JP2017226909A - 金属微粒子の集まりによる複数の基材の接合 - Google Patents
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Abstract
【課題】 第一に、清浄化した基材の接合面同士が活性状態の物質で接合される。第二に、基材の表面粗さや平坦度に依らず基材同士が接合できる。第三に、基材表面の吸着物質を取り除く処理が不要である。第四に、接合する基材の材質、大きさ、形状の制約がない。第五に、基材の事前の処理が一切不要である。第六に、安価な原料を用い、極めて簡単な処理で基材同士が接合できる。これらの要件を満たして複数の基材を接合する。【解決手段】 複数の基材の接合面の吸着物質を気化して清浄化し、この清浄化した複数の基材の表面に、金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりを析出させる。この金属微粒子が不純物を含まない活性状態にあるため、金属微粒子の集まりが基材の表面に直接接合し、また、金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりが、接合面において複数の基材を強固に接合する。【選択図】図1
Description
本発明は、複数の基材の接合面における吸着物質を気化させて清浄化し、この清浄化した基材の表面に、不純物を含まない活性状態の金属微粒子の集まりを析出させ、この金属微粒子の集まりが基材の表面に直接接合するとともに、金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、この金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を接合する技術である。従って、基材の材質や大きさや形状や基材表面の平坦度や表面粗さに拘わらず、また、同一種類の基材のみならず、異なる種類の基材を接合することができる。
複数の基材を結合する技術には様々な方法がある。なお、本発明では、ボルトやビスなどの結合部材を用いず、複数の基材を接合する技術に関わる。
最初に合成樹脂の基材の接合に関わる従来技術を説明する。特許文献1には、合成樹脂の繊維シートと合成樹脂フィルムとを熱硬化型の接着剤で接合する方法が記載されている。また、特許文献2には、合成樹脂のシートとガラスクロスとを熱圧着で接合する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、熱伝導性の合成樹脂フィルムの両面に、熱伝導性のシリコーン樹脂からなるシートを、圧着する方法が記載されている。
このように、合成樹脂の基材を接合する方法として、接着剤による方法と圧着による方法とが多く用いられる。しかし、接着剤による接合は接着層の耐熱性が低い。また、接着剤と接合面との化学反応で接合するため、洗浄によって接合面の異物を予め除去する必要がある。さらに、合成樹脂の材質に応じて接合できる接着剤が制限され汎用性がない。
また、圧着による方法は、接合強度を高めるために、接合面の表面粗さを粗くする加工が予め必要になる。いっぽう、フィルムのように平坦度が高い基材に対しては、化学反応を伴って圧着させるため、洗浄によって接合面の異物を予め除去する必要がある。
いっぽう、洗浄による接合面の清浄化は、清浄度が高まるほど接合面の接着強度ないしは圧着強度は高まる。しかし、清浄度が高まるほど接合面が活性化され、活性化された接合面は瞬時に異物が吸着し、再度接合面が汚染される。従って、清浄化された表面で、接着ないしは圧着の処理を連続して実施しない限り、清浄化された表面での接着ないしは圧着の処理はできない。前記したように従来技術は、洗浄による清浄化であるため、洗浄後に必ず乾燥工程を伴う。従って、清浄化された表面は、乾燥工程で再度異物が吸着して汚染され、接合面における接合強度は低い。
最初に合成樹脂の基材の接合に関わる従来技術を説明する。特許文献1には、合成樹脂の繊維シートと合成樹脂フィルムとを熱硬化型の接着剤で接合する方法が記載されている。また、特許文献2には、合成樹脂のシートとガラスクロスとを熱圧着で接合する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、熱伝導性の合成樹脂フィルムの両面に、熱伝導性のシリコーン樹脂からなるシートを、圧着する方法が記載されている。
このように、合成樹脂の基材を接合する方法として、接着剤による方法と圧着による方法とが多く用いられる。しかし、接着剤による接合は接着層の耐熱性が低い。また、接着剤と接合面との化学反応で接合するため、洗浄によって接合面の異物を予め除去する必要がある。さらに、合成樹脂の材質に応じて接合できる接着剤が制限され汎用性がない。
また、圧着による方法は、接合強度を高めるために、接合面の表面粗さを粗くする加工が予め必要になる。いっぽう、フィルムのように平坦度が高い基材に対しては、化学反応を伴って圧着させるため、洗浄によって接合面の異物を予め除去する必要がある。
いっぽう、洗浄による接合面の清浄化は、清浄度が高まるほど接合面の接着強度ないしは圧着強度は高まる。しかし、清浄度が高まるほど接合面が活性化され、活性化された接合面は瞬時に異物が吸着し、再度接合面が汚染される。従って、清浄化された表面で、接着ないしは圧着の処理を連続して実施しない限り、清浄化された表面での接着ないしは圧着の処理はできない。前記したように従来技術は、洗浄による清浄化であるため、洗浄後に必ず乾燥工程を伴う。従って、清浄化された表面は、乾燥工程で再度異物が吸着して汚染され、接合面における接合強度は低い。
次にガラスの基材を接合する従来技術を説明する。特許文献4には、ガラスの接合面を強酸溶液と反応させて表面を粗くし、その後、接合面を水洗した後に、ガラス同士を圧着によって接合させる方法が記載されている。つまり、酸性度が高い塩酸と、ガラスを構成するアルカリ土類金属の酸化物ないしはアルカリ金属の酸化物とを反応させ、その後、反応物を水洗し、表面が粗くなった表面同士を圧着によって接合する方法である。また、特許文献5には、シリコーンレジンとフェニル基を有するオルガノシロキサンとを縮合反応させた熱硬化性の接着剤で、石英ガラス同士を接合させる方法が記載されている。
このように、ガラス基材を接合する方法でも、接着剤による方法と圧着による方法とが多く用いられる。しかしながら、強酸溶液で接合面を腐食させる方法は、強酸による腐食工程と、反応物を水洗によって除去する工程とに多大な費用を要する。また、水洗によって清浄化された接合面は、乾燥工程で汚染され、圧着によって得られる接合強度は高くない。また、アルカリ土類金属の酸化物ないしはアルカリ金属の酸化物が、一定以上の組成割合でガラスを構成されることが必要になり、ガラスの耐水性が低下し溶出物が生成される問題や、熱膨張係数が増大して耐熱性が低くなる問題が発生する。また、特許文献5の方法では、接合強度は接合面の清浄度に依存するため、様々な薬品による入念な洗浄が記載されている。しかし、洗浄度が高いほど接合面は活性状態になり、活性度が高いほど接合面は乾燥工程で瞬時に汚染される。このため、接着剤による接合強度は高くない。
このように、ガラス基材を接合する方法でも、接着剤による方法と圧着による方法とが多く用いられる。しかしながら、強酸溶液で接合面を腐食させる方法は、強酸による腐食工程と、反応物を水洗によって除去する工程とに多大な費用を要する。また、水洗によって清浄化された接合面は、乾燥工程で汚染され、圧着によって得られる接合強度は高くない。また、アルカリ土類金属の酸化物ないしはアルカリ金属の酸化物が、一定以上の組成割合でガラスを構成されることが必要になり、ガラスの耐水性が低下し溶出物が生成される問題や、熱膨張係数が増大して耐熱性が低くなる問題が発生する。また、特許文献5の方法では、接合強度は接合面の清浄度に依存するため、様々な薬品による入念な洗浄が記載されている。しかし、洗浄度が高いほど接合面は活性状態になり、活性度が高いほど接合面は乾燥工程で瞬時に汚染される。このため、接着剤による接合強度は高くない。
さらに、金属の基材を接合する従来技術を説明する。特許文献6には、アルミニウム部品と鉄系部品との接合面に、融解したアルミニウム−マグネシウム合金を介在させ、アルミニウムを鉄系部品に拡散させて両者を接合する方法が記載されている。また、特許文献7には、表面改質した熱可塑性樹脂と金属との接合面にレーザを照射して金属を加熱し、加熱した金属が熱可塑性樹脂と接合する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献6では、アルミニウム部品と鉄系部品とを積層させ、この積層体を、真空チャンバー内にある融解したアルミニウム−マグネスシウム合金の槽に浸漬させ、積層面に毛細管現象によって溶解したアルミニウム−マグネシウム合金を浸透させ、アルミニウムを鉄系部品に拡散させる処理を行なう。このように原子の拡散現象を利用する接合は、特殊な条件下でのみ原子の拡散と拡散した原子による金属結合ができるため、拡散する原子の種類と、拡散した原子が金属結合する金属の種類ごとに異なる。また、接合が真空度の高い高温状態であるため、接合に伴う加工費用が極めて高価になる。
また、特許文献7では、レーザ照射によって加熱された金属が、熱可塑性樹脂と接合するには、熱可塑性樹脂の表面エネルギーが金属の表面エネルギーより高いことが必要になり、特殊な表面改質が必須になる。特許文献7では、酸素官能基を増大させる表面改質を熱可塑性樹脂に対して予め実施するが、表面改質できる合成樹脂は限られ、さらに、合成樹脂ごとに改質する表面の性質は異なる。さらに、表面エネルギーを増大させた熱可塑性樹脂であっても、加熱された金属との接合強度を確保するには、接合面でのアンカー効果が必要になる。このため、表面を粗くする表面処理が必須になる。また、熱可塑性樹脂はレーザを透過することが必須であり、透明性の合成樹脂でなければならない。このように、熱可塑性樹脂を金属と接合するには様々な事前の処理と、熱可塑性樹脂の制約とがある。このため、本接合方法は汎用性がなく、また、接合に伴う加工費用が高価になる。
以上に説明したように、金属の融点が高いため、金属の基材を接合するには、特殊な条件と特殊な処理とが必要になり汎用性がなく、また、接合に伴う加工費用は高価である。
しかしながら、特許文献6では、アルミニウム部品と鉄系部品とを積層させ、この積層体を、真空チャンバー内にある融解したアルミニウム−マグネスシウム合金の槽に浸漬させ、積層面に毛細管現象によって溶解したアルミニウム−マグネシウム合金を浸透させ、アルミニウムを鉄系部品に拡散させる処理を行なう。このように原子の拡散現象を利用する接合は、特殊な条件下でのみ原子の拡散と拡散した原子による金属結合ができるため、拡散する原子の種類と、拡散した原子が金属結合する金属の種類ごとに異なる。また、接合が真空度の高い高温状態であるため、接合に伴う加工費用が極めて高価になる。
また、特許文献7では、レーザ照射によって加熱された金属が、熱可塑性樹脂と接合するには、熱可塑性樹脂の表面エネルギーが金属の表面エネルギーより高いことが必要になり、特殊な表面改質が必須になる。特許文献7では、酸素官能基を増大させる表面改質を熱可塑性樹脂に対して予め実施するが、表面改質できる合成樹脂は限られ、さらに、合成樹脂ごとに改質する表面の性質は異なる。さらに、表面エネルギーを増大させた熱可塑性樹脂であっても、加熱された金属との接合強度を確保するには、接合面でのアンカー効果が必要になる。このため、表面を粗くする表面処理が必須になる。また、熱可塑性樹脂はレーザを透過することが必須であり、透明性の合成樹脂でなければならない。このように、熱可塑性樹脂を金属と接合するには様々な事前の処理と、熱可塑性樹脂の制約とがある。このため、本接合方法は汎用性がなく、また、接合に伴う加工費用が高価になる。
以上に説明したように、金属の融点が高いため、金属の基材を接合するには、特殊な条件と特殊な処理とが必要になり汎用性がなく、また、接合に伴う加工費用は高価である。
前記したように、複数の基材を接合する汎用的な方法はない。また、接合費用が高価である。従って、基材の材質や大きさや形状や表面粗さに拘わらず、同様の方法で複数の基材が接合できる画期的な方法が強く求められている。本発明が解決しようとする課題は、下記の7つの要件を満たす新たな方法で、複数の基材を接合することにある。
第一の要件は、清浄化された基材の接合面が、活性状態の物質を介して接合される。つまり、清浄化された接合面は活性状態にあり、活性状態にある接合面に活性状態の物質が出現すれば、接合面同士が活性状態の物質を介して強固に接合される。
第二の要件は、基材の表面の粗さや平坦度に依らず、複数の基材が接合できる。つまり、表面の平坦度が優れた基材や表面が滑らかな基材に、基材を接合する物質は形成しにくく、接合する物質が形成できても、アンカー効果が得られず接合強度は弱い。このため、表面を粗くする処理と、その後の洗浄処理とが必要になる。従って、第二の要件を満たせば、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第三の要件は、複数の基材を接合する際に、基材の表面に吸着した物質を取り除く処理が不要である。つまり、基材の表面には水分、水酸基、有機物などが吸着していて、これらの吸着物質は、基材の接合力を低下させる。接合力を高めるために、表面の吸着物を取り除く処理が必要になる。しかし、吸着物を取り除けたとしても、吸着物が再度容易に吸着する。従って、第三の要件が満たされれば、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第四の要件は、接合する基材の材質上の制約がない。これによって、同一種類の基材でも、異なる種類の基材でも、さらに、接合される基材の材質が制約されずに、同一の方法で様々な材質の基材が接合できる。
第五の要件は、接合する基材の大きさや接合する基材の形状の制約がない。これによって、基材の大きさや形状の制約を受けることなく、同一の方法で基材が接合できる。
第六の要件は、基材の事前の処理が不要である。このため、表面の異物を除去する洗浄や表面の粗さを変える処理や表面の性質を改質などの事前処理が一切不要になる。これによって、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第七の要件は、安価な原料を用いて、簡単な処理で複数の基材が接合できる。つまり、特別な環境下での特殊な反応や特殊な処理を一切伴わない。また、高価な材料を用いない。さらに、製造工程が短く、簡単な処理を連続して実施すると、接合された複数の基材が連続して製造できる。これによって、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第一の要件は、清浄化された基材の接合面が、活性状態の物質を介して接合される。つまり、清浄化された接合面は活性状態にあり、活性状態にある接合面に活性状態の物質が出現すれば、接合面同士が活性状態の物質を介して強固に接合される。
第二の要件は、基材の表面の粗さや平坦度に依らず、複数の基材が接合できる。つまり、表面の平坦度が優れた基材や表面が滑らかな基材に、基材を接合する物質は形成しにくく、接合する物質が形成できても、アンカー効果が得られず接合強度は弱い。このため、表面を粗くする処理と、その後の洗浄処理とが必要になる。従って、第二の要件を満たせば、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第三の要件は、複数の基材を接合する際に、基材の表面に吸着した物質を取り除く処理が不要である。つまり、基材の表面には水分、水酸基、有機物などが吸着していて、これらの吸着物質は、基材の接合力を低下させる。接合力を高めるために、表面の吸着物を取り除く処理が必要になる。しかし、吸着物を取り除けたとしても、吸着物が再度容易に吸着する。従って、第三の要件が満たされれば、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第四の要件は、接合する基材の材質上の制約がない。これによって、同一種類の基材でも、異なる種類の基材でも、さらに、接合される基材の材質が制約されずに、同一の方法で様々な材質の基材が接合できる。
第五の要件は、接合する基材の大きさや接合する基材の形状の制約がない。これによって、基材の大きさや形状の制約を受けることなく、同一の方法で基材が接合できる。
第六の要件は、基材の事前の処理が不要である。このため、表面の異物を除去する洗浄や表面の粗さを変える処理や表面の性質を改質などの事前処理が一切不要になる。これによって、安価な費用で複数の基材が接合できる。
第七の要件は、安価な原料を用いて、簡単な処理で複数の基材が接合できる。つまり、特別な環境下での特殊な反応や特殊な処理を一切伴わない。また、高価な材料を用いない。さらに、製造工程が短く、簡単な処理を連続して実施すると、接合された複数の基材が連続して製造できる。これによって、安価な費用で複数の基材が接合できる。
本発明における金属微粒子の集まりによって複数の基材を接合する第一特徴手段は、
熱分解で金属を析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より高い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する液体の有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成する、この後、複数の基材のうち一つの基材を除く基材の表面に前記混合液を塗布し、該複数の基材の一つずつを前記混合液の塗布面に重ねて積層し、該積層体に一定の圧縮荷重を加え、該積層体を還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、前記混合液の塗膜が形成された基材の表面は、吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記塗膜が形成された基材の部位において、前記複数の基材の表面同士を接合する。
熱分解で金属を析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より高い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する液体の有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成する、この後、複数の基材のうち一つの基材を除く基材の表面に前記混合液を塗布し、該複数の基材の一つずつを前記混合液の塗布面に重ねて積層し、該積層体に一定の圧縮荷重を加え、該積層体を還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、前記混合液の塗膜が形成された基材の表面は、吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記塗膜が形成された基材の部位において、前記複数の基材の表面同士を接合する。
つまり、複数の基材の積層体を熱処理すると、塗膜が形成された基材の部位において、基材の表面に吸着していた物質が沸点に準じて順次気化し、基材の表面が清浄化される。いっぽう、様々な物質が気化する塗膜は、外部より相対的に陽圧になっているため、塗膜が形成された基材の表面に異物が侵入できず、基材の表面は清浄化され活性化された状態を保つ。従って、清浄化された基材の表面に、金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出する。この金属微粒子は不純物を含まない活性状態で析出し、活性状態の金属微粒子が、活性化された基材の表面に直接接合する。また、この活性状態の金属微粒子は、接触部位で互いに金属結合する。この結果、塗膜が形成された基材の部位において、金属結合した金属微粒子の集まりを介して、金属微粒子と基材との接合力と、金属微粒子同士の金属結合力とによって、基材の表面同士が強固に接合される。従って、基材の表面粗さや平坦度に拘わらず、また、基材の材質や大きさや形状に拘わらず、塗膜が形成された部位において、複数の基材が接合される。なお、還元雰囲気で熱処理するため、基材が耐熱性の低い合成樹脂でも、合成樹脂が熱分解されず、金属微粒子の集まりで接合された合成樹脂の性質は変わらない。また、還元雰囲気の200℃前後ないしは350℃前後の温度で金属化合物が熱分解するため、熱処理費用は安価である。
すなわち、本特徴手段では、第一に、熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散する。これによって、金属化合物が分子状態でアルコールに分散し、金属微粒子の原料が液相化される。第二に、有機化合物をアルコール分散液に混合する。有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合う。第三に、複数の基材のうち一つの基材を除く複数の基材の表面に混合液を塗布する。これによって、混合液の粘度に応じた厚みの塗膜が基材の表面に形成される。第四に、複数の基材の一つずつを混合液の塗布面に重ねて積層し、この積層体に一定の圧縮荷重を加え、還元雰囲気で金属化合物の熱分解温度まで昇温する。この際、昇温に順じて次の現象が起こる。最初に塗膜からアルコールが気化する。金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶が有機化合物中に一斉に析出し、塗膜は微細結晶が有機化合物に析出した懸濁液になる。次に、有機化合物の沸点で、塗膜から有機化合物が気化する。この際、塗膜は微細結晶の集まりとなるが、基材に圧縮荷重が加えられているため、微細結晶は積層面から脱落しない。なお、微細結晶の大きさは、金属化合物の熱分解で析出する40nm〜60nmの金属微粒子の大きさに近い。さらに、金属化合物の熱分解温度に達すると微細結晶が熱分解し、微細結晶が無機物ないしは有機物と金属とに分解され、無機物ないしは有機物の気化が完了すると、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された部位に一斉に析出する。従って、金属微粒子は不純物を含まない活性状態で析出する。積層体に圧縮荷重が加えられているため、活性状態の金属微粒子は、塗膜が形成された部位において、基材の表面に直接接合するとともに、粒状の金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりを介して、塗膜が形成された部位において、基材の表面同士が接合される。
いっぽう、基材の表面は、水分子と水酸基と有機物とが吸着している。従って、これらの吸着物質の上に混合液の塗膜が形成される。積層体が昇温されると、塗膜を構成する有機化合物が気化する以前に、基材の表面に吸着していた水分子と水酸基とが気化し、さらに、金属化合物が熱分解する以前に、基材の表面に吸着していた有機物が気化する。いっぽう、塗膜から様々な物質が気化するため、塗膜は外部より相対的に陽圧になっている。このため、塗膜が形成された部位において、基材の表面に異物が侵入して再度吸着することはない。従って、塗膜が形成された基材の表面は、清浄化されて活性化した状態を維持する。このような活性化された基材の表面に、不純物を含まず活性状態の粒状の金属微粒子が一斉に析出し、活性状態の金属微粒子は活性状態の基材の表面に強固に接合する。また、活性状態の金属微粒子は、接触部位で互いに金属結合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された部位において、基材の表面同士を接合する。
ところで、金属ないしは合金からなる基材は、溶解した金属ないしは合金は活性状態にあるため、基材を形成する際に、金属ないしは合金の酸化物からなるごく薄い被膜が表面に形成され、基材の表面が安定化される。このため、酸化物の被膜の上に、水分子と水酸基と有機物とが吸着する。この酸化物の沸点は、金属ないしは合金の融点より高く、金属化合物の熱分解で気化しない。しかし、金属ないしは合金からなる基材の表面粗さは、金属微粒子の大きさより1桁以上大きく、また、基材に圧縮荷重が加わっているため、有機化合物が気化する際に、塗膜が形成された基材表面の凹凸に金属化合物の微細結晶が入り込み、塗膜は隙間なく充填された微細結晶の集まりになる。この微細結晶が熱分解すると、金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された基材表面の凹凸に入り込み、塗膜が形成された部位を金属微粒子の集まりが埋め尽くす。この結果、金属結合した金属微粒子の集まりは、アンカー効果を発揮するとともに、金属結合に基づく結合力によって、塗膜が形成された部位において、金属ないしは合金からなる基材の表面同士を接合する。いっぽう、合成樹脂、ガラス、セラミックスからなる基材は、水分子と水酸基と有機化合物が吸着している。これら吸着物質は、金属化合物が熱分解する温度より低い温度で気化し、前記したように、清浄化された基材の表面に活性状態の金属微粒子が強固に接合する。従って、接合する基材の材質や大きさや形状の制約を受けることなく、基材の表面同士が接合される。
さらに、基材の表面は材質によって表面粗さが異なる。合成樹脂の基材と一部のセラミックの基材は表面の平坦度が、金属微粒子の大きさに近い。また、ガラスと特殊なセラミックの基材の平坦度は、金属微粒子の大きさより平坦である。基材の平坦度が優れるほど、基材の表面同士を接合させる物質を、基材の表面に結合させることが困難になる。しかしながら、清浄化され活性状態になった基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが析出するため、基材の表面の平坦度に拘わらず、金属微粒子の集まりが基材の表面に強固に接合する。従って、接合する基材の表面粗さや表面の平坦度の制約を受けることなく、基材の表面同士を接合することができる。
ここで、耐熱性が低く安価な基材である合成樹脂の熱分解について説明する。合成樹脂を昇温すると、所定の温度から合成樹脂の熱分解が開始し、高分子材料である合成樹脂の分子が徐々に断ち切られ、次第に低分子量となって重量が軽減する熱分解が進む。従って、合成樹脂の熱分解が始まると分子構造が変わるため、合成樹脂の性質は不可逆変化する。この合成樹脂の分子構造に変化が始まる温度は、重量変化が始まる温度であるため、熱重量分析(Thermogravimetory略してTG)で測定される。従って、金属化合物を熱分解させても、合成樹脂の熱分解が始まらなければ、合成樹脂の性質は変わらない。これによって、合成樹脂の性質を変えることなく、金属微粒子の集まりで合成樹脂の基材が接合できる。
ところで、合成樹脂の熱分解反応は、酸素ガスが存在する雰囲気と、還元雰囲気とでは大きく異なる。つまり、酸素ガスが存在する雰囲気での熱分解は、酸化反応による熱分解、つまり、燃焼であるため発熱を伴う。この発熱現象が、酸化されやすい、つまり、燃えやすい有機物質からなる合成樹脂の熱分解を促進させる。これに対し、還元雰囲気での熱分解は吸熱反応による熱分解で、酸化反応による発熱現象が生じない。このため、合成樹脂が熱分解を開始する温度は、酸素ガスが存在する雰囲気に比べて大幅に遅れて高温側にシフトする。例えば、高密度ポリエチレン樹脂の熱分解は、大気雰囲気では250℃で開始するが、窒素雰囲気では400℃と150℃も高温側にシフトする。従って、還元雰囲気で合成樹脂の積層体を熱処理すれば、合成樹脂が熱分解されず、合成樹脂の性質は変わらない。
本特徴手段に依れば、以下の特徴をもって金属微粒子の集まりで基材が接合される。
第一に、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが直接接合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、基材の表面同士を強固に接合する。
第二に、基材の表面粗さや表面の平坦度に依らず、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。
第三に、金属化合物が熱分解する以前に、基材の表面に吸着した物質が気化するため、基材表面の事前の洗浄は不要になる。
第四に、塗布した混合液の熱処理で基材の表面同士が接合されるため、接合する基材の材質の制約がない。これによって、同一種類の基材であっても、異なる種類の基材であっても、基材が接合できる。また、基材の積層体を還元雰囲気で熱処理するため、耐熱性の低い合成樹脂でも、合成樹脂が熱分解されずに、金属微粒子の集まりで合成樹脂の基材が接合できる。さらに、金属ないしは合金からなる基材は、金属結合した金属微粒子の集まりのアンカー効果と金属結合に基づく結合力で、基材の表面同士が強固に接合される。
第五に、塗布した混合液の熱処理で基材の表面同士が接合されるため、接合する基材の大きさや形状の制約がない。これによって、接合できる基材の汎用性がさらに広がる。
第六に、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合するため、基材表面の事前の処理は一切不要になる。
第七に、基材の表面同士の接合は、混合液を基材に塗布し、この基材を積層し、圧縮荷重を加えて還元雰囲気で熱処理するだけの極めて簡単な処理である。また、熱処理温度は高くても350℃程度の温度である。さらに、混合液は、金属化合物をアルコールに分散し、このアルコール分散液に有機化合物を混合するだけで作成できる。また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは安価な工業用薬品である。従って、安価な原料を用いて極めて簡単な処理で、接合された基材が連続して製造できる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、6段落に記載した7つの要件を満たして複数の基材が接合され、本発明における課題が解決された。
すなわち、本特徴手段では、第一に、熱分解で金属を析出する金属化合物をアルコールに分散する。これによって、金属化合物が分子状態でアルコールに分散し、金属微粒子の原料が液相化される。第二に、有機化合物をアルコール分散液に混合する。有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和するため、有機化合物はアルコール分散液と均一に混ざり合う。第三に、複数の基材のうち一つの基材を除く複数の基材の表面に混合液を塗布する。これによって、混合液の粘度に応じた厚みの塗膜が基材の表面に形成される。第四に、複数の基材の一つずつを混合液の塗布面に重ねて積層し、この積層体に一定の圧縮荷重を加え、還元雰囲気で金属化合物の熱分解温度まで昇温する。この際、昇温に順じて次の現象が起こる。最初に塗膜からアルコールが気化する。金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、金属化合物の微細結晶が有機化合物中に一斉に析出し、塗膜は微細結晶が有機化合物に析出した懸濁液になる。次に、有機化合物の沸点で、塗膜から有機化合物が気化する。この際、塗膜は微細結晶の集まりとなるが、基材に圧縮荷重が加えられているため、微細結晶は積層面から脱落しない。なお、微細結晶の大きさは、金属化合物の熱分解で析出する40nm〜60nmの金属微粒子の大きさに近い。さらに、金属化合物の熱分解温度に達すると微細結晶が熱分解し、微細結晶が無機物ないしは有機物と金属とに分解され、無機物ないしは有機物の気化が完了すると、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された部位に一斉に析出する。従って、金属微粒子は不純物を含まない活性状態で析出する。積層体に圧縮荷重が加えられているため、活性状態の金属微粒子は、塗膜が形成された部位において、基材の表面に直接接合するとともに、粒状の金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりを介して、塗膜が形成された部位において、基材の表面同士が接合される。
いっぽう、基材の表面は、水分子と水酸基と有機物とが吸着している。従って、これらの吸着物質の上に混合液の塗膜が形成される。積層体が昇温されると、塗膜を構成する有機化合物が気化する以前に、基材の表面に吸着していた水分子と水酸基とが気化し、さらに、金属化合物が熱分解する以前に、基材の表面に吸着していた有機物が気化する。いっぽう、塗膜から様々な物質が気化するため、塗膜は外部より相対的に陽圧になっている。このため、塗膜が形成された部位において、基材の表面に異物が侵入して再度吸着することはない。従って、塗膜が形成された基材の表面は、清浄化されて活性化した状態を維持する。このような活性化された基材の表面に、不純物を含まず活性状態の粒状の金属微粒子が一斉に析出し、活性状態の金属微粒子は活性状態の基材の表面に強固に接合する。また、活性状態の金属微粒子は、接触部位で互いに金属結合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された部位において、基材の表面同士を接合する。
ところで、金属ないしは合金からなる基材は、溶解した金属ないしは合金は活性状態にあるため、基材を形成する際に、金属ないしは合金の酸化物からなるごく薄い被膜が表面に形成され、基材の表面が安定化される。このため、酸化物の被膜の上に、水分子と水酸基と有機物とが吸着する。この酸化物の沸点は、金属ないしは合金の融点より高く、金属化合物の熱分解で気化しない。しかし、金属ないしは合金からなる基材の表面粗さは、金属微粒子の大きさより1桁以上大きく、また、基材に圧縮荷重が加わっているため、有機化合物が気化する際に、塗膜が形成された基材表面の凹凸に金属化合物の微細結晶が入り込み、塗膜は隙間なく充填された微細結晶の集まりになる。この微細結晶が熱分解すると、金属微粒子の集まりが、塗膜が形成された基材表面の凹凸に入り込み、塗膜が形成された部位を金属微粒子の集まりが埋め尽くす。この結果、金属結合した金属微粒子の集まりは、アンカー効果を発揮するとともに、金属結合に基づく結合力によって、塗膜が形成された部位において、金属ないしは合金からなる基材の表面同士を接合する。いっぽう、合成樹脂、ガラス、セラミックスからなる基材は、水分子と水酸基と有機化合物が吸着している。これら吸着物質は、金属化合物が熱分解する温度より低い温度で気化し、前記したように、清浄化された基材の表面に活性状態の金属微粒子が強固に接合する。従って、接合する基材の材質や大きさや形状の制約を受けることなく、基材の表面同士が接合される。
さらに、基材の表面は材質によって表面粗さが異なる。合成樹脂の基材と一部のセラミックの基材は表面の平坦度が、金属微粒子の大きさに近い。また、ガラスと特殊なセラミックの基材の平坦度は、金属微粒子の大きさより平坦である。基材の平坦度が優れるほど、基材の表面同士を接合させる物質を、基材の表面に結合させることが困難になる。しかしながら、清浄化され活性状態になった基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが析出するため、基材の表面の平坦度に拘わらず、金属微粒子の集まりが基材の表面に強固に接合する。従って、接合する基材の表面粗さや表面の平坦度の制約を受けることなく、基材の表面同士を接合することができる。
ここで、耐熱性が低く安価な基材である合成樹脂の熱分解について説明する。合成樹脂を昇温すると、所定の温度から合成樹脂の熱分解が開始し、高分子材料である合成樹脂の分子が徐々に断ち切られ、次第に低分子量となって重量が軽減する熱分解が進む。従って、合成樹脂の熱分解が始まると分子構造が変わるため、合成樹脂の性質は不可逆変化する。この合成樹脂の分子構造に変化が始まる温度は、重量変化が始まる温度であるため、熱重量分析(Thermogravimetory略してTG)で測定される。従って、金属化合物を熱分解させても、合成樹脂の熱分解が始まらなければ、合成樹脂の性質は変わらない。これによって、合成樹脂の性質を変えることなく、金属微粒子の集まりで合成樹脂の基材が接合できる。
ところで、合成樹脂の熱分解反応は、酸素ガスが存在する雰囲気と、還元雰囲気とでは大きく異なる。つまり、酸素ガスが存在する雰囲気での熱分解は、酸化反応による熱分解、つまり、燃焼であるため発熱を伴う。この発熱現象が、酸化されやすい、つまり、燃えやすい有機物質からなる合成樹脂の熱分解を促進させる。これに対し、還元雰囲気での熱分解は吸熱反応による熱分解で、酸化反応による発熱現象が生じない。このため、合成樹脂が熱分解を開始する温度は、酸素ガスが存在する雰囲気に比べて大幅に遅れて高温側にシフトする。例えば、高密度ポリエチレン樹脂の熱分解は、大気雰囲気では250℃で開始するが、窒素雰囲気では400℃と150℃も高温側にシフトする。従って、還元雰囲気で合成樹脂の積層体を熱処理すれば、合成樹脂が熱分解されず、合成樹脂の性質は変わらない。
本特徴手段に依れば、以下の特徴をもって金属微粒子の集まりで基材が接合される。
第一に、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが直接接合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、基材の表面同士を強固に接合する。
第二に、基材の表面粗さや表面の平坦度に依らず、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。
第三に、金属化合物が熱分解する以前に、基材の表面に吸着した物質が気化するため、基材表面の事前の洗浄は不要になる。
第四に、塗布した混合液の熱処理で基材の表面同士が接合されるため、接合する基材の材質の制約がない。これによって、同一種類の基材であっても、異なる種類の基材であっても、基材が接合できる。また、基材の積層体を還元雰囲気で熱処理するため、耐熱性の低い合成樹脂でも、合成樹脂が熱分解されずに、金属微粒子の集まりで合成樹脂の基材が接合できる。さらに、金属ないしは合金からなる基材は、金属結合した金属微粒子の集まりのアンカー効果と金属結合に基づく結合力で、基材の表面同士が強固に接合される。
第五に、塗布した混合液の熱処理で基材の表面同士が接合されるため、接合する基材の大きさや形状の制約がない。これによって、接合できる基材の汎用性がさらに広がる。
第六に、清浄化された基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合するため、基材表面の事前の処理は一切不要になる。
第七に、基材の表面同士の接合は、混合液を基材に塗布し、この基材を積層し、圧縮荷重を加えて還元雰囲気で熱処理するだけの極めて簡単な処理である。また、熱処理温度は高くても350℃程度の温度である。さらに、混合液は、金属化合物をアルコールに分散し、このアルコール分散液に有機化合物を混合するだけで作成できる。また、熱分解で金属を析出する金属化合物とアルコールと有機化合物とは安価な工業用薬品である。従って、安価な原料を用いて極めて簡単な処理で、接合された基材が連続して製造できる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、6段落に記載した7つの要件を満たして複数の基材が接合され、本発明における課題が解決された。
本発明における金属微粒子の集まりによって複数の基材を接合する第二特徴手段は、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の接合に関わり、該複数の基材の接合は、
第一特徴手段に記載した混合液からアルコールを気化させ、第一特徴手段に記載した混合液を、金属化合物の微細結晶が液体の有機化合物中に分散した懸濁液とし、第一特徴手段に記載した複数の基材として、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材を用い、該複数の基材の間隙に前記懸濁液が浸透するように、該複数の基材を真空ポンプに繋がった容器内に固定する、この後、前記容器を密閉して前記真空ポンプを稼働させ、該容器内の圧力を前記有機化合物の蒸気圧の近くまで低下させ、前記複数の基材の表面の吸着物質を気化して取り除く、さらに、該容器に前記懸濁液を供給し、該懸濁液を前記複数の基材の間隙に浸透させる、この後、前記容器内の圧力を大気圧に戻し、該容器から前記複数の基材を取り出し、該複数の基材の表面に付着した前記懸濁液をアルコールで取り除く、この後、該複数の基材を還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、前記複数の基材の間隙を形成する基材の表面は、残留した吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記複数の基材の間隙において、該複数の基材の表面同士を接合する。
第一特徴手段に記載した混合液からアルコールを気化させ、第一特徴手段に記載した混合液を、金属化合物の微細結晶が液体の有機化合物中に分散した懸濁液とし、第一特徴手段に記載した複数の基材として、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材を用い、該複数の基材の間隙に前記懸濁液が浸透するように、該複数の基材を真空ポンプに繋がった容器内に固定する、この後、前記容器を密閉して前記真空ポンプを稼働させ、該容器内の圧力を前記有機化合物の蒸気圧の近くまで低下させ、前記複数の基材の表面の吸着物質を気化して取り除く、さらに、該容器に前記懸濁液を供給し、該懸濁液を前記複数の基材の間隙に浸透させる、この後、前記容器内の圧力を大気圧に戻し、該容器から前記複数の基材を取り出し、該複数の基材の表面に付着した前記懸濁液をアルコールで取り除く、この後、該複数の基材を還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、前記複数の基材の間隙を形成する基材の表面は、残留した吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記複数の基材の間隙において、該複数の基材の表面同士を接合する。
つまり、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の間隙に、真空含浸によって、第一特徴手段で記載した混合液からアルコールを気化させた懸濁液を浸透させる。この後、複数の基材を容器から取り出すと、間隙に浸透した懸濁液は、表面張力で間隙から抜け落ちない。この複数の基材を還元雰囲気で金属化合物の熱分解温度まで昇温する。有機化合物が気化する際と、金属化合物が熱分解する際に、間隙を形成する基材の表面に吸着していた残留物質も気化し、基材の表面が清浄化する。いっぽう、間隙を形成する懸濁液から様々な物質が気化するため、懸濁液は外部に比べて陽圧になり、間隙に異物が侵入することができず、間隙を形成する基材の表面は清浄化した状態を保つ。従って、清浄化した基材の表面に、金属化合物の熱分解で粒状の金属微粒子の集まりが析出する。この金属微粒子は不純物を含まない活性状態で析出し、基材の表面に強固に接合するとともに、粒状の金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合する。この結果、基材の間隙は、金属結合した金属微粒子の集まりで充填され、間隙を充填した金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を接合する。なお、間隙に充填された金属微粒子の微細結晶は、熱分解で析出する金属微粒子の大きさに近い。また、熱分解で析出した金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合するが、微粒子が粒状形状であるため、微粒子の大きさよりさらに1桁小さい極微小の空隙を、隣接する微粒子間に形成する。このため、金属化合物の微細結晶が熱分解しても、微細結晶が充填された間隙に、金属微粒子が存在しない領域はなく、間隙は金属結合した金属微粒子の集まりで満遍なく充填され、複数の基材の表面同士が金属結合した金属微粒子の集まりで接合される。
すなわち、真空ポンプの稼働によって容器内の圧力は、有機化合物の室温における蒸気圧に相当する1×10−3気圧に近い圧力まで低減される。この際、基材の表面に吸着していた物質が気化するとともに、緩嵌合状態で組み付けられた基材の間隙も、1×10−3気圧に近い圧力になる。この極低圧下の容器内に懸濁液を供給すると、基材の表面粗さや平坦度に拘わらず、また、基材の材質や大きさや形状に拘わらず、基材の間隙に懸濁液が浸透し、間隙が懸濁液で隙間なく充填される。この後、容器を大気圧に戻し、容器から緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材を取り出し、熱処理を行うと、前記したように、間隙を充填した金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を接合する。
なお、基材が耐熱性の低い合成樹脂で構成される場合は、前記した第一特徴手段に記載したように、還元雰囲気で複数の基材を熱処理するため、合成樹脂は熱分解しない。このため、間隙を充填した金属微粒子の集まりで複数の基材を接合しても、合成樹脂の性質に変化がない。いっぽう、基材が金属ないしは合金で構成される場合は、極低圧化の容器に懸濁液が供給された際に、間隙を形成する基材の表面の凹凸に懸濁液が入り込んで、間隙を隙間なく懸濁液が充填する。このため、金属結合した金属微粒子の集まりが、間隙を形成する基材表面の凹凸に入り込んで間隙を埋め尽くし、金属結合した金属微粒子の集まりが、アンカー効果を発揮するとともに金属結合に基づく結合力によって、複数の基材を接合する。また、基材が合成樹脂、ガラス、セラミックスで構成される場合は、前記した水分子と水酸基と有機化合物が吸着している。これら吸着物質は、容器が極低圧化になる際と、金属化合物を熱分解する際に気化し、清浄化された基材の表面に活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。従って、基材の材質の制約を受けず、また、異なる材質からなる基材の組み合わせであっても、複数の基材が強固に接合できる。
さらに、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の間隙に、隙間なく充填された懸濁液を熱処理すると、複数の基材の表面同士が接合されるため、緩嵌合状態で組み付けられる基材の枚数は2枚に限定されず、組み付けられる基材の大きさと形状は制約されない。
また、容器の圧力を極低圧に低減させる際に、基材の表面に吸着していた物質が気化し、さらに、懸濁液を熱処理する際に、間隙の基材の表面に残留した吸着物質が気化するため、基材を緩嵌合状態で組み付ける前に、基材を事前に処理する必要は一切ない。
さらに、本特徴手段は、第一特徴手段における懸濁液を塗布する処理が、懸濁液を間隙に真空含浸する処理に変わるだけであり、真空含浸処理が容器の真空引きと懸濁液の供給だけの簡単な処理であるため、簡単な処理で連続して緩嵌合状態の基材を接合できる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、6段落に記載した7つの要件を満たして緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材が接合される。
すなわち、真空ポンプの稼働によって容器内の圧力は、有機化合物の室温における蒸気圧に相当する1×10−3気圧に近い圧力まで低減される。この際、基材の表面に吸着していた物質が気化するとともに、緩嵌合状態で組み付けられた基材の間隙も、1×10−3気圧に近い圧力になる。この極低圧下の容器内に懸濁液を供給すると、基材の表面粗さや平坦度に拘わらず、また、基材の材質や大きさや形状に拘わらず、基材の間隙に懸濁液が浸透し、間隙が懸濁液で隙間なく充填される。この後、容器を大気圧に戻し、容器から緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材を取り出し、熱処理を行うと、前記したように、間隙を充填した金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を接合する。
なお、基材が耐熱性の低い合成樹脂で構成される場合は、前記した第一特徴手段に記載したように、還元雰囲気で複数の基材を熱処理するため、合成樹脂は熱分解しない。このため、間隙を充填した金属微粒子の集まりで複数の基材を接合しても、合成樹脂の性質に変化がない。いっぽう、基材が金属ないしは合金で構成される場合は、極低圧化の容器に懸濁液が供給された際に、間隙を形成する基材の表面の凹凸に懸濁液が入り込んで、間隙を隙間なく懸濁液が充填する。このため、金属結合した金属微粒子の集まりが、間隙を形成する基材表面の凹凸に入り込んで間隙を埋め尽くし、金属結合した金属微粒子の集まりが、アンカー効果を発揮するとともに金属結合に基づく結合力によって、複数の基材を接合する。また、基材が合成樹脂、ガラス、セラミックスで構成される場合は、前記した水分子と水酸基と有機化合物が吸着している。これら吸着物質は、容器が極低圧化になる際と、金属化合物を熱分解する際に気化し、清浄化された基材の表面に活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。従って、基材の材質の制約を受けず、また、異なる材質からなる基材の組み合わせであっても、複数の基材が強固に接合できる。
さらに、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の間隙に、隙間なく充填された懸濁液を熱処理すると、複数の基材の表面同士が接合されるため、緩嵌合状態で組み付けられる基材の枚数は2枚に限定されず、組み付けられる基材の大きさと形状は制約されない。
また、容器の圧力を極低圧に低減させる際に、基材の表面に吸着していた物質が気化し、さらに、懸濁液を熱処理する際に、間隙の基材の表面に残留した吸着物質が気化するため、基材を緩嵌合状態で組み付ける前に、基材を事前に処理する必要は一切ない。
さらに、本特徴手段は、第一特徴手段における懸濁液を塗布する処理が、懸濁液を間隙に真空含浸する処理に変わるだけであり、真空含浸処理が容器の真空引きと懸濁液の供給だけの簡単な処理であるため、簡単な処理で連続して緩嵌合状態の基材を接合できる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、6段落に記載した7つの要件を満たして緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材が接合される。
本発明における金属微粒子の集まりによって複数の基材を接合する第三特徴手段は、透明性の基材からなる複数の基材の接合に関わり、該複数の基材の接合は、
第一特徴手段に記載した基材が透明性の基材であり、第一特徴手段に記載した金属微粒子がニッケル微粒子であり、該ニッケル微粒子の集まりによって前記透明性の基材を接合する。
第一特徴手段に記載した基材が透明性の基材であり、第一特徴手段に記載した金属微粒子がニッケル微粒子であり、該ニッケル微粒子の集まりによって前記透明性の基材を接合する。
つまり、ニッケルは、可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での屈折率が1.6以上で2.3以下であるため透明性を持つ。従って、ニッケル微粒子の集まりで透明性の基材を接合すれば、接合された基材は透明性を持つ。
すなわち、ニッケルの屈折率は380nmで1.61であり、波長が長くなるとと共に増大し、539nmで1.75、709nmで2.21、729nmで2.28、750nmで2.34である。従って、ニッケル微粒子の集まりの表面で、空気とニッケルとの屈折率の違いで光が反射する。この際、ニッケル微粒子の集まりへの光の透過率は、380nmで89%、539nmで86%、709nmで74%、729nmで72%、750nmで70%になる。また、ニッケル微粒子の大きさは、可視光線の波長より1桁小さい。従って、赤色の可視光線の成分の一部がニッケル微粒子の集まりの表面で反射されるが、微粒子の集まりに入り込んだ光は、殆ど散乱することなくニッケル微粒子の集まりを透過する。なお、光線の表面反射率と全光線透過率とは、下記の13段落で説明する。また、微粒子の集まりにおける光の散乱は、下記の14段落で説明する。
また、代表的な透明性の基材としてガラスが存在するが、ガラスより軽量で安価な透明性の基材に透明性の合成樹脂がある。つまり、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6の合成樹脂は、全光線透過率は90%以上と高い透明性を持つ。なお、合成樹脂の屈折率は、可視光線の波長領域で有効数字の3桁目が僅かに変わるだけで、波長依存性は極めて小さい。
ところで、非晶性の合成樹脂は、成形体に結晶粒界が形成されず、多くの非晶性の合成樹脂は透明性を持つ。次の3種類の非晶性の熱可塑性樹脂は、安価な透明性の非晶性樹脂である。ポリメチルメタクリル樹脂PMMAは、1.49の屈折率を持つ最も透明度に優れた合成樹脂である。また、ポリカーボネート樹脂PCは、1.58の屈折率を持ちPMMA樹脂に次いで透明度に優れた合成樹脂である。さらに、ポリスチレン樹脂PSは、1.59の屈折率を持つ優れた透明性の合成樹脂である。
また、結晶性の熱可塑性樹脂でも、溶解した結晶性樹脂を急冷すれば、非晶状態でありまたは結晶化度が低く、あるいは結晶サイズが微細になるため、透明性を持つ。このような透明性の結晶性樹脂の中で、次に説明する4種類の樹脂は、安価な透明性の結晶性樹脂である。ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、結晶化の速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、屈折率が1.58の透明性の成形体になる。また、ポリプロピレン樹脂PPは、結晶化速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、1.50の屈折率を持つ優れた透明性の成形体になる。さらに、ポリアミド6樹脂PA6は、結晶化速度がやや遅く、融解したペレットを急冷すると、1.53の屈折率を持つ優れた透明性の成形体になる。また、ポリエチレン樹脂PEは結晶性で透明性に劣るが、低密度ポリエチレン樹脂LDPEは、結晶性樹脂の中で最も結晶化速度が遅く、透明性の成形体が得られる。
なお、非晶性樹脂のポリ塩化ビニル樹脂PVCは、可塑剤と熱安定剤の種類と添加量を制限すると、1.52〜1.53の屈折率を持つ優れた透明性が得られる。また、ポリスルホン樹脂PSUは、1.63の屈折率を持つ透明性の合成樹脂であるが、ポリマーが高価で、大面積の透明基材にあまり使用されない。また、PC樹脂と同等の透明性を持つポリアリレート樹脂PAR、透明性のポリエーテルイミド樹脂PEI、琥珀色の透明性を持つポリエーテルサルホン樹脂PESは、高価なポリマーで、大面積の透明基材としてはあまり使用されない。
さらに、結晶性樹脂であるポリ塩化ビニリデン樹脂PVDCの成形体は透明性を持つが、大面積の透明基材に用いる事例は少ない。さらに、結晶性のフッ素樹脂は屈折率が低く、透明性が高い。例えば、ネオフロンEFEP樹脂(株式会社ダイキン工業の製品名)の屈折率が1.38で、ネオフロンCPT樹脂の屈折率は1.39で、ポリ弗化ビニル樹脂PVFの屈折率は1.46で、三弗化塩化エチレン樹脂PCTFEの屈折率は1.42で、エチレン・四弗化エチレン共重合樹脂ETFEの屈折率は1.40で、四弗化エチレン・六弗化プロピレン共重合樹脂FEPの屈折率は1.34で、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂PFAの屈折率が1.34である。これらのフッ素樹脂によって、優れた透明性が得られるが、フッ素樹脂のポリマーは、前記した結晶性のPET樹脂、PP樹脂、PA6樹脂などのポリマーに比べると高価で、大面積の透明基材としては不向きである。
ここで前記した安価な透明性の非晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。アクリル樹脂PMMAは、大気雰囲気で熱分解が220℃から始まり、300℃まで進み、400℃を超える温度まで緩やかに進む。次に、ポリカーボネート樹脂PCは、大気雰囲気で420℃から熱分解が開始し、660℃で完了する。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂PVCは、大気雰囲気で3段階に分かれて熱分解する。第一段階の250℃から350℃までの熱分解と、第二段階の350℃〜480℃までの熱分解で、有毒の塩化水素HClが乖離して気化し、また、消防法の第4類危険物第1石油類に属する引火点が21℃未満のベンゼンが生成される。第三段階の480℃〜650℃の熱分解で、ポリマーの燃焼によって二酸化炭素ガスと水蒸気が生成され、また、猛毒の一酸化炭素ガスが生成さる。
また、前記した安価な透明性の結晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。ポリプロピレン樹脂PPは、熱分解が240℃から始まり400℃まで進み、430℃まで緩やかに進む。さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、300℃〜500℃での熱分解と500℃〜650℃での二段階に分かれて熱分解する。
従って、これら透明性の合成樹脂は、還元雰囲気の200℃前後の温度では熱分解が始まらず、多くの透明性の合成樹脂は、還元雰囲気の350℃前後の温度でも熱分解が始まらない。従って、ニッケル微粒子の集まりで接合した透明性の合成樹脂の基材は透明性を持つ。
すなわち、ニッケルの屈折率は380nmで1.61であり、波長が長くなるとと共に増大し、539nmで1.75、709nmで2.21、729nmで2.28、750nmで2.34である。従って、ニッケル微粒子の集まりの表面で、空気とニッケルとの屈折率の違いで光が反射する。この際、ニッケル微粒子の集まりへの光の透過率は、380nmで89%、539nmで86%、709nmで74%、729nmで72%、750nmで70%になる。また、ニッケル微粒子の大きさは、可視光線の波長より1桁小さい。従って、赤色の可視光線の成分の一部がニッケル微粒子の集まりの表面で反射されるが、微粒子の集まりに入り込んだ光は、殆ど散乱することなくニッケル微粒子の集まりを透過する。なお、光線の表面反射率と全光線透過率とは、下記の13段落で説明する。また、微粒子の集まりにおける光の散乱は、下記の14段落で説明する。
また、代表的な透明性の基材としてガラスが存在するが、ガラスより軽量で安価な透明性の基材に透明性の合成樹脂がある。つまり、可視光線の波長領域での屈折率が1.3〜1.6の合成樹脂は、全光線透過率は90%以上と高い透明性を持つ。なお、合成樹脂の屈折率は、可視光線の波長領域で有効数字の3桁目が僅かに変わるだけで、波長依存性は極めて小さい。
ところで、非晶性の合成樹脂は、成形体に結晶粒界が形成されず、多くの非晶性の合成樹脂は透明性を持つ。次の3種類の非晶性の熱可塑性樹脂は、安価な透明性の非晶性樹脂である。ポリメチルメタクリル樹脂PMMAは、1.49の屈折率を持つ最も透明度に優れた合成樹脂である。また、ポリカーボネート樹脂PCは、1.58の屈折率を持ちPMMA樹脂に次いで透明度に優れた合成樹脂である。さらに、ポリスチレン樹脂PSは、1.59の屈折率を持つ優れた透明性の合成樹脂である。
また、結晶性の熱可塑性樹脂でも、溶解した結晶性樹脂を急冷すれば、非晶状態でありまたは結晶化度が低く、あるいは結晶サイズが微細になるため、透明性を持つ。このような透明性の結晶性樹脂の中で、次に説明する4種類の樹脂は、安価な透明性の結晶性樹脂である。ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、結晶化の速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、屈折率が1.58の透明性の成形体になる。また、ポリプロピレン樹脂PPは、結晶化速度が遅く、融解したペレットを急冷すると、結晶化が進む前に冷却し、1.50の屈折率を持つ優れた透明性の成形体になる。さらに、ポリアミド6樹脂PA6は、結晶化速度がやや遅く、融解したペレットを急冷すると、1.53の屈折率を持つ優れた透明性の成形体になる。また、ポリエチレン樹脂PEは結晶性で透明性に劣るが、低密度ポリエチレン樹脂LDPEは、結晶性樹脂の中で最も結晶化速度が遅く、透明性の成形体が得られる。
なお、非晶性樹脂のポリ塩化ビニル樹脂PVCは、可塑剤と熱安定剤の種類と添加量を制限すると、1.52〜1.53の屈折率を持つ優れた透明性が得られる。また、ポリスルホン樹脂PSUは、1.63の屈折率を持つ透明性の合成樹脂であるが、ポリマーが高価で、大面積の透明基材にあまり使用されない。また、PC樹脂と同等の透明性を持つポリアリレート樹脂PAR、透明性のポリエーテルイミド樹脂PEI、琥珀色の透明性を持つポリエーテルサルホン樹脂PESは、高価なポリマーで、大面積の透明基材としてはあまり使用されない。
さらに、結晶性樹脂であるポリ塩化ビニリデン樹脂PVDCの成形体は透明性を持つが、大面積の透明基材に用いる事例は少ない。さらに、結晶性のフッ素樹脂は屈折率が低く、透明性が高い。例えば、ネオフロンEFEP樹脂(株式会社ダイキン工業の製品名)の屈折率が1.38で、ネオフロンCPT樹脂の屈折率は1.39で、ポリ弗化ビニル樹脂PVFの屈折率は1.46で、三弗化塩化エチレン樹脂PCTFEの屈折率は1.42で、エチレン・四弗化エチレン共重合樹脂ETFEの屈折率は1.40で、四弗化エチレン・六弗化プロピレン共重合樹脂FEPの屈折率は1.34で、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂PFAの屈折率が1.34である。これらのフッ素樹脂によって、優れた透明性が得られるが、フッ素樹脂のポリマーは、前記した結晶性のPET樹脂、PP樹脂、PA6樹脂などのポリマーに比べると高価で、大面積の透明基材としては不向きである。
ここで前記した安価な透明性の非晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。アクリル樹脂PMMAは、大気雰囲気で熱分解が220℃から始まり、300℃まで進み、400℃を超える温度まで緩やかに進む。次に、ポリカーボネート樹脂PCは、大気雰囲気で420℃から熱分解が開始し、660℃で完了する。さらに、ポリ塩化ビニル樹脂PVCは、大気雰囲気で3段階に分かれて熱分解する。第一段階の250℃から350℃までの熱分解と、第二段階の350℃〜480℃までの熱分解で、有毒の塩化水素HClが乖離して気化し、また、消防法の第4類危険物第1石油類に属する引火点が21℃未満のベンゼンが生成される。第三段階の480℃〜650℃の熱分解で、ポリマーの燃焼によって二酸化炭素ガスと水蒸気が生成され、また、猛毒の一酸化炭素ガスが生成さる。
また、前記した安価な透明性の結晶性樹脂の大気雰囲気での熱分解を説明する。ポリプロピレン樹脂PPは、熱分解が240℃から始まり400℃まで進み、430℃まで緩やかに進む。さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂PETは、300℃〜500℃での熱分解と500℃〜650℃での二段階に分かれて熱分解する。
従って、これら透明性の合成樹脂は、還元雰囲気の200℃前後の温度では熱分解が始まらず、多くの透明性の合成樹脂は、還元雰囲気の350℃前後の温度でも熱分解が始まらない。従って、ニッケル微粒子の集まりで接合した透明性の合成樹脂の基材は透明性を持つ。
表面反射率と全光線透過率とを説明する。光が基材に入射する際に、空気と基材との屈折率の差に応じて表面反射が生じる。従って、ガラスでも表面反射によるロスが発生し、全光線透過率は100%にならない。ちなみに、厚さが2mmのフロートガラスでは、可視光線の波長領域において全光線透過率は約90%である。基材に垂直に入射した光の表面における表面反射率Rは、基材の屈折率nと空気の屈折率mとからなる数式1によって算出される。また、全光線透過率Tは表面反射率Rからなる数式2によって算出される。
次に、光の散乱を説明する。可視光線が粒子の集まりに照射された際の光の散乱は、数式3に示すレイリー散乱式が適応できる。数式3におけるSは散乱の比率を意味する散乱係数で、λは可視光線の波長で、Dは粒子径で、mは粒子の屈折率で、Πは円周率である。従って、散乱係数Sの大きさは、可視光の波長λに対する粒子径Dの比率D/λの4乗に依存し、また、粒子径Dの2乗と、屈折率mに依存する。ニッケル微粒子の大きさDが、可視光の波長λより1桁小さく、比率D/λは1/10以下で、また、粒子径Dも十分に小さい。さらに、ニッケルの屈折率mが0.4以上で2.4以下である。従って、ニッケル微粒子の集まりにおける散乱係数Sは極めて小さく、ニッケル微粒子の集まりは高い透明性を示す。
本発明における金属微粒子の集まりによって複数の基材を接合する第四特徴手段は、第一特徴手段に記載した混合液を製造する第一の原料に関わり、該第一の原料は、
第一特徴手段に記載した混合液を製造する第一の原料は、第一特徴手段に記載した金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である。
第一特徴手段に記載した混合液を製造する第一の原料は、第一特徴手段に記載した金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である。
つまり、本特徴手段における無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気の180℃〜220℃の比較的低い温度で熱分解が完了して金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに、10重量%に近い割合で分散する。このため、無機金属化合物からなる錯体は、第一特徴手段の混合液を製造する際の原料になる。また、錯体が還元雰囲気で熱分解する温度は、12段落で説明した合成樹脂は熱分解が始まらないため、金属微粒子の集まりで接合した合成樹脂の性質は変わらない。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180℃〜220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタ―ノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、沸点が無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する液体の有機化合物が存在する。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、混合液を製造する際の安価な原料になる。
従って、無機金属化合物からなる錯体のメタノール分散液に、前記した有機化合物のいずれか一種類を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180℃〜220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する金属錯体である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタ―ノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、沸点が無機金属化合物からなる錯体の熱分解温度より低い第三の性質を兼備する液体の有機化合物が存在する。このような有機化合物は、いずれも汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、混合液を製造する際の安価な原料になる。
従って、無機金属化合物からなる錯体のメタノール分散液に、前記した有機化合物のいずれか一種類を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
本発明における金属微粒子の集まりによって複数の基材を接合する第五特徴手段は、第一特徴手段に記載した混合液を製造する第二の原料に関わり、該第二の原料は、
第一特徴手段に記載した混合液を製造する第二の原料は、第一特徴手段に記載した金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である。
第一特徴手段に記載した混合液を製造する第二の原料は、第一特徴手段に記載した金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、第一特徴手段に記載したアルコールがメタノールであり、第一特徴手段に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物である。
つまり、本特徴手段におけるオクチル酸金属化合物は、還元雰囲気の340℃で熱分解が完了し金属を析出する。また、最も汎用的なアルコールであるメタノールに対し、10重量%に近い濃度で分散する。このため、オクチル酸金属化合物は、第一特徴手段の混合液を製造する際の原料になる。なお、12段落で説明した多くの合成樹脂が窒素雰囲気の340℃では熱分解せず、窒素雰囲気で熱処理することで、金属の微粒子の集まりで接合した合成樹脂の性質は変わらない。
すなわち、オクチル酸C7H15COOHのカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物は、金属イオンが最も大きいイオンであり、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つオクチル酸金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、オクチル酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。さらに、オクチル酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。このようなオクチル酸金属化合物として、ニッケルを析出するオクチル酸ニッケルNi(C7H15COO)2、銅を析出するオクチル酸銅Cu(C7H15COO)2、アルミニウムを析出するオクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3など、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合した様々なオクチル酸金属化合物が存在する。
さらに、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるオクチル酸を、強アルカリと反応させるとオクチル酸アルカリ金属化合物が生成され、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属との化合物であるオクチル酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、16段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱分解温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、沸点がオクチル酸金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する液体の有機化合物が存在する。このような有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、第二の懸濁液を製造する際の安価な原料になる。
従って、オクチル酸金属化合物のメタノール分散液に、有機化合物のいずれか一種類を混合すると、オクチル酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って、混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品であるオクチル酸金属化合物と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
すなわち、オクチル酸C7H15COOHのカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物は、金属イオンが最も大きいイオンであり、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つオクチル酸金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、オクチル酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。さらに、オクチル酸が気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。このようなオクチル酸金属化合物として、ニッケルを析出するオクチル酸ニッケルNi(C7H15COO)2、銅を析出するオクチル酸銅Cu(C7H15COO)2、アルミニウムを析出するオクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3など、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合した様々なオクチル酸金属化合物が存在する。
さらに、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるオクチル酸を、強アルカリと反応させるとオクチル酸アルカリ金属化合物が生成され、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属との化合物であるオクチル酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、16段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱分解温度が高いが、錯体より安価な金属化合物である。
また、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度がメタ―ノールの粘度より高い第二の性質と、沸点がオクチル酸金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する液体の有機化合物が存在する。このような有機化合物は、汎用的な工業用薬品である。このため、このような有機化合物は、第二の懸濁液を製造する際の安価な原料になる。
従って、オクチル酸金属化合物のメタノール分散液に、有機化合物のいずれか一種類を混合すると、オクチル酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合って、混合液が大量に製造される。これによって、安価な工業用薬品であるオクチル酸金属化合物と、最も汎用的なアルコールであるメタノールと、汎用的な工業用薬品である有機化合物とを原料として用い、大量の混合液が安価な費用で製造される。
本実施形態は、低い温度で金属化合物が熱分解して金属を析出する金属化合物の実施形態であり、このような金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する金属錯体が適切であることを説明する。すなわち、金属錯体は無機物の分子量が小さいため、還元雰囲気での熱処理温度が相対的に低い温度で熱分解する。この還元雰囲気での金属錯体の熱分解では、12段落で説明した合成樹脂の熱分解が開始されず、金属微粒子の集まりで接合した合成樹脂の性質は変わらない。ここでは、金属をニッケルとし、ニッケル化合物について説明する。
最初に、アルコールに分散するニッケル化合物を説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルは水に溶け、ニッケルイオンが溶解し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できない。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはアルコールに分散しない。このため、こうした分子量が低い無機ニッケル化合物は、ニッケルを析出する原料として適切でない。
次に、熱分解でニッケルを析出するニッケル化合物を説明する。ニッケル化合物からニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、ニッケル化合物を昇温するだけで、ニッケル化合物が熱分解してニッケルが析出する。さらに、ニッケル化合物の熱分解温度が低ければ、耐熱性が低い合成樹脂を金属微粒子の集まりで接合できる。無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置するニッケルイオンに配位結合したニッケル錯イオンを有するニッケル錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気で熱分解する温度は、分子量がより大きい有機物が配位子を形成する有機ニッケル錯体が大気雰囲気で熱分解する温度より低い。このため、このような無機ニッケル錯体は、有機ニッケル錯体より相対的に高価な物質ではあるが、より低い温度でニッケルを析出するため、廉価な合成樹脂をニッケル微粒子の集まりで接合できる。なお、有機ニッケル錯体として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物がある。
すなわち、無機ニッケル錯体を構成する分子の中でニッケルイオンが最も大きい。ちなみに、ニッケル原子の共有結合半径は101pmであり、一方、窒素原子の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の共有結合半径は66pmである。このため、無機ニッケル錯体の分子構造においては、配位子がニッケルイオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理で、最初に配位結合部が分断され、ニッケルと無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後にニッケルが析出する。
このような無機ニッケル錯体の中で、アンモニアNH3が配位子となってニッケルイオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−が、ないしは、塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となってニッケルイオンに配位結合するクロロ錯体は、他のニッケル錯体に比べて相対的に合成が容易であるため、相対的に安価な製造費用で製造できる。また、こうした無機ニッケル錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位子の分子量が小さいため、200℃より低い温度で配位結合部位が最初に分断され、この後、200℃前後の温度でニッケルが析出する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くまで分散する。このようなニッケル錯イオンとして、例えば、ヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH3)6]2+があり、ニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物[Ni(NH3)6]Cl2やヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH3)6](NO3)2がある。
最初に、アルコールに分散するニッケル化合物を説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルは水に溶け、ニッケルイオンが溶解し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できない。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはアルコールに分散しない。このため、こうした分子量が低い無機ニッケル化合物は、ニッケルを析出する原料として適切でない。
次に、熱分解でニッケルを析出するニッケル化合物を説明する。ニッケル化合物からニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な処理による化学反応に熱分解反応がある。つまり、ニッケル化合物を昇温するだけで、ニッケル化合物が熱分解してニッケルが析出する。さらに、ニッケル化合物の熱分解温度が低ければ、耐熱性が低い合成樹脂を金属微粒子の集まりで接合できる。無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、分子構造の中央に位置するニッケルイオンに配位結合したニッケル錯イオンを有するニッケル錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気で熱分解する温度は、分子量がより大きい有機物が配位子を形成する有機ニッケル錯体が大気雰囲気で熱分解する温度より低い。このため、このような無機ニッケル錯体は、有機ニッケル錯体より相対的に高価な物質ではあるが、より低い温度でニッケルを析出するため、廉価な合成樹脂をニッケル微粒子の集まりで接合できる。なお、有機ニッケル錯体として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物がある。
すなわち、無機ニッケル錯体を構成する分子の中でニッケルイオンが最も大きい。ちなみに、ニッケル原子の共有結合半径は101pmであり、一方、窒素原子の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の共有結合半径は66pmである。このため、無機ニッケル錯体の分子構造においては、配位子がニッケルイオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理で、最初に配位結合部が分断され、ニッケルと無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後にニッケルが析出する。
このような無機ニッケル錯体の中で、アンモニアNH3が配位子となってニッケルイオンに配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−が、ないしは、塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となってニッケルイオンに配位結合するクロロ錯体は、他のニッケル錯体に比べて相対的に合成が容易であるため、相対的に安価な製造費用で製造できる。また、こうした無機ニッケル錯体は、アンモニアガスや水素ガスなどの還元性雰囲気で熱処理すると、配位子の分子量が小さいため、200℃より低い温度で配位結合部位が最初に分断され、この後、200℃前後の温度でニッケルが析出する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くまで分散する。このようなニッケル錯イオンとして、例えば、ヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH3)6]2+があり、ニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物[Ni(NH3)6]Cl2やヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH3)6](NO3)2がある。
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールより粘度が高く、第三にニッケル錯体とオクチル酸ニッケルのどちらか一方の熱分解温度より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する液体の有機化合物である。
つまり、有機化合物の沸点が、ニッケル錯体が熱分解する200℃前後より低ければ、有機化合物はニッケル錯体のアルコール分散液と共に混合液を構成する。有機化合物の沸点が、オクチル酸ニッケルが熱分解する340℃より低ければ、オクチル酸ニッケルのアルコール分散液と共に混合液を構成する。従って、有機化合物はこれら混合液における粘度を調整する調整剤になる。こうした3つの性質を持つ有機化合物は、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物に存在する。
つまり、有機化合物の沸点が、ニッケル錯体が熱分解する200℃前後より低ければ、有機化合物はニッケル錯体のアルコール分散液と共に混合液を構成する。有機化合物の沸点が、オクチル酸ニッケルが熱分解する340℃より低ければ、オクチル酸ニッケルのアルコール分散液と共に混合液を構成する。従って、有機化合物はこれら混合液における粘度を調整する調整剤になる。こうした3つの性質を持つ有機化合物は、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する有機化合物に存在する。
カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸とのエステル類と、不飽和カルボン酸とのエステル類と、芳香族カルボン酸とのエステル類との3種類のカルボン酸エステル類がある。
飽和カルボン酸の中で分子量が小さい常温で液体の酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールの4倍の粘性を持ち、沸点が182℃である酢酸メチルシクロヘキシルがある。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が小さい酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が200℃より低い酢酸エステルがある。
また、飽和脂肪酸の中で分子量が大きく常温で液体のエステルに、ミリスチン酸エステルとパルミチン酸エステルがある。ミリスチン酸メチルはメタノールに混和し、メタノールの4.7倍の粘度を持ち、沸点が323℃である。また、パルミチン酸エチルは、メタノールに混和し、メタノールの粘度の6.7倍で、沸点が342℃である。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が大きく、かつ、パルミチン酸エチルより分子量が小さい飽和脂肪酸エステル類に、メタノールに溶解ないしは混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が340℃より低いエステル類が存在する。
いっぽう、不飽和カルボン酸であるオレイン酸メチルは、粘度がメタノールの8.2倍で沸点が351℃である。また、ステアリン酸メチルは、粘度がメタノールの7.5倍で、沸点が356℃である。従って、不飽和カルボン酸からなるエステル類には、沸点が340℃より低いエステルは存在しない。
飽和カルボン酸の中で分子量が小さい常温で液体の酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールの4倍の粘性を持ち、沸点が182℃である酢酸メチルシクロヘキシルがある。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が小さい酢酸エステル類に、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が200℃より低い酢酸エステルがある。
また、飽和脂肪酸の中で分子量が大きく常温で液体のエステルに、ミリスチン酸エステルとパルミチン酸エステルがある。ミリスチン酸メチルはメタノールに混和し、メタノールの4.7倍の粘度を持ち、沸点が323℃である。また、パルミチン酸エチルは、メタノールに混和し、メタノールの粘度の6.7倍で、沸点が342℃である。従って、酢酸メチルシクロヘキシルより分子量が大きく、かつ、パルミチン酸エチルより分子量が小さい飽和脂肪酸エステル類に、メタノールに溶解ないしは混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が340℃より低いエステル類が存在する。
いっぽう、不飽和カルボン酸であるオレイン酸メチルは、粘度がメタノールの8.2倍で沸点が351℃である。また、ステアリン酸メチルは、粘度がメタノールの7.5倍で、沸点が356℃である。従って、不飽和カルボン酸からなるエステル類には、沸点が340℃より低いエステルは存在しない。
グリコール類に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールがある。
エチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの36倍と高く、沸点が197℃の液状モノマーである。ジエチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの61倍と高く、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの82倍と高く、沸点が188℃の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの127倍と高く、沸点が232℃の液状モノマーである。トリプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの97倍と高く、沸点が265℃の液状モノマーである。
エチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの36倍と高く、沸点が197℃の液状モノマーである。ジエチレングリコールは、メタノールに溶解し、粘度がメタノールの61倍と高く、沸点が244℃の液状モノマーである。プロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの82倍と高く、沸点が188℃の液状モノマーである。ジプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの127倍と高く、沸点が232℃の液状モノマーである。トリプロピレングリコールは、メタノールと混和し、粘度がメタノールの97倍と高く、沸点が265℃の液状モノマーである。
グリコールエーテル類は、エチレングリコール系エーテルと、プロピレングリコール系エーテルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールの末端の水素をアルキル基で置換したジアルキルグリコールエーテルがある。
エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3倍で沸点が125℃のメチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が142℃のイソプロピルグリコール、粘度がメタノールの6倍で沸点が171℃のブチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が161℃のイソブチルグリコール、粘度がメタノールの4倍で沸点が159℃のアリルグリコール、粘度がメタノールの6.6倍で沸点が194℃のメチルジグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が208℃のヘキシルグリコールが存在する。
エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が340℃より低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの12.7倍で沸点が249℃のメチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.3倍で沸点が207℃のイソプロピルジグリコール、粘度がメタノールの11倍で沸点が231℃のブチルジグリコール、粘度がメタノールの13.7倍で沸点が271℃のブチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が220℃のイソブチルジグリコール、粘度がメタノールの14.6倍で沸点が259℃ヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの12.9倍で沸点が229℃の2−エチルヘキシルグリコール、粘度がメタノールの17.6倍で沸点が272℃の2−エチルヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの52倍で沸点が245℃のフェニルグリコール、粘度がメタノールの20倍で沸点が256℃のベンジルグリコール、粘度がメタノールの33倍で沸点が302℃のベンジルジグリコールが存在する。
次に、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3.2倍で沸点が121℃のメチルプロピレングリコール、粘度がメタノールの2.2倍で沸点が146℃のメチルプロピレングリコールアセテート、粘度がメタノールの4.7倍で沸点が150℃のプロピルプロピレングリコール、粘度がメタノールの5.8倍で沸点が170℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの6.9倍で沸点が187℃のメチルプロピレンジグリコールが存在する。
プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が340℃より低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの18.3倍で沸点が212℃のプロピルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの12.5倍で沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの39.3倍で沸点が243℃のフェニルプロピレングリコール、粘度がメタノールの13.9倍で沸点が274℃のブチルプロピレントリグリコールが存在する。
最後に、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が85℃のジメチルグリコール、粘度がメタノールの3.4倍で沸点が162℃のジメチルジグリコール、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が171℃のジメチルポロピレンジグリコール、粘度がメタノールの21倍で沸点が176℃のメチルエチルジグリコール、粘度がメタノールの2.4倍で沸点が189℃のジエチルジグリコールが存在する。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類の中で、21段落に説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在する。
エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3倍で沸点が125℃のメチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が142℃のイソプロピルグリコール、粘度がメタノールの6倍で沸点が171℃のブチルグリコール、粘度がメタノールの5倍で沸点が161℃のイソブチルグリコール、粘度がメタノールの4倍で沸点が159℃のアリルグリコール、粘度がメタノールの6.6倍で沸点が194℃のメチルジグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が208℃のヘキシルグリコールが存在する。
エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が340℃より低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの12.7倍で沸点が249℃のメチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.3倍で沸点が207℃のイソプロピルジグリコール、粘度がメタノールの11倍で沸点が231℃のブチルジグリコール、粘度がメタノールの13.7倍で沸点が271℃のブチルトリグリコール、粘度がメタノールの8.8倍で沸点が220℃のイソブチルジグリコール、粘度がメタノールの14.6倍で沸点が259℃ヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの12.9倍で沸点が229℃の2−エチルヘキシルグリコール、粘度がメタノールの17.6倍で沸点が272℃の2−エチルヘキシルジグリコール、粘度がメタノールの52倍で沸点が245℃のフェニルグリコール、粘度がメタノールの20倍で沸点が256℃のベンジルグリコール、粘度がメタノールの33倍で沸点が302℃のベンジルジグリコールが存在する。
次に、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの3.2倍で沸点が121℃のメチルプロピレングリコール、粘度がメタノールの2.2倍で沸点が146℃のメチルプロピレングリコールアセテート、粘度がメタノールの4.7倍で沸点が150℃のプロピルプロピレングリコール、粘度がメタノールの5.8倍で沸点が170℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの6.9倍で沸点が187℃のメチルプロピレンジグリコールが存在する。
プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が340℃より低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの18.3倍で沸点が212℃のプロピルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの12.5倍で沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコール、粘度がメタノールの39.3倍で沸点が243℃のフェニルプロピレングリコール、粘度がメタノールの13.9倍で沸点が274℃のブチルプロピレントリグリコールが存在する。
最後に、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解し、ニッケル錯体の熱分解温度より沸点が低い液体のグリコールエーテル類に、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が85℃のジメチルグリコール、粘度がメタノールの3.4倍で沸点が162℃のジメチルジグリコール、粘度がメタノールの1.9倍で沸点が171℃のジメチルポロピレンジグリコール、粘度がメタノールの21倍で沸点が176℃のメチルエチルジグリコール、粘度がメタノールの2.4倍で沸点が189℃のジエチルジグリコールが存在する。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類の中で、21段落に説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在する。
本実施例では、ガラス板にPMMA樹脂フィルムをニッケル微粒子の集まりで接合する。
ガラス板は、ホウケイ酸ガラスからなる厚みが0.1mmの板を10cm×10cmに切り出した。ガラス板の表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさより小さく、平坦度に優れている。ホウケイ酸ガラスは、線膨張率が7.2×10−6/℃と小さく耐熱衝撃性に優れ、軟化点が736℃で、歪点が529℃であり、比重が2.51g/cm3で、屈折率が1.525で全光線透過率が92%の透明ガラスである。従って、529℃より低温での熱処理では歪が発生しない。また、PMMA樹脂フィルムは厚みが50μmからなり、これを5cm×10cmに切り出した。PMMA樹脂フィルムは、線膨張率が7×10−5/℃で、ガラス転移温度が96℃で、比重が1.14g/cm3で、屈折率が1.49で全光線透過率が93%の透明フィルムで、表面粗さはニッケル微粒子と同程度で平坦度に優れている。また、ニッケルの原料は、20段落で説明したヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH3)6](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。なお、ニッケルの線膨張率は12.8×10−6/℃で、ホウケイ酸ガラスとPMMA樹脂フォルムとの中間の熱膨張率を持つため、接合体に温度差が生じたときに、ニッケル微粒子の集まりは、熱膨張収縮の緩衝材になる。さらに、有機化合物して、23段落で説明した沸点が197℃で、融点が−12.6℃で、粘度が20℃で21mPa秒であるエチレングリコールを用いた。
最初に、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩の38g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液を、ガラス板の中央部に5cm×10cmで塗布し、この塗膜に重なるようにPMMA樹脂フィルムを重ね合わせ、5MPaの圧縮荷重を加え、アンモニア雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で210℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料1として作成した。
この後、試料1における塗膜を形成した複数の部位の光学性能を、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計(株式会社島津製作所の製品UV−1280)に依る可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での光線透過率は、90〜92%と高い値を持った。また、ヘーズメータ(スガ試験株式会社のヘーズメータHZ−V3)によるヘイズ値は2%未満であった。この結果、塗膜を形成した部位は高い透明性を持った。
次に、試料1における透明フィルムのガラス板への接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、300gの荷重に耐えた。このため、透明フィルムは、一定の結合力でガラス板に接合されていた。
さらに、試料1における混合液が塗布された切断面を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、導電性の被膜を形成せずに直接表面が観察できる。
最初に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。切断面は、40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子が、ガラス板と透明フィルムとの間隙を、4個の微粒子が積み重なって積層していた。
次に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められず、微粒子は単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、切断面からの特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はニッケル原子のみで構成されていたため、粒状微粒子は、ニッケルの粒状微粒子である。
以上の結果から、ガラス板と透明フィルムとの間隙に、ニッケル微粒子の集まりが析出し、ニッケル微粒子の集まりがガラス板と透明フィルムとに接合するとともに、ニッケル微粒子が互いに金属結合し、金属結合したニッケル微粒子によって、ガラス板と透明フィルムとが接合された。なお、ガラス板の表面粗さはニッケル微粒子の大きさより小さく、透明フィルムの表面粗さはニッケル微粒子の大きさと同程度である。このような平坦度に優れた基材を接合する際に、表面粗さに基づくアンカー効果は発揮しない。従って、本実施例におけるガラス板と透明フィルムとの接合力は、ニッケル微粒子の集まりとガラス板との接合力と、ニッケル微粒子の集まりと透明フィルムとの接合力と、ニッケル微粒子同士の金属結合力とに基づく。図1に、試料1の断面を拡大して模式的に図示した。ガラス板1とPMMA樹脂フィルム2との間隙に、金属結合したニッケル微粒子の集まり3が析出し、ニッケル微粒子3の集まりが、ガラス板1と透明フィルム2とを接合した。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、混合液を電極のパターンとしてガラス板に印刷し、この上に透明フィルムを重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体はタッチパネルに用いる透明導電層になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、ガラス板と透明フィルムとに限定されない。さらに、無機化合物からなる錯体は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はニッケル微粒子に限定されない。
ガラス板は、ホウケイ酸ガラスからなる厚みが0.1mmの板を10cm×10cmに切り出した。ガラス板の表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさより小さく、平坦度に優れている。ホウケイ酸ガラスは、線膨張率が7.2×10−6/℃と小さく耐熱衝撃性に優れ、軟化点が736℃で、歪点が529℃であり、比重が2.51g/cm3で、屈折率が1.525で全光線透過率が92%の透明ガラスである。従って、529℃より低温での熱処理では歪が発生しない。また、PMMA樹脂フィルムは厚みが50μmからなり、これを5cm×10cmに切り出した。PMMA樹脂フィルムは、線膨張率が7×10−5/℃で、ガラス転移温度が96℃で、比重が1.14g/cm3で、屈折率が1.49で全光線透過率が93%の透明フィルムで、表面粗さはニッケル微粒子と同程度で平坦度に優れている。また、ニッケルの原料は、20段落で説明したヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩[Ni(NH3)6](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。なお、ニッケルの線膨張率は12.8×10−6/℃で、ホウケイ酸ガラスとPMMA樹脂フォルムとの中間の熱膨張率を持つため、接合体に温度差が生じたときに、ニッケル微粒子の集まりは、熱膨張収縮の緩衝材になる。さらに、有機化合物して、23段落で説明した沸点が197℃で、融点が−12.6℃で、粘度が20℃で21mPa秒であるエチレングリコールを用いた。
最初に、ヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩の38g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液を、ガラス板の中央部に5cm×10cmで塗布し、この塗膜に重なるようにPMMA樹脂フィルムを重ね合わせ、5MPaの圧縮荷重を加え、アンモニア雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で210℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料1として作成した。
この後、試料1における塗膜を形成した複数の部位の光学性能を、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計(株式会社島津製作所の製品UV−1280)に依る可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での光線透過率は、90〜92%と高い値を持った。また、ヘーズメータ(スガ試験株式会社のヘーズメータHZ−V3)によるヘイズ値は2%未満であった。この結果、塗膜を形成した部位は高い透明性を持った。
次に、試料1における透明フィルムのガラス板への接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、300gの荷重に耐えた。このため、透明フィルムは、一定の結合力でガラス板に接合されていた。
さらに、試料1における混合液が塗布された切断面を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、導電性の被膜を形成せずに直接表面が観察できる。
最初に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。切断面は、40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子が、ガラス板と透明フィルムとの間隙を、4個の微粒子が積み重なって積層していた。
次に、切断面からの反射電子線について、900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められず、微粒子は単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、切断面からの特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。粒状微粒子はニッケル原子のみで構成されていたため、粒状微粒子は、ニッケルの粒状微粒子である。
以上の結果から、ガラス板と透明フィルムとの間隙に、ニッケル微粒子の集まりが析出し、ニッケル微粒子の集まりがガラス板と透明フィルムとに接合するとともに、ニッケル微粒子が互いに金属結合し、金属結合したニッケル微粒子によって、ガラス板と透明フィルムとが接合された。なお、ガラス板の表面粗さはニッケル微粒子の大きさより小さく、透明フィルムの表面粗さはニッケル微粒子の大きさと同程度である。このような平坦度に優れた基材を接合する際に、表面粗さに基づくアンカー効果は発揮しない。従って、本実施例におけるガラス板と透明フィルムとの接合力は、ニッケル微粒子の集まりとガラス板との接合力と、ニッケル微粒子の集まりと透明フィルムとの接合力と、ニッケル微粒子同士の金属結合力とに基づく。図1に、試料1の断面を拡大して模式的に図示した。ガラス板1とPMMA樹脂フィルム2との間隙に、金属結合したニッケル微粒子の集まり3が析出し、ニッケル微粒子3の集まりが、ガラス板1と透明フィルム2とを接合した。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、混合液を電極のパターンとしてガラス板に印刷し、この上に透明フィルムを重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体はタッチパネルに用いる透明導電層になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、ガラス板と透明フィルムとに限定されない。さらに、無機化合物からなる錯体は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はニッケル微粒子に限定されない。
本実施例は、ポリイミドフィルムに銅箔を銅微粒子の集まりによって接合する。
ポリイミドフィルムは、厚みが25μmからなるフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出した。なお、ポリイミドフィルムは、引張強度が355MPaで、耐屈曲回数は2万回以上であり、表面粗さは30nm〜70nmで平坦度に優れ、密度が1.42g/cm3で、線膨張係数が24×10−6/℃で、400℃の耐熱性を持つ。銅箔は電解銅からなり、厚みが2μmからなる銅箔を5cm×10cmに切り出した。なお、銅箔の引張強度は310MPaで、表面粗さは1.5μmで、線膨張係数は16.8×10−6/℃である。また、銅微粒子の原料は、アンミン錯体であるテトラアンミン銅(II)硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例1と同様にエチレングリコールを用いた。
最初に、テトラアンミン銅(II)硝酸塩の33g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液を、ポリイミドフィルムの中央部に5cm×10cmで塗布し、この塗膜に重なるように銅箔を重ね合わせ、5MPaの圧縮荷重を加え、アンモニア雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で200℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料2として作成した。
次に、試料2における銅箔のポリイミドフィルムへの接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、500gの荷重に耐えた。このため、銅箔は、一定の結合力でポリイミドフィルムに接合されていた。
さらに、試料2における混合液が塗布された切断面を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、ポリイミドフィルムと銅箔との間隙に、4個の銅微粒子が積み重なって析出していた。これによって、銅微粒子の集まりがポリイミドフィルムと銅箔とに接合するとともに、銅微粒子が互いに金属結合し、金属結合した銅微粒子によって、ポリイミドフィルムと銅箔とが接合された。なお、ポリイミドフィルムの表面粗さは銅微粒子の大きさと同程度である。また、銅箔の表面粗さは、銅微粒子の大きさの30倍である。従って、ポリイミドフィルと銅箔との接合力は、銅微粒子の集まりとポリイミドフィルムとの接合力と、金属結合した銅微粒子の集まりの銅箔表面でのアンカー効果と、銅微粒子同士の金属結合力とに基づく。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、銅箔を電極のパターンとして形成し、この電極パターンに混合液を塗布し、この銅箔をポリイミドフィルムに重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体はフレキシブル回路基板になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、ポリイミドフィルムと銅箔とに限定されない。さらに、無機化合物からなる錯体は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子は銅微粒子に限定されない。
ポリイミドフィルムは、厚みが25μmからなるフィルムを10cm×10cmの大きさに切り出した。なお、ポリイミドフィルムは、引張強度が355MPaで、耐屈曲回数は2万回以上であり、表面粗さは30nm〜70nmで平坦度に優れ、密度が1.42g/cm3で、線膨張係数が24×10−6/℃で、400℃の耐熱性を持つ。銅箔は電解銅からなり、厚みが2μmからなる銅箔を5cm×10cmに切り出した。なお、銅箔の引張強度は310MPaで、表面粗さは1.5μmで、線膨張係数は16.8×10−6/℃である。また、銅微粒子の原料は、アンミン錯体であるテトラアンミン銅(II)硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物は、実施例1と同様にエチレングリコールを用いた。
最初に、テトラアンミン銅(II)硝酸塩の33g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液を、ポリイミドフィルムの中央部に5cm×10cmで塗布し、この塗膜に重なるように銅箔を重ね合わせ、5MPaの圧縮荷重を加え、アンモニア雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で200℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料2として作成した。
次に、試料2における銅箔のポリイミドフィルムへの接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、500gの荷重に耐えた。このため、銅箔は、一定の結合力でポリイミドフィルムに接合されていた。
さらに、試料2における混合液が塗布された切断面を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、ポリイミドフィルムと銅箔との間隙に、4個の銅微粒子が積み重なって析出していた。これによって、銅微粒子の集まりがポリイミドフィルムと銅箔とに接合するとともに、銅微粒子が互いに金属結合し、金属結合した銅微粒子によって、ポリイミドフィルムと銅箔とが接合された。なお、ポリイミドフィルムの表面粗さは銅微粒子の大きさと同程度である。また、銅箔の表面粗さは、銅微粒子の大きさの30倍である。従って、ポリイミドフィルと銅箔との接合力は、銅微粒子の集まりとポリイミドフィルムとの接合力と、金属結合した銅微粒子の集まりの銅箔表面でのアンカー効果と、銅微粒子同士の金属結合力とに基づく。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、銅箔を電極のパターンとして形成し、この電極パターンに混合液を塗布し、この銅箔をポリイミドフィルムに重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体はフレキシブル回路基板になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、ポリイミドフィルムと銅箔とに限定されない。さらに、無機化合物からなる錯体は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子は銅微粒子に限定されない。
本実施例は、セラミック基板に銅箔を熱伝導に優れたアルミニウム微粒子の集まりで接合する。セラミック基板は、99.6%が熱伝導に優れたアルミナAl2O3からなり、大きさが2×2×0.01インチで、表面粗さはRa0.03μmである。また、電解銅からなる厚みが2μmの銅箔を2×2インチに切り出した。アルミニウム微粒子の原料として、オクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3(例えば、ホープ製薬株式会社の製品)を用いた。
最初に、オクチル酸アルミニウムの60g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液をセラミック基板の中央部に2×1インチの大きさに塗布し、この塗膜に重なるように銅箔を重ね合わせ、10MPaの圧縮荷重を加え、窒素雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料3として作成した。
次に、試料3における銅箔のセラミック基板への接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、800gの荷重に耐えた。このため、銅箔は、一定の結合力でセラミック基板に接合されていた。
さらに、試料3における混合液が塗布された切断面を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、セラミック基板と銅箔との間隙に、4個のアルミニウム微粒子が積み重なって析出していた。これによって、アルミニウム微粒子の集まりがセラミック基板と銅箔とに接合するとともに、アルミニウム微粒子が互いに金属結合し、金属結合したアルミニウム微粒子によって、セラミック基板と銅箔とが接合された。なお、セラミック基板の表面粗さは3μmである。また、銅箔の表面粗さは、銅微粒子の大きさの30倍である。従って、セラミック基板と銅箔との接合力は、金属結合したアルミニウム微粒子の集まりのセラミック基板表面と銅箔表面とのアンカー効果と、アルミニウム微粒子同士の金属結合力とに基づく。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、銅箔を電極のパターンとして形成し、この電極パターンに混合液を塗布し、この銅箔をセラミック基板に重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体は回路基板になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、セラミック基板と銅箔とに限定されない。さらに、オクチル酸金属化合物は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はアルミニウム微粒子に限定されない。
最初に、オクチル酸アルミニウムの60g(0.13モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。次に、混合液をセラミック基板の中央部に2×1インチの大きさに塗布し、この塗膜に重なるように銅箔を重ね合わせ、10MPaの圧縮荷重を加え、窒素雰囲気の熱処理炉に配置し、20℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温して熱処理し、5枚の試料を試料3として作成した。
次に、試料3における銅箔のセラミック基板への接合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、800gの荷重に耐えた。このため、銅箔は、一定の結合力でセラミック基板に接合されていた。
さらに、試料3における混合液が塗布された切断面を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、セラミック基板と銅箔との間隙に、4個のアルミニウム微粒子が積み重なって析出していた。これによって、アルミニウム微粒子の集まりがセラミック基板と銅箔とに接合するとともに、アルミニウム微粒子が互いに金属結合し、金属結合したアルミニウム微粒子によって、セラミック基板と銅箔とが接合された。なお、セラミック基板の表面粗さは3μmである。また、銅箔の表面粗さは、銅微粒子の大きさの30倍である。従って、セラミック基板と銅箔との接合力は、金属結合したアルミニウム微粒子の集まりのセラミック基板表面と銅箔表面とのアンカー効果と、アルミニウム微粒子同士の金属結合力とに基づく。
なお、本実施例は、複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、銅箔を電極のパターンとして形成し、この電極パターンに混合液を塗布し、この銅箔をセラミック基板に重ね合わせて積層し、この積層体を熱処理すれば、積層体は回路基板になる。このように、混合液の塗膜ないしは印刷膜は、様々な形状に塗布ないしは印刷することができる。また、混合液を塗布ないしは印刷できる基材の材質は、セラミック基板と銅箔とに限定されない。さらに、オクチル酸金属化合物は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はアルミニウム微粒子に限定されない。
本実施例は、透光性のアルミナからなるパイプの内側に、石英ガラスからなるパイプをニッケル微粒子の集まりで接合する。透光性のアルミナは、光の透過を妨げる気孔が極めて少なく、アルミナ純度が99.9%を占める多結晶体であり、全光線透過率が96%に及ぶ。アルミナのパイプは、内径が10mmで外径が12mmで長さが20mmである。石英ガラスのパイプは内径が8mmで外径が10mmで長さが20mmである。なお、アルミナのパイプの内径は、10mmに対し+138μm〜+95μmの公差に入るように加工し、石英ガラスのパイプの外径は、10mmに対し−95μm〜−138μmの公差に入るように加工した。このようなアルミナのパイプの内側に、隙間バメ状態で石英ガラスのパイプを挿入し、5組の複合パイプを作成した。ニッケル微粒子の原料は、オクチル酸ニッケルNi(C7H15COO)2(例えば、和光純薬工業株式会社の製品)を用いた。また、有機化合物はエチレングリコールを用いた。
最初に、オクチル酸ニッケルの173g(0.5モルに相当する)が、10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。この後、混合液を65℃に昇温してメタノールを気化させ、オクチル酸ニッケルの微細結晶がエチレングリコールに均一に分散した懸濁液を作成した。次に、真空容器に5組の複合パイプをセットし、容器内の圧力を1×10−3気圧まで真空引きし、さらに、懸濁液を容器内に供給し、複合パイプの間隙に懸濁液を浸透させた。この後、容器を大気圧に戻し、容器から複合パイプを取り出し、メタノールの入った容器で複合パイプを洗浄した。この後、複合パイプを窒素雰囲気の熱処理炉に入れ、20℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温して熱処理し、5組の試料を試料4として作成した。
この後、試料4における複合パイプの光学性能を、実施例1と同様に、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計に依る可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での光線透過率は、91〜93%と高い値を持った。また、ヘーズメータによるヘイズ値は2%未満であった。この結果、複合パイプは高い透明性を持った。
次に、試料4における複合パイプの接合力を、内側の石英パイプの上部に加えた荷重で測定した。1kgの荷重に耐えたため、一定の結合力で2種類のパイプが接合された。
さらに、複合パイプにおける嵌合部を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、複合パイプの嵌合部は、ニッケル微粒子が積み重なって充填されていた。従って、金属結合したニッケル微粒子が、複合パイプを接合した。なお、アルミナパイプの表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさより小さい。また、石英ガラスのパイプの表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさと同程度である。従って、複合パイプの接合力は、ニッケル微粒子の集まりが、アルミナパイプと石英ガラスパイプとの表面に接合した接合力と、金属結合したニッケル微粒子の金属結合力に基づく。図2に、複合パイプの嵌合部における接合状態を模式的に図示した。アルミナのパイプ4と石英ガラスのパイプ5の嵌合部に、ニッケル微粒子6の集まりが析出し、ニッケル微粒子6の集まりがアルミナのパイプ4の表面と、石英ガラス5の表面とに接合し、金属結合したニッケル微粒子6の集まりが金属結合力を発揮して2つのパイプを接合した。
なお、本実施例は、緩嵌合状態にある複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、緩嵌合状態にあるパイプとシャフトとを金属微粒子の集まりで接合することができる。つまり、緩嵌合状態で組み付けられた基材の間隙は、2つのパイプを組み付けた基材でなくても、真空含浸で容易に懸濁液を間隙に浸透させることができる。また、懸濁液が間隙に浸透できる基材の材質は、セラミックとガラスとに限定されない。さらに、オクチル酸金属化合物は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はニッケル微粒子に限定されない。
最初に、オクチル酸ニッケルの173g(0.5モルに相当する)が、10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にエチレングリコールが10重量%になるように混合して混合液を作成した。この後、混合液を65℃に昇温してメタノールを気化させ、オクチル酸ニッケルの微細結晶がエチレングリコールに均一に分散した懸濁液を作成した。次に、真空容器に5組の複合パイプをセットし、容器内の圧力を1×10−3気圧まで真空引きし、さらに、懸濁液を容器内に供給し、複合パイプの間隙に懸濁液を浸透させた。この後、容器を大気圧に戻し、容器から複合パイプを取り出し、メタノールの入った容器で複合パイプを洗浄した。この後、複合パイプを窒素雰囲気の熱処理炉に入れ、20℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温して熱処理し、5組の試料を試料4として作成した。
この後、試料4における複合パイプの光学性能を、実施例1と同様に、光線透過率とヘイズ値とから調べた。分光光度計に依る可視光線の波長領域(380nm〜750nm)での光線透過率は、91〜93%と高い値を持った。また、ヘーズメータによるヘイズ値は2%未満であった。この結果、複合パイプは高い透明性を持った。
次に、試料4における複合パイプの接合力を、内側の石英パイプの上部に加えた荷重で測定した。1kgの荷重に耐えたため、一定の結合力で2種類のパイプが接合された。
さらに、複合パイプにおける嵌合部を、実施例1と同様に、電子顕微鏡で観察した。この結果、複合パイプの嵌合部は、ニッケル微粒子が積み重なって充填されていた。従って、金属結合したニッケル微粒子が、複合パイプを接合した。なお、アルミナパイプの表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさより小さい。また、石英ガラスのパイプの表面粗さは、ニッケル微粒子の大きさと同程度である。従って、複合パイプの接合力は、ニッケル微粒子の集まりが、アルミナパイプと石英ガラスパイプとの表面に接合した接合力と、金属結合したニッケル微粒子の金属結合力に基づく。図2に、複合パイプの嵌合部における接合状態を模式的に図示した。アルミナのパイプ4と石英ガラスのパイプ5の嵌合部に、ニッケル微粒子6の集まりが析出し、ニッケル微粒子6の集まりがアルミナのパイプ4の表面と、石英ガラス5の表面とに接合し、金属結合したニッケル微粒子6の集まりが金属結合力を発揮して2つのパイプを接合した。
なお、本実施例は、緩嵌合状態にある複数の基材を金属微粒子の集まりで接合する一例に過ぎない。例えば、緩嵌合状態にあるパイプとシャフトとを金属微粒子の集まりで接合することができる。つまり、緩嵌合状態で組み付けられた基材の間隙は、2つのパイプを組み付けた基材でなくても、真空含浸で容易に懸濁液を間隙に浸透させることができる。また、懸濁液が間隙に浸透できる基材の材質は、セラミックとガラスとに限定されない。さらに、オクチル酸金属化合物は、様々な金属で構成されるため、金属微粒子はニッケル微粒子に限定されない。
以上に、4つの事例をもって実施例を説明したが、本発明は、下記の特徴を持つ汎用性の高い接合技術であるため、実施例はこれら4つの事例に限られない。
つまり、本発明では、積層された複数の基材、ないしは、緩嵌合された複数の基材を、還元雰囲気で金属化合物が熱分解する温度に昇温する。この際、混合液が塗布された基材の表面から、ないしは、懸濁液が真空含浸された間隙を構成する基材の表面から吸着物質が気化して清浄化され、この清浄化され活性状態になった基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが直接接合するとともに、活性状態の金属微粒子は接触部位で金属結合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を強固に接合する。従って、混合液が塗布される基材の材質と大きさと形状とは、ないしは、懸濁液が真空含浸される基材の材質と大きさと形状との制約はない。さらに、基材の表面が平坦であっても、基材の表面に活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。
なお、還元雰囲気の200℃程度の温度では、耐熱性が低い合成樹脂は熱分解が始まらない。このため、合成樹脂同士、ないしは、合成樹脂と金属とを、ないしは、合成樹脂とセラミックとを接合することができる。いっぽう、基材が金属ないしは合金で構成される場合は、基材の表面に金属ないしは合金の酸化物のごく薄い被膜が形成され、この酸化物の被膜は金属化合物の熱分解温度では気化しない。しかし、金属微粒子が基材の表面粗さより1桁以上小さいため、基材の表面の凹凸に金属微粒子が入り込んで、金属結合した金属微粒子の集まりが、アンカー効果を発揮するとともに金属結合に基づく結合力によって、複数の基材を接合する。
さらに、無機金属化合物からなる錯体は、および、オクチル酸金属化合物は、様々な金属原子で構成されるため、複数の基材を接合する金属微粒子の材質の制約はない。このため、接合する基材の用途に応じて、金属微粒子の材質が選択できる。
以上に説明したように、本発明は汎用性の高い接合技術であるため、本発明に係わる実施例は、前記した4つの実施例に制限されない。
つまり、本発明では、積層された複数の基材、ないしは、緩嵌合された複数の基材を、還元雰囲気で金属化合物が熱分解する温度に昇温する。この際、混合液が塗布された基材の表面から、ないしは、懸濁液が真空含浸された間隙を構成する基材の表面から吸着物質が気化して清浄化され、この清浄化され活性状態になった基材の表面に、活性状態の金属微粒子の集まりが直接接合するとともに、活性状態の金属微粒子は接触部位で金属結合する。これによって、金属結合した金属微粒子の集まりが、複数の基材の表面同士を強固に接合する。従って、混合液が塗布される基材の材質と大きさと形状とは、ないしは、懸濁液が真空含浸される基材の材質と大きさと形状との制約はない。さらに、基材の表面が平坦であっても、基材の表面に活性状態の金属微粒子の集まりが強固に接合する。
なお、還元雰囲気の200℃程度の温度では、耐熱性が低い合成樹脂は熱分解が始まらない。このため、合成樹脂同士、ないしは、合成樹脂と金属とを、ないしは、合成樹脂とセラミックとを接合することができる。いっぽう、基材が金属ないしは合金で構成される場合は、基材の表面に金属ないしは合金の酸化物のごく薄い被膜が形成され、この酸化物の被膜は金属化合物の熱分解温度では気化しない。しかし、金属微粒子が基材の表面粗さより1桁以上小さいため、基材の表面の凹凸に金属微粒子が入り込んで、金属結合した金属微粒子の集まりが、アンカー効果を発揮するとともに金属結合に基づく結合力によって、複数の基材を接合する。
さらに、無機金属化合物からなる錯体は、および、オクチル酸金属化合物は、様々な金属原子で構成されるため、複数の基材を接合する金属微粒子の材質の制約はない。このため、接合する基材の用途に応じて、金属微粒子の材質が選択できる。
以上に説明したように、本発明は汎用性の高い接合技術であるため、本発明に係わる実施例は、前記した4つの実施例に制限されない。
ガラス板 1 PMMA樹脂フィルム 2 ニッケル微粒子 3 アルミナのパイプ 4 石英ガラスのパイプ 5 ニッケル微粒子 6
Claims (5)
- 金属微粒子の集まりによる複数の基材の接合は、
熱分解で金属を析出する金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、粘度が前記アルコールの粘度より高い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する液体の有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成する、この後、複数の基材のうち一つの基材を除く基材の表面に前記混合液を塗布し、該複数の基材の一つずつを前記混合液の塗装面に重ねて積層し、該積層体に一定の圧縮荷重を加え、還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、前記混合液の塗膜が形成された基材の表面は、吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記塗膜が形成された部位において、前記複数の基材の表面同士を接合することを特徴とする、金属微粒子の集まりによる複数の基材の接合。 - 請求項1に記載した複数の基材が、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材であり、該緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の接合は、
請求項1に記載した混合液からアルコールを気化させ、請求項1に記載した混合液を、金属化合物の微細結晶が液体の有機化合物に分散した懸濁液とし、請求項1に記載した複数の基材として、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材を用い、該複数の基材の間隙に前記懸濁液が浸透するように、該複数の基材を真空ポンプに繋がった容器内に固定する、この後、前記容器を密閉して前記真空ポンプを稼働させ、該容器内の圧力を前記有機化合物の蒸気圧の近くまで低下させ、前記複数の基材の吸着物質を気化させる、さらに、該容器に前記懸濁液を供給し、該懸濁液を前記複数の基材の間隙に浸透させる、この後、前記容器内の圧力を大気圧に戻し、該容器から前記複数の基材を取り出し、該複数の基材の表面に付着した前記懸濁液をアルコールで取り除く、この後、該複数の基材を還元雰囲気で前記金属化合物の熱分解温度まで昇温する、これによって、該複数の基材の間隙を形成する基材の表面は、残留した吸着物質が気化して清浄化され、該清浄化された基材の表面に、前記金属化合物の熱分解で金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子の集まりが前記基材の表面に直接接合するとともに、該金属微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記複数の基材の間隙において、該複数の基材の表面同士を接合することを特徴とする、緩嵌合状態で組み付けられた複数の基材の接合。 - 請求項1に記載した基材が透明性の基材であり、請求項1に記載した金属微粒子がニッケル微粒子であり、該ニッケル微粒子の集まりで前記透明性の基材同士を接合することを特徴とする、請求項1に記載した金属微粒子の集まりによる基材同士の接合。
- 請求項1に記載した混合液を製造する第一の原料は、請求項1に記載した金属化合物が、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体であり、請求項1に記載したアルコールがメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した混合液を製造する第一の原料。
- 請求項1に記載した混合液を製造する第二の原料は、請求項1に記載した金属化合物がオクチル酸金属化合物であり、請求項1に記載したアルコールがメタノールであり、請求項1に記載した有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類に属するいずれか一種類の有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した混合液を製造する第二の原料。
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