本実施形態に係る導電性部材1は、図1に示すように、基材7と、基材7を覆う透明な導電層2とを備える。
本実施形態では、導電層2が、導電性充填材3を含有する。この導電性充填材3は、ワイヤ状部4と粒状部5とを備える。ワイヤ状部4は、金属からなり、且つワイヤ状の形状を有する。粒状部5は金属からなり、且つ粒状の形状を有する。このため、導電層2は、導電性充填材3によって優れた導電性を有する。
導電性充填材3は、金属ナノワイヤ8を原料とする。このため、導電性充填材3は、金属ナノワイヤ8から遊離した粒状部5と、金属ナノワイヤ8の残部からなるワイヤ状部4とを備える。
この導電層2は、白色を呈しにくくなる。これは、粒状部5が、表面プラズモンに由来する光吸収性を発揮することで、導電性充填材3の色が目立ちにくくなるためであると考えられる。特に、導電性充填材3が金属ナノワイヤ8を原料とする場合には、導電性充填材3における粒状部5が金属ナノワイヤ8に由来するため、粒状部5の粒径は非常に小さくなり、このため表面プラズモンに由来する光吸収性が顕著に発揮されて、導電性充填材3の色が更に目立ちにくくなる。また、粒状部5によって導電性充填材3の光散乱性が向上することも、導電性充填材3の色が目立ちにくくなることの一因であると考えられる。
本実施形態に係る導電性部材1について、更に詳しく説明する。
まず、基材7について説明する。基材7は光透過性を有することが好ましい。基材7の光線透過率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であればより好ましく、80%以上であれば特に好ましい。
基材7の形状は、特に制限されないが、板状又はフィルム状であることが好ましい。特に、導電性部材1の生産性及び運搬性を向上する観点からは、基材7の形状はフィルム状であることが好ましい。
基材7がフィルム状である場合、基材7の厚みは10μm以上500μm以下の範囲であることが好ましい。この場合、基材7の透明性が特に良好になり、また導電性部材1の生産時及び取り扱い時の作業性も良好になる。基材7の厚みは、更に25μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。特に基材7の厚みが25μm以上150μm以下であると、導電性部材1の薄型化、軽量化が可能となり、また導電性部材1の表裏における干渉の発生が抑制され、更に基材7が加熱される際の熱収縮が抑制されて基材7の熱収縮による加工性の悪化等の不具合が抑制される。
基材7の材質は、特に制限されない。基材7の材質の例としては、ガラス、及び透明樹脂が挙げられる。透明樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル共重合体、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、非晶質ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、及びシクロオレフィンコポリマーが挙げられる。
特に、基材7が、ポリエステルから形成されることが好ましい。ポリエステルフィルムのうち、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレートからなる2軸延伸フィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性等を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、ラミネート用フィルム、ディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として好適である。特に、ディスプレイ用途に関しては、液晶表示装置の部材であるプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや、テレビの光学フィルムのベースフィルム、プラズマテレビの前面光学フィルターに用いられる光学フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルムのベースフィルム等として好適である。
ポリエステルとして、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とが反応することで生成する芳香族ポリエステルが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートなどが、好ましい。また前記例示した複数の成分等が共重合して生成したポリエステルが使用されてもよい。
基材7は、有機または無機の粒子を含有してもよい。この場合、基材7の巻き取り性、搬送性等の特性が向上する。基材7が含有することができる粒子として、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、カオリン、酸化珪素粒子、酸化亜鉛粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。
また、基材7は、更に着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、透明性を損なわない範囲で含有してもよい。
基材7のヘーズは3%以下であることが好ましい。この場合、導電性部材1を通した映像等の視認性が向上し、導電性部材1が、光学的用途の部材として特に適するようになる。ヘーズが1.5%以下であれば更に好ましい。
基材7の、第一の主面とは反対側の第二の主面上には、図示はしていないが、透明な裏面被覆層が積層していることが好ましい。この場合、基材7から低分子量成分が析出しにくくなり、このため基材7の白化が抑制される。このため、導電性部材1の良好な透明性が維持される。裏面被覆層の材質は、特に制限されないが、アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等から形成される。裏面被覆層が基材7からの低分子量成分の析出を充分に抑制するためには、裏面被覆層の厚みが、0.5μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。
また、裏面被覆層は、アンチブロッキング性を有することが好ましい。すなわち、導電性部材1がロール状に巻き回されるなどして重ねられる場合に、裏面被覆層によってブロッキングが抑制されることが好ましい。そのためには、裏面被覆層の表面が凹凸に形成されることが好ましい。そのためには、裏面被覆層の表面に機械的加工が施されることでこの表面が凹凸に形成されることが好ましい。また、裏面被覆層がシリカ粒子等のフィラーを含有することでこの裏面被覆層の表面に凹凸が形成されることも好ましい。この場合、裏面被覆層が、例えばアクリレート樹脂またはウレタンアクリレート樹脂を80質量%以上95質量%以下の範囲で含有し、更に平均粒子径250nmのシリカ粒子を5質量%以上20質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
また、裏面被覆層によって導電性部材1の滑性を向上することも好ましく、そのためには、裏面被覆層が例えばシリコーン系のレベリング剤を含有することも好ましい。
裏面被覆層が形成される場合、基材7の、裏面被覆層と重なる面には、裏面被覆層が形成される前に、表面処理が施されることが好ましい。この場合、基材7と裏面被覆層との間の濡れ性、密着性等の向上が可能となる。また、基材7の、導電層2と重なる面にも、導電層2が形成される前に、表面処理が施されることが好ましい。この場合、基材7と導電層2との間の濡れ性、密着性等の向上が可能となる。表面処理の方法としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理などの物理的表面処理、並びにカップリング剤、酸性成分、アルカリ性成分等による化学的表面処理などが、挙げられる。
次に、導電層2について説明する。導電層2は、導電性充填材3を含有する透明な層である。
本実施形態では、導電性充填材3は、金属ナノワイヤ8を原料として得られる。この導電性充填材3は、金属ナノワイヤ8から遊離した粒状部5と、金属ナノワイヤ8の残部からなるワイヤ状部4とを備える。
金属ナノワイヤ8とは、ナノサイズ(1〜1000nm)の直径を有する金属繊維である。金属ナノワイヤ8を構成する金属の種類は、特に制限されないが、例えばAg、Au、Cu、Co、Al、Pt等が挙げられる。特に導電層2の導電性をより向上するためには、金属ナノワイヤ8を構成する金属がAu、Ag、Cu及びPtから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、特にAg及びCuから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
金属ナノワイヤ8の製造方法としては、特に制限されず、例えば、液相法や気相法等の公知の方法が採用されることができる。例えばAgナノワイヤ(銀ナノワイヤ)の製造方法の具体例として、Adv.Mater.2002,14,P833〜837、Chem.Mater.2002,14,P4736〜4745、特表2009−505358号公報等の文献に開示されている方法が、挙げられる。また、Auナノワイヤ(金ナノワイヤ)の製造方法の具体例としては、特開2006−233252号公報等に開示されている方法が、挙げられる。また、Cuナノワイヤ(銅ナノワイヤ)を製造する方法としては、特開2002−266007号公報等に開示されている方法が挙げられる。また、Coナノワイヤ(コバルトナノワイヤ)を製造する方法としては、特開2004−149871号公報等に開示されている方法が挙げられる。特に、Adv.Mater.2002,14,P833〜837、並びにChem.Mater.2002,14,P4736〜4745に開示されているAgナノワイヤの製造方法が採用されると、水系で簡便にかつ大量にAgナノワイヤが製造されることができる。
金属ナノワイヤ8の平均直径は、10〜100nmであることが好ましい。この平均直径が10nm以上であると、導電層2の導電性が特に高くなる。またこの平均粒径が100nm以下であると、導電層2の透明性が特に高くなる。この金属ナノワイヤ8の平均直径は、20〜100nmであればより好ましく、40〜100nmであれば更に好ましい。
また金属ナノワイヤ8の平均長さは、1〜100μmであることが好ましい。この平均長さが1μm以上であると、導電層2の導電性が特に高くなる。またこの平均粒径が100μm以下であると、導電層2中で金属ナノワイヤ8が凝集しにくくなり、このため導電層2の透明性が向上する。この金属ナノワイヤ8の平均長さは、1〜50μmであればより好ましく、3〜50μmであれば最も好ましい。
尚、金属ナノワイヤ8の平均直径は、充分な数の金属ナノワイヤ8の直径を測定し、その結果を算術平均して得られる値である。また、金属ナノワイヤ8の平均長さは、充分な数の金属ナノワイヤ8の長さを測定し、その結果を算術平均して得られる値である。金属ナノワイヤ8の直径及び長さは、金属ナノワイヤ8の電子顕微鏡画像を画像解析することで導出される。例えば金属ナノワイヤ8の電子顕微鏡画像が屈曲している場合に、画像解析によって金属ナノワイヤ8の直径(投影径(D))及び面積(投影面積(S))が、算出される。更に投影面積(S)を投影径(D)で割ることで、金属ナノワイヤ8の長さ(L=S/D)が、求められる。金属ナノワイヤ8の平均直径及び平均長さを導出するためには、少なくとも100個の金属ナノワイヤ8の直径及び長さが測定されることが好ましく、300個以上の金属ナノワイヤ8の直径及び長さが測定されることが更に好ましい。
導電性充填材3の粒状部5は、金属ナノワイヤ8の表層部分が金属ナノワイヤ8から遊離して粒状になることで、生成する。また、導電性充填材3のワイヤ状部4は、金属ナノワイヤ8から粒状部5が遊離した後に残存する金属ナノワイヤ8の残部からなる。ワイヤ状部4はワイヤ状の形状を有する。
ワイヤ状部4の長さは、金属ナノワイヤ8の長さと同じである。このため、ワイヤ状部4の平均長さは、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであればより好ましく、3〜50μmであれば最も好ましい。また、ワイヤ状部4の平均直径は、10〜100nmであることが好ましく、20〜100nmであればより好ましく、40〜100nmであれば更に好ましい。尚、ワイヤ状部4の線径は、粒状部5が遊離した分だけ、金属ナノワイヤ8よりも僅かに小さくなる。
また、上述の通り、粒状部5は金属ナノワイヤ8から遊離して生成するため、粒状部5の粒径は非常に小さい。このような微細な粒状部5は、上述のとおり光吸収性を発揮する。特に金属ナノワイヤ8が銀ナノワイヤである場合、すなわち粒状部5が銀からなる場合、その粒子径が小さいことから、粒状部5が黄色や灰色を呈するようになる。このため、導電性充填材3が白色を呈しにくくなり、このため、導電層2が白色を呈しにくくなる。導電性充填材3が特に白色を呈しにくくなるためには、粒状部5の粒径は、2〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであればさらに好ましい。尚、粒状部5の粒径は、粒状部5の電子顕微鏡画像を画像解析することで導出される真円換算粒径である。
また、導電性充填材3において、粒状部5は、ワイヤ状部4の表面上に存在することが、好ましい。この場合、ワイヤ状部4が粒状部5によって遮蔽されるために、導電性充填材3が更に白色を呈しにくくなり、このため、導電層2が更に白色を呈しにくくなる。特に、一つのワイヤ状部4の表面上には、複数の粒状部5が存在することが好ましい。
また、導電層2が特に白色を呈しにくくなるためには、ワイヤ状部4の表面における、粒状部5によって覆われている領域の割合(被覆割合)が、30%以上であることが好ましい。この被覆割合は、40%以上であればより好ましく、60%以上であれば最も好ましい。本実施形態のように導電性充填材3が金属ナノワイヤ8を原料とし、粒状部が金属ナノワイヤから遊離して生成すると共にワイヤ状部が金属ナノワイヤの残部からなる場合には、前記のような高い被覆割合を有する導電性充填材3を、容易に得ることができる。
導電層2は、例えば樹脂マトリクス6と、この樹脂マトリクス6中に分散する導電性充填材3とから構成される。樹脂マトリクス6は、樹脂成分の硬化物から形成される。導電層2の厚みは、特に制限されないが、10〜300nmの範囲であることが好ましい。
導電層2における導電性充填材3の割合は、特に制限されないが、0.01〜90質量%の範囲であることが好ましく、1〜80質量%の範囲であれば更に好ましく、10〜75質量%の範囲であれば最も好ましい。
樹脂マトリクス6を形成するための樹脂成分は、例えばセルロース樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ジアクリルフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、これら以外の熱可塑性樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する単量体が2種以上重合して成る共重合体から選択される、一種以上を含有することができる。
樹脂成分が、反応性硬化型樹脂を含有することも好ましい。反応性硬化型樹脂としては、例えば熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方が用いられることが好ましい。
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が、挙げられる。熱硬化型樹脂を含有する樹脂成分は、必要に応じて更に架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤等を含有してもよい。
電離放射線硬化型樹脂としては、アクリレート系の官能基を有する樹脂が用いられることが好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。前記の多官能化合物としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂を含有する樹脂成分は、更に反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂などの光硬化型樹脂である場合には、樹脂成分が更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂を含有する組成物が、光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。
本実施形態に係る導電性部材を製造する方法について説明する。
上記の通り、導電性充填材3は、金属ナノワイヤ8を原料として得られる。この金属ナノワイヤ8から粒状部5を遊離させることで、導電性充填材3が得られる。
導電性充填材3を得る方法を、図2(a)乃至図2(c)を参照して更に詳しく説明する。まず図2(a)に示されるような金属ナノワイヤ8の表面を、酸化又はハロゲン化させることで、図2(b)に示されるように酸化膜91又はハロゲン化膜92を形成することができる。以下、この酸化膜91又はハロゲン化膜92を形成するための処理を、膜形成処理という。酸化膜91は金属酸化物から構成される膜であり、ハロゲン化膜92は金属ハロゲン化物から構成される膜である。この酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させることで、図2(c)に示されるように、金属ナノワイヤ8から粒状部5を遊離させることができる。このように酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させることで粒状部5を遊離させる処理を、以下、還元処理という。これにより、ワイヤ状部4及び粒状部5を備える導電性充填材3が、得られる。
酸化膜91を形成するための膜形成処理の方法としては、例えば金属ナノワイヤ8を大気中で加熱する方法、及び金属ナノワイヤ8に大気中で紫外線を照射する方法が、挙げられる。勿論、酸化膜91を形成する方法は、これらには限定されない。
また、ハロゲン化膜92を形成するための膜形成処理の方法としては、例えば酸とハロゲン化合物とを含有する溶液を調製し、この溶液に金属ナノワイヤ8を接触させる方法、及び金属ナノワイヤ8にハロゲンガスを接触させる方法が、挙げられる。
酸とハロゲン化合物とを含有する溶液を用いる場合、酸としては、硫酸又は硝酸が挙げられる。また、ハロゲン化合物としては、ハロゲン化水素、ハロゲンのオキソ酸、これらの塩等が挙げられる。例えば塩素化合物としては、塩酸、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。また、臭素化合物としては、臭化ナトリウム等が挙げられる。勿論、ハロゲン化膜92を形成する方法は、これに限定されない。
還元処理の方法としては、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させる方法と、酸化膜91又はハロゲン化膜92に、酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させるための表面処理を施す方法とが、挙げられる。勿論、還元処理の方法は、これら限定されない。
還元剤が用いられる場合、還元剤としては、酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させる性能を有するのであれば特に制限されないが、例えばアルコール類;グリコール類;ホルムアルデヒド;ヒドロキノン、ピロガロール等のポリフェノール類;アミノフェノール類;アスコルビン酸;アタノールアミン類;水素化ホウ素類及び;ヒドラジン類から選ばれる、少なくとも一種が用いられる。
また、表面処理が採用される場合、表面処理として、例えば光照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、及び紫外線オゾン処理から選択される少なくとも一種の処理が採用される。光照射処理にあたっては、例えば紫外線光、エキシマレーザ光等を、脱酸素雰囲気下で、金属ナノワイヤ8に照射することができる。尚、脱酸素雰囲気とは、酸素の割合が大気よりも低い雰囲気のことをいい、好ましくは酸素の割合が1000ppm以下である雰囲気をいう。
膜形成処理及び還元処理の各々は、導電層2が形成される過程における適宜の時期に実行される。導電層2は、例えば次の三つの方法から選ばれる方法で形成される。これらの方法では、膜形成処理及び還元処理の各々が実行される時期が互いに異なっている。
第一の方法では、まず導電性充填材3を含有する組成物を調製する。この組成物には、導電性充填材3に加えて、樹脂成分を含有させ、更に必要に応じて溶媒を含有させることが、好ましい。溶媒として、有機溶剤が用いられてもよく、水が用いられてもよく、有機溶剤と水とが併用されてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、並びにこれらの混合物が、挙げられる。組成物中の溶媒の量は、組成物中において固形分が均一に溶解又は分散することができるように、適宜調整される。組成物中の固形分濃度は、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜30質量%の範囲であれば更に好ましい。
本方法において、組成物を調製する際には、まず金属ナノワイヤ8に膜形成処理及び還元処理を施すことで導電性充填材3を得てから、この導電性充填材3と樹脂成分とを混合することで、組成物を調製することができる。また、まず金属ナノワイヤ8に膜形成処理を施してから、この金属ナノワイヤ8と樹脂成分とを混合することで混合物を調製し、続いて混合物中の金属ナノワイヤ8に還元処理を施すことで、組成物を調製することもできる。
樹脂成分と混合される前に金属ナノワイヤ8に膜形成処理を施す場合、金属ナノワイヤ8を大気中で加熱しても、金属ナノワイヤ8に大気中で紫外線を照射しても、金属ナノワイヤ8にハロゲンガスを接触させてもよい。また、金属ナノワイヤ8を、酸とハロゲン化合物とを含有する溶液に接触させてもよく、この場合は、続いて金属ナノワイヤ8をろ過により取り出してから、よく水洗することが好ましい。
樹脂成分と混合される前に金属ナノワイヤ8に還元処理を施す場合、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させる方法と、酸化膜91又はハロゲン化膜92に、酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させるための表面処理を施す方法との、いずれが採用されてもよい。
金属ナノワイヤ8と樹脂成分とを混合することで混合物を調製してから、還元処理を施す場合、例えば混合物に還元剤を添加することで酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させてもよく、また混合物中の金属ナノワイヤ8に光照射処理を施してもよい。
次に、組成物を基材7に塗布し、更に硬化させることで、基材7上に導電層2を形成する。組成物の塗布にあたっては、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法などの適宜の方法が採用される。組成物を硬化させるための手法は、組成物中の樹脂成分等の種類に応じて適宜選択される。例えば組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合は、組成物が加熱されて熱硬化することで、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。また、組成物が電離放射線硬化型樹脂を含有する場合には、組成物に紫外線等の電離放射線が照射されることで、組成物が硬化することで、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。
第二の方法では、まず酸化膜91又は前記ハロゲン化膜92が形成されている金属ナノワイヤ8を含有する組成物を調製する。この組成物には、金属ナノワイヤ8に加えて、樹脂成分を含有させ、更に必要に応じて溶媒を含有させることが、好ましい。溶媒として、有機溶剤が用いられてもよく、水が用いられてもよく、有機溶剤と水とが併用されてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、並びにこれらの混合物が、挙げられる。組成物中の溶媒の量は、組成物中において固形分が均一に溶解又は分散することができるように、適宜調整される。組成物中の固形分濃度は、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜30質量%の範囲であれば更に好ましい。
本方法において、組成物を調製する際には、まず金属ナノワイヤ8に膜形成処理を施してから、この金属ナノワイヤ8と樹脂成分とを混合することで、組成物を調製することができる。金属ナノワイヤ8に膜形成処理を施す場合、金属ナノワイヤ8を大気中で加熱しても、金属ナノワイヤ8に大気中で紫外線を照射しても、金属ナノワイヤ8にハロゲンガスを接触させてもよい。また、金属ナノワイヤ8を、酸とハロゲン化合物とを含有する溶液に接触させてもよく、この場合は、続いて金属ナノワイヤ8をろ過により取り出してから、よく水洗することが好ましい。
次に、組成物を基材7に塗布し、更に硬化させることで、基材7上に、酸化膜91又は前記ハロゲン化膜92が形成されている金属ナノワイヤ8を含有する層(以下、中間体層という)を形成する。組成物の塗布にあたっては、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法などの適宜の方法が採用される。組成物を硬化させるための手法は、組成物中の樹脂成分等の種類に応じて適宜選択される。例えば組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合は、組成物が加熱されて熱硬化することで、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。また、組成物が電離放射線硬化型樹脂を含有する場合には、組成物に紫外線等の電離放射線が照射されることで、組成物が硬化することで、中間体層が形成される。
次に、中間体層中の金属ナノワイヤ8に、還元処理を施すことで、導電性充填材3を生成させる。これにより、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。金属ナノワイヤ8に還元処理を施す場合、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させる方法を採用することができる。この場合、例えば還元剤を含有する溶液を中間体層に塗布したり、還元剤を含有する溶液に中間体層を浸漬したりすることで、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させることができる。また、酸化膜91又はハロゲン化膜92に、酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させるための表面処理を施す方法を採用してもよい。この場合、例えば中間体層に、脱酸素雰囲気下で光を照射することで、金属ナノワイヤ8に光照射処理を施すことができる。
第三の方法では、まず金属ナノワイヤ8を含有する組成物を調製する。この組成物中の金属ナノワイヤ8には、膜形成処理、還元処理の、いずれも施されていない。この組成物には、金属ナノワイヤ8に加えて、樹脂成分を含有させ、更に必要に応じて溶媒を含有させることが、好ましい。溶媒として、有機溶剤が用いられてもよく、水が用いられてもよく、有機溶剤と水とが併用されてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、並びにこれらの混合物が、挙げられる。組成物中の溶媒の量は、組成物中において固形分が均一に溶解又は分散することができるように、適宜調整される。組成物中の固形分濃度は、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜30質量%の範囲であれば更に好ましい。
次に、組成物を基材7に塗布し、更に硬化させることで、基材7上に、金属ナノワイヤ8を含有する層(以下、中間体層という)を形成する。組成物の塗布にあたっては、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法などの適宜の方法が採用される。組成物を硬化させるための手法は、組成物中の樹脂成分等の種類に応じて適宜選択される。例えば組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合は、組成物が加熱されて熱硬化することで、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。また、組成物が電離放射線硬化型樹脂を含有する場合には、組成物に紫外線等の電離放射線が照射されることで、組成物が硬化することで、中間体層が形成される。
次に、中間体層中の金属ナノワイヤ8に、膜形成処理を施す。膜形成処理にあたっては、例えば中間体層を大気中で加熱することで、金属ナノワイヤ8を大気中で加熱することができる。また、中間体層に大気中で紫外線を照射することで、金属ナノワイヤ8に大気中で紫外線を照射してもよい。また、中間体層にハロゲンガスを接触させることで、金属ナノワイヤ8にハロゲンガスを接触させてもよい。
次に、中間体層中の金属ナノワイヤ8に、還元処理を施すことで、導電性充填材3を生成させる。これにより、導電性充填材3を含有する導電層2が形成される。金属ナノワイヤ8に還元処理を施す場合、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させる方法を採用することができる。この場合、例えば還元剤を含有する溶液を中間体層に塗布したり、還元剤を含有する溶液に中間体層を浸漬したりし、更に必要に応じて加熱することで、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させることができる。また、予め組成物中に還元剤を含有させることで、中間体層中に還元剤を含有させ、この中間体層を加熱することで、酸化膜91又はハロゲン化膜92と還元剤とを反応させてもよい。また、酸化膜91又はハロゲン化膜92に、酸化膜91又はハロゲン化膜92を還元させるための表面処理を施す方法を採用してもよい。この場合、例えば中間体層に、脱酸素雰囲気下で光を照射することで、金属ナノワイヤ8に光照射処理を施すことができる。
尚、本実施形態に係る導電性部材1は、基材7及び導電層24を備えるが、導電性部材1の構成はこれに限られない。例えば、導電性部材1が、導電層24のみから構成されてもよい。また、導電性部材1が、基材7及び導電層24以外の付加的な要素を備えてもよい。
導電性部材1のヘーズは、2以下であることが好ましい。この場合、導電性部材1の透明性が高くなることで、導電性部材1が、光学的な特性が必要とされる電子デバイスのために適したものとなる。
導電性部材1における導電層2は、例えばタッチパネル、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル、光電変換デバイス等の、光学的な特性が必要とされる電子デバイスにおける電極等を形成するために利用される。
本実施形態に係る導電性部材1は、例えばそのまま電子デバイス内に組み込まれてもよく、この場合、導電性部材1における導電層2が電極等として利用される。また、導電性部材1から、導電層2が剥離され、この導電層2が電子デバイス内に組み込まれることで、導電層2が電極等として利用されてもよい。
[実施例1]
金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。尚、この銀ナノワイヤは、公知論文(Materials Chemistry and Physics vol.114 p333-338 "Preparation of Ag nanorods with high yield by polyol process")に記載の方法に準じた方法で作製した。
この金属ナノワイヤを、大気中で150℃で60分加熱することにより、この金属ナノワイヤに酸化膜を形成した。続いて、この金属ナノワイヤに、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、ワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を得た。
この導電性充填材0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例2]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤを塩素ガスに曝露することで、金属ナノワイヤに塩化銀からなるハロゲン化膜を形成した。続いて、この金属ナノワイヤに、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、ワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を得た。
この導電性充填材を用い、それ以外は実施例1と同じ方法により、導電性部材を得た。
[実施例3]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤを、大気中で150℃で60分加熱することにより、この金属ナノワイヤに酸化膜を形成した。
次に、この酸化膜を有する金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に中間体層を形成した。
次に、中間体層に、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、中間体層中で金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、中間体層中でワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を生成させ、導電性充填材を含有する導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例4]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤを塩素ガスに曝露することで、金属ナノワイヤに塩化銀からなるハロゲン化膜を形成した。
次に、このハロゲン化膜を有する金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に中間体層を形成した。
次に、中間体層に、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、中間体層中で金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、中間体層中でワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を生成させ、導電性充填材を含有する導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例5]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤを塩素ガスに曝露することで、金属ナノワイヤに塩化銀からなるハロゲン化膜を形成した。
次に、このハロゲン化膜を有する金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、還元剤(エチレングリコール)0.5質量部と、水98.5質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に中間体層を形成した。
次に、中間体層を150℃で10分加熱することにより、中間体層内でハロゲン化膜と還元剤とを反応させることで、中間体層中で金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、中間体層中でワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を生成させ、導電性充填材を含有する導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例6]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に中間体層を形成した。
次に、中間体層を塩素ガスに曝露することで、中間体層内の金属ナノワイヤに塩化銀からなるハロゲン化膜を形成した。
次に、中間体層に、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、中間体層中で金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、中間体層中でワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を生成させ、導電性充填材を含有する導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例7]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤを、5%NaCl水溶液中に加えることで、混合液を得た。この混合液を攪拌しながら60℃で60分加温することで、混合液内で金属ナノナノワイヤに塩化銀からなるハロゲン化膜を形成した。続いて、混合液を濾過することで混合液から金属ナノワイヤを取り除いた。
次に、このハロゲン化膜を有する金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。この組成物に紫外線を照射することで、組成物中で金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、組成物中でワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を生成させた。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に、導電性充填材を含有する導電層を形成した。これにより、基材と導電層とを備える導電性部材を得た。
[実施例8]
金属ナノワイヤとして、平均直径120nm、平均長さ10μmの銅ナノワイヤを用意した。尚、この銅ナノワイヤは、公知論文("The Growth Mechanism of Copper Nanowires and Their Properties in Flexible, Transparent Conducting Films", Aaron R. Rathmell, Benjamin J. Wiley et al., Adv. Mater. 22 (2010) 3558-3563)に記載の方法に準じた方法で作製した。
この金属ナノワイヤを塩素ガスに曝露することで、金属ナノワイヤに塩化銅からなるハロゲン化膜を形成した。続いて、この金属ナノワイヤに、酸素割合1000ppm以下の脱酸素雰囲気下で紫外線を照射することで、金属ナノワイヤから粒状部を遊離させた。これにより、ワイヤ状部及び粒状部を備える導電性充填材を得た。
この導電性充填材を用い、それ以外は実施例1と同じ方法により、導電性部材を得た。
[比較例1]
実施例1の場合と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径100nm、平均長さ10μmの銀ナノワイヤを用意した。
この金属ナノワイヤ0.5質量部と、メチルセルロース0.5質量部と、水99質量部とを混合することで、固形分割合1.0質量%の透明な組成物を得た。
また、基材として、透明な無アルカリガラス板(コーニング社製、No.1737、波長500nmの光の屈折率1.50〜1.53)を用意した。この基材上に、上記組成物をスピンコート法により塗布することで、厚み100nmの塗膜を形成した。この塗膜を100℃で5分加熱することにより硬化させた。これにより、基材上に,金属ナノワイヤを含有する導電層を形成し、導電層と基材とを備える導電性部材を得た。
[比較例2]
実施例8と同様に、金属ナノワイヤとして、平均直径120nm、平均長さ10μmの銅ナノワイヤを用意した。
それ以外は比較例1と同じ方法により、金属ナノワイヤを含有する導電層と基材とを備える導電性部材を得た。
[導電性充填材観察]
各実施例において、導電層中の導電性充填材を観察したところ、導電性充填材が、ワイヤ部と、このワイヤ部上に存在する複数の粒状部とを備えることが、確認された。粒状部の粒径は3〜40nmの範囲内であった。
また、ワイヤ状部の表面における、粒状部で覆われている領域の割合(被覆割合)を測定した。このとき、電子顕微鏡による導電性充填材の二次元画像に現れるワイヤ状部の面積(二次元画像に現れるワイヤ状部の幅寸法とワイヤ状部の長さとの積)に対する、二次元画像上でワイヤ状部に重なっている粒状部の総面積の割合を、被覆割合として算出した。
[表面抵抗値評価]
各実施例及び比較例で得られた導電性部材における導電層の表面抵抗値を、三菱化学株式会社製のロレスタEP MCP−T360を用いて測定した。
[全光線透過率評価]
各実施例及び比較例で得られた導電性部材の全光線透過率を、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、型番NDH2000)を使用して測定した。
[ヘーズ評価]
各実施例及び比較例で得られた導電性部材のヘーズを、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、型番NDH2000)を使用して測定した。
[外観評価]
各実施例及び比較例で得られた導電性部材を、太陽光下と室内光下で、目視で観察した。その結果を次のように評価した。
4:太陽光下で導電層が白色を呈さない。
3:太陽光下で導電層が白色を呈するが、300ルクスの照度下では導電層が白色を呈さない。
2:300ルクスの照度下で導電層が白色を呈するが、150ルクスの照度下では導電層が白色を呈さない。
1:150ルクスの照度下で導電層が白色を呈する。