JP5671203B2 - 耐熱性布帛 - Google Patents

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本発明は、ポリフェニレンスルフィド繊維で構成された不織布からなる耐熱性布帛であって、高強度でかつ耐熱耐久性に優れる耐熱性布帛に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略す)繊維は、高い耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、難燃性を有し、非常に厳しい環境下で使用することができるという特徴がある。そのため、PPS繊維からなる不織布は、従来から工業薬品用のフィルターやバグフィルター、電池セパレータなどの用途に使用され、特に、耐熱性、耐薬品性が必要とされる過酷な環境下での使用が期待されている。
高温環境下で使用される不織布として、比較的耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布が広く用いられている。しかし、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布は130℃以下の温度領域にて使用されており、130℃以上の過酷な環境化においては強度低下が大きく使用できないといった問題があった。また、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布は、アルカリや溶剤に対する耐性が十分でないため、使用できる環境が限られていた。
一方、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマーは、耐熱耐久性が高く過酷な環境下でも問題なく使用できるが、廃棄する際に焼却処理できず、埋め立て処理となり環境問題の点から好ましくない。
特許文献1には、不織布を形成後、特定の熱延伸加工された、PPS系長繊維耐熱性布帛が開示されており、−S−のスルフィド結合を95アトミック%以上にすることで、空気中での耐熱曝露時の強力保持率が優れるという記載がある。しかし、−S−のスルフィド結合が酸化され、スルフォキシドなどの酸化官能基が増加すると、強度保持率が低下するという問題があった。
特開2005−154919号公報
本発明の課題は、−S−のスルフィド結合が酸化され、−SO−などの酸化官能基を軽度に含有しても、加熱曝露後も高強度であり、かつ製造が容易であり、不織布を形成した後、強度保持や寸法安定化のための後工程での熱処理を必要とせずに、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性などの物理的特性に優れたPPS繊維からなる耐熱性布帛を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、PPS繊維の融解特性に着目し、特定温度範囲に対する複数の融解ピークを有するPPS繊維は、加熱曝露後も強度が高く、かつ熱収縮率が小さく、また熱に対する寸法安定性、熱接着性に優れる事を見出した。また、このようなPPS繊維から構成された不織布は、加熱曝露後も高強度で、後工程で熱処理を行わなくても、熱に対する寸法安定性に優れ、耐熱性、耐薬品性、難燃性等を有する事を見出した。
本発明者らは、さらにまた、不織布を多層構造とすることについて種々検討した。その結果、例えば、加熱曝露後も高強度であるPPS繊維からなる不織布層を上下層とし、メルトブロー法で得られたPPS微細繊維を中間層として積層一体化された3層構造不織布、あるいは、加熱曝露後も高強度であるPPS繊維からなる不織布層に、メルトブロー法で得られたPPS微細繊維を積層させた2層構造不織布は、上記の特徴に加え、良好なフィルター性およびバリヤー性を有することを見出した。
本発明は以上のような知見に基づいてなされたものである。
即ち、本発明は下記のとおりである。
1.ポリフェニレンスルフィド繊維で構成された不織布からなる耐熱性布帛であって、該不織布を構成するポリフェニレンスルフィド繊維の30wt%以上が、1分間に20℃の昇温速度で測定したときの示差熱分析計による融解ピークを、270℃から320℃の範囲に二つ以上有することを特徴とする耐熱性布帛。
2.210℃、1500時間の耐熱曝露試験後の強度が0.2(N/cm)/(g/m2)以上であることを特徴とする上記1に記載の耐熱性布帛。
3.前記ポリフェニレンスルフィド繊維が、繊維径1〜50μmの長繊維であることを特徴とする上記1又は2に記載の耐熱性布帛。
4.前記不織布が、熱圧着で一体化接合されたスパンボンド不織布であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の耐熱性布帛。
5.上記1に記載の不織布の層と、繊維径が0.1〜5μmであるポリフェニレンスルフィド微細繊維からなる不織布の層の少なくとも1層以上とが、積層一体化されていることを特徴とする耐熱性布帛。
6.上記1に記載の不織布の層を上下層とし、中間層として、繊維径が0.1〜5μmである微細繊維からなる不織布の層を有し、かつ、上下層と中間層が積層一体化されていることを特徴とする上記5に記載の耐熱性布帛。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定の融解ピークを有するPPS繊維を有する不織布からなる耐熱性布帛であって、PPS本来の特性である耐熱性、耐薬品性、難燃性を保持し、かつ、加熱曝露後も高強度で、熱に対する耐久性が大幅に改善された耐熱性布帛である。
本発明において、不織布はPPS繊維から構成されており、かつ、該不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上、好ましくは40wt%以上、特に好ましくは60wt%以上が、1分間に20℃の昇温速度で測定したときの示差熱分析計による融解ピークを270℃から320℃の範囲に2つ以上有する。
本発明において、融解ピークは、270〜290℃の範囲と290〜320℃の範囲、それぞれに存在することが好ましい。特に、PPS樹脂本来の融点である275〜285℃より高温である290〜320℃の範囲に融解ピークを有することが重要であり、高温の領域に融解ピークを有することで、加熱曝露後でも不織布強度を高く維持することができる。
本発明においては、特に、紡糸工程において、PPS繊維を、高速で、素早く、しかも、高率で延伸することで、PPS繊維が特定の微細構造を有することとなり、その結果、PPS繊維自体が高い融解ピーク成分を有するという結果を生じるものと推定される。
特定の融解ピークを有するPPS繊維が、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上であると、加熱曝露時後も、高強度であるPPS繊維による耐熱耐久性が大きく作用し、その結果、不織布全体として、加熱曝露後も高強度である優れた耐熱性布帛を得ることができる。
本発明においては、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上が、広角X線測定により求めた見かけの結晶子サイズが4〜20nmであることが好ましく、さらに好ましくは4〜15nmである。結晶子サイズが4nm未満であると、繊維の強度が低くなり十分に高い強度の不織布が得られにくく、また、加熱曝露時の強度保持率が低下しやすい。結晶子サイズが大きすぎると、熱接着性が低下し、十分に高い強度の不織布が得られにくい。
特定の結晶子サイズを有するPPS繊維が、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上であると、PPS繊維が、高強度でかつ加熱曝露時後の強度維持率が高く、また、耐熱耐久性に優れているため、その結果、不織布全体として、高強度でかつ加熱曝露後も高強度である優れた耐熱性布帛を得る事ができる。
なお、結晶子サイズの測定法は後記する。
本発明の耐熱性布帛において、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上が、結晶化度が25〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは結晶化度が30〜40%である。結晶化度が上記の範囲であると、繊維自体の熱収縮率が小さいので、ウェブが熱接着時に収縮を起こすことがなく、また、結晶性が適度であるため、熱接着性が良好で、高強度を有する優れた不織布が得られる。
本発明者らは、PPS繊維の結晶化度とPPS繊維の熱収縮率の関係を種々検討した結果、熱収縮率が結晶化度に大きく依存していることを見出した。即ち、図1に示すように、結晶化度が25%より小さいと、210℃の熱収縮率は50%以上と非常に大きいが、結晶化度が25%より大きくなると急激に熱収縮率が低下し、30%以上では熱収縮率が数%となることを見出した。
したがって、PPS繊維の結晶化度を特定範囲にコントロールすることにより、熱収縮率を低下させ、PPS繊維から構成される不織布の熱収縮率を低下させることが可能である。結晶化度が25〜50%の範囲という、比較的高結晶性のPPS繊維が、不織布を構成する繊維の30wt%以上であると、結晶化度の高いPPS繊維自体による熱収縮性の低減効果が大きく作用し、その結果、不織布全体として、充分な熱に対する寸法安定性が得られる。
従って、結晶化度の比較的高いPPS繊維を層状に用いて、不織布を多層構造化することにより、熱に対する寸法安定性が良好な不織布が得られる。例えば、結晶化度の比較的高いPPS繊維層を上下層とし、結晶化度の比較的低いPPS微細繊維層を中間層とした多層構造不織布は、本発明の好ましい態様である。なお、結晶化度の測定法は後記する。
なお、繊維形成後、PPS繊維に熱処理を行うことにより、結晶子サイズを4〜20nmに高める事ができ、結晶化度も20〜50%に向上させることができる。しかしながら、PPS繊維は、熱処理を行うことにより繊維間の熱接着性が乏しくなるため、不織布とする場合には、高強度の不織布が得られないという問題が生じやすい。
本発明において、このように、特定の融解ピークおよび結晶性を有する繊維構造のPPS繊維が、加熱曝露後も高強度でかつ熱接着性に優れる理由としては、融点の異なる結晶(結晶子サイズの異なる結晶)を有することで熱接着時の分子鎖の可動性が増し、さらに、分子鎖の配向を制御することで熱圧着に寄与できる適度な非晶部を存在させることができるため、繊維間の熱圧着性に優れ、高強度な不織布が得られるものと推定される。
さらに、PPS本来の融点より高い融解ピークを有することで耐熱性が向上するものと推定される。また、特定範囲の結晶化度を有することにより、PPS分子の凝集エネルギー密度が高まるために分子間の拘束力が増大し、熱での緩和による収縮が妨げられるものと推定される。
本発明の耐熱性布帛において、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上が、顕微Ramanから求めた1570cm-1、1075cm-1の繊維軸方向と法線方向のピーク強度比がそれぞれ3.0〜6.5であることが好ましく、さらに好ましくは4.0〜6.0である。
顕微Ramanから求めたピーク強度比は分子鎖の配向を表す指標であり、ピーク強度比が3.0未満であると分子鎖の配向が不十分であるため、十分に高強度の繊維が得られず、高強度の不織布が得られ難い傾向がある。また6.5を超えると、繊維の強度は高くなるが、分子鎖の可動性が低下して熱接着性が不十分となり、高強度の不織布が得られ難い傾向がある。
上記のような特定の分子配向性を有するPPS繊維が、不織布を構成するPPS繊維の30wt%以上であると、高強度かつ熱接着性に優れたPPS繊維によって、不織布全体として、強度に優れた耐熱性布帛を得ることができる。なお、顕微Ramanによるピーク強度比の測定法は後記する。
本発明の耐熱性布帛において、不織布を構成するPPS繊維は、特定のMFRを有するPPSからなることが好ましい。PPSポリマーの溶融流れ量(MFR)は、荷重5kgおよび温度315.6℃の条件でASTM−D1238−82法で測定した溶融流れ量(MFR)であり、本発明においては、該溶融流れ量が、好ましくは10〜1000(g/10分)、より好ましくは50〜500(g/10分)である。
また、PPSポリマーは直鎖型で、枝分かれが無く、線状であることが好ましい。PPSポリマーが直鎖型で、かつ特定の融解ピークを有すると、分子が強固に結合しているため、分子鎖の中央部分からの切断が生じにくく、長時間加熱条件下にさらされても、酸化分解が分子鎖の端部からの分解に留まり、分子量の低下が少ない。その結果、高強度で、かつ、加熱曝露時の強度維持率を高くできる。
一方、非直鎖型で、枝分かれ構造を有する架橋型のPPSポリマーにおいては、重合度の低い分子鎖を架橋により結合させているため、架橋点や、分子鎖の中央部分からの切断が生じ易く、加熱曝露時に、酸化分解に伴って大きく強度が低下しやすい。
以上のような理由から、本発明では、PPSポリマーは、直鎖型で、かつMFRが10〜1000(g/10分)の範囲であることが好ましい。
前記のように、本発明の耐熱性布帛は、特定の融解ピークを有するPPS繊維を30wt%以上有する不織布からなる。
PPS繊維の融解ピークを特定範囲にコントロールするためには、ポリマーのMFR、紡糸段階での紡糸速度、加熱条件、ノズルからエジェクター間の雰囲気温度と冷風風速、延伸条件を適正化することにより、特定の融解特性を有するPPS繊維を得ることができる。特に、直鎖型の、特定のMFRを有するPPSポリマーを用い、紡糸速度を高め、ノズルからエジェクター間の雰囲気温度と冷風風速を特定の範囲の設定し、紡糸部での延伸を促進させることで、特定の融解挙動と構造を有するPPS繊維を得ることができる。このようにして、PPS繊維の融解ピークを特定範囲にコントロールする方法は、本発明者らにより初めて見出されたものである。
本発明の耐熱性布帛において、不織布は、XPS解析による硫黄(−S−)と硫黄酸化成分(−SO2−、−SO−)の組成比較を行ったときに、−S−のスルフィド結合が85アトミック%以上であることが好ましく、より好ましくは90アトミック%以上、さらに好ましくは90〜95アトミック%であり、100アトミック%でも構わない。XPS解析は、繊維表面50Åまでの化学結合を特定したものである。また、−SO−、−SO2−のような酸化官能基は、15アトミック%未満であることが好ましく、より好ましくは10アトミック%未満、さらに好ましくは5〜10アトミック%である。
本発明の耐熱性布帛は、PPS繊維が上記のような酸化官能基を約10アトミック%含有していても、加熱曝露後も強度が高いことが特徴である。
本発明において、PPS繊維の繊維径は1〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜30μmであり、特に好ましくは2〜15μmである。繊維径が上記の範囲であると、均一で高強度の不織布が得られる。
本発明において、PPS繊維の強度は、2cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは2.5cN/dtex以上であり、特に好ましくは3cN/dtex以上である。
本発明において、PPS繊維は、210℃の熱収縮率が20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。また、PPS繊維は、210℃、1500時間の耐熱曝露試験後の強度が0.2(N/cm)/(g/m2)以上であることが好ましく、より好ましくは0.3(N/cm)/(g/m2)以上、さらに好ましくは0.45(N/cm)/(g/m2)以上である。
熱収縮率と耐熱曝露試験後の強度が上記の範囲であると、優れた耐熱耐久性と寸法安定性、フィルター性能及びバリヤー性能が得られる。
本発明において、PPS繊維は、長繊維、短繊維のいずれでもよいが、生産効率の面から、スパンボンド法による長繊維が好ましい。
本発明の耐熱性布帛は、布帛を構成する不織布の構造に特に限定はないが、例えば、スパンボンド不織布、SM積層不織布、SMS積層不織布、4層以上の多層構造不織布、短繊維不織布が挙げられる。なかでも、生産効率、高機能化の面から、スパンボンド不織布、SM積層不織布、SMS積層不織布、3層以上の多層構造不織布が好ましい。なお、Sはスパンボンド、Mはメルトブローを意味する。
本発明において、前記した特定の融解ピークを複数有するPPS繊維からなる層を少なくとも1層用い、または、該融解ピークを複数有するPPS繊維からなる層を上下層に用いて、微細繊維からなる層と積層一体化された多層構造不織布からなる耐熱性布帛は、不織布の形状安定化、加熱曝露時の強度保持、表面毛羽安定化、強度付与などの面から好ましい態様である。
多層構造不織布の好ましい態様としては、以下のようなものが例示される。
(i)繊維径が3〜50μmで特定の融解ピークを複数有するPPS長繊維からなる層を少なくとも1層以上と、繊維径が0.1〜5μmで結晶化度10〜50%であるPPS微細繊維からなる層を少なくとも1層以上が、積層一体化されている多層構造不織布。
(ii)上下層として、繊維径3〜50μmで、特定の融解ピークを複数有するPPS長繊維からなる層を有し、中間層として、繊維径が0.1〜5μmで結晶化度10〜50%であるPPS微細繊維からなる層を有し、かつ、上下層と中間層が積層一体化されている多層構造不織布。
多層構造不織布において、PPS長繊維は、1分間に20℃の昇温速度で測定したときの示差熱分析計による融解ピークが270℃から330℃の範囲において複数存在し、広角X線測定により求めた見かけの結晶子サイズが4〜7nm、顕微Ramanから求めた1570cm-1、1075cm-1の繊維軸方向と法線方向のピーク強度比がそれぞれ3.0〜6.5である。
多層構造不織布において、PPS微細繊維の繊維径は0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜5μm、特に好ましくは0.3〜5μmである。このような微細繊維は、例えば、特公平3-80905号公報に記載のメルトブロー法等により容易に製造することができる。
PPS微細繊維の繊維径は、他の層を構成する不織布の繊維径、耐熱性布帛の用途等によって適宜選択されるが、繊維径が上記の範囲内であると、良好なフィルター性能、バリヤー性能を有する耐熱性布帛が得られる。
また、積層させるPPS微細繊維層は、単層でも良いし、複数層を積層させることもできる。
多層構造不織布において、接合方式としては、熱接着方式、水流交絡法、ニードルパンチ法などが挙げられるが、生産効率の面から、熱接着方式が好ましい。また、熱接着は全面であっても部分的であってもよい。
多層構造不織布において、微細繊維層におけるPPS繊維は、結晶化度が10〜50%であることが好ましく、より好ましくは15〜30%である。
結晶化度が10%未満であると、微細繊維層の軟化点が低くなり、その結果、熱接着工程において、微細繊維が、長繊維層から滲み出たりして、熱圧着ロールに中間層の繊維が付着し安定的な生産ができないという問題が生じやすい。結晶化度が50%を超えると、中間層と上下層との熱接着力が低下しやすく、多層構造の層間剥離が生じる傾向があり、また、多層構造不織布の強度が低下する傾向がある。
次に、本発明の耐熱性布帛を製造するプロセスの例として、スパンボンド法によるPPS不織布の場合について説明する。
PPSポリマーは直鎖型であり、荷重5kgおよび温度315.6℃の条件でASTM-D1238-82法で測定した溶融流れ(MFR)が、10〜1000(g/10分)の範囲のものが好ましく、より好ましくは50〜500の範囲である。
MFRが上記の範囲であると、紡糸工程での繊維形成における変形追随性が良好で、糸切れが少なく、また、PPSポリマーの分子量が十分高く、実用上十分な強度の繊維が得られ、さらに寸法安定性、熱接着性に優れた繊維を得ることができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、PPSポリマーへ、原着用の顔料、酸化チタン、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等、任意の添加剤が添加されても良い。
紡糸工程の1例を挙げると、PPSポリマーを、通常の押出機で溶融した後、該溶融物を、計量ポンプを経て、温度300〜380℃で、多数の細孔を有する紡糸口金に送り込み、溶融押出しして糸状物とし、その後、牽引装置(例えば、エジェクター装置)で延伸することにより、PPS繊維ウェブが得られる。このようにして得られた、熱に対する寸法安定化処理がなされていないPPS繊維ウェブを、熱圧着ロールを用いて、連続的に熱接着によって一体化接合することにより、本発明の耐熱性布帛を得ることができる。
溶融紡糸する際の紡糸温度は、290〜380℃が好ましく、より好ましくは300〜370℃であり、特に好ましくは300〜340℃である。紡糸温度が上記の範囲であると、安定した溶融状態で、斑および着色がなく満足し得る強度の繊維が得られる。用いる紡糸口金の形状については特に制限はなく、円形、三角、多角形、扁平等のものを用いることが出来、通常は、ノズル直径が0.1〜1.0mm程度の円形が好ましい。
所定の紡糸温度でノズルから押し出された溶融ポリマーは、エジェクター装置の出口から空気流と共に噴出されて、延伸フィラメント群となり、更に、その下方に設けられた移動式の多孔性の受器(例えば、金属製あるいは樹脂製の定速走行している網状物等)の上にウェブとして捕集される。
ここで、エジェクター装置とは、加圧空気による高速空気流を推進力として、溶融紡糸されたフィラメントを高速で引き取り、細化し、かつ該高速空気流にフィラメントを随伴させる機能を有する装置を言う。エジェクターから押し出されるフィラメントの速度、すなわち紡糸速度は、フィラメント単糸の細化の指標であり、高速にするほど単糸の細化が進み、強度および寸法安定性に優れた繊維が得られる。
この時、ノズルとエジェクター間の雰囲気温度と冷風風速を特定の範囲に設定することにより、フィラメントの融解ピークを270℃から320℃の範囲に複数存在させることができる。このような融解ピークを有するフィラメントであると、加熱条件下に曝露後も、強度に優れた耐熱性布帛を得ることができる。
紡糸速度は、好ましくは6000〜15000m/分であり、より好ましくは7000〜12000m/分である。紡糸速度が6000m/分未満では、フィラメントが十分に延伸されていないために強度および熱に対する寸法安定性が不十分であり、また、熱接着時にウェブが収縮を起こす場合がある。紡糸速度が6000〜15000m/分であると、強度および熱に対する寸法安定性、加熱条件下に曝露後も、強度に優れた高品質の耐熱性布帛が、安定して得られる。
この時、エジェクターから噴出されるフィラメント群が、固まりやすくかつ捕集されたウェブの広がりが狭く、シートとしての均一性および品位に欠けるような傾向にあるときには、特に、フィラメントが相互に離れた状態で噴出されて捕集されるような工夫をすることが有効である。
そのためには、例えば、エジェクターの下方に衝突部材を設け、衝突部材にフィラメントを衝突させて、フィラメントに摩擦帯電を起こさせて開繊させる方法、あるいは、エジェクターの下方で、コロナ放電により該フィラメントに強制帯電させて開繊させる方法などを用いることができる。
ウェブの捕集に際しては、フィラメント群に随伴して受器に当たる空気流のために、一旦堆積したウェブが吹き流されて乱れたものになる場合があり、この現象を防ぐためには、受器の下方から空気を吸引する手段を採用することが好ましい。PPS長繊維層は、単層でもよいし、複数層を重ねて用いることもできる。
次に、本発明の耐熱性布帛において、多層構造不織布を製造するプロセスの1例を以下に説明する。
PPS長繊維からなる層は、上記のスパンボンド方法によって製造される。
積層させるPPS微細繊維の繊維径と結晶化度を所定の範囲に調整するためには、例えば、荷重5kgおよび温度315.6℃の条件でASTM-D1238-82法で測定した溶融流れ量(MFR)が100〜1000(g/10分)のポリマーを用いることにより、一般的なメルトブロー紡糸条件で調整可能である。
多層構造不織布は、PPS長繊維からなる層と、PPS微細繊維からなる層を積層し、一体化することにより得られる。また、メルトブロー法によるPPS微細繊維を、PPS長繊維からなる層に直接吹き付けて積層すると、長繊維層へ微細繊維が進入するという効果によって、層間の剥離が防止され、さらには、長繊維層が強化されるため、高強度の多層構造不織布が得られるので好ましい。
上記のようにして得られたウェブを、連続的に熱接着して一体化接合して多層構造不織布とすることにより、本発明の耐熱性布帛を得ることができる。
熱接着は、200〜270℃の加熱下で圧着面積率が3%以上で行うことが好ましく、熱接着により繊維相互間の良好な接着を行うことができる。
熱接着の方法としては、加熱した平板を用いて熱圧着することが可能であるが、一対のカレンダーロール間にウェブを通して熱圧着させる方法が生産性に優れているため好ましい。カレンダーロールの温度および圧力は、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められない点もあるが、より好ましい温度は210〜260℃、圧着面積率は3%以上、圧力は少なくとも線圧が5N/mm以上であることが、得られる多層構造不織布の強度を図る上で好ましい。
カレンダーロールとしては、その表面が平滑なものや模様が彫刻されたもの(例えば、長方形型、ピンポイント型、織目柄、Y柄、ドンゴロス柄、ヘリンボン柄、四角形柄、横菱柄絣、斜絣柄)の使用、あるいは、これらの同種のローラーの組み合わせ、異種のローラーの組み合わせによる複数の回転ローラーの使用も可能である。熱圧着部の面積は、不織布の全面積に対して3%以上とすることが、多層構造不織布の強度を良好に発揮させる上で好ましい。
本発明の耐熱性布帛は、特定の融解特性を有するPPS繊維で構成された不織布からなり、加熱条件下で曝露時の強度を高く維持でき、熱接着性に優れ、熱収縮率が低いため、高強度かつ耐熱耐久性、寸法安定性に優れている。
また、不織布の構造を多層構造とすることにより、フィルター性能をいっそう向上させることができ、さらに、引張強力、バリヤー性などを変化させた耐熱性布帛を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。
(1)溶融流れ量(MFR)
荷重5kg、荷重315.6℃の条件にて、ASTM-D1238-82法に準じて測定した。単位はg/10分である。
(2)結晶子サイズ
X線回折装置(リガク製NANO−Viewer)を用いて、下記条件にて測定を行い、結晶子サイズを求めた。
1.試料繊維を十分な散乱強度が得られるだけ重ね、繊維軸法線方向からX線を入射し、透過散乱光を検出した。測定はリガク製ナノスケールX線構造評価装置NANO−Viewerを用い、光学系:ポイントコリメーション、カメラ長:70.2mm、測定時間:1800秒、検出器:イメージングプレートという条件で行った。なお、試料繊維を重ねる際、試料厚みが厚くなりすぎ、散乱データに試料厚みの効果が出ないよう留意した。
2.空セル補正を行うために、各試料のX線透過率測定、空セル散乱測定もあわせて実施した。
3.イメージングプレートにより得られた2次元散乱データを円環平均することにより1次元化した。
4.空セル散乱、及びX線透過率を用い、空セル補正を行った。
5.空セル補正後の1次元散乱データにおいて、(102)(200)(111)面由来の回折ピークを用い、シェラーの式から結晶子サイズDを算出した。
(3)顕微Ramanによる配向度
日本分光製NRS3200を用いて下記の条件の測定を行い分子鎖の配向を求めた。
1.清浄なスライドガラスの上にサンプル繊維の単糸を置き、繊維軸法線方向から偏光レーザーを照射し、ラマンスペクトルを測定した。この際、レーザーの焦点位置を試料繊維中心部と表面部に設定することでそれぞれの位置におけるラマンスペクトルを得た。なお、それぞれの点においてレーザーの偏光が繊維軸に対して平行になる条件(レーザー偏光=0°)と垂直になる条件(レーザー偏光=90°)の2条件で測定を実施した。測定は日本分光製NRS3200を用い、励起波長:532.11nm、レーザー強度:1.6mW、照射時間:5秒×10回、スポット径:1μmφの条件で行った。
2.分子鎖中でほとんど配向性のないσC−H(Out Plane):740cm-1を基準ピークとして、得られたスペクトルのベンゼン環(Ring vib.):1570cm-1、およびPh−S(Ring vib. with S):1075cm-1のピーク強度をσC−H(Out Plane):740cm-1の強度で割ることで、規格化を実施した。
3.レーザー偏光=0°とレーザー偏光=90°の条件で得られた規格化後のベンゼン環(Ring vib.):1570cm-1、およびPh−S(Ring vib. with S):1075cm-1のピーク強度の比(レーザー偏光=0°条件/レーザー偏光=90°条件)を配向度と定義し評価した。
(4)繊維径
試料の任意の10ヶ所をマイクロスコープの倍率2500倍にて撮影して、50点の繊維の直径を測定し、それらの平均値を求めた。
(5)単糸強度
引張試験機を用い、試料長100mm、引張速度200mm/分の条件で、応力、伸度曲線を求め、最大応力を試料の繊度で割った値を単糸の強度(cN/dtex)とした。
(6)結晶化度
示差熱分析計(TAインスツルメント社:DSC2920)を用いて、5.0mgの試料を以下の条件で測定し、結晶化度(%)を算出した。なお、完全結晶の融解熱量を146.2J/gとした。
測定雰囲気:窒素ガス150ml/分、昇温速度:20℃/分
測定範囲:30〜350℃
結晶化度={〔(融解部の熱量[J/g])-(冷結晶部の熱量[J/g])〕/146.2}×100
(7)融解ピーク
示差熱分析計(TAインスツルメント社:DSC2920)を用いて、5.0mgの試料を以下の条件で測定し、融解ピークを求めた。
測定雰囲気:窒素ガス150ml/分、昇温速度:20℃/分
測定範囲:30〜350℃
(8)熱収縮率
0.05cN/dtexに相当する荷重をかけて測定した長さL0の試料を、熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH-TEMP OVEN PHH-300)を用い、無張力状態で、熱風空気雰囲気下で210℃×3分間、曝露させた後、オーブンから取り出し、再び上記荷重をかけて測定した長さL1から以下の式を用いて熱収縮率(%)を算出した。
熱収縮率={(L0-L1)/L0}×100
(9)不織布の目付(g/m2
JIS L-1906に準じて測定した。
(10)不織布の引張強力
JIS L-1906に準じて測定し、MD方向とCD方向の平均値を不織布の引張強力とし、単位目付あたりに換算した数値(N/cm)/(g/m2)で表した。
(11)不織布の乾熱収縮率
熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH-TEMP OVEN PHH-300)を用い、10cm角の試料3点を、熱風空気雰囲気下で210℃×30分で曝露させ、不織布の面積収縮率(%)を測定した。
(12)不織布のXPS解析
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のサーモフィッシャーESCALAB250を使用し励起源としてMgKα(15kV×20mA)を用い、繊維表面の硫黄原子の化学状態を測定した。スルフィド結合−S−は163.5eV付近、スルフィド結合−S−の酸化によって生じるスルフォキシド−S0−は166eV、スルフォン−S02−は168eV付近に検出されるので、その構成比をアトミック%で表した。
(13)長期耐熱性評価
熱風オーブン(タバイエスペック株式会社:HIGH-TEMP OVEN PHH-300)を用い、長さ30cm、幅5cmのサンプルを熱風空気雰囲気下、210℃×1500時間、空気循環量300リットル/分で曝露させ、不織布の引張強力をJIS L-1906に準じて測定し、MD方向とCD方向の平均値を不織布の引張強力とし、単位目付あたりに換算した数値(N/cm)/(g/m2)で表した。
[実施例1]
溶融流れ量(MFR)が70g/10分である直鎖型PPSポリマー(ポリプラスチックス社製:フォートロン)を330℃で溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から押出し、ノズルからエジェクター間で、風速0.5m/秒、20℃の冷風でフィラメントを冷却しながらエジェクターで吸引しながら紡糸速度8000m/分で延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させてPPS長繊維ウェブを作製した。
得られたウェブを、250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧56N/mmにて部分熱圧着し、不織布を作製した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
また、XPS解析にて硫黄原子の化学状態を測定すると、−S−のスルフィド結合が99.9アトミック%であった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後の不織布の引張強力は0.56(N/cm)/(g/m2)と高い強度を維持していた。
[実施例2]
実施例1において得られた不織布を、空気中245℃で200時間熱処理し、さらなる寸法安定化処理を施した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
XPS解析にて硫黄原子の化学状態を測定すると、−S−のスルフィド結合が92.3アトミック%であった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後のタテ強力保持率を測定すると0.54(N/cm)/(g/m2)であった。また、210℃における熱収縮率が0.1%と極めて寸法安定性に優れていた。
[実施例3]
溶融流れ量(MFR)が70g/10分である直鎖型PPSポリマー(ポリプラスチックス社製:フォートロン)を330℃で溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から押出し、ノズルからエジェクター間で風速0.5m/秒、20℃の冷風でフィラメントを冷却しながらエジェクターで吸引しながら紡糸速度8000m/分で延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、目付が30g/m2のPPS長繊維ウェブを作製した。
次いで、溶融流れ量(MFR)が670g/10分である直鎖型PPSポリマー(ポリプラスチックス社製:フォートロン)を、紡糸温度340℃、加熱空気温度390℃の条件下でメルトブロー法により紡糸し、平均繊径3μmの微細繊維を、目付10g/m2のランダムウェブとして、上記で作製したPPS長繊維ウェブに向けて垂直に噴出させ、微細繊維の層及び長繊維の層からなる積層ウェブを得た。なお、メルトブローノズルから長繊維ウェブの上面までの距離は、100mmとした。
得られた積層ウェブの微細繊維の層上に、更に、PPS長繊維ウェブを、上記と同様にして開繊し、長繊維の層/微細繊維の層/長繊維の層からなる三層積層ウェブを調製した。
この三層積層ウェブを、250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧56N/mmにて部分熱圧着し、多層構造の耐熱性不織布を作成した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。
また、XPS解析にて硫黄原子の化学状態を測定すると、−S−のスルフィド結合が99.9アトミック%であった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後の引張強力を測定すると、0.54(N/cm)/(g/m2)と高い強度を維持していた。
[比較例1]
溶融流れ量(MFR)が70g/10分である架橋型PPSを用い、紡糸速度を3000m/分とした以外は、実施例1と同様の条件でPPS長繊維ウェブを作製した。このウェブを、250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧56N/mmにて部分熱圧着した。
この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。融解ピークは270〜320℃に一つしか存在せず、結晶サイズも小さく、分子鎖の配向度も十分ではなかった。また、XPS解析にて硫黄原子の化学状態を測定すると、−S−のスルフィド結合が92.0アトミック%であった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後の引張強力を測定すると0.10(N/cm)/(g/m2)と強度が低いものであった。
[比較例2]
溶融流れ量(MFR)が70g/10分である直鎖型PPSを用い、紡糸速度を3000m/分とした以外は、実施例1と同様の条件でPPS長繊維ウェブを作製した。このウェブを空気中180℃で1時間熱処理し、寸法安定化処理を施した。この熱処理したウェブを250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧56N/mmにて部分熱圧着した。
この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。融解ピークは270〜320℃に一つしか存在せず、また結晶化度、結晶サイズが大きくなりすぎ熱接着性が低下し高強度の不織布が得られなかった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後の引張強力を測定すると0.14(N/cm)/(g/m2)と強度が低いものであった。
[比較例3]
溶融流れ量(MFR)が70g/10分である直鎖型PPSを用い、通常のポリエチレンテレフタレート繊維に使用されている2段延伸1段リラックス方式のダイレクトスピンドロータイプ機を使用し、紡糸引取速度を1000m/分、1段目ローラー温度を100℃、2段目ローラー温度を220℃、及び2〜3段目のローラー間のリラックス率を5%、3段目ローラー温度を220℃で延伸糸を作製し、実施例1で用いたエジェクターで延伸糸を吸引しながら、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させてPPS長繊維ウェブを作製した。
このウェブを、250℃に加熱した織目柄エンボス(圧着面積率14.4%)ロールとフラットロール間で線圧56N/mmにて部分熱圧着した。この不織布を構成する繊維及び不織布の特性を表1に示す。融解ピークは270〜320℃に一つしか存在せず、また繊維の配向度が高く、高強度の不織布が得られなかった。この不織布の空気中210℃、1500時間の耐熱曝露後の引張強力を測定すると0.16(N/cm)/(g/m2)と強度が低いものであった。
以上の実施例、比較例の結果を表1に示す。
Figure 0005671203
本発明の耐熱性不織布は、耐熱曝露後も高強度であり、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、難燃性などの物理的特性に優れているので、一般産業用資材、難燃性被覆材等のみならず、従来のポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系の積層不織布が使用不可能であった用途にも広く用いることができる。特に、耐薬品性、耐熱性の要求される、フィルター関連用途、電池セパレータ等の用途に好適である。
また、多層構造とすることにより、フィルター性能、バリヤー性能をいっそう向上させることができる。
PPS繊維の、210℃の熱収縮率と結晶化度との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 繊維径1〜50μmの長繊維であるポリフェニレンスルフィド繊維で構成された不織布からなる耐熱性布帛であって、該不織布を構成するポリフェニレンスルフィド繊維の30wt%以上が、1分間に20℃の昇温速度で測定したときの示差熱分析計による融解ピークを、270℃から320℃の範囲に二つ以上有し、かつ、210℃、1500時間の耐熱曝露試験後の該不織布の強度が0.3(N/cm)/(g/m)以上であることを特徴とする耐熱性布帛。
  2. 前記不織布が、熱圧着で一体化接合されたスパンボンド不織布である、請求項1に記載の耐熱性布帛。
  3. 請求項1に記載の不織布の層と、繊維径が0.1〜5μmであるポリフェニレンスルフィド微細繊維からなる不織布の層の少なくとも1層以上とが、積層一体化されていることを特徴とする耐熱性布帛。
  4. 請求項1に記載の不織布の層を上下層とし、中間層として、繊維径が0.1〜5μmである微細繊維からなる不織布の層を有し、かつ、上下層と中間層が積層一体化されている、請求項に記載の耐熱性布帛。
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