JP2017514487A - 鋳型切換え及びタグメンテーションを用いる単一細胞の遺伝子発現の多重分析 - Google Patents

鋳型切換え及びタグメンテーションを用いる単一細胞の遺伝子発現の多重分析 Download PDF

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Abstract

本明細書で提示されるものは、単一細胞の遺伝子発現多重分析のための方法及び組成物である。いくつかの方法及び組成物は、固有のバーコード(例えば固有の分子バーコード(UMI))を保持する液滴及び/又はビーズの使用を含む。

Description

(関連出願)本出願は、米国仮特許出願61/985,983(2014年4月29日出願)及び同61/987,433(2014年5月1日出願)(参照によりその全体が本明細書に含まれる)に関し優先権を主張する。
(政府補助)本発明は、米国公衆衛生局(PHS)による国立衛生研究所(NIH)グラント番号MH098977の下に政府の補助を受けて達成された。当該政府は本発明に一定の権利を有する。
(技術分野)
本発明は、単一細胞の遺伝子発現を多重分析するための方法及び組成物に関する。
細胞又は組織のmRNAの内容の決定(すなわち“遺伝子発現プロファイリング”)は、正常及び有病組織を機能的に分析する方法を提供する。遺伝子発現プロファイリングは、通常は組織サンプルからmRNAを単離しこのmRNAをマイクロアレイハイブリダイゼーションに付すことによって実施される。しかしながら、そのような方法は以前に判明している遺伝子の分析を可能にするだけで、選択的スプライシング、プロモーター及びポリアデニル化シグナルの分析に用いることはできない。加えて、マイクロアレイは2つの重要な欠点を有する。すなわち、それらは既知の遺伝子と結びついており、さらにそれらは感度及び動的範囲が限定される。
組織のmRNAの内容の全て又は部分の直接配列決定がますます用いられている。しかしながら、直接配列決定によって細胞のmRNAの内容を分析する従来の方法は、組織サンプル(典型的には数百万の細胞を含む)から得られるバルクmRNAの分析を基にしている。これは、遺伝子発現がバルクmRNAで分析されるとき単一細胞に存在する機能的情報の多くは失われるか又は曖昧になることを意味する。加えて、動的なプロセス(例えば細胞周期)は集団の平均として観察できるものではない。同様に、複雑な組織(例えば脳)の別個の細胞タイプは、細胞が個々に分析される場合にのみ精査することが可能である。
精査される単一細胞の単離で用いられる適切な細胞表面マーカーはしばしば存在せず、たとえそれらが存在するときでも、単一細胞の数が少なければ遺伝子発現の天然の変動範囲を捕捉するには十分ではない。必要なことは、複数の単一細胞の遺伝子発現を分析するために用いることができるcDNAライブラリーを調製する方法である。
配列表
本出願は電子的書式の配列表と一緒に提出される。当該配列表の電子的書式の情報は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
本明細書で提供されるものは、単一細胞の遺伝子発現を多重分析するための方法及び組成物である。いくつかの方法及び組成物は、固有のバーコード(例えば固有の分子バーコード(UMI))を保持する液滴及び/又はビーズの使用を含む。
したがって、本明細書に提示されるある実施態様は、複数の単一細胞からcDNAライブラリーを調製する方法であって、前記方法は以下の工程を含む:各単一細胞からmRNAを放出させて複数の個々のmRNAサンプルを提供する工程(ここで個々の各mRNAサンプル中のmRNAは単一細胞に由来する);個々の各mRNAサンプル中のmRNAからcDNAの第一の鎖を第一鎖合成プライマーにより合成し、さらに当該cDNAにタグを取り込んで複数のタグ付加cDNAサンプルを提供する工程(ここで各タグ付加cDNAサンプル中のcDNAは単一細胞のmRNAと相補的である)。ある実施態様では、当該タグは、細胞特異的識別因子配列及び固有の分子識別因子(UMI)配列を含む。いくつかの実施態様では、当該タグは、UMI無しで細胞特異的な識別因子配列を含む。前記方法はさらに以下の工程を含む:当該タグ付加cDNAサンプルをプールする工程;場合によって当該プールされたcDNAサンプルを増幅させて二本鎖cDNAを含むcDNAライブラリーを作製する工程;及びタグメンテーション反応を実施して、同時に各cDNAを切断しさらに当該cDNAの各鎖にアダプターを取り込み、それによって複数のタグ付加cDNAフラグメントを作製する工程。いくつかの実施態様では、十分な数の単一細胞が存在し、cDNAの増幅を回避することができる。cDNAの第二の鎖は、鋳型を乗り換えるオリゴヌクレオチドプライマー(TSOプライマー)、続いて対称性ネクステラ(Nextera)を用いて合成される。
ある種の実施態様では、前記方法はさらに、タグ付加cDNAフラグメントを増幅して、増幅タグ付加cDNAフラグメントを作製する工程を含む。いくつかの特徴では、増幅工程は、増幅生成物の5’末端に追加配列を付加する工程を含む。
いくつかの特徴では、追加配列は、固体支持体での増幅のためにプライマー結合配列を含む。いくつかの特徴では、追加配列は追加インデックス配列を含む。
ある種の実施態様では、前記方法はさらに、増幅されたタグ付加cDNAフラグメントを固体支持体上で増幅する工程を含む。
ある種の実施態様では、前記方法はさらに、固体支持体上の増幅生成物を配列決定する工程を含む。
いくつかの特徴では、タグメンテーション反応は、二本鎖cDNAをトランスポザーゼ混合物と接触させる工程を含む。前記トランスポザーゼ混合物は、第一鎖合成プライマーには見出されないアダプター配列を含む。
いくつかの特徴では、トランスポザーゼ混合物は、本質的に、1つのタイプのアダプター配列をもつトランスポゾームから成る。
ある種の実施態様では、前記方法はさらに、タグ付加cDNAを配列決定する工程を含む。
いくつかの特徴では、配列決定工程は3’タグの集計を含む。
いくつかの特徴では、配列決定工程はトランスクリプトーム全体の分析を含む。
いくつかの特徴では、第一鎖合成はランダムプライマーの混合物を用いて実施され、当該ランダムプライマーはさらにタグを含む。
いくつかの特徴では、当該第一鎖合成プライマーは二本鎖部分を含む。いくつかの実施態様では、二本鎖部分を含む当該第一鎖合成プライマーはさらに一本鎖ループを一方の末端に含む。いくつかの特徴では、当該第一鎖合成プライマーはヘアピンを形成できる領域を含む。
いくつかの特徴では、当該第一鎖合成プライマーは、一本鎖の第一鎖合成プライマーと比較して連結副産物を減少させる。
いくつかの特徴では、当該第一鎖合成プライマーはRNA領域を含む。
いくつかの特徴では、当該第一鎖合成プライマーは相補的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、それによって二本鎖部分を形成する。
さらに本明細書には複数のビーズが提示され、ここで、前記ビーズの各々は複数のオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドの各々は以下を含む:(a)リンカー;(b)増幅プライマー結合部位;(c)場合によって、前記オリゴヌクレオチドの各々について異なる固有の分子識別因子;(d)前記ビーズの1つの上の各オリゴヌクレオチドでは同じであるが、他のビーズでは異なる、ビーズ特異的配列;及び(e)mRNAを捕捉し逆転写を開始する捕捉配列。
いくつかの特徴では、前記捕捉配列はオリゴ-dTを含む。
いくつかの特徴では、各ビーズは他のビーズから隔離された分離された液滴中に存在する。
1つ以上の実施態様の詳細が添付の図面及び下記の説明で示される。他の特色、目的及び利点は当該説明及び図面並びに特許請求の範囲から明白となろう。
SMARTer方法論を用いるcDNA合成の概要を示す例示的な模式図である。 ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的な模式図である。第一鎖合成は、オリゴdTで開始し(オリゴdTには、オプションの分子バーコード(UMI)、サンプルバーコード(BC)、増幅プライマー結合配列(V2.A14)及び鋳型切換え(TS)プライマー配列が添付されている)、その後、鋳型の乗換え、サンプルのプール化、及び単一プライマーPCRが続く。 プールされた増幅生成物の対照性ネクステラ(symmetric Nextera)によるタグメンテーションを示す例示的な模式図である。前記には、異なるフォワード(V2.B15)及びリバース(V2.A14)PCRプライマーを用いる増幅、さらに後続の対合末端の配列決定が続く。 ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的な模式図である。第一鎖合成は、オリゴdTで開始し(オリゴdTには、サンプルバーコード(BC)、オプションの分子バーコード(UMI)、増幅プライマー結合配列(V2.A14)及び鋳型切換え(TS)プライマー配列が添付されている)、その後、鋳型の乗換え、サンプルのプール化、及び単一プライマーPCRが続く。オプションのUMIは当該BCの5’-末端に存在する。 ある実施態様の、プールされた増幅生成物のタグメンテーション、増幅、及び配列決定を示す例示的な模式図である。 ある実施態様の第一鎖合成を示す例示的な模式図である。 ある実施態様の、プールされた増幅生成物のタグメンテーション、増幅、及び配列決定を示す例示的な模式図である。 ある実施態様の、多重サンプルをプール及び配列決定する方法を示す例示的な模式図である。 100pgのヒト脳参照RNAを用いる、遺伝子の発現分析方法を比較する表である。 単一細胞を用いる高処理性能の単一細胞遺伝子発現分析方法を比較する表である。 ただ1つのトランスポザーゼアダプター(V2.B15)を用いるタグメンテーションによる転写物カバー範囲と2つのトランスポザーゼアダプター(V2.A14及びV2.B15)を用いる標準的/非対称性タグメンテーションによる転写物カバー範囲を比較するグラフを示す。 ある実施態様の、ランダマーを用いる第一鎖合成を必要とする全トランスクリプトーム分析を示す模式図である。 第一鎖合成のためにランダマーを用いるときに生成されうる連結副産物を示す模式図である。 連結副産物を減少又は回避するための多様なプライマー設計を示す。 ある実施態様の液滴ベースのバーコードを示す模式図である。 ある実施態様のビーズベースのバーコードを示す模式図である。
単一細胞の遺伝子発現多重分析のための方法及び組成物が本明細書で提示される。いくつかの方法及び組成物は、固有のバーコード(例えば固有の分子バーコード(UMI))を保持する液滴及び/又はビーズの使用を含む。
これまでのところ、もっとも一般的に用いられる単一細胞RNA-Seqのための方法は、CLONTECHTM SMART-SEQTM技術又はその派生物を土台にしている。要するに、オリゴ(dT)プライマーが第一鎖cDNA合成反応を開始する。逆転写酵素(SMARTSCRIBETM)がmRNAの5’末端に到達するとき、当該酵素のターミナルトランスフェラーゼ活性は、いくつかの付加的な非鋳型ヌクレオチドを当該cDNAの3’末端に付加する。鋳型切換えオリゴ(前記は、この非鋳型ヌクレオチドストレッチと塩基対を形成するように設計されている)がアニールして伸長された鋳型を生じ、RTがオリゴヌクレオチドの末端で複製を継続することを可能する(図1)。
本明細書で提示される方法は、例えばU.S. 2012/0010091の明細書(参照によりその全体が本明細書に含まれる)に記載されたサンプル特異的タグを有するタグ付加cDNAを作製する方法を含むことができる。本明細書で用いられるように、単一細胞タグ付加逆転写及びSTRTという用語は、例えばU.S. 2012/0010091の当該取り込まれた資料に開示されている方法を指す。いくつかの実施態様では、二本鎖cDNAはSTRT方法ではDNaseで分解されない。そのかわりに、二本鎖DNAは、トランスポザーゼ(例えば標準的なネクステラ)でタグメンテーションされる。
続いて二本鎖cDNAは配列決定ライブラリーに変換でき、これは、例えば全トランスクリプトームRNA-SeqのためにNEXTERATM又はTRUSEQTM(Illumina, Inc.)を用いるか、又は酵素分解(例えばDNaseI又はフラグメンターゼ)とその後の5'末端配列決定のためのアダプター連結によって行うことができる。両方法とも賛否両論があり、前者は、ライブラリーの準備中にサンプルバーコードの導入が完了してからのみ多重化することができるが、一方、後者は、バーコードを第一鎖合成工程中に導入することができるのでcDNA合成後に多重化できる。したがって、より高い処理能力及びサンプル当たりのより低いコストでは後者に分がある。しかしながら、両方法により得られる情報は異なる適用を有する。すなわち、前者は全トランスクリプトームの配列決定を可能にし、一方、後者は遺伝子発現レベルを調べるだけである。
本明細書では迅速な遺伝子発現ライブラリーの調製方法が提示され、前記方法は、単一細胞インプットレベルで適用でき、当該プロトコルの初期に高レベルのサンプル多重化を可能にする。
いくつかの実施態様では、第一鎖合成は(固定された)オリゴdTプライマー(又は場合によってランダマー或いは前記2つの組み合わせ)により開始され、前記オリゴdTには、サンプルバーコード(BC)、増幅プライマー結合部位、及び場合によって鋳型切換え(TS)プライマー配列が添付される。いくつかの実施態様では、増幅プライマー結合部位は、トランスポザーゼアダプター配列、例えばネクステラアダプター配列V2.A14又はV2.B15である。当該バーコードは、PCR複製物の検出を可能にする分子バーコード(固有の分子識別因子又は“UMI”)の前にあっても後ろにあってもよい。逆転写酵素がmRNAの5’末端に達したとき、鋳型切換えは、上記及びU.S. 2012/0010091の取り込まれた資料に記載されているように生じ、TSプライマー配列の相補物を第一鎖cDNAへ取り込む。サンプルバーコードが第一鎖cDNAに導入されてあるので、種々のサンプルがこの時点でプールされうる。引き続き第一鎖プールは二本鎖にされ、場合によってTSプライマーによりPCR反応で増幅される(図2A)。cDNAの両端が相補性配列を含むという事実のために、ヘアピン構造の形成は、小さなフラグメント(例えばアーティファクトなど)の増幅抑制をもたらすであろう。
いくつかの実施態様では、図2A及び3Aに示すように、第一鎖合成はオリゴdTで開始され、前記オリゴdTには、サンプルバーコード(BC)、トランスポザーゼアダプター配列のコピー(“ネクステラV2.A14”)(場合によって分子バーコード(UMI)を有する)、及び鋳型切換え(TS)プライマー配列が添付されてある。cDNA 鎖の3’末端の鋳型切換えは、第一鎖の他方の末端にTSのプライマー配列を取り込む。種々のサンプルのcDNAがこの時点でプールされうる。
いくつかの実施態様では、図2B及び3Bに示すように、cDNAはTSオリゴで増幅される。この単一プライマーPCRは小さなアンプリコン(例えばプライマーのダイマーなど)を抑制するであろう。cDNAプールは、典型的な2アダプターではなく1アダプター配列のみを含むトランスポザーゼ、例えば“NEXTERATM”によりタグメンテーションされうる。図2B及び3Bに示される例では、トランスポザーゼにはV2.B15オリゴがロードされる。タグメンテーションの後で、p5-V2.A14及びp7-V2.B15増幅プライマーによるPCRはcDNAの3'末端フラグメントを優先的に増幅する。2つのタグメンテーション事象によって生じたフラグメント(“対称性フラグメント”)はPCRで抑制され、配列決定可能なフラグメントを生じないであろう。例えば、図2B及び3Bに示されるように、対称性フラグメントから生じる増幅生成物は増幅生成物の5’及び3’末端の両端にP7プライマー配列を提示し、P5及びP7増幅プライマーを保持する標準的なイルミナ(Illumina)フローセル上で配列決定可能なクラスターを形成しないであろう。加えて、それらは、その相補的末端のためにPCRで抑制されるであろう。対照的に、3’末端フラグメントは増幅後にP5及びP7プライマー結合部位を保持し、イルミナフローセル上に配列決定可能なクラスターを形成することができる。対合末端の配列決定は、読取り1でサンプルBC及びUMIの配列を、さらに読取り2でcDNA配列をもたらすであろう。
したがって、本明細書に提示するある種の実施態様では、全転写物の配列決定を実施するのではなく、3’タグ集計に依拠するデジタル遺伝子発現様式が実施される。本明細書で提示する方法は、第一鎖合成工程で個々の細胞にバーコードを付与する能力を提供する。加えて、安価なオリゴdTプライマー又はランダマーによるcDNA 3’末端のバーコード付与は顕著なコスト削減の利点を提供する。さらにまた、cDNA合成のためのランダマーの使用は、当該方法を3’-タグ集計アッセイに加えて全RNA seqプロトコルにも類似させるので有利である。
その後のプール化、浄化、単一プライマーcDNA PCR増幅、タグメンテーション及び配列決定ライブラリー準備は、一本のチューブで2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100又はそれ以上の細胞について実施することができる。したがって、本明細書に記載する方法及び組成物は多重化に大いに馴染みうる。例として図5に示すように、本明細書に提供する方法は、細胞レベルで多重化できる(例えば96ウェルプレートにつき96サンプル)。さらにまた、本方法は、固有のバーコードを付したプレートを用いてプレートレベルでさらに多重化することができる(例えばタグメンテーションにより96ウェルプレートを識別するバーコードを取り込む)。これらの方法は自動化に馴染みやすく、顕著なコスト及び時間の削減を提供できる。
第一鎖合成プライマー上のサンプルバーコード及びUMIの順序を変動できることは理解されよう。例えば、いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)はUMIに対して3’に配置される。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)はUMIに対して5’に配置される。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)はUMIと直に連続する。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)はUMIから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれより大きく離れている。いくつかの実施態様では、サンプルバーコード(BC)は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれより大きくUMIとオーバーラップする。
いくつかの実施態様では、タグメンテーションは、第一鎖合成プライマーで見いだされないアダプター配列を含むトランスポザーゼ混合物を用いて実施される。第一鎖合成プライマーに取り込まれる配列と比較して異なるアダプター配列を保持するようにして、タグメンテーションフラグメントを生成する。例えば、いくつかの実施態様では、トランスポザーゼ混合物はもっぱら1つのタイプのアダプター配列を有するトランスポゾームを含む。このタイプの混合物によって生成されるフラグメントは、本明細書では“対称性フラグメント”と称され、イルミナフローセル上で配列決定可能なクラスターを生成しない。いくつかの実施態様では、トランスポザーゼ混合物は第一鎖合成プライマーに取り込まれた若干量の配列を含むことができ、ここで、この量は、3’cDNAフラグメントの全部又は実質的に全部の増幅及び配列決定を可能にするために十分に低い。例えば、トランスポゾーム混合物中のアダプター配列は、第一鎖合成プライマーに取り込まれる配列の0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%未満、又は25%、30%、35%、40%、45%未満、又は50%未満を含むことができる。2つのトランスポザーゼアダプターが典型的に用いられる場合、これら2つのアダプターのどちらか一方が第一鎖合成プライマーに取り込まれ、他方のアダプターはタグメンテーション事象の間に用いられうることは理解されよう。例えば、図3A、3B、4A及び4Bに示す例示的な実施態様では、1つのアダプター配列が第一鎖合成プライマーに取り込まれる場合には、当該アダプターはタグメンテーション混合物で用いられない。図3A及び3Bは、アダプターV2.A14が第一鎖合成プライマーに取り込まれ、アダプターV2.B15がタグメンテーション工程でトランスポゾームアダプターとして用いられる1つの実施態様を示している。図4A及び4Bはまた別の実施態様を示し、ここでは、アダプターV2.B15が第一鎖合成プライマーに取り込まれ、アダプターV2.A14がタグメンテーション工程でトランスポゾームアダプターとして用いられる。両方の例で、得られるタグメンテーションフラグメントは2つのカテゴリーに分類される。すなわち、対称性フラグメント及び非対称性フラグメントで、前者は増幅及び/又は配列決定することはできず、後者はV2.A14及びV2.B15プライマーのセットを用いて増幅することができる。
いくつかの実施態様では、多重化できる単一細胞の数はトランスポゾームアダプター配列にインデックスを取り込むことによって顕著に増加する。図5に例示するように、個々の細胞の各々に特異的なバーコードを用いて個々の細胞を識別し、さらに細胞セット(例えば96細胞のプレート)の各々を、トランスポゾームアダプター配列に取り込まれたプレート特異的バーコードを有するタグメンテーション混合物と接触させることができる。図5に示す例では、プレートの96細胞の各々に由来するcDNAをタグメンテーション前にプールし、続いてタグメンテーション実施サンプルを多重配列決定のためにプールする。任意の数の細胞をタグメンテーション前にプールできること、及び96ウェルプレートの使用は多様な実施態様の単なる1つであることは理解されよう。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100細胞、又は100、200、300、400、500、600、700、800、900若しくは1000を超える細胞、及びその間に介在する任意の数の細胞のセットをタグメンテーションのためにプールすることができる。第一鎖合成は任意の一ウェル容器又はマルチウェル容器(例えばマルチウェルプレート)、チップ、微小液体装置、エマルジョン、ビーズ混合物、又は複数細胞の複合的操作のための他の任意の適切な様式で行うことができる。
図7(単一細胞)に示すように、非対称性タグメンテーション(ネクステラバージョンV2B15/V2.A14)と比較してどちらかの対称性タグメンテーション(ネクステラバージョンV2.B15)を用いて遺伝子発現を分析したとき、顕著な数の遺伝子が検出され、さらに他のメトリックが得られた。図8は、ただ1つのトランスポザーゼアダプター(V2.B15)を用いてタグメンテーションを実施するときは2つのトランスポザーゼアダプター(V2.A14及びV2.B15)を用いるタグメンテーションと対比して、転写物のカバー範囲は転写物の3'末端方面にほぼ完全に偏向することを示している。
いくつかの実施態様では、サンプル及びUMIのバーコード付与は、個々の細胞を液滴中に隔離することによって実施できる。いくつかの実施態様では、液滴はエマルジョン中で互に隔離される。いくつかの実施態様では、液滴は、液滴アクチュエーターを用いて形成及び/又は操作される。特定の実施態様では、1つ以上の液滴がバーコード含有第一鎖合成プライマーの異なるセットを含む。いくつかの実施態様では、各液滴は多数の第一鎖合成プライマーを含み、それらプライマーの各々は同一のバーコードを含む同一の配列を有し、1つの液滴のバーコードは別の液滴とは異なるが、当該第一鎖合成プライマーの残余部分は液滴間で同じものを維持する。したがって、これらの実施態様では、バーコードは、液滴に包含される単一細胞および液滴に関する識別因子として機能する。具体的な実施態様では、1つ以上の液滴はUMI含有第一鎖合成プライマーの異なるセットを含む。したがって、各液滴中で溶解される個々の細胞の各々は、各液滴中のバーコードによって識別されうるであろう。図11に示されるように、液滴によるバーコード付与は、単一細胞を含む液滴をバーコードの固有セットを含む他の液滴と融合させることによって実施できる。この様式は、マルチウォール様式で利用可能なものを超える追加の多重化を可能にする。第一鎖合成及び鋳型の乗換えは個々の液滴の各々の内部で実施される。いくつかの実施態様では、2つ以上の液滴がPCR前に融合されうる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、液滴はタグメンテーションの前に融合されうる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、液滴はPCR後及びタグメンテーション前に融合されうる。例えば、いくつかの実施態様では、第一鎖合成が個々の液滴で実施されてから、タグ付加cDNAを融合することができ、したがってcDNAをプールすることができる。
同様に、いくつかの実施態様では、サンプル及びUMIのバーコード付与は、個々の細胞をビーズとともに隔離することによって実施され、前記ビーズは第一鎖合成のためにUMI及び/又はバーコードタグ付加プライマーを保持する。いくつかの実施態様では、ビーズはエマルジョンの液滴中に隔離される。いくつかの実施態様では、ビーズは、液滴アクチュエーターを用いて隔離及び操作される。図12に示すように、ビーズによるバーコード付与はビーズセットを作製することによって実施でき、各ビーズは固有のセット又はバーコードセットを保持する。
全トランスクリプトームの配列決定
いくつかの実施態様では、本明細書で提供する方法は、全トランスクリプトームの配列決定の実施に利用することができる。そのような実施態様では、第一鎖合成はランダマーによって伸長される。図9Aに示すように、ランダムプライミングは、配列決定可能なフラグメントのウィンドウを、ランダマーがハイブリダイズし第一鎖合成を開始する転写物にわたって任意の場所に拡張する。ランダマーは、サンプルバーコード及び固有の分子識別因子の同じ組み合わせを、他のアダプター及びプライマー結合部位(例えばトランスポゾームアダプター配列及び/又は鋳型切換え(TS)プライマー)に加えて含むことができる。鋳型の乗換え及び第二鎖合成は、オリゴdT開始cDNA合成について上記に記載したように実施することができる。続いて、得られた二本鎖cDNAを上記に記載したようにタグメンテーション反応に付すことができる。オリゴdTと対比されるランダマー使用における相違は、転写物の3’部分ではなくて、当該転写物の完全な(又は実質的に完全な)配列を得ることができるということである。図6に示すように(100pgのRNA)、第一鎖合成のためにどちらかのオリゴdTを用いて遺伝子発現を分析したとき、オリゴdTとランダマーの混合物の使用に比べて顕著な数の遺伝子が検出され、さらに他のメトリックが得られた。
第一鎖合成のプライミングにランダマーを用いたときに生じる可能性がある他のタイプの副産物は連結(コンカテマー)副産物である。特に、いくつかの状況では、図9Bに示すように、ランダマーは他のランダムプライマーとハイブリダイズすることができ、したがってRNA転写物とのアニーリングを打倒する。生じたcDNA生成物は更なるランダムプライミングに付され、連続的な鋳型切換え事象が発生する。この連続反応は、鋳型切換えオリゴヌクレオチドの存在に依存しうるコンカテマー副産物の生成をもたらしうる。
そのような副産物の生成を減少させるか及び/又は最小限にするために、副産物生成の蓋然性を減少させる多様なプライマー設計が本明細書で提示される。例示的な設計は図10に示されるが、ただし本明細書に示すプライマー組成の範囲は当該図面に示す例を超えることは理解されよう。ある実施態様では、プライマーは、ヘアピンを形成し、バーコード、アダプター又は増幅プライマー結合領域の任意の部分に対するランダマーのプライミングを防止又は最小限にする構造を有することができる。プライマー自体で形成される二本鎖部分は、したがってランダマーのハイブリダイゼーションを打倒することができる。いくつかの実施態様では、ヘアピンの二本鎖部分はトランスポザーゼアダプターのモザイク末端(ME)配列を含む。また別に或いは前記に加えて、いくつかの実施態様では二本鎖部分は、モザイク末端配列を超えてトランスポザーゼアダプター配列のいくらか又は全てを含むことができる。いくつかの実施態様では、アダプター配列は短いRNA配列で完全に入れ替えられ、プライマーの長さを減少させ、ランダマーがプライマーとハイブリダイズする潜在能力を最小限にできる。いくつかの実施態様では、当該短いRNA配列の相補物がプライマーの5’末端に又はその近くに提供され、したがってヘアピンの形成を可能にする。いくつかの実施態様では、二本鎖領域が相補的オリゴヌクレオチドをアダプター及び/又はプライマー部分にアニールさせることによって形成され、したがってバーコード、アダプター又は増幅プライマー結合領域の任意の部分に対するランダマーのプライミングを防止又は最小限にし、それによって連結副産物を減少させ又は回避する。
バーコード及びUMI
本明細書で用いられるように、“バーコード”又は“BC”という用語は、サンプル又は核酸物質の供給源を識別するために用いることができる核酸タグを指す。したがって、核酸サンプルが複数の供給源に由来する場合、各核酸サンプルの核酸に異なる核酸タグを付すことができ、サンプルの供給源を識別することができる。バーコード(また一般的にインデックス、タグなどと呼ばれる)は当業者には周知である。任意の適切なバーコード又はバーコードセットを、当業界で公知のように又は米国特許8,053,192号及びPCT公開WO05/068656に例示されているように用いることができる(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。単一細胞のバーコード付与は、例えばU.S. 2013/0274117(参照によりその全体が本明細書に含まれる)に記載されているように実施することができる。
2つ以上の供給源に由来する核酸は可変タグ配列を含むことができる。このタグ配列は、長さが100ヌクレオチド(二本鎖分子を指す場合は塩基対)まで、好ましくは長さが1から10ヌクレオチド、もっとも好ましくは長さが4、5又は6ヌクレオチドであることができ、さらにヌクレオチドの組み合わせを含む。例えば、ある実施態様で、タグを形成するために6塩基対が選択されさらに4つの異なるヌクレオチドの順列が用いられるならば、合計4096の核酸アンカー(例えばヘアピン)(その各々が固有の6塩基タグを有する)を作成できる。
本明細書で用いられるように、UMI、固有の識別因子、及び固有の分子識別因子という用語は、複数の核酸分子の各々に付加される固有の核酸配列を指す。例えば、第一鎖cDNA合成中に核酸分子に取り込まれるとき、UMIを用いて、増幅後に配列決定される固有の分子識別因子(UMI)を直接計測することによって、その後の増幅の偏向を修正することができる。UMIの設計、取り込み及び適用は、当業界で公知のように、例えば以下の開示で例示されているように実施することができる:WO 2012/142213;Islam et al. Nat. Methods, 2014, 11:163-166;及びKivioja, T. et al. Nat. Methods (2012) 9: 72-74(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
タグメンテーション
本明細書で用いられるように、“タグメンテーション”という用語は、トランスポゾン末端配列を含むアダプターと複合体を形成したトランスポザーゼ酵素を含むトランスポゾーム複合体によるDNAの改変を指す。タグメンテーションは、DNAのフラグメント化と二重鎖フラグメントの両鎖の5’末端へのアダプターの連結を同時にもたらす。トランスポザーゼ酵素を除去する精製工程の後で、例えばPCR、連結又は当業者に公知の任意の他の適切な方法によって、追加の配列を当該アダプター付加フラグメントの末端に付加することができる。
本発明の方法は、トランスポザーゼ末端配列を受け入れ標的核酸をフラグメントし、転位末端を付加するが非転位末端は付加しない、いずれのトランスポザーゼも用いることができる。“トランスポゾーム”は、少なくとも1つのトランスポザーゼ酵素及びトランスポザーゼ認識部位を含む。“トランスポゾーム”と称される、いくつかのそのような系では、トランスポザーゼは、転移反応を触媒することができるトランスポゾン認識部位と機能的複合体を形成することができる。トランスポザーゼ又はインテグラーゼは、トランスポザーゼ認識部位に結合し、トランスポザーゼ認識部位を時に“タグメンテーション”と称されるプロセスで標的核酸に挿入することができる。いくつかのそのような挿入事象では、トランスポザーゼ認識部位の一方の鎖は標的核酸に移転されうる。
標準的なサンプル調製方法では、各鋳型は挿入物のどちらかの末端にアダプターを含み、さらにDNA又はRNAの改変及び改変反応の所望の生成物の精製の両方においてしばしば多数の工程が要求される。これらの工程は、フローセルへのアダプター付加フラグメントの添加前に溶液中で実施され、前記アダプター付加フラグメントはプライマー伸長反応によって表面に結合される(この反応は、ハイブリダイズされたフラグメントを表面に共有結合的に付着したプライマーの末端にコピーする)。続いて、これらの‘シード’鋳型は、数サイクルの増幅を経てコピーされた鋳型の単一クローン性クラスターを生じる。
クラスター形成及び配列決定のために準備ができたアダプター改変鋳型にDNAを溶液中で転換するために必要とされる工程の数は、トランスポザーゼ媒介フラグメント化及びタグ付与を用いることによって最小限にできる。
いくつかの実施態様では、トランスポゾンによる技術を、例えばNexteraTM DNAサンプル調製キット(Illumina, Inc.)のワークフローに例示されたように、DNAフラグメント化に利用することができる。前記キットでは、ゲノムDNAは操作したトランスポゾームによってフラグメント化でき、前記操作トランスポゾームはインプットDNAのフラグメント化及びタグ付与を同時に達成し(“タグメンテーション”)、それによって、当該フラグメントの末端に固有のアダプター配列を含むフラグメント化核酸分子の集団を作製する。
いくつかの実施態様は以下の使用を含む:高活性Tn5トランスポザーゼ及びTn5型トランスポザーゼ認識部位(Goryshin and Reznikoff, J. Biol. Chem., 273:7367, 1998)、又はMuAトランスポザーゼ並びにR1及びR2末端配列を含むMuトランスポザーゼ認識部位(Mizuuchi, K., Cell, 35:785, 1983;Savilahti, H, et al., EMBO J., 14: 4893, 1995)。高活性Tn5トランスポザーゼと複合体を形成する例示的なトランスポザーゼ認識部位は、例えばEZ-Tn5TMトランスポザーゼ(Epicentre Biotechnologies, Madison, Wis)である。
本明細書で提供されるある種の実施態様に関して用いることができる転移系のさらに多くの例には以下が含まれる:黄色ブドウ球菌Tn552(Colegio et al., J. Bacteriol., 183:2384-8, 2001;Kirby C et al., Mol. Microbiol., 43:173-86, 2002)、Ty1(Devine & Boeke, Nucleic Acids Res., 22:3765-72, 1994及び国際公開WO 95/23875)、トランスポゾンTn7(Craig, N L, Science. 271:1512, 1996;Craig, N L,(論評)Curr Top Microbiol Immunol., 204:27-48, 1996)、Tn/O及びIS10(Kleckner N, et al., Curr Top Microbiol Immunol., 204:49-82, 1996)、マリナートランスポザーゼ(Lampe D J, et al., EMBO J., 15:5470-9, 1996)、Tc1(Plasterk R H, Curr. Topics Microbiol. Immunol., 204:125-43, 1996)、Pエレメント(Gloor, G B, Methods Mol. Biol., 260:97-114, 2004)、Tn3(Ichikawa & Ohtsubo, J Biol. Chem. 265:18829-32, 1990)、細菌挿入配列(Ohtsubo & Sekine, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 204:1-26, 1996)、レトロウイルス(Brown, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 86:2525-9, 1989)、及び酵母のレトロトランスポゾン(Boeke & Corces, Annu Rev Microbiol. 43:403-34, 1989)。さらに多くの例には以下が含まれる:IS5、Tn10、Tn903、IS911及びトランスポザーゼファミリー酵素の操作版(Zhang et al., PLoS Genet., 5:e1000689. Epub 2009 Oct. 16,2009;Wilson C. et al., J. Microbiol. Methods 71:332-5, 2007).
略記すれば、“転移反応”は、1つ以上のトランスポゾンが標的核酸のランダム部位に又はほぼランダム部位に挿入される反応である。転移反応の必須の構成要素は、トランスポザーゼ及びトランスポゾンのヌクレオチド配列を提示するDNAオリゴヌクレオチド(転移されるトランスポゾン配列及びその相補物(すなわち非転移トランスポゾン末端配列)を含む)の他に機能的転移又はトランスポゾン複合体の形成に必要な他の構成要素である。当該DNAオリゴヌクレオチドはさらに、必要な又は所望される追加の配列(例えばアダプター又はプライマー配列)を含むことができる。簡単に記せば、in vitro転移は、トランスポゾーム複合体と標的DNAを接触させることによって開始できる。本開示のトランスポザーゼとともに使用するために容易に適合しうる例示的転移手順及び系は、例えばWO 10/048605、US 2012/0301925、US 2013/0143774に記載されている(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
核酸の5’及び/又は3’末端に付加されるアダプターはユニバーサル配列を含むことができる。ユニバーサル配列は、2つ以上の核酸分子に共通の、すなわちそれらと共有するヌクレオチド配列の領域である。場合によって、当該2つ以上の核酸分子はまた配列が相違する領域を有する。したがって、例えば5'アダプターは同一又はユニバーサル核酸配列を有することができ、3'アダプターは同一又はユニバーサル配列を有することができる。複数の核酸分子の異なるメンバーに存在しうるユニバーサル配列は、当該ユニバーサル配列に相補的なただ1つのユニバーサルプライマーを用いて、多数の異なる配列の複製又は増幅を可能にすることができる。本明細書に提示する例で用いられるいくつかのユニバーサルプライマー配列には、V2.A14及びV2.B15 NexteraTM配列が含まれる。しかしながら、任意の適切なアダプター配列を本明細書に提示する方法及び組成物で利用できることは容易に理解されよう。例えば、Tn5モザイク末端配列A14(Tn5MEA)及び/又はTn5モザイク末端配列B15(Tn5MEB)(前記は下記に示すように相補性非転移配列(NTS)を含む)を、本明細書に提供する方法で用いることができる。
Tn5MEA:5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号:1)
Tn5MEB:5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号:2)
Tn5NTS:5’-CTGTCTCTTATACACATCT-3’(配列番号:3)
液滴中のバーコード及びUMI
いくつかの実施態様では、サンプルバーコードを保持するプライマーは溶液中に存在できる。加えて或いはまた別に、UMI配列を保持するプライマーが溶液中に存在できる。例えば、固体支持体は1つ以上の小滴であってもよい。したがって、ある種の実施態様では、複数の液滴が存在でき、この場合、複数の液滴の各々が固有のサンプルバーコード及び/又はUMI配列を保持し、その各々は分子に固有である。したがって、いくつかの実施態様で、バーコードは液滴に固有でありUMIは分子に固有であって、UMIは液滴収集物において何度も繰り返されうることは、当業者には理解されよう。いくつかの実施態様では、個々の細胞を識別するために、当該個々の細胞をサンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する液滴と接触させる。いくつかの実施態様では、個々の細胞を識別するために、個々の細胞の溶解物をサンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する液滴と接触させる。いくつかの実施態様では、個々の細胞由来の精製核酸を識別するために、個々の細胞由来の精製核酸をサンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを有する液滴と接触させる。
液滴を形成及び操作する適切な任意の系を本明細書に提示の実施態様で用いることができ、この場合、複数の液滴中の各液滴はサンプルバーコード及び/又はUMI配列の固有のセットを保持する。例えば、液滴アクチュエーターを用いることができる。
“液滴アクチュエーター”は液滴を扱うための装置を意味する。液滴アクチュエーターの例については以下を参照されたい:Pamula et al.,米国特許6,911,132号(発明の名称:“Apparatus for Manipulating Droplets by Electrowetting-Based Techniques,”(エレクトロウェッティング依拠技術によって液滴を操作する装置)、2005年6月28日交付);Pamula et al.,米国特許公開20060194331(発明の名称:“Apparatuses and Methods for Manipulating Droplets on a Printed Circuit Board,”(プリント回路基板上の液滴を操作する装置及び方法)、2006年8月31日公開);Pollack et al.,国際特許公開WO/2007/120241(発明の名称:“Droplet-Based Biochemistry,”(液滴による生化学)、2007年10月25日公開);Shenderov,米国特許6,773,566号(発明の名称:“Electrostatic Actuators for Microfluidics and Methods for Using Same,”(微小流体のための静電気系アクチュエーター及び前記を使用する方法)、2004年8月10日交付);Shenderov,米国特許6,565,727号(発明の名称:“Actuators for Microfluidics Without Moving Parts,”(移動部分のない微小流体のためのアクチュエーター)、2003年5月20日交付);Kim et al.,米国特許公開20030205632(発明の名称:“Electrowetting-driven Micropumping,”(エレクトロウェッティング駆動マイクロポンプ)、2003年11月6日公開);Kim et al.,米国特許公開20060164490(発明の名称:“Method and Apparatus for Promoting the Complete Transfer of Liquid Drops from a Nozzle,”(ノズルから液滴の完全な移転を推進するための方法及び装置)、2006年7月27日公開);Kim et al.,米国特許公開20070023292(発明の名称:“Small Object Moving on Printed Circuit Board,”(プリント回路基板上を移動する小さな対象物)、2007年2月1日公開);Shah et al.,米国特許公開20090283407(発明の名称:“Method for Using Magnetic Particles in Droplet Microfluidics,”(液滴微小流体中で磁性粒子を使用する方法)、2009年11月19日公開);Kim et al.,米国特許公開20100096266(発明の名称:“Method and Apparatus for Real-time Feedback Control of Electrical Manipulation of Droplets on Chip,”(チップ上の液滴の電気的操作の即時的フィードバックコントロールのための方法及び装置)、2010年4月22日公開);Velev,米国特許7,547,380号(発明の名称:“Droplet Transportation Devices and Methods Having a Fluid Surface,”(流体表面を有する液滴移送装置及び方法)、2009年6月16日交付);Sterling et al.,米国特許7,163,612号(発明の名称:“Method, Apparatus and Article for Microfluidic Control via Electrowetting, for Chemical, Biochemical and Biological Assays and the Like,”(化学的、生化学的及び生物学的アッセイなどのためのエレクトロウェッティングによる微小流体制御の方法、装置及び物品)、2007年1月16日交付);Becker et al.,米国特許7,641,779号(発明の名称:“Method and Apparatus for Programmable Fluidic Processing,”(プログラム可能な流動体プロセッシングのための方法及び装置)、2010年1月5日交付);Becker et al.,米国特許6,977,033号(発明の名称:“Method and Apparatus for Programmable Fluidic Processing,”(プログラム可能な流動体プロセッシングのための方法及び装置)、2005年12月20日交付);Decre et al.,米国特許7,328,979号(発明の名称:“System for Manipulation of a Body of Fluid,”(流動体の操作のためのシステム)、2008年2月12日交付);Yamakawa et al.,米国特許公開20060039823(発明の名称:“Chemical Analysis Apparatus,”(化学分析装置)、2006年2月23日公開);Wu,米国特許公開20110048951(発明の名称:“Digital Microfluidics Based Apparatus for Heat-exchanging Chemical Processes,”(熱交換化学プロセスのための微小流動体系デジタル装置)、2011年3月3日公開);Fouillet et al.,米国特許公開20090192044(発明の名称:“Electrode Addressing Method,”(電極指定方法)、2009年1月30日公開);Fouillet et al.,米国特許7,052,244号(発明の名称:“Device for Displacement of Small Liquid Volumes Along a Micro-catenary Line by Electrostatic Forces,”(静電気力により微細懸垂線伝いに小体積の流動体を移動させる装置)、2006年5月30日交付);Marchand et al.,米国特許公開20080124252(発明の名称:“Droplet Microreactor,”(液滴マイクロリアクター)、2008年5月29日公開);Adachi et al.,米国特許公開20090321262(発明の名称:“Liquid Transfer Device,”(流動体移転装置)、2009年12月31日公開);Roux et al.,米国特許公開20050179746(発明の名称:“Device for Controlling the Displacement of a Drop Between Two or Several Solid Substrates,”(2つ又はいくつかの固体基材間での液滴移転を制御する装置)、2005年8月18日公開;及びDhindsa et al., “Virtual Electrowetting Channels: Electronic Liquid Transport with Continuous Channel Functionality,” Lab Chip, 10:832-836, 2010(前記文献の開示は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。ある種の液滴アクチュエーターは、その間に液体操作間隙が配置された1つ以上の基板、及び当該1つ以上の基板に接続され(例えば重層され、付着され及び/又は埋め込まれ)て1つ以上の液滴の操作を実施するために配置された電極を含むであろう。例えば、ある種の液滴アクチュエーターは、基礎(又は底部)基板、当該基板に接続した液滴操作電極、当該基板及び/又は電極の上部の1つ以上の絶縁層、並びに場合によって当該基板、絶縁層及び/又は電極上部の1つ以上の疎水性の層(液滴操作表面を形成する)を含むであろう。最上部基板がまた提供されてもよく、通常では液滴操作間隙と称される間隙によって前記は液滴操作表面から分離される。最上部及び/又は底部基板の多様な電極配置が、上記参照の特許文献及び特許出願で考察され、さらにある種の新規な電極配置が本開示中で考察される。液滴操作中に、液滴が外側電極又は参照電極と連続的に接触を続けているか又は頻繁に接触していることが好ましい。基礎電極又は参照電極は、当該間隙に面した最上部基板と結びつき、当該間隙に面した底部基板と結びつき、当該間隙内に存在することができる。電極が両基板上に提供される場合、電極を液滴アクチュエーターに結合させて電極を制御又はモニターするための電気接触は一方又は両方のプレートと関連づけることができる。いくつかの事例では、一方の基板上の電極は他方の基板と電気的に接続され、一方の基板のみが液滴アクチュエーターと接触状態にある。ある実施態様では、導電材料(例えばエポキシ、例えばMASTER BONDTMポリマー系EP79(Master Bond, Inc., Hackensack, NJ))が、一方の基板上の電極と他方の基板上の電気路との間の電気接続を提供する。例えば最上部基板上の外側電極は底部基板上の電気路と例えばそのような導電材料によって連結されうる。複数の基板が用いられる場合、基板間にスペーサーを提供してもよく、それらの間の間隙の高さを決定し、オン-アクチュエーター分配貯蔵器を規定することができる。スペーサーの高さは、例えば少なくとも約5μm、100μm、200μm、250μm、275μm、又はそれ以上であり得る。また別に或いは前記に加えて、スペーサーの高さはせいぜい600μm、400μm、350μm、300μm、又はこれより低くても良い。スペーサーは、例えば最上部または底部基板の突起層及び/又は最上部と底部基板の間に挿入された物質で形成されうる。1つ以上の開口部が流路を形成するために1つ以上の基板中に提供され、前記流路を介して液体が液滴操作間隙にデリバーされうる。いくつかの事例では、1つ以上の開口部を1つ以上の電極との相互作用のために配列することができ、例えば開口部から出る液体は1つ以上の液滴作動電極に十分に接近して流れ込み、当該液体を用いる液滴操作電極が液滴操作を達成できるように配列される。基礎(又は底部)及び最上部基板は、いくつかの事例では1つの完全な構成要素として形成できる。1つ以上の参照電極が、基礎(又は底部)基板及び/又は最上部基板及び/又は間隙内に提供されうる。参照電極配置例は上述の参照特許及び特許出願で提供される。多様な実施態様では、液滴アクチュエーターによる液滴操作は電極によって媒介することができ、例えばエレクトロウェッティング媒介、又は誘電泳動媒介、又はクーロン力媒介でありうる。
本開示の液滴アクチュエーターで用いることができる液滴操作を制御するための他の技術の例は、流体力学における流体圧力を誘発する装置の使用を含み、前記は、例えば力学的原理に基づいて作動するもの(例えば外部注射器ポンプ、圧縮空気膜ポンプ、振動膜ポンプ、真空装置、遠心分離力、圧電/超音波ポンプ、及び音響力)、電気的又は磁気的原理に基づいて作動するもの(例えば電気浸透流動、電気力学ポンプ、磁性流体プラグ、電気流体力学ポンプ、磁気を利用する吸引又は反発、及び磁性流体力学ポンプ)、熱力学的原理に基づいて作動するもの(例えば気泡発生/相変化誘発体積増加)、他の種類の表面湿潤原理に基づいて作動するもの(例えばエレクトロウェッティング及びオプトエレクトロウェッティングの他に化学的、熱的、構造的に及び放射能により誘発される表面張力勾配)、重力に基づいて作動するもの、表面張力(例えば毛細管作用)に基づいて作動するもの、静電気力(例えば電気浸透流動)に基づいて作動するもの、遠心分離流動に基づいて作動するもの(コンパクトディスク上に設置されかつ回転する基板)、磁性流体力学力に基づいて作動するもの、及び真空及び圧力差に基づいて作動するものである。ある種の実施態様では、前述の技術の2つ以上の組み合せを利用して、本開示の液滴アクチュエーターで液滴の作動を実施することができる。同様に、前述の1つ以上を用いて、例えば別の装置の貯蔵器又は当該液滴アクチュエーターの外部貯蔵器(例えば液滴アクチュエーターに連結した貯蔵器)から液滴操作間隙へ、及び貯蔵器流路から液滴操作間隙へ液体をデリバーすることができる。本開示のある種の液滴アクチュエーターの液滴操作間隙は疎水性物質で製造するか、又は前記間隙は被覆又は処理により疎水性にすることができる。例えば、いくつかの事例では、液滴操作表面のいくらかの部分又は全部は、低表面エネルギー物質を用いて、又は化学的に、例えば蒸着、或いはポリフッ化若しくは過フッ化化合物のような化合物を溶液中で用いるか又は重合できるモノマーを用いるin situ合成によって誘導することができる。例には以下が含まれる:TEFLON(商標)AF(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる)、サイトップファミリー物質のメンバー、疎水性及び超疎水性コーティングのFLUOROPEL(商標)ファミリーのコーティング(サイトニックス(Cytonix Corporation, Beltsville, MD)から入手できる:)、シランコーティング、フルオロシランコーティング、疎水性ホスホン酸誘導体(アクロン(Aculon, Inc)から販売)、及びNOVECTM電子コーティング(3M(3M Company, St. Paul, MN)から入手できる)、プラズマ援用化学気相成長(PECVD)のための他のフッ化モノマー、及びPECDVのための有機シロキサン(例えばSiOC)。いくつかの事例では、液滴操作表面は、約10nmから約1000nmの範囲の厚さを有する疎水性コーティングを含むことができる。さらにまた、いくつかの実施態様では、液滴アクチュエーターの最上部基板は導電性有機ポリマーを含むことができ、前記ポリマーは続いて疎水性コーティングで被覆されるか、そうでなければ液滴操作表面を疎水性にするために処理される。例えば、プラスチック基板上に蒸着される導電性有機ポリマーはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)でありうる。導電性有機ポリマーの他の例及び代替導電層は以下に記載されている:Pollack et al.,国際特許公開WO/2011/002957(発明の名称:“entitled “Droplet Actuator Devices and Methods,”(液滴アクチュエーター装置と方法)、2011年6月6日公開)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。一方及び両方の基板は、プリント回路基板(PCB)、基材としてガラス、酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラス、及び/又は半導体物質を用いて製作することができる。基板がITO被覆ガラスであるとき、ITOコーティングは、好ましくは厚さが少なくとも約20nm、50nm、75nm、100nm又はそれより厚い。また別に或いは前記に加えて、厚さはせいぜい200nm、150nm、125nm又は前記未満でありうる。いくつかの事例では、最上部及び/又は底部基板はPCB基板を含み、前記は絶縁物質(例えばポリイミド絶縁物質)で被覆され、いくつかの事例では、前記はまた被覆されるかそうでなければ液滴操作表面を疎水性にするために処理される。
基板がPCBを含むとき、以下の物質が適切な物質の例である:MITSUITM BN-300(三井化学(MITSUI Chemicals America, Inc., San Jose CA)から入手できる);ARLONTM 11N(アクロン(Arlon, Inc, Santa Ana, CA)から入手できる);NELCO(商標)N4000-6及びN5000-30/32(パーク・エレクトロケミカル(Park Electrochemical Corp., Melville, NY)から入手できる);ISOLATM FR406(イソラグルプ(Isola Group, Chandler, AZ)から入手できる)、特にIS620;フルオロポリマーファミリー(前記は蛍光バックグラウンドが低いので、蛍光検出に適している);ポリイミドファミリー;ポリエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリエーテウエーテルケトン;流動結晶ポリマー;シクロオレフィンコポリマー(COC);シクロオレフィンポリマー(COP);アラミド;THERMOUNT(商標)不織アラミド強化(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);NOMEX(商標)ブランドファイバー(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);及び紙。多様な物質がまた基板の絶縁成分としての使用に適切である。例には以下が含まれる:蒸気蒸着絶縁体、例えばPARYLENETM C(特にガラス上に)、PARYLENETM N及びPARYLENETM HT(高温用〜300℃)(ペリレンコーティングサービス(Parylene Coating Services, Inc., Katy, TX)から入手できる);TEFLON(商標)AFコーティング;サイトップ;ソルダーマスク、例えば写真画像品質ソルダーマスク(例えばPCB上に)、例えばTAIYOTM PSR4000シリーズ、TAIYOTM PSR及びAUS(タイヨウアメリカ(Taiyo America, Inc. Carson City, NV)から入手できる)(温度コントロールを必要とする適用に良好な温度特性を有する)、及びPROBIMERTM 8165(温度コントロールを必要とする適用に良好な温度特性を有する)(以下から入手できる:Huntsman Advanced Materials Americas Inc., Los Angeles, CA);ドライフィルムソルダーマスク、例えばVACREL(商標)ドライフィルムソルダーマスク系(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる);フィルム絶縁体、例えばポリイミドフィルム(例えばKAPTON(商標)ポリイミドフィルム(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる)、ポリエチレン及びフルオロポリマー(例えばFEP)、ポリテトラフルオロエチレン;ポリエステル;ポリエチレンナフタレート;シクロオレフィンコポリマー(COC);シクロオレフィンポリマー(COP);上記に列挙した任意の他のPCB基板物質;黒色マトリックス樹脂;ポリプロピレン;及び黒色可撓性回路物質、例えばDuPontTM Pyralux(商標)HXC及びDuPontTM Kapton(商標)MBC(デュポン(DuPont, Wilmington, DE)から入手できる)。液滴移送電圧及び周波数は、個々のアッセイプロトコルで用いられる試薬の性能で選択できる。設計パラメーターは変動しうる。例えばオン-アクチュエーター貯蔵器の数及び配置、独立電極の連結数、種々の貯蔵器のサイズ(体積)、磁石/ビーズ洗浄ゾーンの配置、電極サイズ、電極間ピッチ、及び間隙の高さ(最上部基板と底部基板間の高さ)は、個々の試薬、プロトコル、液滴体積などの使用のために変動しうる。いくつかの事例では、本開示の基板は、低表面エネルギー物質を用いるか又は化学的に誘導でき、例えば、蒸着、或いは、溶液中でポリフッ化若しくは過フッ化化合物をもちいるか又は重合化できるモノマーを用いるin situ合成によることができる。例には、ディップ又は噴霧コーティングのためのTEFLON(商標)AFコーティング及びFLUOROPEL(商標)コーティング、プラズマ援用化学気相成長(PECVD)のための他のフッ化モノマー、並びにPECDVのための有機シロキサン(例えばSiOC)が含まれる。加えて、いくつかの事例では、いくらかの部分又は全液滴操作表面が、バックグラウンドノイズ(例えばPCB基板由来のバックグラウンド蛍光)を低下させる物質で被覆されうる。例えば、ノイズ低下コーティングは、黒色マトリックス樹脂(例えば東レ株式会社(Toray industries, Inc., Japan)から入手できる黒色マトリックス樹脂)を含むことができる。液滴アクチュエーターの電極は、典型的にはコントローラー又はプロセッサーによって制御され、前記はそれ自体系の部分として提供され、プロセッシング機能の他に、データ及びソフトウェアの保存並びに入力及び出力能力を含むことができる。試薬は、液滴操作間隙で又は液滴操作間隙と流れによってつながれている貯蔵器で、液滴アクチュエーター上に提供されうる。試薬は液状形(例えば液滴)であってもよく、又はそれらは、液滴操作間隙で又は液滴操作間隙と流れによってつながれている貯蔵器で再構成可能形として提供されてもよい。再構成可能試薬は、典型的には再構成用液体と一緒にすることができる。本明細書に示す方法及び装置とともに使用するために適切な再構成可能試薬の例には以下に記載されたものが含まれる:Meathrel et al.,米国特許7,727,466号(発明の名称:“Disintegratable Films for Diagnostic Devices,”(診断装置のための分解可能フィルム)、2010年6月1日交付)(前記の全開示が参照により本明細書に含まれる)。
1つ以上の電極に関連して“活性化する”とは、1つ以上の電極の電気的状態の変化に影響を与えることを意味し、それは液滴の存在下で液滴の作動を生じる。電極の活性化は交流(AC)又は直流(DC)を用いて達成できる。任意の適切な電圧を用いることができる。例えば、電極は、約150Vを超えるか、又は約200Vを超えるか、又は約250Vを超えるか、又は約275Vから約1000V、又は約300Vの電圧を用いて活性化できる。ACシグナルが用いられる場合、任意の適切な周波数を用いることができる。例えば、電極は、約1Hzから約10MHz、又は約10Hzから約60Hz、又は約20Hzから約40Hz、又は30Hzの周波数を有するACシグナルを用いて活性化できる。
液滴アクチュエーター上のビーズに関して、“ビーズ”とは、液滴アクチュエーター上の又はアクチュエーター近傍の液滴と相互作用することができる任意のビーズ又は粒子を意味する。ビーズは、任意の多様な形状(例えば球形、大まかな球形、卵形、円盤形、立方形、不定形及び他の三次元形状)でありうる。ビーズは液滴アクチュエーター上の液滴中で液滴操作に付すことができ、又はそうでなければ、液滴アクチュエーター上の液滴が当該液滴アクチュエーター上の及び/又は当該液滴アクチュエーターから離れたビーズと接触することを可能にする態様で液滴アクチュエーターに対して配置することができる。ビーズは、液滴内に、液滴操作間隙内に、又は液滴操作表面に提供できる。ビーズは、液滴操作間隙の外部にあるか又は液滴操作表面から離れて位置する貯蔵器で提供され、当該貯蔵器は、ビーズを含む液滴が液滴操作間隙に持ち込まれることを可能にするか、又は液滴操作表面と接触することを可能にする流路と連結されうる。ビーズは、多様な材料(例えば樹脂及びポリマーを含む)を用いて製造できる。ビーズは、任意の適切なサイズ(例えばマイクロビーズ、マイクロ粒子、ナノビーズ及びナノ粒子を含む)でありうる。いくつかの事例では、ビーズは磁気応答性であり、他の事例では、ビーズは顕著には磁気応答性ではない。磁気応答性ビーズのためには、磁気応答性材料は実質的にビーズの全部、ビーズの一部分、又はビーズの単に一成分を構成する。ビーズの残余部は、とりわけポリマー物質、コーティング、及びアッセイ試薬の結合を可能にする部分を含むことができる。適切なビーズの例には以下が含まれる:フローサイトメトリーマイクロビーズ、ポリスチレンマイクロ粒子及びナノ粒子、機能的ポリスチレンマイクロ粒子及びナノ粒子、被覆ポリスチレンマイクロ粒子及びナノ粒子、シリカマイクロビーズ、蛍光マイクロ球体及びナノ球体、機能的蛍光マイクロ球体及びナノ球体、被覆蛍光マイクロ球体及びナノ球体、色素染色マイクロ粒子及びナノ粒子、磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、超常磁性マイクロ粒子及びナノ粒子(例えばDYNABEADS(商標)粒子、インビトロゲン(Invitrogen Group, Carlsbad, CA)から入手できる)、蛍光マイクロ粒子及びナノ粒子、被覆磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、強磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、被覆強磁性マイクロ粒子及びナノ粒子、並びに以下に記載されているもの:Watkins et al.,米国特許公開20050260686(発明の名称:“Multiplex Flow Assays Preferably with Magnetic Particles as Solid Phase,”(固相として好ましくは磁性粒子を有するマルチプレックスフローアッセイ)2005年11月24日公開);Chandler.,米国特許公開20030132538(発明の名称:“Encapsulation of Discrete Quanta of Fluorescent Particles,”(蛍光粒子の個々の量子のカプセル化)、2003年7月17日公開);Chandler et al.,米国特許公開20050118574(発明の名称:“Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method,”(臨床標本の多重分析、装置及び方法)、2005年6月2日公開);Chandler et al.,米国特許公開20050277197(発明の名称:“Microparticles with Multiple Fluorescent Signals and Methods of Using Same,”(複数の蛍光シグナルを有するマイクロ粒子及び前記を使用する方法)、2005年12月15日公開);及びChandler et al.,米国特許公開20060159962(発明の名称:“Magnetic Microspheres for use in Fluorescence-based Applications,”(蛍光による適用で使用される磁性微小球)、2006年7月20日公開)(前記文献の全開示が、それらのビーズ及び磁気応答性物質及びビーズに関する教示について参照により本明細書に含まれる)。ビーズは、生物分子と結合し複合体を形成できる生物分子又は他の物質と前もって結合されうる。ビーズは、抗体、タンパク質又は抗原、DNA/RNAプローブ、或いは所望の標的に対して親和性を有する任意の他の分子と前もって結合されうる。磁気応答性ビーズ及び/又は非磁気応答性ビーズを固定するため、及び/又はビーズを用いて液滴操作プロトコルを実施するための液滴アクチュエーター技術の例は以下に記載されている:Pollack et al.,米国特許公開20080053205(発明の名称:“Droplet-Based Particle Sorting,”(液滴系粒子の仕分け)、2008年3月6日公開);米国特許出願61/039,183(発明の名称:“Multiplexing Bead Detection in a Single Droplet,”(単一液滴における複合的ビーズ検出)、2008年3月25日出願);Pamula et al.,米国特許出願61/047,789(発明の名称:“Droplet Actuator Devices and Droplet Operations Using Beads,”(液滴アクチュエーター装置及びビーズを用いる液滴操作)、2008年4月25日出願);米国特許出願61/086,183(発明の名称:“Droplet Actuator Devices and Methods for Manipulating Beads,”(液滴アクチュエーター装置及びビーズを操作する方法)、2008年8月5日出願);Eckhardt et al.,国際特許公開WO/2008/098236(発明の名称:“Droplet Actuator Devices and Methods Employing Magnetic Beads,”(液滴アクチュエーター装置及び磁性ビーズを用いる方法)、2008年8月14日公開);Grichko et al.,国際特許公開WO/2008/134153(発明の名称:“Bead-based Multiplexed Analytical Methods and Instrumentation,”(ビーズ系多重分析方法及び装置)、2008年11月6日公開;Eckhardt et al.,国際特許公開WO/2008/116221(発明の名称:“Bead Sorting on a Droplet Actuator,”(液滴アクチュエーターでのビーズの仕分け)、2008年9月25日公開;及びEckhardt et al.,国際特許公開WO/2007/120241(発明の名称:“Droplet-based Biochemistry,”(液滴による生化学)、2007年10月25日公開)(前記文献の全開示は参照により本明細書に含まれる)。ビーズの特徴を本開示の多重化の局面で利用することができる。多重化のためだけでなく、そのようなビーズから放射されるシグナルを検出及び分析する方法のために適切な特徴を有するビーズの例は以下で見出すことができる:Whitman et al.,米国特許公開20080305481(発明の名称:“Systems and Methods for Multiplex Analysis of PCR in Real Time,”(リアルタイムPCRの多重分析のための系及び方法)、2008年12月11日公開);Roth,米国特許公開20080151240(発明の名称:“Methods and Systems for Dynamic Range Expansion,”(動的範囲の拡大のための方法及び系)、2008年6月26日公開);Sorensen et al.,米国特許公開20070207513(発明の名称:“Methods, Products, and Kits for Identifying an Analyte in a Sample,”(サンプル中の分析物を識別するための方法、製品及びキット)、2007年9月6日公開);Roth,米国特許公開20070064990(発明の名称:“Methods and Systems for Image Data Processing,”(画像データ加工のための方法及び系)、2007年3月22日公開);Chandler et al.,米国特許公開20060159962(発明の名称:“Magnetic Microspheres for use in Fluorescence-based Applications,”(蛍光による適用で使用される磁性微小球)、2006年7月20日公開);Chandler et al.,米国特許公開20050277197(発明の名称:“Microparticles with Multiple Fluorescent Signals and Methods of Using Same,”(多重蛍光シグナルを有するマイクロ粒子及び前記の使用方法)、2005年12月15日公開);及びChandler et al.,米国特許公開20050118574(発明の名称:“Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method,”(臨床標本の多重分析、装置及び方法)、2005年6月2日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。
“液滴”とは液滴アクチュエーター上の液体の塊を意味する。典型的には、液滴は充填液によって少なくとも部分的に仕切られている。例えば、液滴は充填液によって完全に取り囲まれるか、又は充填液及び液滴アクチュエーターの1つ以上の表面によって仕切られることができる。別の例では、液滴は、充填液、液滴アクチュエーターの1つ以上の表面、及び/又は大気によって仕切られることができる。さらにまた別の例では、液滴は充填液及び大気によって仕切られることができる。例えば、液滴は水性又は非水性であるか、又は水性及び非水性成分を含む混合物又はエマルジョンでもよい。液滴は極めて多様な形状を有することができ、非限定的な例には以下が含まれる:おおまかな円盤形、ナメクジ形、切り縮められた球形、楕円球、部分的に圧縮された球体、半球状、卵形、円筒状、そのような形態の組み合わせ、液滴操作中に形成される多様な形状、例えば前記のような形状と液滴アクチュエーターの1つ以上の表面との接触の結果としての吸収、分断又は形成形状。本開示のアプローチを用いて液滴操作に付すことができる液滴流動体の例については、以下を参照されたい:Eckhardt et al.,国際特許公開WO/2007/120241(発明の名称:“Droplet-Based Biochemistry,”(液滴系生化学)、2007年10月25日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。
多様な実施態様では、液滴は生物学的サンプル(例えば全血、リンパ液、血漿、汗、涙液、唾液、喀痰、脳脊髄液、羊水、精液、膣排出物、漿液、滑液、心外膜液、腹腔液、胸膜液、濾出液、浸出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、糞便サンプル、単一又は複数の細胞を含む液体、細胞内小器官を含む液体、液化組織、液化器官)を含むことができる。さらにまた、液滴は試薬(例えば水、脱イオン水、食塩水溶液、酸性溶液、塩基性溶液、洗剤溶液及び/又は緩衝液)を含むことができる。液滴は以下を含むことができる:核酸、例えばDNA、ゲノムDNA、RNA、mRNA、又は前記のアナローグ;ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド又は前記のアナローグ、例えばターミネーター部分を有するアナローグ、例えば以下に記載されたもの:Bentley et al., Nature 456:53-59, 2008;Gormley et al.,国際特許公開WO/2013/131962(発明の名称:“Improved Methods of Nucleic Acid Sequencing,”(核酸の配列決定の改善された方法)、2013年9月12日公開;Barnes et al.,米国特許7,057,026号(発明の名称:“Labelled Nucleotides,”(標識ヌクレオチド)、2006年、6月6日交付);Kozlov et al.,国際特許公開WO/2008/042067(発明の名称:“Compositions and Methods for Nucleotide Sequencing,”(ヌクレオチドの配列決定のための組成物及び方法)、2008年4月10日公開);Rigatti et al.,国際特許公開WO/2013/117595(発明の名称:“Targeted Enrichment and Amplification of Nucleic Acids on a Support,”(支持体上での核酸の標的照準濃縮及び増幅)、2013年8月15日公開);Hardin et al.,米国特許7,329,492号(発明の名称:“Methods for Real-Time Single Molecule Sequence Determination,”(リアルタイムの単一分子配列決定のための方法)、2008年2月12日交付);Hardin et al.,米国特許7,211,414号(発明の名称:“Enzymatic Nucleic Acid Synthesis: Compositions and Methods for Altering Monomer Incorporation Fidelity,”(酵素的核酸合成:忠実な代替モノマー取り込みのための組成物及び方法)、2007年5月1日交付);Turner et al.,米国特許7,315,019号(発明の名称:“Arrays of Optical Confinements and Uses Thereof,”(光学的に閉じ込めたアレイ及びその使用)、2008年1月1日交付);Xu et al.,米国特許7,405,281号(発明の名称:“Fluorescent Nucleotide Analogs and Uses Therefor,”(蛍光ヌクレオチドアナローグ及びその使用)、2008年7月29日交付);及びRanket al.,米国特許公開20080108082(発明の名称:“Polymerase Enzymes and Reagents for Enhanced Nucleic Acid Sequencing,”(強化された核酸配列決定のためのポリメラーゼ酵素及び試薬)、2008年5月8日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる);酵素、例えばポリメラーゼ、リガーゼ、リコンビナーゼ、又はトランスポザーゼ;結合パートナー、例えば抗体、エピトープ、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、レクチン又は炭水化物;又は生化学的に活性な分子。液滴含有物の他の例には試薬、例えば生化学的プロトコル(例えば核酸増幅プロトコル、アフィニティ系アッセイプロトコル、酵素アッセイプロトコル、配列決定プロトコル、及び/又は生物学的液体の分析のためのプロトコル)のための試薬が含まれる。液滴は1つ以上のビーズを含むことができる。
“液滴操作”は液滴アクチュエーター上の液滴の任意の操作を意味する。例えば、液滴操作は以下を含むことができる:液滴アクチュエーターに液滴をローディングする;液滴供給源から1つ以上の液滴を分配する;1つの液滴を2つ以上の液滴に分断、分離及び分割させる;液滴をある場所から任意の方向の別の場所へ移送する;2つ以上の液滴を単一液滴として吸収又は結合させる;液滴を希釈する;液滴を混合する;液滴を撹拌する;液滴を変形させる;液滴を適所に保持する;液滴をインキュベートする;液滴を加熱する;液滴を蒸発させる;液滴を冷却させる;液滴を処分する;液滴を液滴アクチュエーター外へ移送する;本明細書に記載した他の液滴操作;及び/又は上記の任意の組み合わせ。“併吸収させる”、“吸収する”、“結合させる”、“結合する”などは、2つ以上の液滴から1つの液滴を生成することを指すために用いられる。2つ以上の液滴を指してそのような用語が用いられるときは、2つ以上の液滴を結合させて1つの液滴を生じるために十分である、任意の液滴操作の組み合わせを用いることができることは理解されよう。例えば、“液滴Aを液滴Bに吸収させる”という工程は、液滴Aを移送して静止液滴Bと接触させるか、液滴Bを移送して静止液滴Aと接触させるか、又は液滴A及びBを移送して互いを接触させることによって達成される。“分断”、“分離”及び“分割”という用語は、生じた液滴の体積に関しても(すなわち生じた液滴の体積が同じでも異なっていてもよい)、又は生じた液滴の数に関しても(生じた液滴の数は2、3、4、5又は6以上でありうる)、何らかの特定の結果を示唆することを意図しない。“混合する”という用語は、液滴内の1つ以上の成分のより均一な分布をもたらす液滴操作を指す。液滴操作の“ローディング”の例にはマイクロ透析ローディング、圧補助ローディング、ロボットローディング、受動ローディング及びピペットローディングが含まれる。液滴操作は電極によって媒介できる。いくつかの事例では、液滴操作はさらに、親水性及び/又は疎水性領域の表面での使用によって及び/又は物理的障害によって促進される。液滴操作の例については、“液滴アクチュエーター”の定義で上記に引用した特許及び特許出願を参照されたい。時にはインピーダンス又は静電容量の検出又は画像化技術を用いて液滴操作の結果を決定又は確認できる。そのような技術の例は以下に記載されている:Sturmer et al.,米国特許公開20100194408(発明の名称:“Capacitance Detection in a Droplet Actuator,”(液滴アクチュエーターの静電容量検出)、2010年8月5日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。一般的に言えば、検出又は画像化技術を用いて、特定電極の液滴の有無を確認できる。例えば、液滴分配操作後に行き先電極に分配液滴が存在していることによって、液滴分配操作が有効であったことが確認される。同様に、アッセイプロトコルの適切な工程における検出スポットの液滴の存在によって、それまでの液滴操作セットが検出のための液滴を首尾よく生成したことが確認できる。液滴移送時間は極めて迅速でありうる。例えば、多様な実施態様で、1つの電極から次の電極への液滴の移送は、約1秒、又は約0.1秒、又は約0.01秒、又は約0.001秒を超えることができる。ある実施態様では、電極はACモードで作動されるが、画像化のためにDCモードに切り換えられる。液滴のフットプリントエリアがエレクトロウェッティングエリアと同様であることは、液滴操作の実施に有益である。換言すれば、1x-、2x-、3x-液滴は、それぞれ1、2及び3電極を用いて有効に制御され操作される。液滴フットプリントが、与えられた時間に液滴操作を実施するために利用できる電極の数より多い場合、液滴サイズと電極数の間の相違は、典型的には1を超えないはずである。換言すれば、2xの液滴は1つの電極を用いて有効に制御され、3xの液滴は2つの電極を用いて有効に制御される。液滴がビーズを含むとき、液滴サイズが当該液滴を制御する(例えば液滴を移送する)電極の数と等しいことは有用である。
“充填液”は、液滴アクチュエーターの液滴操作基板と連結される液体を意味し、前記液体は、液滴相を電極媒介液滴操作に付すために当該液滴相と十分に非混和性である。例えば、液滴アクチュエーターの液滴操作間隙は典型的には充填液で満たされる。充填液は、例えば低密度油(例えばシリコーン油又はヘキサデカン充填液)であるか、又は前記を含むことができる。充填液は、ハロゲン化油(例えばフッ素化又は過フッ素化油)であるか、又は前記を含むことができる。充填液は液滴アクチュエーターの全間隙を充填するか、又は液滴アクチュエーターの1つ以上の表面を被覆することができる。充填液は導電性でも非導電性でもよい。充填液は、液滴操作を改善するために及び/又は液滴から試薬又は標的物質の損失を減少させるために、微小液滴の形成を改善するために、液滴間の相互汚染を減少させるために、液滴アクチュエーター表面の汚染を減少させるために、液滴アクチュエーター材料の分解を減少させるためなどに選択することができる。例えば、充填液は、液滴アクチュエーター材料との適合性のために選択できる。例として、フッ素化充填液をフッ素化表面コーティングとともに有益に用いることができる。フッ素化充填液は、親油性化合物(例えばウンベリフェロン基板、例えば6-ヘキサデカノイルアミド-4-メチルウンベリフェロン基板(例えばKrabbe、Niemann-Pick又は他のアッセイで用いられる))の損失を減少させるために有用である。他のウンベリフェロン基板は以下に記載されている:Winger et al.,米国特許公開20110118132(発明の名称:“Enzymatic Assays Using Umbelliferone Substrates with Cyclodextrins in Droplets of Oil,”(油の液滴中でシクロデキストリンとともにウンベリフェロン基板を用いる酵素的アッセイ)、2011年5月19日公開)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。適切なフッ素化油の例には以下が含まれる:Galden系のもの、例えばGalden HT170(bp=170℃、粘度=1.8 cSt、密度=1.77)、Galden HT200(bp=200℃、粘度=2.4 cSt、d=1.79)、Galden HT230(bp=230℃、粘度=4.4 cSt、d=1.82)(いずれもSolvay Solexis);Novec系のもの、例えばNovec 7500(bp=128℃、粘度=0.8 cSt、d=1.61)、Fluorinert FC-40(bp=155℃、粘度=1.8 cSt、d=1.85)、Fluorinert FC-43(bp=174℃、粘度=2.5 cSt、d=1.86)(ともに3M)。一般的に、過フッ素化充填液の選択には動粘性(<7cStが好ましいが、必要というわけではない)及び沸点(>150℃が好ましいが、DNA/RNA系の適用(PCRなど)での使用に必要というわけではない)が基準にされる。充填液には、例えば界面活性剤又は他の添加物でドーピングすることができる。例えば、添加物は、液滴操作を改善するために、及び/又は、液滴からの試薬又は標的物質の損失、微小液滴の形成、液滴間の相互汚染、液滴アクチュエーター表面の汚染、液滴アクチュエーター材料の分解などを減少させるために選択することができる。充填液の組成(界面活性剤のドーピングを含む)は、個々のアッセイプロトコルで使用される試薬との性能、及び液滴アクチュエーターとの効果的な相互作用又は非相互作用のために選択できる。本明細書に示す方法及び装置とともに使用するために適切な充填液及び充填液処方の例は以下で提供される:Srinivasan et al,国際特許公開WO/2010/027894(発明の名称:“Droplet Actuators, Modified Fluids and Methods,”(液滴アクチュエーター、改変された液及び方法)、2010年6月3日公開);Srinivasan et al,国際特許公開WO/2009/021173(発明の名称:“Use of Additives for Enhancing Droplet Operations,”(液滴操作の強化のための添加物の使用)、2009年2月12日公開);Sista et al.,国際特許公開WO/2008/098236(発明の名称:“Droplet Actuator Devices and Methods Employing Magnetic Beads,”(磁性ビーズを用いる液滴アクチュエーター及び方法)、2009年1月15日公開);及びMonroe et al.,米国特許公開20080283414(発明の名称:“Electrowetting Devices,”(エレクトロウェッティング装置)、2008年11月20日公開)(本明細書に引用された他の特許及び特許出願と同様に、前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。いくつかの事例では、フッ素化油は、フッ素化界面活性剤(例えばZonyl FSO-100(Sigma-Aldrich)及び他のもの)でドーピングすることができる。充填液は典型的には液体である。いくつかの実施態様では、液体の代わりに充填ガスを用いることができる。
磁気応答性ビーズに関して“固定する”とは、ビーズが、液滴中又は液滴アクチュエーター上の充填液中の適所に実質的に拘束されることを意味する。例えば、ある実施態様では、固定されたビーズは、液滴分断操作の実行を可能にするために液滴中の適所に完全に拘束され、実質的に全てのビーズを有する1つの液滴及び実質的にビーズを欠く1つの液滴を生じる。
“磁気応答性”は磁場に応答することを意味する。“磁気応答性ビーズ”は磁気応答性材料を含むか、又は磁気応答性材料で構成される。磁気応答性材料の例には、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が含まれる。適切な常磁性材料の例には、鉄、ニッケル、及びコバルトが、酸化金属(例えばFe3O4、BaFe12O19、CoO、NiO、Mn2O3、Cr2O3及びCoMnP)と同様に含まれる。
“貯蔵器”は、液体を保持、貯蔵、又は供給するための構造を有する囲い又は部分的囲いを意味する。本開示の液滴アクチュエーター系は、オン-カートリッジ貯蔵器及び/又はオフ-カートリッジ貯蔵器を含むことができる。オン-カートリッジ貯蔵器は以下を含むことができる:(1)オン-アクチュエーター貯蔵器(前記は、液滴操作間隙内又は液滴操作表面上の貯蔵器である);(2)オフ-アクチュエーター貯蔵器(前記は、液滴アクチュエーターカートリッジ上の貯蔵器であるが、液滴操作間隙の外側にあり液滴操作表面と接触しない);又は(3)オン-アクチュエーター領域及びオフ-アクチュエーター領域を有するハイブリッド貯蔵器。オフ-アクチュエーター貯蔵器の例は最上部基板内の貯蔵器である。オフ-アクチュエーター貯蔵器は、典型的にはオフ-アクチュエーター貯蔵器から液滴操作間隙(例えばオン-アクチュエーター貯蔵器)へ液体を流すために配置された開口部又は流路と液体で連絡されている。オフ-カートリッジ貯蔵器は、液滴アクチュエーターカートリッジの部分ではない貯蔵器であるが、液滴アクチュエーターカートリッジのいくらかの部分へ液体を流すことができる。例えば、オフ-カートリッジ貯蔵器は系の部分又はドッキングステーションであり、前記と液滴アクチュエーターカートリッジは作動中に連結されうる。同様に、オフ-カートリッジ貯蔵器は試薬貯蔵容器又は注射器であり、前記はオン-カートリッジ貯蔵器に又は液滴操作間隙に液体を押し込むために用いられうる。オフ-カートリッジ貯蔵器を用いる系は、典型的には液体運搬手段を含み、それによって液体をオフ-カートリッジ貯蔵器からオン-カートリッジ貯蔵器へ又は液滴操作間隙へ移すことができる。
液滴及び/又は磁気応答性ビーズを指して本明細書で用いられる、“磁石の磁場へ移送する”、“磁石に向けて移送する”などは、液滴中の磁気応答性ビーズを実質的に誘引することができる磁場領域に移送することを言うために用いられる。同様に、液滴及び/又は液滴内の磁気応答性ビーズを指して“磁石又は磁場から離す”、“磁石の磁場から出す”などは、液滴内の磁気応答性ビーズを実質的に誘引することができる磁場領域から出すことを言うために用いられ、液適又は磁気応答性ビーズが完全に磁場から取り出されるか否かは関係がない。本明細書に記載の事例のいずれにおいても、液滴を磁場の所望の領域に向かって移送或いは当該領域から離すことも、及び/又は磁場の所望の領域を液滴に向かって移動或いは液滴から離すことも可能なことは理解されよう。磁場の“内部”にある、又は磁場“中”にある電極、液滴、又は磁気応答性ビーズなどと言うとき、当該電極が液滴を磁場の所望の領域に移送するか及び/又は所望の領域から出すことができる態様で当該電極が配置されている状況、或いは、液適又は磁気応答性ビーズが磁場の所望の領域(各事例で所望の領域内の磁場は液滴中のいずれの磁気応答性ビーズも実質的に吸引することができる)に配置されている状況を述べるために用いられる。同様に、磁場の“外部”にある、又は磁場“から離れ”ている電極、液滴、又は磁気応答性ビーズなどと言うとき、当該電極が液滴を磁場のある種の領域から離すことができる態様で当該電極が配置されている状況、或いは、液適又は磁気応答性ビーズが磁場のある種の領域から離れて配置されている(各事例でそのような領域内の磁場は液滴中のいずれの磁気応答性ビーズも実質的に誘引することができないか、又はいずれの残留誘引力も当該領域で実施される液滴操作の有効性を排除しない)状況を述べるために用いられる。本開示の多様な特徴で、系、液滴アクチュエーター、又は系の別の成分は、磁石、例えば1つ以上の永久磁石(例えば、単一の円筒状若しくは棒状磁石又はそのような磁石のアレイ、例えばHalbachアレイ)、又は電磁石若しくは電磁石のアレイを含み、磁気応答性ビーズ又はチップ上の他の成分と相互作用するための磁場を形成することができる。そのような相互作用には、例えば保存時の或いは液滴操作時の液滴中の磁気応答性ビーズの動き又は流動の実質的な固定又は拘束、又は液滴からの磁気応答性ビーズの引き抜きが含まれる。
ビーズ洗浄に関して“洗浄”とは、ビーズと接触した又はビーズに暴露された、ビーズと接触した液滴に由来する1つ以上の物質の量及び/又は濃度を減少させる工程を意味する。当該物質の量及び/又は濃度の減少は、部分的であるか、実質的に完全であるか、又は完全ですらありうる。当該物質は極めて多様な物質のいずれかでありうる。例には、さらに別の分析のための標的及び望ましくない物質(例えばサンプルの成分、夾雑物、及び/又は過剰な試薬)が含まれる。いくつかの実施態様では、洗浄操作は磁気応答性ビーズと接触する開始液滴で始まり、ここで当該液滴はある物質の初期量及び初期濃度を含む。洗浄操作は多様な液滴操作を用いて進行しうる。洗浄操作は磁気応答性ビーズを含む液滴を生じることができ、ここで当該液滴は、当該物質の初期量及び/又は濃度よりも低い合計量及び/又は濃度の当該物質を有する。適切な洗浄技術の例は以下に記載されている:Pamula et al.,米国特許7,439,014号(発明の名称:“Droplet-Based Surface Modification and Washing,”(液滴による表面改変及び洗浄)、2008年10月21日交付)(前記文献の全開示が参照により本明細書に含まれる)。
“最上部”、“底部”、“上部に”、“下に”及び“上に”という用語は、液滴アクチュエーターに対する相対的位置、例えば液滴アクチュエーターの最上部及び底部基板に対する相対的位置に関して本記載全体で用いられる。液滴アクチュエーターは空間におけるその向きとは無関係に機能を有することは理解されよう。
任意の形態の液体(例えば液滴又は連続体で、移動しているか静止しているかは関係がない)が、電極、アレイ、マトリックス又は表面“上に”、前記“に”、又は前記の“上部に”存在すると記載されているとき、そのような液体は当該電極/アレイ/マトリックス/表面と直接接触しているか、又は当該液体と当該電極/アレイ/マトリックス/表面との間に介在する1つ以上の層又はフィルムと接触しうる。ある実施態様では、充填液は、そのような液体と電極/アレイ/マトリックス/表面との間のフィルムとみなすことができる。
液滴が液滴アクチュエーター“上に”、又は前記に“ローディングされて”存在すると記載されているとき、当該液滴は、液滴アクチュエーターを用いて当該液滴上での1つ以上の液滴操作の実施を容易にする態様で当該液滴アクチュエーター上に配置されていること、当該液滴は、液滴の特性又は液滴のシグナルの検出を容易にする態様で当該液滴アクチュエーター上に配置されていること、及び/又は当該液滴は液滴アクチュエーター上で液滴操作に付されていることは理解されよう。
ビーズ上のバーコード及びUMI
いくつかの実施態様では、サンプルバーコードを保持するプライマーを固体支持体に固定することができる。加えて或いはまた別に、UMI配列を保持するプライマーを固体支持体に固定できる。例えば、固体支持体は1つ以上のビーズでありうる。したがって、ある種の実施態様では、複数のビーズが存在し、当該複数のビーズの各々は、固有のサンプルバーコード及び/又はUMI配列を保持できる。いくつかの実施態様では、個々の細胞をサンプルバーコード及びUMI配列の固有のセットを有する1つ以上のビーズと接触させて、個々の細胞が識別される。いくつかの実施態様では、個々の細胞の溶解物をサンプルバーコード及びUMI配列の固有のセットを有する1つ以上のビーズと接触させて、個々の細胞溶解物が識別される。いくつかの実施態様では、個々の細胞の精製核酸をサンプルバーコード及びUMI配列の固有のセットを有する1つ以上のビーズと接触させて、個々の細胞の精製核酸が識別される。ビーズは、当業界で公知である任意の適切な態様で、上記に記載の液滴アクチュエーターを用いて操作できる。
本明細書の“固体表面”、“固体支持体”及び他の文法的等価物は、本明細書に記載のプライマー、バーコード及び配列の添付に適切な、又は適切であるように改変できる任意の材料を指す。当業者には理解されるところであるが、可能な基材の数は非常に多い。可能な基材には以下が含まれるが、ただしこれらに限定されない:ガラス又は改変若しくは官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン及びスチレンと他の物質のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンTMなどを含む)、多糖類、ナイロン又はニトロセルロース、セラミクス、樹脂、シリカ又はシリカ系物質(シリコン及び改変シリコンを含む)、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束、及び他の多様なポリマー。いくつかの実施態様のための特に有用な固体支持体及び固体表面はフローセル装置内に配置される。例示的フローセルは下記でさらに詳細に示される。
いくつかの実施態様では、固体支持体は、本明細書に記載のプライマー、バーコード及び配列の固定に適切な規則的パターンのパターン化表面を含む。“パターン化表面”は、固体支持体の露出層中に又は露出層上に種々の領域が配置されていることを指す。例えば、当該領域の1つ以上は、1つ以上のトランスポゾーム複合体が存在する造作でありうる。当該造作はトランスポゾーム複合体が存在しない間質領域で分離することができる。いくつかの実施態様では、パターンは、横列及び縦列のx-y様式の造作であるうる。いくつかの実施態様では、パターンは、造作及び/又は間質領域の反復配置でありうる。いくつかの実施態様では、パターンは、造作及び/又は間質領域のランダム配置でありうる。いくつかの実施態様では、トランスポゾーム複合体は、固体支持体上でランダムに配置される。いくつかの実施態様では、トランスポゾーム複合体は、パターン化表面に分布する。本明細書に示す方法及び組成物で用いることができる例示的なパターン化表面は、米国シリーズ番号13/661,524又は米国特許出願公開2012/0316086 A1に記載されている(前記文献の各々は参照により本明細書に含まれる)。
いくつかの実施態様では、固体支持体は、ウェル又は表面の凹部のアレイを含む。前記は、多様な技術(フォトリソグラフィー、スタンプ技術、鋳造技術及び微細エッチング技術を含むが、ただしこれらに限定されない)を用い、当業界で一般的に知られているように製作できる。当業者には理解されるところであるが、用いられる技術はアレイ基板の組成及び形状に左右されるであろう。
固体支持体の組成及び幾何学はその使用とともに変動しうる。いくつかの実施態様では、固体支持体は、平面的構造(例えばスライド、チップ、マイクロチップ及び/又はアレイ)である。したがって、基板表面は平面的な層の形状でありうる。いくつかの実施態様では、固体支持体はフローセルの1つ以上の表面を含む。本明細書で用いられる“フローセル”という用語は、固体表面を含み当該表面を1つ以上の液体が流れることができるチャンバーを指す。本開示の方法で容易に用いることができるフローセル及び関連する液体系並びに検出プラットフォームの例は、例えば以下に記載されている:Bentley et al., Nature 456:53-59, 2008;WO 04/018497;US 7,057,026;WO 91/06678;WO 07/123744;US 7,329,492;US 7,211,414;US 7,315,019;US 7,405,281;及びUS 2008/0108082(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
いくつかの実施態様では、固体支持体又はその表面は非平面的、例えばチューブ又は容器の内側又は外側表面である。いくつかの実施態様では、固体支持体は微小球又はビーズを含む。本明細書の“微小球”又は“ビーズ”又は“粒子”又はその文法的等価物は、小さな別々の粒子を意味する。適切なビーズ組成には、プラスチック、セラミクス、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾール、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックス又は架橋デキストラン、例えばセファロース、セルロース、ナイロン、架橋ミセル及びテフロンの他に、固体支持体について本明細書で概略した任意の他の材料が含まれ(ただし前記に限定されない)、いずれも用いることができる。以下の文献は有益な手引書である:“Microsphere Detection Guide”(Bangs Laboratories, Fishers Ind.)。ある種の実施態様では、微小球は磁性微小球又はビーズである。
ビーズは球体である必要はなく、不規則粒子を用いてもよい。また別に或いは前記に加えて、ビーズは多孔性でもよい。ビーズのサイズはナノメートル(すなわち100nm)からミリメートル(すなわち1mm)の範囲であり、約0.2ミクロンから約200ミクロンのビーズが好ましく、約0.5から約5ミクロンが特に好ましいが、ただしいくつかの実施態様では、これらのサイズより小さい又は大きいビーズも用いることができる。
本出願を通して、多様な刊行物、特許及び/又は特許出願を参照した。これら刊行物の開示は参照によりその全体が本出願に含まれる。
本明細書では用語は無制限であることが意図され、列挙したエレメントだけでなく任意の追加エレメントも包含される。
多数の実施態様を記載したが、それにもかかわらず、多様な改変を実施することができることは理解されよう。したがって、他の実施態様も以下の特許請求の範囲内である。

Claims (20)

  1. 以下の工程を含む、複数の単一細胞からcDNAライブラリーを調製する方法:
    各単一細胞からmRNAを放出させて複数の個々のmRNAサンプルを提供する工程(個々の各mRNAサンプル中のmRNAは単一細胞に由来する);
    個々の各mRNAサンプル中のmRNAからcDNAの第一の鎖を第一鎖合成プライマーにより合成し、さらに当該cDNAにタグを取り込んで複数のタグ付加cDNAサンプルを提供する工程(ここで各タグ付加cDNAサンプル中のcDNAは単一細胞のmRNAと相補的であり、当該タグは細胞特異的な識別因子配列及び場合によって固有の分子識別因子(UMI)配列を含む);
    当該タグ付加cDNAサンプルをプールする工程;
    場合によって、当該プールしたcDNAサンプルを増幅して二本鎖cDNAを含むcDNAライブラリーを作製する工程;及び
    タグメンテーション反応を実施して、同時に各cDNAを切断しさらに当該cDNAの各鎖にアダプターを取り込み、それによって複数のタグ付加cDNAフラグメントを作製する工程。
  2. さらにタグ付加cDNAフラグメントを増幅して増幅されたタグ付加cDNAフラグメントを作製する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 増幅工程が増幅生成物の5’末端に追加配列を付加する工程を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 追加配列が固体支持体上の増幅のためにプライマー結合配列を含む、請求項3に記載の方法。
  5. さらに当該増幅されたタグ付加cDNAフラグメントを固体支持体上で増幅する工程を含む、請求項4に記載の方法。
  6. さらに固体支持体上の増幅生成物を配列決定する工程を含む、請求項5に記載の方法。
  7. タグメンテーション反応が、二本鎖cDNAをトランスポザーゼ混合物と接触させる工程を含み、前記トランスポザーゼ混合物は第一鎖合成プライマーには見出されないアダプター配列を含む、請求項1に記載の方法。
  8. トランスポザーゼ混合物が、本質的に、1つのタイプのアダプター配列をもつトランスポゾームから成る、請求項7に記載の方法。
  9. さらにタグ付加cDNAを配列決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  10. 配列決定工程が3’タグを集計する工程を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 配列決定工程が全トランスクリプトームの分析を含む、請求項9に記載の方法。
  12. 第一鎖合成がランダムプライマーの混合物を用いて実施され、当該ランダムプライマーがさらにタグを含む、請求項1に記載の方法。
  13. 第一鎖合成プライマーが二本鎖部分を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 第一鎖合成プライマーが、一本鎖の第一鎖合成プライマーと比較して連結副産物を減少させる、請求項13に記載の方法。
  15. 第一鎖合成プライマーがヘアピンを形成できる領域を含む、請求項13に記載の方法。
  16. 第一鎖合成プライマーがRNA領域を含む、請求項13に記載の方法。
  17. 第一鎖合成プライマーが相補的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、それによって二本鎖部分を形成する、請求項13に記載の方法。
  18. 複数のビーズであって、前記ビーズの各々が複数のオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドの各々が、
    (a)リンカー、
    (b)増幅プライマー結合部位、
    (c)場合によって、前記オリゴヌクレオチドの各々について異なる固有の分子識別因子、
    (d)前記ビーズの1つの上の各オリゴヌクレオチドでは同じであるが、他のビーズでは異なる、ビーズ特異的配列、及び、
    (e)mRNAを捕捉し逆転写を開始する捕捉配列、
    を含む、前記複数のビーズ。
  19. 捕捉配列がオリゴ-dTを含む、請求項18に記載の複数のビーズ。
  20. 各ビーズが他のビーズから隔離された別々の液滴中に存在する、請求項18に記載の複数のビーズ。
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