以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
本開示において「シート」には「フィルム」と呼ばれる物品も包含される。
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
本開示において「透明」とは、可視光領域(400nm〜800nm)において、グラフィックシート又はその構成要素が、光の平均透過率が約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上である領域を有することを意味する。グラフィックシートの全体が透明であってもよく、一部又は複数の部分が透明であってもよい。
本開示の一実施態様のグラフィックシートは、基材に対して貼り剥がしが可能なグラフィックシートであって、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有するベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の第2面上に配置された接着層とを含む。
接着層の基材に対する初期接着力は20℃で0.5N/25mm以上であり、常態接着力は20℃で8N/25mm以下である。このような初期及び常態接着力を有することにより、貼り付け時にグラフィックシートを基材上に十分な接着力で固定することができ、一方で、一定期間貼り付けた後でも糊残り及び基材破壊を生じさせずに基材からグラフィックシートを容易に除去することができる。接着力は、長さ150mm、幅25mmに切断されたグラフィックシートを目的の基材に20℃の環境下でJIS Z 0237に準拠して貼り付け、引張試験機を用いて温度20℃、速度300mm/分で90度剥離を行ったときの値であり、初期接着力は貼り付けてから20分後、常態接着力は貼り付けてから24時間経過後の接着力をいう。
いくつかの実施態様では、基材に対し、初期接着力が、20℃で0.5N/25mm以上、1N/25mm以上、又は2N/25mm以上である。初期接着力が上記範囲であれば、貼り付け時において、グラフィックシートを基材に対して剥離させることなく十分な保持力で接着固定することができる。
いくつかの実施態様では、基材に対し、常態接着力が、20℃で8N/25mm以下、6N/25mm以下、又は4N/25mm以下である。常態接着力が上記範囲であれば、例えば基材として石膏ボード、ポリ塩化ビニルシートなどが貼られた壁に対しても、基材に傷をつけることなく、グラフィックシートのみを剥がすことができる。なお、プライマー処理された石膏ボードの場合は、グラフィックシートのみか、グラフィックシートとそれに付着したプライマー層を剥がすことができるため、石膏ボード自体を痛めることがない。
基材がプライマー処理された石膏ボードの場合は、接着層の初期接着力が20℃で0.5N/25mm以上であり、常態接着力が20℃で7N/25mm以下であってもよい。基材がポリ塩化ビニルシートである場合は、接着層の初期接着力が20℃で0.5N/25mm以上であり、常態接着力が20℃で5N/25mm以下であってもよい。
一実施態様では、接着層は凹凸を有する微細構造化表面を有し、接着層の微細構造化表面は空気を外部に排出する又は接着層に取り込む通路又は開口を有している。この実施態様では、グラフィックシートの基材への貼り付け時に接着層表面と基材表面に挟まれた空気は、これらの通路又は開口を通じて外部に排出されるか接着層に吸収されて、グラフィックシートと基材の界面における観察可能な気泡の混入が抑制又は防止される。この構造により、貼り付け時に基材とグラフィックシート間に残る気泡を容易に取り除くことができるため、熟練者でなくても、気泡残りに起因する外観不良の発生のない良好な外観のグラフィックシートを貼り付け施工を容易に行うことができる。
図1に、本開示の一実施態様によるグラフィックシート10の模式的な断面図を示す。グラフィックシート10は、第1面(図1では上面)及び第1面に対向する第2面(図1では下面)を有するベースフィルム層12と、ベースフィルム層12の第2面上に配置された接着層14とを含む。図1に示すようにベースフィルム層12と接着層14とは直接接触していてもよく、接合層を介して接着されていてもよい。ベースフィルム層12は、接着層14との接触面にプライマー処理、コロナ処理などの表面処理を有してもよい。図1では、任意の構成要素として接着層14の上(図1では下面)にライナー16が配置されている。
ベースフィルム層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、フッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などの共重合体又はこれらの混合物を含むフィルムが使用できる。
強度、耐衝撃性などの観点から、ベースフィルム層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体又はポリカーボネートを含むフィルムが有利に使用できる。ベースフィルム層は、印刷インクのレセプタ層として、及び/又は外部からの穿刺、衝撃などから基材表面を保護する保護層として機能することもできる。ベースフィルム層を印刷インクのレセプタ層として機能させる場合、ベースフィルム層がポリ塩化ビニル又はポリウレタンを含むフィルムであることが、印刷適性、耐溶剤性(例えば耐アルコール性)などの点で有利である。ポリ塩化ビニルを含むフィルム層はグラフィックシートを難燃性とする上でも有利である。
ベースフィルム層の厚さは様々であってよいが、グラフィックシートの強度及び取扱い性の観点から、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。ベースフィルム層が平坦でない場合のベースフィルム層の厚さとは、ベースフィルム層のうち最も薄い部分の厚さを意味する。例えば、ベースフィルム層はエンボス加工されていてもよい。エンボス加工の深さは、一般にベースフィルム層の厚さ未満の範囲で、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約20μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
ベースフィルム層は透明であっても不透明であってもよく、着色されていてもよい。一実施態様ではベースフィルム層は白色に着色されている。この実施態様は、ベースフィルム層の上に直接又は間接的に配置される印刷層によって作られる画像の鮮明さ、発色などの点で有利である。
一実施態様ではベースフィルム層は中実である。この実施態様は、ベースフィルム表面に通気孔のようなベースフィルム材料の不連続部がないことから、グラフィックシートの美観の点で有利である。
図1に示す接着層は、任意の構成要素として、凹凸を有する微細構造化表面を有する。接着層の微細構造化表面の通路及び開口の形状及び寸法、並びに接着層の内部構造は、グラフィックシートと基材の界面における気泡の混入を抑制又は防止することができるものであればよい。
例えば、図1に示す実施態様では、接着層16の微細構造化表面17が、接着層の外縁に延在する溝状の連通路18を有している。グラフィックシートの貼り付け時に接着層14と基材表面に挟まれた空気は連通路18を通って接着層の外縁まで達し、そこから外部に排出される。
接着層の外縁に延在する連通路は、接着層の微細構造化表面を、接着面を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部(溝部)とから構成することにより形成することができる。このような微細構造化表面を接着層に形成する方法の一例を以下説明するがこれに限られない。
所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、グラフィックシートの接着層を形成するための接着剤を塗布及び必要に応じて乾燥及び/又は放射線照射して接着層を形成する。これにより、接着層のライナーと接する面(これがグラフィックシートの接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着層に所定の凹凸構造(ポジ構造)を有する微細構造化表面を形成する。微細構造化表面は、基材に接着層の凸部が接触した際に、接着層の凹部により溝状の連通路が形成されるように予め設計される。
連通路は、グラフィックシートを基材に接着する際に気泡残りを防止可能であるように配置される。例えば、一定形状の溝を規則的パターンで微細構造化表面に配置して規則的パターンの連通路を形成してもよく、不定形の溝を配置し不規則なパターンの連通路を形成してもよい。複数の連通路が互いに略平行に配置されるように形成される場合、連通路の間隔は、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約2mm以下、約1mm以下、又は約500μm以下とすることができる。
連通路の幅(接着面に垂直な方向から見たときの最大幅)は、一般に約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
連通路の深さ(接着面に垂直な方向で測定したときの接着面から連通路の底までの距離)は、一般に約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。一実施態様では、連通路の底も接着剤表面を有する、すなわち接着層が連通路によって分断されていない。
連通路の形状は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、連通路の形状を、グラフィックシートを基材に接着したときに、接着面に垂直な方向の連通路の断面が三角形、略矩形(台形を含む)、略半円形、略半楕円形などとなるように選択することができる。
接着層の形成には、様々な種類の接着剤、例えばアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を用いることができる。一実施態様では、接着層はアクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、又はゴム系接着剤を含む。
接着層がアクリル系接着剤を含むことが有利である。アクリル系接着剤を含む接着層はグラフィックシートに優れた耐久性及び耐変色性を付与することができる。アクリル系接着剤は変性が容易であることから、基材の材料の種類及び表面状態、例えば表面粗さ、プライマー処理の有無などに合わせて接着特性を調節することができる。アクリル系接着剤は粘着性アクリル系ポリマーを含む。いくつかの実施態様では、アクリル系接着剤は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上のモノマーを含むモノマー組成物の重合物である粘着性アクリル系ポリマーを含む。
アルキル(メタ)アクリレートは粘着性アクリル系ポリマーの主成分を構成する。いくつかの実施態様では、アルキル(メタ)アクリレートの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約50質量部以上、約70質量部以上、又は約80質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約98質量部以下である。本開示における「重合性成分」とは、以下説明するラジカル重合により重合可能な成分を意味する。「重合性成分」が質量部に関して用いられるときは、これらの成分の合計質量を意味する。
水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び(メタ)アクリルアミドは、比較的高い極性を有する官能基を分子内に有する極性モノマーである。極性モノマーは、粘着性アクリル系ポリマーに高い凝集力を付与する、及び/又は粘着性アクリル系ポリマーと基材表面との相互作用を高めることが知られている。本開示では、接着層に必要な接着力を付与しつつ易除去性を実現するため、極性モノマーの配合量は一般的な接着用途と比較して少ない。いくつかの実施態様では、極性モノマーの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。一実施態様では、モノマー組成物はカルボキシル基含有モノマーを含まない。別の実施態様では極性モノマーは(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドを含む。これらの実施態様では、接着層に必要な凝集力を確保しつつ、粘着性アクリル系ポリマーと基材表面との相互作用を小さくして接着層の易除去性を向上させることができる。
モノマー組成物が、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリレートを含むモノマー組成物を重合すると、紫外線架橋性の粘着性アクリル系ポリマーを得ることができる。紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリレートとして、紫外線照射により活性化されて、重合体分子内の他の部分との架橋を形成するか、他の重合体分子との間で架橋を形成することが可能な部位を分子内に有する(メタ)アクリレートが使用できる。例えば、紫外線架橋性部位として、紫外線照射により励起されて重合体分子内の他の部分又は他の重合体分子から水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を利用することができ、そのような構造として、例えば、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o−ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3−ケトクマリン構造、2−エチルアントラキノン構造、カンファーキノン構造などが挙げられる。
上記構造の中でも、透明性、反応性などの点でベンゾフェノン構造が有利である。そのようなベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレートとして、例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノンなどが挙げられる。紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
いくつかの実施態様では、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリレートの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約0.05質量部以上、約0.1質量部以上、又は約0.2質量部以上、約5質量部以下、約3質量部以下、又は約2質量部以下である。
粘着性アクリル系ポリマーは、上記モノマー組成物を、通常のラジカル重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などを用いて重合することにより得ることができる。重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。重合開始剤の使用量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下とすることができる。
いくつかの実施態様では、粘着性アクリル系ポリマーの重量平均分子量は約20万以上、又は約40万以上、約100万以下、又は約70万以下である。粘着性アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により標準ポリスチレンを用いて決定される。
粘着性アクリル系ポリマーは架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)などの二塩基酸のビスアジリジン誘導体などが使用できる。架橋剤として、イソシアネート化合物、特にヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。架橋剤の添加量は、架橋剤の種類にもよるが、アクリル系接着剤100質量部に対して、一般に約0.1質量部以上、又は約0.5質量部以上、約10質量部以下、又は約5質量部以下とすることができる。架橋剤をこの範囲で調整し、架橋密度を上げることで、貼り付け後もより安定した接着力を維持することができる。
粘着性アクリル系ポリマーが紫外線架橋性部位を有する場合、紫外線架橋性部位を介して粘着性アクリル系ポリマーが架橋されていてもよい。紫外線架橋性部位を介して架橋された粘着性ポリマーは比較的高密度に架橋されるため、易除去性に優れたより硬い接着層を得ることができる。この架橋は粘着性アクリル系ポリマーを含むアクリル系接着剤に紫外線を照射して行うことができる。アクリル系接着剤を用いて接着層を形成した後に紫外線を照射してもよい。
粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、約−60℃以上、又は約−50℃以上、約25℃以下、約0℃以下、又は約−10℃以下とすることができる。粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度を上記範囲とすることにより、接着層の接着力を調節して接着層に必要な接着力と易除去性の両方を付与することができる。粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着性アクリル系ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)より求めることができる。
(Tg
1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度
Tg
2:成分2のホモポリマーのガラス転移温度
・・・
Tg
n:成分nのホモポリマーのガラス転移温度
X
1:重合の際に添加した成分1のモノマーの質量分率
X
2:重合の際に添加した成分2のモノマーの質量分率
・・・
X
n:重合の際に添加した成分nのモノマーの質量分率
X
1+X
2+・・・+X
n=1)
アクリル系接着剤は、本発明の効果を損なわない限り、粘着付与剤、弾性微小球、粘着性ポリマー微小球、結晶性ポリマー、無機粉末、紫外線吸収剤などの添加剤を含んでもよい。
別の実施態様では、接着層を連続気泡フォームで形成することにより、微細構造化表面に開口が形成された接着層を得ることができる。例えば、図2に示す実施態様では、接着層24は連続気泡フォームで形成されており、気泡が微細構造化表面の開口又は接着層内部の空洞を構成する。図2では接着層24の微細構造化表面27は複数の開口28を有し、接着層はその内部に開口と連通した空洞29を含む。グラフィックシートの貼り付け時に接着層24と基材表面に挟まれた空気は、開口28を通って空洞29の内部に保持されるか、あるいは空洞29が接着層の外縁まで連通している場合はそこから外部に排出される。このようにして、グラフィックシートと基材の界面に観察可能な気泡が混入することが抑制又は防止される。接着層として連続気泡フォームを使用する場合は、気泡の大きさ及び数密度、接着層の密度、厚み、樹脂組成、製造条件等を調整することで、粘着性を調整することができる。
連続気泡フォームの気泡の平均直径は、一般に約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。気泡の平均直径を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時に接着層表面と基材表面に挟まれた空気をこれらの気泡内に保持することができると共に、外部からの水などの侵入による接着力の低下を抑制することができる。また、気泡の平均直径を上記範囲とすることにより、ベースフィルム層を印刷インクのレセプタ層としてその上に溶剤インクを用いて印刷したときに、ベースフィルム層を透過した溶剤が連続気泡フォームに侵入することによる接着力の低下を抑制することができる。
連続気泡フォームの微細構造化表面の開口の平均直径は、一般に約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約300μm以下、約250μm以下、又は約200μm以下とすることができる。開口の平均直径を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時に接着層表面と基材表面に挟まれた空気を速やかに接着層内部の空洞に移動させることができる。
連続気泡フォームの微細構造化表面における開口の面積は、接着層の面積を基準として、一般に約1%以上、約5%以上、又は約10%以上、約30%以下、約25%以下、又は約20%以下とすることができる。開口の面積を上記範囲とすることにより、グラフィックシートの基材への貼り付け時に接着層表面と基材表面に挟まれた空気を速やかに接着層内部の空洞に移動させつつ、十分な接着力でグラフィックシートを基材上に固定することができる。
連続気泡フォームの気泡含有量は、連続気泡フォームの体積を基準として、一般に約2体積%以上、約5体積%以上、又は約10体積%以上、約30体積%以下、約25体積%以下、又は約20体積%以下とすることができる。気泡含有量を上記範囲とすることにより、連続気泡フォームに必要な接着力と強度を付与することができる。
連続気泡フォームの密度は、一般に約0.2g/cm3以上、約0.3g/cm3以上、又は約0.5g/cm3以上、約1.5g/cm3以下、約0.9g/cm3以下、又は約0.7g/cm3以下とすることができる。密度を上記範囲とすることにより、連続気泡フォームに必要な接着力と強度を付与することができる。
連続気泡フォームの硬さは特に限定されないが、基材に対する貼り剥がしの際にグラフィックシートに生じる変形によりクラック等が生じない程度の柔軟性を連続気泡フォームが有することが望ましい。
連続気泡フォームが、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有してもよい。球状セルの平均直径は約5μm以上、約300μm以下であってよく、貫通孔の平均直径が約0.1μm以上、約5μm未満であってよい。いくつかの実施態様では、球状セルの平均直径は、約8μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、又は約20μm以下である。いくつかの実施態様では、貫通孔の平均直径は、約0.5μm以上、又は約1μm以上、約4μm以下、又は約3μm以下である。
連続気泡フォームは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂を含む組成物を発泡させることにより形成することができる。組成物の発泡には、化学反応を利用して組成物中に気体を発生させる化学発泡法、機械的に空気、窒素などのガスを組成物に混入させる機械発泡法、組成物に低沸点溶剤を含ませて気化させる溶剤気化法、組成物に含ませた溶剤を抽出等により除去して空隙を形成する溶剤除去法、常温常圧で気体である二酸化炭素などを超臨界状態で組成物を含浸させてから圧力を大気圧に戻す超臨界法などの方法を使用することができる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂として、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコーンなどを使用することができる。一実施態様では連続気泡フォームは紫外線硬化性樹脂を含む組成物を発泡させて得られた紫外線硬化物である。
連続気泡フォームは、アクリル樹脂を含む連続気泡アクリル系フォームであってもよい。アクリル系フォームはグラフィックシートに優れた耐久性及び耐変色性を付与することができる。アクリル樹脂は変性が容易であることから、基材の材料の種類及び表面状態、例えば表面粗さ、プライマー処理の有無などに合わせてフォームの接着特性を調節することができる。アクリル系フォームを形成する方法の一例を以下説明するがこれに限られない。
アクリル系フォームは、アクリル系フォーム前駆体組成物に気泡形成用ガスを撹拌混合し、組成物中に気泡を生じさせた後に重合反応を行って硬化することにより形成することができる。一実施態様ではアクリル系フォーム前駆体は非水系組成物である。この実施態様では、エマルション組成物を用いた重合反応のように重合物の水中分散のために必要な極性基(例えばカルボキシル基)を重合物に導入しなくてもよいため、グラフィックシートを基材上に固定するのに必要な接着力を有しかつ易除去性に優れた接着層を得ることができる。別の実施態様ではアクリル系フォーム前駆体は紫外線硬化性組成物である。紫外線硬化性組成物を用いて得られたアクリル系フォームは比較的硬いため、易除去性に優れた接着層を得ることができる。
アクリル系フォーム前駆体組成物は、前駆体組成物が安定な気泡を含有することができる程度の粘度にまで(メタ)アクリレートを含むモノマー組成物を重合した部分重合物を含む。(メタ)アクリレートとして、一般に炭素原子数が12以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートなどを主成分として使用することができる。上記アルキル(メタ)アクリレートと重合可能な他のモノマーとして、(メタ)アクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミドなどの極性モノマーを用いることができる。これらの極性モノマーはアクリル系フォームに必要な接着力を付与しつつ易除去性を実現する量で用いられる。いくつかの実施態様では、極性モノマーの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。一実施態様では、モノマー組成物はカルボキシル基含有モノマーを含まない。この実施態様では、アクリル系フォームと基材表面との相互作用を低くして接着層の易除去性を向上させることができる。
モノマー組成物の部分重合は、光重合開始剤の存在下に、紫外線などを用いた放射線重合により行うことができる。光重合開始剤として、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−クロロチオキサントンなどを用いることができる。光重合開始剤は、一般に、モノマー組成物の重合性成分100質量部に対して約0.01質量部以上、約5質量部以下の量で使用される。部分重合は熱重合開始剤を用いた熱重合により行うこともできる。
部分重合物に必要に応じて他の成分をさらに添加することによりアクリル系フォーム前駆体組成物を得ることができる。アクリル系フォーム前駆体組成物は、気泡形成用ガスと攪拌混合したときに、前駆体組成物中に安定な気泡を形成するのに適当な粘度を有する。いくつかの実施態様では、前駆体組成物の粘度は、攪拌混合装置での操作温度(例えば25℃)で約500mPa・s以上、約1000mPa・s以上、又は約2000mPa・s以上、約100,000mPa・s以下、約80,000mPa・s以下、又は約50,000mPa・s以下である。上記粘度範囲とすることにより、撹拌混合装置に過度の負荷を与えることなく十分な気泡量で気泡を形成することができる。
アクリル系フォーム前駆体組成物は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートのような多官能性(メタ)アクリレートを架橋剤として含んでもよい。アクリル系フォーム前駆体組成物に、さらに重合させてフォームを硬化するための光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤及びその量は上記の部分重合の場合と同様である。
アクリル系フォーム前駆体組成物は界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の添加により、気泡を安定に保ち、かつ得られるフォームを低密度化することができる。界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の配合量は、一般にアクリル系フォーム前駆体組成物100質量部に対して約1質量部以上、約5質量部以下とすることができる。
アクリル系フォーム前駆体組成物は、硬化後のフォームの機械特性を高め、加工性を改善し、又は製品単価を下げることなどを目的として、充填剤を含んでもよい。充填剤として、補強用糸、織布及び不織布、ガラスビーズ、ポリマー中空微小球、ポリマービーズ、顔料などが挙げられる。
アクリル系フォームの製造方法としては、硬化前のアクリル系フォーム前駆体組成物中において発泡剤を発泡させ、その後に、それを硬化させることによる化学発泡法、又は、硬化前のアクリル系フォーム前駆体組成物に気泡形成用ガスを分散混入し、それを硬化させることによる機械発泡法を使用することができる。例えば、機械発泡法を使用する場合、気泡形成用ガスとしては、アクリル系フォーム前駆体組成物と混合されたときに、前駆体組成物に対して不活性な気体が使用される。気泡形成性ガスとして、アルゴン、窒素などの不活性ガスを用いることができ、安価であることから窒素ガスを用いることが有利である。気泡形成用ガスの使用量は、一般にアクリル系フォーム前駆体組成物の体積を基準として約5体積%以上、又は約10体積%以上、約30体積%以下、又は約20体積%以下とすることができる。
機械発泡法において、アクリル系フォームは、例えば、加振原理を用いた攪拌混合装置を用いて製造することができる。このような攪拌混合装置を用いることにより、組成物の温度上昇を招くことがなく、細かく均一に分散した気泡を得ることができる。加振原理を用いた攪拌混合装置は、内部に流体を流通する流通路を設けたケーシングと、このケーシング内に配置されており、ケーシングの軸線方向に振動可能な攪拌用の羽根を具備している。アクリル系フォーム前駆体組成物はポンプを用いた圧送により、一方で気泡形成用ガスはコンプレッサーを用いた圧送又はガスボンベの圧力によりケーシング内に導入され、装置内で攪拌混合された後に、気泡を含んだ前駆体組成物が出口から排出される。ケーシング内では攪拌体の往復振動により、流体が羽根に衝突して攪拌混合される。
攪拌混合装置により形成された気泡を含むアクリル系フォーム前駆体組成物を、ベースフィルム層又は他のライナーの上に塗布し、重合反応により硬化することで、アクリル系フォームを形成することができる。重合反応は、紫外線などの放射線照射により行うことができる。空気は紫外線重合を阻害する傾向があるので、重合を窒素、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気中で行うことが有利である。ライナーとして、ポリマーフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。ベースフィルム層又はライナーが紫外線透過性の透明フィルムであれば、ベースフィルム層又はライナーの側からも紫外線照射を行うことができるため、より均一なアクリル系フォームを得ることができる。ライナー上に形成されたアクリル系フォームは、接合層をアクリル系フォーム上又はベースフィルム層に設けた後、ベースフィルム層に転写することができる。
さらに別の実施態様では、接着層を織布又は不織布で形成することにより、織布又は不織布に含まれる複数の繊維から構成された微細構造化表面を有する接着層を得ることができる。例えば、図3に示す実施態様では、接着層34は不織布で形成されており、不織布に含まれる繊維の間の空隙が微細構造化表面の開口又は接着層内部の空洞を画定する。グラフィックシートの貼り付け時に接着層34と基材表面に挟まれた空気は、開口を通って空隙の内部に保持されるか、あるいは空隙が接着層の外縁まで連通している場合はそこから外部に排出される。このようにして、グラフィックシートと基材の界面に観察可能な気泡が混入することが抑制又は防止される。
繊維の平均繊維径は、一般に約0.5μm以上、約1μm以上、又は約3μm以上、約100μm以下、約50μm以下、又は約25μm以下とすることができる。平均繊維径を上記範囲とすることにより、十分な強度の接着層を形成することができる。
織布及び不織布の坪量(1m2当たりの質量)は、一般に約1g/m2以上、約5g/m2以上、又は約10g/m2以上、約500g/m2以下、約300g/m2以下、又は約200g/m2以下とすることができる。坪量を上記範囲とすることにより、接着層に十分な強度及び寸法安定性を付与しつつ、接着層と基材表面に挟まれた空気の接着層内への吸収又は外部への排出を達成することができる。
接着層を形成する織布及び不織布は接着性を示す材料で作られる。いくつかの実施態様では織布及び不織布は、アクリル系ポリマー繊維を含むアクリル系織布及び不織布である。これらの織布及び不織布は接合層を介してベースフィルム層と一体化することができる。
アクリル系ポリマー繊維のガラス転移温度(Tg)は、例えば、約−60℃以上、又は約−50℃以上、約25℃以下、約0℃以下、又は約−10℃以下とすることができる。アクリル系ポリマー繊維のガラス転移温度を上記範囲とすることにより、織布及び不織布に必要な接着力と易除去性の両方を付与することができる。アクリル系ポリマー繊維のガラス転移温度は、既に説明した粘着性アクリル系ポリマーと同様にFOXの式より求めることができる。
アクリル系織布は、織機を用いて縦糸(ワープ)を横糸(フィリング)と交差させて形成することができる。アクリル系織布の織り方は、一般に平織り、綾織り、太綾織り、又は朱子織りから選択することができる。アクリル系織布を作成するのに用いられるアクリル系ポリマー繊維は、一般に、ロービング(撚りのないアクリル系ポリマー繊維の1以上のストランドの集合体)又はヤーンと呼ばれる連続トウの形状で入手できる。アクリル系織布の有する織構造は、接着層に高い寸法安定性を付与し、結果としてグラフィックシートの寸法安定性に寄与する。アクリル系織布は、強度、寸法安定性などに優れるため、平織りであることが有利である。
アクリル系不織布は、例えば溶融させたアクリル系ポリマーを複数のオリフィスから流し出してフィラメントを形成する工程と、フィラメントを繊維まで細くする工程と、繊維を不織布ウェブとしてスピンドル上に回収してアクリル系不織布を形成する工程とを含むメルトブローン法により製造することができる。一実施態様では、カレンダー加工、加熱、又は加圧によって不織布ウェブを圧縮してもよい。別の実施態様では、アクリル系不織布にバインダーを添加してもよい。これらの実施態様ではアクリル系不織布の寸法安定性を高めることができる。
接着層の厚さは、一般に約0.5μm以上、約1μm以上、又は約5μm以上、約500μm以下、約400μm以下、又は約300μm以下とすることができる。接着層の厚さとは、接着層のうち最も薄い部分の厚さを意味する。
接着層の接着面(接着層が基材と接触して接着に寄与する領域)の面積は、接着層の面積の約1%以上、約5%以上、又は約10%以上、100%未満、約99%以下、約95%以下、又は約90%以下とすることができる。
一実施態様では、グラフィックシートの厚みに沿った方向から見たときに、接着層がベースフィルム層と実質的に同じ形状及び面積である、又は同じ形状及び面積である。すなわち、接着層がベースフィルム層の実質的に全面に延在する、又は全面に延在する。いくつかの実施態様では、接着層の面積は、ベースフィルム層の面積の約3%以上、約5%以上、又は約10%以上、100%以下、約95%以下、又は約90%以下である。
接着層は着色されていてもよい。一実施態様では接着層は白色に着色されている。この実施態様は、グラフィックシートに印刷層を設けたときに画像の鮮明さ、発色などの点で有利である。
図1〜3に示すように、グラフィックシートは、ベースフィルム層とは反対側の接着層の表面にライナー16、26、36を有していてもよい。ライナーとして、例えば、クラフト紙などの紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのポリマー;このようなポリマーで被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーン、フルオロカーボンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、一般に約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下とすることができる。
接着層の微細構造化表面が接着層の外縁に延在する連通路を有する場合、ライナーはその剥離面に接着層の微細構造化表面に対応する凹凸構造を有してもよい。この実施態様において、ライナーは、接着層の微細構造化表面を形成する際に使用されたものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
ベースフィルム層の上に他の層、例えば印刷層、金属層などの装飾層、表面保護層、クリア層、印刷インクのレセプタ層などが積層されていてもよい。これらの層が接合層によって接合されていてもよい。装飾層は、グラフィックシートの全面に対応するように配置されていてもよく、一部又は複数の部分に対応するように配置されていてもよい。
印刷層は、グラフィックシートに絵柄、パターンなどによる装飾性又は意匠性を付与するために使用することができる。ベースフィルム層又はレセプタ層の上にトナー、インクなどの着色剤を用いて印刷することにより印刷層を形成することができる。印刷層を表面保護層の上、又はベースフィルム層と接着層の間に形成することもできる。印刷層は、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などの印刷技術を用いることにより形成することができる。印刷インクとして、溶剤系インク、又はUV硬化型インクを用いることができる。印刷層の厚さは様々であってよく、一般に溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約10μm以下、又は約5μm以下とすることができる。UV硬化型インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
金属層は、インジウム、スズ、クロムなどの金属を蒸着、スパッタなどによってベースフィルム層又はその他の層の上に堆積することによって形成することができる。蒸着又はスパッタの際に金属マスクなどを使用してパターン又は絵柄を形成することもできる。金属層の厚さは、様々であってよく、一般に約5nm以上、約10nm以上、又は約20nm以上、約10μm以下、約5μm以下、又は約2μm以下とすることができる。
表面保護層として様々な樹脂フィルムを使用することができる。表面保護層は可撓性及び/又は延伸性を有することが望ましい。表面保護層を構成する樹脂として、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリオレフィンの少なくともいずれかを含む樹脂、又はそれらの組み合わせが挙げられる。表面保護層は少なくとも可視光に対して透明であることが好ましい。表面保護層の厚さは様々であってよく、一般に約40μm以上、約50μm以上、又は約60μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
クリア層は、ベースフィルム層、印刷層又は他の層の上にクリア層形成用組成物を塗布して形成することができる。クリア層形成用組成物として、イソシアネート反応性樹脂(例えば、ヒドロキシル基含有化合物)及びイソシアネート系架橋剤を含む組成物を使用することができる。イソシアネート反応性樹脂として、例えばヒドロキシル基などのイソシアネート反応性官能基を有する以下の樹脂:フッ素系樹脂、フタレート系ポリエステル(PET、PENなど)、アクリル樹脂、耐石油性樹脂など、及びそれらの組み合わせが使用できる。イソシアネート系架橋剤として、例えばイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、トリレンジイソシアネートの多量体、コロネートL、ポリメチレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基とイソシアネート反応性樹脂のイソシアネート反応性官能基の比について、イソシアネート基/イソシアネート反応性官能基の値を、約0.3以上、約0.5以上、又は約0.7以上、約1.2以下、約1.1以下、又は約1.05以下とすることができる。クリア層の厚さは、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約30μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
レセプタ層として様々な樹脂フィルムを使用することができる。レセプタ層を構成する樹脂として、特に限定されないが、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂などが使用できる。レセプタ層を形成する樹脂のガラス転移温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができる。ガラス転移温度を上記範囲とすることにより、グラフィックシート全体の柔軟性を損なわずに、トナーの転写又はインクの印刷により鮮明な画像を得ることができる。レセプタ層の厚さは、一般に約2μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
グラフィックシートを構成する層を結合する接合層は、一般にアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を含む。接合層の厚さは、一般に約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
グラフィックシートの合計厚さは、一般に約50μm以上、約55μm以上、又は約60μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。グラフィックシートの合計厚さにはライナーの厚さは含まれない。
グラフィックシートの面積は、一般に約50cm2以上、約77cm2以上、又は約623cm2以上、約300m2以下、約200m2以下、又は約100m2以下とすることができる。
グラフィックシートは、様々な基材の表面に接着することができる。一実施態様では、グラフィックシートは表貼り用グラフィックシート、すなわち基材に接着したときに、ベースフィルム層の第1面側から見た観察者に画像などが視認されるグラフィックシートとして使用される。基材として石膏ボード、ポリ塩化ビニルシート等の壁紙、又はポスターのように、これらの基材が取付けられた表面、例えば壁面等から比較的剥がれやすく脆い基材に最適に適用されるほか、種々の基材に適用できる。例えば、ガラス、塗装板、フローリング材などに適用することも可能である。基材が建築構造物の一部、例えば壁、窓、床、天井、柱などであってもよい。
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
<接着力>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。試験片を基材に20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法はJIS Z 0237に準拠する。基材に貼り付けた試験片を温度20℃の恒温室中で20分養生、若しくは24時間養生、又は65℃のオーブン中で7日間養生する。養生後、引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC−1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃、速度300mm/分で90度剥離を行う。2回測定して得られた値の平均値を接着力とする。
<空気抜け性>
試験片として長さ150mm、幅70mmに切断されたものを使用する。試験片を基材に20℃の環境下でスキージを用いて貼り付ける。基材上でスライドが可能であり気泡が試験片と基材の界面に観察されない場合に空気抜け性を「良好」とし、基材上でスライドさせることができず気泡が試験片と基材の界面に観察される場合に空気抜け性を「不良」とする。
<再剥離性>
試験片として長さ150mm、幅25mmに切断されたものを使用する。試験片を基材に20℃の環境下で貼り付ける。貼り付け方法はJIS Z 0237に準拠する。基材に貼り付けた試験片を65℃のオーブン中で7日間養生する。養生後、引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC−1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃、速度300mm/分で90度剥離を行い、再剥離性を剥離時の糊残りの割合で評価する。基材表面に糊残りがある場合、糊が残っている面積割合を百分率(%)で示し、糊残りが全く無い場合を0%とする。
<接着安定性>
試験片として長さ50mm、幅50mmに切断されたものを使用する。試験片を基材に20℃の環境下で貼り付ける。基材に貼り付けた試験片を65℃のオーブン中で24時間養生する。養生後、シートの浮き、端部からのめくれなどの外観変化がない場合に寸法安定性を「良好」とし、シートの浮き、端部からのめくれなどの外観変化がある場合に寸法安定性を「不良」とする。
<例1>
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98質量部、アクリルアミド(AcM)2質量部、及び架橋性モノマーである4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン(AEBP)0.5質量部を混合してアクリル系接着剤を調製した。アクリル系接着剤とメチルエチルケトン(MEK)を3:1(質量比)で混合した。得られた混合溶液を、高さ約25μm、幅約15μmの線状突起部により形成された一辺約200μmの格子状パターンからなる凹凸構造を有する剥離面を持つライナーにノッチバーを用いて塗布した。その上に厚さ70μmのPETライナー付きポリ塩化ビニル(PVC)フィルムを積層して、接着層をPVCフィルム上に転写した。接着層を有するPVCフィルムを65℃のオーブン中に1分間入れ、その後、接着層側にUVCを照射量27mJ/m2で照射して接着層を硬化し、厚さ25μmの接着層を形成した。最後に、接着層の上に平坦な剥離紙を積層して、例1のグラフィックシートを得た。
<例2−1>
連続気泡構造のアクリルフォームシート(PureCell(登録商標)、密度500kg/m3、厚さ60μm、株式会社イノアックコーポレーション(日本国愛知県名古屋市))にアクリル接着剤を用いて厚さ70μmのPVCフィルムを積層して、例2−1のグラフィックシートを得た。このアクリルフォームシートは、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有する。
<例2−2>
連続気泡構造のアクリルフォームシート(PureCell(登録商標)、密度530kg/m3、厚さ70μm、株式会社イノアックコーポレーション(日本国愛知県名古屋市))にアクリル接着剤を用いて厚さ70μmのPVCフィルムを積層して、例2−2のグラフィックシートを得た。例2−1と同様、アクリルフォームシートは、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有する。
<例2−3>
連続気泡構造のアクリルフォームシート(PureCell(登録商標)、密度550kg/m3、厚さ100μm、株式会社イノアックコーポレーション(日本国愛知県名古屋市))にアクリル接着剤を用いて厚さ70μmのPVCフィルムを積層して、例2−3のグラフィックシートを得た。例2−1と同様、アクリルフォームシートは、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有する。
<例2−4>
連続気泡構造のアクリルフォームシート(PureCell(登録商標)、密度500kg/m3、厚さ200μm、株式会社イノアックコーポレーション(日本国愛知県名古屋市))にアクリル接着剤を用いて厚さ70μmのPVCフィルムを積層して、例2−4のグラフィックシートを得た。例2−1と同様、アクリルフォームシートは、複数の球状セルと、隣接し合う球状セル間の貫通孔とを有する連続気泡構造を有する。
<例3>
アクリル系樹脂(クラリティLA2140、クラレトレーディング株式会社(日本国大阪府大阪市))を用いてメルトブローン法で20μmの繊維径を持つ繊維を形成し、この繊維を坪量47g/m2で剥離処理したPETフィルムに吹き付けて、アクリル系不織布を含む接着層を形成した。この接着層上に厚さ70μmのPVCフィルムを積層し、例3のグラフィックシートを得た。
<比較例1>
既存のマーキングフィルム製品である、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ1220NF(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区)))を比較例1のグラフィックシートとした。この製品は裏面にアクリル系粘着剤層を備えたPVCフィルムであり、粘着剤層表面に溝は形成されていない。
<比較例2>
既存のマーキングフィルム製品である、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムSP4283C(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を比較例2のグラフィックシートとした。この製品は裏面にアクリル系粘着剤層を備えたPVCフィルムであり、粘着剤層表面に例1と同様な溝が形成されている。
プライマーDP−900N3(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))
で処理された石膏ボードGB−R(吉野石膏株式会社(日本国東京都千代田区))と、表面層がポリ塩化ビニルシートからなる壁紙フィルム(3M(登録商標)ダイノック(登録商標)フィルムME−1174(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区)))を基材として準備し、例1、2−1〜2−4、及び3、並びに比較例1と2のグラフィックシートを適用したときの評価結果を表1及び2にそれぞれ示す。
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることも当業者には明らかである。