以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1には、本実施形態に係る車載用サーキュレータ10が設けられた車両800の、車室内の様子が模式的に示されている。車両800には、最前列の座席である助手席822と、2列目の座席830と、3列目の座席840とが設けられている。また、助手席822の紙面奥側となる位置には運転席821(図1では不図示。図11を参照)が設けられている。
運転席821及び助手席822の更に前方側には、不図示の車両用空調装置を内蔵するフロントパネル810が設けられている。車両用空調装置からの空調風は、フロントパネル810のうち上面部分に形成された開口813や、フロントパネル810のうち運転席821等と対向する部分に設けられた開口811等から吹き出される。図1には、開口813から上方側に吹き出された空調風が、車両800のフロントガラス801に沿って天井802側に向かう流れが矢印で示されている。
車載用サーキュレータ10は、天井802のうち、運転席821や助手席822よりも後方側であり且つ座席830よりもやや前方側となる位置に取り付けられている。後に詳しく説明するように、車載用サーキュレータ10は、前方側の開口813等から吹き出された空調風を吸い込んで、これを後方側に向けて吹き出す装置として構成されている。これにより、空調風が届きにくかった座席830や座席840にも空調風を到達させ、車室内の全体を快適に保つことが可能となる。
図1では、車載用サーキュレータ10から後方側に吹き出される空気の流れが矢印AR1で示されている。このとき、車載用サーキュレータ10の下方側に存在していた空気は、所謂コアンダ効果によって矢印AR1で示される流れに引き寄せられた後、当該流れに合流して後方側に向かう。図1では、このように引き寄せられる空気の流れが矢印AR2で示されている。車載用サーキュレータ10は、このような空気の流れを生じさせることにより、快適な温度の空気を、座席830や座席840に対し十分な風量で到達させることが可能となっている。
図2及び図3を参照しながら、車載用サーキュレータ10の具体的な構成について説明する。車載用サーキュレータ10は、本体部100と、一対の腕部200とを有している。
本体部100は、車載用サーキュレータ10が天井802に取り付けられた際において、車両800の左右方向における中央に位置する部分である。本体部100の前方側には矩形の開口110が形成されている。開口110は、車室内の空気、特に車両用空調装置からの空調風を吸い込むための開口であって、本実施形態における「第1開口」に該当する。また、開口110が形成されている本体部100は、本実施形態における「吸い込み部」に該当する。
開口110は車両800の前方側に向けて形成されており、本体部100のうち前方側側面のほぼ全体に亘るように形成されている。その結果、開口110は、車両800の左右方向における中央となる位置に形成されている。また、開口110の幅は車室内の左右方向における幅よりも狭くなっている。換言すれば、開口110は、車室の幅方向における全体に亘って形成されているのではなく、幅方向における一部領域にのみ形成されている。
本体部100の内部には、図2においては不図示のファン60(図4を参照)が設けられている。ファン60は所謂シロッコファンである。ファン60は、開口110から後述の開口210に向けて空気を送り出すことにより、開口110から吸引される空気の流れ、及び開口210から吹き出される空気の流れを作り出すものである。
腕部200は、本体部100の開口110から吸い込まれた空気を、車両800の後方側に向けて吹き出す部分であって、本体部100の左右両側にそれぞれ設けられている。つまり、一対の腕部200は、本体部100を間に挟み、車両800の左右方向に沿って並ぶように設けられている。左側の腕部200は、本体部100の左側側面から、天井802の左端近傍となる位置まで伸びている。同様に、右側の腕部200は、本体部100の右側側面から、天井802の右端近傍となる位置まで伸びている。図5に示されるように、それぞれの腕部200の形状は、本体部100との接続部近傍においてのみ僅かに異なっているのであるが、その他の大部分については、本体部100を間に挟んで概ね左右対称となっている。このため、以下においては腕部200の各部に共通の符号を付した上で、それぞれの腕部200の構成を説明する。
それぞれの腕部200の下面側には開口210が形成されている。開口210は、車両800の後方側に向けて吹き出される空気の出口として形成された開口であって、本実施形態における「第2開口」に該当する。また、開口210が形成されている腕部200は、本実施形態における「吹き出し部」に該当する。開口210は、その長手方向が腕部200の長手方向(つまり車両800の左右方向)に沿うようなスリット状に形成されている。開口110から吸引された空気は、本体部100の内部及び腕部200の内部を通った後、それぞれの開口210の全体から車両800の後方側に向けて吹き出される。
腕部200のうち開口210よりも後方側部分、すなわち空気の流れ方向に沿って開口210よりも下流側となる部分には、フラップ71及びフラップ72が設けられている。フラップ71及びフラップ72は、開口210から吹き出された空気の流れ方向を調整するための板状の部材である。フラップ71及びフラップ72は、開口210の下流側部分の略全体に亘る範囲をカバーするように、開口210が伸びる方向に沿って一列に並んでいる。車両800の乗員は、フラップ71及びフラップ72の傾斜角度を手動で変化させることにより、開口210から吹き出された空気の向かう方向を調整することができる。
図2及び図3に示されるその他の構成について説明する。本体部100のうち後方側部分には、更に後方側に向かって突出する被固定部11が形成されている。また、腕部200のうち前方側部分には、更に前方側に向かって突出する被固定部12が形成されている。更に、本体部100の両側面であって、腕部200よりも前方側となる部分には、腕部200が伸びる方向に向かって突出する被固定部13が形成されている。
これら5つの被固定部(11等)は、車載用サーキュレータ10を車両800に取り付ける際において、天井802に対して直接固定される部分となっている。被固定部11等には下方側から不図示のボルトが挿通される。当該ボルトの締結によって、車載用サーキュレータ10が天井802に固定される。
腕部200のうち前方側部分には、上記の被固定部12とは別に、前方側に向かって突出する3つの保持部21、22、23が形成されている。保持部21、22、23には、天井802を覆う意匠部品(ガーニッシュ)が下方側から取り付けられる部分である。すなわち、保持部21、22、23は当該意匠部品を保持するための部分として形成されている。
車載用サーキュレータ10の内部構成について、図4乃至図6を参照しながら説明する。図4に示されるように、車載用サーキュレータ10は、上ケース51と下ケース52とを組み合わせることにより、本体部100及び一対の腕部200の全体が一体に形成された構成となっている。本実施形態では、上ケース51及び下ケース52の両方が樹脂によって形成されており、これらが不図示の螺子により締結固定されている。尚、このような態様に替えて、螺子を用いることなくクリップ式嵌合により、上ケース51と下ケース52とが互いに固定されるような態様であってもよい。
ファン60の動作によって開口110から吸引された空気は、ファン60によってその下方側から吸引された後、ファン60の側面から周囲に放出される。ファン60は、開口110から後方側に向かって伸びる流路、の上方側に形成された空間111に収容されている。また、腕部200の内部には、腕部200の長手方向における全体に亘り空間201が形成されており、空間111と空間201とは互いに繋がっている。このため、ファン60の側面から放出された空気は、空間111から空間201に流入し、空間201をその長手方向に沿って(つまり、車両800の左右方向における外側に向かって)流れる。
腕部200の空間201にはガイド板220が収容されている。図4に示されるように、ガイド板220は上面視が矩形の板状部材であって、本実施形態では樹脂により形成されている。ガイド板220は、下ケース52とは別体の部材として形成されたものであって、下ケース52に対して空間201の上方側から取り付けられている。
図6には、図5におけるVII−VIIの位置で腕部200を切断した場合における断面が示されている。図6に示されるように、下ケース52の底板524のうち前方側の端部となる辺には、上方に向けて突出する突起526が形成されている。また、ガイド板220のうち後方側の端部となる辺には、フック224が形成されている。ガイド板220は、フック224を突起526に嵌合させた状態で下ケース52に取り付けられており、その下方側の面が底板524の下面525と滑らかに繋がっている。ガイド板220のうちフック224よりも前方側の部分は、前方側に行くほど上方側に向かうように水平面に対して傾斜している。
下ケース52の前方側部分には、案内部523が形成されている。案内部523は、下方側に向けて伸びる板状の部分であって、後方側に行くほど下方側に向かうように水平面に対して傾斜している。ガイド板220は、案内部523の上方側においてその一部が空間201に入り込んでいる。当該部分において、ガイド板220の下面220aと、案内部523の上面523aとは互いに平行な状態で離間しており、両者の間には隙間GPが形成されている。
腕部200の長手方向に沿って空間201を流れた空気は、隙間GPに沿って下方側且つ後方側に向けて流れた後、隙間GPの下端から外部に吹き出される。つまり、隙間GPの下端に形成された開口が、既に述べた開口210に該当する。腕部200の内部を開口210に向かって空気が流れる流路、すなわち隙間GPは、互いに対向し且つ離間して配置された下面220aと上面523aとの間の空間として形成されている。
ガイド板220の下面220aは、本実施形態における「第1壁面」に該当する。案内部523の上面523aは、本実施形態における「第2壁面」に該当する。既に述べたように、下面220aを有するガイド板220は、上面523aを有する下ケース52とは別体の部材として設けられている。
ガイド板220の下面220aの一部には、下方側の案内部523に向かって伸びる突出部222が形成されている。突出部222の先端(下端)は、案内部523の上面523aに対して当接している。突出部222の突出量、すなわち下面220aから突出部222の先端までの距離は、隙間GPの大きさに等しい。図6では、当該距離が「h」として示されている。このような突出部222の先端が上面523aに対して当接していることにより、ガイド板220及び案内部523のそれぞれの変形が抑制される。その結果、ガイド板220と案内部523とは、その長手方向の全体に亘って互いに平行な状態が維持される。すなわち、スリット状に形成された開口210の幅が、開口210の長手方向の全体に亘って均一となっている。尚、突出部222は、案内部523の上面523aからガイド板220の下面220aに向かって伸びるように形成されていてもよい。
図4に示されるように、ガイド板220の上面220b、すなわち空間201と対向する面には、上方に向けて突出する導風部221が6つ形成されている。導風部221は、腕部200の長手方向に沿って空間201内を流れる空気を、隙間GP(つまり、第1壁面と第2壁面との間の空間)の入口側、すなわち車両800の前方側に向かうよう案内するために形成されたものである。
導風部221は、ガイド板220の上面220bに対して垂直な板状に形成されている。また、図5に示されるように、上面視における導風部221の形状は、車両800の側方側且つ後方側に向けて凸となるように湾曲している。このため、導風部221のうち後方側の部分では、上面視における導風部221の接線方向が、車両800の左右方向に概ね沿った方向となっている。また、導風部221のうち前方側の部分では、上面視における導風部221の接線方向が、車両800の前後方向に概ね沿った方向となっている。
それぞれの導風部221の形状は互いに同一である。また、それぞれの導風部221は、腕部200の長手方向に沿って互いに等間隔で並んでいる。このような導風部221が形成されていることにより、腕部200の長手方向に沿って空間201を流れる空気は、それぞれの導風部221によって隙間GPの入口側(上端側)へと案内される。その結果、空間201から隙間GPに流入する空気の流量は、それぞれの導風部221が設けられている位置において概ね等しくなっている。換言すれば、空間201を流れる空気の大部分が腕部200の端部まで到達してしまうようなことが、それぞれの導風部221によって防止されている。
既に述べたように、スリット状に形成された開口210の幅は、開口210の長手方向の全体に亘って均一となっている。開口210の幅を均一に保つ突出部222、及び空気を隙間GPに案内する導風部221の両方によって、開口210から吹き出される空気の流量が全体に亘って均一となっている。その結果、開口110から吸い込まれた空調風を車室内の各部に供給し、車室内の全体を快適に保つことが可能となっている。
尚、本実施形態においては、導風部221は空間201の上端までは伸びておらず、下ケース52と上ケース51との境界部までしか伸びていない。ただし、上ケース51の内部のうち、それぞれの導風部221の直上となる位置には、導風部221と同一形状の導風部511が形成されている(図6を参照)。導風部511の下端は、導風部221の上端に対して当接している。このため、本実施形態では、それぞれの導風部221がガイド板の上面220bから空間201の上端(上ケース51の天面)まで伸びているような構成と、実質的に同一となっている。
図6を参照しながら、開口210から吹き出された後における空気の流れについて説明する。開口210から吹き出された空気は、隙間GPにおける流れ方向のまま直進するのではなく、開口210を通過した直後においてその流れ方向を変化させ、底板524の下面525に沿って流れる。つまり、概ね水平方向に、車両800の後方側に向かって流れる。
開口210は、幅の狭いスリット状の開口であるから、開口210から吹き出される空気の流速は比較的大きくなっている。既に述べたように、車載用サーキュレータ10の下方側に存在していた空気は、下面525に沿って流れる高速の空気の流れに引き寄せられ、当該流れに合流して後方側に向かって流れる。
フラップ72は、その長手方向(紙面奥行方向)の両端において、下ケース52に形成された支持突起(不図示)によって回動自在な状態で支持されている。フラップ72のうち前方側の端部には、円形の貫通穴722がフラップ72の長手方向に沿って形成されている。下ケース52の支持突起は円柱状の突起であり、その一部が貫通穴722に挿通されることにより、フラップ72を回動自在な状態で支持している。
フラップ72の下方側の面である下面721は、概ね平坦な面となっている。図6に示される状態では、下面721は水平面に沿っており、底板524の下面525と同一の平面上に位置している。このため、下面525に沿って後方側に流れる空気は、引き続き下面721に沿って水平方向に流れた後、腕部200の後方側に向けて流れる。
車両800の乗員は、フラップ72のうち後方側の端部723を把持して引き下げる(又は押し上げる)ことにより、フラップ72を回動させてその傾斜角度を変更することができる。図7には、端部723が引き下げられた状態が示されている。当該状態においては、図7に矢印で示されるように、空気はフラップ72の下面721に沿って後方側且つ下方側に向かって流れる。このように、フラップ72の角度に応じて、車載用サーキュレータ10から吹き出される空気の向かう方向を調整することが可能となっている。
尚、フラップ72の隣に配置されたフラップ71の構成及び機能は、以上に説明したようなフラップ72の構成及び機能と同じである。乗員は、フラップ71の傾斜角度とフラップ72の傾斜角度とを個別に変更することで、2列目の座席830に到達する空気の量や、3列目の座席840に到達する空気の量を調整することができる。
ガイド板220の具体的な形状について、図8を参照しながら説明する。図8は、左側の腕部200に取り付けられる方のガイド板220を、下方側から見て描いたものである。尚、右側の腕部200に取り付けられる方のガイド板220の形状は、図8に示されるものとは左右対称な形状である。
図8においては、ガイド板220の上方側(紙面奥側)における空気の流れ、すなわち導風部221によって案内される空気の流れが、矢印AR41で示されている。また、ガイド板220の下方側(紙面手前側)における空気の流れ、すなわち隙間GPにおいて開口210に向かう空気の流れが、矢印AR42で示されている。尚、矢印AR41及び矢印AR42によって示されるそれぞれの流れは、左右方向に沿った各部において概ね同一の流れとなっている。
先に説明した突出部222は、下面220aから下方側に向けて突出する板状の突起として形成されている。板状である突出部222は、その主面の法線方向が車両800の左右方向に沿うような形状となっている。換言すれば、突出部222は、下面220aと上面523aとの間の空間(隙間GP)を空気が流れる方向(矢印AR42)、に沿うような板状に形成されている。突出部222がこのような形状となっていることにより、隙間GPにおける空気の流れに対する抵抗が小さくなるので、車載用サーキュレータ10から吹き出される空気を確実に座席840等に到達させることができる。また、突出部222に空気が当たることによる異音の発生を防止することもできる。
ガイド板220の下面220aには、突出部222に加えて分離部223が形成されている。分離部223は、突出部222と同様に、下面220aから下方側の案内部523に向かって伸びる突起として形成されている。分離部223の突出量、すなわち下面220aから分離部223の先端(下端)までの距離は、隙間GPの大きさ(図6に「h」として示される距離)に等しい。
このため、分離部223の先端も、案内部523の上面523aに対して当接している。つまり、分離部223は突出部222と同様に、スリット状に形成された開口210の幅を、開口210の長手方向の全体に亘って均一に保つためのものとして機能する。尚、分離部223はこのような機能の他、吹き出される空気の流れを2つに分ける機能をも有するのであるが、これについては後述する。
このような突出部222及び分離部223が、開口210の長手方向(つまり車両800の左右方向)に沿って下面220aに並ぶよう形成されているので、ガイド板220及び案内部523のそれぞれの変形をより確実に防止し、開口210の幅を均一に保つことが可能となっている。開口210の幅が全体で均一に保たれることにより、開口210から吹き出される空気の流量分布にむらが生じることが防止される。また、座席830や座席840に十分な風量の空気を到達させることができる。
突出部222及び分離部223が設けられているガイド板220は、下ケース52とは別体の部材として形成されている。このため、ガイド板220を交換し突出部222等の突出量を変化させることにより、車載用サーキュレータ10から吹き出される空気の流量を調整することもできる。
図9には、分離部223の形状が斜視図で示されている。また、同図においては、隙間GPにおいて空気の流れる方向が矢印で示されている。図9に示されるように、分離部223は、上流壁223aと、下流壁223bと、傾斜壁223c、223dと、案内壁223e、223fと、を有している。これらはいずれも、下面220aに対して垂直な板状に形成されている。
上流壁223aは、分離部223のうち最も上流側の部分である。上流壁223aは、その主面が空気の流れ方向(つまり前後方向)に対して垂直となるように形成されている。下流壁223bは、分離部223のうち最も下流側の部分である。下流壁223bは、その主面が上流壁223aの主面に対し平行となるように形成されている。車両800の左右方向に沿った下流壁223bの幅W2は、同方向に沿った上流壁223aの幅W1よりも大きい。本実施形態では、幅W2は8mmとなっている。
傾斜壁223c、223dは、上流壁223aの側端から斜め後方側に向かって伸びるように形成された部分である。傾斜壁223cは、上流壁223aの左側の端部から、左側に行くほど後方側に向かうよう、上流壁223aに対して傾斜した壁となっている。傾斜壁223dは、上流壁223aの右側の端部から、右側に行くほど後方側に向かうよう、上流壁223aに対して傾斜した壁となっている。このような傾斜壁223c、223dが形成されていることにより、分離部223の形状は、空気の流れ方向における上流側に行くほど、左右方向に沿った寸法が小さくなるような形状となっている。
案内壁223e、223fは、それぞれ傾斜壁223c、223dの後端から更に後方側に向かって伸びるように形成された部分である。案内壁223eは、傾斜壁223cの後側の端部から、空気の流れる方向に沿って後側に伸びる壁となっている。案内壁223eの後方側の端部は、下流壁223bの左側の端部に対し垂直に繋がっている。案内壁223fは、傾斜壁223dの後側の端部から、空気の流れる方向に沿って後側に伸びる壁となっている。案内壁223fの後方側の端部は、下流壁223bの右側の端部に対し垂直に繋がっている。
図8に戻って説明を続ける。以上のような形状の分離部223は、突出部222よりも左側となる位置に形成されている。分離部223が形成されている位置は、フラップ71とフラップ72との境界部分に対応する位置となっている。隙間GPのうち分離部223よりも左側の部分(範囲A1の部分)を通過した空気は、フラップ71の下面に沿って流れる。隙間GPのうち分離部223よりも右側の部分(範囲A2の部分)を通過した空気は、フラップ72の下面721に沿って流れる。このため、分離部223よりも左側を通過した空気の流れ方向と、分離部223よりも右側を通過した空気の流れ方向とは、それぞれフラップ71及びフラップ72によって互いに独立に調整されることとなる。
これら2つの空気の流れの境界部分に位置する分離部223は、その左右方向における幅W2が比較的大きくなっている。その結果、上記2つの流れは、概ね幅W2に等しい間隔を以って互いに離間した流れとなるので、それぞれの流れの方向が互いに影響を及ぼしあうことが防止される。
この点について、図10を参照しながら説明する。図10(A)には、分離部223が仮に設けられていないとした場合における空気の流れが、下面視で模式的に示されている。同図においては、上記の範囲A1を通過しフラップ71に沿って流れる空気の流れが、矢印AR51で示されている。以下においては、このような空気の流れを「第1流れ」と称する。第1流れは、開口210から吹き出される空気の流れのうち、フラップ71によってその流れ方向が調整されるもの、ということができる。
同様に、図10(A)においては、上記の範囲A2を通過しフラップ72に沿って流れる空気の流れが、矢印AR52で示されている。以下においては、このような空気の流れを「第2流れ」と称する。第2流れは、開口210から吹き出される空気の流れのうち、フラップ72によってその流れ方向が調整されるもの、ということができる。
図10(A)に示される例では、分離部223が形成されていないので、第1流れと第2流れとは互いに隣接した流れとなる。このため、第1流れと第2流れとが互いに引き寄せあう現象が生じる結果、後方側の適切な位置に空気が到達しない場合がある。このような現象は、本実施形態のように開口210がスリット状に形成され、吹き出される空気井の流速が大きい場合において特に生じやすい。
また、図10(A)においては、第1流れと第2流れとが車両800の左右方向において互いに引き寄せあう様子が示されているのであるが、これらは上下方向においても互いに引き寄せあうこととなる。
例えば、第1流れが2列目の座席830に到達し、第2流れが3列目の座席830に到達するよう、フラップ71及びフラップ72のそれぞれの傾斜角度を乗員が調整したとする。しかしながら、第1流れと第2流れとが上下方向において互いに引き寄せあうと、座席830と座席840のいずれにおいても適切な位置に空気が到達せず、乗員に不快な思いをさせてしまう可能性がある。
このように、第1流れと第2流れとが間に隙間を空けることなく隣接している場合には、それぞれの流れが互いに引き寄せあうようにその方向を変化させるので、適切な位置に空気が到達しなくなってしまう。
図10(B)には、本実施形態における空気の流れが、下面視で模式的に示されている。同図においても、範囲A1を通過する第1流れが矢印AR51で示されており、範囲A2を通過する第2流れが矢印AR52で示されている。
本実施形態では、第1流れと第2流れとの間が、分離部223によって離間した状態となっている。これにより、第1流れと第2流れとが互いに引き寄せあう現象が防止されるので、それぞれの流れを個別に調整し、座席830及び座席840のいずれにおいても適切な位置に空気を到達させることが可能となっている。
本実施形態では、腕部200のうち開口210よりも下流側となる位置に、第1流れとして吹き出された空気の流れ方向を調整するフラップ71と、第2流れとして吹き出された空気の流れ方向を調整するフラップ72と、が設けられた構成となっている。フラップ71は、本実施形態における「第1フラップ」に該当する。また、フラップ72は、本実施形態における「第2フラップ」に該当する。
以上のような態様に替えて、第1流れの流れ方向を規定する固定板(回動しない板)と、第2流れの流れ方向を規定する固定板とが、腕部200に取り付けられている態様であってもよい。このような態様においても、分離部223は上記と同様の効果を奏する。
尚、分離部223は、案内部523の上面523aからガイド板220の下面220aに向かって伸びるように形成されていてもよい。この場合、案内部523の上面523aが第1壁面に該当し、(分離部223の上端が当接する)ガイド板220の下面220aが第2壁面に該当することになる。
第1流れと第2流れとが並ぶ方向(本実施形態では車両800の左右方向)を「分離方向」と定義すると、分離方向に沿った分離部223の寸法(幅W2)は既に述べたように8mmとなっている。本発明者らが行った実験によれば、第1流れと第2流れとの間を8mm以上離せば、それぞれの流れが互いに引き寄せあう現象を確実に防止し得るという知見が得られている。このため、上記の分離方向に沿った分離部223の寸法は8mm以上とすることが望ましい。
また、図9を参照しながら説明したように、分離部223の形状は、空気の流れ方向における上流側に行くほど、左右方向(つまり分離方向)に沿った寸法が小さくなるように形成されている。このような分離部223の形状は、図9に示されるものとは異なる形状であってもよい。例えば、分離部223のうち、空気の流れ方向における上流側の部分(前方側部分)の形状が、前方側に向けて上面視円弧状に突出するような形状であってもよい。また、上流壁223aが設けられておらず、傾斜壁223cと傾斜壁223dとが直接繋がっているような態様であってもよい。つまり、分離部223のうち前方側部分の先端が尖っているような形状であってもよい。
図8に戻って説明を続ける。ガイド板220の下面220aとは反対側の上面220bのうち、下面視において突出部222と重なる位置には、導風部221の前方側部分が配置されている。このため、突出部222の位置に直接到達するような空気の流れは、上記の導風部221によって妨げられることとなる。換言すれば、突出部222の裏面側に配置された導風部221は、突出部222に直接当たるような空気の流れを妨げる位置に設けられている、ということができる。
同様に、ガイド板220の下面220aとは反対側の上面220bのうち、下面視において分離部223と重なる位置にも、導風部221の前方側部分が配置されている。このため、分離部223の位置に直接到達するような空気の流れは、上記の導風部221によって妨げられることとなる。換言すれば、分離部223の裏面側に配置された導風部221は、分離部223に直接当たるような空気の流れを妨げる位置に設けられている、ということができる。
このような構成においては、突出部222及び分離部223のそれぞれに空気が直接当たることが防止又は抑制されるので、突出部222等に空気が当たることによる異音の発生が更に防止される。これにより、車室内の環境をより快適なものとすることができる。
車室内における空気の流れについて、図11を参照しながら説明する。同図には、車室内の様子が上面視で示されている。図11においては、本体部100の開口110から吸引される空気の流れが矢印AR21により示されている。また、開口210から後方に向けて吹き出される空気の流れが、矢印AR31及び矢印AR32により示されている。尚、矢印AR31で示されるのは、外側に配置された方のフラップ71(図3を参照)に沿って吹き出された空気の流れ、すなわち第1流れである。また、矢印AR32で示されるのは、内側に配置された方のフラップ72(図3を参照)に沿って吹き出された空気の流れ、すなわち第2流れである。
図11の例においては、フラップ71の端部(フラップ72の端部723に対応する部分)が引き下げられているので、フラップ71に沿って吹き出された空気は下方側の座席830に到達している(矢印AR31)。一方、フラップ72の端部723は僅かしか引き下げられておらず、フラップ72の下面721はほぼ水平面に沿っているので、フラップ72に沿って吹き出された空気は後方側の座席840にまで到達している(矢印AR32)。
図11に示されるように、車両800の後方側に配置される3列目の座席840の幅は、後輪(不図示)との干渉を避けるために、2列目の座席830の幅に比べて狭くなっている。このため、内側のフラップ72に沿って吹き出された空気が座席840に到達するように、フラップ72の角度が調整されることが望ましい。この点と、車両800の後方側には空気が到達しにくい点とを考慮して、フラップ72の長手方向における寸法は、フラップ71の長手方向における寸法よりも長くなっている。
既に述べたように、本実施形態では、フラップ71によって案内される第1流れと、フラップ72によって案内され第2流れとが、分離部223によって互いに離間した状態となる。これにより、上記2つの流れが互いに引き寄せあう現象の発生が防止されるので、座席830及び座席840のそれぞれの適切な位置に、開口210から吹き出された空気を確実に到達させることが可能となっている。
ところで、車室内のうち車載用サーキュレータ10の近傍に存在する空気には、例えば車両用空調装置から吹き出された低温の空調風と、それよりも高温の空気とが存在している。このため、吸引される空気の入口である開口110が、仮に左右方向の略全体に亘るよう大きく形成されていた場合には、開口110からは低温の空調風のみならず高温の空気も吸引されてしまうこととなる。この場合、開口210からは、これらが混合された後の空気が吹き出されるので、その温度は空調風の温度よりも高くなってしまう。座席830や座席840には、このように空調風とは異なる温度の空気が到達してしまうので、後部側の快適性が損なわれてしまう。
本実施形態に係る車載用サーキュレータ10では、車両800の左右方向のうち比較的狭い範囲、具体的には、一対の腕部200の間に挟まれた本体部100にのみ開口110が形成されている。更に、開口110は、車両800の左右方向における中央となる位置に形成されている。このような位置は、車室内のうち、車両用空調装置から吹き出された空調風が、吹き出された際の温度のままで到達しやすい位置となっている。
これは、フロントパネル810の中央側に形成された空調風の吹き出し口(開口811)が、多くの場合、フロントパネルの左右両端側に形成された空調風の吹き出し口(開口812)よりも大きいことによる。図11では、中央の開口811から吹き出される空調風の流れが矢印AR11で示されており、左右両端の開口812から吹き出される空調風の流れが矢印AR12で示されている。開口110が形成された本体部100の近傍には、開口811から吹き出された空調風が多く到達するので、開口110からは快適な温度の空気が吸引されやすい。当該空気が(高温の空気と混合されることなく)車両800の後方側に吹き出されるので、座席830や座席840が設けられた後部側を快適に保つことが可能となっている。
尚、本実施形態においては、フロントパネル810の上面のうち左右中央となる位置に、空調風の吹き出し口である開口813が形成されている。図1を参照しながら既に説明したように、開口813から吹き出された空調風は、フロントガラス801に沿って上方に流れた後、開口110に到達する。開口813は、車載用サーキュレータ10の開口110に向けて空調風の主流を到達させるための、専用の開口として形成されている。開口813が形成されていることにより、車載用サーキュレータ10から後方側に吹き出される空気の温度をより快適な温度とすることが可能となっている。
ただし、このような専用の開口813が形成されていない場合であっても、上記のように車両の中央側には快適な温度の空気が存在することが多い。このため、本実施形態に係る車載用サーキュレータ10によれば、車室の後部側を比較的快適に保つことができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。