以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
シール剤用粒子は、液晶等の表示材料を封入するために使用されるシール剤に使用することができる。シール剤用粒子を含むシール剤は、各種の表示素子に使用される表示材料を封入するために使用することができる。シール剤は、一例として以下に示すような液晶表示素子の製造に適用することができる。
図1は、本実施形態のシール剤用粒子を含むシール剤で製造した液晶表示素子を示す断面図である。この図に示す液晶表示素子1は、一対の透明ガラス基板2と、透明電極3と、配向膜4と、液晶5と、シール部6と、スペーサ粒子7とを備えて構成されている。シール部6には、シール剤用粒子6Aが含まれている。
透明ガラス基板2は、対向する面に絶縁膜(図示せず)を有する。絶縁膜の材料としては、例えば、SiO2等が挙げられる。
透明電極3は、上記絶縁膜上に形成されている。透明電極3は、例えば、ITO等を含む材料で形成された部材である。透明電極3は、例えば、フォトリソグラフィーによりパターニングして形成可能である。
配向膜4は、透明ガラス基板2の表面上の透明電極3上に設けられている。配向膜4は、ポリイミド等の材料で形成される。
液晶5は、液晶表示素子1の表示材料であり、一対の透明ガラス基板2間に封入されている。さらに、一対の透明ガラス基板2間には、複数のスペーサ粒子7が配置されている。複数のスペーサ粒子7により、一対の透明ガラス基板2の間隔が規制されている。
シール部6は、一対の透明ガラス基板2の外周の縁部間に配置されている。シール部6によって、液晶5の外部への流出が防がれている。
シール部6は、上記シール剤の硬化物であり、シール剤用粒子を含む。以下、本実施形態のシール剤用粒子の具体的態様の一例について説明する。
(シール剤用粒子)
本実施形態のシール剤用粒子は、第1の鎖状高分子及び環状分子を含有する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との一方又は双方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との一方又は双方を意味する。
本実施形態のシール剤用粒子は、柔軟性に優れ、しかも、透湿性が低い。そのため、当該シール剤用粒子は、表示材料の色ムラ及び汚染を防止しやすく、スプリングバックも起こしにくいシール剤を形成するための材料として適している。例えば、本実施形態のシール剤用粒子が図1の形態の液晶表示素子の製造に適用された場合では、液晶の色ムラ及び汚染を防止しやすく、液晶表示素子に応力がかかっても、その応力がシール剤用粒子で緩和されるので、スプリングバックも起こしにくい。シール剤用粒子は、液晶等の表示材料がシール部側へ流入するのを防止する作用を有し、いわゆるダム材としての機能も果たし得る。
第1の鎖状高分子の種類は、特に限定されず、例えば、従来から知られている各種の重合体を採用できる。
例えば、第1の鎖状高分子として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類等が挙げられる。また、第1の鎖状高分子は、上記例示列挙した各種重合体の誘導体であってもよい。
第1の鎖状高分子は、1種の重合体のみでもよいし、2種以上の重合体を含んでいてもよい。また、第1の鎖状高分子は、1種の繰り返し構成単位で構成されるホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し構成単位で構成されるコポリマーであってもよい。第1の鎖状高分子がコポリマーである場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等のいずれの構造であってもよい。
第1の鎖状高分子の重量平均分子量は特に限定的ではないが、例えば、3,000以上とすることができ、5,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜50,000であることが特に好ましい。
環状分子としては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体等のシクロデキストリン類、その他、環状のオリゴマー、環状のマクロモノマー等が挙げられる。環状のオリゴマーとしては、例えば、エチレングリコールのオリゴマー、エチレンオキシドのオリゴマー、プロピレングリコールのオリゴマー、多糖類等である。環状分子は、1種のみでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
前記環状分子は、重合性の官能基を有していてもよい。ここでいう重合性の官能基とは、重合性単量体と重合可能な官能基をいう。重合としては、例えば、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、リビングラジカル重合等、その他、従来から知られている各種重合が挙げられる。
重合性の官能基の具体例としては、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH2、−COOH、−SO3H、及び−PO4Hが挙げられる。これらは一以上の置換基をさらに有していてもよい。重合性の官能基としては、後述の架橋構造を形成しやすいという観点から、ラジカル重合可能な官能基、例えば、アルケニル基、ビニル基等が好ましい。なお、前記環状分子は、上記重合性の官能基以外の官能基を有していてもよい。
重合性の官能基を有する環状分子の他例として、下記一般式(1)
(上記式中、R5及びR6は、それぞれ独立して水素、或いは、炭素数が1又は2のアルキル基であり、R7は、水素又はメチル基である。また、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
で表わされる環状マクロモノマーが挙げられる。
重合性の官能基を有する環状分子のさらなる他例として、下記一般式(2)
(上記式中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される環状マクロモノマー等が挙げられる。
シール剤用粒子が第1の鎖状高分子と環状分子を含む限りは各分子の存在態様は特に限定的ではない。
しかし、柔軟性に優れ、かつ、透湿性がより低くなるという観点から、上記第1の鎖状高分子は、上記環状分子の開口部を貫通していることが好ましい。すなわち、上記第1の鎖状高分子は、上記環状分子の環内を貫通して、第1の鎖状高分子と環状分子とが、いわゆる包接化合物を形成していることが好ましい。
上記のように第1の鎖状高分子が環状分子の開口部を貫通して形成されている構造は、「ポリロタキサン」と称される。
シール剤用粒子がポリロタキサンを含む場合、第1の鎖状高分子は、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール及びポリビニルメチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。この場合、第1の鎖状高分子が環状分子の開口部(環内)を貫通しやすく、安定なポリロタキサンを形成しやすく、しかも、柔軟性に優れ、かつ、透湿性がより低くなる。なお、第1の鎖状高分子は、上記環状分子の開口部を貫通できる程度に分岐鎖を有していてもよい。
シール剤用粒子がポリロタキサンを含む場合、環状分子は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択される分子であることが好ましい。環状分子であるα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンはいずれも、さらに置換基を有していてもよい。すなわち、環状分子はシクロデキストリンの誘導体であってもよい。
シール剤用粒子がポリロタキサンを含む場合、直鎖状分子が環状分子を貫通する際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子の貫通量は0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4とすることができる。なお、環状分子の最大包接量は、公知の方法で決定することができる。
シール剤用粒子がポリロタキサンを含む場合、第1の鎖状高分子には、環状分子の脱落を防止するための分子が結合していることが好ましい。以下、環状分子の脱落を防止するために第1の鎖状高分子に結合した分子を、ストッパー基と称する。
ストッパー基としては、例えば、アダマンタン基、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、N−カルボベンゾキシ−L−チロシン類(Z−L−チロシン類)、トリチル基、ピレニル基、フェニル基等のアリール基、2−ブチルデシル基、フルオレセイン類、ピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。その他、ポリロタキサンにおいて環状分子の脱落を防止するために従来から知られている官能基が挙げられる。上記例示列挙したストッパー基は置換基を有していてもよい。
上記ストッパー基は、例えば、第1の鎖状高分子の両末端に結合している。このように嵩高いストッパー基が第1の鎖状高分子の両末端に結合していると、環状分子が第1の鎖状高分子によって串刺し状に貫通された状態が保持され得る。つまり、環状分子は、第1の鎖状高分子を包接させつつ自由に動くことができ、両末端のストッパー基によって、第1の鎖状高分子から外れることはない。これにより、より優れた柔軟性とより低い透湿性を有しやすくなる。
なお、ストッパー基は、第1の鎖状高分子の両末端に直接結合していてもよいし、第1の鎖状高分子の両末端にアミド結合、エステル結合等を介して間接的に結合していてもよい。
シール剤用粒子は、上記ストッパー基を有する第1の鎖状高分子とストッパー基を有していない第1の鎖状高分子との混合物であってもよい。
第1の鎖状高分子がストッパー基を有していない場合は、一部の環状分子は第1の鎖状高分子から脱落する場合があるが、この脱落した環状分子は、シール剤用粒子中の高分子マトリックス間に存在し続けることが可能である。
上記のシール剤用粒子は、第2の鎖状高分子をさらに含むことができる。
第2の鎖状高分子は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。
特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体及びスチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、シール剤用粒子は、より優れた柔軟性とより低い透湿性を有しやすくなり、また、シール剤用粒子の製造も簡便な方法行うことができる。特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体が好ましい。
第2の鎖状高分子は、1種の繰り返し構成単位で構成されるホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し構成単位で構成されるコポリマーであってもよい。第1の鎖状高分子がコポリマーである場合は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等のいずれの構造であってもよい。
上記シール剤用粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できる観点から、第2の鎖状高分子は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体の重合体であることが好ましい。第2の鎖状高分子は、1種のみの重合性単量体の重合体であってもよいし、あるいは、2種以上の重合性単量体の重合体であってもよい。
第2の鎖状高分子がエチレン性不飽和基を有する単量体の重合体である場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;塩化ビニル、フッ化ビニル、等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート類;α−オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン類;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、1,4−ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル系単量体;(メタ)アクリル化合物として、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル;シリコーン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキジメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルジビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端変性シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
第2の鎖状高分子がエチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体の重合体である場合においても、得られる重合体は、アクリル系重合体及びスチレン系重合体の少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、より優れた柔軟性とより低い透湿性を有しやすくなり、また、シール剤用粒子の製造も簡便な方法行うことができる。特に、第2の鎖状高分子は、アクリル系重合体が好ましい。
第2の鎖状高分子は、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法、例えばラジカル重合法等により重合させることで製造される。
第2の鎖状高分子は、上記の環状分子と結合して架橋構造を形成することができる。すなわち、シール剤用粒子は、第2の鎖状高分子と環状分子とが結合して形成された架橋構造体を含んで形成されていてもよい。この場合、環状分子どうしが第2の鎖状高分子によって架橋された架橋構造体となる。架橋構造とは、例えば、分岐鎖構造を有する重合体、あるいは、三次元網目構造を有する重合体等である。
第2の鎖状高分子が環状分子と結合して架橋構造を形成する具体的態様としては、例えば、上述したポリロタキサンにおける環状分子に第2の鎖状高分子の末端が化学結合した構造が挙げられる。詳述すると、第2の鎖状高分子の一方の末端がポリロタキサンにおける環状分子に化学結合していると共に、第2の鎖状高分子の他方の末端が、別のポリロタキサンにおける環状分子に化学結合することで、上記架橋構造が形成され得る。このような架橋によって、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子との三次元網目構造を有する架橋構造体が形成される。
以上のように、シール剤用粒子を構成する架橋構造は、ポリロタキサンどうしが第2の鎖状高分子によって架橋され得る。より詳しくは、シール剤用粒子を構成する架橋構造は、ポリロタキサンの環状分子どうしが第2の鎖状高分子によって架橋され得る。
上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体では、環状分子が第2の鎖状高分子の架橋の起点(架橋点)となる。ポリロタキサンにおいて環状分子は、第1の鎖状高分子上を自由に動くことができる。そのため、架橋構造体における上記架橋点は、第1の鎖状高分子上を移動することが可能である。つまり、上記架橋構造体は、いわゆる、移動架橋型の高分子材料である。このような架橋構造体は、応力がかけられても、それに追従して架橋点が移動する。これにより、シール剤用粒子は柔軟性を有する。
従って、シール剤用粒子が、上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を構成成分として含む場合は、特に優れた柔軟性を有する。
上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造する方法は特に限定されない。例えば、重合性の官能基を有する環状分子を備えるポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を形成するための重合性単量体との混合物とを反応させることで、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造することができる。ここでいう重合性の官能基及び重合性単量体は上述したとおりである。
例えば、重合性の官能基が重合性単量体とラジカル重合可能な官能基(ビニル基等)であれば、ポリロタキサンと、重合性単量体とをラジカル重合反応することで、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を製造することができる。このラジカル重合反応は、例えば、公知の方法で行うことができる。
重合性の官能基を有する環状分子を備えるポリロタキサンの種類は特に制限がないが、具体例を挙げるとすれば、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社から市販されている、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSM3405P」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSM3400C」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA3405P」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA2405P」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSA3400C」、「セルム(登録商標)キー・ミクスチャーSA2400C」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA3405P」、「セルム(登録商標)スーパーポリマーSA2405P」等である。なお、ポリロタキサンは、例えば、公知の製造方法で製造して使用することも可能である。
シール剤用粒子において、第1の鎖状高分子及び環状分子の合計含有量は、第1の鎖状高分子、環状分子及び第2の鎖状高分子の総量に対して1重量%以上、70重量%以下とすることができる。第1の鎖状高分子及び環状分子の合計含有量が上記含有量であれば、柔軟性に優れ、かつ、透湿性がより低くなる。第1の鎖状高分子及び環状分子の合計含有量の下限は、第1の鎖状高分子、環状分子及び第2の鎖状高分子の総量に対して5重量%であることがより好ましく、10重量%であることが特に好ましく、上限は、50重量%であることがより好ましく、30重量%であることが特に好ましい。
シール剤用粒子が上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む場合にあっても、ポリロタキサンの含有量の下限は、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子の総量に対して1重量%であることが好ましく、5重量%であることがより好ましく、10重量%であることが特に好ましい。また、シール剤用粒子が上記のようなポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含む場合、ポリロタキサンの含有量の上限は、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子の総量に対して70重量%であることが好ましく、50重量%であることがより好ましく、30重量%であることが特に好ましい。
シール剤用粒子の製造方法は特に制限されず、例えば、従来知られている粒子の製造方法、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を採用することができる。
例えば、シール剤用粒子を合成するための重合性出発原料を重合開始剤及び水の存在下、重合する方法が挙げられる。その中でも、ラジカル重合性の出発原料を、重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法が例示される。シール剤用粒子を合成するにあたっては、必要に応じて分散安定剤を使用してもよい。その他、非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する、いわゆるシード重合法や分散重合法等が挙げられる。
ポリロタキサンと第2の鎖状高分子とを含んで構成されるシール剤用粒子を製造する場合であれば、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を得るためのラジカル重合性単量体とを、重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法が例示される。ポリロタキサンがラジカル重合可能な官能基をもつ環状分子を有して形成されている場合にあっても、ポリロタキサンと、第2の鎖状高分子を得るためのラジカル重合性単量体とを、重合開始剤の存在下で懸濁重合することができる。この場合、ポリロタキサンと第2の鎖状高分子との架橋構造体を含むシール剤用粒子が得られる。
重合開始剤の種類は特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、分散重合等において一般的に使用されている化合物を使用することができる。また、重合の際、必要に応じて、分散安定剤等を使用してもよい。分散安定剤の種類も特に制限されず、例えば、公知の分散安定剤を使用できる。重合条件も特に限定的ではなく、例えば、従来から知られている適宜の条件で行うことができる。
シール剤用粒子の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、シール剤用粒子の平均粒子径は2μm以上、15μm以下であることが好ましく、この場合、液晶等の表示材料がシール部へ流入(いわゆるシールブレイク)するのを防止しやすく、シール剤用粒子のダム材としての機能が十分に発揮される上、表示材料の汚染や素子のスプリングバックも抑制しやすい。
上記でいうシール剤用粒子の平均粒子径とは、形状が真球状である場合には直径を意味し、真球状以外の形状である場合には、最大径と最小径の平均値を意味する。そして、シール剤用粒子の平均粒子径は、シール剤用粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、無作為に選択した50個のシール剤用粒子の粒径をノギスで測定した平均値を意味する。なお、シール剤用粒子が上述のように他の材料で被覆されている場合の平均粒子径は、その被覆層も含める。
シール剤用粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、例えば、50%以下である。上記変動係数(CV値)は下記式で表される。
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:粒子の粒子径の標準偏差
Dn:粒子の粒子径の平均値
シール剤用粒子のダム材としての効果が発揮されやすく、シールブレイク及びスプリングバックを防止しやすいという観点から、シール剤用粒子の粒子径のCV値は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。シール剤用粒子の粒子径のCV値の下限は特に限定されない。上記CV値は0%以上であってもよく、2%以上であってもよく、75%以上であってもよく、7%以上であってもよく、10%以上であってもよい。
シール剤用粒子の硬さは、特に制限されず、例えば、30%K値が10〜3000N/mm2とあることが好ましい。この場合、シール剤用粒子の柔軟性が特に優れるので、シールブレイク及びスプリングバックを防止しやすく、また、ダム材としての効果も安定であり、しかも、長期にわたってシール部のシーリング性能を維持することができる。
ここでいう30%K値は、シール剤用粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率である。以下のようにして測定できる。まず、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、最大試験荷重20mNを60秒かけて負荷する条件下でシール剤用粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。
30%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:粒子が30%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:粒子が30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:粒子の半径(mm)
上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。なお、10%K値を求める場合も、粒子を10%圧縮変形させたときの上記各パラメータを求めることで算出できる。
シール剤用粒子は、粒子100万個あたり、凝集している粒子が100個以下であることが好ましい。上記凝集している粒子は、1つの粒子が少なくとも1つの他の粒子と接している粒子である。例えば、シール剤用粒子100万個に、3つの粒子が凝集している粒子(3個の粒子の凝集体)が3個含まれる場合に、シール剤用粒子100万個あたり、凝集している粒子の数は9個である。上記凝集粒子の測定方法としては、1視野に5万個程度の粒子が観察されるように倍率を設定した顕微鏡を用いて凝集粒子をカウントし、20視野の合計として凝集粒子を測定する方法等が挙げられる。
(シール剤)
本実施形態のシール剤は、上記シール剤用粒子と、熱硬化性化合物と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含む。シール剤を硬化させることにより、例えば、図1の液晶表示素子のシール部6が形成される。
熱硬化性化合物の種類は特に制限されず、例えば、従来から使用されている液晶表示素子に含まれる熱硬化性化合物と同様とすることができる。シール部の接着性を高めるという観点から、熱硬化性化合物は、23℃で流動性を有する性質を有することが好ましい。
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
接着性及び長期信頼性をより一層高くする観点からは、上記熱硬化性化合物は、(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましく、エポキシ(メタ)アクリレートを含有することがより好ましい。上記「(メタ)アクリル化合物」とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を反応させた化合物を意味する。
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料であるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、及びビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER828EL、jER1001、及びjER1004(いずれも三菱化学社製);エピクロン850−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER806、及びjER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jERYX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、YSLV−50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンHP4032、及びエピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ESN−165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER630(三菱化学社製);エピクロン430(DIC社製);TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ZX−1542(新日鉄住金化学社製);エピクロン726(DIC社製);エポライト80MFA(共栄社化学社製);デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、YR−450、及びYR−207(いずれも新日鉄住金化学社製);エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物の市販品としては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂の市販品としては、例えば、jERYL−7000(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂の他の市販品としては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、及びYSLV−90CR(いずれも新日鉄住金化学社製);XAC4151(旭化成社製);jER1031、及びjER1032(いずれも三菱化学社製);EXA−7120(DIC社製);TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、及びEBECRYLRDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製);EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、及びEMA−1020(いずれも新中村化学工業社製);エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、及びエポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製);デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、及びデナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレート以外の他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物としては、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物の内のいずれを用いてもよい。
上記単官能のエステル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記2官能のエステル化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、及びポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記3官能以上のエステル化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料であるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及び1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料であるイソシアネート化合物として、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、又はポリカプロラクトンジオール等のポリオールと、過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料である水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の市販品;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、及びポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びグリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、及びM−1600(いずれも東亞合成社製);EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、及びEBECRYL2220(いずれもダイセル・オルネクス社製);アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK、及びアートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製);U−122P、U−108A、U−340P、U−4HA、U−6HA、U−324A、U−15HA、UA−5201P、UA−W2A、U−1084A、U−6LPA、U−2HA、U−2PHA、UA−4100、UA−7100、UA−4200、UA−4400、UA−340P、U−3HA、UA−7200、U−2061BA、U−10H、U−122A、U−340A、U−108、U−6H、及びUA−4000(いずれも新中村化学工業社製);AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−306T、及びUA−306I(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
液晶への悪影響を抑える観点からは、上記(メタ)アクリル化合物は、−OH基、−NH−基、−NH2基等の水素結合性のユニットを有することが好ましい。
反応性を高くする観点からは、上記(メタ)アクリル化合物は、(メタ)アクリロイル基を2つ又は3つ有することが好ましい。
シール剤の接着性を向上させる観点からは、上記熱化性化合物は、エポキシ化合物を含有してもよい。
上記エポキシ化合物としては、例えば、上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料であるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物は、例えば、2つ以上のエポキシ基を有する化合物において、2つ以上のエポキシ基の一部に(メタ)アクリル酸を反応させることによって得ることができる。
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物の市販品としては、例えば、KRM8287(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
上記熱硬化性化合物として上記(メタ)アクリル化合物と上記エポキシ化合物とを用いる場合、上記熱硬化性化合物全体における(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との合計100モル%中、エポキシ基は好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下である。上記エポキシ基が上記上限以下であると、シール剤の液晶に対する溶解性が低くなって液晶汚染がより一層生じ難くなり、液晶表示素子の表示性能がより一層良好になる。
シール剤は、上記熱硬化性化合物に加えて光硬化性成分も含むことができる。この場合、シール剤は、光の照射及び加熱の組み合わせによって硬化してシール部として形成され得る。光硬化性成分としては、例えば、公知の光硬化性材料、例えば、光硬化性樹脂を挙げることができる。
一方、シール剤を硬化させるにあたっては、光を照射させずに硬化させることが好ましい。この場合、光照射プロセスを必要としないので、製造プロセスが簡略化され、全体としてのコストの上昇を防ぎやすい。
特に、滴下工法で、いわゆる狭額縁設計の液晶表示素子を製造すると、ブラックマトリックスによりシール部に光の当たらない箇所が存在する。このため、充分に光照射されず硬化が進行しない光硬化性材料の部分が生じ、未硬化のシール剤が液晶と接し得る。その結果、液晶がシール剤に差し込み、シールブレイクが発生して液晶が漏れ出してしまうことや、シール剤が液晶に溶出することにより、液晶が汚染されることがある。よって、このような問題を防止するためにも、シール剤は光照射させずに硬化できることが好ましい。
以上の観点から、シール剤は、光硬化性成分を含まないことが好ましい。この場合、ブラックマトリックス下におけるシール部もより確実に硬化させることができ、狭額縁設計が可能になるという利点がある。
シール剤は、重合開始剤及び熱硬化剤のうちの少なくとも一方を含むことができる。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、及びカチオン重合開始剤等が挙げられる。シール剤には、重合開始剤が1種のみ含まれていてもよいし、あるいは、2種以上が含まれてもよい。
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、及び加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤は、熱硬化剤に比べて硬化速度が格段に速い。このため、ラジカル重合開始剤を用いることにより、シールブレイクや、液晶汚染の発生を抑制しやすい。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、及びチオキサントン等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、及びルシリンTPO(いずれもBASF Japan社製);ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、及び有機過酸化物等が挙げられる。アゾ化合物が好ましく、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤がより好ましい。
高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成し、数平均分子量が300以上である化合物を意味する。
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量は好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは1万以上であり、好ましくは30万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは9万以下である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量が上記下限以上であると、高分子アゾ開始剤が液晶に悪影響を与えにくい。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量が上記上限以下であると、熱硬化性化合物への混合が容易になる。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPC測定に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤等が挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤は、ポリエチレンオキサイド構造を有することが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールとの重縮合物、及び4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンとの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001、及びV−501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記カチオン重合開始剤として、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生する。上記光カチオン重合開始剤の種類は、特に限定されず、イオン性光酸発生タイプであってもよく、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類;鉄−アレン錯体;チタノセン錯体;アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、アデカオプトマーSP−150、及びアデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、及び酸無水物等が挙げられる。23℃で固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。上記熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記23℃で固形の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、及びマロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記23℃で固形の有機酸ヒドラジドの市販品としては、例えば、アミキュアVDH、及びアミキュアUDH(いずれも味の素ファインテクノ社製);SDH、IDH、ADH、及びMDH(いずれも大塚化学社製)等が挙げられる。
シール剤において、上記シール剤用粒子の含有量は、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは70重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。シール剤用粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、シール材の硬化物であるシール部の透湿性が低く、液晶等の表示材料の汚染を防止しやすく、シールブレイクも抑制でき、しかも、シール部が十分な柔軟性を有するので、液晶表示素子等のスプリングバックも抑制しやすい。
シール剤において、上記重合開始剤の含有量は、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下である。重合開始剤の含有量が上記下限以上であると、シール剤を充分に硬化させることができる。また、重合開始剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤の貯蔵安定性が高くなる。
シール剤において、上記熱硬化剤の含有量は、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、シール剤を充分に熱硬化させることができる。上記熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性が良好になる。
シール剤は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤を用いることにより、高温で加熱しなくても充分にシール剤を硬化させることができる。
上記硬化促進剤としては、例えば、イソシアヌル環骨格を有する多価カルボン酸やエポキシ樹脂アミンアダクト物等が挙げられ、具体的には例えば、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、及びビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
シール剤において、熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、シール剤が充分に硬化し、硬化させるために高温での加熱が必要ではなくなる。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤の接着性が高くなる。
シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として、充填剤を含有することもできる。充填剤としては、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、窒化珪素、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、セリサイト、活性白土、及び窒化アルミニウム等の無機充填剤や、ポリエステル粒子、ポリウレタン粒子、ビニル重合体粒子、アクリル重合体粒子、及びコアシェルアクリレート共重合体粒子等の有機充填剤等が挙げられる。上記充填剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
シール剤100重量%中、上記充填剤の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記充填剤の含有量が上記下限以上であると、接着性の改善等の効果が充分に発揮される。上記充填剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性が良好になる。
シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。シランカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記シランカップリング剤は、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
シール剤100重量%中、上記シランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記シランカップリング剤の含有量が上記下限以上であると、シランカップリング剤を配合することによる効果が充分に発揮される。上記シランカップリング剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤による液晶の汚染がより一層抑えられる。
シール剤は、遮光剤を含有してもよい。遮光剤の使用により、シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、及び樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。チタンブラックが好ましい。
遮光剤を含有するシール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
上記チタンブラックは、波長300〜800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370〜450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することでシール剤に遮光性を付与する性質を有する一方で、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する。シール剤に含有される遮光剤の絶縁性は高いことが好ましく、絶縁性が高い遮光剤として、チタンブラックが好適である。
上記チタンブラックの1μmあたりの光学濃度(OD値)は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、OD値は通常は5以下である。
上記チタンブラック及びカーボンブラックは、表面処理されていなくても充分な効果を発揮する。表面がカップリング剤等の有機成分で処理されたチタンブラックや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されたチタンブラック等の表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。絶縁性を高めることができるので、有機成分で処理されているチタンブラックが好ましい。
上記チタンブラックの市販品としては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、及び14M−C(いずれも三菱マテリアル社製);ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
上記チタンブラックの比表面積は好ましくは13m2/g以上、より好ましくは15m2/g以上であり、好ましくは30m2/g以下、より好ましくは25m2/g以下である。
上記チタンブラックの体積抵抗は好ましくは0.5Ω・cm以上、より好ましくは1Ω・cm以上であり、好ましくは3Ω・cm以下、より好ましくは2.5Ω・cm以下である。
上記遮光剤の一次粒子径は、2つの液晶表示素子用部材の間隔に影響する。上記遮光剤の一次粒子径は好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。上記遮光剤の一次粒子径が上記下限以上であると、シール剤の粘度やチクソトロピーが大きく増大し難く、作業性が良好になる。上記遮光剤の一次粒子径が上記上限以下であると、シール剤の塗布性が良好になる。
熱硬化性化合物100重量部に対して、上記遮光剤の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは30重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。上記遮光剤の含有量が上記下限以上であると、充分な遮光性が得られる。上記遮光剤の含有量が上記上限以下であると、シール剤の密着性や硬化後の強度が高くなり、更に描画性が高くなる。
シール剤は、必要に応じて、上記シール剤用粒子以外の粒子、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサ、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他添加剤等を含有してもよい。
シール剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、及び3本ロール等の混合機を用いて、シール剤用粒子と、熱硬化性化合物と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加する添加剤とを、所定の配合割合で混合する方法等が挙げられる。
シール剤の25℃及び1rpmでの粘度は特に限定的ではないが、好ましくは5万Pa・s以上であり、好ましくは50万Pa・s以下、より好ましくは40万Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、シール剤の塗布性が良好になる。上記粘度は、E型粘度計を用いて測定される。
接着力をより一層高め、液晶汚染防止性をより一層高め、透湿性を効果的に低くする観点からは、上記シール部において、シール剤に含まれる熱硬化性化合物と、シール剤用粒子とが、化学結合するように熱硬化されていることが好ましい。例えば、シール剤用粒子がグリシジル基のような反応性の官能基を有している場合は、熱硬化性化合物と、シール剤用粒子とが化学結合し得る。
本実施形態のシール剤は、柔軟性に優れ、かつ、透湿性がより低いという特徴を有するシール剤用粒子を構成成分として含有する。そのため、上記シール剤で形成されたシール部を液晶表示素子等の表示素子に適用すると、表示材料の色ムラ及び汚染を防止しやすく、スプリングバックも起こしにくい。よって、シール剤は、液晶表示装置等の表示素子の封入用材料として適している。
詳述すると、シール剤からシール部を形成するにあたっては、シール剤を熱硬化等で硬化させてシール部を形成させるが、シール剤を熱硬化すると、初期においては粘度が一旦低下するので、これにより、シール剤が液晶等の表示素子へ流入する、シールブレイクという現象が生じる場合があった。しかし、本発明では、シール剤に含まれる上記シール剤用粒子がダム材として機能することで、そのようなシールブレイクが防止されやすい。
また、本実施形態のシール剤は、透湿性の低い上記シール剤用粒子を構成成分として含有することで、シール剤の硬化物(図1のシール部)の透湿性も低い。このようにシール部の透湿性が低いと、水分が液晶等の表示材料側へ浸入するのを抑制しやすいので、水分による表示材料のダメージが低減され、結果として、表示材料の色ムラ及び汚染を防止しやすい。
例えば、シール剤の硬化物の透湿度は、硬化物の厚さ250±50μmにおいて80g/m2−24h以下であることが好ましく、70g/m2−24h以下であることがより好ましく、60g/m2−24h以下であることがさらに好ましい。ここでいう透湿度(単位g/m2−24h)は、JIS Z0208に準拠した値をいい、一定時間に単位面積の膜状物質を通過する水蒸気の量をいう。つまり、温度25℃又は40℃において防湿包装材料を境界面とし、この境界面に対して一方の側の空気を相対湿度90%、他の側の空気を吸湿材によって乾燥状態に保ったとき、24時間にこの境界面を通過する水蒸気の質量(g)を、その材料1m2あたりに換算した値がその材料の透湿度と定められる。上記の厚さ250±50μmの硬化物を形成する方法は、市販のコーターを使用して行うことができる。具体的には、シール剤を、コーターによって所望の厚みに塗工し、次いで、120℃で60分加熱することによって、厚さ250±50μmの硬化物を形成することができる。
本実施形態のシール剤用粒子及びシール剤は、以上のような利点があることから、各種の表示素子を有する装置に用いることができる。例えば、本実施形態のシール剤用粒子及びシール剤は、液晶表示装置に用いられる材料として適している。液晶表示装置の中でも、上述した液晶滴下工法に用いられることが好ましい。
上記シール剤を用いて、各種の表示素子、例えば、図1に示すような液晶表示素子を得ることができる。この液晶表示素子の製造方法としては、例えば、液晶滴下工法が適用される。具体的には、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の透明基板の一方に、シール剤等をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により長方形状のシールパターンを形成する工程、シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程、及び、シール剤を加熱して硬化させる工程を有する方法で液晶表示素子を製造できる。なお、図1に示す液晶表示素子は一例であり、液晶表示素子の構造は適宜変更することができる。
上記液晶表示装置は、上記シール剤の硬化物を含むことで、液晶の色ムラ、汚染及びシールブレイクに加えて、液晶表示素子のスプリングバックも抑制されるので、優れた性能を長期間にわたって維持し得るものとなる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(実施例1〜8、比較例1〜3)
重合性の官能基を有する環状分子を含むポリロタキサンとして、「セルム(登録商標)スーパーポリマー SA1313P」(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)及び各種の重合性単量体を、表1に示す配合量(シール剤用粒子の製造用原料、固形分換算))で混合し、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(株式会社日本ファインケム製、以下「ABN−V」と略記する)1重量部及び過酸化ベンゾイル0.5重量部との混合物を加えて油相を調製した。また、水性媒体としての脱イオン水500重量部と、分散剤としてポリビニルアルコール5重量%水溶液100重量部とを混合して、水相を調整した。上記油相を上記水相中に分散させて分散液を得た後、該分散液を重合反応器に投入し、撹拌回転数及び撹拌時間の調整によって、所望の液滴サイズに制御した。
その後、重合反応器の内部温度を60℃に昇温して撹拌を続け、必要に応じて界面活性剤10重量部を上記懸濁液に追加した後、重合反応器の内部温度を85℃に昇温して撹拌を続けた。上記懸濁液を冷却後、適宜の方法で洗浄及び乾燥することで、シール剤用粒子を得た。得られたシール剤用粒子を分級操作することで、シール剤用粒子を得た。
(比較例4)
シリコーンパウダーとして信越化学工業株式会社製「KMP−601」を使用した。
各実施例及び比較例のシール剤用粒子の平均粒子径を表1に示す。
(評価方法)
(1)平均粒子径
シール剤用粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における無作為に選択した50個の各粒子の最大径をノギスで測定して、算術平均することにより求めた。
(2)CV値
シール剤用粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、観察された画像における無作為に選択した50個の各粒子の粒径の標準偏差を求め、上述した式により粒子の粒子径のCV値を求めた。
(3)液晶汚染防止性
1.シール剤の調製:
ビスフェノールA型エポキシメタクリレート(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「KRM7985」)50重量部と、カプロラクトン変性ビスフェノールA型エポキシアクリレート(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「EBECRYL3708」)20重量部と、部分アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂(熱硬化性化合物、ダイセル・オルネクス社製「KRM8276」)30重量部と、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(光ラジカル重合開始剤、BASF Japan社製「IRGACURE651」)2重量部と、マロン酸ジヒドラジド(熱硬化剤、大塚化学社製「MDH」)10重量部と、上記実施例又は比較例で得られたシール剤用粒子と、シリカ(充填剤、アドマテックス社製「アドマファインSO−C2」)20重量部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越化学工業社製「KBM−403」)2重量部と、コアシェルアクリレート共重合体微粒子(応力緩和剤、ゼオン化成社製「F351」)とを配合し、遊星式撹拌装置(シンキー社製「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合させてシール剤を得た。
2.液晶表示素子の作製:
上記シール剤100重量部に対して平均粒子径4.7μmのスペーサ粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にて、2枚のITO薄膜付きの透明電極基板のうちの一方に長方形の枠を描く様にシール剤(メインシール)を塗布し、続いて、セルを真空に保持するため、更に外周に一周シール剤(ダミーシール)を塗布した。その後、TN液晶(チッソ社製、「JC−5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にて滴下塗布し、他方の透明基板を、真空貼り合わせ装置にて5Paの真空下にて貼り合わせた。貼り合わせた後のセルに高圧水銀ランプを用いて100mW/cm2の紫外線を30秒間照射した後、120℃で60分間加熱してシール剤を熱硬化させ、液晶表示素子を得た。
3.液晶汚染防止性の評価方法:
得られた液晶表示素子について、シール部周辺の液晶(特にコーナー部)に生じる表示むらを目視にて観察し、表示むらが全く無かった場合を「◎」、表示むらがほとんど無かった場合を「○」、表示むらが確認された場合を「△」、酷い表示むらが確認された場合又はセルが形成できなかった場合を「×」として液晶汚染性を評価した。
(4)セルギャップ
上記(3)で得られた液晶表示素子のセルギャップを測定し、セル内が均一に4〜5μmとなっていた場合を「◎」、セル内に4〜5μmのギャップがとれていない箇所がわずかに存在したのみである場合を「○」、セルが形成できなかった場合を「×」としてセルギャップを評価した。
(5)低透湿性(高温高湿下で保管した後に駆動した液晶表示素子の色むら評価)
上記(3)で得られた液晶表示素子を用意した。この液晶表示素子を温度80℃、湿度90%RHの環境下にて36時間保管した後、AC3.5Vの電圧駆動をさせ、中間調のシール剤周辺を目視で観察した。低透湿性を下記の基準で判定した。
[低透湿性の判定基準]
◎:シール部周辺に色むらが全くなし
○:ごくわずかに色むら発生
△:目立つ色むら発生
×:ひどい色むら発生