JP2017214957A - クラッチおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータとアーマチャの少なくとも一方に対して軟窒化処理が施されているクラッチにおいて、接触面側領域の摩耗量を低減する。
【解決手段】アーマチャ20の接触面20aを含む接触面側領域に対して軟窒化処理を施しておく。このため、アーマチャ20の接触面側領域は、アーマチャ20を構成する母材中の元素の窒化化合物が生成しており、母材よりも硬質となる。そして、ロータ10の摩擦面13aに、ロータ10の接触面13aを含む接触面側領域およびアーマチャ20の接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材16を設置する。これによれば、摩耗抑制部材16が設置されていない場合と比較して、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、クラッチおよびその製造方法に関するものである。
乾式の電磁クラッチにおいて、切削加工や研磨加工によって、アーマチャの摩擦面およびロータの摩擦面が形成されたばかりの初期状態の摩擦面は、摩擦係数が比較的小さいため、伝達トルクが小さい。しかし、トルクの伝達遮断を繰り返すと、両方の摩擦面が酸化されることで摩擦係数が増大し、伝達トルクが上昇することが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、従来では、製品の出荷前、すなわち、クラッチの製造工程において、実際にトルクの伝達遮断を繰り返し、摩擦面を酸化させて、電磁クラッチの伝達トルクを上昇させる慣らし運転を行っている。
特開2003−314585号公報
しかし、従来のクラッチでは、摩擦面が初期状態のときよりも伝達トルクが上昇して高い伝達トルクが安定して得られるまでには、時間が多大にかかってしまうという問題があった。このため、クラッチの製造工程において、慣らし運転の時間が長くなり、クラッチの製造にかかる時間が長くなってしまう
そこで、この対策として、本発明者らは、ロータとアーマチャの少なくとも一方に対して軟窒化処理を施すことを検討した。
ロータとアーマチャのそれぞれは、アーマチャがロータに吸着された際に相手側と接触する接触面を含む接触面側領域を有する。ロータとアーマチャの少なくとも一方に対して軟窒化処理が施されると、軟窒化処理が施された接触面側領域は、接触面にて開口する複数の孔を有し、さらに、母材中の元素と同種の元素の窒化化合物が生成していることによって、窒化化合物が生成していない母材よりも硬質となる。
これによれば、アーマチャとロータの脱着(すなわち、トルクの伝達と遮断)の繰り返しにより、窒化化合物が生成している接触面側領域が摩耗して硬質な摩耗粉が生成し、生成した摩耗粉が接触面側領域の孔の内部に保持される。このため、吸着時(すなわち、トルクの伝達時)のアーマチャとロータの真実接触面積が向上するとともに、硬質な摩耗粉がアーマチャの接触面とロータの接触面の間に介在することで、摩擦係数が増大する。この結果、トルクの伝達と遮断の開始から短時間で、両接触面が初期状態のときの伝達トルクよりも、伝達トルクを上昇させて、安定した高い伝達トルクを得ることができる。
しかし、軟窒化処理によって、摩擦係数が増大すると、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面側領域の摩耗量が増大する。摩耗量が増大することによって、アーマチャとロータの間の空隙が広がる等の問題が生じることが本発明者によって見出された。アーマチャとロータの間の空隙が広がると、ロータから離れた状態のアーマチャをロータに吸引するための力が弱くなり、場合によっては、アーマチャをロータに吸引することができなくなる。
本発明は上記点に鑑みて、ロータとアーマチャの少なくとも一方に対して軟窒化処理が施されているクラッチにおいて、接触面側領域の摩耗量を低減することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、クラッチは、
鉄鋼材料を母材として構成され、駆動源からの回転駆動力を受けて、回転中心線(O)を中心に回転するロータ(10)と、
鉄鋼材料を母材として構成され、磁力によってロータに吸着されることにより、回転駆動力が伝達されるアーマチャ(20)とを備え、
ロータとアーマチャのそれぞれは、アーマチャがロータに吸着された際に相手側と接触する接触面(13a、20a)を含む接触面側領域(52、42)を有し、
ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面側領域は、接触面にて開口する複数の孔(52a、42a)を有し、さらに、母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、母材よりも硬質であり、
ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面に、接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(16、25)が設置されている。
これによれば、ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面に、摩耗抑制部材が設置されているので、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
第1実施形態における電磁クラッチ全体の断面構成を示す図である。 図1中のロータの摩擦面の平面図である。 図1中のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の拡大図である。 図1中のアーマチャの拡大図である。 図4中の白層と化合物層の拡大図である。 第1実施形態におけるアーマチャの製造工程を示す図である。 慣らし運転時における第1実施形態のアーマチャの摩擦面の拡大断面図である。 慣らし運転後における第1実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 第2実施形態におけるロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 第3実施形態におけるロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータから離れている非吸着時における第4実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータに吸着されている吸着時における第4実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータから離れている非吸着時における第5実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータに吸着されている吸着時における第5実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータから離れている非吸着時における第6実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 アーマチャがロータに吸着されている吸着時における第6実施形態のロータのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 第7実施形態におけるロータの拡大断面図である。 図14中の白層と化合物層の拡大図である。 第7実施形態におけるアーマチャのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。 慣らし運転時における第7実施形態のロータの摩擦面の拡大断面図である。 慣らし運転後における第7実施形態のアーマチャのうち摩耗抑制部材が設置されている部分の断面図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
図1に示す第1実施形態の電磁クラッチ1は、車両走行用駆動力を出力する駆動源としてのエンジンから回転駆動力を得て、圧縮機構を回転駆動させる圧縮機2の駆動機構に使用されるものである。したがって、本実施形態では、エンジンが駆動源であり、圧縮機2が従動側機器である。
圧縮機2は、冷媒を吸入して圧縮するものであり、圧縮機2からの吐出冷媒を放熱させる放熱器、放熱器からの流出冷媒を減圧膨張させる膨張弁、および、膨張弁にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器とともに、車両用空調装置の冷凍サイクル装置を構成する。
電磁クラッチ1は、エンジンからの回転駆動力を受けた際に回転中心線Oを中心に回転する駆動側回転体を構成するロータ10と、圧縮機2の回転軸2aに連結された従動側回転体を構成するアーマチャ20とを有する。このロータ10とアーマチャ20とを連結したり、切り離したりすることで、エンジンから圧縮機2への回転駆動力(すなわち、トルク)の伝達を断続する。なお、図1は、ロータ10とアーマチャ20とを互いに切り離した状態を示している。
つまり、電磁クラッチ1がロータ10とアーマチャ20とを連結すると、エンジンの回転駆動力が圧縮機2に伝達されて、冷凍サイクル装置が作動する。一方、電磁クラッチ1がロータ10とアーマチャ20とを切り離すと、エンジンの回転駆動力が圧縮機2に伝達されることはなく、冷凍サイクル装置も作動しない。なお、電磁クラッチ1は、冷凍サイクル装置の各種構成機器の作動を制御する空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
以下、電磁クラッチ1の具体的な構成について説明する。図1に示すように、電磁クラッチ1は、ロータ10、アーマチャ20およびステータ30を備えている。
ロータ10は、アーマチャ20から離れた側である反アーマチャ側が開口した断面U字形状の二重円筒構造である。すなわち、ロータ10は、外側円筒部11と、この外側円筒部11の内周側に配置される内側円筒部12と、外側円筒部11および内側円筒部12のアーマチャ20側の端部同士を結ぶように回転中心線Oに直交する方向に広がる端面部13とを有している。外側円筒部11、内側円筒部12および端面部13は、基本的には、鉄鋼材料としての炭素含有量が0.3%以下である低炭素鋼、例えば、S12Cで構成されている。
外側円筒部11および内側円筒部12は、圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に配置されている。すなわち、図1に示す回転中心線Oは、外側円筒部11および内側円筒部12の回転中心線であるとともに、回転軸2aの回転中心線でもある。外側円筒部11の外周側には、プーリ部14が接合されている。プーリ部14は、Vベルトが掛けられるV溝14aが形成されている。内側円筒部12の内周側には、ボールベアリング15の外側レースが固定されている。
ボールベアリング15は、圧縮機2の外殻を形成するハウジングに対して、ロータ10を回転自在に固定するものである。そのため、ボールベアリング15の内側レースは、圧縮機2のハウジングに設けられたハウジングボス部2bに固定されている。
端面部13は、アーマチャ20に対向する壁部である。端面部13は、アーマチャ20側の一面13aと反アーマチャ側の他面13bとを有している。換言すると、端面部13は、回転中心線Oの軸線方向における一側と他側にそれぞれ配置された一面13aと他面13bを有し、一面13aおよび他面13bは、回転中心線Oの軸線方向に直交する方向にそれぞれ延設されている。端面部13の一面13aは、アーマチャ20に対向しており、アーマチャ20がロータ10に連結された際に、相手側であるアーマチャ20と接触する接触面13aとなる。なお、接触面13aは、アーマチャ20と接触して摩擦が生じる摩擦面でもある。以下では、端面部13の一面13aを摩擦面13aと呼ぶ。また、以下では、回転中心線Oの軸線方向を、単に軸線方向と呼ぶ。
摩擦面13aには、複数の第1スリット13cと、複数の第2スリット13dとが形成されている。複数の第1スリット13cは、後述する磁気回路Xを形成するためのロータ側の第1磁気遮断部を構成している。1つの第1スリット13cは、軸線方向で端面部13を貫通している。1つの第1スリット13cは、第1スリット形成面13c1によって構成されている。複数の第2スリット13dは、複数の第1スリット13cよりもロータ10の径方向内側(すなわち、ロータ10の回転中心線O側)に配置されている。複数の第2スリット13dは、磁気回路Xを形成するためのロータ側の第2磁気遮断部を構成している。1つの第2スリット13dは、軸線方向で端面部13を貫通している。1つの第2スリット13dは、第2スリット形成面13d1によって構成されている。
図2に示すように、1つの第1スリット13cは、円弧状に形成されている。複数の第1スリット13cは、互いに非連続の状態で、円周方向に沿って配置されている。したがって、第1磁気遮断部は、円周方向に沿う形状とされている。同様に、1つの第2スリット13dは、円弧状に形成されている。複数の第2スリット13dは、互いに非連続の状態で、円環状に配置されている。したがって、第2磁気遮断部は、円周方向に沿う形状とされている。
図1に示すように、摩擦面13aには、摩耗抑制部材16が設置されている。摩耗抑制部材16は、摩擦面13aを含むロータ10の摩擦面側領域と後述するアーマチャ20の摩擦面20aを含むアーマチャ20の摩擦面側領域の摩耗を抑制するための部材である。摩耗抑制部材16は、摩擦面13aのうち第1スリット13cが形成されている部位に配置されている。換言すると、摩耗抑制部材16は、摩擦面13aのうち軸線方向で第1スリット13cと摩耗抑制部材16の一部が重なる位置に配置されている。
図2に示すように、摩耗抑制部材16は、円周方向全域にわたって連続している円環形状である。摩耗抑制部材16は、第1スリット13cを覆っている。
図3に示すように、摩耗抑制部材16の表面16aは平坦である。そして、摩耗抑制部材16の表面16aが摩擦面13aに対して凹んだ状態で、摩耗抑制部材16が摩擦面13aに設置されている。換言すると、軸線方向における摩擦面13aの位置を含まず、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側(すなわち、反アーマチャ側)の範囲内に摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。なお、本実施形態では、ロータ10の摩擦面13aが、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材が設置された第1接触面に相当し、アーマチャ20の摩擦面20aが、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材に対向する第2接触面に相当する。
摩擦面13aには、保持部としての溝17が形成されている。溝17は、第1スリット13cと軸線方向で重なる位置に形成されている。ロータ10の径方向における溝17の幅は、第1スリット13cの幅よりも大きくされている。溝17は、底面17aと側面17bとを有する。底面17aの一部に第1スリット13cが形成されており、溝17の内部空間と第1スリット13cとがつながっている。摩耗抑制部材16は、溝17に保持されている。摩耗抑制部材16は、接着剤を介して、溝17の底面17aに接着されている。
摩耗抑制部材16は、アーマチャ20の摩擦面20aを形成する材料よりもヤング率が低い材料で構成されている。これは、アーマチャ20の摩擦面20aの摩耗を抑制するためである。本実施形態では、摩擦面20aを形成する材料は、後述の通り、軟窒化処理によって窒化化合物が生成している鉄鋼材料である。
摩耗抑制部材16は、非磁性材料で構成されている。摩耗抑制部材16が、磁性材料で構成されていると、摩耗抑制部材16に磁束が流れることで、ロータ10とアーマチャ20との間を磁束が蛇行しながら流れる磁気回路Xが形成されなくなってしまうからである。
摩耗抑制部材16は、ロータ10の摩擦面13aを形成する材料と比較して、摩耗抑制部材16が対向する摩擦面であるアーマチャ20の摩擦面20aとの摩擦係数が高い材料で構成されている。本実施形態では、ロータ10の摩擦面13aを形成する材料は、軟窒化処理がされていない鉄鋼材料である。これにより、摩耗抑制部材16が設置されていない場合と比較して、ロータ10とアーマチャ20との全体の伝達トルクを向上できる。
摩耗抑制部材16としては、例えば、アルミナ粉末を樹脂材料で固めたものが挙げられる。
アーマチャ20は、ロータ10と同様に、低炭素鋼、例えば、S12Cで構成されている。アーマチャ20は、図1に示すように、回転中心線Oに直交する方向に広がるとともに、中心部にその表裏を軸線方向に貫通する貫通穴が形成された円盤状部材である。このアーマチャ20の回転中心は、圧縮機2の回転軸2aに対して同軸上に配置されている。すなわち、アーマチャ20の回転中心線は、回転中心線Oと一致している。
アーマチャ20は、ロータ10側の一面20aと反ロータ側の他面20bとを有している。換言すると、アーマチャ20は、回転中心線Oの軸線方向における一側と他側にそれぞれ配置された一面20aと他面20bを有し、一面20aおよび他面20bは、軸線方向に直交する方向にそれぞれ延設されている。アーマチャ20の一面20aは、ロータ10に対向しており、アーマチャ20がロータ10に連結された際に、相手側であるロータ10と接触する接触面20aとなる。なお、接触面20aは、ロータ10と接触して摩擦が生じる摩擦面でもある。したがって、アーマチャ20の一面20aを摩擦面20aとも呼ぶ。
アーマチャ20の摩擦面20aには、ロータ10の端面部13と同様に、複数のスリット20cが形成されている。複数のスリット20cは、後述する磁気回路Xを形成するためのアーマチャ側の磁気遮断部を構成している。1つのスリット20cは、軸線方向でアーマチャ20を貫通している。1つのスリット20cは、スリット形成面20c1によって構成されている。1つのスリット20cは、円弧状に形成されている。複数のスリット20cは、互いに非連続の状態で、円周方向に沿って配置されている。したがって、アーマチャ側の磁気遮断部は、円周方向に沿う形状とされている。複数のスリット20cは、ロータ10の径方向における複数の第1スリット13cと複数の第2スリット13dとの間の位置に配置されている。
アーマチャ20の他面20bには、略円盤状のアウターハブ21が固定されている。アウターハブ21は、後述するインナーハブ22とともに、アーマチャ20と圧縮機2の回転軸2aとを連結する連結部材を構成している。アウターハブ21とインナーハブ22は、それぞれ回転中心線Oの軸線方向に延びる円筒部21a、22aを有しており、アウターハブ21の円筒部21aの内周面およびインナーハブ22の円筒部22aの外周面には、円筒状のゴム23が加硫接着されている。ゴム23は、弾性材料(すなわち、エラストマー)からなる弾性部材である。
さらに、インナーハブ22は、圧縮機2の回転軸2aに設けられたネジ穴にボルト24によって締め付けられることによって固定されている。すなわち、インナーハブ22は圧縮機2の回転軸2aに連結可能に構成されている。
これにより、アーマチャ20、アウターハブ21、ゴム23、インナーハブ22、および圧縮機2の回転軸2aが連結される。そして、ロータ10とアーマチャ20が連結されると、アーマチャ20、アウターハブ21、ゴム23、インナーハブ22、および圧縮機2の回転軸2aがロータ10とともに回転する。
また、ゴム23は、アウターハブ21に対してロータ10から離れる方向に弾性力を作用させている。この弾性力により、ロータ10とアーマチャ20が切り離された状態では、アウターハブ21に連結されたアーマチャ20の摩擦面20aとロータ10の摩擦面13aとの間に予め定めた所定間隔の空隙が形成される。
ステータ30は、ロータ10の外側円筒部11、内側円筒部12および端面部13によって囲まれたロータ10の内部空間に配置されている。このため、ステータ30は、端面部13の他面13bに対向している。ステータ30は、鉄等の磁性体で構成されており、内部に電磁コイル35を収納している。
ステータ30は、端面部13側に開口部30aを有する断面U字形状の二重円筒構造である。具体的には、ステータ30は、外側円筒部31と、この外側円筒部11の内周側に配置される内側円筒部32と、外側円筒部31および内側円筒部32のロータ10の摩擦面13aから離れた側の端部同士を結ぶように回転中心線Oに直交する方向に広がる端面部33とを有している。
ステータ30の内部空間には、円環状のコイルスプール34が収容されている。コイルスプール34はポリアミド樹脂等の樹脂材料から形成されている。コイルスプール34上に、電磁コイル35が巻回されている。
さらに、ステータ30の開口部30a側に、電磁コイル35を封止するポリアミド樹脂等の樹脂部材36が設けられている。これにより、ステータ30の開口部30aが樹脂部材36によって塞がれている。
また、ステータ30の端面部33の外側(図1の右側)には、ステータプレート37が固定されている。このステータプレート37を介して、ステータ30は、圧縮機2のハウジングに固定されている。
次に、上記構成の電磁クラッチ1の作動について説明する。電磁コイル35の通電時では、図1中の一点鎖線で示すように、ステータ30からロータ10、アーマチャ20を経てステータ30に戻る磁気回路Xに磁束が流れる。これにより、ロータ10とアーマチャ20との間に磁力が発生する。したがって、電磁コイル35の通電時では、電磁コイル35が発生する磁力によって、アーマチャ20がロータ10の摩擦面13aに吸着され、ロータ10とアーマチャ20とが連結する。これにより、エンジンからの回転駆動力が圧縮機2へ伝達される。
一方、電磁コイル35の通電が遮断されると、すなわち、電磁コイル35の非通電時では、上記した磁力が発生せず、ゴム23の弾性力によって、アーマチャ20がロータ10の摩擦面13aから切り離される。これにより、エンジンからの回転駆動力は圧縮機2へ伝達されない。
次に、アーマチャ20の内部構造について説明する。
アーマチャ20は、低炭素鋼を母材として構成されたものである。換言すると、アーマチャ20の母材として、低炭素鋼が用いられている。アーマチャ20は、この母材に対して軟窒化処理と塗装処理が順に施されている。母材とは、基体となる材料である。このため、図4に示すように、アーマチャ20は、外側から順に、塗膜41、白層42、化合物層43、拡散層44を有している。なお、図4は、摩擦面20aが初期状態であるアーマチャ20の断面を示している。このため、図4では、摩擦面20aに塗膜41が存在している。
塗膜41は、防錆を目的とした防錆膜である。塗膜41は、合成樹脂、例えば、エポキシ樹脂系を主成分とした塗料によって形成されている。
白層42および化合物層43は、どちらも、母材の一部が窒化反応することによって母材中の元素と同種の元素の窒化化合物が生成している層である。換言すると、白層42および化合物層43は、鉄と窒素と炭素を含有する組成の層であり、ε相(Fe2〜3N)およびFe3Cが生成している層である。白層42および化合物層43は、白層42の下地となる拡散層44や母材45よりも硬質の層、すなわち、硬度が高い層である。拡散層44は、母材に窒素が拡散した層である。拡散層44よりも内部が母材45である。白層42の厚さは数μm(2μm以上10μm以下)である。化合物層43の厚さは10μm程度(8μm以上15μm以下)である。拡散層44の厚さは0.3mm以上0.5mm以下である。
図5に示すように、白層42は、層の表面に多数の孔42aを有する多孔質層(ポーラス層)である。化合物層43は、多孔質ではない緻密な層である。したがって、本実施形態では、白層42がアーマチャ20の摩擦面20aを含む接触面側領域であって、摩擦面20aにて開口する複数の孔42aを有し、母材45よりも硬質である接触面側領域である。なお、図5は、摩擦面20aが塗膜41を消失した状態であるアーマチャ20の摩擦面20a付近の断面図を示している。
本実施形態では、白層42は、鉄と窒素と炭素を含有する組成であって、具体的には、Fe2〜3NおよびFe3Cが生成している層であったが、母材45よりも硬質であって、多孔質であれば、他の組成であってもよい。例えば、白層42が、炭素を含まず、鉄と窒素を含有する組成であってもよい。また、白層42に、母材中のFe以外の元素の窒化物が生成していてもよい。
また、本実施形態では、図4に示すように、アーマチャ20の表面全域に白層42が形成されているが、アーマチャ20の表面のうち少なくとも摩擦面20aに、白層42が形成されていればよい。また、摩擦面20aの全域に白層42が形成されていることが好ましいが、摩擦面20aの全域に限らず、摩擦面20aの一部の領域に白層42が形成されていてもよい。
次に、本実施形態の電磁クラッチ1の製造方法について説明する。電磁クラッチ1は、上記したロータ10、アーマチャ20等の電磁クラッチ1の各構成部品を組み付けることで製造される。本実施形態では、図6に示すように、プレス成型工程、摩擦面仕上げ工程、軟窒化工程、塗装工程を経ることで、アーマチャ20を製造する。一方、ロータ10に対して摩耗抑制部材16を設置する設置工程を行う。その後、組み付け工程と、慣らし運転工程とを行う。
プレス成型工程では、母材をプレス成型してアーマチャ20の形状とする。摩擦面仕上げ工程では、切削や研磨等によって、アーマチャ20の形状にプレス成型された母材の表面側部分を削って平滑化して、アーマチャ20の摩擦面20aを形成する。このように、プレス成型工程および摩擦面仕上げ工程を含む機械加工工程によって、摩擦面20aを有するアーマチャ20を形成する。
軟窒化工程では、摩擦面仕上げ工程後のアーマチャ20の摩擦面20aに対して、軟窒化処理を施す。本実施形態では、軟窒化処理として、塩浴軟窒化を行う。塩浴軟窒化処理としては、一般的な処理方法を採用することができる。この軟窒化処理の加熱温度は550〜600℃程度である。
これにより、アーマチャ20の摩擦面20aの表層に、図5に示す構造を有する白層42、化合物層43を形成する。このとき、アーマチャ20の内部の母材に窒素が拡散するため、アーマチャ20の内部の母材を拡散層という。本実施形態では、上述の通り、アーマチャ20の表面全域に白層42、化合物層43を形成している。
塗装工程では、アーマチャ20の表面のうち少なくとも摩擦面20aを除く領域に対して、防錆処理として塗装処理を行う。これにより、アーマチャ20の表面のうち摩擦面20aを除く領域において、アーマチャ20の最表層に塗膜41を形成する。本実施形態では、図4に示すように、上述の通り、アーマチャ20の表面全域に、塗膜41を形成している。
設置工程では、ロータ10の摩擦面13aに形成された溝17に、摩耗抑制部材16を設置する。このとき、接着剤によって、摩耗抑制部材16を溝17に接着する。なお、ロータ10は、アーマチャ20と同様に、プレス成型工程、摩擦面仕上げ工程等を経ることで形成される。
組み付け工程では、塗装処理後のアーマチャ20とハブ21、22等を組み付ける。さらに、アーマチャ20およびロータ10等を圧縮機2に組み付ける。
その後、慣らし運転工程を行う。慣らし運転では、電磁コイル35の通電と非通電、すなわち、電磁クラッチ1のオンとオフとが繰り返される。換言すると、アーマチャ20とロータ10の脱着が繰り返される。これにより、アーマチャ20の摩擦面20aの塗膜41が除去される。さらに、アーマチャ20の摩擦面20aおよびロータ10の摩擦面13aが摩耗して、伝達トルクが上昇する。このようにして、図1に示す構造の電磁クラッチ1が製造される。
なお、本実施形態では、アーマチャ20およびロータ10等を圧縮機2に組み付けた後に慣らし運転を行ったが、アーマチャ20およびロータ10等を圧縮機2とは別の回転体に組み付けて慣らし運転を行ってもよい。この場合、慣らし運転後に、アーマチャ20およびロータ10等を圧縮機2に組み付ける。
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)図3に示すように、慣らし運転前の初期状態では、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が、軸線方向におけるロータ10の摩擦面13aの位置よりも反アーマチャ側に位置している。この状態で、慣らし運転を開始すると、アーマチャ20がロータ10に吸着される吸着時に、摩耗抑制部材16は、アーマチャ20の摩擦面20aと接触しない。このため、慣らし運転時では、ロータ10の摩擦面13aと摩耗抑制部材16のうち摩擦面13aのみがアーマチャ20の摩擦面20aと接触する。
また、アーマチャ20の摩擦面20aの表層に、多孔質の白層42が形成されている。このため、慣らし運転を開始すると、アーマチャ20とロータ10の脱着の繰り返しにより、白層42が摩耗して硬質な摩耗粉が生成する。そして、図7に示すように、生成した硬質な摩耗粉42bが、白層42の孔42aの内部に保持される。
これにより、吸着時のアーマチャ20とロータ10の真実接触面積が向上するとともに、硬質な摩耗粉42bがアーマチャ20の摩擦面20aとロータ10の摩擦面13aの間に介在することで、摩擦係数が増大する。この結果、慣らし運転の開始から短時間で、両摩擦面20a、13aが初期状態のときよりも伝達トルクを上昇させて、安定した高い伝達トルクを得ることができる。よって、本実施形態によれば、慣らし運転にかかる時間を短縮でき、クラッチの製造にかかる時間を短縮できる。
(2)慣らし運転時に、ロータ10の摩擦面13aを含む摩擦面側領域が摩耗すると、図8に示すように、摩耗抑制部材16の表面16aは、軸線方向で摩擦面13aと同じ位置となる。換言すると、慣らし運転は、摩耗抑制部材16の表面16aの少なくとも一部が軸線方向で摩擦面13aと同じ位置となるまで行われる。すなわち、摩耗抑制部材16の表面16aの少なくとも一部が摩擦面20aに接触する状態で、慣らし運転が終了する。
したがって、慣らし運転後では、吸着時に、ロータ10の摩擦面13aとアーマチャ20の摩擦面20aとが接触するとともに、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触する。これにより、ロータ10の摩擦面13aとアーマチャ20の摩擦面20aとの接触面圧が低減される。このため、1回の断続当たりのロータ10とアーマチャ20のそれぞれの摩擦面13a、20aを含む摩擦面側領域の摩耗量を低減することができる。
(第2実施形態)
本実施形態は、慣らし運転前の初期状態における摩耗抑制部材16の表面の形状が、第1実施形態と異なる。電磁クラッチ1のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
図9に示すように、摩耗抑制部材16の表面16aは、複数の凸部16bおよび複数の凹部16cを有し、凸部16bと凹部16cとが交互に位置する凹凸形状である。凸部16bの頂部は尖っている。この凹凸形状は、摩耗抑制部材16の切削加工等によって生じるものである。そして、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、慣らし運転前の初期状態において、軸線方向における摩擦面13aの位置を含まず、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側(すなわち、反アーマチャ側)の範囲内に摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。すなわち、摩耗抑制部材16の表面16aの全部は、摩擦面13aよりもアーマチャ側に出っ張っていない。
このように、本実施形態での摩耗抑制部材16の設置状態は、第1実施形態と同じである。したがって、本実施形態においても、慣らし運転時と慣らし運転後において、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態)
本実施形態は、慣らし運転前の初期状態における摩耗抑制部材16の配置が、第1実施形態と異なる。電磁クラッチ1のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
図10に示すように、慣らし運転前の初期状態において、摩耗抑制部材16は、摩耗抑制部材16の表面16aが摩擦面13aと面一となるように設置されている。換言すると、摩耗抑制部材16の表面16aが平坦であって、軸線方向での摩擦面13aの位置と同じ位置に、表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。
このため、本実施形態では、慣らし運転時では、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。ロータ10の摩擦面13aとアーマチャ20の摩擦面20aとが接触することで、アーマチャ20の摩擦面20aを含む摩擦面側領域が摩耗する。これにより、第1実施形態と同様に、慣らし運転にかかる時間を短縮でき、クラッチの製造にかかる時間を短縮できる。なお、本実施形態では、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触するため、第1実施形態と比較して、摩耗量が抑制される。本実施形態によれば、摩耗量が抑制されても、アーマチャ20が軟窒化処理されていない場合と比較して、慣らし運転にかかる時間を短縮でき、クラッチの製造にかかる時間を短縮できる。
そして、本実施形態においても、摩耗抑制部材16の表面16aが摩擦面20aに接触する状態で、慣らし運転が終了する。慣らし運転後では、吸着時に、ロータ10の摩擦面13aとアーマチャ20の摩擦面20aとが接触するとともに、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触する。摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触することにより、第1実施形態と同様に、ロータ10とアーマチャ20のそれぞれの摩擦面側領域の摩耗量を低減することができる。
(第4実施形態)
本実施形態は、慣らし運転前の初期状態における摩耗抑制部材16の配置が、第1実施形態と異なる。電磁クラッチ1のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
図11Aに示すように、慣らし運転前の初期状態において、摩耗抑制部材16の表面16aは、複数の凸部16bおよび複数の凹部16cを有し、凸部16bと凹部16cとが交互に位置する凹凸形状である。そして、アーマチャ20がロータ10に吸着されておらず、アーマチャ20がロータ10から離れている非吸着時に、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aに近い側(すなわち、アーマチャ側)に凸部16bの頂部が位置し、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側(すなわち、反アーマチャ側)に凹部16cが位置するように、摩耗抑制部材16が設置されている。すなわち、非吸着時に、軸線方向で摩擦面13aよりもアーマチャ側に表面16aの一部が出っ張っている状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、非吸着時に、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aに近い側に表面16aの一部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。
ただし、図11Bに示すように、吸着時においては、摩耗抑制部材16が弾性変形して、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が、軸線方向で摩擦面13aよりもアーマチャ側に出っ張らない状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、吸着時に、摩耗抑制部材16が弾性変形された状態となっており、軸線方向における摩擦面13aの位置を含み、かつ、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に、表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。この状態で、慣らし運転を開始すすると、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。
慣らし運転後においても、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。慣らし運転後では、摩耗抑制部材16が弾性変形した状態または弾性変形していない状態で、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第5実施形態)
本実施形態は、慣らし運転前の初期状態における摩耗抑制部材16の配置が、第1実施形態と異なる。電磁クラッチ1のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
図12Aに示すように、慣らし運転前の初期状態において、摩耗抑制部材16の表面16aは、頂部が丸みを帯びた凸部16dを有する形状である。非吸着時に、凸部16dの頂部が摩擦面13aよりも軸線方向でのアーマチャ側に位置し、表面16aのうち凸部16dを除く部位が摩擦面13aよりも軸線方向での反アーマチャ側に位置するように、摩耗抑制部材16が設置されている。すなわち、表面16aの一部16dが、摩擦面13aよりも軸線方向でのアーマチャ側に出っ張っている状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、非吸着時に、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aに近い側に、摩耗抑制部材16の表面16a一部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。
ただし、図12Bに示すように、吸着時においては、摩耗抑制部材16が弾性変形して、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が、摩擦面13aよりも軸線方向でアーマチャ側に出っ張らない状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、吸着時に、摩耗抑制部材16が弾性変形された状態となっており、軸線方向における摩擦面13aの位置を含み、かつ、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。このため、慣らし運転時では、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。
慣らし運転後においても、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。慣らし運転後では、摩耗抑制部材16が弾性変形した状態または弾性変形していない状態で、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第6実施形態)
本実施形態は、慣らし運転前の初期状態における摩耗抑制部材16の配置が、第1実施形態と異なる。電磁クラッチ1のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
図13Aに示すように、慣らし運転前の初期状態において、摩耗抑制部材16の表面16aは平坦である。そして、非吸着時に、軸線方向で摩擦面13aよりもアーマチャ側に表面16aの全部が出っ張っている状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、非吸着時に、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aに近い側に表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。
ただし、図13Bに示すように、吸着時においては、摩耗抑制部材16が弾性変形して、表面16aの全部が、軸線方向で摩擦面13aよりもアーマチャ側に出っ張らない状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。換言すると、吸着時に、摩耗抑制部材16が弾性変形された状態となっており、軸線方向における摩擦面13aの位置を含み、かつ、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に、表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。この状態で、慣らし運転を開始すると、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。
慣らし運転後においても、吸着時に、摩耗抑制部材16の表面16aとロータ10の摩擦面13aの両方が、アーマチャ20の摩擦面20aに接触する。慣らし運転後では、摩耗抑制部材16が弾性変形した状態または弾性変形していない状態で、摩耗抑制部材16の表面16aがアーマチャ20の摩擦面20aに接触する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
(第7実施形態)
第1実施形態では、アーマチャ20が軟窒化処理されており、ロータ10に摩耗抑制部材16が設置されていた。これに対して、本実施形態では、図14、15に示すように、ロータ10が軟窒化処理されており、図16に示すように、アーマチャ20の摩擦面20aに摩耗抑制部材25が設置されている。したがって、本実施形態では、アーマチャ20の摩擦面20aが、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材が設置された第1接触面に相当し、ロータ10の摩擦面13aが、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材に対向する第2接触面に相当する。
図14に示すロータ10は、図4に示すアーマチャと同様に、低炭素鋼の母材母材に対して軟窒化処理と塗装処理が順に施されたものであり、外側から順に、塗膜51、白層52、化合物層53、拡散層54、母材55を有している。塗膜51、白層52、化合物層53、拡散層54、母材55は、それぞれ、図4中の塗膜41、白層42、化合物層43、拡散層44、母材45に対応するものである。白層52は、図15に示すように、層の表面に多数の孔52aを有する多孔質層である。したがって、本実施形態では、白層52がロータ10の摩擦面13aを含む接触面側領域であって、摩擦面13aにて開口する複数の孔52aを有し、母材55よりも硬質である接触面側領域である。なお、図14は、摩擦面13aが初期状態であるロータ10の断面を示している。このため、図14では、摩擦面13aに塗膜51が存在している。また、図14に示すロータ10は、第1実施形態で説明したアーマチャの製造方法と同様の製造方法によって製造される。
図16に示すように、慣らし運転前の初期状態において、摩耗抑制部材25は、表面25aが摩擦面20aに対して凹んだ状態で、摩擦面20aに設置されている。換言すると、軸線方向における摩擦面20aの位置を含まず、軸線方向における摩擦面20aの位置よりも摩擦面13aから離れた側(すなわち、反ロータ側)の範囲内に摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されている。なお、摩耗抑制部材25は、第1実施形態で説明した摩耗抑制部材16と同じものである。
したがって、この状態で、慣らし運転を開始すると、アーマチャ20がロータ10に吸着される吸着時に、摩耗抑制部材25は、ロータ10の摩擦面13aと接触せず、アーマチャ20の摩擦面20aがロータ10の摩擦面13aと接触する。
そして、ロータ10の摩擦面13aの表層に、多孔質の白層52が形成されている。このため、慣らし運転時では、アーマチャ20とロータ10の脱着の繰り返しにより、白層52が摩耗して硬質な摩耗粉が生成する。そして、図17に示すように、生成した硬質な摩耗粉52bが、白層52の孔52aの内部に保持される。これにより、慣らし運転時において、第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態においても、図18に示すように、摩耗抑制部材25の表面25aの少なくとも一部が、軸線方向でアーマチャ20の摩擦面20aと同じ位置となるまで、慣らし運転が行われる。すなわち、摩耗抑制部材25の表面25aの少なくとも一部が摩擦面13aに接触する状態で、慣らし運転が終了する。
したがって、慣らし運転後では、吸着時に、ロータ10の摩擦面13aとアーマチャ20の摩擦面20aとが接触するとともに、摩耗抑制部材16の表面16aがロータ10の摩擦面10aに接触する。これにより、慣らし運転後においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、摩耗抑制部材25の表面25aの形状および摩耗抑制部材25の設置状態については、第2〜第6実施形態で説明した摩耗抑制部材16のように、変更することができる。この場合、第2〜第6実施形態で説明した摩耗抑制部材16の表面16aが、摩耗抑制部材25の表面25aに対応する。第2〜第6実施形態で説明した摩擦面13aが摩擦面20aに対応する。第2〜第6実施形態で説明した摩擦面20aが摩擦面13aに対応する。第2〜第6実施形態で説明したアーマチャ側、反アーマチャ側のそれぞれが、ロータ側、反ロータ側に対応する。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
(1)第1〜第6実施形態では、アーマチャ20が軟窒化処理されており、軟窒化処理がされていないロータ10に、摩耗抑制部材16が設置されていたが、これに限定されない。軟窒化処理がされているアーマチャ20に、摩耗抑制部材16が設置されていてもよく、ロータ10とアーマチャ20の両方に、摩耗抑制部材16が設置されていてもよい。
同様に、第7実施形態では、ロータ10が軟窒化処理されており、軟窒化処理がされていないアーマチャ20に、摩耗抑制部材25が設置されていたが、これに限定されない。軟窒化処理がされているロータ10に、摩耗抑制部材25が設置されていてもよく、ロータ10とアーマチャ20の両方に、摩耗抑制部材25が設置されていてもよい。
また、上記各実施形態では、ロータ10とアーマチャ20の一方のみに対して軟窒化処理を施したが、ロータ10とアーマチャ20の両方に軟窒化処理を施してもよい。この場合、ロータ10とアーマチャ20の一方または両方に摩耗抑制部材が配置されていればよい。
なお、摩耗抑制部材が、軟窒化処理が施された摩擦面に設置される場合、摩耗抑制部材は、軟窒化処理が施された摩擦面を形成する材料、すなわち、軟窒化処理によって窒化化合物が生成している鉄鋼材料と比較して、摩耗抑制部材と対向する摩擦面との摩擦係数が高い材料で構成されていることが好ましい。また、この場合も、摩耗抑制部材は、摩耗抑制部材と対向する接触面を形成する材料と比較して、ヤング率が低い材料で構成されていることが好ましい。摩耗抑制部材と対向する接触面を形成する材料は、軟窒化処理が施された鉄鋼材料または軟窒化処理が施されていない鉄鋼材料である。
(2)上記した各実施形態では、摩耗抑制部材16、25は、周方向全域にわたって連続している円環形状であったが、摩耗抑制部材16、25の形状は、これに限定されない。摩耗抑制部材16、25の形状は、他の形状であってもよい。例えば、摩耗抑制部材16、25の形状は、円弧形状であってもよい。この場合、複数の摩耗抑制部材のそれぞれが、間をあけて、円周方向に沿って配置されていてもよい。
(3)第1、第2実施形態では、軸線方向における摩擦面13aの位置を含まず、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されていた。また、第3実施形態では、軸線方向における摩擦面13aの位置と同じ位置に、摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態で、摩耗抑制部材16が設置されていた。
しかしながら、摩耗抑制部材16の設置状態は、第1〜第3実施形態のそれぞれの状態に限定されず、これらを組み合わせた状態であってもよい。すなわち、軸線方向における摩擦面13aの位置を含まず、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材16の表面16aの一部が位置する状態であり、軸線方向における摩擦面13aの位置と同じ位置に、摩耗抑制部材16の表面16aの残部が位置する状態であってもよい。要するに、摩耗抑制部材16の設置状態は、軸線方向における摩擦面13aの位置を含み、軸線方向における摩擦面13aの位置よりも摩擦面20aから離れた側の範囲内に摩耗抑制部材16の表面16aの全部が位置する状態であればよい。
なお、第7実施形態における摩耗抑制部材25の設置状態も同様である。すなわち、摩耗抑制部材25の設置状態は、軸線方向における摩擦面20aの位置を含み、軸線方向における摩擦面20aの位置よりも摩擦面13aから離れた側の範囲内に摩耗抑制部材25の表面25aの全部が位置する状態であればよい。
(4)第1実施形態では、軟窒化処理として、塩浴軟窒化を行ったが、ガス軟窒化を行ってもよい。この場合、加熱温度、ガス濃度を白層42が形成される条件に設定する。例えば、加熱温度を一般的な温度よりも高く設定したり、ガス濃度を一般的な濃度よりも高く設定したりする。これにより、ガス軟窒化によっても白層42を形成できる。
(5)第1実施形態では、防錆処理として、塗装処理を行ったが、他の防錆処理を行ってもよい。他の防錆処理としては、例えば、亜鉛めっき、亜鉛−ニッケルめっき等のめっき処理が挙げられる。ただし、めっき層も、軟窒化処理の加熱温度で、消失または劣化してしまう。このため、めっき処理も、軟窒化処理の後に行うことが望ましい。
(6)第1実施形態では、プレス成型工程、摩擦面仕上げ工程、軟窒化工程、塗装工程を順に行うことで、アーマチャ20を製造したが、各工程の間に、他の工程を行ってもよい。この場合であっても、摩擦面仕上げ工程、軟窒化工程、塗装工程を順に行うことで、第1実施形態と同じ効果が得られる。
また、プレス成型で摩擦面が形成される場合では、摩擦面仕上げ工程を行わなくてもよい。この場合も、プレス成型、すなわち、機械加工によって摩擦面を有するアーマチャを形成する加工工程の後に、軟窒化工程、塗装工程を順に行うことで、第1実施形態と同じ効果が得られる。
(7)第1実施形態では、軟窒化工程を摩擦面仕上げ工程の後に実施したが、白層42が削り取られてしまうことを回避できれば、軟窒化工程を摩擦面仕上げ工程の前に実施してもよい。
(8)第1実施形態では、ロータ10、アーマチャ20の母材として低炭素鋼を用いたが、磁性体である他の鉄鋼材料を用いてもよい。他の鉄鋼材料としては、例えば、SPHC(熱延圧延鋼板)、SPCC(冷延圧延鋼板)等が挙げられる。
(9)上記した各実施形態では、電磁コイルが発生する磁力によって、アーマチャ20をロータ10に吸着させる電磁クラッチに本発明を適用したが、永久磁石を使用するクラッチに本発明を適用することも可能である。永久磁石を使用するクラッチは、例えば、永久磁石の磁力によって、ロータとアーマチャとの連結状態を維持するとともに、永久磁石によって形成される磁気回路に対して、永久磁石による磁束の流れ方向と同一方向または逆方向の磁束を与えるように、電磁コイルで磁束を発生させることにより、ロータとアーマチャの連結と遮断の切り替えを行うものである。
(10)上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
(11)上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、クラッチは、ロータとアーマチャとを備える。ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面側領域は、接触面にて開口する複数の孔を有し、さらに、母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、母材よりも硬質である。ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面に、接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材が設置されている。
また、第2の観点によれば、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置を含み、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、摩耗抑制部材が設置されている。
また、第3の観点によれば、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置を含まず、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、摩耗抑制部材が設置されている。
また、第4の観点によれば、アーマチャがロータに吸着されておらず、アーマチャがロータから離れている非吸着時に、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面に近い側に、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が位置し、アーマチャがロータに吸着された吸着時に、摩耗抑制部材が弾性変形された状態となっており、軸線方向における第1接触面の位置を含み、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、摩耗抑制部材が設置されている。
第2〜4の観点のように、摩耗抑制部材を設置することが好ましい。第2〜4の観点のように、摩耗抑制部材を設置した状態で慣らし運転を開始すると、ロータの接触面とアーマチャの接触面とを接触させることができる。このため、早期に伝達トルクを向上できる。
慣らし運転後では、摩耗抑制部材が相手側の接触面と接触する。これにより、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、アーマチャがロータに吸着された際におけるロータとアーマチャのそれぞれの接触面の面圧を低減させることができる。よって、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
また、第5の観点によれば、摩耗抑制部材は、摩耗抑制部材と対向する接触面を形成する材料と比較して、ヤング率が低い材料で構成されている。これによれば、摩耗抑制部材と対向する接触面の摩耗を抑制することができる。
また、第6の観点によれば、摩耗抑制部材は、摩耗抑制部材が設置された接触面を形成する材料と比較して、摩耗抑制部材と対向する接触面との摩擦係数が高い材料で構成されている。これによれば、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、ロータとアーマチャの全体の伝達トルクを向上できる。
また、第7の観点によれば、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面には、ロータとアーマチャとの間を磁束が流れる磁気回路を形成するための磁気遮断部が設けられている。摩耗抑制部材は、非磁性材料で構成されているとともに、接触面のうち磁気遮断部に対して回転中心線の軸線方向で重なる位置に設けられている。このように、摩耗抑制部材を磁気遮断部に重ねて設ける場合、摩耗抑制部材を非磁性材料で構成することが好ましい。
また、第8の観点によれば、クラッチの製造方法は、ロータおよびアーマチャとして、ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面側領域が、接触面にて開口する複数の孔を有するとともに、母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、母材よりも硬質とされており、さらに、ロータとアーマチャの少なくとも一方における接触面に、接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材が設置された状態で、アーマチャとロータの脱着を繰り返す慣らし運転を行う慣らし工程を有する。慣らし工程は、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置を含み、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、慣らし運転を開始するとともに、アーマチャがロータに吸着された吸着時に、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が第2接触面に接触する状態で、慣らし運転を終了する。
このように摩耗抑制部材が設置された状態で、慣らし運転を開始することで、ロータの接触面とアーマチャの接触面とを接触させることができる。このため、早期に伝達トルクを向上できる。そして、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が第2接触面に接触する状態で、慣らし運転を終了することで、慣らし運転後では、摩耗抑制部材が相手側の接触面と接触する。これにより、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、アーマチャがロータに吸着された際におけるロータとアーマチャのそれぞれの接触面の面圧を低減させることができる。よって、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
また、第9の観点によれば、クラッチの製造方法は、第8の観点と同様に、慣らし工程を有する。そして、慣らし工程は、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材が設置された接触面を第1接触面とし、摩耗抑制部材に対向する接触面を第2接触面としたとき、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置を含まず、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、慣らし運転を開始するとともに、アーマチャがロータに吸着された吸着時に、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が第2接触面に接触する状態で、慣らし運転を終了する。
このように摩耗抑制部材が設置された状態で、慣らし運転を開始することで、ロータの接触面とアーマチャの接触面とを接触させることができる。このため、早期に伝達トルクを向上できる。そして、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が第2接触面に接触する状態で、慣らし運転を終了することで、慣らし運転後では、摩耗抑制部材が相手側の接触面と接触する。これにより、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、アーマチャがロータに吸着された際におけるロータとアーマチャのそれぞれの接触面の面圧を低減させることができる。よって、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
また、第10の観点によれば、クラッチの製造方法は、第8の観点と同様に、慣らし工程を有する。そして、慣らし工程は、ロータとアーマチャのそれぞれの接触面のうち、摩耗抑制部材が設置された接触面を第1接触面とし、摩耗抑制部材に対向する接触面を第2接触面としたとき、アーマチャがロータに吸着されておらず、アーマチャがロータから離れている非吸着時に、回転中心線の軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面に近い側に、摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が位置するとともに、アーマチャがロータに吸着された吸着時に、摩耗抑制部材が弾性変形された状態となっており、軸線方向における第1接触面の位置を含み、かつ、軸線方向における第1接触面の位置よりも第2接触面から離れた側の範囲内に、摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、慣らし運転を開始する。
このように摩耗抑制部材を設置した状態で慣らし運転を開始すると、ロータの接触面とアーマチャの接触面とを接触させることができる。このため、早期に伝達トルクを向上できる。慣らし運転後では、摩耗抑制部材が相手側の接触面と接触する。これにより、摩耗抑制部材が設置されていない場合と比較して、アーマチャがロータに吸着された際におけるロータとアーマチャのそれぞれの接触面の面圧を低減させることができる。よって、接触面側領域の摩耗量を低減することができる。
10 ロータ
13 ロータの端面部
13a ロータの摩擦面(ロータの接触面)
20 アーマチャ
20a アーマチャの摩擦面(アーマチャの接触面)
41 塗膜(防錆膜)
45 母材
42 白層(アーマチャの接触面側領域)
51 塗膜(防錆膜)
52 白層(ロータの接触面側領域)
55 母材

Claims (10)

  1. 鉄鋼材料を母材として構成され、駆動源からの回転駆動力を受けて、回転中心線(O)を中心に回転するロータ(10)と、
    鉄鋼材料を母材として構成され、磁力によって前記ロータに吸着されることにより、前記回転駆動力が伝達されるアーマチャ(20)とを備え、
    前記ロータと前記アーマチャのそれぞれは、前記アーマチャが前記ロータに吸着された際に相手側と接触する接触面(13a、20a)を含む接触面側領域(52、42)を有し、
    前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面側領域は、前記接触面にて開口する複数の孔(52a、42a)を有し、さらに、前記母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、前記母材よりも硬質であり、
    前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面に、前記接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(16、25)が設置されているクラッチ。
  2. 前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、
    前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置を含み、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の全部が位置する状態で、前記摩耗抑制部材が設置されている請求項1に記載のクラッチ。
  3. 前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、
    前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置を含まず、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の全部が位置する状態で、前記摩耗抑制部材が設置されている請求項1に記載のクラッチ。
  4. 前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、
    前記アーマチャが前記ロータに吸着されておらず、前記アーマチャが前記ロータから離れている非吸着時に、前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面に近い側に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の少なくとも一部が位置し、
    前記アーマチャが前記ロータに吸着された吸着時に、前記摩耗抑制部材が弾性変形された状態となっており、前記軸線方向における前記第1接触面の位置を含み、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、前記摩耗抑制部材が設置されている請求項1に記載のクラッチ。
  5. 前記摩耗抑制部材は、前記摩耗抑制部材と対向する前記接触面を形成する材料と比較して、ヤング率が低い材料で構成されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載のクラッチ。
  6. 前記摩耗抑制部材は、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を形成する材料と比較して、前記摩耗抑制部材と対向する前記接触面との摩擦係数が高い材料で構成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のクラッチ。
  7. 前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面には、前記ロータと前記アーマチャとの間を磁束が流れる磁気回路(X)を形成するための磁気遮断部(13c)が設けられており、
    前記摩耗抑制部材は、非磁性材料で構成されているとともに、前記接触面のうち前記磁気遮断部に対して前記回転中心線の軸線方向で重なる位置に設けられている請求項1ないし6のいずれか1つに記載のクラッチ。
  8. 鉄鋼材料を母材として構成され、駆動源からの回転駆動力を受けて、回転中心線(O)を中心に回転するロータ(10)と、
    鉄鋼材料を母材として構成され、磁力によって前記ロータに吸着されることにより、前記回転駆動力が伝達されるアーマチャ(20)とを備え、
    前記ロータと前記アーマチャのそれぞれは、前記アーマチャが前記ロータに吸着された際に相手側と接触する接触面(13a、20a)を含む接触面側領域(52、42)を有するクラッチの製造方法であって、
    前記ロータおよびアーマチャとして、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面側領域が、前記接触面にて開口する複数の孔(52a、42a)を有するとともに、前記母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、前記母材よりも硬質とされており、さらに、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面に、前記接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(16、25)が設置された状態で、前記アーマチャと前記ロータの脱着を繰り返す慣らし運転を行う慣らし工程を有し、
    前記慣らし工程は、前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置を含み、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の全部が位置する状態で、前記慣らし運転を開始するとともに、前記アーマチャが前記ロータに吸着された吸着時に、前記摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が前記第2接触面に接触する状態で、前記慣らし運転を終了するクラッチの製造方法。
  9. 鉄鋼材料を母材として構成され、駆動源からの回転駆動力を受けて、回転中心線(O)を中心に回転するロータ(10)と、
    鉄鋼材料を母材として構成され、磁力によって前記ロータに吸着されることにより、前記回転駆動力が伝達されるアーマチャ(20)とを備え、
    前記ロータと前記アーマチャのそれぞれは、前記アーマチャが前記ロータに吸着された際に相手側と接触する接触面(13a、20a)を含む接触面側領域(52、42)を有するクラッチの製造方法であって、
    前記ロータおよびアーマチャとして、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面側領域が、前記接触面にて開口する複数の孔(52a、42a)を有するとともに、前記母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、前記母材よりも硬質とされており、さらに、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面に、前記接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(16、25)が設置された状態で、前記アーマチャと前記ロータの脱着を繰り返す慣らし運転を行う慣らし工程とを有し、
    前記慣らし工程は、前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置を含まず、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の全部が位置する状態で、前記慣らし運転を開始するとともに、前記アーマチャが前記ロータに吸着された吸着時に、前記摩耗抑制部材の表面の少なくとも一部が前記第2接触面に接触する状態で、前記慣らし運転を終了するクラッチの製造方法。
  10. 鉄鋼材料を母材として構成され、駆動源からの回転駆動力を受けて、回転中心線(O)を中心に回転するロータ(10)と、
    鉄鋼材料を母材として構成され、磁力によって前記ロータに吸着されることにより、前記回転駆動力が伝達されるアーマチャ(20)とを備え、
    前記ロータと前記アーマチャのそれぞれは、前記アーマチャが前記ロータに吸着された際に相手側と接触する接触面(13a、20a)を含む接触面側領域(52、42)を有するクラッチの製造方法であって、
    前記ロータおよびアーマチャとして、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面側領域が、前記接触面にて開口する複数の孔(52a、42a)を有するとともに、前記母材中の元素の窒化化合物が生成していることによって、前記母材よりも硬質とされており、さらに、前記ロータと前記アーマチャの少なくとも一方における前記接触面に、前記接触面側領域の摩耗を抑制する摩耗抑制部材(16、25)が設置された状態で、前記アーマチャと前記ロータの脱着を繰り返す慣らし運転を行う慣らし工程とを有し、
    前記慣らし工程は、前記ロータと前記アーマチャのそれぞれの前記接触面のうち、前記摩耗抑制部材が設置された前記接触面を第1接触面(13a、20a)とし、前記摩耗抑制部材に対向する前記接触面を第2接触面(20a、13a)としたとき、前記アーマチャが前記ロータに吸着されておらず、前記アーマチャが前記ロータから離れている非吸着時に、前記回転中心線の軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面に近い側に、前記摩耗抑制部材の表面(16a、25a)の少なくとも一部が位置するとともに、前記アーマチャが前記ロータに吸着された吸着時に、前記摩耗抑制部材が弾性変形された状態となっており、前記軸線方向における前記第1接触面の位置を含み、かつ、前記軸線方向における前記第1接触面の位置よりも前記第2接触面から離れた側の範囲内に、前記摩耗抑制部材の表面の全部が位置する状態で、前記慣らし運転を開始するクラッチの製造方法。
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