JP2018059035A5 - - Google Patents

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透明導電性塗料の製造方法とこの塗料を用いた透明導電性膜の形成方法
本発明に係わる透明導電性塗料は、熱分解で金属を析出する金属化合物のアルコール分散液に、アルコールの10倍以上の粘度を持つ高沸点の有機化合物を、10重量%以下の割合で混合して塗料を製造する。この塗料を基材ないしは部品の表面に塗布ないしは印刷し、過剰のアルコールを気化させた後に、金属化合物を熱分解させると、金属微粒子の集まりが基材ないしは部品の表面に一斉に析出し、隣接する金属微粒子同士が金属結合し、金属微粒子が積み重なった積層体が、僅かな量の有機化合物で被覆された透明導電性膜が、基材ないしは部品の表面に形成される。この透明導電性膜は、金属に近い導電率と、1μm前後の膜厚で構成されるため、高感度でタッチ操作が検知できるタッチパネルや、液晶パネルや太陽電池の透明電極として用いることができる。なお、透明導電性塗料を、透明導電性ペースト、透明導電性コーティング剤、透明導電性コーティング液とも言う。
近年、駅の券売機、銀行のATM、コンビニのPOSレジなど、これまで産業機器を中心に使われていたタッチパネルは、スマートフォンやカーナビ、デジタルカメラといった民生機器にも広く採用されるようになった。タッチパネルにおけるタッチ操作の検出方式には、抵抗膜方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、光学式、超音波方式の4種類があるが、抵抗膜方式と投影型静電容量方式とが現在の主流である。
抵抗膜方式は、透明導電性膜を形成したフィルムを、わずかな隙間を設けてガラスに貼り合わせた構造からなる。指でフィルム面を押すと、フィルムが下部のガラス面の電極膜と接触して電流が流れ、これによって電圧の変化がもたらされ、この電圧変化を検知して、タッチ位置を検出する。感圧式であるためペン入力にも対応でき、構造がシンプルであるため、製造コストが安いという特徴を持つ。
いっぽう、静電容量方式は、指でパネルに触れると微弱な静電容量の変化が発生し、この静電容量の変化からタッチ位置を検出する方式で、表面型と投影型の2タイプがある。表面型静電容量方式は、パネルの4隅の電極から、パネル全体に均一な電界を発生させる。指でパネルに触れると静電容量が変化し、4隅の電極にはタッチ位置までの距離に応じた微弱電流が発生し、この微弱電流からタッチ位置を検出する。表面型静電容量方式は大型パネルなどには採用されているが、複数のタッチ位置を同時検出するマルチタッチに対応できない。この短所をクリアしてマルチタッチを可能にしたのが投影型静電容量方式であり、パネルがX軸方向とY軸方向の電極パターンを形成した2枚の透明導電性膜を重ね合わせた構造を有する。パネルに指を触れると、格子状に並ぶ導電性膜の静電容量が同時変化し、これを測定することでタッチ位置を検出する。投影型は表面型より構造が複雑になるが高精度に位置検出ができ、さらに、画面上の写真を2本の指で拡大・縮小したり、回転させたりといったマルチタッチ操作にも対応できるため、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル機器に採用され、抵抗膜方式と並ぶタッチパネルの主流になった。
以上に説明したように、タッチパネルには多種多様な方式があるが、いずれの方式にも透明導電性膜が不可欠になる。すでに実用化された透明導電性膜の多くは、スパッタリングにより透明基材の表面にITO(Indium Tin Oxideの略であり、酸化インジウムにスズをドーピングした可視光領域で透明な半導体材料)の層を成膜した技術である。
透明導電性塗料は、基材ないしは部品の表面に塗料を塗布ないしは印刷して透明導電性膜を形成するため、スパッタリングで透明基材に形成した透明導電性膜より、著しく安価な費用で透明導電性膜が形成できる。また、タッチパネルにおける透明導電性膜のみなならず、導電性を利用して帯電防止膜や表面の汚れ防止膜にも用いられる。さらに、金属に近い導電性が得られれば液晶パネルの透明電極として、また、金属に近い導電性と近紫外線から近赤外線の光を透過する性質を兼備すれば太陽電池の透明電極として用いられる。
いっぽう、透明導電性膜の導電性が高いほど、また、膜の厚みが薄いほど、タッチパネルにおけるタッチ操作を検知する感度が高まる。特に、スマートフォンやカーナビゲーションやデジタルカメラなどに用いられている小型のタッチパネルでは、タッチ操作の検知感度が高いことが、こうした電子機器の商品力になる。しかしながら、透明導電性材料の中でITOが最も高い導電率を持つが、金属、例えば、アルミニウムに比べると抵抗率が57−75倍と高い。さらに、ITO微粒子を分散させた塗料で形成した膜の導電率は、スパッタリングで形成したITO薄膜を熱処理して結晶化を進めた膜の導電率より2桁以上下がる。このため、透明導電性膜の導電率を高める様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、ITO微粉末が互いに接触し易く、かつ、重なりやすいアスペクト比が大きいITO微粉末の製造方法が記載されている。すなわち、インジウム塩および錫塩の水溶液をレイノルズ数15000以上の乱流状態に保持しつつ、アミノアルコールを添加し、析出した析出物を300−800℃で焼成して、アスペクト比が5のITO微粉末を製造する。しかしながら、膜の導電率を高めるには、ITO微粉末同士が接触し、電荷が連続して移動する経路が、ITO微粉末で形成しなければならず、ITO微粉末の混合割合を増やさなければならない。しかし、ITO微粉末の混合割合が高くなるほど、また、ITO微粉末のアスペクト比が大きいほど、塗料におけるITO微粒子の分散性が悪化する問題が起こる。
また、特許文献2には、塗料における分散性が優れたITO微粒子の製造方法と、このITO微粒子を親水性有機溶媒に分散した塗料の製造方法が記載されている。すなわち、アークプラズマ法で製造された10−60nmの粒状のITO微粒子と、分子内に2個以上のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する紫外線硬化の性質を持つアクリレート化合物とを、アルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類に分散させて塗料を製造する。しかしながら、膜の導電率を高めるには、ITO微粒子同士が接触し、電荷が連続して移動する経路が、ITO微粒子によって形成しなければならない。しかし、絶縁物であるアクリレート化合物の存在で、ITO微粒子同士が接触してITO微粒子によって、電荷が移動する経路が形成できない。また、導電性を高めるには、ITO微粒子の混合割合を高める必要があるが、混合割合を高めるほど、アークプラズマ法で製造した高価なITO微粒子の使用量が増大する、また、アクリレート化合物の混合割合が低くなるため、膜の平滑性が劣るという問題が起こる。
特開2006−103984号公報 特開2002−080754号公報
従来の透明導電性塗料は、フィラーとして透明導電性微粒子を用い、この微粒子を樹脂系バインダと溶媒とからなるビヒクル中に分散させた塗料である。このため、微粒子を用いることに起因する課題と、微粒子を絶縁体のビヒクル中に分散させることに起因する課題とからなる、塗料の材料構成に係わる本質的な課題を持っている。
すなわち、第一の課題は、絶縁体であるバインダが微粒子同士の接触を妨げるとともに、バインダの存在によって塗膜の抵抗値が増大する。
また、第二の課題は、微粒子が微細になるほど、微粒子のビヒクル中への分散性が悪化し、微粒子が偏在することに依って、塗膜の抵抗値が増大する。いっぽう、ビヒクル中への微粒子の混合割合を減らせば、塗料における微粒子の分散性は高まるが、塗膜における微粒子同士の接触頻度が低下し、塗膜の抵抗値が高まる。
さらに、第三の課題は、微粒子が微細になるほど微粒子が凝集しやすくなり、これによって、ビヒクル中での微粒子の分散性が悪化し、結果として塗膜の抵抗値が増大する。いっぽう、ビヒクル中への微粒子の混合割合を減らせば、微粒子の凝集は起こりにくくなるが、塗膜における微粒子同士の接触頻度が低下し、膜の抵抗値が高まる。
上記の課題は、塗料の材料構成に係わる本質的な課題であるため、従来の透明導電性塗料の材料構成とは全く異なる、新たな材料構成からなる透明導電性塗料によってのみ、これらの課題が解決できる。このため、新たな材料構成からなる透明導電性塗料の実現が強く求められている。本発明が解決しようとする課題は、透明導電性塗料を塗布ないしは印刷した基材ないしは部品に、金属に近い導電率を持ち、1μm前後の膜厚からなる透明導電性膜が形成される、透明導電性塗料と透明導電性膜とを実現することにある。さらに、この透明導電性塗料を用いて、近紫外線領域から近赤外線領域の光に対し、高い透過性と高い透明性とを持つ透明導電性膜を実現することにある。
本発明における基材ないしは部品に塗布ないしは印刷することで該基材ないしは該部品に透明導電性膜を形成する透明導電性塗料を製造する製造方法は、熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散し、該金属化合物が分子状態となってアルコールに分散されたアルコール分散液を作成し、長が0.2−3μmに相当する近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ範囲の光に対する屈折率が1.4−1.5の間の値を持つ第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第三の性質と、前記アルコールの粘度の10倍以上の粘度を持つ第四の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第五の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に10重量%以下の割合で混合し、該有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和し、該有機化合物が前記アルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を作成する、これによって、該混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷することで該基材ないしは該部品に透明導電性膜が形成される前記混合液からなる透明導電性塗料が製造される透明導電性塗料の製造方法である。
まり、本製造方法に依れば、最初に、熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物が分子状態となってアルコールに10重量%程度分散される。これによって、金属の原料が液相化される。次に、有機化合物をアルコール分散液に10重量%以下の割合で混合すると、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合った低粘度の透明導電性塗料が製造される。
このような方法で製造した透明導電性塗料を、さらに、基材ないしは部品の材質、形状、大きさに応じて粘度を微調整し、また、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどからなる塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などからなる印刷方法を選択すれば、全ての基材ないしは部品に、粘度に応じた膜厚からなる塗膜ないしは印刷膜が形成される。いっぽう、基材ないしは部品に塗布ないしは印刷した低粘度の塗料は、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込み、塗膜ないしは印刷膜を基材ないしは部品の表面に形成する。
前記した製造方法で製造した透明導電性塗料を用いて、基材ないしは部品の表面に透明導電性膜を形成する方法は、前記した製造方法で製造した透明導電性塗料を基材ないしは部品の表面に塗布ないしは印刷し、該基材ないしは該部品を昇温する、最初に前記透明導電性塗料を構成するアルコール気化該透明導電性塗料を構成する金属化合物の微細結晶の集まりが、該透明導電性塗料を構成する有機化合物中に均一に析出し、前記金属化合物の微細結晶が前記基材ないしは前記部品の表面に沈み、前記有機化合物が前記金属化合物の微細結晶の上に移動する、この後前記金属化合物の微細結晶が熱分解し、前記基材ないしは前記部品の表面に金属微粒子の集まりが積み重なって析出し、隣接する前記金属微粒子同士が金属結合し、該金属結合した金属微粒子が積み重なった積層体が、前記基材ないしは前記部品の表面に形成されるとともに、前記金属化合物の熱分解温度より沸点が高い前記有機化合物が、前記積層体の表面を覆い、前記金属微粒子が積み重なった積層体と、該積層体の表面を覆う前記有機化合物の被膜とからなる透明導電性膜が、前記基材ないしは前記部品の表面に形成され前記した製造方法で製造した透明導電性塗料を用いて、基材ないしは部品の表面に透明導電性膜を形成する方法である。
まり、透明導電性塗料を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷すると、塗料が低粘度の液体であるため、塗膜ないしは印刷膜の厚みが薄く、また、基材ないしは部品の表面の凹凸に塗料が入り込む。この後、熱処理すると、塗膜ないしは印刷膜の大部分を占めるアルコールが最初に気化し、厚みが極めて薄い塗膜ないしは印刷膜になる。この際、金属化合物がアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物中に均一に析出する。いっぽう、金属化合物の微細結晶の密度が有機化合物の密度より大きいため、金属化合物の微細結晶は基材ないしは部品の表面に沈み、有機化合物が金属化合物の微細結晶の集まりの上に移動する。また、金属化合物の微細結晶の大きさが、基材ないしは部品の表面の凹凸に比べ1桁以上小さいため、微細結晶は表面の凹凸に入り込み表面を覆う。なお、金属化合物の微細結晶は、熱分解で析出する金属微粒子の大きさに相当する。さらに昇温すると、金属化合物の微細結晶の熱分解が、基材ないしは部品の表面で起こる。この際、金属化合物は金属と無機物ないしは有機物とに分解し、さらに無機物ないしは有機物が気化熱を奪って気化し、無機物ないしは有機物の気化が完了した瞬間に、40−60nmの大きさからなる粒状の金属微粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面に積み重なって析出する。この金属微粒子が不純物を持たない活性状態で析出するため、隣接する金属微粒子同士が金属結合し、金属結合した金属微粒子が積み重なった積層体が、基材ないしは部品の表面に形成される。この積層体は、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込むとともに、基材ないしは部品の表面を覆う。このため、アンカー効果によって積層体は基材ないしは部品の表面から剥がれない。いっぽう、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い有機化合物は、積層体の上に残存し、僅かな量の有機化合物が積層体を覆い、厚みが1μm前後の膜が基材ないしは部品の表面に形成される。
この膜は、金属結合した金属微粒子が積み重なった積層体と、表層の有機化合物の被膜で構成され、この被膜は金属微粒子の積層体の表面の凹凸に入り込む。この膜の厚みが1μm前後と薄く、人が膜に触れた際に、有機化合物の被膜の厚み分だけ弾性変形するだけで、膜は剥ぎ取られない。また、人が膜に触れても膜の存在は分からない。さらに、有機化合物の室温での蒸気圧が極めて小さいため、長期にわたって蒸発しない。いっぽう、金属結合した金属微粒子が積み重なった積層体は、電荷が連続して移動する経路を形成し、また、絶縁性の有機化合物が、極薄い被膜として表層に形成されるため、膜の導電率は金属の導電率に近い。さらに、積層体は有機化合物の被膜で外界から遮断されるため、積層体は経時変化せず、膜の導電率が長期にわたって変わらない。
この膜は入射光に対して高い透過率を持つ。つまり、光が膜に入射する際に、膜の表面で、膜と空気との屈折率の差によって表面反射が生じる。膜の表面が有機化合物の被膜で構成されるため、入射光は、有機化合物と空気との屈折率の差に応じた表面反射を起こす。この表面反射率は、有機化合物と空気との屈折率の差を両者の和で割った値の2乗になる。さらに、膜の表面に入り込む光の透過率は入射光の全体を1とした場合、1から表面反射率を差し引いた値の2乗になる。有機化合物長が0.2−3μmに相当する近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ範囲の光に対する屈折率が1.4−1.5であるため、近紫外線領域から近赤外線領域の入射光について、表面反射率が3−4%となり、透過率が92−94%となり、ガラスの透過率に劣らない透過率で、近紫外線から近赤外線の領域に及ぶ光が膜に透過する。なお、表面反射と全光線透過率とは、下記の10段落で改めて説明する。さらに、膜の表面を透過した光は、金属微粒子が積み重なった積層体で散乱する。微粒子における光の散乱は、微粒子の大きさが入射光の波長に対して十分に小さい場合は、レイリー散乱式に基づいて散乱する。レイリー散乱係数は、入射光の波長に対する微粒子の大きさの比率の4乗に大きく依存し、微粒子の大きさの2乗にも依存する。40−60nmの金属微粒子の大きさが、0.2−3μmの入射光の波長に比べ十分に小さいため、金属微粒子における散乱係数は極めて小さく、被膜は高い透明性を示す。なお、レイリー散乱は、下記の11段落で改めて説明する。
このように、透明導電性塗料で形成した膜は、近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ領域の光に対して、高い透過率と高い透明性とを持つ。また、膜の導電率は、金属に近い導電率をもち、厚みが1μm前後と薄い。従って、この膜は透明導電性膜になる。これによって、5段落に説明した課題が解決できた。
なお、基材ないしは部品の表面に形成した透明導電性膜の上に、焼成を伴う機能性の膜を形成する場合がある。例えば、ガラス基板の表面に形成した透明導電性膜を、色素増感型太陽電池の透明電極として用いる場合がある。つまり、透明導電性膜の表面に、金属酸化物半導体の微粉末からなるペーストを塗布し、400℃以上の温度で焼成し、多孔質の金属酸化物半導体の膜を形成する。ペーストを焼成する際に、透明導電性膜の表層を形成する有機化合物が気化する。また、金属微粒子が積み重なった積層体は、金属微粒子が析出した温度より高い温度に昇温されるため、金属微粒子が熱エネルギーを得て隣接する金属微粒子を取り込み、金属微粒子が成長する。金属微粒子が析出した温度より、100℃だけ昇温される場合は、金属微粒子が成長して、5%近く金属微粒子の体積が増える。金属微粒子の成長で微粒子の数は減るが、成長した金属微粒子同士が金属結合し、成長した金属微粒子が積み重なった積層体になる。なお、金属微粒子が成長しても、近紫外線から近赤外線の波長に比べ、金属微粒子の大きさが十分に小さいため、光の散乱はない。こうして、表面に透明導電性膜が形成されたガラス基板は、焼成に依っても透明導電性膜の機能が損なわれず、色素増感型太陽電池の透明電極として用いることができる。
いっぽう、本発明における透明導電性塗料の製造方法と透明導電性膜の形成方法とは、様々の優れた作用効果をもたらす。
第一に、透明導電性塗料の製造は、有機金属化合物をアルコールに分散し、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの極めて簡単な僅か2つの工程からなる。2つの工程を連続して実施すると、透明導電性塗料が安価な費用で大量に製造できる。
第二に、透明導電性膜を形成する処理は熱処理だけで、アルコールを気化し、次に、金属化合物を熱分解するだけの処理であり、透明導電性膜が安価な費用で製造できる。
第三に、透明導電性塗料の原料は、金属化合物とアルコールと有機化合物であり、いずれも汎用的な工業用薬品である。また、高価な透明導電性微粒子を用いないため、従来に比べ著しく安価な透明導電性膜が製造できる。
第四に、基材や部品の表面が、ゴミ、チリと言われる粒子状の汚染物質や、有機物質からなる油性汚染物質で汚染されていても、金属化合物を熱分解する際に気化して除去される。また、金属化合物の熱分解で汚染物質が除去できなくても、金属微粒子の集まりからなる積層体が、残存した汚染物質の上にかぶさって形成されるため、積層体の導電率は変わらない。また、積層体は有機化合物の被膜で被覆されるため、新たな汚染物質や化学変化を進行させる物質が積層体に付着せず、積層体の導電率は経時変化しない。従って、基材や部品の事前の表面洗浄が不要になる。
第五に、製造される透明導電性塗料の粘度は低い。このため、基材ないしは部品の材質、形状、大きさに応じて、塗料の粘度を微調整し、さらに、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどの塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などの印刷方法を選択することで、全ての基材ないしは部品に、近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ光に対して、高い透過率と高い透明性とを持ち、また、金属に近い導電率を持ち、1μm前後の膜厚からなる透明導電性膜が形成できる。これによって、基材ないしは部品の材質、形状、大きさに拘わらず、高感度でタッチ検知するタッチパネルや、液晶パネルや太陽電池の透明電極などが製造できる。
ここで、表面反射率と全光線透過率について説明する。光が透明導電性膜に入射する際に、空気と膜表面との屈折率の差に応じて表面反射が生じる。従って、ガラスも表面反射によるロスが発生し、最も一般的な2mmのフロートガラスでは、可視光線の波長領域において全光線透過率は約90%である。
膜に垂直に入射した光の表面における表面反射率Rは、膜表面の屈折率nと空気の屈折率mとからなる数式1によって算出される。また、全光線透過率Tは、表面反射率Rからなる数式2によって算出される。膜の表面は、有機化合物で構成されるため、有機化合物の屈折率と空気の屈折率との差に応じた表面反射を起こす。近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ波長に対する有機化合物の屈折率は1.4−1.5であるため、表面反射率Rは3−4%になり、全光線透過率Tは92−94%になり、フロートガラスに劣らぬ透過率によって、近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ光が膜の表面を透過する。
数1
R=(n−m)/(n+m)
数2
T=(1−R)
次に、光の散乱について説明する。有機化合物に入射した光は、金属微粒子の集まりで散乱する。40−60nmの大きさからなる金属微粒子は、近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ0.2−3μmの波長に対して十分に小さいため、光の散乱は数式3に示すレイリー散乱式が適応できる。数式3におけるSは散乱係数で、λは入射光の波長で、Dは粒子径で、mは有機化合物の屈折率に対する金属微粒子の屈折率の比率である。またπは円周率である。数式3における散乱係数Sは、入射光の波長λに対する粒子径Dの比率D/λの4乗に大きく依存し、また、粒子径Dの2乗にも依存する。粒子径Dが入射光の波長λの1/10に近いため、散乱係数Sは、金属微粒子に対して極めて小さな値になる。この結果、透明導電性膜は近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ入射光に対して高い透明性を示す。
数3
S=4/3・π/λ・D{(m−1)/(m+1)}
前記した透明導電性塗料の製造方法は、前記した金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物を用い、前記したアルコールとしてメタノールを用い、前記した有機化合物として、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物を用い、前記した透明導電性塗料の製造方法に従って透明導電性塗料を製造する、前記した透明導電性塗料の製造方法である。
まり、金属錯イオンを有する無機金属化合物は、180−220℃の還元雰囲気で熱分解して金属を析出する。また、メタノールに10重量%近くまで分散する。このため、無機金属化合物は、熱分解で金属を析出する原料になる。従って、還元雰囲気での耐熱性が220℃以上の基材ないしは部品に対して、透明導電性膜が形成できる。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が低分子量であるため、配位子が金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が180−220℃より低い温度で分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に180−220℃で金属が析出する。つまり、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長くなる。従って、無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断される。このような無機金属化合物として、アンモニアNHが配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン錯体、水HOが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア錯体、塩素イオンClないしは塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ錯体、シアノ基CNが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ錯体、臭素イオンBrが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ錯体、沃素イオンIが配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード錯体などが挙げられる。
次に、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類の中に、第一に近紫外線線領域から近赤外線領域に及ぶ0.2−3μmの波長に対する屈折率が1.4−1.5の値を持ち、第二に融点が20℃より低く、第三にメタノールに溶解ないしは混和し、第四にメタノールの粘度の10倍以上の粘度を持ち、第五に無機金属化合物が熱分解する温度より沸点が高い、これら5つの性質を兼備する有機化合物がある。このような有機化合物はいずれも汎用的な工業用薬品である。
従って、このような有機化合物を、無機金属化合物のメタノール分散液に混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和するため、有機化合物は無機金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合う。この混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷し、さらに、昇温して無機金属化合物を熱分解すると、40−60nmの大きさからなる粒状の金属微粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面に積み重なって析出する。これによって、金属微粒子が積み重なった積層体が形成される。この際、沸点が熱分解温度より高い有機化合物は残存し、金属微粒子の積層体が、僅かな量の有機化合物で被覆された透明導電性膜が形成される。このため、有機化合物は透明導電性塗料の原料になる。
前記した透明導電性塗料の製造方法は、前記した金属化合物としてオクチル酸金属化合物を用い、前記したアルコールとしてメタノールを用い、前記した有機化合物として、カルボン酸エステル類に属する有機化合物を用い、前記した透明導電性塗料を製造する製造方法に従って透明導電性塗料を製造する、前記した透明導電性塗料の製造方法である。
まり、オクチル酸金属化合物は、290℃で熱分解して金属を析出する。また、メタノールに10重量%近くまで分散する。従って、オクチル酸金属化合物は、熱分解で金属を析出する原料になる。なお、合成樹脂からなる基材ないしは部品を、オクチル酸金属化合物の熱分解によって透明導電性膜で覆う際に、基材ないしは部品は、オクチル酸金属化合物の微細結晶の集まりと有機化合物とで被覆された状態で290℃まで昇温される。この際、基材ないしは部品は、大気に遮断された状態で290℃まで昇温されるため、合成樹脂の熱分解は起こらない。従って、合成樹脂の性質を不可逆変化させることなく、合成樹脂からなる基材ないしは部品の表面を、透明導電性膜で覆うことができる。
すなわち、オクチル酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造を持つオクチル酸金属化合物を熱処理すると、オクチル酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。さらに、オクチル酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。こうした有機金属化合物として、オクチル酸金属化合物の他に、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物が存在する。いっぽう、大気圧でオクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、沸点が最も低いオクチル酸からなるオクチル酸金属化合物の熱分解温度が最も低いため、オクチル酸金属化合物を用いると、透明導電性塗料の熱処理費用が安価で済む。
さらに、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、オクチル酸を強アルカリと反応させるとオクチル酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるオクチル酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。
次に、カルボン酸エステル類に属する有機化合物に、第一に近紫外線領域から近赤外線領域の領域に及ぶ0.2−3μmの波長に対する屈折率が1.4−1.5の値を持ち、第二に融点が20℃より低く、第三にメタノールに溶解ないしは混和し、第四にメタノールの粘度の10倍以上の粘度を持ち、第五に沸点が290℃より高い、これら5つの性質を兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。
このような有機化合物を、オクチル酸金属化合物のメタノール分散液に混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はオクチル酸金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合う。この混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷し、さらに、昇温してオクチル酸金属化合物を熱分解すると、40−60nmの大きさからなる粒状の金属微粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面に積み重なって析出する。これによって、金属微粒子の集まりからなる積層体が形成される。いっぽう、沸点が290℃より高い有機化合物は残存し、金属微粒子の積層体が僅かな量の有機化合物で被覆された透明導電性膜が形成される。このため、有機化合物は透明導電性塗料の原料になる。
アクリル樹脂の透明フィルムの表面に、銅微粒子の集まりからなる積層体がジエチレングリコールからなる被膜で被覆された透明導電性膜の断面を、模式的に説明する図である。 ポリエステル樹脂の透明フィルムの表面に、アルミニウム微粒子の集まりからなる積層体が、フタル酸ジブチルからなる被膜で被覆された透明導電性膜の断面を、模式的に説明する図である。
実施形態1
熱処理で金属を析出する金属化合物の実施形態として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物が、相対的に熱分解温度が低い金属化合物として適切であることを説明する。ここでは、金属元素の中で、銀に次いで導電率と熱伝導率とが優れる銅を熱分解で析出する銅化合物について説明する。
銅化合物が透明導電性塗料の原料になるには、アルコールに分散する性質と、熱分解で銅を析出する性質とを兼備する必要がある。低分子量の塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はアルコールに溶解し、銅イオンがアルコールに溶出するため、アルコールを気化させた後に、無機銅化合物の微細結晶が析出しない。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの低分子量の無機銅化合物は、アルコール類に分散しない。このため、これらの低分子量の無機銅化合物は、アルコールに分散しない。
銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、熱分解反応が最も簡単な化学反応である。つまり、銅化合物を昇温するだけで銅が析出する。さらに、銅化合物の熱分解温度が低ければ、耐熱性が低い基材ないしは部品に対して、透明導電性膜が形成できる。無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置する銅イオンに配位結合した銅錯イオンを有する銅錯体は、無機物からなる配位子の分子量が小さいため、還元雰囲気で熱分解する温度は、分子量がより大きい有機物が配位子を形成する有機銅化合物が大気雰囲気で熱分解する温度より低い。このような銅錯体は、有機銅化合物より相対的に高価な物質であるが、耐熱性が低い基材ないしは部品に透明導電性膜が形成できる。
すなわち、銅錯体を構成する分子の中で銅イオンが最も大きい。ちなみに、銅原子の共有結合半径は132±4pmであり、一方、窒素原子の共有結合半径の71±1pmであり、酸素原子の共有結合半径は66±2pmである。このため、銅錯体の分子構造においては、配位子が銅イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理で、最初に配位結合部が分断され、銅と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銅が析出する。
このような銅錯体の中で、アンモニアNHが配位子となって銅イオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンClが、ないしは、塩素イオンClとアンモニアNHとが配位子となって銅イオンに配位結合するクロロ錯体は、他の銅錯体に比べて合成が容易であるため、安価な製造費用で製造できる。また、こうした銅錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で熱分解が完了する。さらに、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯イオンとして、例えば、テトラアンミン銅錯イオン[Cu(NH2+、ないしは、ヘキサアンミン銅錯イオン[Cu(NH2+があり、銅錯体として、例えばテトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH](NO、ないしは、ヘキサアンミン銅硫酸塩[Cu(NH]SOがある。
以上に説明したように、相対的に低温度で銅化合物が熱分解して銅を析出する材料として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、銅イオンに配位結合した銅錯イオンを有する銅錯体が適切である。これによって、耐熱性が低い基材ないしは部品の表面に透明導電性膜が形成できる。
実施形態2
熱処理で金属を析出する金属化合物の他の実施形態として、オクチル酸金属化合物が適切であることを説明する。透明導電性塗料の原料になる金属化合物は、第一にメタノールに分散し、第二熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは金属をアルミニウムとし、2つの性質を兼備する物質として、オクチル酸アルミニウムが適切であることを説明する。なお、アルミニウムは、密度が2.70g/cmと小さく、銀、銅、金に次いで導電率と熱伝導率とに優れる性質を持つ。従って、オクチル酸アルミニウムを原料として用いることで、軽量で導電性と熱伝導性に優れる透明導電性膜が形成できる。
最初に、アルコールに分散するアルミニウム化合物を説明する。塩化アルミニウムは水に溶け、水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解する。また、水酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。さらに、硫酸アルミニウムはアルコールに溶解し、アルミニウムイオンが溶出する。また、酸化アルミニウムは、アルコールに分散しない。このため、これらの低分子量の無機アルミニウム化合物は、アルコールに分散しない。
なお、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置するアルミニウムイオンに配位結合したアルミニウム錯イオンを有するアルミニウム錯体は、熱分解で酸化アルミニウムを析出するため、熱分解でアルミニウムを析出する原料にならない。このようなアルミニウム錯体として、水分子HOを配位子とするアクア錯体や、水酸化物イオンOHを配位子とするヒドロキソ錯体などがある。
次に、有機アルミニウム化合物は、熱分解でアルミニウムを析出する。有機アルミニウム化合物からアルミニウムが生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機アルミニウム化合物を昇温するだけで、アルミニウムが析出する。さらに、有機アルミニウム化合物の合成が容易でれば、安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機アルミニウム化合物にカルボン酸アルミニウム化合物がある。
カルボン酸アルミニウム化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置するアルミニウムイオンAl3+が最も大きい。従って、アルミニウムイオンAl3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、アルミニウムイオンAl3+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、アルミニウムイオン原子の共有結合半径は121±4pmであり、酸素イオン原子の共有結合半径は66±2pmであり、炭素原子の共有結合半径は73pmであることによる。このため、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長いアルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムなどがある。このようなカルボン酸アルミニウム化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は合成が容易である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が生成される。
さらに、飽和脂肪酸で構成されるカルボン酸アルミニウム化合物は、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸アルミニウム化合物は低い温度で熱分解し、アルミニウムを析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物は、熱分解温度が相対的に低くなるので、アルミニウムを析出する原料として望ましい。
さらに、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなる。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物は、低い温度で熱分解する。さらに、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。すなわち、オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、前記したラウリン酸の沸点より68℃低い。このため、アルミニウムを析出する原料として、熱分解温度が低いオクチル酸アルミニウムが望ましい。オクチル酸アルミニウムは、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してアルミニウムが析出し、メタノールに10重量%まで分散する。
なお、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物が熱分解すると、アルミニウムの酸化物が析出する。さらに、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このようなカルボン酸アルミニウム化合物の熱分解反応では、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化アルミニウムが析出する。
ここで、オクチル酸金属化合物としてオクチル酸銅を用い、大気雰囲気と窒素雰囲気との双方における熱分解反応を、5℃/の昇温速度で昇温したTG−DTA特性から説明する。なお、TG特性は、昇温に伴うオクチル酸銅の重量変化を連続的に測定した結果であり、DTA特性は、昇温に伴ってオクチル酸銅に発生する熱変化を基準物質との温度差として検出する示差熱分析の結果である。大気雰囲気と窒素雰囲気との双方につて、水分の離脱に依る緩やかな重量減少が終了した後、オクチル酸の沸点である228℃を超えると、明確な重量減少が現れ、温度上昇と共に重量が急減して熱分解が進む。すなわち、大気雰囲気では、278.8℃で発熱量が急増し、発熱量のピークが280.7℃で現れ、285.4℃で発熱現象が終了し、重量が78.5%減少した。いっぽう、窒素雰囲気では、285.3℃で発熱量が急増し、発熱量のピークが289.0℃で現れ、291.3℃で発熱現象が終了し、重量が77.4%減少した。従って、オクチル酸銅の熱分解は、大気雰囲気と窒素雰囲気との双方について、オクチル酸の沸点で熱分解が始まり、290℃で熱分解が終了し、銅を析出すると考えて支障ない。また、オクチル酸銅の熱分解で銅が析出するオクチル酸銅の理論的な重量減少は、81.8重量%であるため、熱分解で銅が析出したと考えて支障ない。
実施形態3
本実施形態は、第一に近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ範囲の0.2−3μmの波長の光に対する屈折率が1.4−1.5の値を持ち、第二に融点が20℃より低く、第三にメタノールに溶解ないしは混和し、第四にメタノールの粘度の10倍以上の粘度を持ち、第五に無機金属化合物からなる金属錯体が熱分解する温度、ないしは、オクチル酸金属化合物が熱分解する温度より沸点が高い、これら5つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。これら5つの性質を兼備する有機化合物に、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物がある。なお、メタノールの粘度は20℃で0.59mPa秒である。また、下記に記す屈折率は、20℃におけるナトリウムのD線(波長が589.3nm)に対する屈折率の代表値であるが、いずれの有機化合物も、近紫外線領域から近赤外線領域の0.2−3μmの波長に対する屈折率は、有効数字の4桁目が僅かに変わるだけで、屈折率は1.4−1.5の間にある。
最初に、カルボン酸エステル類について説明する。カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸からなる第一のエステル類と、不飽和カルボン酸からなる第二のエステル類と、芳香族カルボン酸からなる第三のエステル類とに分けられる。
第一の飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が200−290℃の間にあるカルボン酸エステルは、沸点が207℃のカプロン酸ブチル以上の分子量を持つカルボン酸エステルである。しかし、こうしたカルボン酸エステルの粘度は、メタノールの粘度の10倍より低い。
また、飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、沸点が295℃であるミリスチン酸エチル以上の分子量を持つカルボン酸エステル類である。ちなみに、ミリスチン酸エチルは、20℃の粘度が6mPa秒で、屈折率が1.436である。従って、オクチル酸金属化合物と、メタノールと、ミリスチン酸エチル以上の分子量を持つ飽和カルボン酸からなるエステル類は、透明導電性塗料の原料になる。
次に、第二の不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、オレイン酸メチル以上の分子量を持つカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸フェニルの沸点は249℃で、オレイン酸メチルの沸点は351℃である。また、オレイン酸メチルの粘度は20℃で51mPa秒であり、屈折率は1.452である。従って、オクチル酸金属化合物と、メタノールと、オレイン酸メチル以上の分子量を持つ不飽和カルボン酸からなるエステル類は、透明導電性塗料の原料になる。
さらに、第三の芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、融点が20℃より低く、沸点が200−290℃の間にあるカルボン酸エステルは、安息香酸エチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、安息香酸エチルの沸点は212℃で、安息香酸プロピルの沸点は230℃である。しかし、こうした安息香酸エステルの粘度は、メタノールの粘度の10倍より低い。
また、芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、融点が20℃より低く、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、フタル酸ジエチル以上の分子量を持つカルボン酸エステルである。ちなみに、フタル酸ジエチルの沸点は295℃で、フタル酸ジブチルの沸点は340℃である。なお、フタル酸ジエチルの粘度は20℃で13mPa秒であり、屈折率は1.50である。また、フタル酸ジブチルの粘度は37.8℃で9.72mPa秒であり、屈折率は1.490−1.495である。さらに、沸点が385℃のフタル酸ジオクチルの粘度は、20℃で81.4mPa秒であり、屈折率が25℃で1.485である。従って、オクチル酸金属化合物と、メタノールと、フタル酸ジエチル以上の分子量を持つ芳香族カルボン酸からなるエステル類は、透明導電性塗料の原料になる。
次に、グリコール類について説明する。グリコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールの6種類のグリコールがある。これらのグリコール類は、いずれもメタノールに溶解又は混和し、融点が20℃より低い液状モノマーである。
ジエチレングリコールは、沸点が244℃で、20℃の粘度が36mPa秒で、屈折率が1.447である。また、プロピレングリコールは、沸点が188℃で、25℃の粘度が48.6mPa秒で、屈折率が1.429−1.434である。さらに、ジプロピレングリコールは、沸点が232℃で、25℃の粘度が75mPa秒で、屈折率が1.440−1.442である。また、トリプロピレングリコールは、沸点が265℃で、25℃の粘度が57.2mPa秒で、屈折率が1.442である。従って、金属錯イオンを有する無機金属化合物と、メタノールと、上記のグリコール類とは、透明導電性塗料の原料になる。
最後に、グリコールエーテルについて説明する。グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの各々の末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルとの3種類がある。これらのグリコールエーテルはメタノールに溶解し、融点が20℃より低い液体である。
最初に、沸点が200−290℃の間にあるエチレングリコール系エーテルは、沸点が229℃で、20℃の粘度が7.6mPa秒で、屈折率が1.4316の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が231℃で、20℃の粘度が6.5mPa秒で、屈折率が1.436のブジルジグリコールと、沸点が245℃で、20℃の粘度が30.5mPa秒で、屈折率が1.539のフェニルグリコールと、沸点が249℃で、20℃の粘度が7.5mPa秒で、屈折率が1.427のメチルトリグリコールと、沸点が256℃で、20℃の粘度が12mPa秒で、屈折率が1.523のベンジルグリコールと、沸点が259℃で、20℃の粘度が8.6mPa秒で、屈折率が1.437のヘキシルジグリコールと、沸点が271℃で、20℃の粘度が8.1mPa秒で、屈折率が1.438のブチルトリグリコールと、沸点が272℃で、20℃の粘度が10.4mPa秒で、屈折率が1.442の2エチルヘキシルグリコールとがある。従って、金属錯イオンを有する無機金属化合物と、メタノールと、上記のグリコールエーテル類は、透明導電性塗料の原料になる。
また、沸点が290℃より高いエチレングリコール系エーテルに、沸点が302℃で、20℃の粘度が19.3mPa秒で、屈折率が1.5118のベンジルジグリコールがある。従って、オクチル酸金属化合物とメタノールと、ベンジルジグリコールは、透明導電性塗料の原料になる。
次に、沸点が200−290℃の間にあるプロピレングリコール系エーテルは、沸点が231℃で、20℃の粘度が7.4mPa秒で、屈折率が1.426のブチルプロピレンジグリコールと、沸点が243℃で、20℃の粘度が23.2mPa秒で、屈折率が1.524であるフェニルプロピレングリコールと、沸点が274℃で、20℃の粘度が8.2mPa秒で、屈折率が1.428のブチルプロピレントリグリコールとがある。従って、金属錯イオンを有する無機金属化合物と、メタノールと、上記のグリコールエーテル類は、透明導電性塗料の原料になる。
実施形態4
ここでは、相対的に耐熱性が低い合成樹脂の基材ないしは部品に対し、透明導電性膜を形成することが可能か否かを、合成樹脂の熱分解反応から説明する。つまり、合成樹脂の熱分解が始まると、高分子の分子構造が不可逆変化し、合成樹脂の性質が元に戻れない。従って、オクチル酸金属化合物の熱分解で、合成樹脂の熱分解が始まらなければ、合成樹脂の基材ないしは部品に透明導電性膜が形成できる。
ところで、合成樹脂を構成する高分子の熱分解反応は、酸素ガスが存在する雰囲気と、窒素雰囲気とでは大きく異なる。つまり、酸素ガスが存在する雰囲気での高分子の熱分解は、酸化反応に依る熱分解であるため発熱を伴う。この発熱現象が、酸化されやすい有機物質からなる高分子の熱分解を促進させる。これに対し、窒素雰囲気での熱分解では酸化反応が起こらず、吸熱反応に依る熱分解が起こり、発熱現象が生じない。このため、高分子が熱分解を開始する温度は、酸素ガスが存在する雰囲気に比べて大幅に遅れて高温側にシフトする。例えば、高密度ポリエチレン樹脂の熱分解は、大気雰囲気では250℃付近で開始するのに対し、窒素雰囲気では400℃付近で開始し、150℃も高温側にシフトする。
窒素雰囲気における他の高分子の熱分解は、ポリアセタール樹脂POMが280℃で熱分解が始まり420℃で終了する。ポリスチレン樹脂PSは350℃で熱分解が始まり460℃付近で終了する。ポリエチレンテレフタレート樹脂PETが425℃で熱分解が始まり480℃付近で終了する。ポリプロピレン樹脂PPが370℃で熱分解が始まり500℃付近で終了する。高密度ポリエチレン樹脂HDPEが400℃で熱分解が始まり520℃付近で終了する。ポリテトラフルオルエチレン樹脂PTFEは490℃で熱分解が始まり640℃付近で終了する。
また、ヘリウムガス雰囲気でポリ塩化ビニル樹脂PVCは、不燃性で有害の塩化水素ガスと、可燃性ガスのベンゼンとナフタレンとの離脱が、吸熱反応を伴って220℃付近から始まり260℃付近で急激に進行し360℃まで続く。この後、420℃付近から吸熱を伴う高分子の熱分解が始まり、可燃性ガスのトルエンとキシレンとを離脱して550℃付近で終了し、固体の残査(灰分)を10%残す。さらに、大気が遮断された高温流体でのノボラック型フェノール樹脂は、260℃付近から可燃性の可塑剤の脱離が始まり、360℃付近まで続き、この後、390℃から吸熱を伴う高分子の熱分解が始まり、可燃性ガスのフェノールやクレゾールなどを生成し、700℃付近で終了し、固体の残査(灰分)を65%残す。
これに対し、合成樹脂の基材ないしは部品に、透明導電性膜を形成する際に、基材ないしは部品は、オクチル酸金属化合物の微細結晶の集まりと有機化合物との混合物で被覆された状態で290℃まで昇温される。この際、基材ないしは部品は、大気が遮断され、密閉された領域で290℃まで昇温される。このため、高分子の熱分解は、前記した窒素ガスや不活性ガスや高温流体での熱分解とは全く異なる。つまり、窒素ガスや不活性ガスや高温流体では、熱分解で生成されたガスは雰囲気中あるいは高温流体中に順次放出されるため、温度の上昇に伴ってガスが生成される熱分解が進む。いっぽう、合成樹脂の基材ないしは部品は、大気が遮断され、密閉された領域で昇温されるため、熱分解で生成される最初のガスは、極めて狭い領域に閉じ込められ、狭い領域におけるガスの分圧が増大し、その温度での飽和圧力となって熱分解が停止する。従って、熱分解を進めるには、開放された雰囲気における熱分解より大きな熱エネルギーを高分子に与える必要がある。このため、ごく微量のガスが生成された時点で、狭い領域内におけるガスの分圧がその温度での飽和圧力になり、開放された雰囲気に比べて生成されるガスの量は極めて少ない。また、熱分解で生成される2番目以降のガスは、最初のガスが閉じ込められているため、さらに大きな熱エネルギーが供給されないと熱分解が進まない。この結果、大気が遮断され、密閉された領域における合成樹脂は、前記した窒素ガスや不活性ガスや高温流体などの解放された雰囲気における熱分解温度より、著しく高温側で熱分解が進み、オクチル酸金属化合物の熱分解温度より高い温度で熱分解する。従って、オクチル酸金属化合物の微細結晶が熱分解しても、高分子は熱分解せず、合成樹脂の性質は変わらない。
実施例1
本実施例は、熱分解で銅を析出する無機金属化合物を原料として用い、透明導電性塗料を製造する。銅の原料となる無機金属化合物は、テトラアンミン銅イオン[Cu(NH2+の硝酸塩であるテトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH](NO(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用い、有機化合物は沸点が245℃で、20℃の粘度が36mPa秒のジエチレングリコール(例えば、三菱化学株式会社の製品)を用いた。
最初に、テトラアンミン銅硝酸塩の0.2モルに相当する51gをメタノールに10重量%の割合で分散する。この分散液に、ジエチレングリコールを5重量%の割合で混合して、透明導電性塗料を製造した。
実施例2
実施例1で製造した塗料を用いて、アクリル樹脂からなる透明フィルム(例えば、三菱レイヨン株式会社の製品で品番HBS006)の表面に、銅微粒子が積み重なった積層体を形成し、さらに、この積層体をジエチレングリコールの被膜で覆う透明導電性膜を形成する実施例である。なお、アクリル樹脂の透明フィルムの膜厚は50μmである。
10cm×10cmの大きさに切断したアクリル樹脂フィルム10枚の表面に、実施例1で製造した塗料を20ミクロンmの厚みでスクリーン印刷した(印刷機は、例えばマイクロテック株式会社の製品MTVC_320を用いる)。さらに、アクリル樹脂フィルムを水素ガス雰囲気で熱処理した。最初に75℃に昇温してメタノールを気化した。次に、200℃に5分間放置し、テトラアンミン銅硝酸塩を熱分解した。この透明フィルムを試料1とする。
試料1について、複数の表面と切断した複数の断面との双方を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
最初に、複数の表面と複数の断面との様々な部位から、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料表面の観察では、ジエチレングリコールの内側に、40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子の集まりが存在した。試料断面の観察では、透明フィルムの表面に、粒状の微粒子が10層前後の厚みで積み重なり、その表面をジエチレングリコールの被膜が覆う膜が形成され、膜厚は1μmであった。
次に、複数の表面と複数の断面との様々な部位からの反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を調べた。粒状微粒子には濃淡が認められず、同一の原子から構成されていた。
さらに、複数の表面と複数の断面との様々な部位からの特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子は銅原子のみで構成されていたため、銅の粒状微粒子である。
以上の観察結果から、透明フィルムの表面に、銅微粒子の集まりが10個程度積み重なって銅微粒子の積層体を形成し、この積層体の表面をジエチレングリコールの被膜が覆って1μmの厚みからなる膜が形成されていることが分かった。
さらに、試料の全光線透過率をヘーズメータによって測定した(例えば、日本電色工業株式会社の分光ヘーズメータ型式NDH7000)。使用したアクリル樹脂の透明フィルムは、380nm以上の可視光の波長領域で93%の全光線透過率を持つが、作成した試料は、0.2−3μmの波長からなる入射光に対して91%の全光線透過率を示した。
また、試料表面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST−4)。表面抵抗値は、1×10Ω/□であり、試料表面に30gの荷重を加えると、表面抵抗値は、1×10Ω/□未満まで下がった。従って、試料表面にわずかな力を加えると、試料はさらに金属薄膜に近い表面抵抗を有することが分かった。このため、ジエチレングリコールの被膜の内側は、より金属に近い導電率を持つ。
以上に説明した観察と測定の結果から、透明フィルムの表面に形成した透明導電性膜は、タッチ操作を高感度で検知するタッチパネルとして用いることができる。
以上の結果を、試料1の断面構造として図1に模式的に示した。1はアクリル樹脂の透明フィルムで、2は銅微粒子で、3はジエチレングリコールである。
実施例3
本実施例は、オクチル酸アルミニウム(C15COO)Al(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を熱分解でアルミニウムを析出する原料として用い、有機化合物として沸点が340℃のフタル酸ジブチルC(COO(CHCH(例えば、昭和エーテル株式会社の製品)を用いて透明導電性塗料を製造する。
最初に、オクチル酸アルミニウムの0.3モルに相当する138gをメタノールに10重量%の割合で分散する。この分散液に、フタル酸ジブチルを10重量%の割合で混合して、透明導電性塗料を製造した。
実施例4
実施例1で製造した塗料を用いて、ポリエステル樹脂からなる透明フィルム(例えば、帝人デュポンフィルム株式会社の製品で銘柄PETG2)の表面に、アルミニウム微粒子が積み重なった積層体を形成し、さらに、この積層体をフタル酸ジブチルの被膜で覆う透明導電性膜を形成する実施例である。なお、ポリエステル樹脂の透明フィルムの膜厚は50μmである。また、ポリエステル樹脂の大気雰囲気での熱分解は400℃付近から始まる。本実施例における透明フィルムは、オクチル酸アルミニウムの微細結晶とフタル酸ジブチルの被膜とで被覆された状態で昇温されるため、透明フィルムの熱分解が始まる温度は、400℃より著しく高い。
10cm×10cmの大きさに切断したポリエステル樹脂フィルム10枚の表面に、実施例3で製造した塗料を10μmの厚みでスクリーン印刷した。この後、大気雰囲気で熱処理した。最初に75℃に昇温してメタノールを気化し、次に、290℃に1分間放置し、オクチル酸アルミニウムを熱分解した。この透明フィルムを試料2とする。
試料2について、複数の表面と切断した複数の断面との双方を、実施例2と同様に電子顕微鏡で観察した。この観察結果から、透明フィルムの表面に、アルミニウム微粒子の集まりが15個程度積み重なってアルミニウム微粒子の積層体を形成し、この積層体の表面をフタル酸ジブチルの被膜が覆って1μmの厚みからなる膜が形成されていることが分かった。
さらに、試料の全光線透過率を、実施例2と同様にヘーズメータによって測定した。使用したポリエステル樹脂の透明フィルムは、380nm以上の可視光の波長領域で95.5%の全光線透過率を持つが、作成した試料は、0.2−3μmの波長の入射光に対して93%の全光線透過率を示した。
また、試料表面の表面抵抗値を、実施例2と同様に表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□であり、試料表面に10gの荷重を加えると、表面抵抗値は1×10Ω/□未満に下がった。従って、試料表面にわずかな力を加えると、試料はさらに金属薄膜に近い表面抵抗を有することが分かった。このため、フタル酸ジブチルの被膜の内側は、より金属に近い導電率を持つ。なお、実施例2より表面抵抗が下がった理由は、実施例2におけるジエチレングリコールの被膜の厚みより、本実施例におけるフタル酸ジブチルの被膜の厚みが薄いことに依る。
以上に説明した観察と測定の結果から、透明フィルムの表面に形成した透明導電性膜は、タッチ操作を高感度で検知するタッチパネルとしてのみならず、液晶パネルや太陽電池の透明電極として用いることができる。
以上の結果を、試料2の断面構造として図2に模式的に示した。4はポリエステル樹脂の透明フィルムで、5はアルミニウム微粒子で、6はフタル酸ジブチルである。
透明導電性塗料の製造に係わる2つの実施例と、透明導電性膜の形成に係わる2つの実施例とを説明したが、本発明に係わる透明導電性塗料の製造と透明導電性膜の形成は、以下の4つの理由から、これらの実施例に限定されない。
第一に、分子量が小さい無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、銅とは異なる金属イオンに配位結合した金属錯体を用いることで、透明導電性塗料が製造される。この透明導電性塗料を用いることで、銅微粒子とは異なる金属微粒子の集まりが積み重なった積層体が、透明導電性膜を構成する。また、オクチル酸アルミニウムに代わるオクチル酸金属化合物を用いることで、透明導電性塗料が製造される。この透明導電性塗料を用いることで、アルミニウム微粒子とは異なる金属微粒子の集まりが積み重なった積層体が、透明導電性膜を構成する。このように、金属微粒子が積み重なった積層体を構成する金属の材質の制約はない。
第二に、金属錯体ないしはオクチル酸金属化合物のメタノールの分散濃度に応じて、金属微粒子が積み重なった積層体の厚みが自在に変えられる。さらに、メタノール分散液に混合する有機化合物の粘度と混合割合とによって、有機化合物の被膜の厚みが自在に変えられる。これらによって、透明導電性膜の表面抵抗が、より金属薄膜の表面抵抗に近づけられる。また、金属微粒子が積み重なった積層体は、電荷が連続して移動する経路を形成するため、有機化合物の被膜の内側は、さらに金属に近い導電率を示す。
第三に、近紫外線から近赤外線に及ぶ0.2−3μmの波長に比べて、微粒子の大きさが十分に小さい40−60nmからなる金属微粒子が、基材ないしは部品の表面に積み重なって積層体を構成し、また、近紫外線から近赤外線に及ぶ0.2−3µmの波長に対して、屈折率が1.4−1.5の間にある有機化合物が、積層体の上を被覆して透明導電性膜を形成するため、基材ないしは部品の材質や形状、大きさに拘わらず、基材ないしは部品の表面に、近紫外線から近赤外線に及ぶ光に対して、高い透過性と高い透明性とを有する透明導電性膜が形成できる。
第四に、基材ないしは部品の材質、形状、大きさに応じて、低粘度の導電性塗料の粘度を微調整し、さらに、刷毛塗り、ローラー塗り、吹き付け塗装、浸漬塗装、ロールコーターなどの塗布方法を、ないしは、バーコート、リバースコート、グラビア印刷、スクリーン印刷などの印刷方法を選択することで、全ての基材ないしは部品に、近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ光に対して、高い透過率と高い透明性とを持ち、また、金属に近い導電率を持ち、1μm前後の膜厚からなる透明導電性膜が形成できる。
1 アクリル樹脂の透明フィルム 2 銅微粒子 3 ジエチレングリコール
4 ポリエステル樹脂の透明フィルム 5 アルミニウム微粒子 6 フタル酸ジブチル

Claims (4)

  1. 基材ないしは部品に塗布ないしは印刷することで該基材ないしは該部品に透明導電性膜を形成する透明導電性塗料を製造する製造方法は、熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散し、該金属化合物が分子状態となってアルコールに分散されたアルコール分散液を作成し、長が0.2−3μmに相当する近紫外線領域から近赤外線領域に及ぶ範囲の光に対する屈折率が1.4−1.5の間の値を持つ第一の性質と、融点が20℃より低い第二の性質と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第三の性質と、前記アルコールの粘度の10倍以上の粘度を持つ第四の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第五の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に10重量%以下の割合で混合し、該有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和し、該有機化合物が前記アルコール分散液と均一に混ざり合った混合液を作成する、これによって、該混合液を基材ないしは部品に塗布ないしは印刷することで該基材ないしは該部品に透明導電性膜が形成される前記混合液からなる透明導電性塗料が製造され、透明導電性塗料の製造方法。
  2. 請求項1に記載した方法で製造した透明導電性塗料を用いて、基材ないしは部品の表面に透明導電性膜を形成する方法は、請求項1に記載した方法で製造した透明導電性塗料を、基材ないしは部品の表面に塗布ないしは印刷し、該基材ないしは該部品を昇温する、最初に前記透明導電性塗料を構成するアルコール気化該透明導電性塗料を構成する金属化合物の微細結晶の集まりが、該透明導電性塗料を構成する有機化合物中に均一に析出し、前記金属化合物の微細結晶が前記基材ないしは前記部品の表面に沈み、前記有機化合物が前記金属化合物の微細結晶の上に移動する、この後前記金属化合物の微細結晶が熱分解し、前記基材ないしは前記部品の表面に金属微粒子の集まりが積み重なって析出し、隣接する前記金属微粒子同士が金属結合し、該金属結合した金属微粒子が積み重なった積層体が、前記基材ないしは前記部品の表面に形成されるとともに、前記金属化合物の熱分解温度より沸点が高い前記有機化合物が、前記積層体の表面を覆い、前記金属微粒子が積み重なった積層体と、該積層体の表面を覆う前記有機化合物の被膜とからなる透明導電性膜が、前記基材ないしは前記部品の表面に形成され請求項1に記載した方法で製造した透明導電性塗料を用いて、基材ないしは部品の表面に透明導電性膜を形成する方法。
  3. 請求項1に記載した透明導電性塗料の製造方法は、請求項1に記載した金属化合物、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物であり、請求項1に記載したアルコールメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれかの有機化合物であり、これら3種類の物質を用い、請求項1に記載した透明導電性塗料を製造する製造方法に従って透明導電性塗料を製造する、請求項1に記載した透明導電性塗料の製造方法
  4. 請求項1に記載した透明導電性塗料の製造方法は、請求項1に記載した金属化合物オクチル酸金属化合物であり、請求項1に記載したアルコールメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物、カルボン酸エステル類に属する有機化合物であり、これら3種類の物質を用い、請求項1に記載した透明導電性塗料を製造する製造方法に従って透明導電性塗料を製造する、請求項1に記載した透明導電性塗料の製造方法
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