JP2017210689A - 耐熱性、耐久性に優れ、かつ、高強力な不織布 - Google Patents

耐熱性、耐久性に優れ、かつ、高強力な不織布 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、耐久性に優れ、かつ、高強力な不織布の提供。【解決手段】エンボス部と非エンボス部を有するポリエステル系連続長繊維不織布であって、該エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.08〜0.15であり、かつ、該非エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.05以上であることを特徴とするポリエステル系連続長繊維不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、引張強力、耐熱性、かつ、耐久性に優れるポリエステル系連続長繊維不織布に関する。
ポリエステル繊維は、高強度、高ヤング率を有しており、それを生かして産業資材用の繊維シートとして広く利用されている。しかしながら、近年不織布の用途の多様化に伴い、不織布に要求される布強力も高度化している。布強力の向上に向けて、種々の方策が検討されている。
ポリエステル長繊維不織布において、高速紡糸による配向結晶化した繊維は、高目付になればエンボス加工による繊維融着が不十分となり、伸度が低く、布強力が低下するという問題がある。
そこで、繊維融着性を改善するために、以下の特許文献1では、配向結晶化させない未延伸糸を熱接着成分として使用し、エンボス加工する方法が提案されている。しかしながら、この方法では配向度の低い繊維をエンボス工程で結晶化促進させるために繊維が脆くなり、形態保持性や耐久性が劣るという問題がある。
また、以下の特許文献2では、ガラス転移点温度が60℃以上のポリエステル系樹脂に非相溶でガラス転移点温度が120℃〜160℃の熱可塑性樹脂を混合することで、配向結晶化を抑制し、圧着性を向上させる方法が提案されている。しかしながら、この方法でも、非相溶成分が、単糸中の欠点箇所となってしまい、単糸強力及び布強力の低下が発生してしまうという問題がある。
他方、熱接着成分を用いる方法も多数提案されている。例えば、以下の特許文献3では、低融点の熱可塑性樹脂を用いた不織布と、それよりも高融点の熱可塑性樹脂を用いた不織布の積層を行い、エンボス加工する方法が提案されている。しかしながら、低融点成分のガラス転移点温度に由来する緩和により耐久性が劣るという問題がある。
また、以下の特許文献4では、SMS構造を提案しており、スパンボンド層へメルトブロー繊維を吹き付けることで投錨効果を発揮させ、熱接着を行うことで、高い布強力を得る方法が提案されている。しかしながら、3層以上積層が必要となるため、設備の大型化や、メルトブロー層が必須であるために設備が複雑となるという問題がある。
特開10−99608号公報 特開2012−17529号公報 特開平5−33257号公報 国際公開第2004/094136号
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、耐久性に優れ、高強力なポリエステル系連続長繊維不織布を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、引張時の破断のきっかけとなる欠点部分が不織布のエンボス部と非エンボス部の結晶配向に相関していることを発見し、該結晶配向指数を適切な範囲とすることで、エンボス部の接着は十分でありながら、引張時の破断のきっかけとなる欠点部分が無く、布強力を向上でき、かつ、耐熱性や耐久性にも優れた不織布を製造することができることを、予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
[1]エンボス部と非エンボス部を有するポリエステル系連続長繊維不織布であって、該エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.08〜0.15であり、かつ、該非エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.05以上であることを特徴とするポリエステル系連続長繊維不織布。
[2]X線回折法による前記エンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和が、X線回折法による前記非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm以上大きい、前記[1]に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
[3]エンボス面積率が6〜40%である、前記[1]又は[2]に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
[4]前記ポリエステル系連続長繊維不織布を構成するポリエステル系連続長繊維の繊維径が7〜30μmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
本発明に係るポリエステル系連続長繊維不織布は、耐熱性、耐久性に優れ、高強力である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のポリエステル経長繊維不織布を構成するポリエステル系長繊維を構成するポリエステル系樹脂は、熱可塑性ポリエステルであり、代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが挙げられる。また、熱可塑性ポリエステルは、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布は、スパンボンド法により効率よく製造することができる。すなわち、前記ポリエステル系樹脂を加熱溶融して紡糸口金から吐出させ、得られた紡出糸条を公知の冷却装置を用いて冷却し、エアジェットによる高速気流牽引装置にて牽引細化する。引き続き、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、コンベア上に堆積させてウェブとする。次いで、このコンベア上に形成されたウェブ、凹凸の表面構造を有するエンボスロールとフラットロールからなる一対の加熱ロール間に不織布を通過させ、不織布全体に均等に分散された熱圧着部を形成させることにより、ポリエステル系長繊維スパンボンド不織布が得られる。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布を構成するポリエステル系長繊維の形態としては、円形断面繊維だけでなく、異型断面繊維、中空糸などの特殊な形態であることができるが、強度の観点から、円形断面繊維が好ましい。
ポリエステル系長繊維の紡糸速度は、好ましくは3000m/min〜6000m/minであり、より好ましくは3500〜5500m/min、さらに好ましくは3700〜5000m/minである。紡糸速度が3000m/min以下では、熱圧着時の熱収縮を引き起こしやすい。他方、紡糸速度が6000m/min以上では、紡糸時の糸切れによる欠点が発生しやすく、また、糸の配向性、結晶性が高くなりすぎ、熱圧着時にエンボス部での接着が十分でなく、布強力の低下を引き起こす。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布の製造において、紡糸口金から吐出された繊維の冷却状態を特定の範囲とすることは、繊維中の結晶性、ひいてはエンボス後の結晶性に関わり極めて重要である。紡糸口金から牽引装置までの距離の紡糸口金に近い上半分の領域では、結晶性・配向性等の糸の構造が凡そ形成され、牽引装置に近い下半分では、結晶性・配向性等の糸の構造はわずかに変化しながら、冷却固化が完了する。したがって、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度が極端に低い(遅い)と、延伸による配向結晶化が十分に促進されず、結晶の配向、結晶の成長が不十分で有るため、耐熱性が低い繊維となり、熱圧着に適する繊維は得られない。他方、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度が極端に高い(速い)と、延伸による配向結晶化が異常に促進され非晶部が少なく耐熱性には優れるものの熱圧着性に劣る繊維が得られ、十分な熱圧着を行うためには、過剰なロール温度・圧力が必要となり、非エンボス部の結晶が融解を引き起こすことで、引張時の破断のきっかけとなる欠点部分が形成されてします。
他方、牽引装置近傍の糸の温度が高すぎると、牽引装置への糸の固着が発生し、安定した紡糸が実施できないため、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度に合わせて、紡糸口金から牽引装置までの距離の下半分の冷却速度を変化させる必要がある。
これらの点を考慮すれば、熱圧着性に優れ、引っ張り時の破断のきっかけとなる欠点部分が少なく、耐熱性に優れる不織布とするための結晶構造を持つ繊維を安定して製造するためには、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度を5.0〜10.0℃/cm、紡糸口金から牽引装置までの距離の下半分の冷却速度を0〜5.0℃/cmにすることが好ましく、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度を5.5〜9.0℃/cm、紡糸口金から牽引装置までの距離の下半分の冷却速度を0.5〜4.0℃/cmにすることがより好ましく、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分の冷却速度を6.0〜8.0℃/cm、紡糸口金から牽引装置までの距離の下半分の冷却速度を0.5〜3.0℃/cmにすることがさらに好ましい。
前記冷却速度を変更する手法としては、例えば、紡糸口金から吐出される樹脂温度を変化させる手法、紡糸口金から牽引装置までの間で加熱装置を用いる手法、紡糸口金の直下の保温部の長さを変化させる手法、冷却装置の冷却能力を変化させる手法、紡糸口金から牽引装置までの各領域で個別に冷却装置の能力を変化させる手法、又はこれらの任意の組み合わせを採用することができる。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布の熱圧着は、不織布全面積に対して6〜40%の範囲の熱圧着面積率で熱圧着が行われることが好ましく、より好ましくは7〜30%であり、更に好ましくは7〜25%である。熱圧着面積率がこの範囲内であると良好な繊維相互間の熱圧着処理を実施することができ、得られる不織布を適度な機械的強度や剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。熱圧着の温度、圧力は、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、熱圧着の温度はポリエステル系樹脂の融点よりも10〜90℃低い温度であることが好ましく、より好ましくは20〜60℃低い温度であり、圧力は、10〜100N/mmで有る事が好ましく、より好ましくは30〜70N/mmであり、この範囲内であると良好な繊維相互間の熱圧着処理を行うことができ、得られる不織布を適度な機械的強度や剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布のエンボス部のX線回折法による結晶配向指数は0.08〜0.15の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、0.09〜0.13、更に好ましくは0.10〜0.12である。X線回折法によって求める配向結晶指数は、結晶b軸c軸が作る面が、どの程度不織布面に対し平行であるかの指標である。一般に、ポリエステルは、熱と圧力を加えると圧延し、b軸とc軸が作る面が圧延方向と平行となる。したがって、結晶配向指数の高低は熱圧着の度合いを反映する。そのため、結晶配向指数が0.08未満であることは、熱圧着時の樹脂の圧延に伴う結晶の配向が低いことを示しており、熱圧着が不十分となるため、布強力の低下を引き起こす。他方、結晶配向指数が0.15を超えることは、熱圧着時の樹脂の流動に伴う結晶の配向が高すぎることを示しており、エンボス部が薄膜化しすぎることで布強力の低下を引き起こす。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布の非エンボス部のX線回折法による結晶配向指数は0.05以上で有ることが好ましく、より好ましくは、0.06以上、更に好ましくは0.07以上である。X線回折法によって求める配向結晶指数は、結晶b軸c軸が作る面が、どの程度不織布面に対し平行であるかに加え、結晶化度も反映しているので、結晶配向指数が0.05未満であることは、熱圧着前の糸の牽引が不十分であるか、又は熱圧着時の過剰なロール温度により非エンボス部の結晶が一度溶融していることを示しており、エンボス間を繋ぐ非エンボス部の糸の強度が低いものとなるため、引っ張り時にエンボス部と非エンボス部の境界部に応力が集中した際、境界部での破壊が優先して発生してしまい布強力の低下を引き起こす。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布のX線回折法によるエンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和は、非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm以上大きいことが好ましく、より好ましくは1.5nm以上、さらに好ましくは2.0nm以上である。エンボス部では、熱による結晶成長と圧力による樹脂の圧延に伴う結晶の配向により、結晶子サイズは大きくなると考えられるため、エンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和が、非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm未満であると、熱圧着が不十分であり、エンボス部の接合が外れやすく、布強力の低下を引き起こす。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布の非エンボス部の繊維の複屈折(Δn)は、0.10〜0.15であることが好ましく、より好ましくは0.12〜0.15であり、さらに好ましくは0.13〜0.15である。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布を熱圧着する前の繊維の複屈折としては、好ましくは0.06〜0.10の範囲であるが、この繊維を熱圧着することで、繊維の配向性は高まり、Δnが上記の範囲となり、この範囲であると、繊維の微細構造が安定し、低収縮で寸法安定性に優れ、エンボス部間の繊維強度も十分となる。
また、本実施形態のポリエステル系長繊維不織布のMD(機械方向の)引張強力は、例えば、土木・建築関係での実用性、加工時の工程張力に十分に耐えること、歩留り性改善等の観点から、2.0N/3cm幅/(g/m)以上であることが好ましく、より好ましくは2.3N/3cm幅/(g/m)以上である。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布を構成するポリエステル系長繊維の平均繊維径は7.0μm以上30.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは8.0μm以上28μm以下、さらに好ましくは9.0μm以上26.5μm以下である。紡糸安定性の観点から7.0μm以上であることが好ましく、強力や耐熱性の観点から30.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布の180℃乾熱収縮率は、0.5〜4.0%未満であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5%である。乾熱収縮率が高すぎる場合、加工時の寸法変化が大きくなる傾向にあり、成型品の寸法安定性が劣る物となる。
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。尚、不織布製造における流れ方向(機械方向)をMD方向、その方向と直角方向で巾方向をCD方向という。
以下に用いた測定条件等を記載する。
<X線回折測定>
リガク社製NANO-Viewerを用い、透過法の広角X線散乱測定を行った。CuKα線を試料に照射し、イメージングプレートにより散乱を検出した。試料-検出器間距離74.5mm、出力60kV, 45mAの条件で測定を行った。光学系はポイントフォーカスを採用し、スリット径1st slit:φ=0.4mm, 2nd slit:φ=0.2mm, guard slit:φ=0.8mmの条件で行った。希望の測定部位(エンボス部・非エンボス部)のみにエンボス面側からX線を照射し、任意の箇所3か所のX線回折測定を行った。尚、不織布は、不織布面とX線入射方向とが垂直になるような向きに設置した。
<解析>
イメージングプレートから得られたX線回折パターンに対して検出器のバックグラウンド補正、空セル散乱補正を行い、円環平均により1次元プロフィールを得た。続いて、結晶配向指数と結晶子サイズを算出するため、1次元プロフィールを結晶ピークと非晶ピークに分離した。まず、得られた1次元プロフィールの2θ=7.0°と2θ=35.0°のデータ点を結ぶようにベースラインを引き、1次元プロフィールからベースラインを差し引く操作を行った。その後、WaveMetrics社のソフトウェアIgor Pro 6.36のMulti-peak Fit機能を用い、結晶ピーク、非晶ピークともにガウス関数で近似してピーク分離を行った。結晶としては2θ=16.4°付近に観測される(0-11)ピーク、2θ=17.8°付近に観測される(010)ピーク、その他必要なピークを考慮した。非晶としては2つのピークを考慮し、非晶1のピーク位置は2θ=16.3°、半値全幅は4.3°、非晶2のピーク位置は2θ=21.4°、半値全幅は12.2°としてピーク分離を行った。尚、以上の説明は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とした不織布の場合についてのものである。
1.結晶配向指数
結晶配向指数は、以下の式:
f=(I(0-11)+I(010))/Iall
{式中、fは、先に求めた結晶配向指数であり、I(0-11)は、1次元プロフィールのピーク分離の結果得られた(0-11)ピークの面積であり、I(010)は、1次元プロフィールのピーク分離の結果得られた(010)ピークの面積であり、そしてIallは、1次元プロフィールから2θ=7.0°と2θ=35.0°を結ぶ線をバックグラウンドとして差し引いた後の面積である。}にピーク分離の結果を代入して計算し、任意の箇所3か所の平均として求めた。
2.結晶子サイズ
結晶子サイズは、以下のSherrerの式:
D(hkl)=Kλ/(βcosθ)
{式中、D(hkl)は、<hkl>方向の結晶子サイズ(nm)であり、Kは、0.9 (定数)であり、λは、X線の波長(nm)であり、βは、(β1 22 2)0.5(式中、β1は、ピーク分離の結果算出された(hkl)ピークの半値全幅(rad)であり、そしてβ2は、入射ビームの広がりの半値全幅(rad)である。)であり、そしてθは、ブラッグ角である。}にピーク分離の結果を代入して計算し、任意の箇所3か所の平均として求めた。
3.平均繊維径(μm)
キーエンス社製のマイクロスコープ顕微鏡(VH−8000)を用い、繊維の直径を1000倍に拡大して測定し、各20本の平均値として求めた。
4.目付(g/m
JIS−L1906に準じ、MD方向20cm×CD方向5cmの試験片を不織布のCD方向に採取位置が均等になるように5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの重量に換算して目付(g/m)を求めた。
5.引張強度(N/30mm幅/(g/m))
島津製作所社製オートグラフAGS−5G型を用いて、30mm幅の試料を把握長100mm、引張速度300mm/minで伸長し、得られる破断時の荷重を不織布の目付で除し、不織布のMD方向について5回測定を行い、その平均値として求めた。
6.複屈折率(Δn)
熱圧着後の不織布から非エンボス部となる糸を採取し、OLYMPUS社製のBH2型偏光顕微鏡コンペンセーターを用いて、通常の干渉縞法によってレターデーションと繊維径より複屈折率を求めた。
7.180℃乾熱収縮率(%)
熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH−TEMP OVEN PHH−300)を用い、10cm各の試料3点を、熱風空気雰囲気下で、180℃×30分で暴露させ、不織布の面積収縮率(%)を測定した。
[実施例1]
融点が265℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を7.0℃/cm、下半分を1.5℃/cmの冷却速度とし、牽引装置近傍の糸の温度が70℃以下となるように、糸を冷却し、移動捕集面へ開繊し、平均繊維径が13.6μmの長繊維ウェブを目付15g/mとなるように作製した。次に、熱圧着面積率15%がエンボスロールとフラットロールを用いて、カレンダー線圧30N/mm、上下温度225℃/225℃で分熱圧着することにより不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例2]
熱圧着時の上下ロール温度を205℃/205℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
実施例1よりも、若干引張強力は低下しているが、不織布として使用する上で十分な強力を保持しながらも、耐熱性は十分であった。
[実施例3]
長繊維ウェブの目付を35g/m、熱圧着時の上下ロール温度を230℃/230℃とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例4]
長繊維ウェブの目付を100g/m、熱圧着時の上下ロール温度を240℃/240℃、カレンダー線圧60N/mm、とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例5]
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.5℃/cm、下半分を1.9℃/cmと冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を221℃/221℃、とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例6]
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を7.6℃/cm、下半分を0.9℃/cmと冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を228℃/228℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例7]
紡糸速度3700m/minとし、熱圧着時の上下ロール温度を220℃/220℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例8]
紡糸速度5000m/min、平均繊維径を20μm、長繊維ウェブの目付を18g/mとした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例9]
紡糸孔形状を幅1.0mm厚み0.1mmの矩形断面とし、長繊維ウェブの目付を45g/m、熱圧着時の圧着面積率22%で上下ロール温度を221℃/221℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例10]
熱圧着時の圧着面積率30%としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例11]
熱圧着時のカレンダー線圧を10N/mmとした以外は、実施例2と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例12]
紡糸速度5000m/min、平均繊維径を12.9μm、熱圧着時の圧着面積率22%で上下ロール温度を250℃/150℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[実施例13]
上下ロール温度を230℃/170℃としたこと以外は、実施例12と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
[比較例1]
熱圧着時の上下ロール温度を235℃/235℃とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の過剰なロール温度により非エンボス部の結晶が一度溶融していることで、エンボス間を繋ぐ非エンボス部の糸の強度が低くなり、引張時にエンボス部と非エンボス部の境界部に応力が集中し、境界部の破壊が起こり、引張強力が低下した。
[比較例2]
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.0℃/cm、下半分を3.2℃/cmと糸の冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を190℃/190℃としたこと以外は、実施例7と同様の条件下で、織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の樹脂の圧延に伴う結晶の配向が少なく、エンボス部の結晶成長が不十分かつ熱圧着が不十分なため、引張強力が低下した。比較例2の条件からロール温度を高めることは、エンボス部の融解を引き起こしたため、不可能であった。
[比較例3]
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.0℃/cm、下半分を3.2℃/cmと糸の冷却速度を変化させたこと以外は、実施例9と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
エンボス部の接着はであったが、熱圧着時の過剰なロール温度により非エンボス部の結晶が一度溶融したことで、エンボス間を繋ぐ非エンボス部の糸の強度が低くなり、引張時にエンボス部と非エンボス部の境界部に応力が集中し、境界部の破壊が起こり、引張強力が低下した。
Figure 2017210689
本発明に係るポリエステル系連続長繊維不織布は、耐熱性、耐久性に優れ、かつ、高強力な不織布のであるため、例えば、各種包装資材、各種フィルター基材、ワイパー、使い捨てカイロ基布、食品フィルター材、電線押さえ巻きテープ、印刷機材、ブラインド、車両用支持体、又は補強材、テープ基材又は支持体、樹脂シート、発泡体シート、複数枚重ねて使用する断熱材などとの複合シート、自動車用天井表皮材、電池セパレータ、分離膜支持体、ハウスラップ、紙おむつ、生理用品、マスク等の広域な用途に利用可能である。

Claims (4)

  1. エンボス部と非エンボス部を有するポリエステル系連続長繊維不織布であって、該エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.08〜0.15であり、かつ、該非エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.05以上であることを特徴とするポリエステル系連続長繊維不織布。
  2. X線回折法による前記エンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和が、X線回折法による前記非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm以上大きい、請求項1に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
  3. エンボス面積率が6〜40%である、請求項1又は2に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
  4. 前記ポリエステル系連続長繊維不織布を構成するポリエステル系連続長繊維の繊維径が7〜30μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
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