていない。しかしながら、生物医薬品の開発においてできるだけ早く薬物動態学に関するグリカンの分析、ならびに臨床試験で必要とされる試料サイズの減少が望ましい。
Alessandriら(mAbs、2012年、4巻、4号、509−520頁)は、ヒトPK試験から得られる血清試料由来の組換えモノクローナルIgG1抗体を分析した。抗体は、セファロースビーズに架橋されたそのリガンドを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより血清から精製された。グリカンは、酸性溶出した抗体から放出され、2−アミノベンズアミド(2−AB)で標識され、順相高速液体クロマトグラフィーにより分析された。しかしながら、このアッセイは、かなり高い試料容量で投与後14日までしか分析が可能でなく、他の血清タンパク質で汚染されやすい。
Chenら(Glycobiology 2009年、19巻、3号、240−249頁)は、ヒトにおける薬物動態試験の血清試料中のモノクローナル抗体を分析した。抗体は、レジンに架橋されたリガンドを用いて親和性精製され、酸性で溶出させた。放出されたグリカンを2−アミノベンズアミド(2−AB)で標識し、RP−HPLC/MSで分析した。この単離法は、血清から特定の抗体の70%だけを得ることができた。また、この方法は、1を超えるグリコシル化部位を有する糖タンパク質について、同じ分子の他の血清タンパク質または他のグリカンから放出されたグリカンからの干渉を受けやすい。
Goetzeら(Glycobiology 2011年、21巻、7号、949−959頁)は、ヒトにおける薬物動態試験の血清試料中のモノクローナルIgG1およびIgG2抗体を分析した。抗体は、レジンに架橋されたそれぞれのリガンドを用いて親和性精製された。抗体を酸性で溶出し、エンドプロテイナーゼLys−Cまたはトリプシンのいずれかで消化した。グリコシル化されたペプチドをLC−MS/MSを用いて分析した。この方法は、ヒトIgG1またはヒトIgG2のいずれかのコンセンサスFcグリコシル化に特異的であるという利点を提供する。適用されたペプチドマッピングアプローチによって、妨害不純物の潜在的なプールは減少し、分析されるべきmAbと同じサブクラスの内在性IgGのみとなる。しかしながら、この方法は、0.5mlの試料容量を必要とし、これは、例えばげっ歯類を用いた前臨床試験においてしばしば入手できない場合がある。また、この分析は、試料中のN−グリカン構造の相対的比率を決定することのみを可能にし、単一のN−グリカン構造の独立した分析を可能にしない。
国際公開第2014/060551号
ChenおよびFlynn、Analytical Biochemistry 2007年、370巻、147−61頁 Prienら、Analytical Chemistry 2010年、82巻、1498−508頁 Prienら、Glycobiology 2010年、20巻、629−47頁 Higelら、Analytical and Bioanalytical Chemistry 2013年、405巻、2481−93頁 Marinoら、Nature Chemical Biology 2010年、6巻、713−23頁 Wuhrerら、Analytical Chemistry 2004年、76巻、833−8頁 Ruhaakら、Analytical and Bioanalytical Chemistry 2010年、397巻、3457−81頁 Analytical Biochemistry 2012年、423巻、153−162頁 Analytical and Bioanalytical Chemistry 2013年、405巻、2469−80頁 Praterら、Analytical Biochemistry 2009年、385巻、69−79頁 Alessandriら、mAbs、2012頁、4巻、4号、509−520頁 Chenら、Glycobiology 2009年、19巻、3号、240−249頁 Goetzeら、Glycobiology 2011年、21巻、7号、949−959頁
これらの方法のいずれも、グリコシル化部位に構造差異を有する1を超えるグリコシル化部位、例えば、融合タンパク質の2つのドメインを含み得る抗体以外の組換え糖タンパク質を分析しなかった。さらに、試料中のグリカンの比率よりはむしろ、血清などの一連の哺乳動物試料中の組換え糖タンパク質の個々のグリカンを分析する方法が必要であった。また、低試料消費および試料調製物をハイスループット様式で操作できるように高い感度が必要とされた。
(発明の要旨)
したがって、本発明は、哺乳動物の液体試料中の目的の組換え糖タンパク質のグリカンを分析する方法であって、a)目的の組換え糖タンパク質を含む、哺乳動物の2つ以上の液体試料を用意するステップ;b)上記各試料の組換え糖タンパク質を、試料中の組換え糖タンパク質に特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップ;c)組換え糖タンパク質の酵素的切断によって、固体支持体から、上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を、別個の溶出液に放出させるステップ;d)場合により、別個の溶出液中の上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片から、グリカンを放出させるステップ;e)上記各試料のグリカンを、蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;およびf)LC−MSを用いて、上記各試料のステップe)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップc)、d)、e)またはf)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップf)の標識されたグリカンとともに分析される方法に関する。
本発明はまた、ステップc)において上記固体支持体に固定化されたままの、上記各試料の組換え糖タンパク質の第二のグリカン含有断片のグリカンを分析するステップをさらに含む方法に関し、aa)ステップb)の前に、哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄して、固体支持体に非特異的に結合する糖タンパク質を除去するステップ;dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料の組換え糖タンパク質の固定化された第二のグリカン含有断片から、グリカンを別個の溶液に放出させるステップ;ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;およびff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される方法に関する。予備洗浄ステップaa)は、試料を固体支持体と接触させるステップを含んでもよく、ここで、固体支持体は、ステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていない。
本発明によれば、分析されるべきグリカンは、高マンノース型、ハイブリッド型または複合型のN−グリカンからなる群から選択されるN−グリカンであってもよい。
本発明の方法において使用される蛍光標識は、安定な軽同位体変種および安定な重同位体変種を有し、例えば、2−アミノベンズアミド(2−AB)または2−アミノ安息香酸(2−AA)であり得る。好ましくは、蛍光標識は、12[C]および13[C]同位体対、より好ましくは12[C]および13[C]同位体対、さらにより好ましくは12[C]−2−アミノ安息香酸(12[C]−2−AA)および13[C]−2−アミノ安息香酸(13[C]−2−AA)同位体対である。
本発明による方法において使用される参照標準は、蛍光標識の安定な(第二の)同位体を用いて、好ましくは蛍光標識の安定な重同位体を用いて標識されたグリカンを含む。好ましくは、参照標準は、試料中で分析されたものと少なくとも同じグリカン構造を含む。参照標準は、グリカン構造を個々に分析することを可能にする。
本発明の方法において分析される組換え糖タンパク質は、好ましくは融合タンパク質または抗体、より好ましくはFc融合タンパク質または抗体である。組換えタンパク質がFc融合タンパク質または抗体である実施形態において、ステップc)において固体支持体から放出される組換え糖タンパク質のグリカン含有断片は、好ましくはFcドメインである。
一実施形態において、組換え糖タンパク質は抗体であり、抗体の可変領域は、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、好ましくは親和性リガンドは抗原である。好ましい実施形態において、抗体は、IgG抗体、より好ましくはIgG1またはIgG2抗体、さらにより好ましくはヒトもしくはヒト化IgG1またはIgG2抗体である。
別の実施形態において、組換え糖タンパク質は、Fcドメインおよびエフェクタードメインを含むFc融合タンパク質であり、エフェクタードメインは、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、ここで、親和性リガンドは、結合パートナーまたはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体である。
組換え糖タンパク質のFcドメインを含有するグリカンを固体支持体から放出させるために本発明の方法において使用される酵素は、好ましくはパパイン、フィシン、システインプロテアーゼSpeB(FabulOUS)またはシステインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))などのエンドプロテアーゼであり、好ましくはエンドプロテアーゼは、システインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))である。
本発明の方法の一実施形態において、組換えタンパク質は、抗体またはFc融合タンパク質であり、予備洗浄ステップは、aai)Fc結合タンパク質を使用して、固体支持体上にFc含有糖タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは、上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;およびaaii)Fc含有糖タンパク質を溶出するステップであって、上記予備洗浄ステップで使用される固体支持体は、ステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていないステップを含む。
本発明の方法において使用されるLC−MSは、好ましくは逆相LC−MSまたはナノLC−MSであり、より好ましくはLC−MSは逆相ナノLC−MSである。
本発明の方法の特定の実施形態において、固体支持体は、マイクロビーズ、好ましくはセファロースビーズ、アガロースビーズまたは磁気ビーズ、より好ましくはセファロースビーズを含むレジンである。親和性リガンドは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、臭化シアン、エポキシ、カルボジイミドまたはチオプロピルを介して、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を介して固体支持体にカップリングさせることができる。
本発明の方法の好ましい実施形態において、哺乳動物の2つ以上の液体試料は、マルチウェルフィルタープレート、好ましくは24、96または384ウェルフィルタープレート、より好ましくは96ウェルフィルタープレートを用いた分析用に調製される。
組換えタンパク質を含む哺乳動物の液体試料は体液であり、好ましくは血清もしくは血漿、尿、脳脊髄液、羊水、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択され;より好ましくは上記試料は血漿または血清試料である。好ましくは、分析される試料は、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μlまたは約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容量を有する。好ましい実施形態において、哺乳動物の2つ以上の液体試料を同じ対象から得た。本発明の方法において分析される哺乳動物の液体試料は、ヒト、サル、げっ歯類、イヌ、ネコまたはブタの試料、好ましくはマウス、ラット、ハムスターまたはウサギなどのげっ歯類の試料であり得る。
本発明の方法は、目的の組換え糖タンパク質のグリカンの少なくとも1つの特異的グリカン構造の薬物動態パラメータを決定するために、好ましくはそれらのCmax、tmax、AUCまたはt1/2を決定するために使用され得る。
特定の実施形態において、グリカンは、哺乳動物の上記2つ以上の各液体試料のアリコートにおいて分析され、場合により、上記組換え糖タンパク質の濃度は、哺乳動物の上記2つ以上の液体試料のさらなるアリコートにおいて、例えばELISAにより分析された。
好ましくは、分析されるアリコートは、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μlまたは約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容量を有する。
本発明はまた、糖タンパク質ベースの医薬組成物を調製する方法に関し、本発明の方法に従って哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析し、糖タンパク質を医薬組成物として製剤化するステップを含む。
さらに別の態様において、本発明は、哺乳動物の液体試料中の目的のFc融合タンパク質のグリカンを分析する方法に関し、a)Fcドメインおよびエフェクタードメインを含有するFc融合タンパク質を含む、哺乳動物からの2つ以上の液体試料を用意するステップ;aa)哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄するステップであって、Fc結合タンパク質を使用して、別個の固体支持体上に上記各試料のFc融合タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは、上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;およびFc融合タンパク質を溶出するステップを含むステップ;b)上記各試料のFc融合タンパク質を、試料中のFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に固定化するステップであって、親和性リガンドは結合パートナーであり、またはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体であるステップ;c)Fc融合タンパク質に特異的なエンドペプチダーゼで切断することによって、固体支持体から、上記各試料のFc融合タンパク質のFcドメインを、別個の溶出液に放出するステップ;dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料のFc融合タンパク質の固定化されたエフェクタードメインから、グリカンを別個の溶液に放出するステップ;ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;ならびにff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される。
Fc融合タンパク質および抗体について例示されたグリカンPKプロファイリング法のワークフローの概略図である。A)Fc融合タンパク質特異的な試料調製物を示す。 Fc融合タンパク質および抗体について例示されたグリカンPKプロファイリング法のワークフローの概略図である。B)抗体特異的な試料調製を示す。 Fc融合タンパク質および抗体について例示されたグリカンPKプロファイリング法のワークフローの概略図である。C)Fc融合タンパク質試料(1)および抗体試料(2)のN−グリカンプロセッシングを示す。 Fc融合タンパク質および抗体について例示されたグリカンPKプロファイリング法のワークフローの概略図である。D)グリカンの標識後の洗浄、続くRP ナノLC−MS分析を示す。 A)相対的なN−グリカン組成を示す(左)および少量のN−グリカンを示す拡大表示(右)の、品質管理(QC)試料から得られたグリカンマップを示す図である。誤差バーは標準偏差を表す。誤差バーのない2つの列のG1FおよびG0Fは、拡大表示のグラフを超えて延びている。QC試料濃度は、10μg/mlから100μg/mlの間であった。B)分析したグリカン構造の概略図である。ここで、GlcNAc=黒四角、Fuc=三角、Man=黒丸およびGal=明るい丸である。 ナノLC−MSベースのmAb1グリカンPKデータ(黒菱形)およびELISAデータ(黒四角)の比較を示す図である。比較を可能にするために、各々の曲線の最大値に対する4つのグリカンからの独立した結果が示されている(平均±SD、n=15)。(A)G0FのPKプロファイル(グリカンの約70%)が示される。(B)G1FのPKプロファイルが示される。(C)G2FのPKプロファイルが示される。(D)M6G0F/M5G1FのPKプロファイル(0.1%未満のグリカン)が示される。 ナノLC−MSベースのmAb1グリカンPKデータ(黒菱形)およびELISAデータ(黒四角)の比較を示す図である。比較を可能にするために、各々の曲線の最大値に対する4つのグリカンからの独立した結果が示されている(平均±SD、n=15)。(E)M3のPKプロファイルが示される。(F)M3G1FのPKプロファイルが示される。(G)M3G0FのPKプロファイルが示される。 ナノLC−MSによって得られた、ナノLC−MSベースのmAb1高マンノースグリカンPKプロファイルおよびELISAプロファイルの比較を示す図である。(A)ELISA(黒四角)と比較したM6(黒菱形)のPKプロファイル。(B)ELISA(黒四角)と比較したM5(黒菱形)のPKプロファイル。 各々の時点についてのmAb1のグリカンマップを示す図である。ウサギにおける単回皮下投与後に回収されたmAb1 N−グリカンの平均割合が示される。全表示(左)および拡大表示(右)が示される。 Fc部分および受容部分に分離された2つの異なるバッチ(FP1およびFP2)の融合タンパク質N−グリカンを示す図である。グリカンマップは、FP1 Fc部分(左上)、FP1受容体部分(右上)、FP2 Fc部分(左下)およびFP2受容体部分(右下)の相対的なN−グリカン組成を示す。拡大表示は、少量のN−グリカンを示す。 Fc部分および受容部分に分離された2つの異なるバッチ(FP1およびFP2)の融合タンパク質N−グリカンを示す図である。分析されたグリカン構造の概略図。ここで、GlcNAc=黒四角、Fuc=三角、Man=暗い丸、Gal=明るい丸およびSA=菱形である。 ELISAによって決定されたFP1およびFP2のPKプロファイルを示す図である。誤差バーは、動物間(n=5)の変動性を表す。 ナノLC−MSベースの融合タンパク質グリカンPKプロファイルとELISAプロファイルの比較を示す図である。ELISA(黒菱形)によって測定された相対的なタンパク質濃度と比較した、ナノLC−MSによって測定されたFP1およびFP2のFcドメインの主要なN−グリカン(黒四角)の平均PKプロファイルが示される。5匹の動物の平均+標準偏差が与えられる。 ナノLC−MSベースの融合タンパク質グリカンPKプロファイルとELISAプロファイルの比較を示す図である。ELISA(黒菱形)によって測定された相対的なタンパク質濃度と比較した、ナノLC−MSによって測定されたFP1およびFP2の受容体部分(エフェクタードメイン)の主要なN−グリカン(黒四角)の平均PKプロファイルが示される。5匹の動物の平均+標準偏差が与えられる。 FP1 Fc部分(左)および受容体部分(右)に位置するN−グリカンについてのグリカンマップを別々に示す図である。 FP2 Fc部分(左)および受容体部分(右)に位置するN−グリカンについてのグリカンマップを別々に示す図である。 末端糖部分の影響を示す図である。融合タンパク質1(FP1)および融合タンパク質2(FP2)のFc部分について、末端シアリル化(菱形)、末端ガラクトシル化(四角)および末端N−アセチルグルコサミン(三角)の割合が示される。 末端糖部分の影響を示す図である。融合タンパク質1(FP1)および融合タンパク質2(FP2)の受容体部分(エフェクタードメイン)について、末端シアリル化(菱形)、末端ガラクトシル化(四角)および末端N−アセチルグルコサミン(三角)の割合が示される。
本明細書で使用するとき、「蛍光標識」は、LC−MS分析において使用される蛍光化合物である。典型的には、還元アミノ化を用いてオリゴ糖に蛍光標識を導入し、その後の分離における検出を容易にし、好ましくはこのような蛍光標識は、2−アミノベンズアミド(2−AB)または2−アミノ安息香酸(2−AA)である。2−AAは、アントラニル酸としても知られている2−アミノ安息香酸である。本発明の目的で、蛍光標識は、蛍光標識の第一の安定な同位体(例えば、軽アイソタイプ)および蛍光標識の第二の安定な同位体(例えば、重アイソタイプ)を含む同位体対として利用可能である。本発明に有用なこのような同位体対の例は、同位体2−AA、例えば安定な同位体変種である12[C]−2−AAおよび13[C]−2−AAである(Prien、J.M.ら、Analytical Chemistry 82巻、1498−508頁(2010年))。例えば、2−AAのこのような同位体変種で標識されたグリカンは、ポジティブモードマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)またはオンラインネガティブモードエレクトロスプレー質量分析(ESI−MS/MS)および/またはナノスプレー質量分析法(NSI−MS)(Prien、J.M.ら、Analytical Chemistry 82巻、1498−508頁(2010年))を用いて分析され得る。蛍光標識の安定な同位体対の他の例は、12[C]−アニリン/13[C]−アニリンおよび12[C]−2−AB/13[C]−2−ABである。
炭水化物部分は、オリゴ糖について一般的に使用される命名法を参照して本明細書に記載される。この命名法を用いる炭水化物化学の総説は、例えば、HubbardおよびIvatt、Ann.Biochem.50巻、555−583頁(1981年)に見出すことができる。
本発明の目的で、「グリカン」とは、遊離形態であるまたはタンパク質もしくは脂質などの別の分子に結合した糖または糖の集合体(すなわち、糖類または炭水化物)を意味する。本明細書において言及するとき、「N−グリカン」は、コンセンサス配列:−Asn−X−Ser/Thr(例えば、共通のコア構造であるManα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ1−N−Asnを含む)において、ポリペプチド鎖のアスパラギン残基に共有結合したグリカンである。本明細書において言及するとき、「酸性グリカン」は、(非還元末端で)少なくとも1つの末端シアル酸を含むN−グリカンである。本明細書において言及するとき、「中性グリカン」は、何らシアル酸を含まないN−グリカンである。本明細書において言及するとき、「グリコシル化」は、特定の糖ヌクレオチド供与体基質を利用して、グリコシルトランスフェラーゼによって一般に触媒される、ポリペプチド、脂質、ポリヌクレオチド、炭水化物または他の有機化合物への炭水化物への酵素触媒による共有結合である。本発明の目的で、「多糖」は、反復単糖、好ましくは長さが10個を超える単糖単位で構成されるグリカンである。本明細書において言及するとき、「糖」は、任意の炭水化物、好ましくは味が甘い低分子量炭水化物を意味する(Essentials of Glycobiology、第2版、Varki A、Cummings RD、Esko JD、et al、編集の用語解説。Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009年)。単糖について以下の省略形が使用される:N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、フコース(Fuc)、マンノース(Man)、ガラクトース(Gal)およびシアル酸(SA)。
本発明の目的で、用語「糖タンパク質」とは、少なくとも1つのグリカン側鎖を有する、抗体および融合タンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)を含む、ペプチドおよびタンパク質を意味する。
用語「組換え糖タンパク質」とは、本明細書で使用するとき、生細胞内での組換えDNAの発現から生じるグリコシル化タンパク質を意味する。組換えDNA分子は、分子クローニングなどの遺伝子組換えの実験的な方法によって形成されたDNA分子であり、複数の供給源からの遺伝物質を一緒にし、生物においては他に見出されない配列を作り出す。この文脈において、組換え糖タンパク質はまた、液体試料が得られた哺乳動物に対して、タンパク質が内因性でないことも含む。換言すれば、組換え糖タンパク質は、試料を得る前に哺乳動物に投与されている。好ましい組換え糖タンパク質は、高等真核細胞において発現された治療用組換え糖タンパク質である。これに関して、例示的に有用な高等真核細胞は、以下の細胞株から選択される。
Figure 2017524128
これに関して特に好ましいのは、抗体などの生物医薬的に有用な糖タンパク質を発現するために当該技術分野において広く用いられているCHO細胞またはCHO由来細胞(例えば、CHO−DXB11またはCHO−DG55)である。
糖タンパク質は、宿主細胞と同種であってもよく、または異種であってもよく、すなわち、利用される宿主細胞に対して外来であってもよく、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞によって産生されるヒト糖タンパク質などであり得る。特定の実施形態において、宿主細胞によって発現される糖タンパク質は、培地中に直接分泌される。
適切な哺乳動物の、特にヒトの糖タンパク質の例としては、以下の分子が挙げられる:サイトカイン;サイトカイン受容体;ケモカイン、例えばTNFおよびTECK;ケモカイン受容体、例えばTNFRおよびCCR9;成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体化ホルモン;グルカゴン;ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびフォンビルブラント因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES;微生物タンパク質、例えばβ−ラクタマーゼ;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来栄養因子(BDNF)、神経栄養因子−3、−4、−5または6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6);神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えばaFGFおよびbFGF;上皮細胞増殖因子(EGF);形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β、例えばTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5;インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−1(脳IGF−I);インスリン様増殖因子結合タンパク質、CDタンパク質、例えばCD−3、CD−4、CD−8およびCD−19;エリスロポエチン;骨誘導性因子、免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−βおよび−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL−1からIL−21;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;細胞表面膜タンパク質;輸送タンパク質;ホーミング受容体;調節タンパク質;崩壊促進因子;ならびにウイルス抗原、例えばHIV−1またはHIV−2エンベロープタンパク質の一部。
本発明の文脈における好ましい糖タンパク質は、融合タンパク質である。用語「融合タンパク質」とは、本明細書で使用するとき、アミノ酸リンカー、好ましくはFcドメイン、アルブミンまたはトランスフェリン(transferring)に融合されたエフェクタードメインによってしばしば分離される、互いに融合された(すなわち、1つのポリペプチドとして発現された)2つのタンパク質またはタンパク質断片を含むキメラタンパク質を意味する。したがって、融合タンパク質は、好ましくはFc融合タンパク質、トランスフェリン融合タンパク質またはアルブミン融合タンパク質であり、より好ましくは融合タンパク質はFc融合タンパク質である。典型的には、融合タンパク質におけるFcドメインは、IgG重鎖の、好ましくはIgG1重鎖のCH2とCH3領域およびヒンジ領域を含む。Fcドメイン、アルブミンまたはトランスフェリンとの融合は、通常、インビボでの半減期を増加させおよび/またはエフェクタードメインの溶解性を増加させる。アミノ酸リンカーは、エンドプロテイナーゼのための切断部位をさらに含んでもよい。エフェクタードメインは、全長の治療的に関連するタンパク質またはその断片、特に治療的に関連する受容体または膜タンパク質の細胞外部分であり得る。治療的に関連するFc融合タンパク質の非限定的な例は、LFA−3/Fc(アレファセプト(Alefecept))、TNFR−Fc(エタネルセプト(Etanercept))、CTLA−4/Fc(アバタセプト(Abatacept)およびベラタセプト(Belatacept))、VEGFR1/2−Fc(アフリベルセプト(Aflibercept))、rFVIIIFcおよびrFIXFc、IL−1R1−Fc(リロナセプト(Rilonacept))、トロンボポエチン−Fc(ロミプロスチム(Romiplostim))およびアンギオポイエチン−1/2アンタゴニストペプチド−Fc(トレバナニブ(Trebananib))である。
適切な哺乳動物の、特にヒトの糖タンパク質の、融合タンパク質において使用されるのに適したエフェクタータンパク質の例としては、以下の分子が挙げられる:サイトカイン;サイトカイン受容体;ケモカイン、例えばTNFおよびTECK;ケモカイン受容体、例えばTNFRおよびCCR9;成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体化ホルモン;グルカゴン;ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびフォンビルブラント因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES;微生物タンパク質、例えばβ−ラクタマーゼ;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来栄養因子(BDNF)、神経栄養因子−3、−4、−5または6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6);神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えばaFGFおよびbFGF;上皮細胞増殖因子(EGF);形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF−αおよびTGF−β、例えばTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5;インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−1(脳IGF−I);インスリン様増殖因子結合タンパク質、CDタンパク質、例えばCD−3、CD−4、CD−8およびCD−19;エリスロポエチン;骨誘導性因子、免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−βおよび−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、例えばIL−1からIL−21;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;細胞表面膜タンパク質;輸送タンパク質;ホーミング受容体;調節タンパク質;崩壊促進因子;ならびにウイルス抗原、例えばHIV−1またはHIV−2エンベロープタンパク質の一部。
本発明の文脈における別の好ましい糖タンパク質は、抗体である。用語「抗体」は、本明細書で使用するとき、抗体全体および任意の抗原結合断片(すなわち、抗原結合部分)またはその一本鎖を含む。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖またはその抗原結合部分を含む糖タンパク質を意味する。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2およびCH3で構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCで構成される。VおよびV領域は、より保存され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各々のVおよびVは、以下のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRおよび4つのFRで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。典型的には、抗体は、CH2ドメインにおいて、アスパラギン残基N297でグリコシル化される。有意な数の抗体はまた、それらの可変領域にさらなるグリコシル化部位(すなわち、Asn−X−Ser/Thrトリペプチド)を有し、N結合グリコシル化は、血清IgGの重(VH)鎖および軽(VL)鎖と、いくつかのモノクローナル抗体(mAb)の両方の可変(V)ドメインにおいて見出すことができる。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される抗原結合断片の例としては、(i)V、V、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VからなるdAb断片(Wardら、Nature、341巻:544−546頁(1989年));および(vi)単離された相補性決定領域(CDR);または(vii)場合により合成リンカーによって連結され得る2つ以上の単離されたCDRの組合せが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え方法を用いて、VおよびV領域が対をなし、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(ScFv)として知られ、例えば、Birdら、Science 1988年、242巻:423−426頁、およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1988年、85巻:5879−5883頁を参照されたい)として作製されることを可能にする合成リンカーにより連結され得る。このような一本鎖抗体はまた、抗体の抗原結合部分および抗原結合断片という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知な慣用技術を用いて得られ、断片はインタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
用語「モノクローナル抗体」(mAb)とは、本明細書で使用するとき、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体を意味する。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、単一の結合特異性を示し、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を意味する。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化された細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
用語「組換えヒト抗体」には、本明細書で使用するとき、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるすべてのヒト抗体を含み、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列にヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングすることを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体が挙げられる。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され得、したがって、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のV配列およびV配列に由来し、それられに関連するが、インビボでヒト抗体の生殖系列レパートリー内に天然には存在しない配列である。
本明細書で使用するとき、「異種抗体」は、このような抗体を産生するトランスジェニック非ヒト生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック非ヒト動物からなっていない生物において見出され、および一般的にトランスジェニック非ヒト動物以外の種から見出されるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
用語「ペプチド」とは、本明細書で使用するとき、ペプチドアミド結合によって連結されたアミノ酸モノマーの鎖を意味する。ペプチドは、約10個以下のアミノ酸の短鎖であり得る。ペプチドは、約70個以上のアミノ酸の長鎖またはその中間のいずれかのものであってもよい。本発明の文脈において、エンドプロテイナーゼによって放出される組換え糖タンパク質の断片は、それがグリカンを有する場合、ペプチドまたは糖ペプチドと呼ばれる。
本明細書でするとき、「親和性リガンド」とは、目的の組換え糖タンパク質に特異的に結合するリガンドを意味する。この親和性リガンドは、アフィニティークロマトグラフィーを用いて、哺乳動物の液体試料中の、例えば、血清または血漿中の他の化合物から目的の組換え糖タンパク質を分離するために使用される。典型的には、組換え糖タンパク質が抗体である場合、親和性リガンドは抗原である。他の組換えタンパク質について、親和性リガンドは、典型的には、組換えタンパク質の結合パートナーまたは基質である。組換えタンパク質が融合タンパク質である場合、親和性リガンドは、典型的には、融合タンパク質のエフェクタードメインの結合パートナーまたは基質であり、例えば、受容体のリガンドまたはその逆である。あるいは、親和性リガンドは、上記組換えタンパク質に特異的な抗体または融合タンパク質の上記エフェクタードメインに特異的な抗体であってもよい。特に、組換え糖タンパク質の断片を含む固定化されたグリカンのうちのグリカンをさらに分析する場合、好ましくはアフィニティーリガンドはグリコシル化され、すなわち、グリカンを有しないまたは少なくともN−グリカンを含まない。当業者は、プロテインAおよびプロテインGまたは任意の他の一般的なFcドメイン結合タンパク質は、内因性抗体を含有する哺乳動物の液体試料中の、特に血清および血漿についての、目的とする特定の組換えFc融合タンパク質または抗体に対する親和性リガンドとして適切ではないことを理解する。
用語「抗原」は、本明細書で使用するとき、適応免疫応答を引き起こす物質であり、免疫原とも呼ばれ得る物質である。抗原は、抗体の抗原結合部位に結合する。抗原は、典型的には、高分子量であり、タンパク質または多糖類である。本明細書で使用するとき、抗原はまた、エピトープ、例えばペプチドを含む、抗原の免疫原性部分を指してもよい。ペプチド、脂質、核酸および多数の他の物質はまた、抗原として機能し得るまた、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または他の合成マトリックスなどのより大きなキャリアタンパク質に化学的に結合する場合、ハプテンと呼ばれるより小さな物質に対して免疫応答が生じ得る。
本明細書で使用するとき、「特異的結合」、「選択的結合」および「選択的に結合する」ならびに「特異的なリガンド」とは、融合タンパク質のエフェクタードメインなどの所定の組換え糖タンパク質に結合するまたは抗体に結合する親和性リガンドを意味する。例えば、一実施形態において、リガンドは、BIACORE3000機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した場合、約10−7M未満、例えば、約10−8M未満、10−9M未満または10−10M以下などの親和性(KD)で組換え糖タンパク質に結合し、液体試料中の非特異的抗原または他の糖タンパク質への結合についてその親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で所定の組換え糖タンパク質に結合する。したがって、本発明の文脈において、「特異的なリガンド」とは、リガンドが組換え糖タンパク質に選択的に結合し、それにより、試料中に存在する他の糖タンパク質から、特に試料中に存在する他の抗体から組換え糖タンパク質を分離することを意味する。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に選択的に結合する抗体」という用語と交換可能に使用され、「抗原が抗体に特異的である」というように逆に、同様に使用され得る。
用語「溶出液」とは、本明細書で使用するとき、固体支持体から放出される物質に関する。これは、溶出中に使用される緩衝液もしくは溶液または異なる緩衝液もしくは溶液を含み得る。
本明細書で使用するとき、「LC」とは、質量分析と組み合わせることができる液体クロマトグラフィーを意味し、本明細書において「LC−MS」と称される。LC−MSは、さらに、タンデムMSを含むことができる。用語「逆相LC」または「HPLC」(RP−LCまたはRP−HPLC)は、本明細書で使用するとき、非極性固定相および水性である中程度の極性移動相を有し、例えば、RMeSiClで表面修飾されたシリカが挙げられ、この場合、Rは、直鎖アルキル基、例えば、C1837またはC17(LehtoおよびHou、Chemistry and Analysis of Radionuclides、Wiley−VCH Verlag & Co.、Weinheim、Germany、2011年、170頁)。本発明の文脈においては、逆相において使用される移動相がMSとより適合性が高く、従って順相LC−MSよりも感度が高いため、「逆相LC−MS」が好ましい。
本明細書で使用するとき、「ナノ−LC」またはナノ−HPLC(RP−ナノ−LCまたはRP−ナノ−HPLC)は、従来のLCまたはHPLCと比較して、それぞれ、LCについて使用されるカラムの減少した内径(10−150μm)、およびより遅い流速(10−1000nl/分)によって特徴付けられる。このダウンスケーリングは、ナノ−LCシステムの高いプレート数および低フェムトモル濃度およびサブフェムトモル濃度範囲のタンパク質性試料を分析する能力をもたらす(Chervetら、Analytical Chemistry 1996年、68巻:1507−12頁)。液体クロマトグラフィーの分野における理解および通常の一般知識と一致して、本発明によれば、ナノ−LCおよびナノ−HPLCは、本発明の目的で、それぞれ、LCおよびHPLCの適切であり、意図された形態であること、ならびにRP−ナノ−LCおよびRP−ナノ−HPLCは、それぞれ、RP−LCおよびRP−HPLCの適切な形態および意図された形態、さらには好ましい形態であることが理解される。同様のことが、本発明の目的で、LCおよびRP−CLの適切であり、意図された形態である、それぞれ、マイクロ−LCおよびキャピラリ−LC、またはRP−マイクロ−LCおよびRP−キャピラリ−LCの同様に周知であり、確立された技術にもあてはまる。LC、HPLC、LC−MSまたはHPLC−MSという用語が本明細書において使用される場合、これはまた、それらの好ましい実施形態、ナノ−LC、ナノ−HPLC、ナノ−LC−MSまたはナノ−HPLC−MSおよびそれらの逆相形態を包含する。
本発明の目的で、RP−LCまたはRP−HPLCの「移動相」は、好ましくは、pHおよびイオン化状態を制御し、イオン対形成試薬として作用するイオン変性剤による、水中の有機修飾剤(例えば、アセトニトリルまたはメタノール)の勾配である。アニオン性イオン対試薬(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA))は、ペプチドのプロトン化された塩基性基に結合する。0.1%TFAの添加は溶離剤を酸性化し、ペプチドおよびタンパク質のカルボキシル基をプロトン化させ、分子のより大きな疎水性をもたらす。カチオン性イオン対形成試薬(例えば、トリエチルアンモニウムイオン)は、ペプチドのイオン化されたカルボキシル基に結合する(「Protein Liquid Chromatography」、Journal of Chromatography Library、61巻、Kastner M編集、Elsevier Science B.V.、2000年、153頁)。また、ジエチルアミン(DEA)をイオン対形成試薬として使用することができる(Melmerら、Journal of Chromatography A(2011年)、1218巻、1号、118−123頁)。例えば、2−AB標識されたN−グリカンの順相またはHILICクロマトグラフィーについて、適切な移動相は、例えば、75%アセトニトリル中の60mMolのギ酸アンモニウム(移動相A)および54%アセトニトリル中の115mMolのギ酸アンモニウム(移動相B)からなる(Melmerら、Anal Bioanal Chem(2010年)、398巻:905−914頁)。
本明細書で使用するとき、「イオントラップ質量分析」は、質量/電荷の比率が所望の範囲にあるイオンが、最初に高周波電気四重極電界の影響下で安定した経路を描くようにされ、次に、それらの相対的な質量/電荷比に応じて経路不安定性を選択的に誘導するようにその電界を調整することにより、検出器、例えば、四重極イオントラップに分離され、提示される構成である(http://www.genomicglossaries.com/content/mass_spectrometry.aspを参照されたい)。本発明の方法の感度は、より感度の高いナノESI源を使用することによって改善することができる。
本発明の目的で、すべての「N−グリカン」は、共通のコア糖配列、Manα1−6(Manα1−3)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAcβ1−Asn−X−Ser/Thrを有すると理解され、(1)マンノース残基だけがコアに結合した「オリゴマンノース」(高マンノース)、(2)N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GlcNAcTs)によって開始される「アンテナ」がコアに結合した「複合体」;および(3)マンノース残基だけがコアのManα1−6アームに結合し、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GlcNAcTs)によって開始される1つまたは2つのアンテナがManα1−3アーム上にある「ハイブリッド」の3つのグループに分類される(Essentials of Glycobiology、第二版、Varkiら編集、Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009年;第8章)。
本発明の目的で、一般的に、「1回の実施で」、「1回のアプローチで」または「単回の(分析)アプローチで」、酸性もしくは中性のグリカン、N−グリカンまたはグリカンの分析への言及は、MS分析がLCまたはRP−LCステップに直接連結される(すなわち、換言すると、オンラインで実施される)ことを意味する。これは、RP−LCとMS分析の間にさらなる分析または調製ステップがないことを意味する。これは、蛍光検出がRP−LCとMSの間で起こることを排除するものではないことが理解される。実際に、RP−カラム上で分離される2−AA標識されたグリカンの蛍光検出は、標識されたグリカンを通過する蛍光検出器(FLD)が、典型的にはHPLC/LCシステムのモジュールであるため、LCシステムから出て、MSに進行する前に通常(および有利に)起こる。これはまた、「LC−MS」または「RP−LC−MS」と呼ばれる。
用語「酵素的切断」とは、本明細書で使用するとき、酵素を伴い、ほとんどの非特異的に結合した糖タンパク質の溶出を回避しながら組換え糖タンパク質の放出を可能にする糖タンパク質の任意の切断を意味する。酵素的切断は、エンドグルカナーゼまたはエンドプロテイナーゼを使用して行うことができ、ここで、エンドプロテイナーゼが好ましい。この酵素は、目的の組換え糖タンパク質に対して選択的である必要がある。これは、特異的な切断部位がまれであり、好ましくは目的の組換え糖タンパク質だけに存在し、または付加的にいくつかの他の糖タンパク質、例えば、糖タンパク質の特定のファミリーまたは同じドメインを全てが含む糖タンパク質のグループに存在することを意味する。より選択的な酵素は、固体支持体からの非特異的に結合した糖タンパク質の断片の溶出を回避する。好ましくは、酵素は、組換え糖タンパク質を効率的におよび特異的に(例えば、既知の切断部位でのみ)切断する。適切な酵素は、例えば、特定のコンセンサス配列で特異的に目的の組換え糖タンパク質内で切断し、狭い基質特異性(または高い選択性)を有するエンドプロテイナーゼである。好ましくは、エンドプロテイナーゼは、目的の組換え糖タンパク質または目的の組換え糖タンパク質に含まれるドメインに対して特異的(および/または選択的)である。例えば、適切なエンドプロテアーゼは、目的の組換え糖タンパク質または目的の組換え糖タンパク質を含む本質的に同じドメインを含むタンパク質のグループを特異的に切断するだけである。本質的に同じドメインを含むタンパク質のグループの例は、抗体およびFc融合タンパク質であり、全てはFcドメインを含む。適切な酵素は、目的の組換え糖タンパク質中にまたは目的の組換え糖タンパク質内の各々の同一のポリペプチド鎖内に優先的にただ1つの切断部位を有する。用語「エンドペプチダーゼ」、「エンドプロテイナーゼ」、「プロテイナーゼ」または「プロテアーゼ」は、本明細書において交換可能に用いられる。
好ましくは、放出されるグリカン含有断片は、1つのグリカンを含むペプチドである、または放出されるFcドメインの場合、各々、1つのグリカンを含む2つの同一のペプチドである。例えば、固体支持体から組換え糖タンパク質のFcドメインを含有するグリカンを放出するための、本発明の方法に適したエンドプロテアーゼは、パパイン、フィシン、システインプロテアーゼSpeB(FabULOUS)またはシステインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))などのエンドプロテアーゼである。好ましくは、エンドプロテイナーゼは、システインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))である。例えば、IdeSは、定常配列ELLGGPSの2つのグリシン間のヒンジ領域においてヒトIgGを特異的に切断し、SpeBは、配列KTHTCPPC内のスレオニンとシステインの間のヒンジ領域において切断する。酵素的切断はまた、特定のN−またはO−グリコシル化部位に特異性を有するグリカナーゼを用いて行うことができる。このようなグリカナーゼは、IgG Fcドメイン含有の糖タンパク質中のN−グリカンに特異的であり、還元末端で第一のGlcNAc後で切断する、例えば、EndoSGlycanase(IgGZERO(登録商標))である。
あるいは、因子IX−アルブミン(FIX−アルブミン)などの融合タンパク質は、FIXの活性化ペプチドのN末端に由来するアミノ酸137−153に基づくリンカー配列を2つのドメイン間に含む。FXIaまたはFVIIa/TFのいずれかによる、FIX−組換えアルブミン融合タンパク質の活性化は、リンカーを切断し、それにより融合タンパク質のFIXa部分およびrHA部分を分離する。したがって、FXIaおよび/またはFVIIa/TFは、FIX−アルブミンを選択的に切断するのに適している。また、第Xa因子は、多くの条件下で非常に低い非特異的切断を示す部位特異的プロテアーゼである。したがって、第Xa因子は、第Xa因子切断部位(配列Ile−Glu/Asp−Gly−Argのアルギニンの後の切断)を含む糖タンパク質を切断するために使用され得る。第Xa因子キットは、例えば、Novagen(69036−3)から入手可能である。同様に、トロンビンは、組換え融合タンパク質の配列LeuValProArgGlySerのアルギニンとグリシンの間を特異的に切断するための部位特異的プロテアーゼである。
用語「固体支持体」とは、本明細書で使用するとき、特にアフィニティークロマトグラフィーにおいて、固体支持体の上にリガンドを固定化するために使用することができる任意の固体表面を意味する。典型的には、アフィニティークロマトグラフィーに適した「固体支持体」はレジンであり、例えば、大きな表面積を有するマイクロビーズを含むレジンである。本発明において特に好適なレジンは、セファロースビーズ、アガロースビーズまたは磁気ビーズであり、ここで、セファロースビーズが好ましい。用語「固定化された」とは、直接的または間接的のいずれかでの、固体支持体への共有結合または非共有結合を意味する。典型的には、親和性リガンドは、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、臭化シアン、エポキシド、カルボジイミドまたはチオプロピル反応性基を介して固体支持体に共有結合される。上記の反応性基の1つで活性化された市販のマイクロビーズは、当該技術分野において公知であり、例えば、NHS活性化セファロースである。組換え糖タンパク質が固体支持体に固定化されたまたはカップリングされたその特異的な親和性リガンドに結合すると、組換え糖タンパク質は、親和性リガンドへの非共有結合を介して固体支持体上に固定化される。
用語「哺乳動物の液体試料」とは、本明細書で使用するとき、細胞、タンパク質、DNAまたはRNAなどの生物学的材料を含む、特定の時点での哺乳動物から得られる任意の液体試料を意味する。典型的には、液体試料は、血清または血漿などの体液である。しかしながら、液体試料はまた、全血、尿、脳脊髄液、羊水、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液または結腸洗浄液であってもよい。好ましくは、試料は、本発明の方法に供される前に、例えば、遠心分離によって、細胞または破片から除去される。液体試料が目的の組換え糖タンパク質を含むためには、上記組換え糖タンパク質の哺乳動物への投与後に、試料が得られていなければならない。本発明の文脈において、組換え糖タンパク質は、生物医薬的または治療的に活性な組換え糖タンパク質として理解されるべきである。当業者は、液体試料または液体試料の「アリコート」を本発明で使用できることを理解する。液体試料のアリコートだけを用いて、本発明の方法に従って分析する場合、同じ試料の他のアリコートは、タンパク質濃度などの異なるパラメータについて分析されてもよく、または後の分析のために凍結保存されてもよい。
用語「定量下限(LLOQ)」とは、本明細書で使用するとき、適切な正確さおよび精度で定量的に決定され得る試料中の分析物の最低濃度を意味し、ここで、分析物は組換え糖タンパク質である。LLOQは、典型的には、μg/mlとして与えられる。当業者は、それが分析に使用される試料の量に強く依存することを理解する。
用語「参照標準」とは、本明細書で使用するとき、分析されるべきグリカンを標識するために使用される同位体変種とは異なる蛍光標識の同位体変種で標識された既知の相対分布を有するグリカンの標準化された混合物を意味する。同位体標識は、例えば、蛍光標識の安定な(好ましくは重)同位体変種、例えば、13[C]−2AAを用いて、還元末端でグリカンに導入することができる。グリカンの混合物は、分析される少なくともグリカン構造を含む。この混合物はさらに標準化されており、これは、グリカンの同一の混合物が、実験の各々の試料に添加され、または互いに比較される各々の試料に添加されることを意味する。好ましくは、組換え糖タンパク質の1つのバッチのグリカンは、放出され、標識され、および使用するまで凍結保存される。参照標準の使用は、試料調製およびナノLC−MS分析における変動を補償し、より正確な結果をもたらす。したがって、それは、好ましくは試料に可能な限り早く添加される。さらに、参照標準は、グリカン構造を個々に分析することを可能にする。これは、各々のグリカン構造の量が、各々の試料内のグリカンの相対的な割合というよりはむしろ、参照標準における個々のグリカンの既知の相対分布に基づいて、参照標準のそれぞれのグリカン構造に対して個々に定量され得ることを意味する。したがって、個々のグリカン構造のPKパラメータを決定することができる。
用語「ハイスループット」は、本明細書で使用するとき、多数の試料、例えば、10個超、50個超、100個超、500個超または1000個超の試料の、迅速であり、かつ、非常に並行的な試料調製を可能にするモードまたは方法に関する。
本発明の目的で、%への言及は、他に明確な記述がない限り、(v/v)を指すと理解される。
本明細書で使用するとき、用語「約」は、数値(例えば、pH値または割合値)と一緒に使用される場合、その値から20%、好ましくは10%、より好ましくは5%、さらにより好ましくは2%、最も好ましくは1%の偏差を包含することが意図される。数値と一緒に使用される場合、同時に、本発明による好ましい実施形態としての正確な数値を個々に開示するものと理解されるべきである。
本明細書で使用するとき、用語「含むこと(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含するものとして解釈されるべきであり、両者の意味は、具体的に意図され、したがって、個別に開示された、本発明による実施形態である。
したがって、本発明は、哺乳動物の液体試料中の目的の組換え糖タンパク質のグリカンを分析する方法であって、a)目的の組換え糖タンパク質を含む、哺乳動物の2つ以上の液体試料を用意するステップ;b)上記各試料の組換え糖タンパク質を、試料中の組換え糖タンパク質に特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップ;c)組換え糖タンパク質の酵素的切断によって、固体支持体から、上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を、別個の溶出液に放出するステップ;d)場合により、別個の溶出液中の上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片から、グリカンを放出させるステップ;e)上記各試料のグリカンを、蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;およびf)LC−MSを用いて、上記各試料のステップe)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップc)、d)、e)またはf)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップf)の標識されたグリカンとともに分析される方法に関する。参照標準は、プロセス中の初期に添加されることが好ましい。したがって、参照標準は、ステップf)の前に、好ましくはステップe)の前にまたはステップd)の前に、さらに好ましくはステップc)の前に添加され得る。本発明の方法のすべてのステップは、哺乳動物から得られた2つ以上の各液体試料について別々に実施される。
本発明はまた、ステップc)において上記固体支持体に固定化されたままの、上記各試料の組換え糖タンパク質の第二のグリカン含有断片のグリカンを分析するステップをさらに含む方法に関し、方法は追加で、aa)ステップb)の前に、哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄して、固体支持体に非特異的に結合する糖タンパク質を除去するステップ;dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料の組換え糖タンパク質の固定化された第二のグリカン含有断片から、グリカンを別個の溶液に放出させるステップ;ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;およびff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される。予備洗浄ステップaa)は、試料を固体支持体と接触させるステップを含んでもよく、ここで、固体支持体は、ステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていない。参照標準は、プロセス中の初期に添加されることが好ましい。したがって、参照標準は、標識されたグリカンをLC−MSを用いて分析する(ステップff)前に、好ましくは分析すべきグリカンを標識する(ステップee)前に添加されてもよく、より好ましくは、エフェクタードメインのグリカンを放出させる(ステップdd)前にカラム上に添加されてもよい。ステップc)において固体支持体に固定化されたままの上記各試料の組換え糖タンパク質の第二グリカン含有グリカンのグリカンをさらに分析する場合、好ましくは参照試料は、ステップc)の前に上記各試料に添加されていない。当業者は、本発明の方法の全てのステップが、哺乳動物から得られた2つ以上の各液体試料について別々に実施されることを理解する。
好ましくは、蛍光標識は、グリカンが糖タンパク質断片から放出された後に行われる。グリカンの放出は、当業者に周知の方法によって化学的または酵素的に行うことができる。
血清試料などの哺乳動物の液体試料からの親和性精製は、予備洗浄ステップを必要とすることがある。酵素切断後に固定された第二のグリカン含有断片のグリカンを分析すべき場合には、予備洗浄ステップが特に有利である。予備洗浄ステップは、試料を固体支持体と接触させるステップを含んでもよく、ここで、固体支持体は、カップリングされた親和性リガンドなしで組換え糖タンパク質を固定化する(ステップb)ために使用される固体支持体と同じ材料で作製される。非特異的に結合する糖タンパク質または糖脂質は、固体支持体に結合したままである。したがって、組換え糖タンパク質は、フロースルー、すなわち固体支持体に結合しない材料中に存在し得る。あるいは、予備洗浄ステップは、固体支持体上に組換え糖タンパク質を固定化し、続いて、固体支持体から組換え糖タンパク質を溶出させる上流の第二親和性精製ステップであってもよい。
別の態様において、本発明は、哺乳動物の液体試料中の目的のFc融合タンパク質のグリカンを分析する方法に関し、a)Fcドメインおよびエフェクタードメインを含有するFc融合タンパク質を含む、哺乳動物からの2つ以上の液体試料を用意するステップ;aa)哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄するステップであって、Fc結合タンパク質を使用して、別個の固体支持体上に上記各試料のFc融合タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;およびFc融合タンパク質を溶出するステップを含む、ステップ;b)上記各試料のFc融合タンパク質を、試料中のFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に固定化するステップであって、親和性リガンドは、結合パートナーであり、またはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体であるステップ;c)Fc融合タンパク質に特異的なエンドペプチダーゼで切断することによって、固体支持体から、上記各試料のFc融合タンパク質のFcドメインを別個の溶出液に放出するステップ;dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料のFc融合タンパク質の固定化されたエフェクタードメインからグリカンを別個の溶液に放出するステップ;ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;ならびにff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される。
本発明の方法によれば、分析されるべきグリカンは、好ましくはN−グリカンである。分析されるべきN−グリカンは、高マンノース型、ハイブリッド型または複合型N−グリカンであり得る。あるいは、分析されるべきグリカンはまた、O−グリカンであり得る。
本発明の方法において使用される蛍光標識は、2−アミノベンズアミド(2−AB)、2−アミノ安息香酸(2−AA)または8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸(ANTS)などのLC−MS分析に適した任意の標識であり得る。しかしながら、分析されるべきグリカンおよび同じ蛍光標識の異なる同位体変種を有する参照標準を標識するために利用可能な、安定な軽同位体変種および安定な重同位体変種が存在しなければならない。好ましくは、蛍光標識は、12[C]および13[C]同位体対、より好ましくは12[C]および13[C]同位体対、さらにより好ましくは12[C]−2−アミノ安息香酸(12[C]−2−AA)および13[C]−2−アミノ安息香酸(13[C]−2−AA)同位体対である。
本発明の方法による2−AAを用いた標識は、抗体または融合タンパク質などの組換え糖タンパク質の中性または酸性グリカンのマッピング(すなわち、分析)に特に有利であることが理解される。分析されるべきグリカンは、好ましくはN−グリカン、特に、オリゴマンノース、ハイブリッドまたは複合型のいずれかであるN−グリカンである。一実施形態において、N−グリカンは、G1F異性体、特に1,3または1,6ガラクトシル化を有するG1F異性体である。
本発明による方法において使用される参照標準は、蛍光標識の安定な(第二の)同位体で、好ましくは蛍光標識の安定な重同位体で標識されたグリカンを含む。好ましくは、参照標準は、試料中で分析されたものと少なくとも同じグリカン構造を含む。分析されるべきグリカンが、糖ペプチドなどの組換え糖タンパク質のグリカン含有断片の形態である場合、参照標準は、同等に、糖ペプチドなどの組換え糖タンパク質のグリカン含有断片の形態であるグリカンを含む。参照標準の使用は、試料調製およびナノLC−MS分析における変動を補償し、より正確な結果をもたらす。したがって、それは、好ましくは試料に可能な限り早く添加される。さらに、参照標準は、試料を標準化することができるため、グリカン構造を個別に分析することを可能にする。これは、各々のグリカン構造の量が、参照標準における個々のグリカンの既知の相対分布に基づいて、参照標準のそれぞれのグリカン構造に対して個別に定量され得ることを意味する。したがって、個々のグリカン構造のPKパラメータを決定することができる。参照標準は、目的の組換え糖タンパク質のグリカンを放出し、グリカンを蛍光標識の安定な同位体変種の1つで標識することによって調製することができる。参照標準は、本発明におけるステップe)およびee)において同じであるまたは異なっていてもよい。好ましくは、ステップe)およびee)における参照標準は同じである。例えば、特異的融合タンパク質のグリカンを分析するために、ステップe)とee)の参照標準はともに、上記全長融合タンパク質から放出されたグリカンを含むことができる。あるいは、ステップe)における参照標準は、融合タンパク質のFcドメイン、アルブミンまたはトランスフェリンなどの融合パートナーから放出されたグリカンを含み得、ステップee)における参照標準は、融合タンパク質の、TNFRの細胞外ドメインなどのエフェクタードメインから放出されたグリカンを含み得る。しかしながら、参照標準は、分析されるべきグリカンのグリカン構造を含有しなければならず、参照標準のグリカン内のグリカン構造の相対的割合を知るべきである。上記のような参照標準を使用することにより、各々のグリカン構造の相対量を別々に決定することが可能になる。
本発明の方法において分析される組換え糖タンパク質は、好ましくは融合タンパク質または抗体であり、より好ましくはFc融合タンパク質または抗体である。組換えタンパク質がFc融合タンパク質または抗体である実施形態において、ステップc)において固体支持体から放出される組換え糖タンパク質のグリカン含有断片は、好ましくはFcドメインである。
Fcドメイン含有糖タンパク質について、本発明の方法は、a)Fcドメインを有する目的の組換え糖タンパク質を含む哺乳動物の2つ以上の液体試料を用意するステップ;b)上記各試料の組換え糖タンパク質を、試料中の組換え糖タンパク質に特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップ;c)組換え糖タンパク質の酵素的切断により、固体支持体から上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片、好ましくはFcドメインを、別個の溶出液に放出させるステップ;d)場合により、別個の溶出液中の組換え糖タンパク質のFcドメインから、グリカンを放出させるステップ;e)上記各試料のグリカンを、蛍光標識の第一の安定な同位体で標識するステップ;およびf)LC−MSを使用して上記各試料のステップe)の標識されたグリカンを個別に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップを含んでもよく、ここで、蛍光標識の第二の安定な同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップc)、d)、e)またはf)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップf)の標識されたグリカンとともに分析される。
1つの特に好ましい実施形態において、組換え糖タンパク質は抗体であり、抗体の可変領域は、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、好ましくは、親和性リガンドは抗原である。好ましい実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4から選択されるIgG抗体であり、より好ましくはIgG1またはIgG2抗体である。抗体は、キメラ、ヒトまたはヒト化IgG抗体であってもよく、好ましくは、抗体は、ヒトもしくはヒト化IgG1またはIgG2抗体である。
別の特に好ましい実施形態において、組換え糖タンパク質は、Fcドメインおよびエフェクタードメインを含むFc融合タンパク質であり、エフェクタードメインは、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、ここで、親和性リガンドは、結合パートナーまたはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体である。
固体支持体に固定化された上記各試料の組換え糖タンパク質の第二のグリカン含有断片のグリカンをさらに分析する場合、液体試料の予備洗浄ステップが必要である。好ましくは、予備洗浄ステップは、ステップb)における組換え糖タンパク質の固定化の上流の第二の親和性クロマトグラフィーであり、溶出後に試料中の組換え糖タンパク質を濃縮する。好ましくは、目的の組換えタンパク質の回収率は高く、例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%である。Fcドメイン含有糖タンパク質について、組換え糖タンパク質を富化するためにFc結合タンパク質を使用してもよい。Fcドメイン含有糖タンパク質について、予備洗浄ステップは、好ましくは、aai)Fc結合タンパク質を用いて、固体支持体上にFc含有糖タンパク質を固定化するステップであって、上記固体支持体が、ステップb)で使用されるカップリングされた親和性リガンドなしで、ステップb)において組換え糖タンパク質を固定化するために使用される固体支持体と同じ材料で作製されるステップ、およびaaii)Fc含有糖タンパク質を溶離するステップを含む。好ましくは、Fc結合タンパク質は、プロテインGまたはプロテインAであり、より好ましくは上記Fc結合タンパク質はプロテインGである.Fc結合タンパク質への結合および強力な洗浄後、IgGまたはFc融合タンパク質が溶出される。Fc結合タンパク質からIgGおよび融合タンパク質を溶出させるための適切な方法は、当業者に公知であり、限定されないが、低pHのグリシンまたはアルギニン緩衝液などの酸性条件の使用を含む。抗体のその抗原への結合または治療用融合タンパク質のその標的への結合と比較して、プロテインG(またはプロテインA)のFcドメインに対する親和性が典型的に低いことに起因して、回復はほぼ完了する。分析を間違える可能性のある非特異的に結合した内因性の糖タンパク質は、固体支持体に結合したままである。予備洗浄した試料を中和し、固定化されたアフィニティーリガンドを有するアフィニティーカラムに添加する。
Fc融合タンパク質について、酵素的切断によるFc融合タンパク質の固定化および放出(ステップbおよびc)後、固体支持体上に残っているFc融合タンパク質のエフェクタードメインのグリカンは溶液中に放出される。グリカンは、グリカン放出後に蛍光標識で標識され、参照標準と一緒に分析される。蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準は、エフェクタードメインのグリカンを放出する(ステップdd)前に、分析されるべきグリカンを標識する(ステップee)前に、またはLC−MSを用いて標識されたグリカンを分析する(ステップff)前に、カラム上に添加される。
好ましくは、参照標準は、2−AAの安定な同位体変種などの、蛍光標識の安定同位体変種で標識されたエフェクタードメインおよびFcドメイングリカンの混合物からのN−グリカンを含む。
一実施形態において、組換えタンパク質は、抗体またはFc融合タンパク質であり、予備洗浄ステップは、aai)Fc結合タンパク質を使用して、固体支持体上にFc含有糖タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;およびaaii)Fc含有糖タンパク質を溶出するステップであって、上記予備洗浄ステップで使用される固体支持体は、ステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていないステップを含む。
糖タンパク質のグリカン含有断片を放出する、本発明の方法による酵素的切断は、エンドグルカナーゼまたはエンドプロテイナーゼを用いて行うことができ、ここで、エンドプロテイナーゼが好ましい。好ましくは、エンドプロテイナーゼは、組換え糖タンパク質を効率的におよび特異的に(例えば、既知の切断部位でのみ)切断する。より好ましくは、酵素は、目的の組換え糖タンパク質に対してさらに選択的である。これは、特異的切断部位がまれであり、目的の組換え糖タンパク質および糖タンパク質の特定のファミリーなどの他のいくつかの糖タンパク質、またはFc含有糖タンパク質などの同一ドメインをすべて含む糖タンパク質のグループにのみ存在することを意味する。より選択的な酵素は、固体支持体からの非特異的に結合した糖タンパク質の断片の溶出を回避または低減する。好ましくは、放出されたグリカン含有断片は、1つのグリカンを含むペプチドであるまたは放出されたFcドメインの場合、各々、1つのグリカンを含む2つのペプチドである。例えば、固体支持体から組換え糖タンパク質のグリカン含有Fcドメインを放出させるための、本発明の方法に適したエンドプロテイナーゼは、パパイン、フィシン、システインプロテアーゼSpeB(FabulOUS)またはシステインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))などのエンドプロテアーゼであり、好ましくは、エンドプロテイナーゼは、システインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))である。IdeSは、定常配列ELLGGPSの2つのグリシン間のヒンジ領域にあるヒトIgGを特異的に切断する。エンドプロテイナーゼを用いた酵素的切断は、典型的には非常に効率的であり、その結果、グリカン含有糖タンパク質断片をほぼ完全に放出させる。(例えば、アルギニンまたはグリシンを使用して)それぞれのリガンドを介して固定化された治療用抗体または融合タンパク質の酸性溶出と比較して、酵素的切断による溶出は、多くの場合、より効率的で完全であり、したがって、本発明の方法の感度がより高くなる。Lysまたはトリプシンのカルボニル側で特異的に加水分解するLys−Cなどの非選択的なエンドプロテイナーゼは、大部分の糖タンパク質内で数回切断し、本発明の文脈において十分には適さない。
酵素的切断はまた、特定のN−またはO−グリコシル化部位に特異性を有するグリカナーゼを用いて行うことができる。このようなグリカナーゼは、例えば、Fcドメイン含有糖タンパク質中のN−グリカンに選択的であるエンドSグリカナーゼ(IgGZERO(登録商標))である。しかしながら、FcドメインのN−グリカン中のGlcNAc−β1,4−GlcNAc結合を切断し、したがって、フコースを欠損しているグリカンを放出する。このようにして、エンドSグリカナーゼは、フコシル化が目的ではない場合にのみ適している。
融合タンパク質において、エフェクタードメイン、およびFcドメイン、アルブミンまたはトランスフェリンなどの融合パートナーのN−グリカンを別々に分析して、部位特異性に関するさらなる情報を得ることができる。以下では、本発明による方法は、Fc融合タンパク質について例示される。しかしながら、当業者は、この方法を他の融合タンパク質に適合させる方法を知っている。Fc部分およびエフェクタードメインN−グリカンの個々の分析について、2つの部分を分離しなければならない。したがって、融合タンパク質は、そのエフェクタードメインとともに、セファロースレジンなどの固体支持体上に固定化され、Fc部分は、IdeS酵素などの酵素を用いて酵素的に放出される。IdeSは、Fab2およびFc断片を産生するヒンジ領域より下で、高い特異性でIgGおよび関連分子を選択的に切断するエンドペプチダーゼである。IdeSはまた、IgG Fcドメイン含有融合タンパク質を切断する。融合タンパク質は、ジスルフィド架橋によって連結され、相互作用パートナーまたは抗原およびFcドメインに結合することができるエフェクタードメイン(例えば、受容体部分)に切断される。あるいは、エフェクタードメインのグリカンとFcドメインのグリカンとの間を選択的に切断する、任意の他のエンドプロテイナーゼを使用することができる。あるいは、他の融合タンパク質について、適切なエンドプロテイナーゼは、エフェクタードメインのグリカンとアルブミンまたはトランスフェリンなどの融合パートナーのグリカンの間を切断する。好ましくは、エンドプロテイナーゼは、エフェクタードメインのグリカンとFcドメインのグリカンの間の融合タンパク質のみを切断する。さらにより好ましくは、エンドプロテイナーゼは、試料内の融合タンパク質またはグループ(または融合タンパク質を含むタンパク質のファミリー)を選択的に切断するが、試料内のすべてのタンパク質を切断することはない。これは、この方法のさらなる特異性を提供し、非特異的に結合した糖タンパク質の断片による汚染を低減させる。例えば、IdeS酵素は、抗体およびFc融合タンパク質のヒンジ領域の下のIgG Fcドメインを切断し、したがって、Fcドメインを有さない他の混入糖タンパク質による放出されたFcドメインの汚染を低減させる。融合タンパク質はまた、エフェクタードメインと融合パートナーの間の分子クローニングによって導入された特異的切断部位を含むことができ、これはこの方法で使用することができる。
本発明の方法において使用される蛍光標識は、2−アミノベンズアミド(2−AB)、2−アミノ安息香酸(2−AA)または8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸(ANTS)などのLC−MS分析に適した任意の標識であり得る。しかしながら、分析されるべきグリカンおよび同じ蛍光標識の異なる同位体変種を有する参照標準を標識するために利用可能な、安定な軽同位体変種および安定な重同位体変種が存在しなければならない。好ましくは、蛍光標識は、12[C]および13[C]同位体対、より好ましくは12[C]および13[C]同位体対、さらにより好ましくは12[C]−2−アミノ安息香酸(12[C]−2−AA)および13[C]−2−アミノ安息香酸(13[C]−2−AA)同位体対である。
本発明の方法による2−AAを用いた標識は、抗体または融合タンパク質などの組換え糖タンパク質の中性または酸性グリカンのマッピング(すなわち、分析)に特に有利であることが理解される。分析されるべきグリカンは、好ましくはN−グリカン、特に、オリゴマンノース、ハイブリッドまたは複合型のいずれかであるN−グリカンである。一実施形態において、N−グリカンは、G1F異性体、特に1,3または1,6ガラクトシル化を有するG1F異性体である。
本発明の方法におけるグリカンの蛍光標識後、ゲル濾過を用いてアクセス標識(access label)を分離することができる。例えば、Sephadex G10カラムは水で平衡化されてもよく、蛍光標識されたグリカン、遊離した蛍光標識および場合により参照標準を含む混合物は、ゲル濾過カラムに添加される。標識されたグリカンおよび参照標準を水で溶出し、真空遠心分離機で水を蒸発させた後、乾燥試料をLC−MS分析のために水に溶解し得る。当業者は、96ウェルプレートまたは他のサイズなどのマルチウェルプレートを使用することによって、ゲル濾過は多数の試料を並行して用いて行うことができることを理解する。
組換え糖タンパク質のグリカン含有断片からのグリカンの放出は、当業者に周知な方法によって化学的にまたは酵素的に行うことができる。
例えば、その後の標識(または場合によっては分析)のためのグリカンの化学的放出は、当業者に周知であるヒドラジン分解またはアルカリ性β−脱離によって影響され得る。化学的除去のための例示的な有用キットは、Sigma−Aldrichによって提供されるGlycoProfile(商標)IVケミカル脱グリコシル化キットである。
酵素的方法によるグリカンの放出が好ましく、当業者に問題を生じさせない。続く標識(または分析)のためにグリカンを除去する特に好ましい方法は、PNGaseF(ペプチドN−グリコシダーゼF)を用いた消化である。様々な適切なPNGaseF酵素は、大部分が遺伝子操作されたまたは最適化されたPNGaseFである、異なる商標名(例えば、N−グリカナーゼ(登録商標))で市販されているが、発明の文脈において、遺伝子操作されたまたは最適化されたPNGaseFを使用することは必須ではない。酵素的放出はまた、タンパク質に結合した最初の単糖を残しているグリカンコアの2つのN−アセチルグルコサミン間で切断する、エンドグリコシダーゼH(もしくはEndoSグリカナーゼIgGZERO(商標)などの類似した酵素活性を有する酵素)またはエンドグリコシダーゼF2を使用することによって行うことができる。しかしながら、グリカンがフコースを有するかどうかの情報は、このようにして失われる。さらに、エンドグリコシダーゼHおよびエンドグリコシダーゼF2は、オリゴマンノースおよびハイブリッド二分岐性グリカンにのみ特異的である。
血清などの哺乳動物の液体試料中のグリカン分析について、オンカラム脱グリコシル化は、ステップb)の前に予備洗浄ステップと組み合わせてのみ使用されるべきであり、これは、セファロースレジンに非特異的に結合する内因性の血清糖タンパク質が、追加の洗浄ステップによって除去され得ないためである。Fc部分の唯一のN−グリコシル化部位を有する抗体は、酵素的溶出ステップに特に適している。酵素であるIdeSは、ジスルフィド結合のC末端のIgG重鎖を選択的に切断し、それにより、続いて、高効率で脱グリコシル化され得る2つのグリコシル化された重鎖断片を放出する。理論的には、1を超える酵素的溶出ステップを次々に行うことができる。組換え糖タンパク質の固定されたグリカン含有断片のグリカン分析について、固体支持体への組換え糖タンパク質の固定化(ステップb))の前に、予備洗浄ステップと組み合わせてオンカラム脱グリコシル化を実施する。好ましくは、予備洗浄ステップは、試料中の組換え糖タンパク質を富化するために親和性精製を含む。
本発明の方法において使用されるLC−MSは、好ましくは逆相LC−MSまたはナノLC−MSであり、より好ましくはLC−MSは逆相ナノLC−MSである。
抗体、融合タンパク質または他の糖タンパク質を親和性精製するための方法は、当業者に公知である。使用される固体支持体は、レジン、例えばマイクロビーズ、好ましくはセファロースビーズ、アガロースビーズまたは磁気ビーズ、より好ましくはセファロースビーズを含むレジンであってもよい。しかしながら、アフィニティークロマトグラフィーに適した任意の固体支持体またはレジンは、本発明の方法に使用することができる。親和性リガンドは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、臭化シアン、エポキシ、カルボジイミドまたはチオプロピルを介して、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を介して固体支持体にカップリングさせることができる。さらに、親和性リガンドを固体支持体にカップリングさせるための方法は、当該技術分野において公知である。典型的には、上記のリンカーの1つを用いて活性化されたレジンは市販されている。
典型的には、本発明の方法を用いて分析される組換え糖タンパク質は、治療的に関連する組換え糖タンパク質である。治療的に関連する組換え糖タンパク質は、多くの場合、その治療標的に対して非常に高い親和性および特異性を有する。したがって、治療標的は、哺乳動物の液体試料から組換え糖タンパク質を捕捉し、それを固体支持体に固定化するための親和性リガンドとして十分に適している。例えば、抗体の、それぞれの抗原を用いた親和性精製は、抗体とその抗原との強い相互作用のために、非常に高い親和性および特異性の利点を有する。治療用抗体のその抗原に対する親和性は、典型的には、ピコモルから低ナノモルの範囲である。エタネルセプトなどの治療的に関連する融合タンパク質は、典型的には、類似した親和性でそれらの治療標的に結合する。しかしながら、この高い親和性結合の1つの主な欠点は、酸性溶出後の抗体または融合タンパク質の回収が限定されることである。したがって、酵素的切断を用いて糖タンパク質のグリカン含有断片を溶出することにより、回収率を改善することができる。
親和性リガンドは、任意の結合パートナーであってもよく、限定されないが、受容体のリガンド、基質、抗原または抗体が挙げられる。治療的に関連する糖タンパク質について、親和性リガンドは、好ましくは治療標的またはその断片である。親和性リガンドはまた、治療標的の変異体またはその断片、好ましくは、野生型の治療標的またはその断片と比較してより高い親和性で組換え糖タンパク質に結合する変異体であり得る。組換え糖タンパク質が抗体である場合、親和性リガンドは、好ましくは抗体に結合する抗原、より好ましくは高親和性で抗体に結合する抗原である。抗原は、例えば、短いペプチドを含む、1を超えるタンパク質の複合体、全長タンパク質またはその断片であってもよい。融合タンパク質について、親和性リガンドは、好ましくは、融合タンパク質のエフェクタードメインに結合する結合パートナーであり得る。親和性リガンドはまた、融合タンパク質のエフェクタードメインに結合する抗体であってもよい。目的の任意の他の糖タンパク質について、親和性リガンドは、同様に、結合パートナーであってもよく、または目的の組換え糖タンパク質に結合する抗体であってもよい。好ましくは、親和性リガンドはグリコシル化されていない。
本発明の方法の好ましい実施形態において、哺乳動物の2つ以上の液体試料またはそれらのアリコートは、マルチウェルフィルタープレート、好ましくは24、96または384ウェルフィルタープレート、より好ましくは96ウェルフィルタープレートを用いて、分析用に調製される。フィルター膜は、好ましくは、ニトロセルロース膜またはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜などの低タンパク質結合および/または親水性膜である。これらのフィルタープレートは、添加された試薬またはレジンに応じて、アフィニティークロマトグラフィー、酵素消化、蛍光標識およびゲル濾過に適している。
組換えタンパク質を含む哺乳動物の液体試料は体液であり、好ましくは、血清または血漿、尿、脳脊髄液、羊水、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄からなる群から選択される;好ましくは、上記試料は、血漿または血清試料である。好ましくは、分析されるべき試料は、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μl、または約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容積を有する。好ましい実施形態において、哺乳動物の2つ以上の液体試料は、同じ対象から得られた。本発明の方法において分析される哺乳動物の液体試料は、ヒト、サル、げっ歯類、イヌ、ネコまたはブタの試料、好ましくはマウス、ラット、ハムスターまたはウサギなどのげっ歯類の試料であり得る。
本発明の方法は、目的の組換え糖タンパク質のグリカンの少なくとも1つの特定のグリカン構造の薬物動態パラメータ、好ましくはCmax、tmax、AUCまたはt1/2を決定するために使用され得る。好ましくは、哺乳動物の2つ以上の液体試料を同じ対象から異なる時間点で得た。この場合、少なくとも約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間、336時間、504時間、672時間、840時間が、最初の時点と最後の時点の間にあってもよい。好ましくは、哺乳動物の2つ以上の液体試料は、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、40個以上または50個以上の試料である。
本発明の方法は、(i)蛍光標識の第一の安定同位体で標識された上記各試料からのグリカンと蛍光標識の第二の同位体で標識されたそのそれぞれの参照標準グリカンの抽出イオンクロマトグラム(EIC)の曲線下面積を決定して、第一の同位体試料グリカン対第二の同位体参照標準の比を経時的に形成させるステップ、ならびに(ii)場合により参照標準における個々のグリカンの既知の相対分布に基づいて、グリカンの割合を上記各試料について計算するステップをさらに含んでもよい。さらに、各々の個々のグリカンについての2つ以上の試料の比またはグリカンの割合は、例えば、時間に対してプロットして比較することができる。好ましくは、グリカンはN−グリカンである。
例えば、時間に対してプロットされた一定の重同位体標準N−グリカン(重シグナル)に対する試料N−グリカン(軽シグナル)のL/H比は、各々のN−グリカンのグリカンについてグリカンPKプロファイルをもたらす。あるいは、計算された試料N−グリカン割合を時間に対してプロットしてもよく、各々のN−グリカンのグリカンPKプロファイルを得ることができる。決定されたグリカンPKプロファイルは、それぞれのELISAプロファイルと比較することができ、グリカンマップの計算の基礎となる。当業者は、安定な重同位体が分析されるべきグリカンを標識するために使用される場合、安定な軽同位体は参照標準の標識として同様に使用され得ることを理解する。換言すると、参照標準のグリカンが、分析されるべきグリカンとは異なるアイソタイプ変種の蛍光標識で標識されている限り、安定な軽および重同位体の蛍光標識が同様に適している。「重」グリカン参照標準組成は、標識されたグリカン分子の数に正比例する標識のみに依存するUVシグナルを用いて決定されるため、当業者は、グリカンの割合(%)がモルを指すことを理解する。
グリカンはまた、本発明の方法に従って、哺乳動物の上記2つ以上の各液体試料のアリコートにおいて分析することができる。好ましくは、分析されるべきアリコートは、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μl、または約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容積を有する。場合により、上記組換え糖タンパク質の濃度は、哺乳動物の上記2つ以上の液体試料のさらなるアリコートにおいて分析することができる。一実施形態において、上記組換え糖タンパク質の濃度は、試料中の特定のタンパク質の濃度を決定するために、当業者に公知であるELISAまたは任意の他の方法によって分析される。
本発明の方法に関連して実施されるべき液体クロマトグラフィー−MSは、好ましくは逆相液体クロマトグラフィー(RP−LC−MS)、より好ましくは逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC−MS)または超高速液体クロマトグラフィー(UPLC−MS)である。この場合、本発明に関連して実施されるRP−LCの他の好ましい場合と同様に、これらのクロマトグラフィー法は、逆相液体クロマトグラフィーカラムで行われる。好ましくは、RP−LCは、グリカンに結合した2−AA標識のカルボキシ基が中性である条件下で実施される。逆相LCは、順相LCと比較してより高感度の分析を可能にするため、本発明の方法において好ましい。これは、移動相が質量分析により適合性があるためである。場合により、イオン対形成試薬を移動相に使用しない。好ましくは、酸性移動相は、RP−LCに使用される。
本発明の方法に関連して実施されるべき液体クロマトグラフィーは、好ましくは、ナノ−LCまたはナノ−HPLCであり、さらにより好ましくは逆相ナノ−LCまたは逆相ナノ−HPLCである。ナノ−LCは、従来のLCまたはHPLCと比較して、LC(10〜150μm)およびより遅い流速(10〜1000nl/分)について使用されるカラムの内径の減少によって特徴付けられる。このダウンスケーリングは、低いフェムトモル濃度およびサブフェムトモル濃度の範囲でタンパク質性試料を分析する能力をもたらし(Chervetら、Analytical Chemistry 1996年、68巻:1507−12頁)、したがって、分析されるべき試料体積および投与後の組換え糖タンパク質のグリカンを検出する期間を減少させることが可能である。
RP−LC中に使用される適切な移動相は、ギ酸を含む。これに関して、移動相中のギ酸の好ましい量は、約0.1%から約2.0%のギ酸である。したがって、典型的な好ましい量は、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%または約1.9%のギ酸を含む。移動相中の約1.0%量のギ酸が特に好ましい。
RP−LC中に使用される別の適切な移動相は、酢酸を含む。これに関して、移動相中の酢酸の好ましい量は、再度、約0.1%から約2.0%の酢酸である。したがって、典型的な好ましい量は、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%または約1.9%の酢酸を含む。移動相中に約1.0%量の酢酸が特に好ましい。
さらに、RP−LC中に使用される移動相の適切なpH値は、約1から約4の範囲、より好ましくは約1.5から約3の範囲、さらにより好ましくは約1.8から約2.9の範囲、なおより好ましくは約1.9から約2.75の範囲、特に好ましくは約2から約2.7の範囲である。特に、約2.1から約2.18の範囲のpH値が好ましい。したがって、本明細書に記載されるおよび/または請求される方法および使用によるRP−LC中に用いられる好ましい移動相は、約1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6または2.7のpH値を有し、約2.1または約2.18のpH値が特に好ましい。
本発明の方法の過程において、LCまたはRP−LCによる蛍光(好ましくは2−AA)標識されたグリカンの分離は、有利には、約4℃からほぼ室温の範囲の温度で、または室温(本発明の目的では室温を23℃として定義する)で実施することができる。しかしながら、好ましくは、分離は、室温より高い温度で行われる。これに関して、約40℃から約60℃の範囲の温度が好ましく、約50℃が特に好ましい。
本発明によるナノRP−LCまたはナノLCカラムの適切な流速は、当業者によって容易に知られるまたは決定される。一般的に、適切な流速は、典型的には、約50〜1000nl/分の範囲にある。好ましいのは、例えば,約100〜500nl/分の範囲の流速である。したがって、流速の好ましい値は、約100nl/分、約200nl/分、約300nl/分、約400nl/分または約500nl/分であり、約300nl/分の流速が特に好ましい。
上記したように、本発明の方法は、特に好ましいLCまたはRP−LCを質量分析(MS)分析に直接連結させることによって行われる方法を用いて、蛍光標識されたグリカン(好ましくは2−AA標識されたグリカン)をLCまたはRP−LCを介して分離した後に、それらをMSに供することを含む。これに関して適切な質量分析法には、陽イオン化質量分析などのイオントラップ質量分析が含まれる。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、アトモル濃度の個々の標識されたグリカン、例えば、800amol程度に低い、好ましくは600amol程度に低い、より好ましくは400amol程度に低い濃度の分析を可能にする。別の好ましい実施形態において、本方法は、20μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.5μg/ml以下、0.2μg/ml以下または0.1μg/ml以下の、哺乳動物の2つ以上の各液体試料における組換え糖タンパク質濃度で組換え糖タンパク質のグリカンを分析することを可能にする。さらに別の好ましい実施形態において、本発明の方法は、各々1.0μg以下、0.5μg以下、0.25μg以下、0.1μg以下、0.05μg以下、0.025μg以下、0.01μg以下または0.005μg以下の組換え糖タンパク質を含む哺乳動物の2つ以上の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析することを可能にする。さらに別の好ましい実施形態において、少なくともステップb)、c)、d)およびe)ならびに/または少なくともステップaa)、dd)およびee)は高スループット様式で操作される。
本発明はまた、先行する請求項のいずれか一つに記載の哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析するステップ、および糖タンパク質を医薬組成物として製剤化するステップを含む、糖タンパク質ベースの医薬組成物を調製する方法に関する。場合により、組換え糖タンパク質は、糖タンパク質を医薬組成物として製剤化する前に糖鎖工学的に操作される(glycoengineered)。
本明細書中に引用される全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるが、本出願の特許請求の範囲によって与えられる保護の範囲を限定するものと見なすべきではない。
材料
2−アミノ安息香酸、エタノールアミン、ギ酸、ピコリンボラン、DMSO、13Cアミノ安息香酸はSigma(Munich、Germany)から得た。PNGaseFはRoche(Penzberg、Germany)から得た。酢酸、アセトニトリルおよび塩酸は、Merck(Darmstadt、Germany)から得た。プロテインG、NHS活性化セファロース、Sephadex(登録商標)G−10 96ウェルプレートおよび96ウェルディープウェルプレートは、GE Healthcare(Munich、Germany)から得た。TNF−αはPeprotech(Hamburg、Germany)から得た。リン酸緩衝生理食塩水は、Gibco/Life technologies(Darmstadt、Germany)から得た。
マルチスクリーンTHS HVフィルタープレートは、Miliporeから得た。ファブリケーターはGenovis(Lund、Sweden)であった。96ウェルプレートは、Nunc/Thermo Scientific(Munich、Germany)から得た。AcroPrep(商標)Advance Omega(商標)10K 96ウェルフィルタープレートは、Pall(Dreieich、Germany)から得た。前臨床ウサギ血清試料は、Sandozの臨床バイオアナリティクスから得た。
[実施例1]
IgG1生物製剤の薬物動態におけるグリコール改変体の影響
前臨床ウサギ試験
前臨床試験は、ニュージーランドシロウサギで行った。10mg/kg体重のIgG1 mAb1(抗TNF−α抗体)の単回皮下投与後、1回の投与前血液試料を含め、一定期間にわたって血液試料を採取した。血清試料を投与後12個の時点で採取した。詳細なサンプリングを表1に示す。血清中のmAb1の濃度をELISAによって決定した。残りの血清から2×50μlアリコートをグリカンPKプロファイリングに使用した。第一のアリコートを分析し、第二のアリコートをバックアップアリコートとして使用した。
Figure 2017524128
抗原の再構成
大腸菌(E.coli)で産生された組換えヒト抗原(TNF−α)を製造業者の指示書に従って再構成した。抗原をHO(1mg/mL)に溶解し、室温で2時間再構成した。
13C2−AA標識したグリカン標準の調製
脱塩したmAbのN−グリカン(1mg)を、PNGaseF消化を用いて、一晩(17時間)37℃で放出させた。Amicon 30Kフィルター装置を用いてN−グリカンをタンパク質から分離し、スピードバックを用いて乾燥させた。ピコリンボランおよび[13C]2−AAを70:30(v/v%)のDMSO−酢酸に溶解して、それぞれ63および50mg/mlの濃度とした。標識溶液(15μL)および脱イオン水(10μL)を、15nmolの酵素的に放出され、乾燥されたグリカンに添加した。標識反応は、37℃で17時間行った。
G−10カラム上のゲル濾過によって、余分な標識を除去した。カラムを10mlのHOで馴化した。試料を脱イオン水で100μlに希釈し、カラムに適用した。カラムを700μlのHOですすいだ後、精製した蛍光標識N−グリカンを600μlのHOで溶出した。精製された[13C]2−AA標識N−グリカンを分注し、使用するまで−20℃で保存する。
固定化抗原を含む96ウェルプレートアフィニティーカラムの調製
親水性低タンパク質結合膜を含む96ウェルフィルタープレート(Multiscreen THS HVフィルタープレート)の膜を1mM HCl(100μL)で湿潤させた後、1ウェルあたり200μLのNHS活性化セファロース−イソプロパノールスラリーを添加した。イソプロパノールを遠心分離によって除去し、カラムを1mM HCl(150μL)で4回洗浄した。抗原溶液(100μL;50μl/ml)をカラムに遠心分離し、カップリング反応を周囲温度で2時間行った。アフィニティーカラムを洗浄し、残りのNHS基は、エタノールアミン緩衝液(150μL)を用いて不活性化させた。最後に、カラムをPBSで平衡化した。
IgG1生物薬剤の親和性精製およびグリカン放出
血清試料(50μL)をPBSで100μLに希釈し、遠心分離によって親和性精製カラムに適用した。結合したmAbをPBSで数回洗浄し、血清および非特異的に結合したタンパク質を除去した。ファブリケーター溶液(1U/μl)をカラムに遠心分離し、mAbのグリコシル化Fc部分を放出させた。反応は37℃で30分間行った。放出されたFc部分をPBSで溶出し、13C−2−AA標識されたN−グリカン標準液とともにPNGaseFを添加した。この混合物を37℃で17時間インキュベートした。残りのタンパク質は、10Kのカットオフ膜を有する96ウェルプレートを用いた限外濾過によって除去された。グリカン標準とともに放出されたN−グリカンを真空遠心分離によって乾燥させた。
N−グリカン標識
遊離還元末端N−グリカンおよび13C2−AA標識したグリカン標準を含む乾燥試料をHO(10μL)に溶解し、2−AA標識溶液(15μL;DMSOと酢酸の7:3混合液中の100mg/mLピコリンボラン、50mg/mLの2−AA)を添加し、37℃で17時間インキュベートした。
ゲル濾過
その後、ゲル濾過により過剰の標識を除去する。特注の96ウェルプレートSephadex G−10カラムを800μLのHOで平衡化した。標識された試料をHOで100μLまで充填し、ゲル濾過カラムに適用した。2−AAおよび13C2−AA標識したN−グリカンをHO(150μL)で溶出した。最後に、試料を真空遠心分離によって乾燥させ、ナノLC−MS分析のために20μLのHOに溶解させた。
標識したN−グリカンのナノLC
標識した試料N−グリカンおよび重同位体標準をRPナノLC−MSによって分析した。ナノLC(Thermo/Dionex Ultimate 3000)を、製造業者のマニュアルに従い、予備濃縮カラム(3μm粒子、75μm×2cm)および分析用カラム(2μm粒子、75μm×25cm)を用いて、「予備濃縮」モードに設定した。カラムコンパートメントを40℃に保持した。ナノポンプの移動相は、HO中の0.5%ギ酸(成分A)および50%ACN中の0.5%ギ酸(成分B)からなっていた。キャピラリーポンプの移動相は、HO中の0.5%ギ酸および1%ACN(成分C)からなっていた。分析用カラムを2%の成分Bを用いて300nl/分の流速で平衡化した。予備濃縮カラムを100%の成分Cを用いて平衡化した。ユーザー定義の注入の所定操作により、8μlの試料溶液を20μlの試料ループ中の泳動溶液(0.1%ギ酸、超純水中1%ACN)の間に積み重ねた。試料ループを毛細管ポンプフローのインラインで2分間切り替え、最適な捕捉を可能にした。次の注入試料の前に、ループを泳動溶液で洗浄した。捕捉後、予備濃縮カラムをナノポンプフローに切り替え、成分Bを60分かけて30%に、次に5分かけて95%に上昇させた。95%の成分Bを5分間保持した後、最後に、カラムを2%の成分Bで15分間再平衡化した。カラム出口を3nlのフローセルを備えたUV検出器に接続した。
質量分析
ナノLCの出口は、オンラインのナノ供給源(Bruker CaptiveSpray(登録商標))を備えたイオントラップESI−MS(Bruker AmaZon)に直接連結させた。イオントラップは、キャピラリ電圧が1.7kVである高分解能モードで動作させた。供給源の温度を200℃に設定し、3l/分の乾燥ガスフローを用いて、供給源を加熱した。
データ解釈は、EICからそれぞれの軽試料グリカンおよびその適切な重同位体標準の面積を決定することによって行われる。この軽−重比(L/H)は、各々の時点での各々のN−グリカンおよび動物について決定される。L/H比を時間に対してプロットすることにより、各々のN−グリカンについてのPKプロファイルが得られる。N−グリカン割合は、各々の時点の重同位体標準グリカンの既知の相対分布を用いて計算することができる。
mAb1 N−グリコシル化および試験の適格化
親和性精製を適格化して制御するために、既知の量のmAb1をNZWウサギ血清にスパイクすることによってQC試料を調製した。QC試料は、ELISAによって時前に決定された試験の濃度範囲をカバーした。図2Aは、mAb1 QC試料の平均割合を示す。試料は、10μg/mlと100μg/mlの間の濃度をカバーした。1つの血清ブランクを含む計4つのQC試料(0μg/ml、1μg/ml、10μg/mlおよび100μg/ml)を使用した。QC試料から得られたグリカンの平均割合は、mAb1 N−グリカン組成を表す。グリコシル化抗体断片の開発された酵素的溶出を用いて、非常に高い選択性および純度が達成され得た。mAb1の干渉N−グリカンは、分析から除外された2つの少量のバイセクト改変体を除いて、共精製されなかった。さらなる血清関連N−グリカンは検出されなかった。感度は、10μg/ml(LLOQ)の濃度で少なくとも0.1%の割合ですべてのN−グリカンを分析するために少なくとも十分であった。しかしながら、改善されたナノESI供給源を用いて、感度が約0.1μ/mlに改善することができる。
N−グリカンは、主に、コアフコースを有する複合二分岐鎖であった(図2B)。図2Aから分かるように、最も豊富なN−グリカンは、末端のN−アセチルグルコサミン残基を有するG0F(65%)であり、続いて、1つのさらなる末端ガラクトースを有するG1F(16%)であった。高マンノースグリカンM5(9.5%)は、3番目に豊富なN−グリカンであった。他の全てのN−グリカンは、3%未満の割合を有した。mAb1は、末端シアル酸を有するN−グリカンを含まなかった。
前臨床試験:mAb1のグリカンPKプロファイルおよびELISA
決定されたグリカンL/H比をサンプリング時間に対してプロットして、各々のN−グリカンのPKプロファイルを得た。各々のN−グリカンの平均L/H比を最大値に標準化した。ELISAデータを同様に標準化した。次に、ELISAの相対濃度およびL/H値をグラフで比較した。図3は、N−グリカンの得られた曲線を示す。平均ELISAプロファイルは菱形で描かれ、エラーバーは変動性を表す。最も豊富な複合型G0Fは、ELISAプロファイルと比較して非常に類似したPKプロファイルを有した(図3A)。最大濃度(tmax)は、2つのグラフで一致して72時間後に達成された。排出の開始時にわずかな違いがあったが、エラーバーが完全に重なるため、PKプロファイルは同等とみなすことができる。この知見は、ELISAが最も豊富なN−グリカンが最も寄与するすべての糖形態の平均プロフィールを表すため、相対的存在量がほぼ70%である主要なN−グリカンについて予想された。
約16%を占める、2番目に豊富な複合型N−グリカンG1Fはまた、ELISAプロファイルと比較した場合、非常に類似したPKプロファイルを示した(図3B)。再び、両方の曲線について72時間でtmaxに達した。
2%の割合を有する複合型G2Fは、ほぼ完全な一致を示し、ELISAプロファイルと最もよく一致した(図3C)。tmaxは、ELISA曲線の72時間と比較して60時間で早く到達した。60時間と72時間の時点の間の非常に小さな差異、および追加のサンプリング点がないという事実に起因して、2つのプロファイルは依然として同一と見なすことができる。
ナノLC−MSアプローチでは区別できず、わずか0.1%の相対含量を有する2つの異性体であるM6G0F/M5G1Fハイブリッド型グリカンのプロファイルは、依然としてELISAプロファイルに類似しているように見える(図3D)。低い存在量はLLOQに近く、これは、結果として、他のより豊富なグリカンよりもL/H値の精度が低くなった。しかしながら、類似のtmaxおよび類似の曲線から、PKが同一であるまたは少なくとも類似していると結論付けることができる。
これらの結果は、各々のN−グリカンについて個別にPKプロファイルを得ることができることを実証する。グリカンPKプロファイルは、最も豊富なグリカンについてELISAと非常に類似していた。0.5%より少ない部分を有するN−グリカンについてだけ、グラフは、存在量が少ないため変動がより高かったので、明確ではなかった。
高マンノース型N−グリカンM5およびM6のグリカンPKプロファイルは、全く異なる画像を示した。M5およびM6についてそれぞれ9.5%および2%の相対的存在量を有するN−グリカンの曲線を図4に示す。M6は、ELISAによって決定された平均プロファイルから極端に逸脱したPKプロファイルを有した(図4A)。最大濃度は24時間後に達成され、続いて、M5への変換または排出速度の増加により循環からほぼ完全に除去された。
高マンノースグリカンM5はまた、ELISAと比較した場合、異なるPKプロファイルを有した(図4B)。tmaxは、48時間後に24時間早くに達し、さらなるクリアランスは、48時間と168時間の間に速くなった。これらの結果は、mAb1の高マンノースグリカンPKプロファイルは、グリコ改変体を含む全てのタンパク質改変体の平均濃度を表すELISAと比較して異なることを実証する。これらの知見はまた、高マンノースグリカンの変換理論およびクリアランスの増加を強化するために、各々の時点について決定されたグリカンマップ(図5参照)において反映される。M3G1F、M3G0Fおよびコア構造M3のPKプロファイルを(図3EからG)に示す。同じm/z値を有する汚染物質が同時溶出したため、G0のPKプロファイルを得ることができなかった。
M5およびM6の選択的クリアランス
mAb1 N−グリコシル化の組成を図2に示す。重同位体グリカン標準の既知の相対量および実験的に得られたL/H比に基づいて、各々のN−グリカンの割合を計算した。図5は、前臨床試験の結果として得られたグリカンマップを示す。8時間と336時間の間の時間点についてグリカンマップを計算した。2時間、504時間および672時間で、多数のウサギについて、mAb1の血清濃度はこの試験のLLOQである10μg/mlを下回り、したがって、グリカンマップは計算できなかった。
最も豊富なN−グリカンG0FおよびG1Fの平均割合は一定のままであり、以前の観察を裏付けしている(図5左)。拡大図は、少量のグリカンを示す(図5右)。割合は、高マンノースグリカンを除いて、すべてのN−グリカンについて一定であった。M5およびM6部分は経時的に減少した。M6は循環から除去されたが、M5部分は9%の初期の割合から約4%に減少した。
高マンノース種M6−M9は、ヒトのM5のようなより小さい高マンノースグリカンに変換されることが文献から知られている(Chenら、Glycobiology(2009)21、949−59;Alessandriら、MAbs(2012)4(4)、509−520)。マウスにおいて同様の観察がなされた。高マンノース種M7−M9はM6に変換される(Yuら、mAbs(2012)4(4)、475−87)。血清中の抗体のインビトロのインキュベーションについて両方の観察がなされた。本試験において、主にM5が循環から選択的に除去された。M4またはM3(コア構造)のようなより小さいグリカンの増加は観察されなかった。M5の末端マンノース残基の連結がM6−M9のものと異なるため、M5の更なる変換は、血清中に他の特異性を有する更なる酵素を必要とする。M5またはむしろM5を含む糖タンパク質は、循環からの特定のクリアランス機構によって、例えば、マンノース受容体を介して、除去される可能性が非常に高い。
Figure 2017524128
循環からのM5の不完全な除去は、Fc部分の構造コンホメーションを用いて説明することができる。いくつかの調査は、M5と同様のサイズを有する、末端ガラクトシル化を伴うN−グリカンを含むIgGグリコフォームが、Fc部分のコンホメーションをオープンコンホメーション、つまり、他のタンパク質が結合するためにN−グリカンを接近させるU字コンホメーションに変化させることを示した(Krappら、J.Mol.Biol.(2003年)、325巻、979−989頁)。これは、M5がN−グリカンと対になって、Fc部分をオープンコンホメーションにするのに十分な大きさのグリコフォームをもたらすことを意味する。タンパク質生合成中のグリコシル化された重鎖の対形成は無作為ではないことが示された(Masudaら、FEBS Lett.(2000年)、473巻、349−57頁)。IgG2生物医薬品について、グリコフォームM5:M5が好ましいことが実証された(Goetzeら、Glycobiology(2009年)、19巻、240−9頁)。本試験におけるmAb1について、同様の観察がなされた(表2)。無作為的な対形成を仮定すると、すべてのグリコフォームは簡単に計算することができ、これは、グリコフォームを含むM5に示される。mAb1のインタクトなFc部分から生成されたMSデータは、M5:M5グリコフォームが計算値より4倍高かったことを示す。M5:M5は、タンパク質生合成中に強く支持された。このグリコフォームは、Fc部分のU字コンホメーションをもたらし、次に、マンノース受容体に結合することによって、循環からのクリアランスが増加する可能性がある。前臨床試験で観察された残りの4%のM5は、閉じたFcコンホメーションのために十分に小さいM5:G0Fグリコフォームであり得る。これは、循環からの不完全なクリアランスを説明する。
結論
個々のN−グリカンの薬物動態を調査するための新しいアプローチを利用して、IgG1生物医薬品の前臨床的ウサギ試験を分析した。固定化抗原を用いた96ウェルプレートベースのハイスループット親和性精製および安定な重同位体標準の質量分析定量化を用いて、50μlの血清試料からのグリカンPKデータが、10から90μg/mlの間のmAb濃度について得られた。グリカンPKプロファイルをELISAデータと比較して、高マンノースグリカンM5およびM6が異なるPKプロファイルを有することを実証した。グリカンマップは、M6が最初の48時間で完全に除去され、M5レベルが9.5%から約4%に減少したことを示した。
提示された前臨床試験から得られた結果は、別のグループによって健常なヒト対象から得られた結果と同様であった(Goetzeら、Glycobiology(2009年)、19巻、240−9頁)。これらの知見は、前臨床試料を用いたグリカンPKプロファイリングの価値を実証する。安定な重同位体2−AAグリカン標準の使用は、これまでに記載されていない質量分析による個々のN−グリカンのPKプロファイリングを可能にし、これまで使用されてきたN−グリカンの相対分析と比較して単一のN−グリカンの独立した分析を可能にする。
要約すると、高い感度を有するグリカンPKプロファイリングについての新しいアプローチは、前臨床試料と連動する。さらに、前臨床試験から得られた結果は、ヒト対象の結果が前臨床試験の知見と同一であることを実証する。初期の生物医薬品開発中の実施により、前臨床試験中に既にN−グリコシル化の効果を調べることができる。これは、臨床段階に入る前に、N−グリコシル化、グリコエンジニアリングを最適化するための予防作用の実施を可能にする。
[実施例2]
治療用融合タンパク質の薬物動態におけるグリコール改変体の影響
前臨床ウサギ試験
前臨床試験はヒマラヤウサギで行った。Fc融合タンパク質エタネルセプト(FP1またはFP2)の2つの異なるバッチの8mg/kg体重の単回皮下投与後、1回の投与前血液試料を含め、一定期間にわたって血液試料を採取した。サンプリングを表3に列挙するように行った。各々のサンプリング時点で、少なくとも600μlの血清を採取した。血清中のFP1およびFP2の濃度をELISAによって決定した。残りの血清から2×50μlのアリコートをグリカンPKプロファイリングに使用した。続いて、第一のアリコートを分析し、第二のアリコートをバックアップアリコートとして使用した。
13C2−AA標識されたグリカン標準の調製
脱塩したFP1融合タンパク質(1mg)のN−グリカンは、PNGaseF消化を用いて、一晩(17時間)37℃で放出させた。Amicon 30Kフィルター装置を用いてN−グリカンを融合タンパク質から分離し、スピードバックを用いて乾燥させた。ピコリンボランおよび[13C]2−AAを70:30(v/v%)のDMSO−酢酸に溶解して、それぞれ63および50mg/mlの濃度とした。標識溶液(15μL)および脱イオン水(10μL)を15nmolの酵素的に放出され、乾燥されたグリカンに添加した。標識反応は、37℃で17時間行った。
G−10カラム上のゲル濾過によって、余分な標識を除去した。カラムを10mlのHOで馴化した。試料を脱イオン水で100μlに希釈し、カラムに適用した。カラムを700μlのHOですすいだ後、精製した蛍光標識N−グリカンを600μlのHOで溶出した。精製された[13C]2−AA標識N−グリカンを分注し、使用するまで−20℃で保存する。
固定化プロテインGを含む96ウェルプレートアフィニティーカラムの調製
プロテインGセファロース(200μL)を、親水性低タンパク質結合膜(Multiscreen THS HVフィルタープレート)を含む96ウェルフィルタープレートの各々のウェルに添加した。プロテインGセファロースは20%エタノール中に保存され、これを親和性精製前に除去しなければならない。したがって、カラムをPBS(150μL)で4回平衡化した。遠心分離により液体を除去した。
固定化抗原を含む96ウェルプレートアフィニティーカラムの調製
96ウェルフィルタープレート(Multiscreen THS HVフィルタープレート)の膜を1mM HCl(100μL)で湿潤させた後、1ウェルあたり200μLのNHS活性化セファロース−イソプロパノールスラリーを添加した。イソプロパノールを遠心分離によって除去し、カラムを1mM HCl(150μL)で4回洗浄した。大腸菌(E.coli)中に発現される抗原の再構成は、上記の実施例1に記載されるように行われた。抗原溶液(100μL)をカラムに遠心分離し、カップリング反応を周囲温度で2時間行った。アフィニティーカラムを洗浄し、残りのNHS基は、エタノールアミン緩衝液(150μL)を用いて不活性化させた。最後に、カラムをPBSで平衡化した。
融合タンパク質の親和性精製およびグリカン放出
血清試料(50μL)を96ウェルプレートの平衡化されたプロテインGカラムに添加し、カラムに通して遠心分離した。続いてカラムをPBS(150μL)で6回遠心分離により洗浄した。結合したIgGを3回、100μL溶出緩衝液(0.1Mグリシン pH2.7)で溶出した。溶出液を直ちに1M Tris HCl pH8.0で中和した。溶出液は、標的タンパク質ならびに血清由来の他のIgGを含有した。
平衡化された96ウェルプレートの固定化抗原カラムに溶出液を添加し、カラムに通して遠心分離した。次に、カラムをPBS(150μL)で6回洗浄した。ファブリケーター溶液(100μl、1U/μl)をカラムに遠心分離し、融合タンパク質のグリコシル化Fc部分を放出させた。反応は37℃で30分間行った。放出されたFc部分をPBSで溶出した。13C−2−AA標識されたN−グリカン標準を伴うPNGaseFを、溶出されたFc部分におよび抗原結合部分を有するカラムに添加した。消化物を37℃で17時間インキュベートした。抗原結合タンパク質部分から放出されたN−グリカンをHOで溶出した。残りのタンパク質は、10Kのカットオフ膜を有する96ウェルプレートを用いた限外濾過によって除去された。グリカン標準とともに放出されたN−グリカンを真空遠心分離によって乾燥させた。
N−グリカン標識、過剰の2−AA標識試薬を除去するためのゲル濾過、ならびにRPナノLC−MSによる標識試料N−グリカンおよび重同位体標準の分析を実施例1に記載されるように行った。
2つのバッチのグリカンマップは異なるN−グリコシル化を示す
モノクローナル抗体のN−グリカンPKプロファイリングは、mAbがFc部分の各々の重鎖上にただ1つの保存されたN−グリコシル化部位を有するため、他の生物医薬品のPKプロファイリングよりも一般的にあまり複雑にならない。したがって、部位特異性を有するN−グリカンを分析する必要はない。より複雑なグリコシル化された生物医薬品について、部位特異性は、クリアランスのメカニズムまたは半減期の延長を理解するのに役立ち得るさらなる情報を提供する。例えば、融合タンパク質は、IgG Fc部分および受容体部分のCH2およびCH3ドメインを含む2つの鎖からなる。mAbの場合と同様に、鎖はジスルフィド架橋によって連結されている。Fc部分は、鎖あたり1つのN−グリカンを有し、受容体部分は1分子あたり計6つのN−グリカンを生成する2つのさらなるN−グリコシル化部位を有する。
Fc部分および受容体部分N−グリカンの個々の分析について、2つの部分をエンドプロテイナーゼIdeS酵素を用いて分離し、生成した断片を個別に分析した。分離後、PNGaseFを用いてFc部分および受容体部分を脱グリコシル化した。グリカンを2−AAで標識し、ナノLCMSで分析した。得られたグリカンマップを図6に示す。
2つの融合タンパク質のバッチは、異なるN−グリコシル化パターンを有した。融合タンパク質1(FP1)のグリコシル化はより異種性であったが、融合タンパク質2(FP2)はわずかなN−グリカンの割合が高い。両方のバッチは、それらの受容体部分に高い割合の末端シアル酸を含有した。見出されたFcグリコシル化は、複合二分岐N−グリカンおよびコアフコシル化の高い割合を有する抗体にとって典型的であった;いくつかは追加のシアル酸を有した。FP1とFP2の間の主な相違は末端基であった。FP1は末端GlcNAc残基の割合が高い。対照的に、FP2は高程度の末端ガラクトシル化を有するが、シアル化は同等であった。
ウサギの前臨床試験におけるFP1およびFP2の平均PKプロファイル
前臨床試験はヒマラヤウサギで行われた。FP1またはFP2の単回皮下投与後、試料を採取し、FP1およびFP2の濃度をELISAによって決定した。サンプリングスケジュールを表3に示す。試験の各々のアームからの5匹の動物が、グリカンPKプロファイリングのために含められた。
Figure 2017524128
両方のアームの5匹の動物のELISA結果を図7に示す。PKプロフィールは異なっていた。FP1は、FP2よりも高濃度であったが、エラーバーは重複していた。両方のプロフィールは、18時間後に最も高い濃度の時点であるtmaxに達した。FP1のクリアランスはより速く、72時間で一致する結果となった。
ELISAプロファイルおよび異なるN−グリコシル化の相違を、可能性のある関係について調べていた。
個々のN−グリカンPKプロファイルと平均ELISAデータの比較
ELISAの相対濃度は、平均プロファイルを最大濃度に正規化することによって決定された。決定されたL/H比に基づいて平均プロファイルを最大L/H比に正規化することにより、個々のN−グリカンプロファイルの相対濃度を決定した。図8は、適切な平均ELISAプロファイル(黒菱形)と比較した、ナノLC−MS(黒四角)によって決定された両方の融合タンパク質FP1およびFP2のFc部分(図8A)および受容体部分(図8B)の主要なN−グリカンの平均PKプロファイルを示す。
様々な動物のデータの変動性は高く、これはエラーバーによって反映され、受容体部分に位置するN−グリカンの変動性がより高い。FP1 G0F、FP1 SG2FおよびFP2 G1FのN−グリカンプロファイルは、それぞれのELISAと比較して、より遅い時点に向かってtmaxのシフトを示した。FP2 SG2Fのみが同一のtmaxを有した。この過程は、クリアランス速度の低下を伴い、血清中半減期の延長を示す。しかしながら、FP2のグリカンPKプロファイルは、FP1のグリカンPKプロファイルよりもELISAプロファイルに近かった。
FP1およびFP2のグリカンマップ
グリカンマップは、ナノLC−MSによって決定されたL/H比に基づいて得られた。スパイクされた安定な重同位体2−AA標識されたN−グリカン標準の既知の分布を用いて、グリカンマップを高精度で計算した。FP1からのFcおよび受容体部分のグリカンマップを図9に示す。Fc部分のN−グリカンは、主に、中性の複合二分岐N−グリカンであった。主要なグリカンは、G0F(白菱形)およびG1F(黒三角)であった。他のすべてのN−グリカンは10%未満であった。FC部分のグリカンの割合は経時的に一定であった。
受容体部分は、より高い割合の酸性N−グリカンを含む。SG2F(白四角)は最も豊富なN−グリカンであった。Fc部分とは対照的に、受容体部分の割合は経時的に変化した。G0F(白菱形)およびG2F(白三角形)の部分は経時的に減少したが、SG2F(白四角)およびSG2(黒菱形)の部分はより高い割合に向かう傾向を示した。32時間での偏差(Fc部分)は、親和性精製またはナノLC−MS分析中の変動に起因し、およびN−グリコシル化パターンの一時的な変化がないことに起因する可能性が最も高い。
FP2について同様の結果が得られた。得られたグリカンマップを図10に示す。Fc部分について、グリカンマップは、主要なN−グリカンG1F(黒三角)、G2F(白三角)、G0F(白菱形)およびSG2F(白四角)およびすべての少量のグリカンは一定の割合を有したことを示す。受容体部分は異なる画像を示した。主要なN−グリカンSG2F(白四角)は(他のグリカンに対して)わずかに増加し、N−グリカンG2F(白三角)は(他のグリカンと比較して)経時的に劇的に減少した。
少量のN−グリカンのシフトについて以下に検討する。Fc部分で6時間と12時間の間に観察された変動は、低タンパク質濃度がより高い変動をもたらすことに起因するが、N−グリカンの割合の有意に変化に起因しない可能性が最も高かった。
受容体部分の末端ガラクトシル化はクリアランスを加速した
末端ガラクトシル化(G1FおよびG2F)を有するN−グリカンおよびN−グリカンG0Fは、末端N−アセチルグルコサミンを有する。G2Fは、FP1およびFP2の経時的なパーセントの減少を示した(図9および10、右)。G1Fは、FP1に局在化した場合にわずかに減少したが、FP2に結合した場合には一定のままであった(図9および10、右)。G0Fについて同様の観察が行われた(図9および図10右)。これらの結果は、末端ガラクトシル化されたG2Fを有するFP1およびFP2が循環から特異的に除去されたことを明確に示す。このクリアランスの背後にある機構は、アシアロ糖タンパク質受容体であり得る。この受容体は、露出したガラクトース残基に選択的に結合する。さらに、受容体は、末端ガラクトース残基の数が多いものから少ないものへの順で親和性の減少を示し、これは、G1Fのあまり顕著でない減少または一定の部分が観察されたことを説明することができる。
G1FおよびG0F N−グリカンについてのFP1とFP2の間の差異は、タンパク質上の異なるN−グリコシル化部位の占有、および受容体が結合するための異なる接近可能性のために生じ得る。
受容体部分でのシアル酸によるN−グリカンのキャッピングは半減期を延長した
先に述べたように、主要なN−グリカンSG2Fは、相対的に高い割合に向かうわずかな傾向を示した。FP1で、SG2の量は経時的に増加し、FP2で、SG1Fは同じ傾向を示した。他の酸性N−グリカンは、一定の割合を有した(図9および10、右)。
これらの観察は、少なくとも1つの末端シアル酸が、ガラクトシル化されたN−グリカン構造に付加されると、タンパク質の選択的クリアランスが妨げられる可能性があるという結論に至る。経時的に増加する異なるN−グリカンに対するFP1とFP2の間の相違もやはり、それらの構造が結合するグリコシル化部位における相違のために生じている可能性がある。
FP1およびFP2のシアリル化、ガラクトシル化および末端GlcNAc
結合したすべてのN−グリカンの末端基の概要を図11に示す。少量のN−グリカンもまた含まれた。N−グリカンは、3つの異なるグループに分けられた:シアリル化グループは、1つまたは2つの末端シアル酸を含むすべてのN−グリカンを含み、ガラクトシル化グループは、少なくとも1つの末端ガラクトース部分を有するすべてのN−グリカンを含み、末端GlcNAcグループは、末端N−アセチルグルコサミンを有するN−グリカンを含む。2つの特性を有するN−グリカンについて、どの属性がPKに影響を及ぼす可能性がより高いか決定されなければならなかった。例えば、一方のアームに末端シアル酸を有し、他方のアームに末端GlcNAcを有するSG1Fについて、このN−グリカンが、結合した末端シアル酸基の遮蔽効果に起因して、末端GlcNAcグリカンのような挙動よりもシアル酸グリカンのような挙動を示す可能性がより高いため、シアリル化基の一部であることが決定された。末端ガラクトース残基が末端GlcNAcよりも高い影響を有するG1Fについても同様のことがあてはまる。
FP1およびFP2のFc部分で末端基は変化しなかった。6時間(FP2)または32時間(FP1)での2つの偏差は、低標的タンパク質濃度での方法変動に最も起因している可能性があった。Fc部分とは対照的に、受容体部分の末端基は、ガラクトシル化の減少を示し、これは末端シアリル化の増加により相殺された。GlcNAc群に属するN−グリカンは一定であった。
結論
血清試料から融合タンパク質を回収するためのワークフローが確立されている。プロテインGクロマトグラフィーを用いる第一の親和性ステップにおいて、血清の複雑さは劇的に減少した。セファロースレジンに非特異的に結合する傾向にある血清関連タンパク質、ならびにすべての非IgG Fc部分含有タンパク質が除去された。予備洗浄された血清を抗原カラムに適用し、洗浄およびFc部分の酵素溶出後、2つのタンパク質部分のN−グリカンを個別に分析した。安定な重同位体2−AA標識されたグリカン標準の組み込みにより、N−グリカンプロセシング中の変動およびナノLCMS分析が補償され、試験における個々のグリカンの時間経過が高精度で決定された。
2つの異なるバッチの融合タンパク質をウサギ試験において比較し、各々のN−グリカンのPKプロファイルおよびN−グリカンの経時的な相対分布を決定した。結果は、受容体部分に位置する末端ガラクトシル化されたN−グリカンを有する融合タンパク質が平均分子より速くクリアランスされ、末端シアル酸が血清中半減期を延長させることを示す。このクリアランスは、肝臓に位置し、末端ガラクトシル化されたN−グリカンに対するその親和性で知られているアシアロ糖タンパク質受容体の受容体媒介プロセスである可能性が最も高い。
要約すると、この試験は、融合タンパク質のN−グリコシル化がPKに影響を及ぼすことを示した。末端ガラクトシル化されたN−グリカンは迅速にクリアランスされるが、末端シアリル化は血清中半減期を延長させる。これは、アシアロ糖タンパク質受容体媒介性結合に起因する可能性が最も高く、N−グリカンが受容体部分に位置する場合にのみ生じる。Fc部分N−グリコシル化(複合二分岐)は、以前の試験と一致して、PKに影響を及ぼさない。したがって、この方法は、生物医薬品の詳細な部位特異的N−グリカンPKプロファイリングを可能にする。さらに、この種の調査は、部位特異性およびドメイン特異性のないN−グリカンプロファイリングとは対照的に有利であることが実証された。
上記を考慮して、本発明はまた以下の項目に関することが理解される。
項目
1.哺乳動物の液体試料中の目的の組換え糖タンパク質のグリカンを分析する方法であって、
a)目的の組換え糖タンパク質を含む、哺乳動物の2つ以上の液体試料を用意するステップ;
b)上記各試料の組換え糖タンパク質を、試料中の組換え糖タンパク質に特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップ;
c)組換え糖タンパク質の酵素的切断によって、固体支持体から、上記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を、別個の溶出液に放出するステップ;
d)場合により、別個の溶出液中の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片から、グリカンを放出させるステップ;
e)上記各試料のグリカンを、蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;および
f)LC−MSを用いて、上記各試料のステップe)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップ
を含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップc)、d)、e)またはf)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップf)の標識されたグリカンとともに分析される、方法。
2.ステップc)において上記固体支持体に固定化されたままの、上記各試料の組換え糖タンパク質の第二のグリカン含有断片のグリカンを分析するステップをさらに含み、
aa)ステップb)の前に、哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄して、固体支持体に非特異的に結合する糖タンパク質を除去するステップ;
dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料の組換え糖タンパク質の固定化された第二のグリカン含有断片から、グリカンを別個の溶液に放出するステップ;
ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;および
ff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップ
を含み、ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される、項目1に記載の方法。
3.前洗浄ステップaa)が、試料を固体支持体と接触させるステップを含み、固体支持体が、項目1のステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていない、項目2に記載の方法。
4.分析されるべきグリカンが、高マンノース型、ハイブリッド型または複合型N−グリカンからなる群から選択されるN−グリカンである、項目1から3のいずれか1つに記載の方法。
5.蛍光標識が、安定な軽いい同位体および安定な重い同位体の変異体を有し、好ましくは参照標準が、蛍光標識の安定な重い同位体で標識されたグリカンを含む、項目1から4のいずれか1つに記載の方法。
6.蛍光標識が、12[C]および13[C]同位体対、好ましくは12[C]および13[C]同位体対、より好ましくは12[C]−2−アミノ安息香酸(12[C]−2−AA)および13[C]−2−アミノ安息香酸(13[C]−2−AA)同位体対である、項目1から5のいずれか1つに記載の方法。
7.参照標準が、試料において分析されたものと少なくとも同じグリカン構造を含む、項目1から6のいずれか1つに記載の方法。
8.方法が個々にグリカン構造を分析する、項目1から7のいずれか1つに記載の方法。
9.組換え糖タンパク質が融合タンパク質または抗体である、項目1から8のいずれか1つに記載の方法。
10.組換え糖タンパク質が、Fc融合タンパク質または抗体である、項目9に記載の方法。
11.ステップc)において固体支持体から放出される組換え糖タンパク質のグリカン含有断片がFcドメインである、項目1から10のいずれか1つに記載の方法。
12.組換え糖タンパク質が抗体であり、抗体の可変領域が、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合する、項目10または11に記載の方法。
13.親和性リガンドが抗原である、項目12に記載の方法。
14.組換え糖タンパク質が、抗体、好ましくはIgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG2抗体、より好ましくはヒトもしくはヒト化IgG1またはIgG2抗体である、項目10から13のいずれか1つに記載の方法。
15.組換え糖タンパク質が、Fcドメインおよびエフェクタードメインを含むFc融合タンパク質であり、エフェクタードメインが、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、ここで、親和性リガンドが、結合パートナーまたはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体である、項目10または11に記載の方法。
16.固体支持体から組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を放出させるために使用される酵素が、エンドプロテイナーゼ、好ましくはパパイン、フィシン、システインプロテアーゼSpeB(FabULOUS)またはシステインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))、より好ましくはシステインプロテイナーゼIdeS(FabRICATOR(登録商標))である、項目10から15のいずれか1項に記載の方法。
17.固体支持体から組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を放出させるために使用される酵素が、グリカナーゼ、好ましくはエンドSグリカナーゼ(IgGZERO)である、項目10から15のいずれか1つに記載の方法。
18.予備洗浄ステップが、
aai)Fc結合タンパク質を使用して、固体支持体上にFc含有糖タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは、上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;ならびに
aaii)Fc含有糖タンパク質を溶出するステップであって、
上記予備洗浄ステップで使用される固体支持体は、項目1のステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、上記親和性リガンドがカップリングしていないステップ
を含む、項目10から17のいずれか1つに記載の方法。
19.LC−MSが逆相LC−MSである、項目1から18のいずれか1つに記載の方法。
20.LC−MSが、ナノLC−MS、好ましくは逆相ナノLC−MSである、項目1から19のいずれか1つに記載の方法。
21.固体支持体が、マイクロビーズ、好ましくはセファロースビーズ、アガロースビーズもしくは磁気ビーズ、より好ましくはセファロースビーズを含むレジンである、項目1から20のいずれか1つに記載の方法。
22.親和性リガンドが、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、臭化シアン、エポキシ、カルボジイミドもしくはチオプロピルを介して、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を介して固体支持体にカップリングされている、項目1から21のいずれか1つに記載の方法。
23.哺乳動物の2つ以上の液体試料が、マルチウェルフィルタープレート中で、好ましくは24、96もしくは384ウェルフィルタープレート中で、より好ましくは96ウェルフィルタープレート中で分析するために調製される、項目1から22のいずれか1つに記載の方法。
24.哺乳動物の液体試料が、体液、好ましくは血清もしくは血漿、尿、脳脊髄液、羊水、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択され;好ましくは上記試料は血漿または血清試料である、項目1から23のいずれか1つに記載の方法。
25.哺乳動物の2つ以上の液体試料が同じ対象から得られたものである、項目1から24に記載のいずれか1つの方法。
26.目的の組換え糖タンパク質のグリカンの少なくとも1つの特異的グリカン構造の薬物動態パラメータ、好ましくはCmax、tmax、AUCまたはt1/2が決定される、項目25に記載の方法。
27.哺乳動物の2つ以上の液体試料が、同じ対象からの異なる時点で得られたものである、項目25または26に記載の方法。
28.少なくとも約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間、336時間、504時間、672時間、840時間が、最初の時間点と最後の時間点の間にある、項目27に記載の方法。
29.哺乳動物の2つ以上の液体試料が、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、40個以上または50個以上の試料である、項目1から28のいずれか1つに記載の方法。
30.(i)蛍光標識の第一の安定同位体で標識された上記各試料からのグリカンと蛍光標識の第二の同位体で標識されたそのそれぞれの参照標準グリカンの抽出イオンクロマトグラム(EIC)の曲線下面積を決定して、第一の同位体試料グリカン対第二の同位体参照標準の比を経時的に形成させ、ならびに
(ii)参照標準における個々のグリカンの既知の相対分布に基づくN−グリカンの割合を上記各試料について計算する、項目1から29のいずれか1つに記載の方法。
31.グリカンが、哺乳動物の上記2つ以上の各液体試料のアリコートにおいて分析される、項目1から30のいずれか1つに記載の方法。
32.分析されるべき試料またはアリコートが、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μlまたは約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容量を有する、項目1から31のいずれか1つに記載の方法。
33.上記組換え糖タンパク質の濃度が、哺乳動物の上記2つ以上の液体試料のさらなるアリコートにおいて分析される、項目31または32に記載の方法。
34.上記組換え糖タンパク質の濃度がELISAによって分析される、項目33に記載の方法。
35.哺乳動物の液体試料が、ヒト、サル、げっ歯類、イヌ、ネコまたはブタ試料である、項目1から34のいずれか1つに記載の方法。
36.哺乳動物の液体試料が、げっ歯類試料であり、げっ歯類がマウス、ラット、ハムスターまたはウサギである、項目35の記載の方法。
37.方法が、アトモル濃度の個々の標識されたグリカン、例えば、800amol程度に低い、好ましくは600amol程度に低い、より好ましくは400amol程度に低い濃度の分析を可能にする、項目1から36のいずれか1つに記載の方法。
38.方法が、10μg/ml以下、5μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.5μg/ml以下、0.2μg/ml以下または0.1μg/ml以下の、哺乳動物の2つ以上の各液体試料における組換え糖タンパク質濃度で組換え糖タンパク質のグリカンを分析することを可能にする、項目1から37のいずれか1つに記載の方法。
39.方法が、各々0.5μg以下、0.25μg以下、0.1μg以下、0.05μg以下、0.025μg以下、0.01μg以下または0.005μg以下の組換え糖タンパク質を含む哺乳動物の2つ以上の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析することを可能にする、項目1から38のいずれか1つに記載の方法。
40.少なくともステップb)、c)、d)およびe)ならびに/または少なくともステップaa)、dd)およびee)が高スループット様式で操作される、項目1から39のいずれか1つに記載の方法。
41.糖タンパク質ベースの医薬組成物を調製する方法であって、項目1から40のいずれか1つに記載の哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析し、糖タンパク質を医薬組成物として製剤化するステップを含む方法。
42.哺乳動物の液体試料中の目的のFc融合タンパク質のグリカンを分析する方法であって、
a)Fcドメインおよびエフェクタードメインを含有するFc融合タンパク質を含む、哺乳動物からの2つ以上の液体試料を用意するステップ;
aa)哺乳動物の2つ以上の各液体試料を予備洗浄するステップであって、
i)Fc結合タンパク質を使用して、別個の固体支持体上に上記各試料のFc融合タンパク質を固定化するステップであって、上記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは上記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;および
ii)Fc融合タンパク質を溶出するステップ
を含むステップ;
b)上記各試料のFc融合タンパク質を、試料中のFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に固定化するステップであって、親和性リガンドは、結合パートナーであり、またはFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体であるステップ;
c)Fc融合タンパク質に特異的なエンドペプチダーゼで切断することによって、固体支持体から、上記各試料のFc融合タンパク質のFcドメインを別個の溶出液に放出するステップ;
dd)ステップc)の後に固体支持体上に残っている、上記各試料のFc融合タンパク質の固定化されたエフェクタードメインからグリカンを別個の溶液に放出するステップ;
ee)上記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;ならびに
ff)LC−MSを用いて、上記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、上記2つ以上の試料を比較するステップ
を含み、
ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に上記各試料に添加され、参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される、方法。

Claims (15)

  1. 哺乳動物の液体試料中の目的の組換え糖タンパク質のグリカンを分析する方法であって、
    a)目的の組換え糖タンパク質を含む、哺乳動物の2つ以上の液体試料を用意するステップ;
    b)前記各試料の組換え糖タンパク質を、試料中の組換え糖タンパク質に特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップ;
    c)組換え糖タンパク質の酵素的切断によって、前記固体支持体から、前記各試料の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を、別個の溶出液に放出させるステップ;
    d)場合により、前記別個の溶出液中の組換え糖タンパク質のグリカン含有断片から、グリカンを放出させるステップ;
    e)前記各試料のグリカンを、蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;および
    f)LC−MSを用いて、前記各試料のステップe)の標識されたグリカンを別々に分析し、前記2つ以上の試料を比較するステップ
    を含み、
    ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップc)、d)、e)またはf)の前に前記各試料に添加され、前記参照標準は、ステップf)の標識されたグリカンとともに分析される、方法。
  2. ステップc)において固体支持体に固定化されたままの、前記各試料の組換え糖タンパク質の第二のグリカン含有断片のグリカンを分析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法であって、
    aa)ステップb)の前に、哺乳動物の前記2つ以上の各液体試料を予備洗浄して、前記固体支持体に非特異的に結合する糖タンパク質を除去するステップ;
    dd)ステップc)の後に前記固体支持体上に残っている、前記各試料の組換え糖タンパク質の固定化された第二のグリカン含有断片から、グリカンを別個の溶液に放出させるステップ;
    ee)前記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;および
    ff)LC−MSを用いて、前記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、前記2つ以上の試料を比較するステップ
    を含み、
    ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に前記各試料に添加され、前記参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される、方法。
  3. 蛍光標識が、12[C]および13[C]同位体対、好ましくは12[C]および13[C]同位体対、より好ましくは12[C]−2−アミノ安息香酸(12[C]−2−AA)および13[C]−2−アミノ安息香酸(13[C]−2−AA)同位体対である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 組換え糖タンパク質が、融合タンパク質または抗体、好ましくはFc融合タンパク質または抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ステップc)において、固体支持体から放出される組換え糖タンパク質のグリカン含有断片が、Fcドメインである、請求項4に記載の方法。
  6. 組換え糖タンパク質が
    (a)抗体であり、前記抗体の可変領域が、固体支持体上に固定化された親和性リガンドと結合し、好ましくは前記親和性リガンドが抗原であり;または
    (b)Fcドメインおよびエフェクタードメインを含むFc融合タンパク質であり、前記エフェクタードメインが、固体支持体上に固定化された親和性リガンドに結合し、ここで、前記親和性リガンドは結合パートナーであり、もしくは前記Fc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体である、請求項4または5に記載の方法。
  7. 組換え糖タンパク質のグリカン含有断片を固体支持体から放出させるために使用される酵素が、エンドプロテイナーゼ、好ましくはパパイン、フィシン、システインプロテアーゼSpeBまたはシステインプロテイナーゼIdeS、より好ましくはシステインプロテイナーゼIdeSである、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 予備洗浄ステップが、
    aai)Fc結合タンパク質を使用して、固体支持体上にFc含有糖タンパク質を固定化するステップであって、前記Fc結合タンパク質が、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは、前記Fc結合タンパク質がプロテインGであるステップ;および
    aaii)前記Fc含有糖タンパク質を溶出するステップであって、
    前記予備洗浄ステップで使用される前記固体支持体が、請求項1のステップb)で使用される固体支持体と同じ材料で作られているが、前記親和性リガンドがカップリングしていないステップ
    を含む、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. (a)LC−MSが、逆相LC−MSもしくはナノLC−MSであり、好ましくは前記LC−MSが逆相ナノLC−MSであり;
    (b)固体支持体が、マイクロビーズ、好ましくはセファロースビーズ、アガロースビーズもしくは磁気ビーズ、より好ましくはセファロースビーズを含むレジンであり;
    (c)親和性リガンドが、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、臭化シアン、エポキシ、カルボジイミドもしくはチオプロピルを介して、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を介して、前記固体支持体にカップリングしており;および/または
    (d)哺乳動物の前記2つ以上の液体試料が、マルチウェルフィルタープレート中で、好ましくは24、96もしくは384ウェルフィルタープレート中で、より好ましくは96ウェルフィルタープレート中で、分析するために調製される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 哺乳動物の前記液体試料が、
    (a)体液、好ましくは血清もしくは血漿、尿、脳脊髄液、羊水、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択され;好ましくは、前記試料は血漿または血清試料であり;ならびに/または
    (b)ヒト、サル、げっ歯類、イヌ、ネコもしくはブタから得られる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 目的の組換え糖タンパク質のグリカンの少なくとも1つの特異的グリカン構造の薬物動態パラメータ、好ましくはCmax、tmax、AUCまたはt1/2が決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. グリカンが、哺乳動物の前記2つ以上の各液体試料のアリコートにおいて分析され、場合により組換え糖タンパク質の濃度が、哺乳動物の前記2つ以上の液体試料のさらなるアリコートにおいて分析される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 分析される試料またはアリコートが、約1μlから約1000μl、約5μlから約500μl、約10μlから約200μl、約10μlから約100μl、約25μlから約100μlまたは約40μlから約75μl、好ましくは約50μlの容量を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 糖タンパク質ベースの医薬組成物を調製する方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の哺乳動物の液体試料中の組換え糖タンパク質のグリカンを分析するステップ;および、前記糖タンパク質を前記医薬組成物として製剤化するステップを含む、方法。
  15. 哺乳動物の液体試料中の目的のFc融合タンパク質のグリカンを分析する方法であって、
    a)Fcドメインおよびエフェクタードメインを含有するFc融合タンパク質を含む、哺乳動物からの2つ以上の液体試料を用意するステップ;
    aa)哺乳動物の前記2つ以上の各液体試料を予備洗浄するステップであって、
    i)Fc結合タンパク質を使用して、別個の固体支持体上に前記各試料のFc融合タンパク質を固定化するステップであって、前記Fc結合タンパク質は、好ましくはプロテインGまたはプロテインAから選択され、より好ましくは前記Fc結合タンパク質はプロテインGであるステップ;および
    ii)前記Fc融合タンパク質を溶出するステップ
    を含むステップ;
    b)前記各試料のFc融合タンパク質を、試料中のFc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的な親和性リガンドがカップリングした別個の固体支持体上に、固定化するステップであって、前記親和性リガンドは結合パートナーであり、または前記Fc融合タンパク質のエフェクタードメインに特異的に結合する抗体であるステップ;
    c)Fc融合タンパク質に特異的なエンドペプチダーゼで切断することによって、前記固体支持体から、前記各試料のFc融合タンパク質のFcドメインを、別個の溶出液に放出させるステップ;
    dd)ステップc)の後に前記固体支持体上に残っている、前記各試料のFc融合タンパク質の固定化されたエフェクタードメインから、グリカンを別個の溶液に放出させるステップ;
    ee)前記各試料のグリカンを蛍光標識の第一の安定同位体で標識するステップ;ならびに
    ff)LC−MSを用いて、前記各試料のステップee)の標識されたグリカンを別々に分析し、前記2つ以上の試料を比較するステップ
    を含み、
    ここで、蛍光標識の第二の安定同位体で標識されたグリカンを含む参照標準が、ステップdd)、ee)またはff)の前に前記各試料に添加され、前記参照標準は、ステップff)の標識グリカンとともに分析される、方法。
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