図1Aから図1Fには、例示的な多態性表面システムが示されており、この多態性表面システムには、全体として符号100が付されている。多態性表面システムは、ガイド構造体104と複数の個別の表面形状要素108を含む。ガイド構造体104中には、複数の個別の空洞部112(図4A及び図4B参照)が形成されている。図示されるように、好適な実施形態において、空洞部112は、ガイド構造体104を貫通して延びる。それぞれの表面形状要素108は、複数の個別の空洞部112のうちの1つにそれぞれ滑動自在に受け入れられ、駆動部の内部で直線状の往復滑り運動をする。例示的な実施形態において、表面形状要素の上面116は、略正方形であり、協働して多態性表面120を構成する。図1G及び図1Hに示すように、個々の表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での直線上の位置を調整することによって、多態性表面120に様々な形状を取らせることができる。
多態性表面システムは、図1Aから図1Fに模式的に示すように、コントローラ122を含む。このコントローラは、個々の表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での直線上の位置を調整するために使用される機構を制御するために適したものである。コントローラ122は、例えば、適切にプログラムされたコンピュータもしくはマイクロコントローラ、または他の適切な装置であってもよい。個々の表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での直線上の位置を調整するために使用される機構の詳細については、後述する。
図示された実施形態において、それぞれの表面形状要素108は、略平面状の上面116を定めるヘッド部124を有しており、表面形状要素108のヘッド部124は、協働して多態性表面120を構成する。他の実施形態において、表面形状要素のヘッド部及びヘッド部によって定められる上面は、略平面状とは異なる他の適切な形状を有するものであってもよい。さらに、後述するように、他の実施形態において、表面形状要素は、ヘッド部が省かれて、代わりに、面冠部と移動自在に結合されており、面冠部が多態性表面120を構成するものであってもよい。
図2Aから図2Fには、例示的な表面形状要素108がさらに詳細に示されている。それぞれの表面形状要素108は、表面形状要素上に少なくとも1つの導電経路132を有している。図示された実施形態において、それぞれの表面形状要素108の本体部128(すなわち、表面形状要素108の、空洞部112(図2Aから図2Fへの図示は省略する)内で滑動する部分)は、長手方向に離隔された一連の導電経路132を有し、これらの一連の導電経路は、本体部128の長さLに沿って延びている。例示的な実施形態において、導電経路132は、本体部128の長さLを横切るように本体部128の周りに延びるループの形をなすものである。
また、図2B及び図2Dの断面図に示すように、この例示的な実施形態において、それぞれの表面形状要素108の本体部128は、好ましくは、磁性または着磁性のコア136からなる。磁性または着磁性のコア136は、絶縁保護層140によって囲まれており、絶縁保護層140の外面に導電経路132が配置される。それぞれの表面形状要素108の本体部128は、必ずしも磁性コアまたは着磁性のコアを含むものでなくともよい。他の実施形態において、表面形状要素の本体部のコアは、非着磁性材料から形成されるものであってもよい。コアに対して着磁性または磁性材料を使用するか、あるいは非着磁性材料を使用するかの選択は、表面形状要素の磁界源からの相対的な距離による。表面形状要素での磁界の勾配が比較的小さい場合、コアを磁性または着磁性材料から形成することが好ましい、表面形状要素での磁界の勾配が比較的大きい場合、コアを非着磁性材料から形成することが好ましい。コア136が非導電性の場合には、保護層140が絶縁性を有する必要はない。
図3Aから図3Dには、1つの表面形状要素108とガイド構造体104の一部を参照して、ガイド構造体104と表面形状要素108との間の相互関係が示されている。ガイド構造体104の一部は、表面形状要素108を滑動自在に受け入れる1つの空洞部112を含んでいる。
それぞれの空洞部112は、それを横切るように延びる磁界を有している。この磁界は、図3A及び図3Dにおいて矢印Mで模式的に示されており、矢印Mの方向は、磁界の方向を示している。図3A及び図3Dに示すように、図示された実施形態において、それぞれの空洞部112を横切る磁界Mは、それぞれの表面形状要素108の空洞部112内での往復滑り直線運動に対して略直交する。それぞれの表面形状要素108の往復滑り直線運動の方向は、両方向矢印Sで示されている。矢印Sが両方向なのは、この運動が往復運動だからである。図示された実施形態では、全ての空洞部112を横切るように単一の磁界Mが延びている。これを達成するために、ガイド構造体104は、単一の磁界Mを発生させる着磁された強磁性材料を含む。図4A及び図4Bには、ガイド構造体104が単独で示されている。例示的な実施形態において、ガイド構造体は、適切な強磁性材料から成型されるものであってもよい。空洞部は、成型工程の一部として形成されるものであっても、成型工程の後に、例えばドリル加工またはレーザー切断加工によって、形成されるものであってもよい。
別の実施形態において、それぞれの空洞部は、それぞれ固有の磁界を有するものであってもよく、それぞれの空洞部がそれぞれ固有の磁界を備えるように、複数の個別の磁石が配置されるものであってもよい。このような実施形態において、個々の磁石は、表面形状要素の内部に存在するものであってもよい。または、個々の磁石は電磁石であってもよく、この場合、コントローラは、さらに、個々の電磁石が発生する磁界を変化させるために適したものであってもよい。このような実施形態の一例については、図19に関連させて後述する。
図3Aから図3Dに示すように、それぞれの空洞部112内には、電気接点が配置されている。電気接点は、第1側電気接点144及び第2側電気接点148を含む。それぞれの空洞部112について、それぞれの第1側電気接点144は、それぞれの第2側電気接点148から、空洞部112内のそれぞれの表面形状要素108上の導電経路132を除いて電気的に絶縁されている。空洞部112内の表面形状要素108上の導電経路132は、第1側電気接点144と第2側電気接点148との間の導通を維持する。
ここで、この文脈で使用される「側」、「第1側」、及び「第2側」という用語は、物理的な意味ではなく、電気的な意味で使用されており、導電経路132を渡って流れる電流について、第1側電気接点144と第2側電気接点148の間をいずれの方向に流れるものであってもよく、電流は、1つの接点(回路の1つの“側”)から他の接点に流れることを意味するものである。したがって、例示された導電経路132はループの形をしているが、電流は、導電経路132を周回して元の電気接点に戻るのではなく、導電経路132を渡って他方の「側」の電気接点に流れるものである。さらに、例示された実施形態において、第1側電気接点144は、それぞれの空洞部112を介して第2側電気接点148の真正面に配置されているが、空洞部内のそれぞれの表面形状要素上の1つまたは複数の導電経路を除いてそれらが互いに電気的に絶縁されている限り、第1側電気接点と第2側電気接点が何らかの特定の物理的配置を取るという要件はない。このような電気的な意味における「側」という用語は、そのような物理的要件を何ら示唆するものではない。したがって、別の実施形態において、複数の第1側電気接点及び/または第2側電気接点があってもよく、電流は、1つまたは複数の第1側電気接点と1つまたは複数の第2側電気接点との間を、導電経路132を渡って流れるものであってもよい。
さらに、本体部128の長さLに沿って一連の導電経路132が延びるため(図2A参照)、導電経路132は、第1側電気接点と第2側電気接点148との間の導通を、それぞれの表面形状要素のそれぞれの空洞部112内での往復滑り直線運動の範囲にわたって維持するものである。
したがって、第1側電気接点144、空洞部112内のそれぞれ表面形状要素108上の導電経路132、及び第2側電気接点148は、協働して空洞部112を横切る電気回路の回路セグメント152を構成する。図3Dに示すように、図示された実施形態において、回路セグメント152を流れる電流(矢印Iで示される)は、空洞部112を横切る磁界Mに対して略直交し、また、それぞれの表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での往復滑り直線運動Sに対しても略直交する。図3Aでは、電流Iは、紙面に直交し、図3Bでは、磁界Mは、紙面に直交する。電流Iが回路セグメント152を通じて流れるとき、電流Iは、空洞部112を横切る磁界Mと相互作用し、表面形状要素の空洞部112内での滑り直線運動Sを駆動するローレンツ力が発生する。電流Iの方向は、表面形状要素108の滑り直線運動Sの方向を定める。したがって、電流Iは、両方向矢印として示されている。
図3Cの詳細図に示すように、現時点で好ましい実施形態において、電気接点144、148(図3Cには、代表として第2側電気接点148のみが示されている)は、ベース導電層156及び低摩擦導電層160を含む。低摩擦導電層160は、導電経路132に係合し、表面形状要素108の滑り直線運動Sを容易にする。同様に、ガイド構造体104中の空洞部112の壁部は、適切な低摩擦材料で被覆されていてもよい。
図2Eに最良に示されるように、それぞれの表面形状要素108は、それぞれの長さL、幅W、及び厚みTを有している。長さLは、本体部128に沿った寸法であり、それぞれの表面形状要素108の往復滑り直線運動に対して平行である。図示から分かるように、それぞれの表面形状要素108の長さLは、その幅Wよりも実質的に大きく、それぞれの表面形状要素の幅Wは、その厚みTよりも実質的に大きい。そして、空洞部112(図2Eへの図示は省略)は、これに対応する形状を有する。表面形状要素108に印加される力は、第1側電気接点144と第2側電気接点148(図2Eへの図示は省略)との間の導電経路132の長さに比例する。一方、質量(及び重力の作用)は、表面形状要素108の体積に比例する。したがって、表面形状要素108の厚みTを小さくすることにより、同量の力を発生させつつ、その力によって動かされるべき質量を小さくすることができる。
ここで、特に図1C、図1D、及び図2Bには、図示された実施形態において、表面形状要素108の本体部128は、空洞部112内に嵌まるために十分に小さく、一方、ヘッド部124の上面116は、空洞部112を覆うために十分に広いことが示されている。表面形状要素の本体部は、図2Bに示される断面形状に限定されるものではなく、略直線状の運動が案内されるように、対応する形状を有する空洞部内に受け入れられ得る任意の断面形状を有するものであってもよい。
製造工程の一例において、1つまたは複数の表面形状要素の本体部は、金属シートから形成されるものであってもよい。金属シートのそれぞれの側に対して、絶縁保護酸化物層が金属上に堆積され、次いで、絶縁保護酸化物層上に均一な導電材料層が堆積され、次いで、導電材料層上にフォトレジスト層が堆積される。次いで、本体部の長さとなる部分を横切る帯状部のパターンが硬化され、未硬化のフォトレジストの帯状部によって分離された一連の硬化されたフォトレジストの帯状部が、帯状のパターンとして形成される。次いで、未硬化のフォトレジストの帯状部が除去され、その下の導電材料が露出される。この導電材料も除去されて、上方に導電材料の帯状部を備え、その導電材料の帯状部の上に硬化されたフォトレジストを備えた酸化物層が残される。次いで、硬化されたフォトレジストが除去される。その結果形成される金属シートは、それぞれの側において、絶縁保護酸化物層を有し、かつ絶縁保護酸化物層上に一連の離隔された導電材料の帯状部が配置されたものとなる。次いで、金属シートから、例えばレーザーにより、本体部を切断することができる。次いで、ヘッド部を本体部に固定することができ、これによって、表面形状要素が完成する。
この表面形状要素において、金属が中心部を構成し、絶縁保護酸化物が絶縁保護層を構成し、一連の離隔された導電材料の帯状部が導電経路を構成する。この実施形態において、導電経路は、ループではなく、本体部のそれぞれの側に設けられた対向する帯状部である。しかし、これは、導電経路が第1側電気接点及び第2側電気接点に係合し、かつ金属の中心部が第1側電気接点及び第2側電気接点から電気的に絶縁されている限り、システムの動作に影響を及ぼさない。あるいは、切断された本体部の縁部を締め付け(すなわち、平坦につぶし)、帯状部を閉じてループにするとともに金属の中心部から電気的に絶縁するものであってもよい。または、適切な絶縁コーティングが、帯状部の切断された縁部に付着されるものであってもよい。
上述したように、多態性表面システム100は、コントローラ122を含む。このコントローラは、個々の表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での直線上の位置を調整するために使用される機構を制御するために適している。コントローラ122は、それぞれの表面形状要素108の動きを制御する回路セグメント142を含む電気回路の一部である。コントローラ122は、回路セグメント152を指定して、1つまたは複数の選択的された回路セグメント152に電流を通電するか、または、1つまたは複数の選択された回路セグメント152から電流を除去するために適している。コントローラ122が選択された回路セグメント152に電流Iを通電すると、通電された電流Iはそれぞれの空洞部112を横切る磁界Mと相互作用し、それぞれの表面形状要素108のそれぞれの空洞部112内での略直線上の滑り運動Sを駆動するローレンツ力が発生する。それぞれの表面形状要素108は、供給される電流が表面形状要素108の加速度に比例する抵抗器と考えることができる。
コントローラ122は、好ましくは、それぞれの回路セグメント152、したがってそれぞれの表面形状要素108を個別に指定でき、これによって、それぞれの表面形状要素108の位置を、他の表面形状要素108とは独立に制御可能なものである。コントローラ122は、それぞれの回路セグメント152に通電される電流を、電流の大きさ及び/または電流の持続時間を制御することによって、制御するものであってもよい。それぞれの表面形状要素108の動きを制御するコントローラ122及び回路セグメント152を含む電気回路は、例えば、コントローラ122による個々の表面形状要素108の動きの制御を可能とするようなアクティブマトリクス方式の薄膜トランジスタ回路であってもよい。このような回路は、本明細書の開示による知識を有する当業者の能力の範囲内にあるものである。
特に図1A、図1B、図4A、及び図4Bに示されるように、図示された実施形態において、空洞部112及び空洞部内に受け入れられた表面形状要素108は、規則的な四角形格子状に、かつ表面形状要素108が互いに略平行に動くように、配列される。格子状の配列によって、それぞれの回路セグメント152(図3D)がコントローラ122によって個別に指定可能であり、かつ第1側電気接点144及び第2側電気接点148から延びる導電配線164(図4A及び図4B)を電気回路の他の要素と接続することができる電気回路の使用が容易になる。図4A及び図4Bでは、図を簡単にするために、導電配線164が行き止まり線として図示されており、電気回路の他の構成は省略されている。
空洞部及び表面形状要素は、四角形格子状に配列される必要はなく、または、表面形状要素は、互いに略平行に動くように配列される必要はない。例えば、ガイド構造体は、球形の一部の形を取るものであってもよく、空洞部及び表面形状要素は、球形の中心に向かう向き及び中心から離れる向きに半径方向の往復運動をするように配列されるものであってもよい。
図1Aから図1Hに示す例示的な多態性表面システム100は、図を簡単にするために、5行5列のマトリクス状に配列された25個の空洞部112及び25個の表面形状要素108を有している。但し、本明細書の教示による多態性表面システムはこの態様に限定されるものではない。多態性表面によって占められる物理的面積を増大させると、生成され得る表面起伏形状の範囲が増大する。単位面積当たりの表面形状要素の数を増大させると、解像度が増大する。この意味で、表面形状要素は、二次元の表示装置における画素の三次元の類似物と考えられる。したがって、表面形状要素の単位面積当たりの数は、所定の応用例において要求される解像度の限度まで、実際上可能な限り大きくする必要がある。したがって、例示した5行5列のマトリクスを超える非常に大きなマトリクスが考慮されている。
好適な実施形態において、コントローラ122は、それぞれの回路セグメント152を個別に指定して、それぞれの表面形状要素108を個別に制御可能なものである。但し、別の実施形態において、コントローラ122は、回路セグメント152のグループを指定して、表面形状要素108のグループを制御するものであってもよい。例えば、空洞部及び表面形状要素が100行100列のマトリクス状に配列された多態性表面システムにおいて、コントローラは、対応する空洞部及び表面形状要素が2行2列の配列を構成する回路セグメントのグループを指定するものであってもよい。このような構成において、表面形状要素のヘッド部は、互いに連結されていてもよく、または、一群の表面形状要素が、1つの共通のヘッド部を共有するものであってもよい。
図5Aから図5F及び図6Aから図6Cには、多態性表面システム100の第1の例が、例示的な油圧支持システム500と組み合わせて示されている。油圧支持システム500は、支持ブロック504を含み、支持ブロック504は、この支持ブロックを通じて形成された複数の油圧支持チャネル512を有している。油圧支持チャネル512は、ガイド構造体104を通じて形成された空洞部112と位置合わせされている。支持ブロック504は、好ましくは、ガイド構造体104と密封的に係合する。油圧支持チャネル512は、空洞部112を有効に延長するものであり、それぞれの表面形状要素108の本体部128の下側部分は、それぞれの油圧支持チャネル512に移動自在に受け入れられる。それぞれの表面形状要素108の下端部170(すなわち、ヘッド部124から離れた側の端部)は、油圧プラグ574に嵌め込まれる(図6B参照)。油圧プラグ574は、それぞれの油圧支持チャネル512の内面と滑動自在かつ密封的に係合する。それぞれの油圧支持チャネル512は、ガイド構造体104から離れた側の端部において、反転された円錐台状のバルブ開口部576として終端する(図6A及び図6C)。
特に図6A及び図6Cに示すように、支持ブロック504のガイド構造体104から離れた側の端部には、バルブブロック578が移動自在に配置されている。バルブブロック578は、アクチュエータ(図示は省略する)に結合される。このアクチュエータは、バルブブロック578を、支持ブロック504に向かうように及び支持ブロックから離れるように、移動させ、それによって、バルブブロック578と支持ブロック504との間の可変体積586(図6C)を低減または増大させるものである。可変体積586は密封されている。例えば、支持ブロック504は、流体密なハウジング(図示は省略する)内に密封的に固定される。バルブブロック578は、このハウジング内に滑動自在かつ密封的に受け入れられ、これによって、バルブブロック578は、ハウジング内で、支持ブロック504に向かうように及び支持ブロック504から離れるように、滑動することができる。
このような実施形態において、可変体積586は、支持ブロック504の面588(図6C)、バルブブロック578の面590(図6C)、及び内部でバルブブロック578が滑動するハウジングの1つまたは複数の壁によって定められる。バルブブロック578は、複数の離隔された円錐形のバルブ部材580を備えており、これらのバルブ部材580は、支持ブロック504の円錐台状のバルブ開口部576と位置合わせされて配列されている。それぞれのバルブ部材580は、それぞれのバルブ開口部576と協働して、それぞれコーンバルブを構成する。コーンバルブ582は、可変体積586及び流体移送通路584を介して、定圧貯留器(図示は省略する)と流体連通する。流体移送通路584は、バルブブロック578を通じて形成され、可変体積586と定圧貯留器との間を連通させる。
バルブブロック578を支持ブロック504に向かうように移動させると、可変体積586が低減する。この際、可変体積内に収容されていた流体は、定圧下で、強制的に油圧支持チャネル512内に移動する。バルブブロック578が支持ブロック504に係合すると、バルブ部材580は、バルブ開口部576に係合してコーンバルブ592を閉止し、油圧支持チャネル512内に流体を閉じ込めて、電流が通電されていない場合でも表面形状要素108が支持されることになる。バルブブロック578を支持ブロック504から離れるように移動させると、コーンバルブ582が開放され、流体が、油圧支持チャネル512から開放されたコーンバルブ582を介して可変体積586へと逃げることが可能となり、これによって、表面形状要素108が、自由に移動するように解放される。
このように、空洞部112は、油圧支持チャネル512によって延長されているため、流体源とバルブ制御された流体連通状態にあり、(a)流体が空洞部112/512内に導入され、流体が空洞部112/512内に密封されて、電流が停止された後に空洞部112/512内の表面形状要素108が支持されることと、(b)流体が空洞部112/512から取り出されて表面形状要素108が解放されることとが、選択的に実行される。
ここで、「支持ブロック」及び「バルブブロック」とう用語において、「ブロック」という単語は、これらの構成要素が一体の構造物でなければならないことを意味するものではない。但し、これらの構成要素が一体の構造物である形態は、1つの好適な実施形態である。
任意選択で、多態性表面システムは、油圧支持システム500に加えて、補助支持システムを備えるものであってもよい。このような補助支持システムの一実施形態について、図10Aから図10C、及び図11Aから図11Cを参照して説明する。これらの図には、例示的な表面形状要素108が、油圧支持システム500及びガイド構造体104のそれぞれの部分500P及び104Pと関連させて示されている。図10Aから図10Cには、補助支持システムがロック解除状態で示されており、図11Aから図11Cには、補助支持システムがロック状態で示されている。図を簡単にするため、図10Aから図10C、及び図11Aから図11Cには、ガイド構造体の部分104Pのベース導電層、低摩擦導電層、及び電気接点は、示されていない。
図10Aから図10C、及び図11Aから図11Cに示す例示的な補助支持システムは、支持ブロック504とガイド構造体104の間に介在する弾力性のあるエラストマー膜1002を含む。エラストマー膜1002は、それを通じて形成された複数のロック開口部1004(図10C及び図11C参照)を有しており、ロック開口部1004は、それぞれの表面形状要素108、空洞部、及び油圧支持チャネル512と位置合わせされて配置される。したがって、表面形状要素108の本体部128は、ロック開口部1004を通じて延びる。図示を容易にするため、図10Aから図10C、及び図11Aから図11Cでは、エラストマー膜1002の一部のみが示され、また、1つのロック開口部1004、表面形状要素108、空洞部112、及び油圧支持チャネル512のみが示されている。
支持ブロック504及びガイド構造体104は、互いに接近または離隔するように相対的に移動自在であり、このような移動を実行するために適切なアクチュエータ(図示は省略する)を備えるものであってもよい。図10Aから図10Cに示すように、補助支持システムがロック解除状態にあるとき、エラストマー膜1002は、比較的に未圧縮の状態にあり、ロック開口部1004の内面1006は、表面形状要素108から離れている(図10C参照)。これによって、表面形状要素108は、空洞部112及び油圧支持チャネル512に沿って自由に移動できる。
支持ブロック504及びガイド構造体104を互いに接近するように移動させると、エラストマー膜1002は(図10Cに示す状態と比較して)圧縮され、弾性変形する。これによって、ロック開口部1004の内面1006に内側への膨らみが生じ、表面形状要素108の本体部128に係合する(図11C参照)。これがロック状態(図11Aから図11C)であり、この状態において、変形したエラストマー膜1002は、表面形状要素108の本体部128を把持し、本体部128に摩擦力が作用する。これによって、表面形状要素108は、エラストマー膜1002が圧縮されている限り、定位置にロックされる。図10Aから図10Cに示すように、支持ブロック504及びガイド構造体104を互いに離れるように移動させ、補助支持システムをロック解除状態に戻すと、エラストマー膜1002はその未圧縮形状に戻ることが可能となり、表面形状108は、空洞部112及び油圧支持チャネル512に沿って移動するように解放される。
例示的な補助システムは、油圧支持を提供するためにバルブブロック578が支持ブロックに向かって移動している間に、表面形状要素108を定位置に固定するために使用されるものであってもよい。また、例示的な補助システムは、漏出を防止するものであってもよい。
本開示には、多態性表面の別の構造も含まれる。この多態性表面は、表面形状要素の個別の(電気制御ではなく)油圧制御に基づく。上述した油圧支持システム500と同様の油圧支持構造体を、例えば表面形状要素について可変体積と油圧支持チャネルとの間の流体連通を制御する個別に制御可能なバルブを使用することによって、この目的のために適合させることができる。
本明細書に記載された多態性表面システム、特に油圧支持システムに結合された多態性表面システムは、成型作業のために適したものとすることができる。コントローラは、多態性表面が所望の表面起伏形状を取るように、表面形状要素の動きを指令することができ、この多態性表面を、型穴の全てまたは一部として機能させることができる。この工程を容易にし、かつ成型される材料の表面要素形状間での漏れを防止するために、多態性表面は、さらに、弾性表面層を含むものであってもよい。弾性表面層は、成型される材料に対して不浸透性の弾性かつ柔軟な材料からなり、表面形状要素上に広がるものである。この表面層は、表面形状要素に固定されるものであってもよい。図13には、表面形状要素108上に広がる弾性表面層1372を備えた例示的な多態性表面システム100が示されている。弾性表面層1372は、表面形状要素108のヘッド部124に固定されている。本明細書に記載された多態性表面システムを成型作業の応用例で使用する場合、表面形状要素のヘッド部は、表面形状要素(特に、その本体部)への熱伝導を制限し、それによって消磁及び他の損傷を防止するために、絶縁材料から形成されるか、または、絶縁層もしくは絶縁キャップ部を備えることが好ましい。
本明細書に記載された多態性表面システムは、「中空の」表面形状要素を備えることによって、成型作業への応用例にさらに適したものとすることができる。「中空の」表面形状要素は、材料を型穴内に供給するために、表面形状要素を通じて形成されたそれぞれの内腔部を有するものである。有効には、多態性表面システムは、射出要素として機能するように構成された表面形状要素の配列であってもよい。必ずしも全ての表面要素がそれを通じて形成された内腔部を有していなくともよい。幾つかの実施形態において、表面形状要素の部分集合のみが、内腔部を有するものであってもよい。
図12Aから図12Cには、第2の例示的な多態性表面システム12108が、第2の例示的な油圧支持システム12500及びガイド構造体104のそれぞれの一部12500P及び104Pと関連させて示されている。図12Aから図12Cに示すガイド構造体104は、上述したガイド構造体104と同一であるため、同じ参照番号が付されている。
図12Aから図12Cに示す第2の例示的な多態性表面システム12108は、上述した第1の例示的な多態性表面システム108と同様のものであり、同様の特徴を示すために、追加の接頭文字「12」を除いて同様の参照番号が使用される。図12Aから図12Cに示す第2の例示的な表面形状要素12108は、射出要素として機能するために適している点で、第1の例示的な表面形状要素108と異なっている。表面形状要素12108を通じて、その長手方向に円筒状の内腔部1202(図12B)が延びている。表面形状要素12108は、油圧プラグを含まないか、または環状の油圧プラグを含んでおり、内腔部1202を塞がないように構成される。他の実施形態において、内腔部は、円筒形以外の他の適切な形状を有するものであってもよい。
第2の例示的な油圧支持システム12500も、第1の例示的な油圧支持システム500と同様のものであり、同様の特徴を示すために、追加の接頭文字「12」を除いて同様の参照番号が使用される。第2の例示的な油圧支持システム12500は、射出システムに適合するように変更されている点で、第1の例示的な油圧支持システム500と異なっている。
第2の例示的な油圧支持システム12500のそれぞれの円錐形のバルブ部材12580から、針状の射出部1204(図12B)が延びている。射出部1204は、円錐形のバルブ部材12580と同軸に配置され、それぞれのバルブ開口部12576及び油圧支持チャネル12512を通じて表面形状要素12108の内腔部1202内へと、バルブ部材12580の上方に延びている。射出部1204は、表面形状要素12108の内腔部1202内に滑動自在かつ密封的に受け入れられるサイズ及び形状に構成される。このため、射出部1204の直径は、油圧支持チャネル512の直径よりも小さくなければならない。したがって、射出部1204の外面と油圧支持チャネル512の内面との間に、環状間隙1206(図12B)が存在し、表面形状要素12108の本体部の一部が、環状間隙1206内に滑動自在かつ密封的に受け入れられる。
環状間隙1206は、可変体積12586と流体連通しており、これによって、バルブブロック12578を支持ブロック12504に向かうように動かすと、可変体積12586が低減し、可変体積12596内に収容されていた流体が、強制的に環状間隙1206内に移動する。図12Aから図12Cに示すように、バルブブロック12578が支持ブロック12504に係合すると、バルブ部材12580は、バルブ開口部12576に係合してコーンバルブ12582を閉止し、流体を環状間隙1206内に閉じ込めて、表面形状要素12108が支持されることになる。バルブブロック12578が支持ブロック12504から離れるように動くと、コーンバルブ12582は開放されて、流体が環状間隙1206から逃げることが可能となり、表面形状要素12108は、自由に動くように解放される。
射出部1204は、射出部1204を通じて長手方向に延びる射出用内腔部1208(図12B)を有している。射出用内腔部1208は、円錐形のバルブ部材12580を通じてバルブブロック12578内へと、下方にも延びている。そして、射出用内腔部1208は、バルブブロック12578内に形成された流体配管網1210と流体連通する。これによって、様々な流体を、バルブブロック12578、円錐形のバルブ部材12580、及び射出用内腔部1208を通じて表面形状要素12108の内腔部1202へ、そして、流体開口部1212を通じて表面形状要素12108のヘッド部12124へ、ポンプで汲み上げることができる。
ここで、流体配管網1210、射出用内腔部1208、及び表面形状要素12108の内腔部1202は、可変体積12586と流体連通しておらず、また、射出部1204と油圧支持チャネル12512の間の環状間隙1206と流体連通していないことに留意されたい。したがって、図示された実施形態において、流体配管網1210は、バルブブロック12578を通じて延び、射出用内腔部1208は、円錐形のバルブ部材12580を通じてバルブブロック12578へ延びているが、射出システムは、油圧支持システム12500とは機能的に分離及び区別される。
図示を容易にするために、唯一の例示的な射出可能な表面形状要素12108が、(射出システムに適合する)第2の例示的な油圧支持システム12500及びガイド構造体104の関連する部分12500P及び104Pとともに示されている。しかし、上記の説明から容易に分かるように、完全な油圧支持システム12500及びガイド構造体104と組み合わせて組み立てられた複数の射出可能な表面形状要素12108が、射出可能な多態性表面システムを構成するものである。
一実施形態において、2つの対向する射出可能な多態性表面システムが、所望の形状の型穴を有する型の2つの半分をなすように構成することもでき、または、単一の射出可能な多態性表面システムを、型の静的な半分またはプレートと対向するように配置することもできる。この際、射出可能な表面形状要素は、流体配管網を介して、成型される液体材料の液源と流体連通している。閉じられた対向する多態性表面によって構成された型を使用することによって、射出可能な表面形状要素の内腔部を通じて型穴内に材料を射出し、型穴を充填することができる。この種の構成は、1つの射出可能な多態性表面システムまたは型の対向する半分を構成する2つの射出可能な多態性表面システムに限定されない。多態性表面システムは、多面体の型の面を構成するように配置することもできる。したがって、物体を成型する1つの方法には、少なくとも1つの多態性表面を配置して少なくとも1つの型穴を形成すること、及び、1つまたは複数の多態性表面システムの少なくとも1つの表面形状要素を通じて形成された内腔部を通じて、材料を型穴内に射出することが含まれる。型の構成は、1つまたは複数の射出可能な多態性表面システムと、1つまたは複数の射出可能ではない多態性表面システムとを組合せてもよいものである。
同様の実施形態において、異なる射出可能な表面形状要素が、流体配管網を介して異なる材料源に流体連通状態で結合されるものであってもよい。これによって、1つまたは複数の多態性表面システムによって形成された型穴内に、様々に異なる材料を供給することが可能となる。例えば、射出可能な表面形状要素の第1のグループは、少なくとも1つの第1の材料源と流体連通し、射出可能な表面形状要素の第2のグループは、第1の材料とは異なる第2の材料の少なくとも1つの材料源と流体連通する。この構成によって、多層物体の成型が可能になる。例えば、第1の形状を有する第1の型穴を1つまたは複数の多態性表面システムによって形成し、この第1の型穴内に第1の材料を射出し、固化させる(任意選択で能動的に冷却する)ものであってもよい。そして、第2の形状を有する第2の型穴を、1つまたは複数の多態性表面システムによって形成し、この第2の型穴内に第2の材料を射出するものであってもよい。
第1の材料から形成された中間生成物は、第1の型穴を形成する第1の構成と第2の型穴を形成する第2の構成との間で1つまたは複数の多態性表面システムを移行する間、及び、第2の型穴内に第2の材料を射出する間の両方において、表面形状要素の部分集合によって所望の位置及び向きに維持されるものであってもよい。第2の材料が、中間生成物が第2の型穴内で所望の向きを維持する程度に十分に固化され、かつ表面形状要素の部分集合の後退によって形成される間隙を埋める程度にまだ十分に非粘性的であるとき、表面形状要素の部分集合を後退させることができる。任意選択で、表面形状要素の部分集合は、射出可能な表面形状要素であり、表面形状要素が後退するとき、間隙内に第2の材料を供給可能なものであってもよい。
上述した構成及び方法は、2種類の材料及び2つの一連の型穴に限定されるものではなく、必要な変更を加えて、3種類、4種類、またはより多種類の材料、及び3つ、4つ、またはより多数の一連の型穴に対して拡張することができる。また、個々の層は、先行する工程で形成された中間生成物を完全に囲い込む必要はなく、このような層は、先行する工程で形成された物体の表面の一部のみを覆うものであってもよい。例えば、金属強化材が、複数のプラスチック層の間のプラスチック部品の一部内に、またはプラスチック部品の表面上に射出されるものであってもよい。また、射出可能な表面形状要素を使用して、完成品の一部を構成することが意図されていない流体を射出するものであってもよい。例えば、表面の一部を強化するかまたは表面に構造を付与するために、まだ融けている物体の表面の一部に対して、空気または不活性ガスを射出して、表面の一部に差応力を印加するものであってもよい。さらに、幾つかの実施形態において、射出可能な表面形状要素を介して真空引きを実行するものであってもよく、これによって、適切な冷却流体を、第1の組の射出可能な表面形状要素を介して流し、第2の組の射出可能な表面形状要素を介して抜き取ることができる。射出可能な表面形状要素に対する真空の適用は、概念的には負の射出と考えることができる。
中空のまたは射出可能な表面形状要素を有する多態性表面システムは、成型作業以外のさらなる応用例において使用することもできる。このような応用例の1つは、印刷である。この応用例において、多態性の表面要素は、所望の印刷面として構成されるものであってもよく、中空の表面形状要素の内腔部を通じてインクを供給することによって、その印刷面に連続的にインクが付着されるものであってもよく、これによって、連続的にインクが付着された面が維持される。多態性表面システムを使用することにより、動的に変化可能な印刷面を提供することが可能となり、この印刷面を、オフセット印刷またはダイレクト印刷で使用することができる。中空の表面形状要素を有する多態性表面システムの他の応用例には、内腔部を介して真空引きすることができる真空成型、木材の蒸気成型、及び潤滑剤の適用が含まれる。
射出可能な多態性表面システムの別の応用例は、三次元印刷である。射出可能な表面形状要素の第1のグループを、少なくとも1つの第1の材料源と流体連通状態で結合し、表面形状要素の第2のグループを、少なくとも1つの第2の材料源と流体連通状態で結合し、等々により、2種類またはそれより多種類の材料を使用する同時三次元印刷が可能になる。
加えて、1つまたは複数の射出可能な表面形状要素に真空を適用することにより、1つまたは複数の射出可能な表面形状要素を、例えば生物学の標本採取で使用されるロボットアーマチャにおいて、1つまたは複数の標本源から流体を抜き取るために使用するものであってもよい。このような実施形態において、1つまたは複数の射出可能な表面形状要素は、適切な鋭利な針状のヘッド部を備えるものであってもよい。
さらに、本明細書に記載された多態性表面システムは、迅速なプロトタイプ製作に応用することもできる。多態性表面システムが所望の表面起伏形状を取るように、コントローラに表面形状要素の動きを指令させることによって、所望の製品またはその一部の初期試験のための一時的な模型を迅速に生成することができる。例えば、多態性表面システムが十分な解像度を有し、かつ弾性表面層を含む場合、多態性表面システムを、初期的な風洞試験のために自動車の車体形状案に適合するように構成することができる。本明細書に記載された多態性表面システムによって生成される一時的な模型は、様々な部品の相互の適合の試験のために使用されるものであってもよい。
好適な実施形態において、コントローラ122は、さらに、それぞれの表面形状要素108のそのそれぞれの空洞部112に対する直線上の位置を検出するために適している。この目的を達成するために、コントローラ122に結合されるセンサが、ガイド構造体104に組み込まれるか、または、そうでなければガイド構造体104と関連させて配置されるものであってもよい。このようなセンサは、センサの位置を通過して移動する磁界の勾配の結果として、インダクタを通じて発生する電流を測定するものであってもよい(すなわち、それぞれの表面形状要素108の本体部128は、電流を発生させる)。
図7には、例示的なソレノイドセンサ792の、それぞれの表面形状要素108に対する位置が示されている。ソレノイドセンサ792は、螺旋状の電線を含む。この電線は、それぞれの空洞部112(図7への図示は省略する)を取り囲み、かつその長手方向に沿って延びるガイド構造体104(図7への図示は省略する)中に埋め込まれており、それによって、螺旋が表面形状要素108の本体部128を緩く取り囲むように構成される。表面形状要素108の本体部128が空洞部112内で動くと、運動の方向に応じてソレノイドセンサ792内で正または負の電流が発生し、発生する電流量は、表面形状要素108の運動の速度に比例する。発生した電流は、表面形状要素108の空洞部112に対する直線上の位置を判別するために、コントローラ122によって検出及び解析することができる。
ソレノイドセンサの代わりに、受動的なマトリクス状の配列が、コントローラ122に結合され、コントローラ122がそれぞれの表面形状要素108のそのそれぞれの空洞部112に対する直線上の位置を検出することを可能にするために使用されるものであってもよい。図8には、例示的な受動マトリクスセンサ794の、それぞれの表面形状要素108に対する位置が示されている。受動マトリクスセンサ794は、導電線層796が積層されたメッシュを含む。この導電線層は、それぞれの空洞部112(図8への図示は省略する)を取り囲み、かつその長手方向に沿って延びるガイド構造体104(図8への図示は省略する)中に埋め込まれており、それによって、一連の導電線層796が表面形状要素108の本体部128を緩く取り囲むように構成される。ソレノイドセンサ792(図7)と同様に、表面形状要素108の本体部128の空洞部112内での運動は、特定の導電線層796に電流を誘導し、この電流を、コントローラ122(図8への図示は省略する)によって検出することができる。
但し、ソレノイドセンサ792のように、それぞれの表面形状要素108の運動が個別に検出される代わりに、受動的なマトリクス状の配列では、それぞれの導電性層796の開始位置及び終了位置における電流を測定することによって、全ての表面形状要素108の運動が同時に検出される。コントローラ122は、それぞれの表面形状要素108の速度及び位置を数学的に決定するための行列解法アルゴリズムが実装されているものであってもよい。
他の実施形態において、それぞれの表面形状要素108のそのそれぞれの空洞部112に対する直線上の位置は、レーザー測距または音響測距の使用により、表面形状要素108の下端部(すなわち、ヘッド部124とは反対側の端部)からの反射を検出することで、検出されるものであってもよい。
本明細書に記載された多態性表面システムが、表面形状要素の運動を検出するためのソレノイドセンサ792または受動マトリクスセンサ794のようなセンサを含んでいる場合、コントローラは、さらに、滑り直線運動の予想される速度と滑り直線運動の実際の速度とを比較することによって、個々の表面形状要素の滑り直線運動の抵抗を検出するために適しているものであってもよい。これによって、本明細書に記載された多態性表面システムを、物体の表面起伏形状を測定する測定装置として使用することが可能となる。コントローラが表面形状要素を後退させ(すなわち、表面形状要素のヘッド部がガイド構造体に可能な限り近接するように配置し)、測定対象の物体は、後退した表面形状要素によって形成された多態性表面上に配置されるものであってもよい。次いで、コントローラは、表面形状要素を伸長させる(すなわち、表面形状要素のヘッド部がガイド構造体から離れるように移動させる)ものであってもよい。表面形状要素が測定対象の物体の表面に係合すると、物体の物理的抵抗のため、表面形状要素の運動の速度が低下する。この検出された運動速度の低下は、コントローラによって物体の存在の指標として検出され、それによって物体の表面起伏形状の地図を作製することができる。
一実施形態において、表面形状要素108のコア136(図2B及び図2D)が磁性または着磁性の場合、コントローラ122は、受動測定モードで機能し、それぞれの表面形状要素108の外力の下での運動によってそれぞれの回路セグメント152に誘導される電流を検出するために適しているものであってもよい。このような実施形態において、多態性表面システムは、物体の表面起伏形状を測定するために使用されるものであってもよい。例えば、図5Aから図5F、及び図6Aから図6Cに示す構成において、油圧支持システム500は、多態性表面120が図示されるように略平面状になるように、表面形状要素108を支持するものであってもよい。次いで、測定対象の物体が多態性表面120上に配置されるものであってもよく、物体の質量によって幾つかの表面形状要素108がバルブブロック578に向かって移動し、多態性表面120が測定対象の物体の形状を取ることになる。表面形状要素108が、測定対象の物体の形状に応じて様々な距離だけ移動する結果、それぞれの回路セグメント152(図3D)を通過して様々な電流が誘導される。そして、これらの電流は、コントローラ122によって検出され、物体の表面の多態性表面120に係合している部分の三次元模型が生成されるものであってもよい。
物体の表面起伏形状を測定することに加えて、多態性表面システムは、物体の表面の機械的特性の試験を実行するために適するものであってもよい。これを達成するために、表面形状要素108が物体の表面に対抗するように駆動され、表面形状要素108によって印加される力と、センサ要素によって与えられる表面形状要素108の移動(位置)とを関連付けることによって、衝突の効果が測定されるものであってもよい。一実施形態において、表面形状要素108を試験対象の物体と接触するように配置し、移動を測定しながら一定の力を印加するか、または、逆に、印加される力を測定しながら一定の速度での移動を達成するものであってもよい。所定の表面形状要素108によって発生する力は、その表面形状要素108の1つまたは複数の導電経路132を通じて流れる電流の関数であり、それぞれの表面形状要素108の位置は、適切なセンサ構成(例えば、上述したようなセンサ構成)によって判別することができる。加えて、表面の特性の測定値が、表面形状要素108を、測定対象の物体の表面に対抗させて、それらの間に衝突が発生するように駆動することによって取得されるものであってもよい。表面形状要素108を、測定対象の物体の表面と接触及び離隔するように、振動数を変動させながらまたは表面形状要素108が物体の表面と衝突するときの速度を変動させながら、振動または脈動させることによって、表面の、(剪断速度に依存する)非ニュートン的特性も判別することができる。
図14Aから図14Oには、表面多態性システムの第3の例示的な実施形態が示されている。多態性表面システムは、全体として14100の参照番号で示される。図14Aから図14Oに示す第3の例示的な多態性表面システム14100は、第1の多態性表面システム100と同様に機能する。すなわち、磁界と相互作用する電流によって、表面形状要素14108の案内された実質的に直線状の運動を駆動するローレンツ力が発生する。したがって、追加の接頭文字「14」を除いて、対応する参照番号は、対応する特徴を示している。さらに、第3の例示的な多態性表面システム14100の表面形状要素14108は、ヘッド部が無く、六角形の面冠部1424に旋回自在に結合されている。図14Lから図14Oに示すように、面冠部1424は、協働して多態性表面14120を構成する。図14Aから図14Fには、第3の例示的な多態性表面システム14100の、3つの表面形状要素14108を含む部分と、ガイド構造体14104の一部14140Pが示されている。図14Gから図14Iには、例示的な表面形状要素14108が示され、図14Jから図14Lには、面冠部1424が示され、図14Mから図14Nには、多態性表面システム14100の全体が示されている。
図14Aから図14D、及び図14Fに示すように、3つの表面形状要素14108は、それぞれの面冠部1424に結合されている。それぞれの表面形状要素14108は、単一の面冠部1424のみに結合される。それぞれの表面形状要素14108が単一の面冠部1424のみに結合されているため、それぞれの面冠部1424の範囲は3つの表面形状要素14108を覆うものであるけれども、それぞれの面冠部1424の位置及び向きを、他のそれぞれの面冠部1424の位置及び向きとは独立に設定することができる。
表面形状要素14108は、それぞれの表面形状要素14108が、ヘッド部124の代わりに、球体1428で終端する角(つの)形上端部1426を有する点を除いて、第1の実施形態における表面形状要素108と同様のものである。それぞれの面冠部1424は、正六角形の形状を有し、略平面状の上面1416を有し、その下面1446に半径方向に配列された3つの部分環状溝1442を有する。部分環状溝1442は、120度の間隔を置いて配置されている。それぞれの球体1428は、それぞれ1つの部分環状溝1442に滑動自在に受け入れられ、これによって、部分環状溝1442に沿って滑動可能であるとともに、部分環状溝1442内で旋回可能である。このように、それぞれの表面形状要素14108の角形上端部1426と球体1428との組み合わせは、ボールスタッドを形成し、それぞれの部分環状溝1442と協働して、滑動する玉継ぎ手を形成する。
それぞれの面冠部1424の垂直位置は、その面冠部1424が結合される3つの表面形状要素14108の平均の垂直位置によって定まる。それぞれの面冠部1424の向きは、その面冠部1424が結合される3つの表面形状要素14108の垂直位置の間の相対的な差によって定まる。表面形状要素14108を面冠部1424に形成された部分環状溝1442内で滑動させることによって、表面形状要素14108を面冠部1424に結合する代わりに、表面形状要素は、弾性変形可能な膜によって面冠部に結合されるものであってもよい。
図15Aから図15Jには、全体として15100の参照番号で示された第4の例示的な多態性表面システムが示されている。第4の例示的な多態性表面システム15100は、全体的な構造において、第1の多態性表面システム100と同様のものである。したがって、追加の接頭文字「15」を除いて、対応する参照番号は、対応する特徴を示している。第1の多態性表面システム100と同様に、第4の例示的な多態性表面システム15100は、磁界と相互作用する電流によって、表面形状要素15108の案内された実質的に直線状の運動を駆動するローレンツ力が発生するように、機能する。但し、第4の例示的な多態性表面システム15100の、ローレンツ力を発生させるために使用される構造は、後述するように、第1の多態性表面システム100の対応する構造とは異なっている。図15Aから図15Fには、多態性表面システム15100の全体が示されている。第4の例示的な多態性表面システム15100の、単一の表面形状要素15108とガイド構造体15104の一部15104Pとを含む部分の詳細は、図15Gから図15Jに示されている。
第4の例示的な多態性表面システム15100は、ガイド構造体15104と、複数の表面形状要素15108を含む。ガイド構造体15104は、ガイド構造体内に形成された複数の個別の空洞部15112を含む。それぞれの表面形状要素15108は、それぞれの空洞内15112内での案内された略直線状の往復運動(図中、矢印Sで示される)のために、それぞれ1つの個別の空洞部15112内に滑動自在に受け入れられる。それぞれの表面形状要素15108は、それぞれの磁界を発生させるものである。その磁界の方向は、矢印Mで示されている。例えば、表面形状要素15108は、磁界Mを発生する適切な着磁された強磁性材料から形成されるか、またはそれを含むものであってもよい。
電気回路のそれぞれの回路セグメント15152が、それぞれの空洞部15112を横切るように延びている。図示された実施形態において、それぞれの回路セグメントは、第1側電気接点15114、第2側電気接点15148、及び、空洞部15112を横切って延びる少なくとも1つの導電性架橋路15132を含む。導電性架橋路15132は、第1側電気接点15144と第2側電気接点15148とが互いに導通するように接続する。したがって、第1側電気接点15144、空洞部15112内の導電性架橋路15132、及び第2側電気接点15148は、協働して回路セグメント15152を構成する。電気回路は、さらに、コントローラ15122を含んでいる。コントローラ15122は、回路セグメントを個別に指定して、1つまたは複数の選択的された回路セグメント15152に選択的に電流を通電するか、または、1つまたは複数の選択された回路セグメント152から選択的に電流を除去するために適している。
図15Jに示すように、図示された実施形態において、回路セグメント15152を通じて流れる電流(矢印Iで示される)は、空洞部15112を横切る磁界Mに略直交し、また、表面形状要素15108のそれぞれの空洞部15112内での直線状の往復滑り運動Sにも略直交する。図15Gにおいて、磁界Mは紙面に直交し、図15Hにおいて、電流Iは紙面に直交する。選択された1つの回路セグメント15152に電流を通電すると、通電された電流Iは、回路セグメント15152を通じて流れ、それぞれの空洞部15112を横切るそれぞれの磁界Mと相互作用して、それぞれの表面形状要素15108の空洞部15112内での案内された略直線状の運動Sを駆動するローレンツ力が発生する。表面形状要素15108の滑り直線運動の方向は、電流Iの方向によって定まる。したがって、電流Iは、両方向矢印として示されている。
図15Iに詳細に示すように、現時点で好適な実施形態において、それぞれの表面形状要素15108は、着磁された強磁性体のコア15136を含む。コア15136は、絶縁保護層15140によって取り囲まれており、絶縁保護層15140は、好ましくは、低摩擦材料である。同様に、ガイド構造体15104の空洞部15112の壁は、適切な低摩擦材料でコーティングされているものであってもよい。
第4の例示的な多態性表面システム15100は、例えば、非限定的な例として、油圧支持システム及び/または補助支持システムと組み合わせることによって、または、面冠部を使用することによって、または、射出機能または弾性表面層を付加することによって、変更され、本明細書に記載された他の構造または配置構成と統合されるものであってもよい。
図示し、かつ上述したような種類の多態性表面システムを複数個含んだ集合的多態性表面構成も考えられる。集合的多態性表面構成において、それぞれの多態性表面システムは、それぞれの個別のリニアアクチュエータによって支持され、このリニアアクチュエータによって、多態性表面システムの全体が、個々の表面形状要素の運動とは独立に、かつ集合的多態性表面構成中の他の多態性表面システムとは独立に、略直線状に移動するものであってもよい。好適な実施形態において、多態性表面システム及びそのそれぞれの個別のリニアアクチュエータは、多態性表面システムの略直線状の運動が、それぞれのリニアアクチュエータによって駆動されたときに、表面形状要素の略直線状の運動と平行となるように構成される。リニアアクチュエータは、本明細書に記載された原理に従って構築されるローレンツ力アクチュエータであってもよく、または、従来のソレノイドアクチュエータもしくはモーター付き歯車駆動式アクチュエータであってもよい。図16Aから図16Cには、第1の例示的な多態性表面システム100を含むアセンブリ1600が、例示的な油圧支持システム500と組み合わせて示されており、アセンブリ1600は、リニアアクチュエータ1602によって支持されている。
複数のリニアアクチュエータ、したがってそれによって支持された複数の多態性表面システム100は、整列して配置されるものであってもよい。したがって、集合的多態性表面構成は、個々の直線運動可能な多態性表面システム100の配列からなるものであってもよい。この際、多態性表面システム100の直線運動は、互いに平行であり、かつ表面形状要素108の直線運動に平行である。
集合的多態性表面構成の使用によって、個別の多態性表面システム100と比べて、拡張された表面起伏形状の範囲を提供することが可能となる。単一の多態性表面システム100の表面起伏形状の範囲は、個々の表面形状要素108の運動の範囲によって制限され、起伏形状の変動がこの範囲を超える表面を正確にモデル化することはできない。集合的多態性表面構成を使用することによって、リニアアクチュエータを、より大きなまたはより全般的な表面起伏形状の位置調整のために使用し、一方、表面形状要素108を、より小さなまたはより精細な表面起伏形状の位置調整のために使用することができるため、この制限が除かれるものである。
特定の実施形態において、本明細書に記載された多態性表面システム及び集合的多態性表面構成は、色を付加することによって拡張されるものであってもよい。このような実施形態の最も簡単な例として、表面形状要素108のヘッド部124上に画像を投影する適切なプロジェクタが配置されるものであってもよい。この投影は、Folmer 等著、”inFORM: Dynamic Physical Affordances and Constraints through Shape and Object Actuation” (2013年10月8〜11日開催の UIST’13, The 26th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology で提出された論文)、(2014年)CHI’14 に記載されている方法と同様の方法で実施される。
別の実施形態において、表面形状要素は、適切な透明材料(例えば、適切なガラスまたはプラスチック)から形成され、かつ、表面形状要素のヘッド部に到達する光を除いて実質的に内部全反射が達成されるように構成され、それによって、それぞれの表面形状要素が、光ファイバーケーブルと同様に、導光体として機能するものであってもよい。発光装置(例えば、発光ダイオードまたはレーザー)の配列を、表面形状要素に光を供給するように配置することができる。例えば、発光装置の配列は、多態性表面システムのガイド構造体の下方に配置されるものであってもよい。そして、透明な表面形状要素は、供給された光を表面形状要素のヘッド部に伝播し、これによって、表面形状要素のヘッド部上に画像が生成される。表面形状要素の所望の屈折率は、材料の選択によって、または、表面形状要素の縁部を適切な反射クラッド層でコーティングすることによって、実現することができる。後者の場合、クラッド層の外側に、薄い高透磁性層に沿って導電層が配置される。
図17には、第5の例示的な多態性表面システム17100及び関連する油圧支持システムのそれぞれの一部17104P、17500Pが示されている。多態性表面システム17100及び油圧支持システム17500は、第1の例示的な多態性表面システム100及び油圧支持システム500と同様のものであり、接頭文字「17」を除いて同様の参照番号は、同様の特徴を示している。第5の例示的な多態性表面システム17100及び関連する油圧支持システム17500は、表面形状要素17108を通じてその上面17116へ光を伝播するために適している点で、第1の例示的な多態性表面システム100及び油圧支持システム500と異なっている。光源(ブロック1700として模式的に示される)は、バルブブロック17578中の穴部1704を通じて延びる光ファイバー1702に結合され、油圧支持チャネル17512を通じて表面形状要素17108の下端部に光が伝播される。油圧支持チャネル17512の内面には、油圧支持チャネルに沿った光の伝播を促進するために、反射材料がコーティングされるものであってもよい。使用される油圧流体は、適切な屈折率を有するように選択される。
表面形状要素17108は、十分な内部反射(好ましくは、実質的に全反射)を実現する透明材料を含み、これによって、表面形状要素17108の下端部で受け取られた光は、表面形状要素17108の上面17116に伝播され、上面17116上で見えることになる。したがって、表面形状要素17108の上面17116は、画素として機能するものであり、それぞれの表面形状要素に様々に異なる色の光を伝播することによって、表面形状要素によって構成される多態性表面上に画像を表示することができる。それぞれの表面形状要素17108の上面17116は、色に加えて、X、Y、及びZの位置を有しているため、上面17116は、ボクセルと考えることができ、上面への配色を使用して三次元画像を生成するために使用することができる。例えば、第5の例示的な多態性表面システムは、色付きの起伏形状の地図を表示するために使用されるものであってもよい。他の実施形態において、油圧支持システムと関連しない多態性表面システムが、表面形状要素を通じてその上面へ光を伝播させるために適しているものであってもよい。
多態性表面システムのコントローラ(例えば、コントローラ122、15122)は、例えば、適切にプログラムされたコンピュータもしくはマイクロコントローラ、または、他の適切な装置、または、適切にプログラムされたコンピュータとマイクロコントローラもしくは他の適切な装置との組合せであってもよい。例えば、多態性表面システムは、プラグラムされたコンピュータと通信可能に結合されたマイクロコントローラを含むものであってもよい。したがって、本明細書に記載された多態性表面システムは、コンピュータによって生成された指示に対して応答して、コンピュータシステムに保存されるかまたはコンピュータシステムによって生成された三次元情報を表す起伏形状を生成するものであってもよい。このコンピュータシステムは、コントローラの役割を果たすものであってもよく、またはコントローラと通信するものであってもよい。
図9に、本明細書に記載された多態性表面システムと関連させて実現されるコンピュータシステムの例が、ブロック図として示されている。図示されたコンピュータシステムは、全体として参照番号900で示されており、ディスプレイ902、キーボート904A及びポインティングデバイス904Bである入力装置、コンピュータ906、並びに、コンピュータ906に結合された外部装置908を含む。コンピュータ906に結合された外部装置908のうちの1つには、上述したように、多態性表面システム100と油圧指示システム500とが、組合せとして、含まれる。ポインティングデバイス904Bはマウスとして描かれているが、他の種類のポインティングデバスが使用されるものであってもよい。一実施形態において、本明細書に記載された多態性表面システムが入力デバイスとして使用されるものであってもよい。例えば、幾つかの実施形態において、多態性表面システムは、動的に適合可能なキーボード及び/またはポインティングデバイスとして機能するものであってもよい。単一のコンピュータシステムに対して複数の多態性表面システムが結合されるものであってもよい。
コンピュータ906は、例えば中央処理装置(CPU)910のような1つまたは複数のプロセッサまたはマイクロプロセッサを含むものであってもよい。CPU910は、算術計算を実行し、内部記憶装置912に保存されたソフトウェアを実行する機能を制御する。内部記憶装置は、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)及び/またはリードオンリーメモリ(ROM)であり、追加の記憶装置の場合もある914。追加の記憶装置914は、例えば、マスメモリストレージ、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ(CD及びDVDを含む)、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ(LTO、DLT、DAT、及びDCCを含む)、フラッシュドライブ、プログラムカートリッジ及びビデオゲーム装置が備えるようなカートリッジインタフェース、EPROMまたはPROMのような取り外し可能なメモリチップ、ホログラフィックストレージのような新たなストレージメディア、または、同様の周知のストレージメディアを含むものであってもよい。追加の記憶装置914は、コンピュータ906の物理的な内部に存在するものであってもよく、または、図9に示すように外部にあるものであってもよく、または両方であってもよい。
コンピュータシステム900は、コンピュータプログラムまたは他の指令がロードされることを可能にする他の同様の手段を含むものであってもよい。このような手段は、例えば、コンピュータシステム900と外部システム及びネットワークとの間でソフトウェアおよびデータが送信されることを可能にする通信インタフェース916を含むものであってもよい。通信インタフェース916の例は、モデム、イーサネット(登録商標)カードのようなネットワークインタフェース、無線通信インタフェース、または、シリアル通信ポートもしくはパラレル通信ポートを含むものであってもよい。通信インタフェースを介して送信されるソフトウェア及びデータは、信号の形をとるものであり、その信号は、電子信号、音響信号、電磁信号、光信号、または通信インタフェース916によって受信可能な他の信号であってもよい。一実施形態において、第1のコンピュータシステムに結合された第1の多態性表面装置で受信された入力は、適切なネットワークを介して第2のコンピュータシステムに送信され、第2のコンピュータシステムに結合された第2の多態性表面装置で表示されるものであってもよい。このような通信は、双方向であってもよく、また、例えば、遠隔医療を容易にするために使用されるものであってもよい。
コンピュータ906の入出力は、入出力(I/O)インタフェース918によって管理される。このI/Oインタフェース918は、ディスプレイ902、キーボード904A、多態性表面システム100と油圧支持システム500との組み合わせを含む外部装置908、及び、コンピュータシステム900の他のこのような構成要素の制御を管理する。コンピュータ906は、グラフィック処理装置(GPU)920も含んでいる。GPUは、算術計算の計算目的のために、CPU910の補助として、または、CPU910の代わりに、使用されるものであってもよい。
コンピュータシステム900の様々な構成要素は、直接的に、または適切なバスに結合することによって、互いに結合されている。
本明細書において、「コンピュータシステム」という用語は、何らかの特定の種類のコンピュータシステムに限定されず、サーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォンのようなネットワーク化された移動無線通信コンピュータ装置、タブレットコンピュータ、及び、他の種類のコンピュータシステムを含むものである。
本明細書に記載された装置は、表面起伏形状を動的に形成する方法を例示的かつ非限定的に実現するものである。この方法は、複数の移動可能な表面形状要素を横切るように少なくとも1つの磁界を印加するステップと、選択された表面形状要素の近傍の1つまたは複数の磁界を横切るように電流を選択的に通過させるステップと、を含む。この際、電流は、1つまたは複数の磁界に略直交する。この結果、それぞれの選択された表面形状要素について、電流は、磁界と相互作用し、それぞれの表面形状要素案内された略直線状の運動を駆動するローレンツ力が発生する。特定の実施形態において、それぞれの選択された表面形状要素の案内された略直線状の運動は、1つまたは複数の磁界と選択された表面形状要素を横切る電流の両方に略直交する。好ましくは、表面形状要素は、個別に移動可能であり、かつ、移動を発生させる電流を通電するために個別に選択可能である。この方法は、さらに、電流を除去した後に、表面形状要素を定位置に支持するステップを含むものであってもよい。この方法は、さらに、選択された表面形状要素の案内された略直線状の運動の移動量を制御するために、それぞれの選択された表面形状要素を横切って通電される電流を制御するステップを含むものであってもよい。
この方法の幾つかの実施形態、例えば、この方法の第1の例示的な多態性表面システム100を使用した実施形態において、単一の磁界が存在するものであってもよい。第1の例示的な多態性表面システム100において、選択された個々の表面形状要素の近傍の磁界を横切るように電流を選択的に通過させるステップは、それぞれの表面形状要素108上のそれぞれの導電経路132によって、選択された表面形状要素を横切るように選択的に電流を通電することによって達成される。したがって、図1Aから図4Bは、上述した方法の1つの実施形態を示すものである。
この方法の他の実施形態、例えば、この方法の第4の例示的な多態性表面システム15100を使用した実施形態において、複数の個別の磁界が存在するものであってもよい。この際、それぞれの個別の磁界は、それぞれの表面形状要素によって発生する。第4の例示的な多態性表面システム15100において、導電架橋路15132によって、選択された個々の表面形状要素を通過させて電流を伝達することにより、電流は、選択された個別の表面形状要素の近傍の磁界を横切るように選択的に通過する。したがって、図15Aから図15Jは、上述した方法の別の実施形態を示すものである。
別の方法において、複数の個別の移動可能表面形状要素に一定の電流を通電し、磁界は、選択された表面形状要素を横切るように選択的に印加されるものであってもよい。この際、磁界は、好ましくは、電流の方向に略直交し、これによって、それぞれの選択された表面形状要素について、電流と磁界が相互作用して、それぞれの表面形状要素の案内された略直線状の運動を駆動する力が発生する。それぞれの表面形状要素の案内された略直線状の運動は、好ましくは、磁界と電界の両方に略直交する。
図18には、表面起伏形状を動的に形成するための別の方法1800を示すフローチャートである。ステップ1802において、少なくとも1つの電流が、複数の移動可能な表面形状要素を横切るように通電される。全ての表面形状要素を横切るように、単一の電流が通電されるものであってもよい。代わりに、それぞれの個別の表面形状要素または表面形状要素のグループは、独立した電流を受け取るものであってもよい。ステップ1804において、少なくとも1つの磁界が、選択された表面形状要素を横切るように選択的に印加される。これによって、それぞれの表面形状要素について、電流が磁界と相互作用して、それぞれの表面形状要素の案内された略直線状の運動を駆動するローレンツ力が発生する。
これは、例えば、特定の表面形状要素を横切る電流を変動させてその差動を生成する間に、全ての表面形状要素に対して単一の磁界を選択的に印加することによって達成されるものであってもよい。あるいは、個々の表面形状要素または表面形状要素のグループに対して異なる磁界を、差動を生成するために磁界の強さを変動させて印加する間に、表面形状要素を横切るように一定の電流を通過させることによって達成されるものであってもよい。好ましくは、図18に示す方法1800において、電流は、少なくとも1つの磁界に直交し、それぞれの表面形状要素の略直線状の運動は、少なくとも1つの磁界と電流の両方に略直交する。1つまたは複数の磁界を印加するために、1つまたは複数の電磁石が使用されるものであってもよい。一実施形態において、電磁石は、ガイド構造体中の、表面形状要素が受け入れられるそれぞれの空洞部の近傍に埋め込まれた個別のコイルを含むものであってもよい。
図19は、方法1800を実施するために使用することができる第6の例示的な多態性表面システム19100の一部を示す等角図である。第6の例示的な多態性表面システム19100は、ガイド構造体と複数の表面形状要素108を含む。ガイド構造体は、ガイド構造体中に形成された複数の個別の空洞部19112を有している。第6の例示的な多態性表面システム19100で使用される表面形状要素108は、第1の例示的な多態性表面システム100で使用される表面形状要素108と同一のものであるため、同一の参照番号が付されている。それぞれの表面形状要素108は、それぞれの個別の空洞部19112内に受けいれられ、空洞部19112内で略直線状の往復運動をするものである。図19に示す第6の例示的な多態性表面システム19100の一部は、図示を簡単にするために、2つの表面形状要素108及び2つの空洞部19112を含んでいる。それぞれの空洞部19112には電気接点が関連付けられている。それぞれの空洞部について、電気接点は、第1側電気接点19144及び第2側電気接点19148を含む。他の実施形態において、それぞれの空洞部は、複数の第1側電気接点及び/または複数の第2側電気接点を有するものであってもよい。第1側電気接点19144は、空洞部内の表面形状要素108を除いて、第2側電気接点19148から電気的に絶縁されている。空洞部内の表面形状要素108は、それぞれの表面形状要素108のそれぞれの空洞部19112内での略直線状の往復運動の範囲にわたって、第1側電気接点19144と第2側電気接点1917との間の導通を維持する。
第1側電気接点19144、空洞部19112内のそれぞれの表面形状要素108、第2側電気接点19148は、協働して空洞部19122を横切る電気回路の回路セグメントを構成する。ガイド構造体19105中の空洞部19122の近傍には、電磁コイル1902が埋め込まれており、この電磁コイルは、それぞれの空洞部19112を横切る磁界を印加するように配置される。例えば、電磁コイル1902は、空洞部19112の近傍のスロット部内に配置され、適切な絶縁エポキシを使用して定位置に密封されるものであってもよい。図19に模式的に示すように、電磁コイル1902にはコントローラ19122が結合され、このコントローラ19122は、電磁コイル1902を励磁するために、電磁コイル1902を指定して、1つまたは複数の選択された電磁コイル1902に選択的に電流を通電する、及び、1つまたは複数の選択された電磁コイル1902から選択的に電流を除去するために適しており、これによって、それぞれの空洞部19112を横切る磁界が発生する。
表面形状要素108を横切る電流は、それぞれの空洞部19112を横切るように印加された磁界と相互作用して、それぞれの表面形状要素108のそれぞれの空洞部19112内での略直線状の運動を駆動するローレンツ力が発生する。好適な実施形態において、コントローラ19122は、それぞれの表面形状要素108を個別に制御するために、それぞれの電磁コイル1902を個別に指定可能なものである。他の実施形態において、コントローラ19122は、電磁コイル1902のグループを指定して、表面形状要素108のグループを制御するものであってもよい。コントローラ19122は、電流の大きさ及び/または電流の持続時間を制御することによって、それぞれの電磁コイル190に通電される電流を制御するものであってもよく、それによって、磁界の大きさ及び/または持続時間を制御するものであってもよい。任意選択で、コントローラ19122は、さらに、回路セグメント19152に通電される電流を変動させるために、回路セグメント19152に結合されるものであってもよい(図19への図示は省略する)。
以上、例示によって、現時点で好適な特定の実施形態を説明した。請求項の範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変更が可能なことは、当業者には明らかである。