本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
図1は、その検討に使用した電子装置の分解斜視図である。
この電子装置1は、スマートフォン等で使用されるものであって、配線基板2と電子部品3とを有する。
電子部品3は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)等のように使用時に発熱する半導体部品であって、複数のはんだバンプ6を介して配線基板2に実装される。
また、その電子部品3の上面には放熱シート4が設けられており、その放熱シート4の上にヒートスプレッダ5が密着する。
このような構成によれば、電子部品3で発生した熱が放熱シート4を介して速やかにヒートスプレッダ5に伝わり、電子部品3の冷却を促すことができる。
特に、放熱シート4としてカーボンナノチューブのシートを利用すると、カーボンナノチューブが有する高い熱伝導度によって、電子部品3を効率的に冷却することができる。
そこで、以下に、カーボンナノチューブの放熱シート4を利用した場合における電子装置の製造方法について説明する。
図2〜図5は、調査に使用した電子装置の製造途中の断面図である。
まず、図2(a)に示すように、表面に不図示の酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板10を用意し、その酸化シリコン膜の上にスパッタ法で不図示の触媒金属膜を形成する。そして、カーボンナノチューブ用の成長炉にシリコン基板10を入れた後、触媒金属膜の上にホットフィラメントCVD(Chemical Vapor Deposition)法で複数のカーボンナノチューブ11を成長させることで、複数のカーボンナノチューブ11を備えた放熱シート4を得る。
次に、図2(b)に示すように、自然長よりも伸展されたゴムシート13を用意する。そのゴムシート13の材料としては、例えばシリコーンゴム、天然ゴム、及び合成ゴムがある。
そして、不図示のZステージの上に放熱シート4を載せた後、そのZステージを上昇させることにより、Zステージの上方に配されたゴムシート13に放熱シート4を密着させる。その後に、ローラ12等により放熱シート4にゴムシート13を押し当てる。
これにより、ゴムシート13の粘着力によって放熱シート4にゴムシート13が転写されることになる。
次いで、図3(a)に示すように、ゴムシート13が伸展された状態を保ちながら、基板10から放熱シート4を引き剥がす。
その後に、図3(b)に示すように、伸展されていたゴムシート13を自然長に戻す。これにより、ゴムシート13の収縮に追従して各カーボンナノチューブ11の間隔が狭まるため、放熱シート4におけるカーボンナノチューブ11の面密度が増加して、放熱シート4の熱伝熱性が高められる。
次に、図4(a)に示すように、熱伝導率に優れた銅等の金属製のヒートスプレッダ5を用意し、その表面に熱可塑性の樹脂16を固着する。
そして、不図示の加熱プレス機で樹脂16を加熱して軟化させながら、樹脂16に放熱シート4を圧着する。その後に、樹脂16を自然冷却して硬化させる。
続いて、図4(b)に示すように、放熱シート4からゴムシート13を引き剥がすことにより、ヒートスプレッダ5に放熱シート4を転写する。
次いで、図5(a)に示すように、表面に熱可塑性の樹脂18が固着された電子部品3を用意し、不図示の加熱プレス機で樹脂18を加熱して軟化させながら、樹脂18に放熱シート4を圧着する。
その後、図5(b)に示すように、樹脂16を自然冷却して硬化させることにより放熱シート4に電子部品3を固着する。
以上により、この例に係る電子装置が完成する。
上記した電子装置の製造方法によれば、放熱シート4は、図3(b)のようにゴムシート13に転写されたり、図4(b)のようにヒートスプレッダ5に転写された状態でないと作業者が扱うことができず、放熱シート4を単体で扱うことができない。
これでは放熱シート4の汎用性が低下してしまい、カーボンナノチューブ11が有する高い熱伝導率を活かすのが難しくなる。
以下に、カーボンナノチューブを備えた放熱シートを単体で使用することができる各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図6〜図11は、本実施形態に係る放熱シートの製造途中の断面図である。
まず、図6(a)に示すように、基板21としてシリコン基板を用意し、その基板21の表面を熱酸化することにより下地膜22として厚さが300nm程度の酸化シリコン膜を形成する。
基板21の材料はシリコンに限定されず、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ガラス、及び金属のいずれかを材料とする基板を用いてもよい。
次に、図6(b)に示すように、下地膜22の上にスパッタ法でアルミニウム膜を10nm程度の厚さに形成し、そのアルミニウム膜を下地金属膜23とする。
下地金属膜23の材料としては、アルミニウムの他に、モリブデン、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、タンタル、タングステン、銅、金、白金、パラジウム、チタンシリサイド、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び窒化チタンがある。更に、これらの材料のいずれかを含む合金膜を下地金属膜23として形成してもよい。
次いで、下地金属膜23の上にスパッタ法で鉄膜を2.5nm程度の厚さに形成し、その鉄膜を触媒金属膜24とする。
触媒金属膜24の材料は鉄に限定されない。触媒金属膜24は、鉄、コバルト、ニッケル、金、銀、白金のいずれか、又はこれらの合金から形成し得る。
更に、触媒金属膜24に代えて、触媒金属膜24と同一の材料を含む金属微粒子を下地金属膜23の上に付着させてもよい。この場合、金属微粒子は、微分型静電分級器等によって予め所定の直径のもののみが収集されて下地金属膜23の上に供給される。
続いて、図7(a)に示すように、触媒金属膜24の触媒作用を利用してホットフィラメントCVD(Chemical Vapor Deposition)法により複数のカーボンナノチューブ26を成長させる。そのカーボンナノチューブ26は、下地膜22の作用により、基板21の法線方向nに沿って直線的に成長する。
カーボンナノチューブ26の成長条件は特に限定されない。この例では、原料ガスとしてアセチレンガスとアルゴンガスとの混合ガスを用い、不図示の成長室内における原料ガスの総ガス圧力を5kPa〜10kPaとする。アセチレンガスとアルゴンガスとの分圧比は、例えば1:9程度である。また、ホットフィラメントの温度は1000℃程度であり、基板温度は620℃〜660℃程度である。
カーボンナノチューブ26の成長時間も特に限定されないが、カーボンナノチューブ6の長さが飽和する時間をかけてカーボンナノチューブ26を成長させることで、後でカーボンナノチューブ26を基板1から剥がし易くすることができる。このようにカーボンナノチューブ26の長さが飽和する時間は例えば90分であり、飽和した時点でのカーボンナノチューブ26の長さは例えば250μm程度である。
なお、下地金属膜23と触媒金属膜24は、成長室内に原料ガスが導入された際に凝縮して粒状の金属粒25となり、その金属粒25の上にのみカーボンナノチューブ6が成長する。
この成長条件によれば、カーボンナノチューブ26の面密度は約1×1011本/cm2となり、各カーボンナノチューブ26の直径は4nm〜8nmで平均直径は約6nmとなる。
なお、各カーボンナノチューブ26においては、その中心軸から外側に向かって単層のグラフェンシートが3層〜6層程度積み重なり、その層数の平均値は4層程度となる。このように多層のグラフェンシートを積層してなるカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブとも呼ばれるが、単層カーボンナノチューブを形成してもよい。
また、カーボンナノチューブ26の成膜方法は上記のホットフィラメントCVD法に限定されず、熱CVD法やリモートプラズマCVD法であってもよい。また、アセチレンに代えてメタン若しくはエチレン等の炭化水素類、又はエタノール若しくはメタノール等のアルコール類を炭素の原料としてもよい。
次に、図7(b)に示すように、各カーボンナノチューブ26の一方の端部26aの上に、自然長よりも伸展されたゴムシート30を載せる。そして、ローラ31等を用いて、各カーボンナノチューブ26にゴムシート30の表面30aを押し当てることにより、端部26aを表面30aに固着する。
そのゴムシート30の材料は特に限定されず、本工程でカーボンナノチューブ26が固着する程度の粘着力を有する任意のゴムをゴムシート30の材料として採用し得る。そのような材料としては、例えば、例えばシリコーンゴム、天然ゴム、及び合成ゴムがある。
その後に、図8(a)に示すように、伸展していたゴムシート30を自身の弾性力で弛緩させながら、基板21から各カーボンナノチューブ26を剥離する。
これにより、ゴムシート30の収縮に追従して各カーボンナノチューブ26の間隔が狭まり、カーボンナノチューブ26の密度が高められる。
ゴムシート30の収縮量も特に限定されない。この例では、本工程を行う前と比較して面積比で1/3程度となるようにゴムシート30を収縮させることにより、カーボンナノチューブ26の面密度を本工程の前の状態の3倍程度にする。
次に、図8(b)に示す工程について説明する。
まず、シリコン基板31の上にテフロン(登録商標)シート32を載せる。そして、そのテフロンシート32の上に、カーボンナノチューブ26を上にしてゴムシート30を載せる。
更に、そのカーボンナノチューブ26の他方の端部26bの上に厚さが20μm〜50μm程度の第1の樹脂フィルム33と第1の離形部材34とをこの順に載せる。
第1の離形部材34は、後で第1の樹脂フィルム33を加熱して軟化させたときにその第1の樹脂フィルム33から容易に剥離できる部材なら特に限定されず、この例ではテフロンシートを第1の離形部材34として使用する。
その第1の樹脂フィルム33の材料も特に限定されない。その材料として、本実施形態ではヘンケルジャパン株式会社製のMicromelt 6239を使用する。この材料は、融点が135℃〜145℃程度の熱可塑性樹脂である。
そして、加熱プレス機により第1の樹脂フィルム33をその融点よりも高い140℃程度に加熱する。この状態で、加熱プレス機の治具36で第1の離形部材34に160N程度の力を加え、各カーボンナノチューブ26の他方の端部26bに第1の樹脂フィルム33を固着する。なお、加熱時間は5分程度とする。
このように第1の樹脂フィルム33と治具36との間に第1の離形部材34を介在させることで、軟化した第1の樹脂フィルム33が治具36に付着するのを防止できる。
なお、第1の樹脂フィルム33とカーボンナノチューブ26は、両者が容易に剥離しない程度に互いに密着していればよく、本工程では各カーボンナノチューブ26は第1の樹脂フィルム33を貫通しない。
また、本工程で第1の樹脂フィルム33の加熱温度を高くし過ぎると、ゴムシート30が軟化して劣化するおそれがある。よって、本工程における第1の樹脂フィルム33の加熱温度は、前述のように第1の樹脂フィルム33が融け始める温度である融点とするのが好ましい。
その後に、図9(a)に示すように、加熱プレス機からゴムシート30と各カーボンナノチューブ26とを取り出し、第1の樹脂フィルム33を室温にまで自然冷却する。
そして、ゴムシート30から各カーボンナノチューブ26を剥離する。
次に、図9(b)に示す工程について説明する。
まず、シリコン基板38の上にクッション材39としてゴムシートを載せた後、カーボンナノチューブ26が上になるように第1の離形部材34をクッション材39の上に載せる。
クッション材39は、シリコン基板38の表面の凹凸を吸収することにより第1の樹脂フィルム33に均等に圧力を加えるものであり、シリコン基板38の表面に凹凸が無ければ省いても良い。
そして、カーボンナノチューブ26の一方の端部26aの上に20μm〜50μm程度の第2の樹脂フィルム41と第2の離形部材42とをこの順に載せる。
第2の樹脂フィルム41の材料は特に限定されないが、本実施形態では第1の樹脂シート33と同じ材料の熱可塑性樹脂を使用する。そのような熱可塑性樹脂としては、例えばヘンケルジャパン株式会社製のMicromelt 6239がある。
また、第2の離形部材42は、後で第2の樹脂フィルム41を加熱して軟化させたときにその第2の樹脂フィルム41から容易に剥離できる部材なら特に限定されない。この例では、第1の離形部材34と同様に、テフロンシートを第2の離形部材42として使用する。
その後、加熱プレス機により第2の樹脂フィルム41をその融点よりも高い140℃程度に加熱しながら、治具36で第2の離形部材42に上から160N程度の力を加え、カーボンナノチューブ26の一方の端部26aに第2の樹脂フィルム41を固着する。なお、加熱時間は5分程度とする
また、図8(b)の工程と同様に、本工程ではカーボンナノチューブ26から第2の樹脂フィルム41が剥離しない程度に両者が密着していればよく、各カーボンナノチューブ26は第2の樹脂フィルム41を貫通しない。
更に、第2の樹脂フィルム41と治具36との間に第2の離形部材42を介在させることで、軟化した第2の樹脂フィルム41が治具36に付着するのを防止できる。
その後に、第2の樹脂フィルム41を室温にまで自然冷却させることで、図10(a)に示すようなシート45を得る。
そのシート45は、相対する二枚の樹脂フィルム33、41と、それらの一方から他方に延びる複数のカーボンナノチューブ26とを有する。この構造によれば、複数のカーボンナノチューブ26が分散するのをこれらの樹脂フィルム33、41によって防止できる。
更に、シート45は、その両面に設けられた第1及び第2の離形部材34、42と共に積層体46を形成する。
次に、図10(b)に示す工程について説明する。
まず、第1のプレス板51と第2のプレス板52とを備えた加熱プレス機を用意する。
そして、第1のプレス板51の上に、シリコン基板53とクッション材54とをこの順に載せる。クッション材54として、シリコン基板53の表面の凹凸を吸収するゴムシートを使用する。
更に、クッション材54の上に前述の積層体46を載せ、その上にシリコン基板55と銅板56とをこの順に載せる。
そして、第1のプレス板51と第2のプレス板52で積層体46を挟むと共に、加熱プレス機で各樹脂フィルム33、41を125℃程度の温度に予備加熱する。
次に、図11(a)に示すように、加熱プレス機で各樹脂フィルム33、41を加熱して軟化させつつ、各プレス板51、52で積層体46を加圧することにより、各々の樹脂フィルム33、41の表面からカーボンナノチューブ26の端部26a、26bを露出させる。
本工程における各樹脂フィルム33、41の加熱温度は特に限定されない。但し、これらの樹脂フィルム33、41からカーボンナノチューブ26を露出させ易くするために、各樹脂フィルム33、41の粘度が最小になる温度にこれらの樹脂フィルム33、41を加熱するのが好ましい。前述のように樹脂フィルム33、41としてヘンケルジャパン株式会社製のMicromelt 6239を使用する場合、粘度が最小となる温度は190℃〜225℃程度である。
なお、温度が225℃程度のとき、そのMicromelt 6239の粘度は5.5Pa.s〜8.5Pa.s程度となる。
また、各プレス板51、52から積層体46に加える力は、各樹脂フィルム33、41からカーボンナノチューブ26が露出する程度の力であれば特に限定されず、本実施形態ではその力を150N〜250N程度とする。
そして、各樹脂フィルム33、41の加熱時間が10分を経過したところで加熱を停止し、各プレス板51、52でシート45を加圧しながら各樹脂フィルム33、41を室温にまで冷却する。
ここで、本実施形態では、第1のプレス板51と第1の樹脂フィルム33との間に第1の離形部材34が介在しているため、本工程で軟化した第1の樹脂フィルム33が第1のプレス板51に付着するのを防止できる。同様に、軟化した第2の樹脂フィルム41が第2のプレス板52に付着するのを第2の離形部材42で防止できる。
その後に、図11(b)に示すように、両端に樹脂フィルム33、41が固着したカーボンナノチューブ26を加熱プレス機から取り出す。
このとき、第1の離形部材34として使用したテフロンシートと第1の樹脂フィルム33との密着力が弱いので、第1の樹脂フィルム33から第1の離形部材34を容易に剥離することができる。これと同様の理由により、第2の離形部材42も第2の樹脂フィルム41から容易に剥離することができる。
以上により、本実施形態に係る放熱シート60の基本構造が完成する。
その放熱シート60においては、各樹脂フィルム33、41が厚さ方向に間隔をおいて設けられたと共に、それらのうちの一方から他方に複数のカーボンナノチューブ26が延びる。
そして、そのカーボンナノチューブ26の一方の端部26aが第2の樹脂フィルム41の表面から露出し、かつ他方の端部26bが第1の樹脂フィルム33の表面から露出する。
これによれば、カーボンナノチューブの各端部26a、26bが各樹脂フィルム33、41で覆われていない。そのため、各端部26a、26bをヒートスプレッダや電子部品に当接させることで、電子部品で発生した熱がヒートスプレッダに伝わるのがこれらの樹脂フィルム33、41で阻害されず、電子部品の冷却を促すことができる。
しかも、複数のカーボンナノチューブ26同士が各樹脂フィルム33、41で一体化されているため、各カーボンナノチューブ26を一体として扱うことができる。そのため、放熱シート60を単体で扱うことができ、放熱シート60の汎用性を高めることができる。
なお、各樹脂フィルム33、41の厚さzは特に限定されない。但し、カーボンナノチューブ26の長さLの半分(2/L)よりも厚さzが厚いと、各樹脂フィルム33、41同士が接触してしまい、端部26a、26bを各樹脂フィルム33、41から露出させることができない。そのため、厚さzは、カーボンナノチューブ26の長さLの半分以下とするのが好ましい。
一方、厚さzが薄すぎると、放熱シート60の剛性が不足するため、作業者が放熱シート60を扱うのが難しくなる。
また、厚さzが薄いと、図9(a)の工程でカーボンナノチューブ26をゴムシート30から剥離する際に、ゴムシート30とカーボンナノチューブ26との接着力が、第1の樹脂フィルム33とカーボンナノチューブ26との接着力より強くなる。その結果、ゴムシート30からカーボンナノチューブ26を剥離できなくなる恐れもある。
これらを避けるために、厚さzを10μm以上とするのが好ましい。
本願発明者は、この放熱シート60の熱伝導性について調査した。
図12は、その調査方法について説明する断面図である。
この調査では、CPU等の発熱源を模したヒータ61の上に銅ブロック62を設けた。
更に、その銅ブロック62とヒートスプレッダ5とで放熱シート60を挟み、この状態でヒータ61を発熱させながら、銅ブロック62とヒートスプレッダ5との温度差ΔTを測定した。
放熱シート60の熱伝導性が良いほど温度差ΔTは小さくなるので、温度差ΔTは放熱シート60の熱伝導性を推定する指標となる。
本願発明者の調査によれば、その温度差ΔTは1.8℃〜2.7℃程度となった。一方、図10のように各樹脂フィルム33、41からカーボンナノチューブ26の端部が露出していないシート45においてはその温度差Δが7.6℃であった。このことから、各樹脂フィルム33、41から端部26a、26bを露出させることが放熱シート60の熱伝導性を高めるのに有効であることが確かめられた。
また、上記の温度差ΔT(1.8℃〜2.7℃)は、グラファイトシートの温度差ΔT(9.3℃)と比較して十分に低い。よって、グラファイトよりもカーボンナノチューブの方が放熱シート60の熱伝導性を向上させるのに有効であることが明らかとなった。
更に、これとは別に放熱シート60の熱拡散率を測定したところ、その値は1.59×10-3 m2/Sとなった。グラファイトシートの厚み方向の熱拡散率はこれよりも小さい1.98×10-5 m2/S程度であるから、このことからも放熱シート60がグラファイトシートよりも優位であることが明らかとなった。
更に、インジウムよりなる放熱シートでは温度差ΔTが1.1℃程度となることから、本実施形態ではインジウムに近い熱伝導性を有する放熱シート60が得られることが明らかとなった。
次に、この放熱シート60を適用し得る様々な電子装置の例について説明する。
<第1例>
この例では、電子部品としてCPUを用い、そのCPUで発生した熱をヒートスプレッダを介して外部に放熱する場合について説明する。
図13(a)、(b)は、第1例に係る電子装置の製造途中の断面図である。
まず、図13(a)に示すように、配線基板72の上にCPU等の電子部品73を搭載してなる半導体パッケージ71を用意する。
そして、その半導体パッケージ71の上に、前述の放熱シート60とヒートスプレッダ75とをこの順に重ねる。ヒートスプレッダ75は、放熱部材の一例であって、例えば熱伝導性に優れた銅から形成される。
その後に、図13(b)に示すように、放熱シート60の一方の主面60aを電子部品73に密着させ、かつ他方の主面60bをヒートスプレッダ75に密着させる。そして、この状態で不図示の接着剤を用いて配線基板72にヒートスプレッダ75の周縁部を接着する。
このとき、前述のように各樹脂シート33、41の表面にカーボンナノチューブの各端部26a、26bが既に露出している。そのため、本工程では、各樹脂フィルム33、41を加熱して軟化することにより各樹脂フィルム33、41から各端部26、26bを露出させる必要がない。そのため、不必要に電子部品73を加熱せずに済み、電子部品73が熱でダメージを受けるのを防止できる。
以上により、本実施形態に係る電子装置70の基本構造が完成する。
その電子装置70においては、カーボンナノチューブ26の各端部26a、26bが樹脂フィルム33、41で覆われておらず、電子部品72やヒートスプレッダ75に当接している。
したがって、電子部品72の熱がカーボンナノチューブ26を介して速やかにヒートスプレッダ75に移動するようになり、電子部品72を効率的に冷却することが可能となる。
<第2例>
第1例では、電子部品73が熱でダメージを受けるのを防止するために、放熱シート60を加熱することなしに、電子部品73とヒートスプレッダ75の各々に放熱シート60を密着させた。
これと同様に、本例においても、電子部品73が熱でダメージを受けるのを防止しながら、ヒートスプレッダ75に放熱シート60を固着する。
図14〜図15は、本例に係る電子装置の製造途中の断面図である。なお、図14〜図15において、第1例で説明したのと同じ要素には第1例におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、図14(a)に示すように、第2の樹脂フィルム41が軟化する140℃程度の温度に放熱シート60を加熱する。そして、このように加熱しながら、ヒートスプレッダ75に放熱シート60を押し付けることにより、軟化した第2の樹脂フィルム41の粘着力で放熱シート60をヒートスプレッダ75に圧着する。
その後に、室温まで放熱シート60を冷却する。
次に、図14(b)に示すように、前述の半導体パッケージ71を用意し、その半導体パッケージ71の電子部品73と放熱シート60との位置合わせを行う。
続いて、図15に示すように、電子部品73に放熱シート60を密着させながら、不図示の接着剤を用いて配線基板72にヒートスプレッダ75の周縁部を接着する。
以上により、本例に係る電子装置70の基本構造が完成する。
本例によれば、図14(a)の工程で放熱シート60を加熱しながらヒートスプレッダ75に圧着する。
このように放熱シート60を加熱しても、この段階では放熱シート60に電子部品73が固着されていないので、電子部品73が熱でダメージを受けることはない。
しかも、第2の樹脂フィルム41の粘着力でヒートスプレッダ75に放熱シート60が密着するため、カーボンナノチューブの端部20aがヒートスプレッダ75に当接した状態を維持し続けることが可能となる。
<第3例>
本例では、スマートフォン等の薄型の携帯端末に使用される電子装置について説明する。
図16〜図17は、本例に係る電子装置の製造途中の断面図である。
まず、図16(a)に示すように、互いに種類が異なる第1の半導体素子82と第2の半導体素子83とが積層された電子部品80を用意する。
この例では、第1の半導体素子82としてCPUを使用し、第1のはんだバンプ85によりその第1の半導体素子82を配線基板81に接続する。
そして、第2の半導体素子83として例えばRAM(Random Access Memory)を使用し、第1のはんだバンプ85よりも大きな第2のはんだバンプ86により第2の半導体素子82を配線基板81に接続する。
このように異種の半導体素子82、83を備えた電子部品80は、PoP(Package on Package)とも呼ばれる。
また、配線基板81の一方の主面81a側においてはこれらの半導体素子82、83が樹脂87により封止されており、他方の主面81bには外部接続端子84としてはんだバンプが接続される。
次に、図16(b)に示すように、マザーボード等の回路基板88を用意し、外部接続端子84を介して回路基板88に電子部品80を接続する。
なお、その回路基板88の主面には、後述の金属キャップを被せるための枠89が立設されている。
続いて、図17(a)に示すように、回路基板88の上方に放熱シート60と金属キャップ90とをこの順に配する。金属キャップ90は、放熱部材の一例であって、熱伝導性に優れた銅板を加工することにより形成され得る。
なお、その金属キャップ90は、外部の電磁波をシールドして電子部品80が誤動作するのを防止する電磁シールドとしても機能する。
その後に、図17(b)に示すように、回路基板88の枠89に金属キャップ90を被せることにより、放熱シート60の一方の主面60aを電子部品80に密着させ、かつ他方の主面60bを金属キャップ90に密着させる。
以上により、本例に係る電子装置92の基本構造が完成する。
その電子装置92においては、電子部品80で発生した熱が放熱シート60を介して金属キャップ90に伝わった後、不図示のヒートパイプを介してその熱が外部に放熱される。
本例に係る電子装置92においても、第1例と同様にカーボンナノチューブ26の各端部26a、26bが電子部品80や金属キャップ90に当接している。そのため、電子部品80の熱をカーボンナノチューブ26を介して速やかに金属キャップ90に伝えることができる。
更に、樹脂フィルム33、41から各端部26a、26bを露出させるためにこれらの樹脂フィルム33、41を加熱して軟化させる必要がないので、電子部品80を不必要に加熱しないで済む。
特に、スマートフォン等の薄型の電子機器では、放熱シート60の代わりにフェイズチェンジシートを使用することがある。電子機器の製造時には、そのフェイズチェンジシートを加熱して熱硬化させることにより電子部品80にフェイズチェンジシートを固着するため、電子部品80が不必要に加熱されることになる。
そのような加熱が本例では不要になることから、スマートフォン等の電子機器の製造途中で電子部品80が熱的なダメージを受けるのを防止することが可能となる。
本願発明者は、この電子装置92を実際のスマートフォンに使用し、そのスマートフォンの性能を調査した。
その調査では、スマートフォンで4k動画を撮影した。4k動画を撮影すると電子部品80の使用率が高くなり電子部品80が高温になるが、この状態が継続すると電子部品80が故障してしまう。これを避けるため、スマートフォンでは4k動画の撮影を強制的に停止させる機能がある。
撮影を開始してからこのように強制的に停止されるまでの時間が長いほど、電子部品80の冷却が促されており、電子部品80が高温になっていないということになる。
そこで、この調査では、スマートフォンで4k動画の撮影を開始してから強制的に撮影が停止されるまでの時間を調べた。
その結果、本例では撮影が停止するまでの時間は11分25秒となった。一方、放熱シート60に代えてフェイズチェンジシートを用いた場合は、その時間は11分34秒となり、本例よりも長くなった。
このことから、本例に係る放熱シート60は、フェイズチェンジシートと比較して、電子部品80の冷却を促すのに有効であることが明らかとなった。
(第2実施形態)
放熱シートは、その厚みが厚いほど下地の凹凸を吸収でき、熱抵抗を高める原因となる空気層が下地との間に形成され難くなる。
そこで、本実施形態では、以下のようにして第1実施形態よりも厚い放熱シートを作製する。
図18〜図19は、本実施形態に係る放熱シートの製造途中の断面図である。
なお、図18〜図19において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、第1実施形態の図6(a)〜図9(a)の工程を行うことにより、図18(a)に示すように、第1の樹脂フィルム33の一方の主面上に長さLが100μm〜300μm程度の複数のカーボンナノチューブ26が固着した構造を得る。
なお、第1実施形態で説明したように、その第1の樹脂フィルム33の他方の主面上には、第1の離形部材34としてテフロンシートが貼付されている。
また、この段階では、カーボンナノチューブ26は第1の樹脂フィルム33を貫通しておらず、カーボンナノチューブ26の他方の端部26bは第1の樹脂フィルム33の表面に露出していない。
次に、図18(b)に示すように、このようにカーボンナノチューブ26が固着した第1の樹脂フィルム33を二枚用意し、それらの間に第2の樹脂フィルム41を配する。
これにより、複数のカーボンナノチューブ26と複数の樹脂フィルム33、41とが交互に積層された積層体46が得られる。
そして、図19(a)に示すように、第1実施形態の図11(a)と同様に加熱プレス機で各樹脂フィルム33、41を加熱して軟化させつつ、各プレス板51、52で積層体46を加圧する。
各樹脂フィルム33、41の加熱温度は、これらの樹脂フィルム33、41の粘度が最小となる190℃〜225℃程度とする。また、各プレス板51、52から積層体46に加える力は例えば150N〜250N程度とする。
このように加熱と加圧とを行うことにより、最上層と最下層の第1の樹脂フィルム33の表面からカーボンナノチューブ26の端部26bが露出することになる。
また、積層体46の途中の高さにある第2の樹脂フィルム41においては、上下のカーボンナノチューブ26同士が当接し、これらのカーボンナノチューブ26によって熱が流れる経路が確保される。
そして、加熱時間が10分を経過したところで加熱を停止し、各プレス板51、52でシート45を加圧しながら各樹脂フィルム33、41を室温にまで冷却する。
その後に、図19(b)に示すように、樹脂フィルム33、41が固着したカーボンナノチューブ26を加熱プレス機から取り出す。
以上により、本実施形態に係る放熱シート60の基本構造が完成する。
その放熱シート60においては、複数のカーボンナノチューブ26をその長さ方向に積層したため、カーボンナノチューブ26が一層のみの第1実施形態よりも厚さTを厚くすることが可能となる。
この例では、厚さTは約250μmとなった。この厚さは、積層前のカーボンナノチューブ26の長さLを175μmとしたとき、積層前の上下のカーボンナノチューブ26の合計の厚さ(2×L)の約72%である。この程度の厚さであれば、電子部品の表面等の凹凸を放熱シート60が十分に吸収することができる。
更に、図12で説明したのと同じ方法を用いて温度差ΔTを測定したところ、この放熱シート60の温度差ΔTは2.0程度となり、第1実施形態と同程度に低い値を得ることができた。
また、この放熱シート60は、第1実施形態の図13(a)、(b)と同じ工程を行うことで電子装置に適用し得る。
図20は、放熱シート60を適用した電子装置の断面図である。なお、図20において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図20に示すように、この電子装置100においては、放熱シート60の両面がそれぞれ電子部品73とヒートスプレッダ75の各々に密着する。本例では前述のように放熱シート60の厚さTが第1実施形態よりも厚いため、放熱シート60がその厚さ方向に変形し易くなり、電子部品73やヒートスプレッダ75の各表面の凹凸に合わせて放熱シート60が変形できる。その結果、放熱シート60と電子部品73等との間に空気が介在し難くなり、その空気に起因して電子部品73とヒートスプレッダ75との間の熱抵抗が上昇するのを抑制することが可能となる。
なお、各樹脂フィルム33、41とカーボンナノチューブ26との積層方法は上記に限定されない。
以下に、その積層方法の別の例について説明する。
図21〜図23は、本実施形態の別の例に係る放熱シートの製造途中の断面図である。
なお、図21〜図23において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、図21(a)に示すように、第1実施形態で説明したシート45(図10(a)参照)の上方と下方のそれぞれに、第1の樹脂フィルム33が固着したカーボンナノチューブ26を配する。
そのカーボンナノチューブ26は第1実施形態の図6(a)〜図9(a)の工程を経ており、第1の樹脂フィルム33には第1の離形部材34としてテフロンシートが貼付されている。
一方、シート45は、第1実施形態の図6(a)〜図10(a)の工程を行うことで作製され、カーボンナノチューブ26の両端に第1の樹脂フィルム33と第2の樹脂フィルム41とが固着した状態となっている。
なお、第1実施形態ではそのシート45の両面に第1の離形部材34と第2の離形部材42とが貼付されていたが、本例ではこれらの離形部材34、42を剥離しておく。
次に、図21(b)に示すように、上記のシート45と各カーボンナノチューブ26とを積層する。これにより、複数のカーボンナノチューブ26、各樹脂フィルム33、41、及び第1の離形部材34の各々が積層された積層体46を得る。
続いて、図22に示すように、第1実施形態の図11(a)の工程と同様に加熱プレス機で各樹脂フィルム33、41を加熱して軟化させつつ、各プレス板51、52で積層体46を加圧する。
本工程における各樹脂フィルム33、41の加熱温度は、これらの樹脂フィルム33、41の粘度が最小となる190℃〜225℃程度である。また、各プレス板51、52から積層体46に加える力は例えば150N〜250N程度である。
このように加熱と加圧とを行うことにより、最上層と最下層の第1の樹脂フィルム33の表面からカーボンナノチューブ26の端部26bが露出することになる。
また、積層体46の途中の高さにおける第1の樹脂フィルム33と第2の樹脂フィルム41においては、上下のカーボンナノチューブ26同士が当接し、これらのカーボンナノチューブ26によって熱が流れる経路が確保される。
そして、加熱時間が10分を経過したところで加熱を停止し、各プレス板51、52でシート45を加圧しながら各樹脂フィルム33、41を室温にまで冷却する。
その後に、図23に示すように、樹脂フィルム33、41が固着した三層構造のカーボンナノチューブ26を加熱プレス機から取り出す。
以上により、本例に係る放熱シート60の基本構造が完成する。
上記した本例によれば、放熱シート60におけるカーボンナノチューブ26の積層数が三層となるため、図19(b)のように積層数が二層の場合と比較して放熱シート60の厚さTを更に厚くできる。
(第3実施形態)
第1実施形態と第2実施形態では、第1の離形部材34と第2の離形部材42としてテフロンシートを使用した。
本実施形態では、以下のようにテフロンシート以外の材料をこれらの離形部材34、42として使用する。
図24〜図27は、本実施形態に係る放熱シートの製造途中の断面図である。
まず、第1実施形態の図6(a)〜図10(a)の工程を行うことにより、図24(a)に示すシート45を得る。
シート45は、前述のようにカーボンナノチューブ26の両端に第1の樹脂フィルム33と第2の樹脂フィルム41とを固着してなり、これらの樹脂フィルム33、41の各々には第1の離形部材34と第2の離形部材42とが貼付されている。
次いで、図24(b)に示すように、シート45からこれらの離形部材34、42を剥離する。
次に、図25に示す工程について説明する。
まず、ゴムシート等のクッション材54の表面に、液状の離型剤を塗布し、それを乾燥させて第3の離形部材110とする。そのような液状の離形材としては、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製のLOCTITE FREKOTE 55-NCがある。
これと同様に、シリコン基板55の表面にも前述のLOCTITE FREKOTE 55-NCを塗布した後、それを乾燥することにより第4の離形部材111を形成する。
その後に、各離形部材110、111の間に前述のシート45を配することにより、そのシート45と各離形部材110、111とを積層してなる積層体46を得る。
次に、図26に示すように、各プレス板51、52で積層体46を加熱しながら加圧することにより、各々の樹脂フィルム33、41の表面からカーボンナノチューブ26の端部26a、26bを露出させる。なお、本工程における加熱と加圧の各条件は第1実施形態と同じであり、加熱温度は190℃〜225℃程度とし、各プレス板51、52から積層体46に加える力は150N〜250N程度とする。
その後に、図27に示すように、両端に樹脂フィルム33、41が固着したカーボンナノチューブ26を加熱プレス機から取り出す。
以上により、本実施形態に係る放熱シート60の基本構造が完成する。
上記した本実施形態においても、図26の工程で第1のプレス板51と第1の樹脂フィルム33との間に第3の離形部材110を介在させたため、加熱により軟化した第1の樹脂フィルム33が第1のプレス板51に付着するのを防止できる。同様に、軟化した第2の樹脂フィルム41が第2のプレス板52に付着するのを第4の離形部材111で防止できる。
(第4実施形態)
第1実施形態では、図7(b)〜図8(a)に示したように、自然長よりも伸展されたゴムシート30を弛緩することにより、カーボンナノチューブ26の密度を高めた。
本実施形態では、これとは別の方法でカーボンナノチューブ26の密度を高める。
図28〜図33は、本実施形態に係る放熱シートの製造途中の断面図である。
なお、図28〜図33において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、第1実施形態の図6(a)〜図7(a)の工程を行うことにより、図28に示すように、基板21の上に複数のカーボンナノチューブ26が成長した構造を得る。
次に、図29に示す工程について説明する。
まず、本実施形態に係る放熱シート製造装置130に前述のシリコン基板21をセットする。
その放熱シート製造装置130は、ベース131、スペーサ132、圧縮板133、押さえ板134、及びフレーム135を有する。
このうち、ベース131はアルミニウム板であって、その上に基板21がカーボンナノチューブ26を上にして載置される。
そして、ベース131の上方には、カーボンナノチューブ26を上から押さえる押さえ板134が配される。この例では透明なガラス板を押さえ板134として用いることにより、押さえ板134を通じてカーボンナノチューブ26が視認できるようにする。
そして、押さえ板134の縁部にはフレーム135が固着される。フレーム135は、例えばアルミニウム板であって、押さえ板134が露出する開口135aを備える。
そのフレーム135とベース131にはネジ136が通されており、そのネジ136を締め付けることで押さえ板134が降下して、カーボンナノチューブ26に押さえ板134が押圧される。
更に、基板21の上にはスペーサ132が載置される。スペーサ132は押さえ板134に当接する位置に設けられており、これにより押さえ板134がカーボンナノチューブ26を過度に押圧するのを防止できる。そのスペーサ132の材料としては、例えばアルミニウムがある。
そして、基板21と押さえ板134との間には、ステンレス板等の圧縮板133が基板横方向から入れられる。この例では二つの圧縮板33を用い、その各々でカーボンナノチューブ26をその側部から挟むようにする。
続いて、図30に示すように、ネジ136を締め付けることにより押さえ板134を下降させ、その押さえ板134でカーボンナノチューブ26を上から押さえる。なお、スペーサ132に押さえ板134が上から当接したところで押さえ板134の下降は停止するため、押さえ板134からカーボンナノチューブ26に過度の押圧力が加わるのを防止できる。
そして、この状態で二つの圧縮板133の各々に互いに対向する力F1、F2を加える。これにより、カーボンナノチューブ26がその側部から圧縮されるため、カーボンナノチューブ26の密度が増加する。
その後、図31に示すように、ネジ136を緩めることにより放熱シート製造装置130からシート状に集合したカーボンナノチューブ26を取り出す。
なお、基板21や押さえ板134にカーボンナノチューブ26が張り付いている場合には、鋭利な刃物でこれらの部材からカーボンナノチューブ26を剥離すればよい。
続いて、図32(a)に示すように、第1実施形態の図8(b)の工程と同様にシリコン基板31の上にテフロンシート32とクッション材139とをこの順に載せ、更にその上にシート状に集合したカーボンナノチューブ26を載せる。なお、クッション材139としては、例えばゴムシートを使用し得る。
更に、カーボンナノチューブ26の他方の端部26bの上に第1の樹脂フィルム33と第1の離形部材34とをこの順に載せる。
そして、加熱プレス機により第1の樹脂フィルム33をその融点よりも高い140℃程度に加熱する。この状態で、加熱プレス機の治具36で第1の離形部材34に上から160N程度の力を加え、各カーボンナノチューブ26の他方の端部26bに第1の樹脂フィルム33を固着する。なお、加熱時間は5分程度とする。
第1実施形態の図8(b)の工程と同様に、本工程では各カーボンナノチューブ26は第1の樹脂フィルム33を貫通しない。
次いで、図32(b)に示すように、第1の樹脂フィルム33を室温にまで自然冷却した後、加熱プレス機から各カーボンナノチューブ26を取り出す。
この後は、第1実施形態で説明した図9(b)〜図11(b)の工程を行うことにより、図33に示すような本実施形態に係る放熱シート60を得る。
以上説明した本実施形態によれば、図30の工程でカーボンナノチューブ26をその側部から圧縮したことでカーボンナノチューブ26の密度が高まるため、放熱シート60の熱伝導性を高めることができる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 相対する二枚の樹脂フィルムの一方から他方に複数のカーボンナノチューブが延びたシートを作製する工程と、
第1のプレス板と第2のプレス板により、第1の離形部材、前記シート、及び第2の離形部材を順に積層した積層体を挟む工程と、
各々の前記樹脂フィルムを加熱して軟化させながら、前記第1のプレス板と前記第2のプレス板で前記シートを加圧することにより、各々の前記樹脂フィルムの表面から前記カーボンナノチューブの端部を露出させる工程と、
を有することを特徴とする放熱シートの製造方法。
(付記2) 前記シートを作製する工程において、複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記樹脂フィルムとを交互に積層することを特徴とする付記1に記載の放熱シートの製造方法。
(付記3) 前記シートを作製する工程の前に、前記複数のカーボンナノチューブの密度を高める工程を更に有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の放熱シートの製造方法。
(付記4) 前記複数のカーボンナノチューブの密度を高める工程は、
前記複数のカーボンナノチューブの各々の一方の端部に、自然長よりも伸展されたゴムシートの表面を押し当てることにより、前記一方の端部を前記表面に固着する工程と、
前記一方の端部を前記表面に固着した後、前記ゴムシートを弛緩する工程とを有することを特徴とする付記3に記載の放熱シートの製造方法。
(付記5) 前記複数のカーボンナノチューブの密度を高める工程は、
前記複数のカーボンナノチューブの側部から前記複数のカーボンナノチューブを圧縮する工程を有することを特徴とする付記3に記載の放熱シートの製造方法。
(付記6) 各々の前記樹脂フィルムの表面から前記カーボンナノチューブの端部を露出させる工程において、各々の前記樹脂フィルムの粘度が最小となる温度に各々の前記樹脂フィルムを加熱することを特徴とする付記1乃至付記5のいずれかに記載の放熱シートの製造方法。
(付記7) 前記シートを作製する工程は、
前記カーボンナノチューブの一方の端部に、前記二枚の樹脂フィルムの一方を固着する工程と、
前記カーボンナノチューブの他方の端部に、前記二枚の樹脂フィルムの他方を固着する工程とを有することを特徴とする付記1乃至付記6のいずれかに記載の放熱シートの製造方法。
(付記8) 相対する二枚の樹脂フィルムと、
前記二枚の樹脂フィルムの一方から他方に延びた複数のカーボンナノチューブとを有し、
各々の前記樹脂フィルムから前記カーボンナノチューブの端部が露出したことを特徴とする放熱シート。
(付記9) 複数の前記カーボンナノチューブと複数の前記樹脂フィルムとを交互に積層したことを特徴とする付記8に記載の放熱シート。
(付記10) 放熱シートと、
前記放熱シートの一方の主面に密着した電子部品と、
前記放熱シートの他方の主面に密着した放熱部材とを有し、
前記放熱シートは、
相対する二枚の樹脂フィルムと、
前記二枚の樹脂フィルムの一方から他方に延び、かつ、一方の端部が前記電子部品に当接し、他方の端部が前記放熱部材に当接した複数のカーボンナノチューブとを備えたことを特徴とする電子装置。