JP2017220436A - 金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層の透明基材への形成 - Google Patents

金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層の透明基材への形成 Download PDF

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Abstract

【課題】 第一に、安価な製法で透明導電層が形成できる。第二に、透明導電層を形成する透明基材の材質の制約がない。第三に、透明導電層を形成する透明基材の大きさの制約がない。第四に、透明基材の洗浄などの事前の処理が不要である。第五に、形成した透明導電層はアニール処理などの再処理が一切不要である。第六に、透明基材に電極パターンが直接形成できる。これら6つの要件を満たして、透明基材に透明導電層が形成できる。
【解決策】 可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下である金属からなる第一の特徴と、粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さい微粒子からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子の集まりが、清浄化され活性状態になった透明基材に一斉に析出し、金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が、透明基材に結合する。

Description

本発明は、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層を、表面の吸着物質を気化して清浄化した透明基材に形成する技術である。透明導電層は、可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下である金属からなる第一の特徴と、粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さい微粒子からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子が、互いに接触する部位で金属結合した金属微粒子の集まりで構成される。なお、透明導電層が形成された透明基材は、タッチパネル用透明導電性基材、フレキシブル回路基板、有機ELの透明電極、有機薄膜太陽電池の透明電極やフレキシブルLED電極シートなどに適応できる。
従来における透明基材への透明導電層の形成は、導電性インクないしは導電性ペーストを透明基材に塗布する方法と、透明基材に物理的蒸着や化学的蒸着によって透明導電層を形成する方法との二つの方法がある。
例えば、特許文献1に、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫ないしはリンドープ酸化錫からなる導電性酸化物微粒子とバインダ樹脂とからなる導電性ペーストを、基材に塗布ないしは印刷して、透明導電膜を形成する技術が記載されている。
また、特許文献2に、透明プラスチック基材に、マグネトロンスパッタによって、金属酸化物層と酸化ケイ素層と酸化インジウム・スズ層とを積層した透明導電薄膜を形成する技術が記載されている。
しかし、透明基材に透明導電層を形成する従来の方法は、以下に説明する課題を持つ。
最初に、導電性インクないしは導電性ペーストの塗布によって透明導電層を形成する課題を説明する。導電性インクないしは導電性ペーストは、いずれも導電性フィラーとして金属微粒子、金属粉末ないしは導電性金属酸化物微粒子を、合成樹脂のバインダと溶媒とからなるビヒクル中に分散させる。このため、導電性フィラーを用いることに起因する課題と、導電性フィラーをビヒクル中に分散させることに起因する課題とを持っている。
第一の課題は、導電性フィラーを用いて導電層を形成することに起因する。つまり、塗布ないしは印刷したインクないしはペーストを熱処理して樹脂を硬化させ、硬化した樹脂が導電性フィラーを結合させて導電層を形成する。しかし、硬化した樹脂が介在し、導電性フィラー同士が直接接合することを妨げる。これによって、導電層の電気抵抗が増大し、導電層に電流を流すと発熱し、導電層の劣化と剥離が促進される。
第二の課題は、導電性フィラーの分散性に起因する。つまり、導電性フィラーのビヒクル中への分散性が悪いと、熱処理後に導電性フィラーが偏在する。この結果、前記と同様に、導電層の電気抵抗が増大する。いっぽう、導電性フィラーの分散性を高めるために、導電性フィラーに吸着させる有機化合物の量を増やすと、有機化合物が絶縁体であるため、熱処理後の導電層の電気抵抗が増大する。
第三の課題は、導電性フィラー同士の凝集に起因する。導電性フィラーが微細になるほど凝集しやすく、一旦フィラー同士の凝集が起こると、凝集は解除できない。この結果、ビヒクル中へのフィラーの分散性が悪化し、導電層の電気抵抗が増大する。
こうした課題は、導電性フィラーを用いることに起因し、また、導電性フィラーを分散させることに起因する原理的な課題で解決は難しい。従って、導電性インクないしは導電性ペーストを用いる以外の方法で、透明導電層を形成する技術が強く求められている。
次に、物理的蒸着ないしは化学的蒸着によって透明導電層を形成する課題について説明する。ここでは、最も汎用的に行われているスパッタ法に絞って課題を説明するが、化学的蒸着に依る導電層の形成も類似した課題を持つ。
第一に、スパッタ法に依る導電層を形成する原理は、イオンを高速でターゲットに衝突させ、ターゲットを構成する原子を叩き出させ、叩き出た原子が透明基板に突入し、原子が堆積されて導電層を形成する。ターゲットから叩き出された原子は、透明基材に向けて直進するため、透明基板の表面状態に応じてノジュールと呼ばれる突起などの欠陥が生じやすい。このため、アニール処理によって構造的な欠陥を修正する必要がある。これによって、導電層を形成する費用が増大する。
第二に、ターゲットから原子が叩き出される際に、ターゲットに反跳粒子が生成され、反跳粒子が透明基板に突入すると、導電層にダメージを与える。このため、マグネトロンスパッタ装置を用い、マグネトロンインピーダンスを下げることで放電電圧を下げ、反跳粒子によるダメージを緩和させることができる。しかし、透明基板を昇温し、長時間放置することで、必要となる導電層が得られるため、耐熱性に劣る、また、昇温時に寸法安定性に劣る安価な透明性の合成樹脂フィルムに導電層を形成することが難しくなる。
第三に、真空チャンバーをいったん真空引きし、この後、スパッタリングを行う。真空引きの際に、透明基材から水分や異物がガス化し、導電層の雰囲気中に放出され、低抵抗の導電層を形成させる障害になる。このため、予め透明基材を十分に真空引きし、透明基材の表面を真空洗浄する必要がある。これによって導電層を形成する費用が増大する。
第四に、透明基材に電極パターンを形成する場合は、導電層を形成した後にエッチング処理で導電層をパターニングする。このため、エッチング液に対する耐薬品性を持つ透明基材に限定される。また、導電層を形成する費用は、エッチング処理で増大する。
第五に、スパッタ法で形成した導電層は十分な導電率を持たないため、さらに熱処理を伴うアニール処理が必要になる。このため、昇温した酸素ガスが存在しない雰囲気で、一度形成した導電層を長時間放置してアニール処理を行なう。これによって、透明導電層を形成する透明基材の材質が制限される。
第六に、スパッタ法では、ターゲットの中心の直下から一定の距離離れると、形成された導電層の抵抗率が高くなる。このため大面積の導電層を作成するには不向きである。
こうした課題は、スパッタ法に依る導電層の原理に起因するため、解決には困難を伴う。従って、スパッタ法以外の方法で、透明導電層を形成する技術が強く求められている。
特開2015−220192号公報 特開2011−065937号公報
前記した透明基材に透明導電層を形成する従来の方法に係わる課題は、いずれも透明導電層を形成する原理に基づく。従って、新たな方法で透明導電層を透明基材に形成する技術が強く求められている。本発明が解決しようとする課題は、下記の6つの要件を満たす新たな方法で、透明基材に透明導電層を形成することにある。
第一の要件は、安価な製法で透明基材に透明導電層が形成できる。これによって、透明導電層が形成された透明基材の用途が広がる。従って、高電圧を印加する、高温処理を伴う、薬品処理を伴う、高圧下での反応を伴う、真空度の高い雰囲気や高圧雰囲気での処理を伴うなど、特殊な環境下での反応や特殊な処理を一切伴わない。また、高価な材料を用いない。さらに、製造工程が短く、いずれも簡単な処理で、製造工程を連続して実施すると、透明基材に透明導電層が連続して形成される。
第二の要件は、透明導電層を形成する透明基材の材質上の制約がない。これによって、様々な透明基材に透明導電層が形成できる。例えば、高温処理や薬品処理を伴わなければ、安価な透明性の合成樹脂のフィルムが、透明基材として使用できる。
第三の要件は、透明導電層を形成する透明基材の大きさの制約がない。これによって、例えば、大きな面積を持つタッチパネルや透明電極が製造できる。
第四の要件は、透明導電層を形成する透明基材の事前の処理が不要になる。これによって、透明基材の表面の洗浄や表面の改質などの事前処理が一切不要になる。
第五の要件は、透明基材に透明導電層を形成した後に、アニール処理などの再処理が一切不要になる。これによって、安価な費用で透明導電層が形成できる。
第六の要件は、透明基材の表面に電極パターンが直接形成でき、また、パターンの形状や線幅などの制約がない。これによって、例えば、安価な費用で投影型静電容量方式のタッチパネル、フレキシブル回路基板やフレキシブルLED電極シートが製造できる。
以上に説明した6つの要件を満たして透明基材に透明導電層が形成できれば、透明導電層の用途はさらに広がる。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第一特徴手段は、
可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第四の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、該混合液を薄板状の透明基材の片面ないしは両面に塗布ないしは印刷し、該透明基材を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属からなる第一の特徴と、粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さい微粒子からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子の集まりが、前記混合液の塗布面ないしは印刷面に一斉に析出し、該金属微粒子同士が互いに金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が、前記混合液の塗布面ないしは印刷面に形成される。
つまり、本特徴手段に依れば、下記に説明する4つ処理を連続して実施すると、可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属からなる第一の特徴と、粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さい微粒子からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子の集まりが、薄板状の透明基材の片面ないしは両面に一斉に析出し、金属微粒子同士が互いに接触部位で金属結合した金属微粒子の集まりからなる導電層が、吸着物質が気化して清浄化された透明基材に結合する。この導電層は、7割以上の可視光線が導電層に入射し、入射した可視光線は導電層の内部で散乱せず、高い透明性をもって透過する。このため、導電層は、透明性と導電性とを兼備する透明導電層になる。なお、混合液の塗膜ないしは印刷膜を、透明基材の表面と裏面とで互いに異なる形状とすれば、互いに異なる形状の透明導電層が表面と裏面とに形成される。
すなわち、第一に、可視光線の波長領域での屈折率が、0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属を熱分解で析出する金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物が分子状態でアルコールに分散し、金属微粒子の原料が液相化される。第二に、有機化合物をアルコール分散液に混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合う。第三に、混合液を薄板状の透明基材の片面ないしは両面に塗布ないしは印刷すると、混合液の粘度に応じた厚みで塗膜ないしは印刷膜が形成される。第四に、透明基材を熱処理して金属化合物を熱分解する。この際、昇温に順じて次の現象が起こる。最初に、アルコールの沸点に達すると、塗膜ないしは印刷膜からアルコールが気化する。この際、金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶が有機化合物中に一斉に析出し、塗膜ないしは印刷膜は微細結晶が有機化合物に均一に析出した懸濁液になる。次に、有機化合物の沸点に達すると、塗膜ないしは印刷膜から有機化合物が気化する。このため、塗膜ないしは印刷膜が金属化合物の微細結晶の集まりになる。なお、微細結晶の大きさは、金属化合物の熱分解で析出する40nm〜60nmの金属微粒子の大きさに相当する。さらに、金属化合物が熱分解する温度に達すると微細結晶が熱分解し、金属化合物の微細結晶が、無機物ないしは有機物と金属とに分解され、無機物ないしは有機物の気化した後に、40nm〜60nmの大きさの粒状微粒子である第一の特徴と、可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子の集まりが、塗膜ないしは印刷膜が形成された透明基材に一斉に析出する。金属微粒子は不純物を持たない活性状態で析出し、金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が透明基材に形成される。
いっぽう、透明基材の表面は、水分子と水酸基と有機物の汚染物質とが吸着している。従って、これらの吸着物質の上に混合液が塗膜ないしは印刷膜として形成される。このような塗膜ないしは印刷膜が熱処理されると、透明基材の表面に吸着した水分子と水酸基は、塗膜ないしは印刷膜を構成する有機化合物が気化する以前に気化し、さらに、金属化合物が熱分解する以前に、有機物からなる汚染物質が気化する。いっぽう、塗膜ないしは印刷膜から様々な物質が気化するため、塗膜ないしは印刷膜は外部より相対的に陽圧になっている。このため、塗膜ないしは印刷膜が形成された透明基材の表面に、不純物が侵入して再度吸着することはない。従って、透明基材の表面は、全ての吸着物質が気化し、表面が清浄化されて活性化した状態を維持する。このような清浄化され活性化された透明基材の表面に、不純物を含まず活性状態にある金属微粒子が一斉に析出し、活性状態の金属微粒子は活性状態の透明基材の表面に接合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が、一定の強度をもって透明基材と結合する。
ところで、可視光線の波長領域で、金属の屈折率が0.4以上で2.4以下であるため、空気の屈折率1に近い。このため、7割以上の可視光線が導電層に入射する。さらに、金属微粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さいため、金属微粒子の集まりで可視光線は殆ど散乱せず、高い透明性をもって導電層を透過する。さらに、導電層を透過した可視光線は、透明基材を高い透明性をもって透過する。この結果、透明基材に形成された導電層は透明性を持つ。なお、光線の表面反射率と全光線透過率とは、下記の9段落で説明する。また、微粒子の集まりにおける光の散乱は、下記の10段落で説明する。
本特徴手段に依れば、以下の特徴をもって透明導電層が透明基材に形成される。
第一に、透明導電層は、金属化合物をアルコールに分散する処理と、アルコール分散液に有機化合物を混合する処理と、混合液を透明基材に塗布ないしは印刷する処理と、透明基材を熱処理する処理とからなる極めて簡単な4つの処理で製造される。これら4つの処理を連続して実施すると、透明基材に透明性の導電層が形成される。
第二に、原料を加工する処理は熱処理だけであり、金属化合物が200℃程度の温度で熱分解すれば、耐熱性が低い透明基材を用いることができる。このため、透明基材の材質の制約を受けない。また、原料の加工処理は、極めて簡単な熱処理だけである。
第三に、大きな面積を持つ透明基材でも、透明導電層が形成された透明基材が連続して製造できる。例えば、大面積を持つ透明基材に、混合液を塗布ないしは印刷し、この透明基材を連続して熱処理炉を通過させれば、安価な費用で、透明導電層が形成された大面積の透明基材が連続して製造できる。さらに、大面積の透明基材を必要な大きさに切断すれば、著しく安価な費用で、透明導電層が形成された透明基材が製造できる。
第四に、透明導電層の原料である金属化合物と有機化合物とは、いずれも汎用的な工業用薬品である。このため、安価な原料を用いて透明導電層が製造できる。
第五に、透明基材に混合液を塗布ないしは印刷し、この後熱処理で透明導電層を形成するため、透明基材の表面の洗浄などの事前処理が不要になる。また、有機化合物の粘度と混合液における有機化合物の濃度とに応じて、混合液の粘度が自在に変えられ、塗膜の厚みは自在に変えられる。この結果、透明導電層の厚みは、自在に変えられる。また、混合液を塗布ないしは印刷する透明基材の大きさの制約はない。さらに、混合液のスクリーン印刷によって、透明基材の表面に様々な形状の導電層が直接形成でき、混合液の粘度を低減すれば、導電層の形状と線幅の制約を受けない。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、6段落に記載した6つの要件を満たして、透明基材に透明導電層が形成される。これによって、タッチパネル用透明導電性基材、フレキシブル回路基板、有機ELの透明電極、有機薄膜太陽電池の透明電極やフレキシブルLED電極シートなどに適応できる透明導電層が形成された透明基材が安価に製造できる。
表面反射率と全光線透過率とを説明する。光が基材に入射する際に、空気と基材との屈折率の差に応じて表面反射が生じる。従って、透明のガラスでも表面反射によるロスが発生し、全光線透過率は100%にならない。ちなみに、厚さが2mmのフロートガラスでは、可視光線の波長領域において全光線透過率は約90%である。基材に垂直に入射した光の表面における表面反射率Rは、基材の屈折率nと空気の屈折率mとからなる数式1によって算出される。また、全光線透過率Tは表面反射率Rからなる数式2によって算出される。従って、金属の屈折率が0.4の場合は、導電層に入射する全光線透過率は67%になり、金属の屈折率が2.4の場合は、導電層に入射する全光線透過率は69%となり、7割以上の可視光線が導電層に入射する。
Figure 2017220436
Figure 2017220436
次に、光の散乱を説明する。可視光線が粒子の集まりに照射された際の光の散乱は、数式3に示すレイリー散乱式が適応できる。数式3におけるSは散乱の比率を意味する散乱係数で、λは可視光線の波長で、Dは粒子径で、mは粒子の屈折率で、πは円周率である。従って、散乱係数Sの大きさは、可視光の波長λに対する粒子径Dの比率D/λの4乗に依存し、また、粒子径Dの2乗と、屈折率mにも依存する。金属微粒子の大きさDが、可視光の波長λより1桁小さいため、比率D/λは小さく、また、粒子径Dも十分に小さい。さらに、金属の屈折率mが0.4以上で2.4以下の値である。従って、散乱係数Sは極めて小さく、導電層は高い透明性を示す。
Figure 2017220436
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第二特徴手段は、第一特徴手段に記載した透明導電層による2枚の透明基材の結合に関わり、該2枚の透明基材の結合は、
第一特徴手段に記載した混合液を、第一の透明基材と第二の透明基材との双方の片面に塗布ないしは印刷し、第一の透明基材の前記混合液が塗布ないしは印刷された片面を、第二の透明基材の前記混合液が塗布ないしは印刷されない片面に重ね合わせて積層体とし、該積層体に一定の荷重を加えて熱処理し、前記混合液の金属化合物を熱分解する、これによって、前記第一の透明基材と前記第二の透明基材との積層面に、第一特徴手段に記載した透明導電層が形成され、該透明導電層を介して前記第一の透明基材と前記第二の透明基材とが結合される。
つまり、本特徴手段に依れば、2枚の透明基材からなる積層体に一定の荷重が加えられ、混合液の塗布面ないしは印刷面は、第一の透明基材の表面と第二透明基材の表面とに接した状態を保つ。この混合液の塗膜ないしは印刷膜が熱処理されると、第一特徴手段と同様に、混合液の塗布面ないしは印刷面と接していた第一の透明基材の表面と第二の透明基材の表面とは清浄化されて活性化する。このような清浄化され活性化された双方の透明基材の表面に、不純物を含まず活性状態にある金属微粒子が一斉に析出し、活性状態の金属微粒子は活性状態の双方の透明基材の表面に接合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が、第一の透明基材と第二の透明基材との双方の表面に結合し、透明導電層を介して、第一の透明基材と第二の透明基材とが結合される。
このような2枚の透明基材の結合体は、例えば、投影型静電容量式のタッチパネルに適応できる。すなわち、第一の透明基材の透明導電層と第二の透明基材の透明導電層とが、投影型静電容量式のタッチパネルの電極を構成し、第二の透明基材が2つの電極に挟まれた絶縁層を構成する。従って、第一の透明基材の表面に応力を加えると、2枚の電極間の静電容量が変化する。つまり、従来の投影型静電容量式のタッチパネルは、透明導電層が形成された2枚の透明基材を貼り合わせて製造するが、本特徴手段における処理を連続して実施することで投影型静電容量式のタッチパネルが製造できる。これによって、2枚の透明基材を貼り合わせる工程が不要になり、透明基材の貼り合わせに伴う誤差がなく、同一の性能を持つ投影型静電容量式のタッチパネルが連続して安価に製造できる。
また、2枚の透明基材の結合体は、2層のプリント板からなるフレキシブルプリント配線板に適応できる。つまり、透明基材をフレキシブル基板で構成し、互いに異なる配線パターンを2枚のフレキシブル基板に形成し、配線パターンによって2枚のフレキシブル基板を結合すれば、2層のフレキシブルプリント配線板になる。ここで、配線パターンは、前記した透明導電層に該当する。同様に、フレキシブル基板の枚数を増やし、互いに異なる配線パターンをフレキシブル基板に形成し、配線パターンによって、フレキシブル基板が接合され、フレキシブルプリント多層配線板が製造される。このフレキシブル多層配線板も、投影型静電容量式のタッチパネルと同様に、連続したプロセスで安価に製造できる。
以上に説明したように、混合液の塗布面ないしは印刷面と接した第一の透明基材の表面と第二透明基材の表面とは、混合液の熱処理に伴い清浄化されて活性化する。こうした清浄化され活性化された双方の透明基材の表面に、不純物を含まず活性状態の金属微粒子が一斉に析出し、活性状態の金属微粒子は活性状態の透明基材の表面に接合する。この結果、金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が2枚の透明基板の表面に結合し、透明導電層を介して2枚の透明基材が結合される。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第三特徴手段は、第一特徴手段に記載した金属微粒子が、ニッケルないしはアルミニウムで構成される点にある。
つまり、ニッケルないしはアルミニウムは、可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での屈折率が0.4以上で2.4以下であるため、第一特徴手段における金属微粒子を構成する。
すなわち、ニッケルの屈折率は、380nmで1.61、波長が長くなるとと共に増大し、539nmで1.75、709nmで2.21、729nmで2.28、750nmで2.34である。従って、ニッケル微粒子の集まりからなる導電層の表面で、空気とニッケルとの屈折率の違いで光が反射する。この際、導電層への光の透過率は、380nmで89%、539nmで86%、709nmで74%、729nmで72%、750nmで70%になる。また、ニッケル微粒子の大きさは、可視光線の波長より1桁小さい。従って、赤色の可視光線の成分の一部がニッケル導電層の表面で反射されるが、導電層に入り込んだ光は、殆ど散乱することなくニッケル微粒子の集まりを透過する。
また、アルミニウムの屈折率は、800nmで最大の2.80で、波長が短くなるにつれ急減し、750nmで2.40、708nmで1.91、560nmで空気の屈折率1に最も近づき、450nmで0.620、380nmで0.45となる。従って、アルミニウム微粒子の集まりからなる導電層の表面で、空気とアルミニウムとの屈折率の違いで光が反射する。この際、光の透過率は、750nmで69%、708nmで81%、560nmで100%、450nmで89%、380nmで73%である。また、アルミニウム微粒子の大きさは、可視光線の波長より1桁小さい。このため、導電層の表面で、赤色と紫色との可視光線の一部が反射され、導電層に入り込んだ光は、殆ど散乱することなくアルミニウム微粒子の集まりを透過する。
以上に説明したように、金属がアルミニウムの場合では、可視光線を構成する光線の一部が導電層の表面で反射され、この光線に相当する色彩を放つが、導電層は透明性を持つ。また、金属がニッケルの場合は、導電層は無色に近く、また、透明性を持つ。
さらに、透明導電層の表面は、ニッケルないしはアルミニウムの微粒子の集まりで構成されため、微粒子の大きさと材質とに基づく様々な性質を持つ。
第一に、透明導電層の表面は金属微粒子の大きさに基づく凹凸が形成される。表面の凹凸の全表面積は、透明導電層の表面を形成する金属微粒子の数が莫大な数であるため、莫大な広さの表面積を有し、いわゆるフラクタル面に近い面になる。このような導電層に液滴が接触すると、液滴の表面張力によって金属微粒子の大きさの凹凸に液体が入り込めず、液滴の液面は莫大な数の微粒子の凸部と点接触で接する。この結果、導電層の表面は、接触角が180度に近い超撥水性を示し、撥水性と撥油性と防汚性とがもたらされる。
第二に、導電層の表面は金属微粒子を構成するニッケルないしはアルミニウムに近い導電性と熱伝導性とを持つ。このため、導電層は、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能と放熱性とを兼備する。
以上に説明したように、透明導電層の表面が金属微粒子の集まりで構成されため、従来の透明基材では得られない金属微粒子の大きさと材質とに基づく優れた性質がもたらされる作用効果が得られる。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第四特徴手段は、第一特徴手段に記載した薄板状の透明基材が、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6の第一の性質と、第一特徴手段に記載した金属化合物が熱分解する熱処理を行なっても熱分解が開始しない第二の性質とを兼備する合成樹脂で構成されたフィルムである点にある。
つまり、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6の第一の性質を持つ合成樹脂のフィルムは、全光線透過率は90%以上と高い透明性を持つ。なお、合成樹脂の屈折率は、可視光線の波長領域で有効数字の3桁目が僅かに変わるだけで、波長依存性は極めて小さい。
すなわち、合成樹脂は、その元となるポリマーが非結晶性の熱可塑性樹脂である場合は、成形体に粒界が形成されないため、多くの非晶性樹脂が透明性を持つ。しかし、下記に説明する4種類の非晶性の熱可塑性樹脂以外はポリマーの製造費が高いため、大型の成形体を製造する際にはあまり使用されない。いっぽう、結晶性の熱可塑性樹脂でも、その実用状態では非結晶状態または結晶化度が低い、あるいは結晶サイズが微細である場合に透明性を持つ。透明性の樹脂についても、下記に説明する3種類の結晶性の熱可塑性樹脂以外はポリマーの製造費が高いため、大型の成形体を製造する際にはあまり使用されない。
非晶性の熱可塑性樹脂の中で、ポリメチルメタクリル樹脂PMMAは、1.49の屈折率を持つ最も透明度に優れた合成樹脂である。また、ポリカーボネート樹脂PCは、1.58の屈折率を持ちPMMA樹脂に次いで透明度に優れた合成樹脂である。さらに、ポリスチレン樹脂PSは、1.59の屈折率を持つ優れた透明性の合成樹脂である。
結晶性の熱可塑性樹脂の中で、ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、結晶化の速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、屈折率が1.58の透明性のフィルムになる。また、ポリプロピレン樹脂PPは、結晶化速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、1.50の屈折率を持つ優れた透明性のフィルムになる。さらに、ポリアミド6樹脂PA6は、結晶化速度がやや遅く、融解したペレットを急冷すると、1.53の屈折率を持つ優れた透明性のフィルムになる。また、ポリエチレン樹脂PEは結晶性で透明性に劣るが、低密度ポリエチレン樹脂LDPEは、結晶性樹脂の中で最も結晶化速度が遅く、透明性のフィルムが得られる。
さらに、ポリ塩化ビニル樹脂PVCは、可塑剤と熱安定剤の種類と添加量を制限すると、1.52〜1.53の屈折率を持つ優れた透明性のフィルムが得られる。また、ポリスルホン樹脂PSUは、1.63の屈折率を持つ透明性の合成樹脂であるが、ポリマーが高価で、大面積のフィルムとしてはあまり使用されない。また、PC樹脂と同等の透明性を持つポリアリレート樹脂PAR、透明性のポリエーテルイミド樹脂PEI、琥珀色の透明性を持つポリエーテルサルホン樹脂PESは、高価なポリマーで、大面積のフィルムとしてはあまり使用されない。
また、結晶性樹脂であるポリ塩化ビニリデン樹脂PVDCの成形体は透明性を持つが、大面積のフィルムに用いる事例は少ない。さらに、結晶性のフッ素樹脂は屈折率が低く、透明性が高いフィルムが得られる。例えば、ネオフロンEFEP樹脂(株式会社ダイキン工業の製品名)の屈折率が1.38で、ネオフロンCPT樹脂の屈折率は1.39で、ポリ弗化ビニル樹脂PVFの屈折率は1.46で、三弗化塩化エチレン樹脂PCTFEの屈折率は1.42で、エチレン・四弗化エチレン共重合樹脂ETFEの屈折率は1.40で、四弗化エチレン・六弗化プロピレン共重合樹脂FEPの屈折率は1.34で、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂PFAの屈折率が1.34である。これらのフッ素樹脂によって、優れた透明性のフィルムが得られるが、フッ素樹脂のポリマーは、前記した結晶性のPET樹脂、PP樹脂、PA6樹脂などのポリマーに比べると高価で、大面積のフィルムとしては不向きである。
いっぽう、合成樹脂は、金属化合物が熱分解する熱処理を行なっても熱分解が開始しない第二の性質を持つ。このため、金属化合物を熱分解して導電層を形成させても、合成樹脂の性質は変わらない。すなわち、合成樹脂を昇温すると、所定の温度から合成樹脂の熱分解が開始し、高分子材料である合成樹脂の分子が徐々に断ち切られ、次第に低分子量となって重量が軽減する熱分解が進む。このため、合成樹脂の熱分解が始まると分子構造が変わるため、合成樹脂の性質は不可逆変化する。この合成樹脂の分子構造に変化が始まる温度は、重量変化が始まる温度であるため、熱重量分析(Thermogravimetory略してTG)によって測定される。従って、金属化合物が熱分解する熱処理を行なっても、合成樹脂の熱分解が始まらない第二の性質を合成樹脂が持つため、合成樹脂の性質は変わらない。これによって、金属化合物の熱分解で導電層を形成しても、合成樹脂の性質は変わらない。
ところで、合成樹脂の熱分解反応は、酸素ガスが存在する雰囲気と、還元雰囲気とでは大きく異なる。つまり、酸素ガスが存在する雰囲気での熱分解は、酸化反応に依る熱分解、つまり、燃焼であるため発熱を伴う。この発熱現象が、酸化されやすい、つまり、燃えやすい有機物質からなる合成樹脂の熱分解を促進させる。これに対し、還元雰囲気での熱分解は吸熱反応に依る熱分解で、酸化反応に依る発熱現象が生じない。このため、合成樹脂が熱分解を開始する温度は、酸素ガスが存在する雰囲気に比べて大幅に遅れて高温側にシフトする。例えば、高密度ポリエチレン樹脂の熱分解は、大気雰囲気では250℃で開始するが、窒素雰囲気では400℃と150℃も高温側にシフトする。従って、還元雰囲気での熱処理で金属を析出する金属化合物を金属微粒子の原料として用いる場合は、透明性の合成樹脂からなる安価なフィルムを、透明基材として用いることができる。
ここで、前記した代表的な透明性の非晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。
すなわち、アクリル樹脂PMMAは、大気雰囲気で熱分解が220℃から始まり、300℃まで進み、400℃を超える温度まで緩やかに進む。次に、ポリカーボネート樹脂PCは、大気雰囲気で420℃から熱分解が開始し、660℃で完了する。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂PVCは、大気雰囲気で3段階に分かれて熱分解する。第一段階の250℃から350℃までの熱分解と、第二段階の350℃〜480℃までの熱分解で、有毒の塩化水素HClが乖離して気化し、また、消防法の第4類危険物第1石油類に属する引火点が21℃未満のベンゼンが生成される。第三段階の480℃〜650℃の熱分解で、ポリマーの燃焼によって二酸化炭素ガスと水蒸気が生成され、また、猛毒の一酸化炭素ガスが生成される。
次に、前記した代表的な透明性の結晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。ポリプロピレン樹脂PPは、熱分解が240℃から始まり400℃まで進み、430℃まで緩やかに進む。さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、300℃〜500℃での熱分解と500℃〜650℃での二段階に分かれて熱分解する。
以上に説明したように、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6の第一の性質と、金属化合物が熱分解する熱処理を行なっても熱分解が開始しない第二の性質とを兼備する合成樹脂からなるフィルムは、透明導電層を形成する透明基材として用いることができる。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第五特徴手段は、第一特徴手段に記載した薄板状の透明基材が、板厚が0.2mm以下のフレキシブルガラスである点にある。
つまり、透明基材を用いてデバイスを製造するプロセスが、透明性の合成樹脂の耐熱温度を超える場合は、一定の温度以下にプロセスを抑える制約が発生する。また、水蒸気や酸素ガスなどに対するガスバリア性が低いため、透明基材を用いてデバイスを製造する際に、ガスバリア層を透明フィルムに形成する必要がある。さらに、熱膨張係数が大きいため、デバイスを製造する際に透明フィルムに反りが発生する場合がある。また、一部の透明フィルムは、経時変化によって透明性が劣化し、黄変が発生する。こうした透明性の合成樹脂からなるフィルムの課題を抜本的に変える透明基材として、アルミノホウケイ酸ガラスないしは石英ガラスなどからなる板厚が0.2mm以下のフレキシブルガラスがある。
すなわち、板厚が0.2mm以下のガラスは、オーバーフロー法で製造したガラスをロール状に巻き取ることができるため、使用原料の低減と軽量化に依る輸送コストの削減と相俟って、安価に製造できる透明基材になる。つまり、オーバーフロー法では、溶解炉から溢れた溶解ガラスが垂れ下がり、垂れ下がったガラスを冷却する過程で薄くし、このガラスをロール状に巻き取ることで、フレキシブルガラスが連続的に製造できる。
ところで、ガラスを曲げた際に引張応力が発生するが、ガラスが破壊する引張応力は50MPaが目安になる。いっぽう、板厚Tのガラスを曲げた際に、曲げられた部位における曲率半径Rと引張応力σとの間には、σ=(E・T/2)/Rの関係がある。ここでEはガラスのヤング率で、アルミノホウケイ酸ガラスのヤング率は73GPaである。従って、0.5mmの板厚では曲率半径が365mmで破壊応力に達し、0.2mmの板厚では破壊応力に達する曲率半径が146mmまで減少し、0.1mmの板厚では曲率半径が73mmまで減少し、0.05mmの板厚では曲率半径が36.5mmまで減少する。従って、板厚が0.2mm以下になると、薄板状のガラスをロール状に巻き取ることができ、フレキシブルガラスが連続的に製造できる。
また、アルミノホウケイ酸ガラスからなるフレキシブルガラスは、30℃〜380℃の平均の熱膨張係数が38×10−7/Kであり、透明性の合成樹脂PMMA樹脂の4.5〜7×10−5/Kより1桁小さく、昇温した際の寸法安定性に優れる。また、歪点が650℃と高く、650℃の温度まで粘性流動が起こらず固体のガラス状態を保つ。さらに、屈折率が1.52で、可視光線の波長領域における光線透過率は92%であり、最も透明性に優れるPMMA樹脂フィルムと変わらない透明性を持つ。また、無機質の金属酸化物で構成されるため、経時変化に依る透明性の劣化はない。さらに、ガスを透過しないバリア性を持つ。いっぽう、比重が2.46でPMMA樹脂の2倍であるが、板厚が200μm以下と薄いため、透明基材の用途では比重の大きいことは大きな課題にならない。なお、石英ガラスからなるフレキシブルガラスは、熱膨張率が5.5×10−7/Kで、歪点が1120℃で、屈折率が1.46で、比重が2.2で、いずれもアルミノホウケイ酸ガラスより優れ、ガスのバリア性を持つが、アルミノホウケイ酸ガラスからなるフレキシブルガラスより高価である。
以上に説明したように、板厚が0.2mm以下のフレキシブルガラスは、透明性の合成樹脂からなるフィルムの課題が解決できるため、第二の透明基材になる。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第六特徴手段は、第一特徴手段に記載した混合液を製造する際の第一の原料に関わり、該第一の原料は、
第一特徴手段に記載した金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である点にある。
つまり、本特徴手段における無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気の180℃〜220℃の比較的低い温度で熱分解がして金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに、10重量%に近い割合で分散する。このため、無機金属化合物からなる錯体は、第一特徴手段の混合液を製造する際の原料になる。また、錯体が還元雰囲気で熱分解する温度は、16段落で説明した透明性の合成樹脂は熱分解が始まらないため、透明性の合成樹脂からなる安価なフィルムを、透明基材として用いることができる。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180℃〜220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNHが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンClが、ないしは塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CNが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBrが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンIが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。前記した第二特徴手段に記載した無機金属化合物からなる錯体と同一の金属化合物である。
また、本特徴手段におけるカルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタ―ノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点が無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より低い第四の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、混合液を製造する際の安価な原料になる。
従って、無機金属化合物からなる錯体のメタノール分散液に、前記した有機化合物のいずれか一種類を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
本発明における透明基材に透明導電層を形成する第七特徴手段は、第一特徴手段に記載した混合液を製造する際の第二の原料に関わり、該第二の原料は、
第一特徴手段に記載した金属化合物が、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である点にある。
つまり、本特徴手段における二つの特徴を持つカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290℃〜430℃で熱分解が完了し金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに対し、10重量%に近い濃度で分散する。このため、カルボン酸金属化合物は、第一特徴手段の混合液を製造する際の原料になる。なお、オクチル酸金属化合物の熱分解温度は、大気雰囲気の290℃であり、カルボン酸金属化合物の中で最も低い。いっぽう、窒素雰囲気でのオクチル酸金属化合物の熱分解温度は、大気雰囲気より50℃高い340℃である。従って、16段落で説明した多くの透明性合成樹脂が窒素雰囲気の340℃では熱分解せず、窒素雰囲気で熱処理することで透明性合成樹脂のフィルムを用いることができる。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物においては、金属イオンが最も大きいイオンであり、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、290℃〜430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%に近い割合で分散する。なお、窒素雰囲気でのカルボン酸金属化合物の熱分解は、50℃程度高温側にシフトする。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、18段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、本特徴手段におけるカルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点がカルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い第四の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、第二の懸濁液を製造する際の安価な原料になる。
従って、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液に、有機化合物のいずれか一種類を混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って、混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
ニッケル微粒子の集まりからなる透明導電層が、PMMA樹脂フィルムに形成された状態を、模式的に拡大して説明する図である。 アルミニウム微粒子の集まりからなる透明導電層が、2枚のフレキシブルガラスの間隙に形成され、透明導電層を介してフレキシブルガラスが結合された状態を模式的に拡大して説明する図である。
実施形態1
本実施形態は、低温度で金属化合物が熱分解して金属を析出する金属化合物の実施形態であり、このような金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する金属錯体が適切であることを説明する。すなわち、金属錯体は無機物の分子量が小さいため、還元雰囲気での熱処理温度が相対的に低い温度で熱分解する。この還元雰囲気での熱分解温度では、16段落で説明したように、透明性の合成樹脂の熱分解が開始されず、透明性の合成樹脂からなるフィルムが、透明基材として用いられる。ここでは、金属をニッケルとし、ニッケル化合物について説明する。
最初に、アルコールに分散するニッケル化合物を説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルは水に溶け、ニッケルイオンが溶解し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できない。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはアルコールに分散しない。このため、こうした分子量が低い無機ニッケル化合物は、ニッケルを析出する原料として適切でない。
次に、熱分解でニッケルを析出するニッケル化合物を説明する。ニッケル化合物からニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、ニッケル化合物を昇温するだけで、ニッケル化合物が熱分解してニッケルが析出する。さらに、ニッケル化合物の熱分解温度が低ければ、耐熱性が低い透明性の合成樹脂からなるフィルムに透明性のニッケル導電層が形成できる。無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置するニッケルイオンに配位結合したニッケル錯イオンを有するニッケル錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気で熱分解する温度は、分子量がより大きい有機物が配位子を形成する有機ニッケル錯体が大気雰囲気で熱分解する温度より低い。このため、このような無機ニッケル錯体は、有機ニッケル錯体より相対的に高価な物質ではあるが、より低い温度でニッケルを析出するため、廉価な透明性の合成樹脂からなるフィルムに、透明性のニッケル導電層が形成できる。
すなわち、無機ニッケル錯体を構成する分子の中でニッケルイオンが最も大きい。ちなみに、ニッケル原子の共有結合半径は101pmであり、一方、窒素原子の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の共有結合半径は66pmである。このため、無機ニッケル錯体の分子構造においては、配位子がニッケルイオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理で、最初に配位結合部が分断され、ニッケルと無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後にニッケルが析出する。
このような性質を持つ無機ニッケル錯体をアルコールに分散し、この分散液に沸点が無機ニッケル錯体の熱分解温度より低い有機化合物を混合して混合液を作成する。この混合液を透明性の合成樹脂のフィルムに塗布ないしは印刷し、還元雰囲気で熱処理する。最初にアルコールが気化する。この際、無機ニッケル錯体はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、無機ニッケル錯体の微細結晶が有機化合物中に一斉に析出し、混合液からなる塗膜は微細結晶が有機化合物に均一に析出した懸濁液になる。次に有機化合物が気化し、混合液からなる塗膜は無機ニッケル錯体の微細結晶の集まりになる。なお、微細結晶の大きさは、無機ニッケル錯体の熱分解で析出する40nm〜60nmのニッケル微粒子の大きさに相当する。さらに昇温すると、微細結晶の熱分解が始まり、ニッケルと無機物とに分解され、無機物の気化が完了した後に、40nm〜60nmの粒状のニッケル微粒子の集まりが透明基材に一斉に析出する。ニッケル微粒子は不純物を持たない活性状態で析出し、ニッケル微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合する。この結果、金属結合したニッケル微粒子の集まりは、透明性のニッケル導電層を形成し、透明基材に結合する。
このような無機ニッケル錯体の中で、アンモニアNHが配位子となってニッケルイオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンClが、ないしは、塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となってニッケルイオンに配位結合するクロロ錯体は、他のニッケル錯体に比べて相対的に合成が容易であるため、相対的に安価な製造費用で製造できる。また、こうした無機ニッケル錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位子の分子量が小さいため、200℃より低い温度で配位結合部位が最初に分断され、この後、200℃前後の温度でニッケルが析出する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くまで分散する。このようなニッケル錯イオンとして、例えば、ヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH2+があり、ニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物[Ni(NH]Clやヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH](NOがある。
実施形態2
本実施形態は、熱分解で金属を析出する第二の原料として、熱分解温度は前記した無機金属化合物からなる錯体より高いが錯体より安価な材料として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物が適切であることを説明する。なお、カルボン酸金属化合物の中で、オクチル酸金属化合物の熱分解温度は、大気雰囲気の290℃と最も低い。しかし、大気雰囲気の290℃では、16段落で説明したように、多くの透明性の合成樹脂が熱分解を始める。いっぽう、窒素雰囲気でのオクチル酸金属化合物の熱分解温度は、大気雰囲気より50℃高い340℃である。従って、16段落で説明した多くの透明性合成樹脂が窒素雰囲気の340℃では熱分解せず、窒素雰囲気で熱処理することで透明性の合成樹脂からなるフィルムを用いることができる。なお、フレキシブルガラスの耐熱温度は650℃以上で、大気雰囲気でのオクチル酸金属化合物の熱分解温度より著しく高い。このため、フレキシブルガラスを透明基材として用いることもできる。ここでは金属をアルミニウムとし、カルボン酸アルミニウム化合物について説明する。
前記したニッケル錯体と同様に、アルミニウム化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解でアルミニウムを析出するこれら2つの性質を兼備する必要がある。
最初に、アルコールに分散するアルミニウム化合物を説明する。塩化アルミニウムは水に溶け、水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解する。また、水酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。さらに、硫酸アルミニウムはアルコールに溶解し、アルミニウムイオンが溶出する。また、酸化アルミニウムは、アルコールに分散しない。このため、これらの分子量が小さい無機アルミニウム化合物は、アルコールに分散しない。
次に、有機アルミニウム化合物は、熱分解でアルミニウムを析出する性質を持つ。有機アルミニウム化合物からアルミニウムが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機アルミニウム化合物を昇温するだけで、アルミニウムが析出する。さらに、有機アルミニウム化合物の合成が容易でれば安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機アルミニウム化合物に、カルボン酸アルミニウム化合物がある。
すなわち、カルボン酸アルミニウム化合物の組成式は、Al(COOR)で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸アルミニウム化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置するアルミニウムイオンAl3+が最も大きい。従って、アルミニウムイオンAl3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、アルミニウムイオンAl3+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、アルミニウムイオン原子の共有結合半径は121pmであり、酸素イオン原子の共有結合半径は66pmであり、炭素原子の共有結合半径は73pmであることによる。このため、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長いアルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムなどがある。このようなカルボン酸アルミニウム化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸アルミニウム化合物は低い温度で熱分解し、アルミニウムが析出する熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高い。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
さらに、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点は低くなる。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物は、相対的に低い温度で熱分解温度する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、アルミニウムを析出する原料として、熱分解温度が低いオクチル酸アルミニウムが望ましい。オクチル酸アルミニウムは、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してアルミニウムが析出し、メタノールやn‐ブタノールなどに10重量%まで分散する。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は合成が容易で、安価な有機アルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が生成される。
以上に説明したように、オクチル酸アルミニウムAl(C15COO)は、熱分解でアルミニウムを析出する原料になる。
実施形態3
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールより粘度が高く、第三にニッケル錯体とオクチル酸アルミニウムのどちらか一方が熱分解する温度より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。
つまり、有機化合物の沸点が、ニッケル錯体が熱分解する200℃前後より低ければ、有機化合物はニッケル錯体のアルコール分散液と共に混合液を構成する。有機化合物の沸点が、オクチル酸アルミニウムが熱分解する290℃より低ければ、オクチル酸アルミニウムのアルコール分散液と共に混合液を構成する。このため、有機化合物はこれら混合液における粘度を調整する調整剤になる。こうした3つの性質を持つ有機化合物は、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物に多くが存在する。
カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸とのエステル類と、不飽和カルボン酸とのエステル類と、芳香族カルボン酸とのエステル類との3種類のカルボン酸エステル類がある。
飽和カルボン酸の中で分子量が小さい酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールの4倍の粘性を持ち、沸点が182℃である酢酸メチルシクロヘキシルが存在する。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が小さい酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が200℃より低い酢酸エステルが存在する。
また、飽和脂肪酸の中で分子量が大きいラウリン酸とアルコールとのエステルに、ラウリン酸メチルがある。ラウリン酸メチルはメタノールに溶解し、メタノールの4.4倍の粘度を持ち、沸点が262℃である。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が大きく、かつ、ラウリン酸メチルより分子量が小さい飽和脂肪酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が290℃より低いエステル類が存在する。
いっぽう、分子量が小さい不飽和カルボン酸であるアクリル酸エステル類に、粘度がメタノールの2倍で沸点が148℃のアクリル酸ブチル、粘度がメタノールの2倍で沸点が214℃のアクリル酸2−エチルヘキシルなどがある。いずれもメタノールに溶解する。
グリコール類に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールがある。
エチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの36倍と高く、沸点が197℃の液状モノマーである。ジエチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの61倍と高く、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの82倍と高く、沸点が188℃の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの127倍と高く、沸点が232℃の液状モノマーである。トリプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの97倍と高く、沸点が265℃の液状モノマーである。
グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルがある。
エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3倍で沸点が125℃のメチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が142℃のイソプロピルグリコール、粘度がメタノールの6倍で沸点が171℃のブチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が161℃のイソブチルグリコール、粘度がメタノールの4倍で沸点が159℃のアリルグリコール、粘度がメタノールの6.6倍で沸点が194℃のメチルジグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が208℃のヘキシルグリコールが存在する。
また、エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解しオクチル酸アルミニウムの熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの12.7倍で沸点が249℃のメチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.3倍で沸点が207℃のイソプロピルジグリコール、粘度がメタノールの11倍で沸点が231℃のブチルジグリコール、粘度がメタノールの13.7倍で沸点が271℃のブチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が220℃のイソブチルジグリコール、粘度がメタノールの14.6倍で沸点が259℃ヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの12.9倍で沸点が229℃の2−エチルヘキシルグリコール、粘度がメタノールの17.6倍で沸点が272℃の2−エチルヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの52倍で沸点が245℃のフェニルグリコール、粘度がメタノールの20倍で沸点が256℃のベンジルグリコールが存在する。なお、粘度がメタノールの33倍で沸点が302℃のベンジルジグリコールは、メタノールに溶解しオクチル酸アルミニウムの熱分解温度より沸点が高い。
次に、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3.2倍で沸点が121℃のメチルプロピレングリコール、粘度がメタノールの2.2倍で沸点が146℃のメチルプロピレングリコールアセテート、粘度がメタノールの4.7倍で沸点が150℃のプロピルプロピレングリコール、粘度がメタノールの5.8倍で沸点が170℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの6.9倍で沸点が187℃のメチルプロピレンジグリコールが存在する。
また、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解しオクチル酸アルミニウムの熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの18.3倍で沸点が212℃のプロピルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの12.5倍で沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの39.3倍で沸点が243℃のフェニルプロピレングリコール、粘度がメタノールの13.9倍で沸点が274℃のブチルプロピレントリグリコールが存在する。
最後に、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が85℃のジメチルグリコール、粘度がメタノールの3.4倍で沸点が162℃のジメチルジグリコール、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が171℃のジメチルポロピレンジグリコール、粘度がメタノールの21倍で沸点が176℃のメチルエチルジグリコール、粘度がメタノールの2.4倍で沸点が189℃のジエチルジグリコールが存在する。
また、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解しオクチル酸アルミニウムの熱分解温度より沸点が低いグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの6.4倍で沸点が216℃のジメチルトリグリコール、粘度がメタノールの4.1倍で沸点が255℃のジブチルジグリコールが存在する。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類の中で、26段落に説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在する。
本実施例は、PMMA樹脂フィルムにニッケル微粒子の集まりからなる導電層を形成した事例である。ニッケル微粒子の原料となるニッケル錯体は、24段落で説明したヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH](NO(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。有機化合物は、28段落で説明した沸点が197℃で、融点が−12.6℃で、粘度が20℃で21mPa秒の性質を持つエチレングリコール(例えば、株式会社日本触媒の製品)を用いた。また、PMMA樹脂フィルム(例えば、三菱レイヨン株式会社の製品アクリプレンHBS006)の厚みは50μmで、このフィルムを10cm×10cmに切断して用いた。
最初に、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩の57g(0.2モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。この混合液を、幅が3mmからなる塗膜を2mmの間隔でPMMA樹脂に印刷し、このフィルムをアンモニア雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で210℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料1として作成した。
最初に、試料1における塗膜を形成した複数の部位の光学性能を、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計(株式会社島津製作所の製品UV‐1280)に依る可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での光線透過率は、90〜92%と高い値を持った。また、ヘーズメータ(スガ試験株式会社のヘーズメータHZ‐V3)によるヘイズ値は2%未満であった。この結果、塗膜を形成した部位は高い透明性を持った。
次に、試料1における塗膜を形成した部位の透明フィルムへの結合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、100gの荷重に耐えた。このため、塗膜は、一定の結合力で透明フィルムに結合されていた。
また、試料1における塗膜を形成した部位の複数個所を、表面抵抗を表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST‐4)。表面抵抗値は1×10Ω/□であったため、金属に近い表面抵抗を有した。
さらに、試料1における塗膜が形成された表面と、塗膜が形成された切断面とを、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、導電性の被膜を形成せずに直接表面が観察できる。
最初に、塗膜が形成された部位の表面と切断面とからの反射電子線について、900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。表面は40nm〜60nmの大きさの粒状微粒子の集まりが覆っていた。また、切断面は、粒状の微粒子がPMMA樹脂のフィルムの表面に、6個の微粒子が積み重なって積層していた。
次に、表面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められず、微粒子は単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、表面からの特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はニッケル原子のみで構成されていたため、粒状微粒子は、ニッケルの粒状微粒子である。
以上の結果から、混合液の塗膜を熱処理した結果、ニッケルの粒状微粒子が6個積み重なって析出し、ニッケル微粒子からなる導電層を形成し、一定の強度で透明フィルムに結合した。図1に、試料1の断面を拡大して模式的に図示した。PMMA樹脂フィルム1の表面に、金属結合したニッケル微粒子の集まり2が一定の強度で結合された。
次に、透明フィルムにニッケル微粒子の集まりからなる透明導電層が結合した理由を説明する。透明フィルムの表面は、水分子と水酸基と有機物の汚染物質とが吸着している。従って、これらの吸着物質の上に混合液が塗膜として形成される。また、透明フィルムの表面の平面度は高く、表面の凹凸はニッケル微粒子の大きさと同程度である。このため、透明フィルムに析出したニッケル微粒子は、透明フィルムの表面と確実に接触する。ところで、塗膜を熱処理すると、透明フィルムの表面に吸着していた水分子と水酸基とは、エチレングリコールが気化する以前に気化する。また、透明フィルムに吸着していた有機物は、錯体の熱分解に伴って気化する。これによって、透明フィルムの表面が清浄化されて活性化する。いっぽう、塗膜の熱処理過程では、塗膜から順次様々な物質が気化するため、塗膜は外部より相対的に陽圧になっている。このため、塗膜を介して透明フィルムの表面に不純物が侵入し、不純物が再度吸着しない。こうして、清浄化され活性化された透明フィルムの表面に、不純物を含まず活性状態のニッケル微粒子が錯体の熱分解で析出し、ニッケル微粒子は透明基材の表面に接合する。この結果、金属結合したニッケル微粒子の集まりは、一定の強度をもって透明フィルムと結合する。
本実施例におけるPMMA樹脂フィルムにニッケルの微粒子の集まりからなる透明導電層を形成する事例は、一つの事例に過ぎない。16段落で説明したように、PMMA樹脂以外に多くの透明性の合成樹脂からなるフィルムが存在する。いっぽう、これらの透明性の合成樹脂が熱分解を開始する温度は、ニッケル錯体を熱分解する雰囲気が、酸素ガスが存在しない還元雰囲気であるため、透明性の合成樹脂の熱分解が開始する温度は、ニッケル錯体が熱分解する温度より高い。従って、PMMA樹脂以外の透明性の合成樹脂からなるフィルムを用いてニッケル微粒子の集まりからなる透明導電層が形成できる。また、18段落で説明したように、フレキシブルガラスの耐熱性は、ニッケル錯体の熱分解温度より著しく高いため、フレキシブルガラスの表面に、様々な形状からなるニッケル微粒子の集まりからなる透明導電層を形成することができる。
本実施例は、2枚のフレキシブルガラスを、アルミニウム微粒子の集まりからなる導電層によって結合した事例である。アルミニウム微粒子の原料は、25段落で説明したオクチル酸アルミニウムAl(C15COO)(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を用い、これを10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液に実施例1で用いたエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。また、アルミノホウケイ酸ガラスからなる厚みが50μmのフレキシブルガラス(日本電気硝子株式会社の製品)を10cm×10cmに切断して複数枚を用意した。前記の混合液をフレキシブルガラスに、幅が3mmからなる塗膜を2mmの間隔で塗布し、さらに、別のフレキシブルガラスを重ね合わせて積層させ、この積層体に5MPaの加圧力を加え、大気雰囲気で20℃/min.の昇温速度で290℃まで昇温し、5枚の積層体を試料2として作成した。
最初に、実施例1と同様に、試料2における塗膜を形成した部位の光学性能を、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計に依る可視光線の波長領域での光線透過率は、88〜90%と高い値を持った。また、ヘーズメータによるヘイズ値は2%未満であった。この結果、塗膜を形成した部位は高い透明性を持った。
次に、試料2における接合されたフレキシブルガラスの結合力を、実施例1と同様に、粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、500gの荷重に耐えた。このため、形成した塗膜は、一定の結合力でフレキシブルガラスに結合されていた。
また、前記の粘着力の試験後に、形成した塗膜が残ったフレキシブルガラスの表面における複数個所を、実施例1と同様に、表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□であったため、金属に近い表面抵抗を有した。
さらに、試料2における塗膜を形成した部位を切断し、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。最初に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。塗膜を形成した部位に、40nm〜60nmの大きさの粒状微粒子の集まりが存在し、この粒状の微粒子が、フレキシブルガラスの間隙を埋め尽くし、6個の微粒子が積み重なって積層されていた。
次に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められず、微粒子は単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、表面からの特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はアルミニウム原子のみで構成されていたため、粒状微粒子は、アルミニウムの粒状微粒子である。
以上の結果から、2枚のフレキシブルガラスの間隙に、混合液が塗布された積層体を熱処理した結果、アルミニウムの粒状微粒子が、フレキシブルガラスの間隙を埋め尽くして析出し、6個程度の微粒子が積み重なって金属結合し、一定の強度でフレキシブルガラスを結合した。図2に、試料2の断面を拡大して模式的に図示した。フレキシブルガラス3の間隙を、金属結合したアルミニウム微粒子の集まり4が埋め尽くし、アルミニウム微粒子の集まりがフレキシブルガラスに結合した。
次に、フレキシブルガラスがアルミニウム微粒子の集まりと結合した理由を説明する。フレキシブルガラスはもともと安定な金属酸化物で構成されるため、金属のように酸化物被膜が不純物として表面に形成されない。このため、実施例1のPMMA樹脂フィルムと同様に、水分子と水酸基と有機物の汚染物質とが表面に吸着している。従って、これらの吸着物質の上に混合液が塗膜として形成される。フレキシブルガラスの表面は、PMMA樹脂フィルムより平面度が高く、表面の凹凸はアルミニウム微粒子の大きさより小さい。このため、フレキシブルガラスの間隙に析出したアルミニウム微粒子は、フレキシブルガラスの表面と確実に接触する。ところで、塗膜を熱処理すると、フレキシブルガラスの表面に吸着していた水分子と水酸基とは、エチレングリコールが気化する以前に気化する。また、フレキシブルガラスに吸着していた有機物は、オクチル酸アルミニウムの熱分解に伴って気化する。これによって、フレキシブルガラスの表面が清浄化されて活性化する。いっぽう、塗膜の熱処理過程では、塗膜から順次様々な物質が気化するため、塗膜は外部より相対的に陽圧になっている。このため、フレキシブルガラスの表面に不純物が侵入し、再度不純物が吸着しない。こうして、清浄化され活性化されたフレキシブルガラスの表面に、不純物を含まず活性状態のアルミニウム微粒子がオクチル酸アルミニウムの熱分解で一斉に析出し、アルミニウム微粒子は透明基材の表面に接合する。この結果、フレキシブルガラスの間隙に形成された金属結合したアルミニウム微粒子の集まりからなる透明導電層は、一定の強度をもって2枚のフレキシブルガラスを結合させる。
本実施例におけるフレキシブルガラスの間隙に形成したアルミニウム微粒子の集まりからなる透明導電層によって、2枚のフレキシブルガラスを結合する事例は、一つの事例に過ぎない。オクチル酸ニッケルNi(C15COO)を用いれば、ニッケル微粒子の集まりからなる透明導電層で、2枚のフレキシブルガラスを結合させることができる。また、窒素雰囲気でオクチル酸金属化合物を熱処理すれば、2枚の透明性の合成樹脂からなるフィルをアルミニウム微粒子の集まりないしはニッケル微粒子の集まりで結合できる。
1 PMMA樹脂フィルム 2 ニッケル微粒子 3 フレキシブルガラス
4 アルミニウム微粒子

Claims (7)

  1. 透明基材への透明導電層の形成は、
    可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属を熱分解で析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より高い第二の性質と、融点が20℃より低い第三の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第四の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、該混合液を薄板状の透明基材の片面ないしは両面に塗布ないしは印刷し、該透明基材を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、可視光線の波長領域での屈折率が0.4以上で2.4以下の性質を持つ金属からなる第一の特徴と、粒子の大きさが可視光線の波長より1桁小さい微粒子からなる第二の特徴とを兼備する金属微粒子の集まりが、前記混合液の塗布面ないしは印刷面に一斉に析出し、該金属微粒子が接触部位で互いに金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる透明導電層が、前記混合液の塗布面ないしは印刷面に形成されることを特徴とする、透明基材への透明導電層の形成。
  2. 請求項1に記載した透明導電層による2枚の透明基材の結合は、
    請求項1に記載した混合液を、第一の透明基材と第二の透明基材との双方の片面に塗布ないしは印刷し、第一の透明基材の前記混合液が塗布ないしは印刷された片面を、第二の透明基材の前記混合液が塗布ないしは印刷されない片面に重ね合わせて積層体とし、該積層体に一定の荷重を加えて熱処理し、前記混合液の金属化合物を熱分解する、これによって、前記第一の透明基材と前記第二の透明基材との積層面に、請求項1に記載した透明導電層が形成され、該透明導電層を介して前記第一の透明基材と前記第二の透明基材とが結合されることを特徴とする、請求項1に記載した透明導電層による2枚の透明基材の結合。
  3. 請求項1に記載した金属微粒子が、ニッケルないしはアルミニウムで構成されることを特徴とする、請求項1に記載した金属微粒子。
  4. 請求項1に記載した薄板状の透明基材は、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6である第一の性質と、請求項1に記載した金属化合物が熱分解する熱処理を行なっても熱分解が開始しない第二の性質とを兼備する合成樹脂で構成されたフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載した薄板状の透明基材。
  5. 請求項1に記載した薄板状の透明基材が、厚みが0.2mm以下のフレキシブルガラスであることを特徴とする、請求項1に記載した薄板状の透明基材。
  6. 請求項1に記載した混合液を製造する第一の原料は、請求項1に記載した金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、請求項1に記載したアルコールがメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した混合液を製造する第一の原料。
  7. 請求項1に記載した混合液を製造する第二の原料は、請求項1に記載した金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、請求項1に記載したアルコールがメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した混合液を製造する第二の原料。
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