本発明の目的は、夏及び冬の両方の外気温度の全範囲にわたってバッテリ冷却器回路における均質な冷却性能を確保すると同時に、システムのコスト及び構造サイズが減少されるようにすることである。
前記目的は、冷媒回路、特にバッテリ冷却器回路の冷媒流のための分岐手段であって、入口を有するとともに、2つの冷却分岐部に通じる少なくとも2つの出口ラインを有し、少なくとも1つの絞り段が分岐手段に組み込まれる、分岐手段によって達成される。冷媒の分配機能と減圧機能とが1つの構成要素において組み合わされるという事実により、構造サイズ及び製造コストが減少される。既知の構成に対して、膨張装置、すなわち、減圧器と、個々の冷却分岐部における分岐手段との間の距離をかなり減少させることができ、それにより、個々の冷却分岐部への特に冷媒の液体部分のより均一な分配がもたらされる。したがって、バッテリ冷却器回路の個々の冷却分岐部への液体冷媒の均一で適切な供給も確保される。
好ましい実施形態では、絞り段が個々の出口ラインへの分岐ポイントの上流側に配置され、この場合、絞り段は特に分岐ポイントの直ぐ上流側に位置される。冷媒流を個々の出口ラインへと分ける部分に対する絞りポイントの空間的な近接性に起因して、絞りポイントの下流側では冷媒流における液相及び気相が依然として十分に混合されたままであり、それにより、冷媒の液体部分を含めて、個々の出口ラインへの冷媒の均質な分配が確保される。冷却性能は主に冷媒の液相の蒸発と関連があるため、それにより、両方の冷却分岐部で非常に均質な冷却性能を得ることができる。
分岐ポイントの上流側で絞り段を使用することにより、絞り段の直ぐ下流側でフィルタを使用して、冷媒の液相及び気相を十分に混合させた状態に維持するとともに、個々の出口ラインへの分割中に2つの相の最良の想定し得る均質化を実現するのが都合良いことが分かってきた。
他の好ましい実施形態では、絞り段が2つの出口ラインへの分岐ポイントの下流側に配置される。このとき、分岐手段の入口における圧力は、冷媒回路における高圧側の圧力にほぼ対応し続けてもよく、また、冷媒の熱力学的状態は、少なくとも高い外気温度の存在下で超臨界のままである。分岐ポイントそれ自体においては、冷媒が単相状態で存在し、したがって、2相混合物の分配に関する既知の問題に直面することなく、冷媒を容易に個々の出口ラインへと均一に分配できる。
絞り段は、出口ラインのそれぞれの絞りポイント、すなわち、流れ断面の収縮部を有することが好ましく、前記絞りポイントは特に同一の形状を成し、それにより、出口ラインの全てにおいて及び前記出口ラインから供給される冷却分岐部の全てにおいて同じ状態が行き渡る。
絞り段の絞りポイントを較正孔によって形成することができる。較正孔は分岐手段の本体に直接に形成されることが好ましく、また、較正孔は、分岐ポイントの上流側のメインライン或いは分岐ポイントの下流側の出口ラインのいずれかの一体構成部分を形成する。較正孔の長さ及び内径を非常に正確に規定して再生可能に製造することができ、それにより、絞りポイントにわたる圧力降下を正確に設定できる。また、付加的な構成要素を使用する必要性がない。
絞り段が出口ラインに設けられる場合には、分岐手段の構造長さを小さく維持するために、較正孔がメインラインの分岐ポイントに直接に隣接するように形成されてもよい。
他の好ましい実施形態において、絞り段は、較正内径を伴う挿入パイプによって形成される絞りポイントを有する。この場合、減圧の既知の原理にしたがって、絞りポイントにおける流れ断面の正確な減少を実現するために、別個のパイプが入口、メインライン及び/又は又は出口ラインに挿入される。そのようなパイプは、簡単且つ安価な方法で高い精度をもって予め製造することができるとともに、分岐手段における適切な場所に挿入して締結することができる。
分岐手段の本体にパイプを締結するために、パイプは、例えば、分岐手段の本体にねじ込まれるネジ込みスリーブ内に挿入されてもよい。これは、分岐手段の入口又はメインラインの領域内の絞りポイント及び出口ラインの領域内の絞りポイントの両方において考えられる。したがって、絞りポイントの容易な交換及び簡単なメンテナンスも可能である。
ネジ込みスリーブに端部ストッパを設けることが都合良く、この端部ストッパは、分岐手段の本体内へのパイプの正確な位置決めを確保する。
絞りポイントにおける、較正孔及び較正内径を有するパイプの両方における適切な内径は例えば0.2〜1.0mmであり、また、適した長さは10〜40mmである。絞りポイントの長さの増大に伴って、流れが更に安定になるとともに、流れにおける振動の生成に対する感度が低下される。
絞りポイントの汚染を防止するために、フィルタが絞りポイントの上流側に配置されることが好ましい。
1つの想定し得る実施態様では、流れに関して直列を成す2つの絞り段によって2段減圧が行われ、これらの絞り段のそれぞれが絞りポイントを有する。ここで、第1の絞り段が分岐ポイントの上流側で分岐手段のメインラインに又は入口の領域内に設けられてもよく、また、第2の絞り段が分岐ポイントの下流側で出口ラインに配置されてもよい。
絞りポイントの内径は何れの場合にも固定して予め規定され、また、挿入パイプに関しては分岐手段を構造的に交換することなく絞りポイントの内径を変えることができない。
分岐手段にわたる所望の圧力降下は、絞りポイントの形態、具体的には絞りポイントの配置、断面、及び、長さによって設定される。
分岐手段は、圧力降下全体の例えば10〜50%をもたらす場合がある。
約20〜40℃の外気温度の存在下で、すなわち、夏の条件下で、冷媒は、分岐手段の入口において、単相のみを伴って、依然としてほぼ超臨界状態又は液体状態にあることが好ましい。
約−10〜0℃の低い外気温度の存在下で、すなわち、冬使用中に、冷媒は、分岐手段の入口で完全にその液相状態にあることが好ましい。この場合も、2つの出口ラインへの均質な分配が問題なく可能である。
好ましくは、実情は、冷媒流が任意の動作状態で分岐ポイントの下流側において明らかに分離された相を有し、それにより、2つの出口ラインへの冷媒流の均質な分配が常に実現される。したがって、2つの冷却分岐部におけるバッテリモジュールの均一な冷却が常に確保される。また、垂直設置位置からの偏位に関する感度が大きく減少される。
好ましい実施形態では、分岐手段が2つの出口ラインを有する。2つの出口ラインの代わりに3つ以上の出口ラインを分岐手段に設けることが自明に想定し得る。同様に、同一又は同様の構成の更なるバッテリ冷却器回路を前述の分岐手段を有するバッテリ冷却器回路に対して並列に接続することも想定し得る。
以下、複数の典型的な実施形態に基づき、添付の図を参照して、本発明を更に詳しく説明する。
図1は、車両空調システムの冷媒回路10を示す(これ以上詳しく説明しない)。冷媒、この場合にはR744が、複数の冷却サブ回路を通じて流れる。前記冷媒は、例えば外気を用いて冷却することによってガス冷却器14内で冷却される前に圧縮機12内で圧縮される。その後、ガス状の高加圧冷媒が内側熱交換器16を通過し、該内側熱交換器16内で、ガス状の高加圧冷媒は、その熱エネルギーの一部を戻り流路上の膨張冷媒へ解放する。
第1の冷却サブ回路18内では、冷媒流が車両空調システムの蒸発器20を通過し、該蒸発器20を用いて例えば車両内部の車室が冷却される。
蒸発器20の上流側には遮断弁22が配置され、冷却が必要とされないときに該遮断弁22を用いて冷却サブ回路18を遮断できる。この例において、遮断弁22は、断面が減少された開口の形態を成す減圧段を備え、この減圧段は、絞りポイントとして作用するとともに、減圧によって冷媒の部分的な膨張をもたらす。
高圧側から低圧側への減圧は、ここでは、例えばR744冷媒回路に関して知られるような固定して予め規定された断面収縮によって実現される。前記絞りポイントの直径は、とりわけ、蒸発器の所要の性能に依存する態様で選択される。
遮断弁22は、バイパスライン24を用いて安全弁26とブリッジされる。安全弁26は、該安全弁26で臨界圧閾値に達するときに冷却サブ回路18を通じた冷媒流を可能にするように構成され、この臨界圧閾値は例えば約120〜150bar(12〜15MPa)であってもよい。
一般に、R744を冷媒として使用する際には、冷媒回路が過度の圧力から保護されなければならない。これは、この場合には、圧力の突然の増大時に冷媒回路の高圧側から低圧側への流れ接続を開放する安全弁26によって実現される。前記バイパス機能は、この場合には、全ての動作条件下で利用できる。そのような圧力上昇は、例えば激しい車両加速時に生じる場合があり、その場合には、圧縮機スループットを十分迅速に下方調整することができず、そのため、多量のガスがガス冷却器14内へ導かれる。
蒸発器20から逆流する冷媒は、再び内側熱交換器16を通過するとともに、アキュムレータ28を通過し、このアキュムレータ28内で、存在する任意の冷媒は、該冷媒が元の圧縮機12へと逆流する前に分離される。
第1の冷却サブ回路18に対して平行に、冷媒は、バッテリ冷却器システム32の一部であるバッテリ冷却回路30を通じて流れる。バッテリ冷却器回路は約0.5〜2kWの冷却能力を有してもよい。ハイブリッド車両又は電気車両のバッテリセル(ここではこれ以上説明しない)は、この場合、並列に接続される2つの冷却分岐部34,36によって冷却される複数のモジュールを成して配置される。したがって、この場合、バッテリ冷却器回路30は、バッテリモジュールを通過した後に共通の戻し吸引ライン38に通じる2つの冷却分岐部34,36に分けられる。冷却分岐部34,36は蒸発器としての機能を果たし、該蒸発器では、その内部に位置される液状冷媒が、バッテリセルから熱を吸収し、したがってガス状態へと変化する。
蒸発器20の出口の下流側で、第1の冷却サブ回路18が戻し吸引ライン38に通じる。
減圧器40が2つの冷却分岐部34,36の上流側に配置される。ここに示される変形において、減圧器40は、分岐手段44の上流側に配置される遮断弁42を有する。
以下で更に説明される想定し得る実施形態(図4参照)では、遮断弁42及び分岐手段44が組み合わされて単一の構成要素を成す。しかしながら、これらが別個の構成要素として形成されてもよい。遮断弁42を省いて、専ら分岐手段44を用いて減圧を実現することもできる。
遮断弁42は、該遮断弁42の開放状態を規定できるコントローラ46に接続される。この例において、遮断弁42は、2つの制御状態「開放」及び「閉鎖」のみをとることができる。
この例では、遮断弁42の直ぐ下流側に、同様にコントローラ46に接続される温度センサT1が配置される。ここでは、コントローラ46に同様に接続される第2の温度センサT2が、2つの冷却分岐部34,36の接続ポイント48に直接に設けられる。
図2〜図4は、分岐手段44の様々な実施形態を示す。明確にするために、3つの全ての実施形態において参照符号44が使用されている。
図2に示される分岐手段44は本体50を有し、該本体50には、メインライン54へと移行する入口52が陥凹状に形成される。メインライン54の端部には分岐ポイント56が位置され、該分岐ポイントから進んで、メインライン54は、これらの例では何れの場合にも同一の形状を成す2つの出口ライン58に分かれる。出口ライン58のそれぞれは出口60へと移行し、該出口60によってそれぞれの出口ライン58がバッテリ冷却器回路30の2つの冷却分岐部34,36のうちの一方に接続される。
絞り段が分岐手段44に組み込まれ、該絞り段は、絞りポイントとして作用し、したがって絞りポイントの下流側で圧力減少をもたらす収縮部を有する。
図2に示される例において、絞り段は、出口ライン58のそれぞれで、何れの場合にも固定して予め規定された直径及び長さの1つの較正孔62を用いて実現される。この場合、較正孔62は、分岐ポイント56に直接に隣接し、したがって、前述のメインライン54の直ぐ下流側に位置される。
2つの出口ライン58への分岐の代わりに、3つ以上の出口ライン58への分岐をもたらすこともできる。同様に、バッテリ冷却器回路30に対して平行に接続される更なるバッテリ冷却器回路(図示せず)に複数の分配器44を設けることもできる。
この例では、絞り段が分岐ポイント56の下流側に設けられる。これは、メインライン54内で完全に或いは略完全に単相(以下で更に詳しく説明されるように、外気温度に応じて超臨界又は液体)状態で存在する冷媒が2つの出口ライン58へと均一に分けられるという効果を有する。凝集の均一な状態に起因して、分岐手段44の非垂直設置位置も何ら問題をもたらさない。
ここでは、分岐手段44の汚染を防止するフィルタ64が入口52内に設けられる。
これらの例では、入口52がコネクタピース66を成して形成され、該コネクタピース66によって分岐手段44をバッテリ冷却器回路30のパイプラインに或いは遮断弁42に接続できる(図4参照)。
較正孔62は、例えば、0.2〜1.0mmの直径と、10〜40mmの長さとを有し、この場合、絞りポイントの長さを増大させることにより、流れが更に安定するようになるとともに、流れにおいて振動をもたらす傾向も減少される。
図3は、メインライン54の領域に絞り段が設けられる分岐手段44の一実施形態を示す。この場合、分岐ポイント56の上流側で既に減圧が行われる。
絞りポイントの下流側にはフィルタ68が配置され、該フィルタ68は、液体部分と気体部分とが完全に混合されることによって絞りポイントの下流側で冷媒を均質化し、それにより、2つの出口ライン58への均質な分配が実現される。
図3の例では、較正内径を有する別個の挿入パイプ70によって絞りポイントが形成される。内径及び長さは、先行する典型的な実施形態の較正孔62の場合と同じ方法で選択されてもよい。
分岐手段44の本体50にパイプ70を締結するために、入口52のコネクタピース66にねじ込まれるネジ込みスリーブ72が設けられる。ネジ込みスリーブ72の代わりに、コネクタピース66に差し込まれるプラグインスリーブを使用することもできる。
ネジ込みスリーブ72は、メインライン54内のパイプ70の正確な位置決めに役立つ端部ストッパ74を有する。
入口側において、パイプ70は、分岐手段44の汚染を防止するフィルタ64によって覆われる。
挿入パイプ70の較正内径を孔として高い精度でもたらすことができる。
挿入パイプ70の代わりに、例えば出口ライン58に関して図2で説明されたように、メインラインで孔を本体50に形成することもできる。同様に、図2に示される実施形態では、較正孔62の代わりに、何れの場合にも較正内径を有する1つのパイプ70を出口ライン58に挿入することもできる。
更に、1つの絞りポイントだけでなく、流れに関して直列を成す2つの絞りポイントを分岐手段44に設けることもでき、この場合、第1の絞りポイントがメインライン54内に配置され、第2の絞りポイントは、出口ライン58のそれぞれに何れの場合にも1つの収縮部によって形成される。
図4は、流れに関して直列を成す2つの絞り段を有する減圧器40を示す。
減圧器40は、この場合には、分岐手段44と遮断弁42とから構成され、これらは分岐手段44のコネクタピース66を用いて互いに螺合される。この例では、分岐手段44が図2に示される分岐手段44に対応する。しかしながら、図3に示される実施形態のような分岐手段又は何らかの他の適した分岐手段44を使用することもできる。
この例において、遮断弁42は、バッテリ冷却器システム32のコントローラ46に接続される電磁石76によって切り換えられる。電磁石76を用いて、遮断弁42は、該遮断弁42の入口78を通じた冷媒流れが全体的に許容され或いは完全に停止されるその2つの切り換え状態「開放」及び「閉鎖」間で切り換えられる。
遮断弁42の弁座80の直ぐ下流側には、この場合には冷媒のための流通断面の収縮部を構成する較正孔82によって第1の絞り段が実現される。較正孔82の断面は、入口78の断面に対して及び分岐手段44の隣接する入口52の断面に対しても狭められる。このようにすると、冷媒の第1の膨張、及び、第1の減圧が、較正孔82内でもたらされる。
分岐手段44には、この場合には出口ライン58に較正孔62により形成される収縮部によって第2の絞り段が形成され、これらの較正孔62は、冷媒の第2の減圧及び更なる膨張をもたらす。
遮断弁42の本体における較正孔82の代わりに、較正内径を有する較正孔又はパイプ70を分岐手段44の入口52に設けることもできる。このようにすると、遮断弁42の構成を更に簡略化できる。
出口ライン58から、冷媒は、バッテリ冷却器回路30の2つの冷却分岐部34,36内へ流れる。
図1に示される実施形態において、バッテリ冷却器システム32は、「冬条件」下の低い外気温度の存在下で、すなわち、約−10〜0℃の温度の存在下で、約10barの圧力差及び約240kJ/kgのエンタルピー差が減圧器の両端間で得られるように構成される。圧力差は、冷媒回路10全体の高圧側と低圧側との間の圧力差に関して設定されてもよい。これらのパラメータは、減圧器40の絞り段の特定の形態によって得られる。
絞り段における断面収縮によって実現される冷媒流が低い外気温度の存在下でさえバッテリ冷却器回路30におけるバッテリモジュールにとって適した冷却性能を与えるのに十分大きいことが重要である。これらの外気条件下では、超臨界状態に対する相境界を約1〜5ケルビンだけ通り越す(図8も参照)。
夏に広く行き渡る外気温度の存在下、すなわち、最大で約40℃の温度の存在下では、かなり大きい圧力差が冷媒回路10及びバッテリ冷却器回路30の高圧側と低圧側との間に行き渡る。冷却分岐部34,36内で十分に蒸発され得ない、したがって、車室の空調における蒸発器20の冷却性能を低下させる、そのような条件下での分岐手段44を通じた液状冷却剤の過度に大きい流量を防止するために、遮断弁42がパルス態様で動作される。
これが図5に概略的に示される。実線の曲線は、高い外気温度の存在下で冷却性能が最適化されるように遮断弁42がコントローラ46によりパルス幅変調を伴って動作されることを示す。遮断弁42の開放持続時間は、温度センサT1,T2により送信される値から、すなわち、分岐手段44の入口52での冷媒温度と前記冷媒がバッテリ冷却器回路30の冷却分岐部34,36を通過した後の冷媒温度とから、コントローラ46によって計算される。
遮断弁42が2つの開放状態間で閉鎖されたままになっている時間は30秒以上に相当してもよく、これは、遮断弁42が閉鎖段階間で開放している時間にも当てはまる。これは、バッテリモジュールを伴うバッテリ冷却器回路30が例えば車両空調システムの蒸発器20よりも高い熱的に活性な質量を有しているために可能である。
一方、冬には、すなわち、低い外気温度及び小さい圧力差の存在下では、遮断弁42が継続的に開放しているというのが実情である(図5の破線参照)。
図6及び図7は、冷媒回路10の高圧側で及びその低圧側で広く行き渡る圧力を外気温度の関数として示す。高圧側の圧力プロファイルが菱形によって示され、一方、低圧側の圧力プロファイルが正方形によって示される。図6から読み取ることができるように、−10〜0℃の冬条件の存在下では、7〜9bar(0.7〜0.9MPa)の圧力差を予期することができ、一方、外気温度が25〜40℃の夏条件の存在下では、かなり高い圧力差、例えば35〜65bar(3.5〜6.5MPa)が広く行き渡り、この場合、90barの圧力差さえも広く行き渡る場合がある。
そのような測定値から、冷媒回路10における既存のバッテリ冷却器システム32に関して、減圧器40の最適な形態を計算することができる。この目的のため、図7において外気温度の関数としてプロットされる、冷媒、この場合にはR744の蒸発中のエンタルピー差を考慮に入れることも必要である。
高圧側と低圧側との間の圧力差は、上昇する外気温度に伴って大きく増大する。生成される質量流量は、圧力差の平方根にほぼ伴って変化するため、例えば、−10℃の外気温度においては、バッテリ冷却器回路30の想定し得る冷却性能が+40℃の外気温度に対して約40%低下されるというのが実情である。バッテリ冷却器システム32、特に減圧器40が低い外気温度の存在下で動作において最適化される場合、これは、高い外気温度の存在下での動作中に遮断弁42がその時間の約30〜90%にわたって閉じられるべきであるという効果を有する。
車両空調システムの蒸発器20に役立つ冷媒回路10の残りの形態、特に冷却サブ回路18の形態は、これらの配慮によって影響されない。これは、バッテリ冷却器回路30における減圧器40のみがそれに対応して構成されなければならないからである。
図8は、モリエ線図に基づき、幾つかの条件(高い外気温度)下及び冬の条件(低い外気温度)下で冷媒回路10の動作において通り抜けられるサイクルを示す。
ポイントA〜Gを伴うグラフの上側のサイクルは、高い外気温度の存在下での動作を表す。
この場合には好ましくは80〜120barにある高圧側は、超臨界範囲内で動作される。ポイントAからポイントBまで、圧縮機12内で冷媒の圧縮が行われる。ポイントBからポイントCまで、超臨界冷媒がガス冷却器14内で冷却される。ポイントCからポイントDまで、冷媒回路10の高圧側で内側熱交換器16によって更なる冷却が実現される。ポイントDからポイントEまで、減圧器40の第1の絞り段で減圧が行われ、この場合、減圧は最大で液体境界のところまで行われ、それにより、冷媒は、それが分岐手段44に入るときには、単相形態のみの状態にとどまり、或いは、超臨界状態にある。ポイントEからポイントFまで、減圧器40の第2の絞り段で、この場合には分岐手段44の出口ライン58で更なる減圧が行われる。ポイントFからポイントGまで、バッテリ冷却器回路30の冷却分岐部34,36内のバッテリモジュールの冷却が行われ、この場合、冷媒が蒸発されて、冷媒がバッテリモジュールから熱を吸収する。最後に、ポイントGからポイントAまで、冷媒は、戻し吸引ライン38を介して流れて、内側熱交換器16を通過し、元の圧縮機12へと流れ、この場合、前記冷媒が高圧分岐部から熱を吸収する。
冬の動作(ポイントa〜fを伴う図8の下側のサイクル)では、臨界点未満で同じサイクルが行われる。ポイントaからポイントbまで、冷媒が圧縮され、また、ポイントbからポイントdまで、前記冷媒が冷却される。減圧器40の第1の絞り段における冷媒の膨張後(ポイントd〜ポイントe)、冷媒は完全に液相状態にある。冷媒は、それが第2の絞り段を通過するときだけ、気体部分を有することができる。
しかしながら、ここで説明される例において、冷媒は、それが分岐手段44にあるときに依然として単相形態のみの状態にある。このようにすると、相混合の存在下にあるよりも容易に2つの冷却分岐部34,36への均質な分配が可能である。