JP2017210689A - 耐熱性、耐久性に優れ、かつ、高強力な不織布 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、繊維融着性を改善するために、以下の特許文献1では、配向結晶化させない未延伸糸を熱接着成分として使用し、エンボス加工する方法が提案されている。しかしながら、この方法では配向度の低い繊維をエンボス工程で結晶化促進させるために繊維が脆くなり、形態保持性や耐久性が劣るという問題がある。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
[2]X線回折法による前記エンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和が、X線回折法による前記非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm以上大きい、前記[1]に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
[3]エンボス面積率が6〜40%である、前記[1]又は[2]に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
[4]前記ポリエステル系連続長繊維不織布を構成するポリエステル系連続長繊維の繊維径が7〜30μmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
本実施形態のポリエステル経長繊維不織布を構成するポリエステル系長繊維を構成するポリエステル系樹脂は、熱可塑性ポリエステルであり、代表例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが挙げられる。また、熱可塑性ポリエステルは、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。
本実施形態のポリエステル系長繊維不織布を熱圧着する前の繊維の複屈折としては、好ましくは0.06〜0.10の範囲であるが、この繊維を熱圧着することで、繊維の配向性は高まり、Δnが上記の範囲となり、この範囲であると、繊維の微細構造が安定し、低収縮で寸法安定性に優れ、エンボス部間の繊維強度も十分となる。
以下に用いた測定条件等を記載する。
リガク社製NANO-Viewerを用い、透過法の広角X線散乱測定を行った。CuKα線を試料に照射し、イメージングプレートにより散乱を検出した。試料-検出器間距離74.5mm、出力60kV, 45mAの条件で測定を行った。光学系はポイントフォーカスを採用し、スリット径1st slit:φ=0.4mm, 2nd slit:φ=0.2mm, guard slit:φ=0.8mmの条件で行った。希望の測定部位(エンボス部・非エンボス部)のみにエンボス面側からX線を照射し、任意の箇所3か所のX線回折測定を行った。尚、不織布は、不織布面とX線入射方向とが垂直になるような向きに設置した。
イメージングプレートから得られたX線回折パターンに対して検出器のバックグラウンド補正、空セル散乱補正を行い、円環平均により1次元プロフィールを得た。続いて、結晶配向指数と結晶子サイズを算出するため、1次元プロフィールを結晶ピークと非晶ピークに分離した。まず、得られた1次元プロフィールの2θ=7.0°と2θ=35.0°のデータ点を結ぶようにベースラインを引き、1次元プロフィールからベースラインを差し引く操作を行った。その後、WaveMetrics社のソフトウェアIgor Pro 6.36のMulti-peak Fit機能を用い、結晶ピーク、非晶ピークともにガウス関数で近似してピーク分離を行った。結晶としては2θ=16.4°付近に観測される(0-11)ピーク、2θ=17.8°付近に観測される(010)ピーク、その他必要なピークを考慮した。非晶としては2つのピークを考慮し、非晶1のピーク位置は2θ=16.3°、半値全幅は4.3°、非晶2のピーク位置は2θ=21.4°、半値全幅は12.2°としてピーク分離を行った。尚、以上の説明は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とした不織布の場合についてのものである。
結晶配向指数は、以下の式:
f=(I(0-11)+I(010))/Iall
{式中、fは、先に求めた結晶配向指数であり、I(0-11)は、1次元プロフィールのピーク分離の結果得られた(0-11)ピークの面積であり、I(010)は、1次元プロフィールのピーク分離の結果得られた(010)ピークの面積であり、そしてIallは、1次元プロフィールから2θ=7.0°と2θ=35.0°を結ぶ線をバックグラウンドとして差し引いた後の面積である。}にピーク分離の結果を代入して計算し、任意の箇所3か所の平均として求めた。
結晶子サイズは、以下のSherrerの式:
D(hkl)=Kλ/(βcosθ)
{式中、D(hkl)は、<hkl>方向の結晶子サイズ(nm)であり、Kは、0.9 (定数)であり、λは、X線の波長(nm)であり、βは、(β1 2 -β2 2)0.5(式中、β1は、ピーク分離の結果算出された(hkl)ピークの半値全幅(rad)であり、そしてβ2は、入射ビームの広がりの半値全幅(rad)である。)であり、そしてθは、ブラッグ角である。}にピーク分離の結果を代入して計算し、任意の箇所3か所の平均として求めた。
キーエンス社製のマイクロスコープ顕微鏡(VH−8000)を用い、繊維の直径を1000倍に拡大して測定し、各20本の平均値として求めた。
JIS−L1906に準じ、MD方向20cm×CD方向5cmの試験片を不織布のCD方向に採取位置が均等になるように5枚採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの重量に換算して目付(g/m2)を求めた。
島津製作所社製オートグラフAGS−5G型を用いて、30mm幅の試料を把握長100mm、引張速度300mm/minで伸長し、得られる破断時の荷重を不織布の目付で除し、不織布のMD方向について5回測定を行い、その平均値として求めた。
熱圧着後の不織布から非エンボス部となる糸を採取し、OLYMPUS社製のBH2型偏光顕微鏡コンペンセーターを用いて、通常の干渉縞法によってレターデーションと繊維径より複屈折率を求めた。
熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH−TEMP OVEN PHH−300)を用い、10cm各の試料3点を、熱風空気雰囲気下で、180℃×30分で暴露させ、不織布の面積収縮率(%)を測定した。
融点が265℃であるポリエチレンテレフタレート樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して紡糸速度4500m/minで延伸しながら、紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を7.0℃/cm、下半分を1.5℃/cmの冷却速度とし、牽引装置近傍の糸の温度が70℃以下となるように、糸を冷却し、移動捕集面へ開繊し、平均繊維径が13.6μmの長繊維ウェブを目付15g/m2となるように作製した。次に、熱圧着面積率15%がエンボスロールとフラットロールを用いて、カレンダー線圧30N/mm、上下温度225℃/225℃で分熱圧着することにより不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の上下ロール温度を205℃/205℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
実施例1よりも、若干引張強力は低下しているが、不織布として使用する上で十分な強力を保持しながらも、耐熱性は十分であった。
長繊維ウェブの目付を35g/m2、熱圧着時の上下ロール温度を230℃/230℃とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
長繊維ウェブの目付を100g/m2、熱圧着時の上下ロール温度を240℃/240℃、カレンダー線圧60N/mm、とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.5℃/cm、下半分を1.9℃/cmと冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を221℃/221℃、とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を7.6℃/cm、下半分を0.9℃/cmと冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を228℃/228℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸速度3700m/minとし、熱圧着時の上下ロール温度を220℃/220℃とした以外は、実施施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸速度5000m/min、平均繊維径を20μm、長繊維ウェブの目付を18g/m2とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸孔形状を幅1.0mm厚み0.1mmの矩形断面とし、長繊維ウェブの目付を45g/m2、熱圧着時の圧着面積率22%で上下ロール温度を221℃/221℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の圧着面積率30%としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時のカレンダー線圧を10N/mmとした以外は、実施例2と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
紡糸速度5000m/min、平均繊維径を12.9μm、熱圧着時の圧着面積率22%で上下ロール温度を250℃/150℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
上下ロール温度を230℃/170℃としたこと以外は、実施例12と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の上下ロール温度を235℃/235℃とした以外は、実施例1と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の過剰なロール温度により非エンボス部の結晶が一度溶融していることで、エンボス間を繋ぐ非エンボス部の糸の強度が低くなり、引張時にエンボス部と非エンボス部の境界部に応力が集中し、境界部の破壊が起こり、引張強力が低下した。
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.0℃/cm、下半分を3.2℃/cmと糸の冷却速度を変化させたことと、熱圧着時の上下ロール温度を190℃/190℃としたこと以外は、実施例7と同様の条件下で、織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
熱圧着時の樹脂の圧延に伴う結晶の配向が少なく、エンボス部の結晶成長が不十分かつ熱圧着が不十分なため、引張強力が低下した。比較例2の条件からロール温度を高めることは、エンボス部の融解を引き起こしたため、不可能であった。
紡糸口金から牽引装置までの距離の上半分を6.0℃/cm、下半分を3.2℃/cmと糸の冷却速度を変化させたこと以外は、実施例9と同様の条件下で、不織布を得た。得られた不織布の物性を以下の表1に示す。
エンボス部の接着はであったが、熱圧着時の過剰なロール温度により非エンボス部の結晶が一度溶融したことで、エンボス間を繋ぐ非エンボス部の糸の強度が低くなり、引張時にエンボス部と非エンボス部の境界部に応力が集中し、境界部の破壊が起こり、引張強力が低下した。
Claims (4)
- エンボス部と非エンボス部を有するポリエステル系連続長繊維不織布であって、該エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.08〜0.15であり、かつ、該非エンボス部のX線回折法による結晶配向指数が0.05以上であることを特徴とするポリエステル系連続長繊維不織布。
- X線回折法による前記エンボス部の(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和が、X線回折法による前記非エンボスの(0−11)面と(010)面の結晶子サイズの和よりも1.0nm以上大きい、請求項1に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
- エンボス面積率が6〜40%である、請求項1又は2に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
- 前記ポリエステル系連続長繊維不織布を構成するポリエステル系連続長繊維の繊維径が7〜30μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系連続長繊維不織布。
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