JP2017226862A - 表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の大型化を招くことなく、被処理物の表面に処理ガスの元素を固溶拡散することができる表面処理方法を提供する。
【解決手段】処理室10の室内11に処理ガスGを流しながら、処理室10の室内11で加熱された鋼製の被処理物Pの表面から、処理ガスとしてアンモニアガスの窒素を固溶させる固溶工程と、固溶工程の後に、処理室10の室内11に流すアンモニアの流量を低下させ、被処理物Pの表面に固溶した窒素を被処理物Pの内部に拡散させる拡散工程と、を含む。表面処理方法では、固溶工程の開始のタイミングから、拡散工程の少なくとも途中まで、被処理物Pの温度が連続的に上昇するように、被処理物Pを加熱する。
【選択図】図3
【解決手段】処理室10の室内11に処理ガスGを流しながら、処理室10の室内11で加熱された鋼製の被処理物Pの表面から、処理ガスとしてアンモニアガスの窒素を固溶させる固溶工程と、固溶工程の後に、処理室10の室内11に流すアンモニアの流量を低下させ、被処理物Pの表面に固溶した窒素を被処理物Pの内部に拡散させる拡散工程と、を含む。表面処理方法では、固溶工程の開始のタイミングから、拡散工程の少なくとも途中まで、被処理物Pの温度が連続的に上昇するように、被処理物Pを加熱する。
【選択図】図3
Description
本発明は、処理室内に処理ガスを流しながら、処理室内で加熱された鋼製の被処理物の表面から、処理ガスの元素を固溶し、固溶した元素を処理ガスの内部に拡散させる表面処理方法に関する。
従来から、鋼製の被処理物を、表面処理する際には、被処理物を加熱するとともに、処理ガスを被処理物に接触させて、処理ガスの元素を被処理物の表面に固溶させている。このような技術として、たとえば特許文献1には、以下の表面処理方法が提案されている。
この表面処理方法では、処理室内に処理ガスとしてアンモニアガスを流しながら、処理室内で加熱された鋼製の被処理物の表面から、アンモニアガスの窒素を固溶させる固溶工程(浸窒工程)を行っている。固溶工程後には、処理室内に流すアンモニアガスの流量を低下させ、加熱された状態の被処理物の表面に固溶した窒素を被処理物の内部に拡散させる拡散工程を行っている。
ここで、固溶工程では、被処理物の温度を一定の処理温度に保持するよう、かつ、拡散工程の開始のタイミングでは、被処理物の温度が上昇し、一定の拡散温度に保持するように、被処理物を加熱している。これにより、固溶工程において、被処理物に窒素が過剰に固溶することを抑制するとともに、拡散工程において、固溶した窒素を短時間で被処理物に拡散させることができる。
しかしながら、特許文献1に係る表面処理方法では、固溶工程で保持される被処理物の処理温度と、拡散工程において保持される被処理物の拡散温度と、の温度差を大きくすることもある。この場合、拡散工程の開始のタイミングで瞬間的に被処理物の温度を上昇するように加熱しなければならず、このような加熱を行うには、被処理物を加熱する加熱部を含めた装置の大型化を招くおそれがある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の大型化を招くことなく、被処理物の表面に処理ガスの元素を固溶拡散することができる表面処理方法を提供することにある。
前記課題を鑑みて、本発明に係る表面処理方法は、処理室内に処理ガスを流しながら、前記処理室内で加熱された鋼製の被処理物の表面から、前記処理ガスの元素を固溶させる固溶工程と、前記固溶工程の後に、前記処理室内に流す処理ガスの流量を低下させ、前記被処理物の表面に固溶した前記元素を前記被処理物の内部に拡散させる拡散工程と、を含む表面処理方法であって、前記固溶工程の開始のタイミングから、前記拡散工程の少なくとも途中まで、前記被処理物の温度が連続的に上昇するように、前記被処理物を加熱することを特徴とする。
本発明によれば、固溶工程の開始のタイミングから、拡散工程の少なくとも途中まで、被処理物の温度が連続的に上昇するように、被処理物を加熱している。このような加熱を行うことにより、装置の大型化を招くことなく、被処理物の表面に処理ガスの元素を固溶拡散することができる。
また、本発明では、拡散工程では、処理室内に流す処理ガスの流量を低下させ、固溶工程における被処理物の表面の温度よりも、高い表面の温度となるように、被処理物を加熱している。これにより、固溶工程において、被処理物の表面に元素を過剰に固溶させず、拡散工程において、被処理物に固溶した元素を短時間に拡散させることができる。
以下に、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る表面処理方法を説明する。
なお、以下に示す本実施形態では、表面処理方法の一例として、処理ガスにアンモニアガスを用いた浸窒処理方法を説明する。しかしながら、本発明に係る表面処理方法は、浸窒処理方法に限定されるものではなく、処理ガスに後述する炭化水素系ガスを用いた浸炭処理方法であってもよく、処理ガスに硫化水素ガスを用いた浸硫処理方法であってもよい。
なお、以下に示す本実施形態では、表面処理方法の一例として、処理ガスにアンモニアガスを用いた浸窒処理方法を説明する。しかしながら、本発明に係る表面処理方法は、浸窒処理方法に限定されるものではなく、処理ガスに後述する炭化水素系ガスを用いた浸炭処理方法であってもよく、処理ガスに硫化水素ガスを用いた浸硫処理方法であってもよい。
1.表面処理装置1について
図1は、本発明の実施形態に係る表面処理方法を行うための表面処理装置1の模式図である。表面処理装置1は、加熱された被処理物Pに処理ガスを接触させて、被処理物Pに処理ガスGの元素を固溶拡散する装置である。後述するように、被処理物Pは、鋼製の被処理物であり、本実施形態では、被処理物Pは、一例として、歯車である。
図1は、本発明の実施形態に係る表面処理方法を行うための表面処理装置1の模式図である。表面処理装置1は、加熱された被処理物Pに処理ガスを接触させて、被処理物Pに処理ガスGの元素を固溶拡散する装置である。後述するように、被処理物Pは、鋼製の被処理物であり、本実施形態では、被処理物Pは、一例として、歯車である。
図1に示すように、表面処理装置1は、被処理物Pを配置する処理室10と、処理室10の室内11に処理ガスとして処理ガスGを供給するガス供給部20と、被処理物Pに赤外線を照射することにより、被処理物Pを加熱する加熱部30と、を備えている。
処理室10は、その室内11に複数の被処理物Pを配置するための空間を有している。室内11には、複数の被処理物Pを載置する載置網14が配置されている。載置網14を用いることにより、載置網14に配置された被処理物Pの下方からも、加熱部30の赤外線を照射することができる。
室内11を形成する壁部は、石英ガラスからなる壁部15を有している。より具体的には、処理室10は、壁部15に相当する石英ガラスからなる石英管16と、その両側を封止する側壁部17により形成されている。
処理室10の一方側の側壁部17には、ガス供給部20からの処理ガスGが室内11に供給されるように、導入口12が形成されている。導入口12は、室内11に処理ガスGが供給可能なように、ガス供給部20に連通している。さらに、処理室10の他方側の側壁部17には、室内11に供給された処理ガスGを排出する排出口13が形成されており、排出口13は、吸引ポンプ50に接続されている。
本実施形態では、ガス供給部20は、処理ガスGが充填されたガス供給源21と、ガス供給源21から室内11に送られる処理ガスGの流量を調整する調整弁22、とを備えている。さらに、ガス供給部20は、室内11への処理ガスGの供給および供給停止を行う電磁弁23を備えている。
処理ガスGは、被処理物Pの表面処理を行うガスであり、本実施形態では、浸窒処理を行うので、処理ガスGは、アンモニアガスである。なお、表面処理として浸炭処理を行う場合には、処理ガスGに、アセチレンガス、メタンガス、またはプロパンガスなどの炭化水素系ガスを用いる。表面処理として浸硫処理を行う場合には、処理ガスGに、硫化水素ガスを挙げることができる。これらの処理ガスGには、窒素ガス等の不活性ガスがさらに混合していてもよい。
加熱部30は、処理室10の室外に配置されている。加熱部30は、石英ガラスからなる壁部15を介して室内11の被処理物Pに光線を照射することにより、被処理物Pを直接的に加熱する赤外線ランプ(ハロゲンランプ)である。この他にも、加熱部30は、高周波により被処理物Pの表面を加熱する誘導加熱装置であってもよい。
2.被処理物Pについて
本実施形態に係る表面方法を実施する被処理物Pは、鋼製の被処理物であり、被処理物Pは、フェライト組織およびパーライト組織からなる鋼であることが好ましい。このような鋼としては、たとえば、C:0.1〜0.3質量%、Si:0.15〜0.35質量%、Mn:0.55〜0.95質量%、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、残部が不可避不純物およびFeからなる鋼などを挙げることができる。さらに、必要に応じて、上述した成分に、Ni:0.25質量%以下、Cr:0.8〜1.3質量%、Mo:0.1〜0.4質量%の範囲で、Ni、Cr、Moの少なくとも1種がさらに添加されていてもよい。
本実施形態に係る表面方法を実施する被処理物Pは、鋼製の被処理物であり、被処理物Pは、フェライト組織およびパーライト組織からなる鋼であることが好ましい。このような鋼としては、たとえば、C:0.1〜0.3質量%、Si:0.15〜0.35質量%、Mn:0.55〜0.95質量%、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、残部が不可避不純物およびFeからなる鋼などを挙げることができる。さらに、必要に応じて、上述した成分に、Ni:0.25質量%以下、Cr:0.8〜1.3質量%、Mo:0.1〜0.4質量%の範囲で、Ni、Cr、Moの少なくとも1種がさらに添加されていてもよい。
さらに、被処理物Pは、ブロック状、円柱状など特に限定されるものではなく、たとえば、外歯または内歯の平歯車、はすば歯車、やまば歯車、かさ歯車、またはウォームギアなどの歯車を挙げることができる。
3.表面処理方法(浸窒処理方法)について
以下に、図1とともに、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る表面処理方法の一例として、浸窒処理方法を説明する。
以下に、図1とともに、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る表面処理方法の一例として、浸窒処理方法を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る表面処理方法における処理ガスの流量と、被処理物の温度との関係を示した図である。図3(a)は、図2の時点Aにおける被処理物の表面からの深さと窒素の濃度の関係を示した模式図であり、図3(b)は、図2の時点Bにおける被処理物の表面からの深さと窒素の濃度の関係を示した模式図である。
まず、図1に示すように、処理室10内において、被処理物Pを載置網14に載置する。次に、加熱部30を用いて、昇温された状態の被処理物Pに赤外線を照射する。これにより、被処理物Pの表面が加熱され、被処理物Pの表面の温度が上昇する。なお、処理室10の室内11に配置する前の被処理物Pを、予めヒータ等により雰囲気を加熱することで予熱してもよい。
次に、図2に示すように、被処理物Pの表面温度が、900℃〜1000℃の範囲に到達した時点で、浸窒工程(固溶工程)を行う。具体的には、電磁弁23を開弁することにより、ガス供給源21から、調整弁22で流量が調整された処理ガスGを0.1〜5分間供給しつつ、吸引ポンプ50を用いて、処理室10の室内11から処理ガスGを排出する。これにより、被処理物Pの表面に処理ガスGであるアンモニアガスを接触させて、被処理物Pの表面に、アンモニアの窒素を固溶させ、被処理物Pの浸窒処理を行う。
本実施形態では、被処理物Pに赤外線を照射することにより、被処理物Pの表面を直接的に加熱しているので、被処理物Pの雰囲気を加熱する場合に比べて、室内11を形成する壁面の温度上昇を抑えることができる。この結果、室内11において、被処理物Pの表面以外で、アンモニアガスが室内11で分解することを抑制し、被処理物Pの表面に、これまでにない高い温度条件で、アンモニアガスの窒素を短時間で固溶させることができる。このようにして、図3(a)に示すように、被処理物Pの内部から表面に進むに従って、窒素の濃度が高い被処理物Pを短時間で得ることができる。
次に、浸窒工程(固溶工程)後に、続けて拡散工程を行う。拡散工程では、処理室10の室内11に流す処理ガスGの流量を低下させ、加熱された被処理物Pの表面に、固溶した窒素を被処理物Pの内部に拡散させる。
具体的には、電磁弁23を閉弁することにより、室内11への処理ガスの供給を停止する。この状態で、処理室10の室内11から吸引ポンプ50により、処理ガスGが排出される。本実施形態では、図2に示すように、固溶工程の開始のタイミングから引き続いて、拡散工程の少なくとも途中まで、被処理物Pの温度が連続的に上昇する(すなわち、その温度が単調増加する)ように、被処理物Pを加熱する。
具体的には、拡散工程において、1100℃〜溶融限界温度までの範囲を上限温度として、加熱部30を用いて、被処理物Pを引き続き加熱する。その後、加熱部30による、被処理物Pへの赤外線の照射を中断し、被処理物Pの表面が900〜1100℃の範囲になるように、被処理物Pの表面を降温させる。室内11への処理ガスの供給の停止時間は、1〜10分間であり、これが拡散工程の拡散時間に相当する。なお、被処理物Pの表面の温度を降温させる際に、例えば、窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガスを被処理物Pに吹き付けて、降温をさらに促進してもよい。
このようにして、被処理物Pの表面の窒素を内部に拡散させることができ、図3(b)に示すように、被処理物Pの表面の窒素の濃度を下げることができる。これにより、再び、浸窒工程を行っても、被処理物Pの表面に窒素が過剰に固溶することはない。この結果、被処理物Pの表面に、窒素が過剰に固溶することに起因したボイドの発生を回避することができる。
さらに、被処理物Pの表面の温度低下により、被処理物Pの表面の温度が900〜1000℃の範囲に到達した時点で、上述した浸窒工程を行い、その後、拡散工程を行い、これらの工程を交互に繰り返す。
さらに、本実施形態では、赤外線の照射により被処理物Pを加熱しているので、この赤外線の照射を中断すれば(すなわち赤外線ランプの電源を落とせば)、被処理物Pの表面の温度を速やかに低下させることができる。これにより、上述した被処理物Pの表面の温度条件で被処理物Pを加熱しつつ、後述する浸窒工程と拡散工程とを短い期間で繰り返し行うことができる。
最後に、表面処理を行った被処理物Pを、処理室10の室内11から取り出し、冷却室で被処理物Pを急冷し、被処理物Pの焼き入れを行う。このようにして、被処理物Pの表面から内部に窒素を固溶した被処理物Pを得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
本実施形態では、固溶工程(浸窒工程)と拡散工程とを、これらの順で繰り返し行ったが、例えば、固溶工程と拡散工程とを1回のみ行う場合には、固溶工程の開始のタイミングから拡散工程の終了のタイミングまで、被処理物の温度が連続的に上昇するように、被処理物を加熱してもよい。
1:表面処理装置、10:処理室、11:室内、12:導入口、排出口、14:載置網、15:壁部、16:石英管、17:側壁部、20:ガス供給部、21:ガス供給源、22:調整弁、23:電磁弁、30:加熱部、50:吸引ポンプ、G:処理ガス、P:被処理物。
Claims (1)
- 処理室内に処理ガスを流しながら、前記処理室内で加熱された鋼製の被処理物の表面から、前記処理ガスの元素を固溶させる固溶工程と、
前記固溶工程の後に、前記処理室内に流す処理ガスの流量を低下させ、前記被処理物の表面に固溶した前記元素を前記被処理物の内部に拡散させる拡散工程と、を含む表面処理方法であって、
前記固溶工程の開始のタイミングから、前記拡散工程の少なくとも途中まで、前記被処理物の温度が連続的に上昇するように、前記被処理物を加熱することを特徴とする表面処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016121926A JP2017226862A (ja) | 2016-06-20 | 2016-06-20 | 表面処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2016121926A Pending JP2017226862A (ja) | 2016-06-20 | 2016-06-20 | 表面処理方法 |
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2016
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