JP2017226146A - スタンドアップパウチ用多層構造体 - Google Patents

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眞太郎 碓氷
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Abstract

【課題】熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチにおいて、無機酸化物の蒸着膜を設けることなく、輸送による屈曲を受けた後や落下による瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合であってもガスバリア性および耐落袋性に優れた熱水殺菌処理用スタンドアップパウチが得られる、スタンドアップパウチ用多層構造体を提供すること。
【解決手段】熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに用いられる多層構造体であって、基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層を有し、基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)が隣接してなる多層構造(Lc/Lb/Lc)を有するスタンドアップパウチ用多層構造体とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、スタンドアップパウチ用多層構造体に関し、更に詳しくは、熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに用いられる多層構造体であって、輸送時や陳列の際に誤って落下した際の屈曲衝撃に対して破損し難いスタンドアップパウチを構成するための多層構造体、およびそれを用いたスタンドアップパウチに関するものである。
食品や飲料等の包装材料は、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理により殺菌する殺菌工程における包装材料の構成成分の溶出、また、それに伴う内容物の風味の悪化を防止する為、耐熱水処理性、耐熱性といった機能が要求されている。
また、近年食品等の包装容器として、従来の瓶や缶に比べて軽量で使用後の減容性に優れる自立袋(スタンドアップパウチともいう。)が普及してきている。スタンドアップパウチを構成するフィルム材料としては内容物を充填した際に自立出来る剛性と、内容物の劣化防止の観点からガスバリア性を備えた構成が多数存在する。これらの性質を備えたフィルム材料としては、アルミニウム箔とポリマーフィルムから成る積層フィルムが使用されてきた。
しかし、アルミニウム箔を主要な構成とするスタンドアップパウチは、特に食品包装材に関しては、消費者が電子レンジを使用出来ない問題があり、アルミニウム箔を使用しないスタンドアップパウチの要望が高まっている。
一方、アルミニウム箔を使用しないで比較的高いガスバリア性が得られるフィルム基材として、酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物から形成される蒸着フィルムを使用することが提案されているが、無機酸化物の蒸着フィルムの場合には、優れたガスバリア性を有するものの、耐屈曲性等に欠けることから、金属蒸着層の割れやかけが発生し易く、そのガスバリア性を著しく損なうという問題点がある。
かかる問題点を解決する手段として、酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着フィルムの面上に、1種以上のアルコキシドとビニルアルコール系樹脂を含有し、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性塗布膜を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
上記特許文献1の開示技術は、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性塗布膜と無機酸化物の蒸着膜とが相乗し、耐屈曲性を有することから、高いガスバリア性を安定して維持するとともに、耐レトルト性等に優れるものである。
また、レトルト処理等の熱水殺菌処理用途において、アルミニウム箔や透明蒸着フィルムを使用せず高いガスバリア性が得られるフィルムとして、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と称することがある。)層を有する樹脂組成物および多層構造体が知られている。EVOHはボイル処理やレトルト処理などの熱水殺菌処理、特にレトルト処理直後にガスバリア性が低下することが知られている。
これに対し、多価金属硫酸塩水和物の完全脱水物または部分脱水物を含有させることで、溶融成形性およびガスバリア性の回復スピードが早く、しかも優れたガスバリア性を維持できる樹脂組成物が記載されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、特許文献3記載の技術は、高湿度状態で長時間保持した場合にフィルムに発現する粒状の膨れが発生する問題に対して、EVOHを含む樹脂組成物からなる層の両面にポリアミド系樹脂層が一体的に積層された積層ユニットを含むことにより解決される旨記載されている。
特開2005−178804号公報 国際公開第2011/027741号 国際公開第2013/146988号
しかしながら、熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチにおいて、特許文献1に記載の透明蒸着フィルムを用いた場合であっても、未だ輸送による屈曲を受けた後のガスバリア性には改善の余地があった。さらには落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合、金属蒸着層に割れが生じ、ガスバリア性が極端に損なわれる恐れがあった。
また、特許文献2、3においては、スタンドアップパウチとした場合における特有の問題は記載も示唆もなく、認識すらされていない。熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチにおいて、特許文献3記載の多層構造体を用いた場合、輸送による屈曲を受けた後のガスバリア性低下問題は改善されるものの、落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合、多層構造体に亀裂が生じたり、場合によっては多層構造体が割れ、スタンドアップパウチの内容物が漏れたりする恐れがあった。
そこで、本発明はこのような背景下において、熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチにおいて、無機酸化物の蒸着膜を設けることなく、輸送による屈曲を受けた後や落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合であってもガスバリア性および多層構造体に亀裂が生じたり、場合によっては多層構造体が割れ、スタンドアップパウチの内容物が漏れたりすることのないスタンドアップパウチが得られる、スタンドアップパウチ用多層構造体を提供することを課題とするものである。以下、スタンドアップパウチが落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合に、多層構造体に亀裂が生じたり、場合によっては多層構造体が割れ、スタンドアップパウチの内容物が漏れたりしないという性質を、「耐落袋性」と表現することがある。
しかるに、本発明者らはこのような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、基材フィルム(A)と、ヒートシール樹脂(D)層との間に、ポリアミド系樹脂(B)層の両面に、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層が隣接してなる積層構造を有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、以下の(1)〜(9)である。
(1)熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに用いられる多層構造体であって、
基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層を有し、前記基材フィルム(A)と前記ヒートシール樹脂(D)層との間に、前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面に前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)を有することを特徴とするスタンドアップパウチ用多層構造体。
(2)スタンドアップパウチ用多層構造体の全厚みに対する前記積層構造の厚みの比が、積層構造厚み/全厚みにて0.015〜0.7であることを特徴とする前記(1)記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(3)前記積層構造において、前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)の厚み(Tc)と前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み(Tb)との比(Tc/Tb)が、それぞれ0.01〜10であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(4)前記基材フィルム(A)と前記積層構造との間に、さらにポリアミド系樹脂(B)層を有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(5)前記ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)が、熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(6)前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みが1〜100μmであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(7)前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)の厚みがそれぞれ1〜35μmであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(8)前記基材フィルム(A)が、ポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のスタンドアップパウチ用多層構造体により形成されたことを特徴とするスタンドアップパウチ。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体は、基材フィルム(A)とヒートシール樹脂(D)層との間に、ポリアミド系樹脂(B)層の両面にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)を有するので、無機酸化物の蒸着膜を設けることなく、輸送による屈曲を受けた後や落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合であっても、ガスバリア性および耐落袋性に優れるスタンドアップパウチを得ることができるといった効果を有する。
図1は、本発明にかかるスタンドアップパウチ用多層構造体の一実施形態の構成を示す概略的断面図である。 図2は、本発明のスタンドアップパウチの一例を示す全体斜視図である。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
なお、本発明において、スタンドアップパウチの内容物を収容する側、すなわちシーラント側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。
また、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」等の語は、図面の方向に対応する便宜的なものである。
また、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい、「シート」とは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
さらに、本発明において、「スタンドアップパウチ」とは、胴部及び胴部に対して垂直方向に設けられた底部を有し、内容物を充填した際に自立出来る剛性を有する包装体を意味するものである。
(スタンドアップパウチ用多層構造体)
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体は、熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに用いられる多層構造体であって、基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層を有し、前記基材フィルム(A)と前記ヒートシール樹脂(D)層との間に、前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面に前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)を有する。
ここで、「熱水殺菌処理される」とは、多層構造体から形成されたスタンドアップパウチを水の存在下で加熱殺菌する処理を意味し、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体は、熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに有効に用いることができるものである。
以下に、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体に用いる各層について説明する。
<基材フィルム(A)>
本発明で用いる基材フィルム(A)としては、これが、本発明に係るスタンドアップパウチを構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等において優れた強度を有し、更に、耐突き刺し性、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、透明性等に優れた樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。
具体的には、基材フィルム(A)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他の強靭な樹脂等から得られるフィルムないしシートを使用することができ、中でも、ポリエステル系樹脂より得られるポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。
上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
また、本発明における基材フィルム(A)の厚みとしては、強度、耐突き刺し性等について、保持され得る厚みであればよく、厚すぎると、コストが上昇してしまう傾向があり、逆に、薄すぎると、強度、耐突き刺し性等が低下してしまう傾向がある。
本発明においては、上記のような理由から、基材フィルム(A)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、特には10〜50μmが好ましい。
また、基材フィルム(A)には、必要に応じて適宜印刷層を設けることができる。印刷層としては、溶剤と、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系などのバインダー樹脂と、各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤などを配合してなるインキにより形成される層である。この印刷層により、文字、絵柄などを形成することができる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。また、基材フィルム(A)の表面を、予め前処理としてコロナ処理またはオゾン処理を施すことにより、印刷層の密着性を向上させることができる。通常は、基材フィルム(A)の内側面に印刷層を設ける。
<ポリアミド系樹脂(B)層>
本発明で用いるポリアミド系樹脂(B)層を構成するポリアミド系樹脂としては、公知のポリアミド系樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。また、共重合ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族共重合ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−p−フェニレン・3−4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族共重合ポリアミド、非晶性ポリアミド、上記のポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等のカルボキシル基やアミノ基で末端を変性した末端変性ポリアミド等が挙げられる。本発明の効果がより効率よく得られる点で、好ましくは共重合ポリアミド系樹脂であり、特に好ましくは脂肪族共重合ポリアミドである。
本発明におけるポリアミド系樹脂(B)層の厚み(Tb)としては、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1〜80μm、更に好ましくは5〜60μm、特に好ましくは10〜40μmである。なお、かかるポリアミド系樹脂(B)層は、単数層、複数層のいずれであってもよく、複数層の場合は、多層構造体におけるポリアミド系樹脂(B)層厚みの総和が、上記範囲であればよい。
ポリアミド系樹脂(B)層の厚みが薄すぎると、レトルト処理後のガスバリア性の回復速度が遅くなる傾向があり、厚すぎると、結果的にスタンドアップパウチ全体の厚みが厚くなってしまうことで、剛性が大きくなり、スタンドアップパウチに実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
<エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層>
エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層はEVOHからなるものであってもよく、EVOH以外の任意の成分が含まれたEVOH樹脂組成物からなる層であってもよい。
EVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル系共重合体)をケン化することにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノール等の低級アルコールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。このようにして製造されるEVOHは、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物処理効率が良い点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
EVOHにおけるエチレン含有率は、ISO 14663に基づいて測定した値で、20〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは25〜35モル%である。かかる含有率が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が低下する傾向がある。
EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、90〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
また、EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、0.5〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜性が低下する傾向があり、小さすぎる場合には溶融粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
本発明に用いられるEVOHには、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ブテン−1、2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体;不飽和カルボン酸又はその塩,部分アルキルエステル,完全アルキルエステル,ニトリル,アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOH系樹脂を用いることもできる。
以上のような変性物の中でも、共重合によって一級水酸基が側鎖に導入されたEVOHは、延伸処理や真空・圧空成形などの二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。
本発明で用いられるEVOHには、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般的にEVOHに配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが含有されていてもよい。
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩などの塩等が挙げられる。
また、本発明で使用されるEVOHは、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、かかる他のEVOHとしては、エチレン含有率が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの、変性量が異なるもの(例えば、1,2−ジオール構造単位の含有量が異なるもの)などを挙げることができる。
また、レトルト食品などのように、熱水処理により殺菌処理される包装体の包装用材料を製造する場合、EVOH(C)層はポリアミド系樹脂を含有したEVOH樹脂組成物により構成することが好ましい。ポリアミド系樹脂は、アミド結合がEVOHの水酸基及び/又はエステル基との相互作用によりネットワーク構造を形成することが可能であり、これにより、レトルト処理時のEVOHの溶出を防止することができる。
該ポリアミド系樹脂としては、公知のものを用いることができる。例えば、上述したポリアミド系樹脂(B)と同様のものを用いることができる。
<ヒートシール樹脂(D)層>
本発明で用いるヒートシール樹脂(D)層は、熱によって溶融し相互に融着し得る層である。特に本発明では、ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)には熱可塑性エラストマーを含有することが好ましい。
〔熱可塑性エラストマー〕
本発明にいう、熱可塑性エラストマーとは、例えば、サーモランやタフマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマー、ラバロンやタフテック等のスチレン系熱可塑性エラストマー、エラストラン等のウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、樹脂組成物(d)における分散性が優れる点で、好ましくはオレフィン系熱可塑性エラストマーである。
特にオレフィン系熱可塑性エラストマーとは、炭素−炭素二重結合を含有する脂肪族炭化水素モノマーであるオレフィンを主モノマーとし、通常、数平均分子量1万以上の高分子で、主鎖が炭素結合のみで構成される親油性ポリマーをいう。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメントとしてポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレンなど)、ソフトセグメントとして脂肪族系ゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)など)を使用した熱可塑性を示すエラストマー樹脂であり、ポリオレフィンと脂肪族系ゴムをコンパウンドする方法(コンパウンド型)、あるいはオレフィン重合時に脂肪族ゴムを導入する方法(リアクター型)によって合成されたものが挙げられる。コンパウンド型としては、単純ブレンド品(非架橋タイプ)と動的架橋品(全面架橋タイプ、または部分架橋タイプの2種類)がある。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、密度が、通常0.85〜0.96g/cmであり、好ましくは0.85〜0.92g/cm、より好ましくは0.85〜0.90g/cmである。
さらに、本発明で用いる熱可塑性エラストマーは、23℃、50%RHにおける曲げ弾性率が150MPa未満、好ましくは100MPa未満、特に好ましくは50MPa未満であることが、曲げに対する柔軟性が良好であるという点から望ましい。
より優れた蓄積疲労吸収効果を得るためには、密度が0.85〜0.90g/cmで、且つ23℃、50%RHにおける曲げ弾性率が50MPa未満であることが好ましい。
さらにまた、ガラス転移温度は通常−110℃〜0℃、好ましくは−80℃〜−20℃であり、より好ましくは−70℃〜−40℃である。ガラス転移温度が室温に比べてはるかに低い温度範囲にあり且つ低結晶性であることにより、低温から室温に至る広い温度範囲での柔軟性に非常に優れる。ここで、ガラス転移温度とは、熱可塑性エラストマーの無定形部分がガラス状態からゴム状態に転移する温度を意味しており、通常は、示差走査熱量計を用いてJIS K7121準拠の方法で測定することができる。
また、熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)においては、210℃、荷重2160gの条件下で、通常0.01〜150g/10分であり、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは1〜25g/10分であり、さらに好ましくは2〜10g/10分である。
熱可塑性エラストマーの含有量は、ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)中、1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜70質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。かかる配合量が多すぎる場合、スタンドアップパウチを熱水殺菌処理する際に熱可塑性エラストマー成分が内容物側へ溶出してしまう可能性が高くなり、少なすぎる場合、耐落袋性改善効果が発現されないという傾向がある。
樹脂組成物(d)における、熱可塑性エラストマー以外の樹脂成分としては、従来公知のヒートシール性を有する樹脂(ヒートシール樹脂)を用いることが可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、これらポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂が挙げられる。
中でも、スタンドアップパウチに十分な自立性を付与するという観点から、フィルム自体に靱性のある直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もしくはポリプロピレンが好ましい。さらには、比較的高温(120℃以上)での熱水殺菌処理後の溶出を抑制する観点から、ポリプロピレンが特に好ましい。
かかる熱可塑性エラストマー以外の樹脂の含有量は、樹脂組成物(d)中、10〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜97質量%、さらに好ましくは50〜95質量%、特に好ましくは60〜90質量%である。かかる配合量が多すぎる場合、耐落袋性改善効果が発現されないという傾向があり、少なすぎる場合、スタンドアップパウチを熱水殺菌処理する際に熱可塑性エラストマー成分が内容物側へ溶出してしまう可能性が高くなるという傾向がある。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体において、ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの含有濃度が、多層構造体の厚さ方向において、基材フィルム(A)側に対して反対側表面層が基材フィルム(A)側表面層よりも低濃度であることが好ましい。
このようにヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの含有濃度を厚さ方向で変化させる方法としては、例えば、上記熱可塑性エラストマーの含有濃度が異なる複数の樹脂組成物(d)を調製し、熱可塑性エラストマーの含有濃度のより高い樹脂組成物(d)が基材フィルム(A)側に位置するようにヒートシール樹脂(D)層を構成する方法が挙げられる。なお、ヒートシール樹脂(D)層を3種以上の樹脂組成物(d)で形成する場合は、基材フィルム(A)側表面層を形成する樹脂組成物(d)中の熱可塑性エラストマーの濃度が基材フィルム(A)とは反対側表面層を形成する樹脂組成物(d)中の熱可塑性エラストマーの濃度よりも高くなれば、中間に位置する層の熱可塑性エラストマーの含有濃度は基材フィルム(A)側表面層の濃度よりも高くても低くてもよい。
上記の様に、本発明におけるヒートシール樹脂(D)層は、単層ないし多層で構成することができる。ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの含有濃度の調整が容易であるという観点から、多層構造であることが好ましい。
このように、ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの含有濃度を、熱可塑性エラストマー濃度の異なる複数の樹脂組成物(d)からなる層を用いて多層構造体の厚さ方向に変化させる場合、熱可塑性エラストマー種を含有する樹脂組成物(d)からなる全ての層をヒートシール樹脂(D)層とみなす。またこの場合、ヒートシール樹脂(D)層における樹脂組成物(d)の熱可塑性エラストマーの含有量および熱可塑性エラストマー以外の樹脂成分の含有量は、各層の濃度に各層の厚み比をかけて、足し合わせた値を採用する。
本発明において、ヒートシール樹脂(D)層における熱可塑性エラストマーの、基材フィルム(A)側表面層の濃度と基材フィルム(A)側に対して反対側表面層の濃度の差は、3質量%以上であることが好ましく、5〜90質量%がより好ましく、8〜50質量%が更に好ましく、8〜20質量%が特に好ましい。熱可塑性エラストマーの基材フィルム(A)側表面層の濃度と基材フィルム(A)側に対して反対側表面層の濃度の差が上記範囲である場合、ヒートシール樹脂(D)層の基材フィルム(A)側に存在する熱可塑性エラストマーに対する耐衝撃性の発現と、ヒートシール樹脂(D)層の基材フィルム(A)側とは反対側における内容物への上記熱可塑性エラストマー成分の浸み出し防止の効果を両立させることができる傾向がある。
また、ヒートシール樹脂(D)層の基材フィルム(A)側とは反対側表面層における、熱可塑性エラストマーの濃度は、樹脂組成物(d)中、1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。ヒートシール樹脂(D)層の基材フィルム(A)側とは反対側は、本発明の多層構造体を用いてスタンドアップパウチを形成した際に内側、すなわち内容物と接する。そのため、樹脂組成物(d)中の熱可塑性エラストマーの含有量が多くなり過ぎると、熱水殺菌処理において該樹脂組成物の内容物への浸み出しが懸念されるため、前記範囲とすることが好ましい。
本発明におけるヒートシール樹脂(D)層は上記樹脂組成物(d)のフィルムあるいはその塗布膜等を使用することができる。
また、ヒートシール樹脂層の厚みとしては、ヒートシール樹脂層が複数ある場合は全て足し合わせた厚みにて5〜200μm、好ましくは、10〜110μm、特に好ましくは20〜90μmが望ましい。かかる厚みが薄すぎるとシール部分のシール強度が低下する傾向があり、厚すぎると剛性が大きくなり、スタンドアップパウチに食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
<他の樹脂層>
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体には、上記基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層以外にさらに、他の樹脂層を有していてもよく、また、他の樹脂層が積層される位置は任意である。
他の樹脂層を構成する樹脂としては、公知のものを使用できる。このような樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。
他の樹脂層の厚みとしては、1層あたり1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜90μmであり、特に10〜80μmが好ましい。
<接着樹脂層>
接着樹脂層は、各層の接着強度を高めるために設けられる。接着樹脂層が適切に配置されていない場合、わずかな力で各層が剥離してしまい、スタンドアップパウチとしての使用に耐えられなくなる傾向がある。当該接着樹脂層は、任意の位置に設けられる。
接着樹脂層を構成する接着樹脂としては、公知のものを使用できる。接着樹脂としては、代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることができる。
接着樹脂層の厚みとしては、1層あたり1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは2〜20μmであり、特に3〜10μmが好ましい。
<層構成>
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体は、具体的に、図1に示したように、少なくとも基材フィルム(A)1と、ポリアミド系樹脂(B)層2、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層3及びヒートシール樹脂(D)層4を備えた多層材20とで構成され、多層材20はポリアミド系樹脂(B)層2(Lb)の両面にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層3a,3b(Lc)が隣接してなる積層構造LS(Lc/Lb/Lc)を有し、この積層構造LSが基材フィルム(A)1とヒートシール樹脂(D)層4との間に位置することを最大の特徴とする。
本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体10においては、ポリアミド系樹脂(B)層2の両面に、EVOH(C)層3a,3bが隣接してなる積層構造LSを備えることにより、ガスバリア層であるEVOH(C)層3を複数層に分割し、かつポリアミド系樹脂(B)層2と一体的に用いることで、輸送による屈曲を受けた後や落下により瞬間的な屈曲衝撃を受けた場合であってもガスバリア性および耐落袋性が優れるという効果を有する。
さらに本発明においては、ガスバリア性樹脂層として、EVOH(C)層3を用い、かつ、ポリアミド系樹脂(B)層2とEVOH(C)層3を隣接させることも重要である。ポリアミド系樹脂(B)層2とEVOH(C)層3を隣接させることで、熱水処理後のガスバリア性の回復速度が速くなる傾向がある。
また、ポリアミド系樹脂(B)層2は、さらに、EVOH(C)層3の外側、すなわち、基材フィルム(A)と積層構造LSの間に配置することが、熱水処理後のガスバリア性の回復速度が速くなるので、好ましい。
なお、本発明において、上記ポリアミド系樹脂(B)層の両面に、EVOH(C)層が隣接してなる積層構造におけるポリアミド系樹脂(B)層を「ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)」、EVOH(C)層を「EVOH(C)層(Lc)」と表記して、他に設けられるポリアミド系樹脂(B)層、EVOH(C)層とは区別する。
本発明において、積層構造を構成する2つのEVOH(C)層(Lc)の材質、厚みはそれぞれ同じであっても異なってもよい。
また、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体において、基材フィルム(A)とEVOH(C)層(Lc)間や、ヒートシール樹脂(D)層とEVOH(C)層(Lc)間には、上記ポリアミド系樹脂(B)層、EVOH(C)層、他の樹脂層や接着樹脂層を設けることも可能である。
具体的層構成としては、例えば基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ヒートシール樹脂(D)層、基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/ヒートシール樹脂(D)層などが挙げられる。なお、上記層構成において接着樹脂層は任意に有することが可能である。
本発明の効果を効率的に得られる点で好ましくは基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/ヒートシール樹脂(D)層であり、特に好ましくは基材フィルム(A)/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂(D)層である。本発明におけるEVOH(C)層(Lc)の両端を比較的柔軟なポリアミド系樹脂でサンドすることにより、多層構造体全体がさらに柔軟化し、スタンドアップパウチとしての自立性を保ちながらも、落下時の衝撃を緩和させることができる。
<層厚み>
本発明において、基材フィルムを含むスタンドアップパウチ用多層構造体の全厚は、10〜600μmが好ましく、より好ましくは50〜300μm、更に好ましくは70〜280μm、特に好ましくは80〜260μmである。全厚が薄すぎると、自立性を保持するための剛性が得られない傾向がある。また、厚すぎると、剛性が大き過ぎて、スタンドアップパウチに実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。本発明における開口性とは、被包装物の充填において包装袋口への空気等のガス吹き付けに対して容易に開口し、自動包装に対応できる特性をいう。
また、スタンドアップパウチ用多層構造体を構成する多層材の厚みは、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、5〜500μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜300μm、より好ましくは20〜180μm、特に好ましくは50〜140μmである。
ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面にEVOH(C)層(Lc)が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)において、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)は衝撃吸収能のみを考慮する場合、厚みは厚いことが好ましい。しかしながら、従来一般に用いられたポリアミド系樹脂(B)層の厚みより薄い場合であっても良好な衝撃吸収能を得ることが可能である。
ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1〜80μm、更に好ましくは3〜50μm、より更に好ましくは5〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
また、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体全体の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み/全厚みが0.005〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4であり、特に好ましくは0.05〜0.1である。積層構造体の全厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比が前記範囲であると、スタンドアップパウチとしての耐落袋性が良好となり、かつ、スタンドアップパウチの自立性が担保されるため好ましい。
また、基材フィルム(A)の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み/基材フィルム(A)厚みが0.01〜8であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5であり、特に好ましくは0.3〜3である。基材フィルム(A)の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比が前記範囲であると、スタンドアップパウチとしての耐落袋性が良好となり、かつ、スタンドアップパウチの自立性が担保されるため好ましい。
そして、ヒートシール樹脂(D)層の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み/ヒートシール樹脂(D)層の厚みが0.001〜16であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10であり、特に好ましくは0.1〜1である。ヒートシール樹脂(D)層の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みの比が前記範囲であると、スタンドアップパウチとしての耐落袋性が良好となり、かつ、所望のヒートシール強度を得ることができるため好ましい。なお、ヒートシール樹脂(D)層が複数ある場合はその合計厚みにて考えるものとする。
各層の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みが上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られ、かつ経済的、生産的に有利となる傾向がある。
積層構造(Lc/Lb/Lc)において、EVOH(C)層(Lc)の厚みはそれぞれ、1〜35μmであることが好ましく、より好ましくは3〜25μm、特に5〜15μmが好ましい。EVOH(C)層(Lc)の厚みがそれぞれ前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができる。
かかるEVOH(C)層は厚みに比例してガスバリア能が増大する傾向があるが、本発明においては従来のEVOHによるガスバリア層を複数に分割することにより耐落袋性を向上するため、EVOH(C)層(Lc)の1層あたりが上記厚みである場合、所望のガスバリア能を得つつ、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
また、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体全体の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)との比は、EVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)/全厚みが0.005〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.4であり、特に好ましくは0.05〜0.3である。積層構造体の全厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比が前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができるため好ましい。また、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体全体の厚みに対する各EVOH(C)層(Lc)の厚みの比は、EVOH(C)層(Lc)/全厚みがそれぞれ0.025〜0.35であることが好ましく、より好ましくは0.015〜0.2であり、特に好ましくは0.05〜0.1である。積層構造体の全厚みに対する各EVOH(C)層(Lc)の厚みの比が前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができるため好ましい。
また、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比は、EVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)/ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)が0.01〜35であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.8〜5、特に好ましくは1.1〜5である。ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比が前記範囲であると、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の有する柔軟性が十分に活かされ、EVOH(C)層(Lc)の剛直さを補う結果、スタンドアップパウチの耐落袋性が改善するため好ましい。
そしてまた、基材フィルム(A)の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比は、EVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)/基材フィルム(A)が0.01〜35であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20であり、特に好ましくは1〜3である。基材フィルム(A)の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比が前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができるため好ましい。
そして、ヒートシール樹脂(D)層の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比は、EVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)/ヒートシール樹脂(D)層が0.003〜7であることが好ましく、より好ましくは0.04〜2.5、特に好ましくは0.1〜0.8である。ヒートシール樹脂(D)層の厚みに対するEVOH(C)層(Lc)の合計厚み(Lct)の比が前記範囲であると、所望のガスバリア性、耐落袋性を有しつつ、かつ、所望のヒートシール強度を得ることができるため好ましい。
なお、ヒートシール樹脂(D)層が複数ある場合はその合計厚みにて考えるものとする。
本発明の多層構造体の全厚みに対する、ポリアミド系樹脂(B)層の両面に、EVOH(C)層が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)の厚み比(積層構造/全厚み)は、0.015〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.4である。前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができるため好ましい。
また、積層構造(Lc/Lb/Lc)の厚みは、3〜150μmであることが好ましく、より好ましくは10〜110μm、特に好ましくは20〜60μmである。前記範囲であると、所望のガスバリア性を有しつつ、かつ、スタンドアップパウチとしての耐落袋性を改善することができるため好ましい。
積層構造(Lc/Lb/Lc)において、各EVOH(C)層(Lc)の厚み(Tc)とポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み(Tb)との比(Tc/Tb)は、それぞれ0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5、さらに好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2である。積層構造におけるTc/Tbがそれぞれ0.01以上であるとスタンドアップパウチのガスバリア性が向上するため好ましく、10以下であるとスタンドアップパウチの耐落袋性が向上するため好ましい。
本発明において、ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層(Lc)/ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)/EVOH(C)層(Lc)/ポリアミド系樹脂(B)層という構造が特に好ましく、多層構造体におけるかかる積層構造の厚みとして、5〜150μmであることが好ましく、より好ましくは20〜110μmである。
また、本発明の多層構造体において、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外にポリアミド系樹脂(B)層を有する場合、ポリアミド系樹脂(B)層の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。
また、多層構造体全体の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層/全厚みが0.005〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.007〜0.4、特に好ましくは0.01〜0.1である。
また、基材フィルム(A)の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層/基材フィルム(A)が0.01〜8であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5である。
そしてまた、ヒートシール樹脂(D)層の厚みに対するポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層の厚みの比は、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外のポリアミド系樹脂(B)層/ヒートシール樹脂(D)層が0.001〜20であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10である。なお、ヒートシール樹脂(D)層が複数ある場合はその合計厚みにて考えるものとする。
ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外に設けられたポリアミド系樹脂(B)層の厚みが上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。なお、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)以外に設けられたポリアミド系樹脂(B)層が複数ある場合、上記範囲はポリアミド系樹脂(B)層1層あたりにおける厚みを意味する。
<スタンドアップパウチ用多層構造体の製造方法>
本発明における多層構造体は、例えば、(1)基材フィルム(A)に、第1のEVOH(C)層(Lc)、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)、第2のEVOH(C)層(Lc)及びヒートシール樹脂(D)層を積層する方法、(2)基材フィルム(A)に、第1のEVOH(C)層(Lc)、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)、第2のEVOH(C)層(Lc)、ヒートシール樹脂(D)層を順次積層する方法、(3)基材フィルム(A)、第1のEVOH(C)層(Lc)、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)、第2のEVOH(C)層(Lc)及びヒートシール樹脂(D)層のうちの任意の層を積層しておき、残りの層を積層する方法等によって得られる。中でも、積層に要するコストを削減できるという観点から、積層回数が1回のみである上記(1)の方法が好ましい。
まず、第1のEVOH(C)層(Lc)、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)及び第2のEVOH(C)層(Lc)からなる積層構造と、ヒートシール樹脂(D)層とを有する多層材、とりわけ、第1のEVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/第2のEVOH(C)層/ヒートシール樹脂(D)層がこの順に積層されてなる多層材の製造方法について説明する。
本発明の多層材の作製は、溶融成形法、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等で行うことができる。中でも、溶剤を使用しないという環境面、別工程でラミネートを実施する必要がないというコスト面から溶融成形法が好ましい。かかる溶融成形方法としては、公知の手法が採用可能である。例えば、押出成形法(T−ダイ押出、チューブラーフィルム押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から、適宜選択される。
続いて、上記基材フィルム(A)と上記多層材とを積層する方法について説明する。
上記基材フィルム(A)と上記多層材を積層する方法としては、通常の包装材料を製造するときに使用する積層法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等で行うことができる。
而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、その積層する基材の表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を任意に施すことができる。
また、上記において、押出ラミネートするときには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等を溶融押出ラミネート用樹脂として使用することができる。
その際に、接着助剤として、例えば、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、その他のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。
また、本発明においては、ドライラミネートするときには、例えば、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系等をビヒクルの主成分とする溶剤型、水性型、エマルジョン型等のラミネート用接着剤等を使用することができる。
なお、多層材には複数の積層構造(例えば、EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層/ポリアミド系樹脂(B)層/EVOH(C)層)を有していてもよい。
また、複数種の基材フィルムと多層材(例えば、基材フィルム/基材フィルム/多層材)の構成も可能である。また、基材フィルム/積層構造/基材フィルムの構成も可能である。基材フィルム同士の積層についても、上記と同様の方法で積層させることができる。
(スタンドアップパウチ)
本発明のスタンドアップパウチは、上記本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体により形成される。スタンドアップパウチは、胴部及び胴部に対して垂直方向に設けられた底部を有し、内容物を充填した際に自立出来る剛性を有する。
<スタンドアップパウチの構成>
図2は、本発明のスタンドアップパウチの一例を示す全体斜視図である。本発明のスタンドアップパウチ5は、表裏二枚の胴部シート6,6と底部シート7からなっている。胴部シート6および底部シート7は、可撓性を有したシートであり、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を所望の大きさに切り取ったものである。本発明の多層構造体は、多層材側が内側に位置するように、すなわち基材フィルム(A)1側が外側に位置するように配置される。
二枚の胴部シート6,6の下部の間に底部シート7が折り畳まれた状態で挿入され、胴部シート6,6の下部縁部と底部シート7の周縁部がシールされることにより底部シール部8が形成され、重ねられた胴部シート6,6の左右の縁部がシールされることによりサイドシール部9が形成される。これにより、内容物が充填された状態で、底部シート7が拡開しスタンドアップパウチになる。
本発明においては、上記スタンドアップパウチ5の上部が開口した状態で、この開口部から所望の飲食品等の内容物を充填する。次いで、上方の開口部をヒートシールして天シール部等を形成して包装半製品を製造し、しかる後、該包装半製品を、加圧加熱殺菌処理等のレトルト処理等を施して、種々の形態からなるレトルト包装食品を製造することができるものである。
本発明のスタンドアップパウチは、任意の位置に継ぎ口を設けたり、意匠を付与することも可能である。
スタンドアップパウチの寸法としては、継ぎ口等を含まない多層構造体部分の寸法にて、例えば、幅Wが50〜1000mm、好ましくは100〜500mm、特に好ましくは100〜200mm、高さHが50〜1000mm、好ましくは100〜500mmであり、特に好ましくは150〜300mm、底部の奥行きDが10〜500mm、好ましくは20〜300mm、特に好ましくは30〜100mmである。高さHと幅Wの比(H/W)が例えば0.2〜5であり、好ましくは1〜3であり、特に好ましくは1より大きく1.5以下である。かかる範囲にある場合、スタンドアップパウチの視認性や陳列効率が良くなる傾向がある。前記寸法は、スタンドアップパウチを構成する胴部シート6及び底部シート7のサイズを調整することにより所望の寸法とすることができる。なお、自立式のパウチとするために、底部シートは折り畳まれた状態で挿入されるが、パウチの自立状態で、底部シートは折り畳まれた状態から開いた状態となる。シート7自体は長方形であるが、スタンドアップパウチの底部の奥行きDを上記範囲とするために、底部シート7はヒートシール部位を調整することにより略楕円形状に形成され、かかる底部シート7が形成する略楕円形サイズは、長径を胴部シート6の幅と同じサイズとし、短径は10〜500mm、好ましくは20〜300mm、特に好ましくは30〜100mmとすることが好ましい。かかる短径は通常上記底部奥行Dの1〜1.5倍である。
次に、本発明のスタンドアップパウチの具体的な製造方法について説明する。
<スタンドアップパウチの製造方法>
基材フィルム(A)の片面に、例えば、ウレタン系樹脂をバインダーとしたグラビアインキを用いてグラビア印刷を行うことが可能である。このとき、上記基材フィルム(A)の印刷面に、ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面にEVOH(C)層(Lc)が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)を有する多層材を、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法にて貼り合わせを行う。この場合、接着剤は、印刷面の全面に塗布され貼り合わすことによって、多層構造体を形成する。形成した多層構造体は、基材フィルム/印刷層/多層材になる。
次に、スタンドアップパウチを形成するために、本発明の多層構造体を所定の幅にスリットし、胴部シート、底部シートを形成する。図2に示したように、二枚の胴部シート6,6を多層材側が対向するように重ね、底部シート7を二枚の胴部シート6,6の下部の間に挟み込んで、底部と左右側辺をシールし、それぞれ底部シール部8、左右のサイドシール部9を形成し、天部、即ち上部が開口したスタンドアップパウチ5を形成する。この際に、少なくとも一方のサイドシール部9に、長手方向にシール部に囲まれた未シール部からなる空隙部を複数形成する。
次に、上記空隙部に空気を圧入する。空気封入部を形成する方法を簡単に説明する。形成された空隙部の長手方向端部に、空気を圧入するための圧入孔を形成する。この圧入孔は、胴部シート6を貫通する孔であればよい。圧入孔から空気を圧入するために、別の圧入ノズルを圧入孔に当接し、空隙部に空気を圧入しながら、目的の空気量に到達したら、圧入孔よりずらした位置で、シールし空気封入部を形成する。その後、圧入孔をシールする。即ち、ヒートシール層により、圧入孔が塞がれ空気封入部が形成される。
次に、天部が開口した包装袋の底部シートを拡開し内容物を充填して、その後、天部をシールして天シール部を形成し密封することで、本発明のスタンドアップパウチ5が形成される。また、空気封入部は一方のサイドシール部9に形成したが、両方のサイドシール部9に形成しても構わない。空気封入部を両方のサイドシール部9に形成することで、自立性をさらに向上させることができる。
このように形成されたスタンドアップパウチは、自立性を向上させ、かつ内容物が使用されて中身が減少しても、サイドシールの折れや包装袋の腰砕けなどによる変形が生じないものであり、反面、空気封入部と空気封入部の間で折り曲げることができるために、包装袋を減容化して保存することができる。また、使用後廃棄する場合でも、空気封入部と空気封入部との間を折り曲げ、折り畳んで包装袋を減容化できる。
なお、本発明のスタンドアップパウチは、上記胴部シート、底部シートの少なくとも1部に本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を用いることにより得られる。本発明の効果をより効果的に得られる点で、上記胴部シート、底部シートの全てにおいて本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体を用いた、本発明のスタンドアップパウチ用多層構造体からなるスタンドアップパウチが最も好ましい。
<熱水殺菌処理>
なお、本発明によって得られるスタンドアップパウチは、熱水処理による殺菌処理に供するものである。かかる熱水処理とは、レトルト処理、ボイル処理、スチーム処理等の公知の水存在下で行われる加熱殺菌技術を意味する。その条件はパウチに充填する内容物により選択することが可能であるが、通常60〜150℃にて、通常1〜150分処理するものである。
本発明においては、特に、内容物が充填されたスタンドアップパウチに熱水殺菌処理を行う場合、本発明の効果が効率的に得られる傾向がある。さらには、高温加圧条件下であるレトルト処理に供する場合に、本発明の効果がより効率的に得られる傾向がある。かかるレトルト処理とは、水存在下にて通常100〜140℃、好ましくは105〜135℃で通常1〜120分間、好ましくは2〜90分間処理するものである。
<スタンドアップパウチの内容物>
本発明にかかる熱水殺菌処理用スタンドアップパウチを構成する包装用袋内に充填包装する内容物としては、例えば、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体スープ、調味料、飲料水、その他等の各種の飲食品、具体的には、例えば、カレー、シチュー、スープ、ミートソース、ハンバーグ、ミートボール、しゅうまい、おでん、お粥等の流動食品、ゼリー状食品、調味料、水、その他等の各種の飲食品等を挙げることができる。特に本発明においては、内容物が液体を含む場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
而して、本発明のスタンドアップパウチは、耐熱水処理性に優れ、かつ輸送時や陳列の際に誤って落下した際の屈曲衝撃に対して破損し難いので、内容物の充填包装適性、品質保全性等に優れているものであり、特にレトルト処理等の熱水処理により殺菌する殺菌工程に供されるスタンドアップパウチとして有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、質量基準を意味する。
<実施例1>
以下の材料を用いて、多層構造体を作製した。
・基材フィルム(A):延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、フタムラ化学株式会社製、グレード:FE2001A、厚み:12μm
・ポリアミド系樹脂(B):ナイロン6−66、DSM社製「ノバミッド」、グレード:2430J
・EVOH(C):エチレン含有量:29.4モル%、ケン化度:99.7モル%、MFR:5.2g/10分(230℃、荷重2160g)のEVOH
・ヒートシール樹脂(D):ポリプロピレン、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP」、グレード:BC6DRF
・熱可塑性エラストマー:三井化学株式会社製「タフマー」、グレード:A4085S、下記物性を有するエチレン−ブテンランダム共重合体
密度 :0.89g/cm
曲げ弾性率 :30MPa
MFR(210℃、2160g荷重):5.2g/10min
・接着樹脂:三菱化学株式会社製「モディック」、グレード:P553A
(熱可塑性エラストマーの添加量)
ヒートシール樹脂(D)層1:ヒートシール樹脂60質量部に対し、熱可塑性エラストマーを40質量部添加した。
ヒートシール樹脂(D)層2:ヒートシール樹脂90質量部に対し、熱可塑性エラストマーを10質量部添加した。
(熱可塑性エラストマーの添加方法)
Tダイ法による製膜時、事前に、ヒートシール樹脂(D)に、所定量の熱可塑性エラストマーをドライブレンドすることにより添加した。
[多層構造体の製造]
まず、基材フィルム以外の多層材を製造し、該多層材と基材フィルム(A)を積層することにより、本発明の多層構造体を製造した。
(多層材の製造)
Tダイ法による製膜をし、ポリアミド系樹脂(B)層(6μm)/EVOH(C)層(Lc)(10μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)(7μm)/EVOH(C)層(Lc)(10μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(7μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層1(45μm)/ヒートシール樹脂(D)層2(10μm)の多層材を得た。得られた多層材の厚みは100μmであった。
(多層材と基材フィルムの積層)
基材フィルム(A)と上記で得られた多層材を、ドライラミネート用接着剤(主剤:東洋モートン社製「TM−242A」、硬化剤:東洋モートン社製「CAT−RT37L」、上記主剤:上記硬化剤:酢酸エチル=17:1.5:19.2)を用いて、ドライラミネートすることによって、多層構造体を作製した。
ラミネート条件:20℃の環境下で貼り合わせ、40℃にて48時間エージング
得られた多層構造体の構造は、PET(12μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(6μm)/EVOH(C)層(Lc)(10μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)(7μm)/EVOH(C)層(Lc)(10μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(7μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層1(45μm)/ヒートシール樹脂(D)層2(10μm)である。得られた多層構造体の全厚みは112μmであった。
<参考例1>
多層材の層構成を下記の通りに変更する以外は、実施例1と同様に多層構造体を作製した。
(多層材の製造)
Tダイ法による製膜をし、ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/EVOH(C)層(20μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層1(45μm)/ヒートシール樹脂(D)層2(10μm)の多層材を得た。得られた多層材の厚みは100μmであった。
得られた多層構造体の構造は、PET(12μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/EVOH(C)層(20μm)/ポリアミド系樹脂(B)層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂(D)層1(45μm)/ヒートシール樹脂(D)層2(10μm)である。得られた多層構造体の全厚みは112μmであった。
<試験例>
実施例1、参考例1にて得られた多層構造体を下記のように評価した。
[評価方法1 落袋試験(熱水処理前)]
各構成の多層構造体によりスタンドアップパウチ(幅140mm×高さ180mm×底部の短径60mm、底部の奥行き58mm)を3個作製した。得られた各パウチに、水300ccを入れ、上辺をヒートシールした。次に、水の入ったパウチを、1mの高さからパウチの底部が床(コンクリートの上に、厚さ2.0mmのビニール素材を接着剤を介して構成した床)と並行になる状態で自由落下させ、20回以内の落下で水漏れが生じるパウチの個数をカウントした。
結果を表1に示す。
[評価方法2 落袋試験(熱水処理後)]
各構成の多層構造体によりスタンドアップパウチ(幅140mm×高さ180mm×底部の短径60mm、底部の奥行き58mm)を3個作製した。得られた各パウチに、水300ccを入れ、上辺をヒートシールした。次に、水の入ったパウチを、浸漬式熱水処理装置(株式会社日阪製作所製)を用いて、120℃で30分間熱水処理を実施した後、熱水処理装置より取り出して、23℃、50%RH環境下で7日間静置した。その後、水の入ったパウチを、1mの高さからパウチの底部が床(コンクリートの上に、厚さ2.0mmのビニール素材を接着剤を介して構成した床)と並行になる状態で自由落下させ、パウチの水漏れまでの平均落下回数を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 2017226146
表1の結果より、参考例1のEVOHパウチは、耐落袋性が不十分であり、改善の余地があることがわかる。これに対し、EVOH(C)層を2層に分割し、ポリアミド系樹脂(B)層の両面に隣接させた実施例1は、耐落袋性が熱水処理前、処理後共に向上したことがわかった。
発明者らはEVOHを使用した多層フィルムを用いたスタンドアップパウチが破袋する原因について考察した。まずスタンドアップパウチはその形状から重心が低く自立性が高いため、床に落下する際にスタンドアップパウチの底面部分およびそれを支える側面部分に特に強い衝撃が加わる傾向があると考えた。そして、このようなスタンドアップパウチにEVOHを使用した多層フィルムを用いる場合、EVOH層が比較的剛直であるために、さらにその衝撃の影響を受けやすいことがその一因と推定した。
そこで、発明者らはEVOH層を分割するという考え方のもと複数層にて設けることで、得られる多層構造体が柔軟化し、スタンドアップパウチとしての自立性を保ちながらも、落下時の衝撃を緩和させることができ、さらに、本発明におけるEVOH層(Lc)の両端を比較的柔軟なポリアミド系樹脂でサンドする場合に相当する実施例1では多層構造体全体がさらに柔軟化し、スタンドアップパウチとしての自立性を保ちながらも、落下時の衝撃を緩和させることができることがわかった。
1 基材フィルム(A)
2 ポリアミド系樹脂(B)層
3,3a,3b エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(EVOH(C)層)
4 ヒートシール樹脂(D)層
5 スタンドアップパウチ
6 胴部シート
7 底部シート
8 底部シール部
9 サイドシール部
10 スタンドアップパウチ用多層構造体
20 多層材
LS ポリアミド系樹脂(B)層の両面にエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層が隣接してなる積層構造

Claims (9)

  1. 熱水殺菌処理されるスタンドアップパウチに用いられる多層構造体であって、
    基材フィルム(A)、ポリアミド系樹脂(B)層、エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層及びヒートシール樹脂(D)層を有し、
    前記基材フィルム(A)と前記ヒートシール樹脂(D)層との間に、前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の両面に前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)が隣接してなる積層構造(Lc/Lb/Lc)を有することを特徴とするスタンドアップパウチ用多層構造体。
  2. スタンドアップパウチ用多層構造体の全厚みに対する前記積層構造の厚みの比が、積層構造厚み/全厚みにて0.015〜0.7であることを特徴とする請求項1記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  3. 前記積層構造において、前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)の厚み(Tc)と前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚み(Tb)との比(Tc/Tb)が、それぞれ0.01〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  4. 前記基材フィルム(A)と前記積層構造との間に、さらにポリアミド系樹脂(B)層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  5. 前記ヒートシール樹脂(D)層を構成する樹脂組成物(d)が、熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  6. 前記ポリアミド系樹脂(B)層(Lb)の厚みが1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  7. 前記エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(C)層(Lc)の厚みがそれぞれ1〜35μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  8. 前記基材フィルム(A)が、ポリエステル系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のスタンドアップパウチ用多層構造体により形成されたことを特徴とするスタンドアップパウチ。
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