JP2017507056A - 車両を移動させるための球状ホイールおよびそのホイールを使用する車両 - Google Patents

車両を移動させるための球状ホイールおよびそのホイールを使用する車両 Download PDF

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Abstract

本発明は、車両を移動させるための球状ホイールおよびそのホイールを使用する車両に関する。ホイール10は、2つのキャップ(15、16)を含み、これらのキャップの面は、ホイール(10)の球面に合わされ、キャップ(15、16)はそれぞれ、ピボットリンク(19、20)を用いて、シャフトに対して関節式に結合される。ホイール(10)は、各キャップ(15、16)の開口にそれぞれ配置された2つのキャスタ(28、29)をさらに含み、その開口は、対応するピボットリンク(19、20)の軸(21、22)を中心とし、各キャスタ(28、29)は、該当するキャップ(15、16)のピボットリンク(19、20)の拡張部に配置される。各キャスタ(28、29)は、球面の位置で転動するのを保証する。各キャップ(15、16)の開口の半径Sと、対応するキャスタ(28、29)のrとは、ホイール(10)が、開口の縁部でキャップ(15、16)に接する地面に支持される状態から、対応するキャスタ(28、29)で地面に支持される状態に移るときに、キャップ(15、16)および対応するキャスタ(28、29)を駆動するのに必要とされる力を概ねバランスさせるように規定される。

Description

本発明は、車両を移動させるための球状ホイールおよびそのホイールを使用する車両に関する。
従来から、4輪車両は、車両が方向を変えることを可能にする方向性ホイールを装備している。ホイールは、ピボットリンクを用いて車両に連結され、方向性ホイールの場合、さらなる回転自由度が追加される。方向性ホイールが駆動ホイールの場合、自在継ぎ手により、ピボットリンクの軸の向きの調整を可能にしながら、ホイールを駆動することが可能になる。このタイプの構成は、回転半径を短くすることができない。言い換えると、速度をもたずに定位置で車両を旋回させることができない。
さらに、それぞれがそれ自体を中心として旋回できる球状ホイールを有する車両を製作しようとする試みがなされてきた。そのような製作物の例が、特開2007−210576号公報として公開された特許出願に記載されている。この文献は、2つの半球体を含むホイールについて説明している。ホイールは、2つの半球体を支持する支持体を回転駆動する水平モータシャフトによって駆動される。2つの半球体は、それぞれピボットリンクを介して支持体に取り付けられる。2つのピボットリンクは一列に整列する。これらの共通軸は、モータシャフトの回転軸に対して直角をなす。ロボットなどの車両は、文献、特開2007−210576号公報に記載されているように4つのホイールを装備することができる。この場合に、4つのホイールのモータシャフトの軸は、互いに直角に配置される。この場合に、ホイールは、対で一列に整列する。第1の対の2つのホイールを駆動することで、そのホイール対の共通軸に対して直角な方向に車両を移動させることが可能になる。第2のホイール対の場合、半球体は、ピボットリンクのまわりに自由に回転する。第2の対のホイールを駆動することで、ロボットは、直角な方向に移動する。移動を組み合わせることも当然可能である。これは、車両が、任意の方向に移動すること、およびそれ自体を中心として回転することさえ可能にする。
ホイールの駆動シャフトは、2つの半球体間に位置するホイールの赤道面に沿ってホイールに貫入する。赤道面は、地球と同様に定義される。この平面は、北半球および南半球にたとえることができる2つの半球体に分割する。モータシャフトは、それ自体を最小直径にする特定の剛性を有さなければならない。したがって、2つの半球体は、少なくともこの直径だけ離れる。実際には、半球体がモータシャフトに擦れるのを防止する機能的遊びが、シャフトの直径に加えられなければならない。したがって、それぞれ平面によって範囲を定められた2つの半球体が得られる。2つの半球体の平面は、これ以上短縮すれば、モータシャフトの剛性を損なう危険性がある距離だけ離れて平行に配置される。
ホイールの赤道面が、水平と想定される地面に対して垂直位置をとると、地面に接するホイールの支持部の切れ目が出現する。より具体的には、ホイールが駆動ホイールの場合、ホイールの赤道面は、各ホイール回転で地面と接するようになり、結果として、地面が、1つ半球体から他方への、したがって、1つの半球体の平面から他方への移行部を支持することになる。この切れ目を通る移行において、グリップの低下が生じ、ホイールが瞬間的に球形でなくなり、高速において、各移行で騒音が発生する。
2012年4月30日に出願された、本出願人による仏国特許出願第12−53981号明細書では、文献、特開2007−210576号公報に記載されたものに近い別の球形ホイールが提案された。この別の球形ホイールは、2つの半球体の範囲を定める平面を交差させることで、ホイールの赤道面を通る移行における切れ目という欠点を軽減する。実際には、「半球体」という用語は、もはや使用することができず、各面をホイールの球面に合わせた2つのホイール要素を規定する「キャップ」という用語に置き換えられる。「キャップ」は、ピボットリンクを用いて、ホイールのモータシャフトに対してそれぞれ関節式に連結される。2つのキャップは、平面によってそれぞれ範囲を定められ、2つの平面は交差する。言い換えると、2つのピボットリンクはもはや一列に整列しない。
これらの2つの実施例は、ピボットリンクの1つの軸が、地面に対して直角をなす場合に特異性を示す。この構成では、ホイールを使用する車両が、該当するホイールの駆動軸に対して直角でない速度ベクトルを有する場合、ホイールは、地面との接触点でスリップする。このスリップを回避するために、各キャップ(または半球体)は、該当するキャップのピボットリンクの拡張部に配置され、球面上で転動することを保証するキャスタを含む。キャスタは、ホイールの駆動軸に対して垂直な軸のまわりの回転自由度を有する。この回転動作は、特異性構成のホイールのスリップを回避するのに十分である。キャスタはそれぞれ、ホイールの球面に合わせた転動線を有する。
文献、特開2007−210576号公報および仏国特許出願第12−53981号明細書の両方において、キャスタは、キャップ面をホイールに対して可能な限り広く保つために、可能な限り小さくなっている。実際上、ホイールは、そのキャップの面で地面に接触している場合のみ駆動ホイールであり得る。したがって、キャスタの大きさを最大限まで小さくする、特に、それぞれのキャスタが通るのを可能にするように各キャップに形成された円形開口を可能な限り小さくすることへの誘因がある。
本出願人が社内で行った試験により、特異点を通る移行時に、該当するキャップの回転速度がきわめて大きく変化することが実証され、これは、キャップの慣性に起因する欠点をもたらす。より具体的には、車両の線速度が一定の場合、地面と接触するキャップの回転速度は、キャップの回転が、キャップの範囲を定める平面の位置で行われる場合の最小値から、キャップの回転が、キャスタを通すために形成された開口の縁部の位置で行われる場合の最大値まで変化し得る。やはり車両の線速度が一定の場合に、地面と接触する様々な段階、すなわち、
・キャップの範囲を定める平面で地面と接触することと、
・開口の縁部を通って移行することと、
・キャスタで転動することと、
・再度開口の縁部を通って移行することと、
・最終的に、キャップの範囲を定める平面に戻ることと、
を互いにつなぐシーケンスを有することが可能である。
特開2007−210576号公報 仏国特許出願第12−53981号明細書
開口の縁部を通る最初の移行時に、ピボットリンクのまわりのキャップの回転速度は、ある方向をとり、この方向は、地面に接するキャップの摩擦を回避するために、開口の縁部を通る第2の移行の瞬間に転換されなければならない。キャップの慣性は、この回転方向の転換を妨害し得る。この妨害は、開孔の大きさが小さい場合にさらに大きくなり、その理由は、キャップが高い回転速度に達するからである。この妨害は、車両の線速度が上がるにつれてさらに増幅される。実際には、線速度の上昇は、キャップの回転速度を上げ、特異点の周辺での回転速度の方向転換に利用できる時間を短くすることにつながる。キャップに対するこれらの急な速度変化は、キャスタに関して、大きな運動エネルギの入力を必要とし、ホイールと地面との間に摩擦を発生させる危険性をもたらすことがある。
本発明の目的は、特異点の周辺でキャップの回転速度を下げることである。このために、本発明の対象は、車両を移動させるための半径Rの球状ホイールであって、このホイールは、軸のまわりに回転できるシャフトによって回転駆動され、ホイールは、2つのキャップを含み、キャップの表面は、ホイールの球面に合わされ、それぞれが平面によって範囲を定められ、キャップはそれぞれ、ピボットリンクを用いて、該当するキャップの平面に直角な軸を中心として、シャフトに対して関節式に連結され、ホイールは、それぞれが各キャップの開口に配置された2つのキャスタをさらに含み、この開口は円形であり、対応するピボットリンクの軸を中心とし、各キャスタは、該当するキャップのピボットリンクの拡張部に配置され、各キャスタは、シャフトの軸に対して直角な軸のまわりに自由に回転し、各キャスタは、球面の位置での転動を保証する、ホイールにおいて、各キャップの開口は、ピボットリンクの軸を中心とした半径Sを有することと、各キャップの開口の半径Sと、対応するキャスタのrとは、ホイールが、開口の縁部でキャップに接する地面に支持される状態から、対応するキャスタで地面に支持される状態に移るときに、キャップおよび対応するキャスタを駆動するのに必要とされる力を概ねバランスさせるように規定されることとを特徴とする。
キャスタの転動線は、球状ホイールの中心を中心とした扇角をとる。この扇角は有利にも35°よりも大きい。
本発明の別の対象は、本発明によるホイールを少なくとも3つ含む車両である。少なくとも2つのホイールのシャフトの軸は一列に整列しない。
本出願人が社内で行った他の試験から、特異点を通る移行時において、車両の線速度が同じ場合に、小径のキャスタの方が、キャスタの角速度を上げることが実証された。キャスタは駆動されず、キャスタの回転軸のまわりに自由であるので、車両の動作により、キャスタを駆動しなければならない。特異点を通る移行時に、キャスタは、ゼロ速度からかなりの速度に移行しなければならない。キャスタの慣性に起因して、キャスタと地面との間に摩擦が発生し得る。さらに、キャスタの回転速度の急な変化は、ホイールの地面との接触部が、キャップからキャスタに移る瞬間に、きわめて短時間での運動エネルギの入力を再度必要とする。このエネルギの入力は、車両の動作に加加速度を発生させ得る。
運動エネルギは、キャスタの回転速度の2乗で決まるので、本発明は、有利にも、キャスタを駆動するのに必要な運動エネルギを低減することができるキャスタの直径の拡大によって、このエネルギ入力を減らすことを目標とする。当然ながら、本発明は、キャスタの回転駆動で発生し得る摩擦の発生する危険性を軽減することを可能にする。本発明は、高い車両速度において非常に有用である。
このため、キャスタのそれぞれの軸を中心とする各キャスタの大きい方の半径rは、球状ホイールの半径Rの1/4よりも大きい。キャスタの半径rに関するこの特徴は、上記に規定し、キャスタがとる扇角が35°未満であっても、すでに利益をもたらす。
例として示した実施形態の詳細な説明を読んだときに、本発明がより深く理解され、他の利点が明らかになるであろう。説明は添付図面によって図解される。
本発明による第1の変形型球状ホイールを示している。 本発明による第1の変形型球状ホイールを示している。 本発明による第2の変形型球状ホイールを示している。 図1および図2のホイールを部分断面図で示している。 図1および図2のホイールの別の外面図を示している。 図1および図2のホイールを斜視図および部分断面図で示している。 複数の、図1および図2のホイールを装備した車両の例を示している。
明確にするために、様々な図において、同じ要素には同じ参照符号が付いている。
図1および図2は、車両11を移動させるための半径Rの球状ホイール10を示している。図1は側面図であり、図2は斜視図である。ホイール10は、シャフト12によって回転駆動される。車両11は、そのシェルで示され、シャフト12は、ピボットリンク13によってシェルに連結されている。シャフト12の回転軸には参照符号14が付いている。
ホイール10は、2つのキャップ15、16を含み、キャップ15、16の外側面は、ホイール10の球面に合わされている。キャップ15は、平面17によって範囲を定められ、キャップ16は、平面18によって範囲を定められている。キャップ15、16は、それぞれピボットリンク19、20を用いて、シャフト12に対してそれぞれ関節式に連結されている。ピボットリンク19の軸21は、キャップ15の平面17に対して直角をなし、ピボットリンク20の軸22は、キャップ16の平面18に対して直角をなしている。2つのピボットリンク19、20は、それぞれのキャップ内に配置され、後で詳述される。
異なるキャップ15、16を製造することが可能であるが、キャップ15、16は同一であり、シャフト12に関して対称に配置されるのが有利である。言い換えると、平面17、18は、シャフト12の軸14との交点23を有する線に沿って交差する。この構成では、2つのピボットリンク19、20の軸21、22は交差し、それらの間にゼロでない角度をなす。
ホイール10は、図1および図2で参照符号25が付いた地面を転動することを意図されている。2つのキャップ15、またはキャップ16の一方は、地面25と接触する。シャフト12がホイール10を駆動するときに、ホイール10は、ホイール10の球面の円周26によって地面25との接触を維持する。この動作では、車両は、軸14と円周26を包含する平面との間の交点27で軸14に直角な速度ベクトルを有する。地点26に作用する車両11の速度ベクトルが軸14に対して直角でない場合、地面と接触しているキャップは、そのピボットリンクのまわりに自由回転をし始める。
言い換えると、地面25と接触しているキャップは、2つの動作、すなわち、軸14のまわりの第1の駆動回転と、そのピボットリンクの軸のまわりの第2の回転とによって駆動することができる。2つの回転は、当然、地点26での車両の速度ベクトルの方向に応じて組み合わせることができる。
図3は、車両11から出たシャフト12によって回転駆動される変形型の球状ホイール30を示している。ホイール30は、2つのキャップ31、32を含み、キャップ31、32の面は、ホイール30の球面に合わされている。キャップ31は、平面33によって範囲を定められ、キャップ32は、平面34によって範囲を定められている。ホイール10と異なり、平面33、34は互いに平行であり、シャフト12の軸14に平行である。この変形型では、軸12は、地面25が平坦であると想定して、地面25に平行である。
ホイール10、30の動作において、地面25と接触しているキャップ、図1ではキャップ16、または図3ではキャップ32のそれぞれの平面18、34が水平な場合に特異点が出現する。
この構成では、図1の車両が、地点27に作用する、軸14に対して直角でないベクトルを有する場合に、キャップ16は、ピボットリンク20のまわりに回転することができず、地面25上でスリップする。スリップを回避するために、ホイール10は、2つのキャスタ28、29を含み、キャスタは、各キャップに対応している。各キャスタは、該当するキャップのピボットリンクの拡張部に配置され、ホイール10の球面での転動を保証する。より具体的には、キャップ15は、キャスタ28を装備し、キャップ16はキャスタ29を装備している。キャスタ28、29は、軸14に対して垂直な軸のまわりの回転において、1自由度を有することができる。この回転動作は、特異性構成のホイールのスリップを回避するのに十分である。キャスタはそれぞれ、ホイール10の球面に合わせた転動線を有する。
同じことが2つのキャスタ37、38を含むホイール30にも適用され、キャスタは、それぞれ各キャップ31、32に対応している。
以降では、図1および図3に示す変形型ホイール10に関連して説明する。提示される特徴は、ホイール30にも当てはまる。
図4は、2つのキャスタ28、29の回転軸を包含する平面におけるホイール10を断面図で示している。キャップ15だけが切断されている。ホイール10は、シャフト12に固定された支持体40を含む。支持体40は、シャフト12と共に、回転軸14のまわりに回転する。
ピボットリンク19は、支持体40とキャップ15とを連結している。ピボットリンク19は、ベアリング42によって形成されている。同様に、図4では見えないピボットリンク20は、支持体40とキャップ16とを連結する。当然ながら、ホイール10に求められる剛性に応じて、各キャップに対して複数のベアリングを使用することが可能である。この実施形態では、ベアリング42は、支持体40とキャップ15との間に挟まれたスペーサ43を用いて形成されている。スペーサ43は、例えば、低い摩擦係数を得ることを可能にする材料で形成される。例えば、ポリテトラフルオロエチレンを使用することが可能である。2つのピボットリンク19、20は、有利にも同一である。ベアリングの他の実施形態が可能である。例えば、ピボットリンク19、20の回転における抵抗トルクを制限する転がりベアリングを使用することが可能である。
ピボットリンク44は、支持体40を介してキャスタ28とシャフト12とを連結している。ピボットリンク44は、キャスタ28が軸47のまわりを自由回転することを可能にする。ピボットリンク44は、例えば、支持体40によって2つの端部で支持されたシャフト45を用いて形成される。キャスタ28は、シャフト45によって貫通されている。キャスタ28は、シャフト45に対して自由回転する。シャフト45とキャスタ28との間にブッシュを配置することができる。スペーサ43と同様に、ブッシュは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの摩擦係数が低い材料で形成することができる。
同様に、ピボットリンク44と同じであり、図4では見えないピボットリンク48は、支持体40を介してキャスタ29とシャフト12とを連結する。このピボットリンクは、キャスタ29が軸49のまわりを自由回転することを可能にする。
キャスタ28、29は、図4に見ることができるそれぞれの転動線51、52が、ホイール10の球面形状に合うように樽形状とされる。転動線51、52は、キャスタ28またはキャスタ29の面に形成された曲線であり、軸14から最も遠い曲線である。キャスタ上で、転動線は、キャスタの回転に応じてキャスタの面を移動する。キャスタの転動線は、ホイール10の球面に形成された円部分である。転動線51は、キャップ15の範囲を定める平面17に対して直角な平面に位置する。同様に、転動線52は、キャップ16の範囲を定める平面18に対して直角な平面に位置する。
図5は、ホイール10の図を示しており、この図では、キャスタの一方、例えば、キャスタ28が中心である。キャスタ28は、キャップ15に形成され、軸21が中心である円形開口54内に見られる。各キャップの開口は、対応するピボットリンクの軸を中心とした半径Sを有する。
地面に接するホイール10の支持部が、キャップ15からキャスタ28に移り、最終的にキャップ15に戻る場合のキャップ15の急な速度変化を回避するために、転動線51の長さ、ひいては、開口54の直径Sを拡大する。各キャスタ28、29の転動線51、または転動線52は、球状ホイールの中心を中心とする扇角βをとる。有利には、扇角βは、35°よりも大きい。社内での試験から、最適な扇角値は、45°〜50°にあることが分かった。構造によっては、最大扇角130°を実現することも可能である。確保される値は、様々な可動部品の慣性と、これらの様々な部品間の摩擦とによって決まる。
各キャスタ28、29のそれぞれの軸47、49を中心とした最大半径はrで示されている。キャスタ28、29の回転速度を制限するために、キャスタ28、29の半径rを大きくすることが可能である。社内試験から、各キャスタ28、29の半径rが、球状ホイール10の半径Rの1/4よりも大きい場合に、キャスタの速度の減速がすでに顕著であると分かった。
シャフト12および支持体40の特定の構成を用いて、半径rを球状ホイール10の半径Rの半分にすることが可能である。この場合に、シャフト12は、球の中心に達しない端部を有する。半径rが半径Rの半分である構成では、2つのキャスタ28、29は接触する。これは、地面25と接触するキャスタの慣性を大きくすることを可能にする。より具体的には、キャスタの一方が地面と接触すると、そのキャスタの回転により、他方のキャスタが駆動される。得られる慣性は、1つだけのキャスタの慣性と比較して概ね2倍である。
半径r、R間の割合の他の中間値も想定することができる。半径rが球の半径Rの1/4であることで、キャスタの回転速度の減速に関してすでに有利であるが、各キャスタ28、29のそれぞれの軸47、49を中心とした最大半径rが、半径Rの1/3よりも大きい場合に、キャスタの回転速度の減速に関して特に有利である。
当然ながら、球状ホイール30のキャスタ27、38に対して、この同じ構造を実現することも可能である。
キャスタの半径rおよびキャスタの転動線がとる扇角βは、互いに独立して最適化することができる。さらに、開口54の半径Sは、キャスタとその開口との間の機能的な遊びを最大限まで小さくするために、扇角βに対応している。ホイール10が、キャップがキャップの開口の縁部で地面に支持される状態から、対応するキャスタで地面に支持される状態に移る場合、およびその逆の場合に、キャップおよび対応するキャスタを駆動するのに必要とされる力をバランスさせることは有益である。これは、シャフト12に作用する、ひいては、ホイール10を装備した車両に作用する加加速度に反映される力の変化などの、移行の瞬間におけるホイール10と地面との間の力の急な変化を回避することを可能にする。
材料が選択されると、力のバランス取りが、主に、開口の半径Sと対応するキャスタの半径rの相対寸法を用いてなされる。より簡潔には、各キャップの開口の半径Sと対応するキャスタのrとは、ホイールが、開口の縁部でキャップに接する地面に支持される状態から、対応するキャスタで地面に支持される状態に移るときに、キャップおよび対応するキャスタを駆動するのに必要とされる力を概ねバランスさせるように規定される。
各キャップに対して、該当するキャップとシャフト12との間のピボットリンクの位置での、より具体的には、支持体40での摩擦トルクCfを規定することが可能である。同様に、各キャスタに対して、シャフト12に対するキャスタの自由回転における摩擦トルクCfを規定することが可能である。
2つのピボットリンク19、44またはピボットリンク20、48による摩擦力を静的にバランスさせることは有益である。静的バランスは、以下の等式に概ね従うように、キャップの開口の半径Sと対応するキャスタのrとを規定することによって得られる。
Cf/S=Cf/r
さらに、力を動的にバランスさせることは有益である。この力は、キャップおよび対応するキャスタの慣性によって決まる。これらの2つの慣性は、キャップおよび対応するキャスタの材料および寸法によって決まる。キャップおよびキャスタは、ホイールが、開口の縁部でキャップと接する地面に支持される状態から、キャスタで地面に支持される状態に移るときに、キャップおよび対応するキャスタの運動エネルギを概ねバランスさせるように規定される。
より具体的には、各キャップに対して、該当するキャップとシャフトとの間のピボットリンクの軸のまわりの慣性モーメントIが規定される。各キャスタに対して、ホイール10の駆動シャフト12に対するキャスタの自由回転における軸のまわりの慣性モーメントIが規定される。キャップ15、16およびキャスタ28、29の寸法および材料は、以下の等式
Figure 2017507056
に概ね従うように規定され、
ωは、ホイールが、開口の縁部でキャップに接する地面に支持されている場合のキャップの回転速度を表し、ωは、ホイールが、開口の縁部でキャップに接する地面に支持される状態から、キャスタで地面に支持される状態に移った場合のキャスタの回転速度を表す。
有利にも、ホイールは、各キャスタに対応し、支持体40を介してシャフト12に固定された2つのカバー56を含む。図5および図6は、キャスタ28に対応した2つのカバー56を示している。カバー56はそれぞれ、平面17に平行な平たい三日月の形態を有する。カバー56は、開口54からキャスタ28を部分的に囲む。カバー56は共に、転動線51に関して対称に延びている。カバー56は、支持体40に固定されている。カバー56は、小片が、開口54を通ってホイール10内に侵入するのを制限することを可能にする。それでもなお、キャップ15が、カバー56と擦れることなく、ピボットリンク19のまわりに回転するのを可能にするために、機能的遊びが、カバー56とキャップ15との間に設けられている。
図7は、本発明によるホイール10を装備した車両11を示している。この車両は、例えば、ロボットである。4つ以上のホイールを含む車両に本発明を適用することも可能である。例えば、4つのホイールを有する車両の場合、対向するホイールの軸は、水平な地面に対して垂直な同じ平面に置かれ、したがって、2対のホイールが形成される。2対のホイールの軸を包含する平面は直角をなす。より一般的には、少なくとも2つのホイールのシャフトの軸は、同じ平面に配置されず、これは、適切な制御装置を用いて、車両のホイール10を地面25に接した状態に維持することで、車両がすべての方向に移動するのを可能にする。

Claims (12)

  1. 車両(11)を移動させるための半径Rの球状ホイール(10、30)であって、軸(14)のまわりに回転できるシャフト(12)によって回転駆動され、2つのキャップ(15、16;31、32)を含み、前記キャップの表面は、前記ホイール(10、30)の球面に合わされ、それぞれが平面(17、18;33、34)によって範囲を定められ、前記キャップ(15、16;31、32)はそれぞれ、ピボットリンク(19、20)を用いて、前記シャフト(12)に対して、該当する前記キャップ(15、16;31、32)の前記平面(17、18;33、34)に対して直角な軸(21、22)を中心として関節式に連結され、前記ホイール(10、30)は、それぞれが各前記キャップ(15、16;31、32)の開口(54)に配置された2つのキャスタ(28、29;37、38)をさらに含み、前記開口(54)は円形であり、前記対応するピボットリンク(19、20)の前記軸(21、22)を中心とし、各キャスタ(28、29;37、38)は、該当する前記キャップ(15、16;31、32)の前記ピボットリンク(19、20)の拡張部に配置され、各キャスタ(28、29;37、38)は、前記シャフト(12)の前記軸(14)に対して直角な軸(47、49)のまわりに自由回転し、各キャスタ(28、29;37、38)は、前記球面の位置での転動を保証する、ホイール(10、30)において、各キャップ(15、16;31、32)の前記開口(54)は、前記ピボットリンク(19、20)の前記軸(21、22)を中心とした半径Sを有することと、各キャップ(15、16;31、32)の前記開口(54)の前記半径Sと、前記対応するキャスタ(28、29;37、38)のrとは、前記ホイール(10、30)が、前記開口(54)の縁部でキャップ(15、16;31、32)に接する地面に支持される状態から、前記対応するキャスタ(28、29;37、38)で前記地面に支持される状態に移るときに、キャップ(15、16;31、32)および前記対応するキャスタ(28、29;37、38)を駆動するのに必要とされる力を概ねバランスさせるように規定されることと、を特徴とするホイール。
  2. 前記キャスタ(28、29;37、38)の転動線(51、52)は、前記球状ホイール(10、30)の中心を中心とする扇角(β)をとることと、前記扇角(β)は35°よりも大きいこととを特徴とする、請求項1に記載のホイール。
  3. 前記扇角(β)は、125°未満であることを特徴とする、請求項2に記載のホイール。
  4. 前記扇角(β)は、45°〜50°であることを特徴とする、請求項2または3に記載のホイール。
  5. 各前記キャスタ(28、29;37、38)のそれぞれの軸(47、49)を中心とする大きい方の半径rは、前記球状ホイール(10、30)の前記半径Rの1/4よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホイール。
  6. 各前記キャスタ(28、29;37、38)のそれぞれの軸(47、49)を中心とする大きい方の半径rは、前記球状ホイール(10、30)の前記半径Rの1/3よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載のホイール。
  7. 各前記キャスタ(28、29;37、38)のそれぞれの軸(47、49)を中心とする大きい方の半径rは、前記球状ホイール(10、30)の前記半径Rの半分であることを特徴とする、請求項6に記載のホイール。
  8. 各キャップ(15、16;31、32)に対して、該当する前記キャップ(15、16;31、32)と前記シャフト(12)との間のピボットリンク(19、20)の位置で摩擦トルクCfが規定されることと、各キャスタ(28、29;37、38)に対して、前記シャフト(12)に対する前記キャスタの自由回転における摩擦トルクCfが規定されることと、以下の等式
    Cf/S=Cf/r
    に概ね従うように、前記キャップ(15、16;31、32)の前記開口(54)の半径Sおよび前記キャスタ(28、29;37、38)のrが規定されることと、を特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のホイール。
  9. 前記キャップ(15、16;31、32)および前記キャスタ(28、29;37、38)は、前記ホイール(10、30)が、前記開口(54)の前記縁部で前記キャップ(15、16;31、32)に接する地面に支持される状態から、前記キャスタ(28、29;37、38)で前記地面に支持される状態に移るときに、キャップ(15、16;31、32)および前記対応するキャスタ(28、29;37、38)の運動エネルギを概ねバランスさせるように規定されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のホイール。
  10. 各キャップ(15、16;31、32)に対して、該当する前記キャップ(15、16;31、32)と前記シャフト(12)と間のピボットリンクの軸のまわりの慣性モーメントIが規定されることと、各キャスタ(28、29;37、38)に対して、前記シャフト(12)に対する前記キャスタの自由回転における前記軸(47、49)のまわりの慣性モーメントIが規定されることと、前記キャップ(15、16;31、32)および前記キャスタ(28、29;37、38)の寸法および材料は、以下の等式
    Figure 2017507056
    に概ね従うように規定され、
    ωは、前記ホイールが、前記開口(54)の前記縁部で前記キャップ(15、16;31、32)に接する前記地面に支持されている場合の前記キャップの回転速度を示し、
    ωは、前記ホイールが、前記開口(54)の前記縁部で前記キャップ(15、16;31、32)に接する地面に支持される状態から、前記キャスタ(28、29;37、38)で前記地面に支持される状態に移るときの前記キャスタ(28、29;37、38)の回転速度を示すことと、を特徴とする、請求項9に記載のホイール。
  11. 各キャスタ(28、29;37、38)に対応し、前記シャフト(12)に固定された2つのカバー(56)を含むことと、前記カバー(56)は、前記キャスタ(28、29;37、38)が貫通して配置された前記開口(54)の位置で、前記キャップ(15、16;31、32)の前記球面の延長部に侵入して、球面の一部を形成することと、前記カバー(56)は、前記開口(54)から前記キャスタ(28、29;37、38)を部分的に囲むことと、前記カバー(56)は共に、該当する前記キャスタ(28、29;37、38)の転動線(51、52)に関して対称に延びることと、を特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のホイール。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のホイール(10、30)を少なくとも3つ含むことと、少なくとも2つのホイール(10)の前記シャフト(12)の前記軸(14)は、同じ平面に配置されないことと、を特徴とする車両。
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