以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
[実施形態1]
実施形態1に係るめっき方法は、インクジェット印刷により被めっき対象物に隆起部を形成し、隆起部が形成された被めっき対象物にめっき処理を行っている。以下、図1及び図2を参照して、めっき方法について説明する。図1は、実施形態1に係るめっき方法を示すフローチャートである。図2は、実施形態1に係るめっき方法を示す説明図である。
先ず、めっき方法の説明に先立ち、めっき処理される被めっき対象物1について説明する。被めっき対象物1は、材料として、樹脂、金属またはガラス等の材料を適用可能であり、めっきが可能な材料であれば、いずれの材料を適用することが可能である。また、被めっき対象物1は、形状として、板状、または曲面を有する立体形状等を適用可能であり、めっきが可能な形状であれば、いずれの形状を適用することが可能である。なお、以下では、被めっき対象物1として、樹脂で形成されたカードに適用して説明する。
図1に示すように、実施形態1のめっき方法は、隆起部形成工程S1と、粗面化処理工程S2と、触媒付加工程S3と、めっき処理工程S4と、定着工程S5とを順に行っている。なお、めっき方法は、少なくとも隆起部形成工程S1及びめっき処理工程S4を行えばよく、他の各工程については、適宜省いてもよい。
隆起部形成工程S1は、第1UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)10からインク液滴(第1インク液滴)として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1に着弾させると共に、第1UV硬化型インクをUV硬化させて、被めっき対象物1に隆起部16を形成する工程である。
ここで、実施形態1の隆起部形成工程S1に用いられる第1UV硬化型インクについて説明する。実施形態1では、第1UV硬化型インクとして、めっき処理工程S4において使用されるめっき液に対して不溶性となるインクを用いている。第1UV硬化型インクは、重合してUV硬化樹脂となる化合物と、開始剤と、を少なくとも含んでいる。重合してUV硬化樹脂となる化合物としては、例えば、モノマーまたはオリゴマー等が用いられる。なお、第1UV硬化型インクは、被めっき対象物1と同じ色彩となるように、色材を含んでいてもよい。この第1UV硬化型インクは、紫外線が照射され、開始剤が活性してモノマーと反応することで硬化する。
図2に示すように、隆起部形成工程S1では、インクジェットヘッド10を主走査方向及び副走査方向に移動させながら、所定のパターニング(画像)となるように被めっき対象物1に第1UV硬化型インクを吐出する。ここで、被めっき対象物1は、その表面がめっき処理される被めっき面(第1被めっき面P1a。図2のS2参照。)となっており、被めっき対象物1の一部の表面に第1UV硬化型インクによる画像が形成される。このとき、被めっき対象物1の裏面には、プラテンヒーター12が設けられており、被めっき対象物1を加熱している。
また、隆起部形成工程S1では、第1UV硬化型インクにより形成された画像に対して、紫外線照射部11から紫外線を照射し、画像を硬化させることで、隆起部16を形成する。この隆起部16は、その表面がめっき処理される被めっき面(第2被めっき面P1b。図2のS2参照。)となっている。
このとき、隆起部形成工程S1では、被めっき対象物1の第1被めっき面P1aに対して、隆起部16の第2被めっき面P1bが異なる面粗度となるように、隆起部16が形成されている。具体的に、被めっき対象物1の第1被めっき面P1aは、平滑面となっており、隆起部16の第2被めっき面P1bは、複数のインク液滴をUV硬化させることで形成されていることから、第2被めっき面P1bは、第1被めっき面P1aに比して面粗度が粗いものとなる。
粗面化処理工程S2では、隆起部16が形成された被めっき対象物1の第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bを含む表面P1を粗面化する。粗面化処理工程S2では、例えば、エッチング液を用いて、第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bをエッチングし、第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bに凹凸を発生させることで、表面改質を行う。なお、エッチング液は、使用する被めっき対象物1及び隆起部16に適したものを使用する。なお、粗面化処理工程S2では、例えば、第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bにサンドブラストを行い、第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bに凹凸を発生させることで、表面改質を行ってもよい。このように、粗面化処理工程S2では、第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bを粗面化させることで、めっきの付着力を向上させる。
触媒付加工程S3では、粗面化した第1被めっき面P1a及び第2被めっき面P1bに対し触媒Cを付着させる。なお、実施形態1では、被めっき対象物1及び隆起部16が樹脂であるため、後工程となるめっき処理工程S4においてめっきを析出させるために触媒Cを付着させたが、被めっき対象物1が金属である場合、触媒付加工程S3を省いてもよい。触媒付加工程S3では、被めっき対象物1を、塩化第一錫の水溶液と塩化パラジウム水溶液とに交互に浸して、触媒Sn2+・Pd2+を吸着処理し、Sn2+を除去して、Pd(パラジウム)を析出させる。
なお、粗面化処理工程S2及び触媒付加工程S3の他、めっき処理工程S4を行う前に、被めっき対象物1に対してスプレー等を行うことにより導電性を付与するための工程を行ってもよい。
めっき処理工程S4は、触媒Cが付着した隆起部16を有する被めっき対象物1にめっき処理を行う。めっき処理工程S4では、被めっき対象物1に無電解めっきを処理する無電解めっき処理工程S4aを行っている。無電解めっき処理工程S4aでは、被めっき対象物1を、無電解めっき槽21に溜められた所定の温度となる無電解めっき液に、所定の時間だけ浸して、無電解めっきを行う。なお、無電解めっき液には、ダイヤモンドまたは酸化チタンの粒子を入れてもよく、また、無電解めっき処理工程S4aを、繰り返し行ってもよい。
また、図2に示すように、無電解めっき処理工程S4aに加えて、電気めっき処理工程S4bを行ってもよい。電気めっき処理工程S4bでは、無電解めっきされた被めっき対象物1のめっき面(めっき層)を負極に帯電させて、電気めっき槽22に溜められためっき液に浸して電気めっきを行う。
めっき処理工程S4後の被めっき対象物1は、粗い粗面度となる第2被めっき面P1bの隆起部16に形成されるめっき層の表面の光沢度がツヤ消しとなり、平滑な粗面度となる第1被めっき面P1aの被めっき対象物1に形成されるめっき層の表面の光沢度がツヤ有りとなる。
定着工程S5は、めっき処理が施された被めっき対象物1を、図示しない加熱チャンバの内部に設置し加熱して、めっきを被めっき対象物1に定着させる。なお、実施形態1では、被めっき対象物1へのめっきの定着を十分とするために定着工程S5を実行するが、めっき処理工程S4において被めっき対象物1に対するめっきの定着が十分である場合、めっき液を洗浄した後、被めっき対象物1を乾燥させればよく、定着工程S5を省いてもよい。
以上のように、実施形態1によれば、隆起部16に形成されるめっき層の表面の光沢度と、隆起部16以外の被めっき対象物1に形成されるめっき層の表面の光沢度とを異ならせることができるため、めっき処理による被めっき対象物1の装飾性を高めることができる。このとき、隆起部16は、インクジェットにより形成できることから、種々の画像を容易に形成することができるため、装飾性のある種々のめっき処理を容易に行うことが可能となる。
また、実施形態1によれば、被めっき対象物1の第1被めっき面P1aと、隆起部16の第2被めっき面P1bとを異なる面粗度にすることができる。このため、第1被めっき面P1aと第2被めっき面P1bとを同時にめっき処理を行った場合であっても、隆起部16に形成されるめっき層の表面の光沢度と、隆起部16以外の被めっき対象物1に形成されるめっき層の表面の光沢度とを異ならせることができる。
[実施形態2]
次に、図3及び図4を参照して、実施形態2に係るめっき方法について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図3は、実施形態2に係るめっき方法を示すフローチャートである。図4は、実施形態2に係るめっき方法を示す説明図である。
実施形態2のめっき方法は、インクジェット印刷により被めっき対象物1に隆起部16と共に、めっき用マスク17を形成し、隆起部16及びめっき用マスク17が形成された被めっき対象物1にめっき処理を行った後、めっき用マスク17を除去している。
図3に示すように、実施形態2のめっき方法は、隆起部形成工程S11と、マスク形成工程S12と、粗面化処理工程S13と、触媒付加工程S14と、めっき処理工程S15と、マスク除去工程S16と、定着工程S17とを順に行っている。なお、めっき方法は、少なくとも隆起部形成工程S11、マスク形成工程S12、めっき処理工程S15及びマスク除去工程S16を行えばよく、他の各工程については、適宜省いてもよい。
隆起部形成工程S11は、実施形態1の隆起部形成工程S1と同様の工程であり、第1UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)10aからインク液滴として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1に着弾させると共に、第1UV硬化型インクをUV硬化させて、被めっき対象物1に隆起部16を形成する工程である。なお、この隆起部形成工程S11は、マスク形成工程S12と同時に行われている。
マスク形成工程S12は、第2UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第2インクジェットヘッド)10bからインク液滴(第2インク液滴)として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1に着弾させると共に、第2UV硬化型インクをUV硬化させて、被めっき対象物1にめっき用マスク17を形成する工程である。このとき、隆起部形成工程S11で用いられるインクジェットヘッド10aと、マスク形成工程S12で用いられるインクジェットヘッド10bとは、一体の構成となっている。
ここで、実施形態2のマスク形成工程S12に用いられる第2UV硬化型インクについて説明する。実施形態2では、第2UV硬化型インクとして、めっき処理工程S15において使用されるめっき液に対して不溶性となる一方で、マスク除去工程S16において使用される(めっき除去用)有機溶媒に対して可溶性となるインクを用いている。なお、第1UV硬化型インクは、めっき液及び有機溶媒に対して不溶性となるインクを用いている。
具体的に、第2UV硬化型インクは、コンクUVインクと、添加材としての溶剤可溶性樹脂とを含んだものとなっている。コンクUVインクは、重合してUV硬化樹脂となる化合物と、開始剤と、を少なくとも含んでいる。重合してUV硬化樹脂となる化合物としては、例えば、モノマーまたはオリゴマー等が用いられる。この第2UV硬化型インクは、紫外線が照射され、開始剤が活性してモノマー等と反応することで硬化する。
溶剤可溶性樹脂は、めっき処理工程S15において使用されるめっき液に不溶であり、マスク除去工程S16において使用されるプロピールアルコール等の有機溶剤に可溶するものである。具体的に、溶剤可溶性樹脂は、ブチラール樹脂及び塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも一方を含むものとなっている。ここで、ブチラール樹脂及び塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂は、接着性を有することから、マスク形成工程S12において被めっき対象物1に形成されるめっき用マスク17の接着性を高めることができる。また、溶剤可溶性樹脂は、第2UV硬化型インクの総重量に対して、20重量%以上70重量%以下の割合となっている。
なお、溶剤可溶性樹脂は、被めっき対象物1に用いられる材料に応じて、ブチラール樹脂及び塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂を適宜選択すればよく、エタノール等の有機溶剤に容易に可溶するブチラール樹脂を用いることがより好ましい。
また、第2UV硬化型インクは、さらに有機溶剤を添加することで、溶剤可溶性SUV硬化型インク(以下、SUVインクという)としてもよい。すなわち、SUVインク(ソルベントUVインク)は、溶剤可溶性樹脂と有機溶剤とコンクUVインクとを含んだものとなっている。このSUVインクは、10〜100000mPa・secの範囲の粘度となるコンクUVインクに、SUVインクの総重量に対して20重量%以上70重量%以下の割合となる溶剤可溶性樹脂と、SUVインクの総重量に対して30重量%以上80重量%以下の割合となる有機溶剤とが含まれている。なお、SUVインクは、コンクUVインクと溶剤可溶性樹脂と有機溶剤との割合が、100重量%となるように調整されている。このとき、有機溶剤としては、例えば、セロソルブアセテートが用いられている。
図4に示すように、マスク形成工程S12では、インクジェットヘッド10を主走査方向及び副走査方向に移動させながら、所定のパターニングとなるように被めっき対象物1に第2UV硬化型インクを吐出する。ここで、被めっき対象物1は、その一部の表面にめっき用マスク17が形成される。このとき、被めっき対象物1の裏面には、プラテンヒーター12が設けられており、第2UV硬化型インクに有機溶剤が含まれる場合には、有機溶剤が揮発することで、めっき用マスク17の膜厚が薄くなる。
また、マスク形成工程S12では、第2UV硬化型インクにより形成されたパターニングに対して、紫外線照射部11から紫外線を照射し、パターニングを硬化させることで、めっき用マスク17を形成する。
ここで、図4に示すように、マスク形成工程S12では、めっき用マスク17が、隆起部16のエッジ部分(隆起部16と被めっき対象物1との境界部分)に対して、わずかに隙間を空けて隣接するように形成されている。これは、めっき処理工程S15において、隆起部16のエッジ部分までめっきが施されるようにするためである。
粗面化処理工程S13では、隆起部16及びめっき用マスク17が形成された被めっき対象物1の表面P1を粗面化する。つまり、粗面化処理工程S13では、第1被めっき面P1a上のめっき用マスク17の表面P1cと、隆起部16の第2被めっき面P1bと、第1被めっき面P1aのうち隆起部16及びめっき用マスク17が形成されていない部分(隆起部16とめっき用マスク17との間のわずかな隙間部分)とが、粗面化される。なお、粗面化処理工程S13は、実施形態1の粗面化処理工程S2と同様であるため、説明を省略する。
触媒付加工程S14では、隆起部16及びめっき用マスク17が形成され粗面化した被めっき対象物1に対し触媒Cを付着させる。なお、触媒付加工程S14も、実施形態1の触媒付加工程S3と同様であるため、説明を省略する。
めっき処理工程S15は、触媒Cが付着した隆起部16及びめっき用マスク17を有する被めっき対象物1にめっき処理を行う。なお、めっき処理工程S15も、実施形態1のめっき処理工程S4と同様であるため、説明を省略する。
マスク除去工程S16は、めっき処理された被めっき対象物1に形成されているめっき用マスク17を除去する。マスク除去工程S16では、めっき用マスク17の形成に用いられた第2UV硬化型インクが溶剤可溶性のインクであることから、例えば、アルコール等の有機溶媒(めっき除去用有機溶剤)に浸して、めっき用マスク17を溶解させ除去する。具体的に、マスク除去工程S16では、所定の温度に温めたプロピールアルコールに、被めっき対象物1を温浴させる。
マスク除去工程S16後の被めっき対象物1は、粗い粗面度となる第2被めっき面P1bの隆起部16のみに、ツヤ消しとなるめっきが施されたものとなり、一方で、平滑な粗面度となる被めっき対象物1の第1被めっき面P1aには、めっきが施されていないものとなる。
定着工程S17は、めっき用マスク17が除去された被めっき対象物1を、図示しない加熱チャンバの内部に設置し加熱して、めっきを被めっき対象物1に定着させる。なお、実施形態1では、被めっき対象物1へのめっきの定着を十分とするために定着工程S17を実行するが、めっき処理工程S15において被めっき対象物1に対するめっきの定着が十分である場合、マスク除去工程S16で付着した有機溶剤を洗浄した後、被めっき対象物1を乾燥させればよく、定着工程S17を省いてもよい。
以上のように、実施形態2によれば、インクジェットヘッド10により被めっき対象物1にめっき用マスク17を形成できることから、隆起部16と共に、めっき用マスク17を容易に形成することができる。つまり、被めっき対象物1において、隆起部16へのめっき部位と、被めっき対象物1へのめっき部位と、隆起部16への非めっき部位と、被めっき対象物1への非めっき部位とを適宜形成することが可能となるため、装飾性をより高めることができる。
また、隆起部16は、めっき液及び有機溶剤に不溶となることから、被めっき対象物1に隆起部16を適切に残存させることができる。また、めっき用マスク17は、めっき液に対して不溶となることから、めっき処理時において被めっき対象物1にめっき用マスク17を適切に残存させることができる。一方で、めっき用マスク17は、有機溶剤に対して可溶であるため、マスク除去時において被めっき対象物1からめっき用マスク17を適切に除去することができる。
なお、実施形態2では、被めっき対象物1の表面にめっき用マスク17を形成したが、隆起部16の表面にめっき用マスク17を形成してもよい。
[実施形態3]
次に、実施形態3に係るめっき方法について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図5は、実施形態3に係るめっき方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、実施形態3のめっき方法は、隆起部形成工程S21と、加熱処理工程S22と、粗面化処理工程S23と、触媒付加工程S24と、めっき処理工程S25と、定着工程S26とを順に行っている。なお、めっき方法は、少なくとも隆起部形成工程S21、加熱処理工程S22及びめっき処理工程S25を行えばよく、他の各工程については、適宜省いてもよい。
隆起部形成工程S21は、被めっき対象物1に隆起部16を形成する工程である。図6は、実施形態3に係るめっき方法における隆起部形成工程を示すフローチャートであり、図7は、実施形態3に係るめっき方法における隆起部形成工程を示す説明図である。図示するように、隆起部形成工程S21は、第1層形成工程S211と、第2層形成工程(半硬化層形成工程)S212と、第3層形成工程(本硬化層形成工程)S213とを含む。
第1層形成工程S211は、実施形態1の隆起部形成工程S1と同様の工程である。第1層形成工程S211は、まず、第1UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)10からインク液滴として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1に着弾させる。その後、紫外線照射部11から紫外線を照射し、第1UV硬化型インクを本硬化(完本硬化)させる。この際、第1UV硬化型インクが被めっき対象物1に着弾した後、すぐに紫外線照射による硬化を開始する。このため、第1層161は、第1UVインクのドットが十分に広がる前に紫外線照射による硬化が開始され、十分に平坦になる前に本硬化の状態となる場合がある。この場合、第1層161は、図7に示すように、表面に微小な凹凸が残る。
第2層形成工程S212は、第1UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)10からインク液滴として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1上に形成された第1層161に着弾させると共に、第1UV硬化型インクを半硬化させて、被めっき対象物1に隆起部16の一部となる第2層(半硬化層)162を形成する工程である。ここで、半硬化とは、例えば、UV硬化インクが完全に硬化しない程度の相対的に弱い強度の紫外線を照射し露光することにより、インクが多少の粘着性を有する状態にまで硬化させた状態である。例えば、インクを本硬化の状態にまで硬化させる場合において照射する紫外線の強度を100%とした場合、インクを半硬化の状態にまで硬化させる場合において照射する紫外線の強度は、典型的には、15%〜35%、好ましくは20%〜30%、例えば23%程度とすることが好ましい(以下、同様である。)。
第2層形成工程S212は、被めっき対象物1の第1層161上に第1UV硬化型インクを着弾させた後、紫外線照射部11から、第1層形成工程S211よりも相対的に弱い強度の紫外線を照射し、第1UV硬化型インクを半硬化させる。その結果、第2層162を形成する第1UV硬化型インクが、第1層161の表面に着弾した後、比較的にゆっくりと硬化される。これにより、第1層161の表面の微少な凹凸に第1UV硬化型インクが入り込み、第1層161の表面がレベリング(水平化)された上で、第1UV硬化型インクが半硬化の状態まで硬化されて第2層162が形成される。従って、第2層162の表面を平滑に形成することができる。
第3層形成工程S213は、第1UV硬化型インクをインクジェットヘッド(第1インクジェットヘッド)10からインク液滴として吐出し、吐出されたインク液滴を被めっき対象物1上に形成された第2層162に着弾させると共に、第1UV硬化型インクを本硬化させて、被めっき対象物1に隆起部16の一部となる第3層163を形成する工程である。第3層形成工程S213は、被めっき対象物1の第2層162上に第1UV硬化型インクを着弾させた後、紫外線照射部11から、第2層形成工程S211よりも相対的に強い強度の紫外線を照射し、第1UV硬化型インクを半硬化の状態の第2層162と共に本硬化させる。それにより、第2層162及び第3層163が本硬化層となり、第1層161とあわせて、被めっき対象物1に形成された隆起部16となる。また、上述したように、第2層162の表面が平滑に形成されているため、隆起部16の最外層である第3層163も平滑に形成される。その結果、後のめっき処理工程S25で被めっき対象物1にめっき処理を施すと、被めっき部分の光沢感(グロス感)を向上させることができる。この隆起部形成工程S21は、グロス調印刷とも呼ばれる。
加熱処理工程S22は、隆起部16が形成された被めっき対象物1に加熱処理を施して、隆起部16の内部応力を除去する工程である。加熱処理工程S22は、例えば、図示しない加熱チャンバの内部に被めっき対象物1を設置して加熱する。加熱処理工程S22は、所定温度で被めっき対象物1を所定の加熱時間にわたって加熱した後、被めっき対象物1の温度が十分に低下するまで所定の冷却時間にわたって冷却する。
所定温度は、被めっき対象物1の隆起部16の内部応力を除去できる程度に十分に加熱できる温度が下限として定められる。所定温度は、少なくとも摂氏45度以上である。また、所定温度は、被めっき対象物1の耐熱温度や、第1UV硬化型インクのガラス転移点の温度等に基づいて上限が定められる。なお、被めっき対象物1が、ABS樹脂で形成されている場合、または材料としてABS樹脂を含む合成樹脂で形成されている場合、被めっき対象物1の耐熱温度は、約100℃程度である。所定温度は、第1UV硬化型インクのガラス転移点未満の温度であることが好ましい。所定温度は、第1UV硬化型インクのガラス転移点より摂氏40度だけ低い温度以上、ガラス転移点より摂氏15度だけ低い温度以下であることが、より好ましい。所定温度は、第1UV硬化型インクのガラス転移点より摂氏35度だけ低い温度以上、ガラス転移点より摂氏10度だけ低い温度以下であることが最も好ましい。
所定の加熱時間は、被めっき対象物1の隆起部16の内部応力を除去できる程度に十分に加熱できる時間でさえあればよい(例えば4時間等)。また、所定の冷却時間は、被めっき対象物1の隆起部16に内部応力ができる限り残留しない程度に十分な冷却時間でさえあればよい(例えば20時間程度)。被めっき対象物1の冷却は、後の工程に影響が生じない程度の温度まで被めっき対象物1が冷却されればよく、自然放熱であってもよいし、なんらかの冷却装置を用いてもよい。
これにより、後のめっき処理工程S25の前に、隆起部16に残留した内部応力を予め除去しておくことができる。特に、実施形態3に係るめっき方法は、隆起部形成工程S21の第3層形成工程S213において、第3層163を形成する第1UV硬化型インクと半硬化状態の第2層162とを紫外線の照射によって同時に本硬化させるため、隆起部16に比較的に大きな内部応力が残留しやすい。そこで、めっき処理工程S25の前に、予め隆起部16の内部応力を除去しておくことで、めっき処理工程S25における被めっき対象物1の温度上昇によって、隆起部16の内部応力が解放され、隆起部16が変形してしまうことを抑制することができる。その結果、隆起部16の変形に起因して、被めっき対象物1の被めっき面からめっき層が部分的に剥離することを抑制することが可能となる。
粗面化処理工程S23では、隆起部16が形成された被めっき対象物1の、第1被めっき面P1a(図2参照)及び第2被めっき面P1b(図2参照)を含む表面P1(図2参照)を粗面化する。なお、粗面化処理工程S23は、実施形態1の粗面化処理工程S2と同様であるため、説明を省略する。
触媒付加工程S24では、隆起部16が形成され粗面化した被めっき対象物1に対し触媒Cを付着させる。なお、触媒付加工程S24も、実施形態1の触媒付加工程S3と同様であるため、説明を省略する。
めっき処理工程S25は、触媒Cが付着した隆起部16を有する被めっき対象物1にめっき処理を行う。なお、めっき処理工程S25も、実施形態1のめっき処理工程S4と同様であるため、説明を省略する。
定着工程S26は、めっき処理が施された被めっき対象物1を、図示しない加熱チャンバの内部に設置し加熱して、めっきを被めっき対象物1に定着させる。なお、めっき処理工程S25において被めっき対象物1に対するめっきの定着が十分である場合、めっき液を洗浄した後、被めっき対象物1を乾燥させればよく、定着工程S26を省いてもよい。
以上のように、実施形態3に係るめっき方法は、隆起部形成工程S21の後、めっき処理工程S25の前に、隆起部16が形成された被めっき対象物1に加熱処理を施して、隆起部16の内部応力を除去する加熱処理工程S22をさらに備える。
この構成によれば、隆起部形成工程S21において形成された隆起部16に残留した内部応力を、めっき処理工程S25の前に予め除去しておくことができる。その結果、めっき処理工程S25において、被めっき対象物1の温度上昇に伴う内部応力の開放によって隆起部16が変形し、この変形に起因して、被めっき対象物1のめっき層が部分的に剥離してしまうことを抑制することが可能となる。
また、加熱処理工程S22は、第1UV硬化型インクのガラス転移点未満の所定温度で被めっき対象物1を加熱する。
この構成によれば、加熱処理工程S22において、第1UV硬化型インクの温度がガラス転移点以上となり、隆起部16が所望の形状を保てなくなることを防ぐことができる。
また、隆起部形成工程S21は、紫外線の照射によって第1UV硬化型インクを半硬化させた第2層(半硬化層)162を形成する第2層形成工程(半硬化層形成工程)S212と、第2層形成工程S212よりも強度を高めた紫外線の照射によって、第2層162上の第1UV硬化型インクを第2層162と共に本硬化させて本硬化層(第2層162及び第3層163からなる層)を形成する第3層形成工程(本硬化層形成工程)S213と、を含む。
この構成によれば、第1UV硬化型インクを半硬化させた第2層162を平滑に形成することができるため、第2層162上の第1UV硬化型インクを第2層162と共に本硬化させた本硬化層を平滑に形成することが可能となる。その結果、めっき処理が施された隆起部16の光沢感(グロス感)を向上させることができる。また、第2層162上の第1UV硬化型インクと第2層162とを同時に本硬化させる場合、隆起部16に内部応力が残留しやすくなるが、めっき処理工程S25の前に、加熱処理工程S22を実施すれば、隆起部16の内部応力を予め除去しておくことができるため、内部応力に起因しためっきの部分的な剥離の発生を抑制することができる。すなわち、加熱処理工程S22は、第2層形成工程(半硬化層形成工程)S212及び第3層形成工程(本硬化層形成工程)S213を備える隆起部形成工程S21を行う場合に、好適である。
実施形態3では、隆起部形成工程S21において、第1層161、第2層162及び第3層163を形成するものとしたが、第1層161を複数積層して形成してもよい。また、第1層形成工程S211は、省略してもよい。
実施形態3では、隆起部形成工程S21の後に加熱処理工程S22を実施するものとしたが、加熱処理工程S22は、粗面化処理工程S23の後に行われてもよい。
実施形態3では、実施形態2に係るめっき方法におけるマスク形成工程S12及びマスク除去工程S16を実施しないものとしたが、加熱処理工程S22の前にマスク形成工程S12を行うと共に、めっき処理工程S25の後にマスク除去工程S16を実施してもよい。
また、実施形態3においても、隆起部形成工程S21に代えて、実施形態1に係るめっき方法における隆起部形成工程S1を実施してもよい。すなわち、実施形態3においても、隆起部16を形成する際に、第2層形成工程(半硬化層形成工程)S212及び第3層形成工程(本硬化層形成工程)S213を省略してもよい。また、実施形態1において、隆起部形成工程S1に代えて隆起部形成工程S21を実施してもよく、実施形態2において、隆起部形成工程S11に代えて隆起部形成工程S21を実施してもよい。