本発明の請求項1記載の発明は、所定量の調理油が充填された油槽内に位置して無端状に循環し、循環する方向と略直交する方向に軸部材を有するバーコンベヤと、前記バーコンベヤの上面を塞ぐように互いに略重ね合わせるように前記軸部材へ回動自在に連結され、食品を搬送する複数の搬送板と、前記複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板より延設される作用受け部材と、前記バーコンベヤの搬送経路と略平行に位置し、前記作用受け部材と接触することにより前記複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板を、前記軸部材を中心軸として作用受け部材を介して起立させるガイド部材と、を備え、前記ガイド部材と前記作用受け部材が接触する位置を前記バーコンベヤの食品の搬送方向に沿って変えることにより、前記複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板の起立開始位置を前記バーコンベヤの食品の搬送方向に沿って変更可能とすることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
このフライヤーの搬送装置によれば、例えば天ぷらなどのような流動性を有する衣をまとった食品の場合、油槽に投入され、調理油中に沈んだとしても、搬送板の上に載置された状態で搬送されるので、衣が食品搬送装置や加熱手段などに付着することはなく、また、油槽中を搬送される間に衣を型崩れすることなく固めることができる。また、衣の有無に関係なく、調理油よりも比重が大きい食品の場合は、油槽に投入された後、調理油中に浸漬された状態で揚げ調理が開始され、調理油よりも比重が小さくなって浮かび上がった後は、起立する搬送板によって食品が搬送されるので、食品を調理油中に滞留させることなく、効率よく食品搬送方向に搬送することができる。
また、水平搬送部における食品搬送方向に沿って、起立する搬送板の起立開始位置を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて起立する搬送板を起立させることができる。
本発明の請求項2記載の発明は請求項1記載の発明において、ガイド部材は前記バーコンベヤの食品の搬送方向に沿って複数に分割されており、前記複数に分割されたガイド部材のうち少なくとも1つを選択して位置を変えることにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板の起立開始位置を変更可能とすることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、水平搬送部における食品搬送方向に沿って複数個所で、搬送板の起立開始位置を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて搬送板を起立させることができる。
本発明の請求項3記載の発明は請求項1記載の発明において、ガイド部材は前記バーコンベヤの食品の搬送方向に沿って複数に分割されており、前記複数に分割されたガイド部材は、各々を連結する連結部材により屈曲自在に連結されていることにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板の起立開始位置を変更可能とすることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、水平搬送部における食品搬送方向に沿って複数個所で、搬送板の起立開始位置を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて搬送板を起立させることができる。
本発明の請求項4記載の発明は請求項1記載の発明において、ガイド部材を食品の搬送方向に沿って位置を変更可能とし、作用受け部材が前記ガイド部材に接触した時点にて複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板を起立開始させることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、水平搬送部における食品搬送方向に沿って搬送板の起立開始位置を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて搬送板を起立させることができる。
本発明の請求項5記載の発明は請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、ガイド部材に作用受け部材が接触することで起立開始する複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板は、前記ガイド部材の搬送方向における傾斜角度を変えることにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板の起立速度が変更可能であることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板より延設される作用受け部材がガイド部材に接触し、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板が起立を開始する起立開始位置から、起立を完了する起立完了位置までの水平距離が変わり、起立する速度を変更することが可能である。したがって、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板を起立させる速度を変更することができる。
本発明の請求項6記載の発明は請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、ガイド部材の鉛直方向の位置を変えることにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板の起立角度を変更可能とすることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板より延設される作用受け部材がガイド部材に接触し、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板が起立を開始する起立開始位置から、起立を完了する起立完了位置までの垂直距離が変わり、起立する角度を変更することが可能である。したがって、油槽に充填される調理油の油面の高さに応じて複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板を起立させる角度を変更することができる。
本発明の請求項7記載の発明は請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板が起立した際、自由端の一部は油槽内に充填された調理油の油面よりも高いことを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、油槽に充填された調理油に浮かび上がる食品を起立した搬送板で確実に搬送することができ、事前に設定した搬送装置の送り速度により食品に合わせた調理時間で調理することができる。
本発明の請求項8記載の発明は請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、フライヤーの搬送装置は、複数の搬送板のうち、作用受け部材を有さず、起立しない複数の搬送板である第1搬送板と、軸部材を中心軸として作用受け部材を介して起立する複数の搬送板のうち少なくとも一部の搬送板である第2搬送板と、を備え、前記第2搬送板は前記第1搬送板を、少なくとも1枚を挟んで前記バーコンベヤに連結することを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、油槽に充填された調理油に浮かび上がる食品を第2搬送板で搬送している間に食品の衣の欠片が食品から脱離しても、脱離した食品の欠片は起立しない第1搬送板により受け止められ、油槽に充填された調理油内に脱離した食品の衣の欠片が散乱することないよう食品を搬送することができる。
本発明の請求項9記載の発明は請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、第2搬送板は前方に斜め下向きに延設される作用受け部材を有し、前記作用受け部材の先端にローラーを設け、前記ローラーとガイド部材とが接触することにより第2搬送板が起立することを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、作用受け部材がガイド部材に接触したときの引っ掛かりをなくし、さらに作用受け部材がガイド部材の上面を接触しながら移動する際の抵抗を減らすことにより、バーコンベヤの駆動をスムーズにすることができ記バーコンベヤに連結される第1搬送板と第2搬送板による食品の搬送を円滑にすることができる。
本発明の請求項10記載の発明は請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記バーコンベヤは、水平方向に食品を搬送する水平搬送部と、前記水平搬送部に対して所定角度傾斜し、油槽に充填された調理油から前記食品を引き上げて搬送する傾斜搬送部とを備えていることを特徴とするフライヤーの搬送装置としたものである。
これにより、油槽内に充填された調理油で調理した食品を、油切りしながら搬出する高さへと傾斜搬送部により搬送することができる。
本発明の請求項11記載の発明は請求項1〜10のいずれかに記載のフライヤーの搬送装置と、所定量の調理油が充填された油槽と、前記油槽に充填された調理油を所定の温度に加熱する加熱手段と、を有することを特徴とするフライヤーとしたものである。
このフライヤーによれば、例えば天ぷらなどのような流動性を有する衣をまとった食品の場合、油槽に投入され、調理油中に沈んだとしても、搬送板の上に載置された状態で搬送されるので、衣が食品搬送装置や加熱手段などに付着することはなく、また、油槽中を搬送される間に衣を型崩れすることなく固めることができる。
また、衣の有無に関係なく、調理油よりも比重が大きい食品の場合は、油槽に投入された後、調理油中に浸漬された状態で揚げ調理が開始され、調理油よりも比重が小さくなって浮かび上がった後は、起立する搬送板によって食品が搬送されるので、食品を調理油中に滞留させることなく、効率よく食品搬送方向に搬送することができる。
また、水平搬送部における食品搬送方向に沿って、起立する搬送板の起立開始位置を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品の種類、大きさ、特性などに起因して調理油中で食品が浮き上がるタイミングにあわせて起立する搬送板を起立させることができる。
次に、本発明の一実施形態に係るフライヤーの搬送装置について、図面を参照しつつ、より具体的に説明する。
(フライヤーの搬送装置の構成)
図1に示すように、この食品搬送装置2は、食品Wを油槽5に充填された調理油Oへ投入するためのシュート32と、フライヤー1の油槽5中において食品Wを第1水平方向(A方向)に搬送する水平搬送部3と、食品Wを油槽5に充填された調理油Oから引き上げ、第1水平方向(A方向)に対して所定角度だけ傾斜した第1傾斜方向(B方向)に搬送する傾斜搬送部4で構成され、水平搬送部3と傾斜搬送部4において複数(多数)の搬送板15および16を連続的に循環駆動させるものである。また、食品搬送装置2は、フライヤー1の清掃などを考慮して、昇降装置30によって、油槽5に対して垂直方向に上下動可能に構成されている。なお、以下の説明において、適宜上、第1水平方向(A方向)および第1傾斜方向(B方向)を総称して食品搬送方向と称する場合がある。
図1に示すように、食品搬送装置2は、水平搬送部3における第1水平方向(A方向)の上流側端部に設けられた第1スプロケット11と、傾斜搬送部4における第1傾斜方向(B方向)の食品搬出位置P2に設けられた第2スプロケット12と、第1スプロケット11と第2スプロケット12の間に張架される無端状のバーコンベヤ13と、水平搬送部3と傾斜搬送部4の接続部に設けられバーコンベヤ13の移動方向を変えるための上下1組のガイドスプロケット19と、第1スプロケット11又は第2スプロケット12を回転駆動させるモーター(図示せず)などで構成された循環駆動機構10を備えている。循環駆動機構10の内側には、油槽5中の調理油Oの温度を略一定に維持するための加熱手段6が設けられている。なお、加熱手段6は、ステンレス等の金属管に収めた電熱線式、あるいはガス燃焼管式やIH式等を用いることができる。また、食品搬送装置2は油槽5中の調理油Oの温度を測定する温度センサ(図示なし)と、温度センサによって測定した温度データをフィードバックして加熱手段6の熱量を制御する制御手段(図示なし)を備えてもよい。
図2に示すように、バーコンベヤ13には、食品搬送方向に直交する第3水平方向(X方向)において、複数(多数)の棒材14が、食品搬送方向において一定間隔で配置されている。また、図3(a)に示すように、この食品搬送装置2では、フライヤー1の油槽5における食品搬送方向の最上流側において調理油O中に投入される食品Wを保持するために複数の搬送板を備えている。複数の搬送板は、水平搬送部3および傾斜搬送部4において、食品Wを搬送する際、自重で棒材14上に倒伏する第1搬送板15と、倒伏した状態の第2搬送板16に対して所定の起立角度(略60度)をなすように起立される第2搬送板(起立搬送板)16で構成されるが、これらが一定のパターンで、棒材14に回転可能に取り付けられている。第1搬送板15および第2搬送板16を取り付ける際、搬送板固定部材15cを用いて棒材14を挟み込むようにして取り付ける。図2においては、搬送板固定部材15cは、搬送板の幅に略合わせた寸法とした一体型であるが、搬送板の幅に略合わせた別体型としてもよい。後述する作用受け部材18と一体に構成してもよい。図1では、第1搬送板15と第2搬送板16が1つおきに取り付けられたパターンを示している。
図2に示すように、食品搬送装置2の水平搬送部3および傾斜搬送部4に沿ってフライヤーの油槽の底面に対して略垂直なフレーム7が設けられており、さらに、バーコンベヤ13に沿ってフレーム7の所定の位置にガイド部材17が設置されている。なお、図2は説明のため図面の奥側にフレーム7とガイド部材17、レバー181等を描いているが、レバー181の操作からすると作業者側である図面の手前側にフレーム7とガイド部材17、レバー181等を配置する方が好ましい。
また、図3(a)に示すように、ガイド部材17の上面は、第2搬送板16の前方斜め下向きに延設される作用受け部材18の先端に設けたローラー18aが重力で垂れ下がった状態で、その最下端よりも上にあるため、第2搬送板16がガイド部材17の位置まで搬送されると、ローラー18aがガイド部材17の斜面171aに接触し、図3(b)に示すように、さらにローラー18aがガイド部材17の上面に乗り上げ、その上面を転動する。それに伴って、第2搬送板16は、当該第2搬送板16が係合されている棒材14を軸として回転し、第2搬送板16が第1搬送板15に対して所定の起立角度θ1(略60度)をなすように起立される。また、第1搬送板15には、食品Wが載置される側に突出した複数の略半球状の突起15aが設けられている(突起15aの詳細な役割は後述する)。
図1に示すように、複数の搬送板である第1搬送板15および第2搬送板16は、傾斜搬送部4の上面側を第1傾斜方向(B方向)の最下流側まで搬送されると、第2スプロケット12によって搬送方向が反転され、傾斜搬送部4の下面側を第1傾斜方向(B方向)とは逆の第2傾斜方向(C方向)に搬送される。その際、第1搬送板15および第2搬送板16は自重で垂れ下がり、第1搬送板15および第2搬送板16の自由端が油槽5の底面を摺動する。同様に、水平搬送部3の下面側において、第1搬送板15および第2搬送板16は、その自由端が油槽5の底面を摺動しながら、第1水平方向(A方向)とは逆の第2水平方向(D方向)に搬送される。
油槽5の食品投入位置P1の直下付近には、油槽5の底に堆積した揚げかすを回収し、フライヤー1から引き上げるための揚げかす搬送装置31が設けられている。揚げかすを揚げかす搬送装置31上に回収した後、第1搬送板15および第2搬送板16は自重で垂下し、第1スプロケット11によって搬送方向が反転され、食品投入位置P1側に搬送される。揚げかす搬送装置31の下部には、揚げかす搬送装置31から漏れた揚げかすを濾過するためのフィルター8が設けられており、さらに、油槽5のうちフィルター8よりも下部には、フィルター8によって濾過された調理油Oを所定の温度に加熱するための加熱手段9および加熱された調理油Oを後述する調理油トレイ20に供給するための吸油口22が設けられている。
図2に示すように、食品搬送方向に直交する第3水平方向(X方向)における第1搬送板15と第2搬送板16の寸法は、複数(多数)の棒材14の間隔と略同じである。さらに、図1〜3に示す構成例では、食品搬送方向における第1搬送板15と第2搬送板16の寸法はほぼ同じに設定されている。なお、食品搬送方向における第1搬送板15と第2搬送板16の寸法は特に限定されず、揚げ調理される食品Wの種類や大きさなどによって、適宜変更することが可能である。
図3(a)に示すように、第1搬送板15と第2搬送板16が1つおきに取り付けられている場合、図1に示す食品投入位置P1において、第2搬送板16を倒伏させておけば、食品搬送方向における食品Wの大きさとして、第1水平方向(A方向)における第1搬送板15の幅寸法と略同じ大きさのものまでは許容される。そして、食品Wを第1搬送板15と第2搬送板16の上に載置させた状態で搬送し、食品Wが浮き上がり始めるタイミングで図3(b)のように第2搬送板16を所定の起立角度θ1(略60度)に起立させれば、浮き上がった食品Wを第2搬送板16によって食品搬送方向に押送りすることができる。
その際、起立した第2搬送板16の自由端の一部が、油槽5に充填した調理油Oの油面上から出ているようにしておけば、確実に食品を押送することができる。また第2搬送板16を起立させることにより隙間Sができるが、この隙間Sを通じて、フレーム7と第1搬送板15および起立した第2搬送板16で略仕切られた区画に、搬送面の下方から加熱された調理油Oが流入する。これによりフレーム7と第1搬送板および第2搬送板で略仕切られた区画にあった油は、前記区画から、フレーム7と第1搬送板および第2搬送板との間を通り流出していく。なお、第2搬送板16にも上記第1搬送板15の突起15aと同様の突起を設けておいてもよい。
一方、椎茸などのように、油槽5に充填された調理油Oに投入されても全く調理油O中に沈まず、最初から浮き上がっている食品Wも存在する。その場合、後述するガイド部材17を食品投入位置P1から第2搬送板16が起立しているように起立開始位置を設定すればよい。また、第1搬送板15は不要であるので、すべての搬送板を第2搬送板16とし、食品投入位置P1から第2搬送板16を起立させてもよい。
また、例えばハムカツなどのように平面視での面積は大きいけれども厚みの薄い食品の場合、食品搬送方向における第1搬送板15の寸法を第2搬送板16の寸法よりも長く(例えば2倍)するように構成してもよい。あるいは、食品搬送方向における第1搬送板15と第2搬送板16の寸法はほぼ同じに設定し、例えば図4に示すように、2つの第2搬送板16の間に第1搬送板15を2枚隣接するように配置するように配列パターンを変更してもよい。
この場合も第2搬送板16を起立させることにより隙間Sができるが、この隙間Sを通じて、フレーム7と第1搬送板15および起立した第2搬送板16で略仕切られた区画に調理油Oが流入する。そうしてフレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16で略仕切られた区画にあった油は、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16とで構成される区画から、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16との間を通り流出していく。
なお、第2搬送板16が起立していない状態では、流動性を有する衣が、これら第1搬送板15および第2搬送板16の隙間から棒材14や加熱手段6などに落下して付着することが考えられる。また、第1搬送板15および第2搬送板16の隙間から調理油Oが流動することにより固まっていない衣が脱離することが考えられる。これらを防止するために、第1搬送板15同士および第1搬送板15と第2搬送板16とが部分的に重なり合うように構成することが好ましい。
食品搬送方向における第1搬送板15および第2搬送板16の寸法は特に限定されず、また2つの第2搬送板16の間の配置される第1搬送板15の枚数も特に限定されない。さらに、これら第1搬送板15および第2搬送板16を棒材14に対して着脱可能とし、食品搬送方向における寸法の異なる複数種類の第1搬送板15および第2搬送板16を用意することにより、同じフライヤー1を用いて、厚みや平面視での面積の異なる様々な種類の食品を効率よく揚げ調理することが可能である。
(ガイド部材の構成)
この食品搬送装置2は、第2搬送板16の前方斜め下向きに延設される作用受け部材18の、先端に設けたローラー18aがガイド部材17の上面に乗り上げる位置を変化させることが可能なように構成されている。図5は、第2搬送板16と起立させるためのガイド部材17の構成例を示す。前述のように、この食品搬送装置2では、揚げ調理される食品Wの種類、大きさ、比重などに応じて、第2搬送板16を起立させる位置を、あらかじめ設定されている複数の位置から選択することができる。そのため、ガイド部材17は、水平搬送部3および傾斜搬送部4の上面付近において、第1スプロケット11および第2スプロケット12の部分を除くほぼ全域にわたって設けられており、水平搬送部3の第1水平方向(A方向)の上流側近傍において、可動式に構成されている。
図5に示すように、ガイド部材17は、例えば逆U型断面を有するチャンネル材を切断加工したり、逆U型断面を有するように板材を折り曲げ加工したりして製造される。ガイド部材17は、大きく分けて少なくとも3つの部材で構成され、少なくとも3つの部材のうち1つの第3部材173は固定されており、残りの少なくとも2つの第1部材171および第2部材172は、隣接する他の部材に対して相対的に所定の角度だけ回転するように連結されている。
食品投入位置P1の直下付近に配置される第1部材171の第1水平方向(A方向)の上流側端部には、第2搬送板16のローラー18aが乗り上げ易くなるように、斜面171aが形成されている。また、第1部材171の垂直壁の中程、例えば第1水平方向(A方向)の上流側端部から全長の1/3程度の位置、および第1水平方向(A方向)の下流側端部近傍には、2つの円形開口171bおよび171cが形成されている。第2部材172よりも一回り小さいチャンネル材などで形成され、第1部材171および第3部材173の内側に嵌合される嵌合部材174および175が溶接などにより固定されている。嵌合部材174および175の垂直壁のうち第2部材172から突出する部分には、円形開口174aおよび175aが形成されている。第3部材173の第1水平方向の下流側端部には、円形開口173aが形成されている。
図5に示すように、第1部材171と第2部材172は、円形開口171cおよび174aに嵌装された段付ボルト177によって、第1部材171が第2部材172に対して相対的に回転又は変位可能に結合される。第2部材172と第3部材173は、円形開口175aおよび173aに嵌装された段付ボルト176によって、第2部材172が第3部材173に対して相対的に回転又は変位可能に結合される。また、第3部材173は、例えば循環駆動機構10のフレーム7に固定され、第2搬送板16のローラー18aが第3部材173の上面を転動する場合は、第2搬送板16は必ず起立される。
図2に示すように、第1部材171の円形開口171bには、段付きボルト178が嵌装されている。段付ボルト178はカム板180に結合されており、カム板180にはフレーム7を貫通する軸材177を介してレバー181が連結されている。ここでレバー181を水平方向に動かすことによりカム板180が回転し、第1部材171を垂直方向に上下させることができる。なお、前述のように第3部材173はフレーム7に固定されていると説明したが、第1部材171と第2部材172と同様に段付きボルト178とカム板180、軸材177、レバー181に連結されていても良く、その場合は第3部材173も垂直方向に上下させることができる。
図6において、第1部材171および第2部材172を上昇させ、第1水平方向(A方向)における第1部材171の斜面171aの途中で第2搬送板16を起立させる場合を示す。距離L1はローラー18aが第1部材171と接触する第2搬送板16の起立開始位置から、第2搬送板16の起立が完了する起立完了位置までの水平距離を示す。高さHはローラー18aが第1部材171と接触する第2搬送板16の起立開始位置から、第2搬送板16が起立する起立完了位置までの垂直距離である。また、傾斜角度θ3は距離L1と高さHより導かれる斜面171aの傾斜角度を示す。
図7において、第1部材171のみを下降させ、第1水平方向(A方向)における第1部材171の途中で第2搬送板16を起立開始させる場合を示す。距離L2はローラー18aが第1部材171と接触する第2搬送板16の起立開始位置から、第2搬送板16の起立が完了する起立完了位置までの水平距離を示す。高さHはローラー18aが第1部材171と接触する起立開始位置から、第2搬送板16が起立する起立完了位置までの垂直距離である。また、傾斜角度θ4は距離L2と高さHより導かれる第1部材171の傾斜角度を示す。そして距離L4は、段付きボルト178と段付きボルト177の間の軸間距離を表している。
図8において、第1部材171および第2部材172を下降させ、第1水平方向(A方向)における第2部材172の上流側端部で第2搬送板16を起立開始させる場合の設定を示す。距離L3はローラー18aが第2部材172と接触する第2搬送板16の起立開始位置から、第2搬送板16の起立が完了する起立完了位置までの水平距離を示す。高さHはローラー18aが第1部材172と接触する起立開始位置から、第2搬送板16が起立する起立完了位置までの垂直距離である。また、傾斜角度θ5は距離L3と高さHより導かれる第1部材172の傾斜角度を示す。そして距離L5は、段付きボルト177と段付きボルト176の間の軸間距離を表している。
食品Wが食品搬出位置P2に到達する時点で揚げ調理が完了するように、調理時間(食品搬送装置2による食品Wの搬送速度)が設定される。そのため、どの時点で第2搬送板16を起立させるかは、前記搬送速度や揚げ調理される食品Wが浮かび上がるタイミングに合わせて、図6、図7、図8に示すいずれかの起立開始位置を適宜選択すればよい。
さらに、起立開始位置から起立完了位置までの第2搬送板16の起立早さも変更することができる。例えば、図7と図8におけるガイド部材の構成とを比較してみると、搬送速度と高さHとを同一としたとき、第2搬送板16の起立開始位置から起立完了位置までの水平距離は、図7におけるL2より図8におけるL3の方が大きくなっており、傾斜角度は図7におけるθ4より図8におけるθ5の方が小さくなっている。このとき、第2搬送板16の起立早さは、図7におけるガイド部材の構成より図8におけるガイド部材の構成の方が遅くなる。
また、図6の構成では、斜面171aの傾斜角度θ3を変化させると起立開始位置から起立完了位置までの距離L1が変わり、第2搬送板16の起立早さを変更することができる。この斜面171aはシュート32の下方に位置するため、傾斜角度θ3をより大きくするとシュート32の下方での第2搬送板16の起立早さを早くすることができる。
同様に、例えば図6と図7の構成では、高さHを同一としたとき、距離L4もしくはL5を短くするほど傾斜角度θ4もしくはθ5が大きくなり、第2搬送板16の起立早さを早くすることができる。つまり、傾斜角度θ3〜θ5の角度を大きくすることで、第2搬送板16の起立早さを早くすることができる。逆に、傾斜角度θ3〜θ5の角度を小さくすることで、第2搬送板16の起立早さを遅くすることができる。傾斜角度θ3は、例えば30〜60度に設定する。また、傾斜角度θ4、θ5は、例えば1〜10度に設定する。
なお、図6〜8において、高さHを変更することにより第2搬送板16の起立角度θ1〜θ2を変更することができる。例えば前述したように第3部材173が段付きボルト178とカム板180、軸材177、レバー181に連結されて垂直方向に上下できる構成の場合、第3部材173を垂直方向で下に移動することにより高さHが小さくなり第2搬送板の起立角度を小さくすることができる。
なお、この実施形態で説明した、ガイド部材17の構造、第2搬送板16を起立させる位置および数および早さなどは、この構成例に限定されるものではないことはいうまでもない。また、ガイド部材17は、大きく分けて少なくとも3つの部材で構成されているとしたが、この構成に限定されるものではなく、より多くの種類の食品に対応する場合等、起立開始位置の変更可能な位置を多く設定したいときには、構成する部材を例えば4つ、5つと増やして構成してもよい。逆に、構成する部材を減らして構成してもよい。
なお、図1に示す構成例では、ガイド部材17を水平搬送部3および傾斜搬送部4に沿って配置し、水平搬送部3だけでなく傾斜搬送部4においても第2搬送板16を起立させるように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、傾斜搬送部4における傾斜角度が小さく、食品Wが第1搬送板15から滑り落ちない場合は、ガイド部材17を水平搬送部3のみに沿って配置し、第2搬送板16が傾斜搬送部4を搬送されるときには、第2搬送板16を倒伏させるように構成してもよい。その場合、ガイド部材17は、上記第1部材171を水平方向に延長したような単一の部材のみで構成することができ、このガイド部材17を水平方向に移動させることによって、第2搬送板16の起立開始位置を変更することができる。
(調理油トレイの構成)
図1に示すように、このフライヤー1においては、主に傾斜搬送部4の上方側に調理油トレイ20が設けられており、第1搬送板15上に載置され、第1傾斜方向(B方向)に搬送される食品Wの上方側から、所定の温度に加熱された調理油Oを流れ落とさせて食品Wを揚げ調理するよう構成されている。調理油トレイ20は、フライヤーの搬送装置2のフレーム7に取り付けられており、昇降装置30によってフライヤーの搬送装置2と共に垂直方向に上下動される。図1および図6に示すように、調理油トレイ20は、底面に複数(多数)の開口21aが所定のパターンで形成された複数の部分トレイ21で構成されており、各部分トレイ21の食品搬送方向の上流側の側壁には、部分トレイ21に供給された調理油Oの量が一定量を超えたときに、調理油Oをオーバーフローさせる開口部21bが形成されている。また、複数の部分トレイ21のうち食品搬送方向の最上流側の部分トレイ21からオーバーフローされた調理油Oは、直接油槽5に流れ落とされるように構成されている。
油槽5の底部の側壁には、加熱手段9によって所定の温度に加熱された調理油Oを部分トレイ21に供給するための吸油口22が設けられている。この吸油口22は、給油パイプ23、吐出口24、ポンプ25で構成される汲み上げ装置に連結される。すなわち、給油パイプ23を介して各部分トレイ21の側壁に設けられた吐出口24に連結されており、加熱手段9によって所定の温度に加熱された調理油Oが、ポンプ25によって各部分トレイ21に供給される。図9に示すように、平面視で、吐出口24と部分トレイ21との間には所定の隙間があり、調理油Oは、ポンプ25による圧力によって、吐出口24から各部分トレイ21に向かって吐出される。
トレイ21に吐出された調理油Oは、トレイ21に形成された開口21aから自然落下させて、食品W及び複数の搬送板に調理油Oを流れ落とす。吐出口24と各部分トレイ21との間に所定の隙間があることによって、昇降装置30によりフライヤーの搬送装置2と共に各部分トレイ21を垂直方向に上下動させることができる。そうして構成されたフライヤーの搬送装置2と各部分トレイ21は昇降装置30により上昇させることで、油槽5に充填される調理油Oを取り除いた後に、油槽5を清掃することができる。油槽5の清掃後は昇降装置30によりフライヤーの搬送装置2と各部分トレイ21を下降させることで、フライヤーの搬送装置2と各部分トレイ21は揚げ調理に使用することができる。
(揚げ調理方法)
次に、このフライヤー1による食品Wの揚げ調理方法について説明する。このフライヤー1による食品Wの揚げ調理方法は、所定の温度に加熱された調理油Oが充填された油槽5内にシュート32上を滑らせて食品Wを投入し、油槽5に充填された調理油Oの中を所定の方向(A方向)に搬送しつつ食品Wの揚げ調理を行う油中内調理ステップと、食品Wを油槽5に充填された調理油Oの中から傾斜方向(B方向)に引き上げながら搬送しつつ、食品Wの上方側から所定の温度に加熱された調理油Oを流れ落とさせて食品Wの揚げ調理を行う油中外調理ステップの、2つのステップで構成されている。
油中内調理ステップにおいては、揚げ調理される食品Wは、食品搬送装置2の水平搬送部3の上面側であって、第1水平方向(A方向)の最上流部の食品投入位置P1から、油槽5に充填された調理油Oにシュート32上を滑らせて投入され、水平搬送部3の上面側を搬送され、その間に予備的な揚げ調理がなされる。衣の有無に関係なく、揚げ調理前に調理油Oよりも比重が大きい食品Wの場合、油槽5に充填された調理油Oに投入されると、食品Wが自重で調理油O中に沈み、第1搬送板15および/又は第2搬送板16上に載置される。そして、高温の調理油によって食品W内部の水分が蒸発され、比重が調理油Oよりも小さくなると浮き上がる。食品Wが調理油O中に沈んでいる間は、食品Wのほぼ全体が調理油Oによって加熱され、食品Wが浮き上がってからは、主に調理油Oに浸っている食品Wの下側部分が揚げ調理される。
一方、揚げ調理前から調理油Oよりも比重が小さい食品Wの場合、油槽5に充填された調理油Oに投入されても食品Wは自重で調理油O中に沈むことはなく、最初から浮き上がっている。そのため、図6におけるガイド部材17の構成とし、食品投入位置P1から油層内の調理油O中に投入した食品Wは、調理油中に投入された直後からすでに起立した第2搬送板16によって、第1水平方向(A方向)に押送されながら、主に調理油Oに浸っている部分が揚げ調理される。
前述のように、第2搬送板16の起立開始位置と起立する早さ、起立角度を変更することが可能であるので、揚げ調理される食品Wの種類、大きさ、特性などに起因する調理油O中で食品Wが浮き上がるタイミングやその早さにあわせて第2搬送板16を起立させることにより、浮き上がった食品Wを調理油O中に滞留させることなく、効率よく食品搬送方向に搬送することができる。
なお、起立した第2搬送板16の自由端の少なくとも一部は油槽5に充填した調理油Oの油面上に出ていてもよい。その場合は、調理油O中で浮き上がった食品は第2搬送板16を乗り越えることはなく確実に押送することができる。また、起立した第2搬送板16の自由端の少なくとも一部が、油面と略同一高さとしてもよい。
図2、図3に示すように第2搬送板16を倒伏した状態から起立させることにより、第2搬送板16が起立した部分のバーコンベヤの上面が開放されてバーコンベヤの棒材14間に隙間Sができる。この隙間Sを通じて、フレーム7と第1搬送板15および起立した第2搬送板16で略仕切られた区画に調理油Oが流入する。フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16で略仕切られた区画にあった油は、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16とで構成される区画から、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16との間を通り流出していく。このようにして、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16とで構成される区画の調理油Oは、所定の温度に加熱された調理油Oと入れ替わり、食品Wを加熱するために熱エネルギーの奪われた調理油Oの温度は再び所定の温度となり、食品を充分に加熱することができる。
また、天ぷらなどのように流動性を有する衣をまとった食品Wの場合、油槽5に充填された調理油Oに投入されると、第1搬送板15および第2搬送板16の上に沈み、油槽5内に充填された調理油Oの中を搬送される間に衣が固められる。第2搬送板16が起立されていない状態の時に、隣接する2つの第1搬送板15と第2搬送板16が互いに部分的に重なり合うので、衣が固まるまで時間のかかる流動性を有する衣をまとった食品Wであっても、型崩れすることなく、また、衣が食品から脱離して食品搬送装置2の棒材14やフライヤーの加熱手段6などに付着することなく、揚げ調理することができる。
第1搬送板15には、食品Wが載置される側に突出した複数の略半球状の突起15aが設けられている。揚げ調理される食品Wが油槽5に投入され、調理油O中に沈むと、この突起15aの上に載置され、第1搬送板15の平坦部15bとの間に隙間ができる。それによって、第1搬送板15の平坦部15bと食品Wの下面との間に十分な量の高温の調理油Oが供給され、食品Wを主に下側から効率よく加熱することができる。
上記油中内調理ステップにおいて食品Wが油槽5に充填された調理油Oの中を搬送されている間は、いわゆる予備的な加熱であり、食品Wの芯温を殺菌に必要な温度まで上昇させる必要はない。そこで、食品Wが多量の油を吸う前の適当なタイミングで食品Wを調理油Oから引き上げ、食品搬送装置2の傾斜搬送部4を第1傾斜方向(B方向)に搬送し始めると、油中外調理ステップに移行し、調理油トレイ20によって、食品Wの上方側から所定の温度に加熱された調理油Oは流れ落とされ、油槽5に充填された調理油の中において調理油Oと充分に触れていない主に食品Wの上側部分の揚げ調理が行われると共に、流れ落とされた調理油Oは、食品Wを搬送する第1搬送板15の平坦部15b上を流れ、結果的に、食品Wを上側および下側から均一に加熱する。調理油トレイ20の各部分トレイ21に供給された調理油Oは、加熱されて粘性が低くなっており、重力によって部分トレイ21の底面の開口21aから傾斜搬送部4中を搬送される食品Wの上面に流れ落ち、食品Wを主に上面側から効率よく加熱することができる。
なお、図1に示すように、油中内調理ステップから油中外調理ステップに移行する部分で、油中内調理ステップにおける調理油W中を搬送することによる加熱と、油中外調理における流れ落とした調理油Wによる加熱とを、オーバーラップさせてもよい。調理油中内の加熱と調理油中外の加熱との両方の加熱を同時に行って、食品Wを調理することができる。
前述のように、食品搬送装置2の水平搬送部3において、油槽5に充填された調理油Oの中で食品Wが浮き上がると、食品Wのうち油面から露出している部分には、あまり調理油Oは供給されず、調理油O中に浸っている食品Wの下側に比べて加熱される割合は低い。一方、傾斜搬送部4において、食品Wの上方側から調理油Oを流れ落とさせると、食品Wの上側に直接高温の調理油Oが供給されると共に、第1搬送板15の突起15aと平坦部15bの間に流れ落とした調理油Oが流れ、食品Wの下側からも加熱される。食品Wの下側に比べて食品Wの上側の部分が加熱される割合が高くなる。この油中外調理ステップでは、食品Wの芯温を殺菌に必要な温度まで上昇させ、食品Wが傾斜搬送部4の第1傾斜方向(B方向)の食品搬出位置P2に到達する時点で揚げ調理が完了するように、調理時間(食品搬送装置2による食品Wの搬送速度や、水平搬送部3および傾斜搬送部4の長さなど)、調理油トレイ20から流れ落とす調理油Oの温度や量などが設定されている。
図3(b)に示すように、第1搬送板15の平坦部15bには食品Wが載置される側に突出した複数の突起15aが形成されており、また、食品搬送装置2の水平搬送部3を搬送される間に、食品Wの下側の揚げ調理がある程度進行しており、食品Wの下側はある程度固化しているので、傾斜搬送部4を搬送される際には、食品Wはこれら複数の突起15a上に乗った状態となる。ポンプ25により各部分トレイ21に供給され、部分トレイ21から食品Wの上方側から流れ落とされた調理油Oは、食品Wの表面の凹凸や気孔などを伝って流れ、食品Wを加熱しつつ、さらに、第1搬送板15の平坦部15bの上に流れ落ちる。
さらに、調理油Oは、傾斜搬送部4の傾斜に従って、突起15aによって形成される食品Wと第1搬送板15の平坦部15bとの隙間を流れ落ちる。傾斜搬送部4では、第1搬送板15は傾斜して搬送され、且つ、第2搬送板16が起立されており、第1搬送板15と第2搬送板16との間に隙間が形成され、その隙間から調理油Oが油槽5中に流れ落ちる。その結果、傾斜搬送部4を搬送される第1搬送板15上に余分な調理油が滞留せず、食品Wは余分な調理油Oを吸収することなく、食品Wの油切れをよくすることができる。
また、第1搬送板15上を流れる調理油Oは、第1搬送板15を加熱し、これにより食品Wを加熱、保温する効果も有している。上記のように、このフライヤー1においては、食品Wが傾斜搬送部4の第1傾斜方向(B方向)の食品搬出位置P2に到達する時点で揚げ調理が完了するように構成されており、揚げ調理が完了した食品Wは、図1に示すように、傾斜搬送部4の第1傾斜方向(B方向)の食品搬出位置P2から、食品トレイ26上に回収される。
食品Wは、油中外調理ステップが終了した後、食品搬出位置P2から食品トレイ26上に回収されるまで搬送されている間に、食品Wの表面に付着している調理油Oが油切りされることとなる。また、ポンプ25により各部分トレイ21に供給され、各部分トレイ21から食品Wに流れ落とされた調理油Oは、油層5中に流れ落ち、油層5中を食品投入位置P1側へ流動し、再び、吸油口22から給油パイプ23を介してポンプ25により、各部分トレイ21に供給される。つまり、調理油Oは循環されており、この循環により、調理油全体が均温化され、安定した揚げ調理が可能となる。
さらに、図3(b)に示すように、第2搬送板16を起立させることにより隙間Sができるが、起立した第2搬送板16によってその隙間Sの上部の一部を覆うこととなる。図3(b)においては、水平搬送部3における状態を示しているが、傾斜搬送部4においては、第2搬送板16が起立したまま傾斜搬送されることにより、起立した第2搬送板16によって隙間Sの略全面を覆うこととなる。これにより、傾斜搬送部4において食品Wの上面側の調理油トレイ20から流れ落とされた調理油Oは、直接隙間Sに流れ落ちるのではなく、第1搬送板15及び第2搬送板16に補足されて第1搬送板15上及び第2搬送板16上を流動し、食品W及び搬送板を加熱することとなる。流れ落とした調理油Oにより、流れ落とした調理油を無駄にすることなく最大限加熱に利用してから循環流動させることができる。
第1搬送板15および第2搬送板16が傾斜搬送部4の上面側を第1傾斜方向(B方向)の最下流側まで搬送されると、第2スプロケット12によって搬送方向が反転され、第1搬送板15および第2搬送板16の自由端が油槽5の底面を摺動しながら、傾斜搬送部4の下面側を第1傾斜方向(B方向)とは逆の第2傾斜方向(C方向)に搬送され、さらに、水平搬送部3の下面側において、第1搬送板15および第2搬送板16は、その自由端が油槽5の底面を摺動しながら、第1水平方向(A方向)とは逆の第2水平方向(D方向)に搬送される。
そのため、油槽5の底に沈殿した揚げかすは、第1搬送板15および第2搬送板16の自由端によって第2傾斜方向(C方向)および第2水平方向(D方向)に押し出され、沈殿槽7の底部に集められる。そして、沈殿槽7の底部に堆積した揚げかすは、揚げかす搬送装置31によって油槽5から引き上げられ、揚げかすの炭化による調理油Oの劣化が抑制される。
調理油Oの温度に関して、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oの温度は、油槽5に充填された調理油Oの温度より高く設定するのが好ましい。ポンプ25によりトレイ20に供給する調理油Oは加熱手段9により加熱されており、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oの温度を高くすることが可能となっている。
例えば唐揚げを揚げ調理する場合、油槽5に充填された調理油の温度を180℃とし、調理油トレイ20から流れ落とされた調理油Oの温度を190℃とする。このように、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油の温度を油槽5に充填された調理油Oの温度より高く設定することによって、次のような効果がある。まず、食品Wを調理油Oから引き上げた後、食品Wに対し揚げ調理に使用した調理油Oよりも高温の調理油Oをかけることにより、香ばしさや食品表面のサクサク感を出す方法が知られている。本発明でも油槽5に充填された調理油Oの温度より調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oの温度を高くすることで、同様の効果が得られる。
また、傾斜搬送部4において、搬送板(第1搬送板15および第2搬送板16)も油槽5に充填された調理油Oの温度よりも高い温度の調理油Oで加熱されることとなり、搬送板が傾斜搬送部4の下面側を第2傾斜方向(C方向)に搬送されて油槽5に充填された調理油Oに浸漬されても、搬送板によって油槽5に充填された調理油Oの温度を低下させることはない。さらに、調理油トレイ20から流れ落とされた調理油Oは、油槽5に充填された調理油Oの温度より高いため、調理油トレイ20から滴下した調理油が油槽5に充填された油と合流する際に、油槽5に充填された調理油の温度を昇温させる。その結果、油槽5に充填された調理油を所定の温度に維持するために必要な加熱手段6による消費電力を抑制することができる。
また、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oの温度を油槽5に充填された調理油Oの温度より必ず高く設定する必要はなく、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oの温度が油槽5に充填された調理油Oの温度よりも低くてもよい。その場合、食品Wの芯温を、時間をかけて上昇させ、調理油トレイ20から流れ落とされる調理油Oによる食品表面の加熱し過ぎを防止することができる。油中内調理における調理油の温度と油中外調理における調理油の温度とを、調理する食品に応じて設定をすればよい。
図1において、図示していないが給油パイプ23に流れる調理油Oの量を調整するバルブを備えていてもよい。給油パイプ23に備えたバルブを閉じることにより、調理油トレイ20のうち食品搬送方向の上流側の例えば2つの部分トレイ21には調理油Oを供給せず、食品搬送方向の下流側の例えば1つの部分トレイ21のみに調理油Oを供給することにより、二度揚げを行うことができる。
二度揚げの目的は、長時間加熱し過ぎると食味を損なう食品Wを長時間加熱しないことにあるので、油槽5に充填した調理油Oにより1度目の揚げ調理をして食品Wの芯温を上昇させた後に、調理油Oを食品Wに滴下させず食品Wの余熱により芯温をゆるやかに上昇させる。食品Wの余熱により芯温をゆるやかに上昇させた後に、例えば最後の1つの部分トレイ21により短時間で高温の調理油Oを食品Wに滴下して食品Wの芯温を殺菌に必要な温度まで上昇させる。揚げ調理により調理される衣をもった食品Wの、衣を除いた部分を種というが、例えば唐揚げの種である鶏肉は長時間加熱すると固くなる性質を有している。このように、長時間加熱すると種が固くなる性質をもつ唐揚げなどの揚げ調理に対しては、二度揚げが適している。二度揚げを行うことにより、種に柔らかさを保ちつつ、衣はサクサクとした食感をもった唐揚げに仕上げることができる。
なお、図10、図11に示すように、バーコンベヤ13は棒材14の両端を曲げ加工して連結させていくことにより構成されたコンベヤであってもよく、棒材14にはさらにU字状の補助部材14aを備えていてもよい。補助部材14aは棒材14へ、例えば溶接されて取り付けられている。また、バーコンベヤレール13aを設けて、搬送方向に沿ってバーコンベヤの下面側を受けるとともに、搬送方向に対して左右方向の位置を規制している。図10では説明のため、第1搬送板15と第2搬送板16は省略している。
第1搬送板15および第2搬送板16は補助部材14aへ回転自在に取り付けられている。図12に示すように、第1搬送板15および第2搬送板16を取り付ける際、搬送板固定部材15cを用いて補助部材14aを挟み込むようにして取り付ける。図12においては、搬送板及び搬送板固定部材15cは、補助部材14aの内側の幅に略合わせた寸法とし、搬送板が搬送方向と略直行する方向へ位置ずれすることを抑制するものである。また、搬送板固定部材15cは、搬送板の幅に略合わせた寸法とした一体型であるが、搬送板の幅に略合わせた別体型としてもよい。作用受け部材18と一体としてもよい。
図13に示すように食品搬出位置P2のスプロケット12により第1搬送板15と第2搬送板16の搬送される方向が変わるが、第1搬送板15と第2搬送板16は棒材14と補助部材14aにより回転を規制され、回転を規制された第1搬送板15および第2搬送板16の上を食品Wが滑り搬出されていく。これにより第1搬送板15および第2搬送板16によってガイドされて食品Wは食品トレイ26へ搬出されるので、食品Wが載置されていた第2搬送板16から直下へ落下して破損したり食品トレイ26からこぼれたりすることを防止することができる。なお、図11、図12、図13では、図面を見易くする関係から一部の部材のハッチングを省略している。
なお、図10に示すように、フライヤーの搬送装置2は第1搬送板15および第2搬送板16の両外側付近に、食品搬送方向に沿って区画板7aを備えていてもよい。図11のように区画板7aの上部は調理油の油面から一部を出しており、区画板の下部はバーコンベヤ13に接しない程度の位置まで下方へ延びている。この区画板7aを備えることにより、第1搬送板15と第2搬送板16で搬送される食品Wが、フレーム7と第1搬送板15および第2搬送板16の間隙に入り込むことを防ぐことができ、食品を確実に搬送することができる。
前記したように、ポンプ25により各部分トレイ21に供給され、各部分トレイ21から食品Wに流れ落とされた調理油Oは、油層5中に流れ落ち、油層5中を食品投入位置P1側へ流動し、再び、吸油口22から給油パイプ23を介してポンプ25により、各部分トレイ21に供給されるように循環流動している。また、起立している第2搬送板16により調理油は出口側へ移動する流れがある。区画板7aを備えることにより、区画板7aの外側、つまり区画板7aとフレーム7の間を調理油が流動可能となり、第2搬送板16による出口側への流れは邪魔されずに、入口側への循環流動が可能となり、より安定した循環流動とすることができ、調理油の均温化が促進される。
なお、図13に示すように、傾斜搬送部4は第2搬送板16を起立させたまま食品を搬送するので、ガイド部材17を上下する必要がない。そのためガイド部材17を例えば板材を折り曲げ加工して製造し、例えばフレーム7へ固定する構造としてもよい。その場合は容易に第2搬送板を起立させたまま傾斜搬送部で食品を搬送することができる。なお、水平搬送部においてもガイド部材を上下する必要のない箇所は、同様に固定された板金としてもよい。
以上のように、実施形態に係るフライヤー、フライヤーの搬送装置によれば、油中で浮かび上がるタイミングに差のある食品や、投入直後から食品の取出しまで沈む食品、衣が固まるまでに時間の異なる食品など、食品の種類を変更してもそれぞれの食品に最適な所定の調理時間で調理することが可能であるとともに、油中へ投入直後から沈み流動性のある衣をもつ食品でも、型崩れを防止して食品の見栄えを良く調理することが可能であり、高品質な食品を歩留りよく製造することができる。
また、従来、食品を調理油中から搬出し油切りするために設けていたフライヤー出口側の傾斜搬送部において、部分トレイから食品Wに調理油を流れ落とし食品及び搬送板の加熱を行うことにより、調理油中の揚げ調理に比べて調理油の吸収の少ない揚げ調理が可能であるとともに、食品の温度低下を抑制することが可能で、いわゆる油っぽくない、しかも温かい食品を提供することが可能となった。また、フライヤーの入口から出口までの全体を加熱ゾーンとして有効に利用するものであり、調理能力の最大化、装置のコンパクト化を図ることが可能である。