JP2017209718A - 熱間圧延における潤滑油供給方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスアトマイズ潤滑法によってロール表面の一部領域のみ潤滑油を局所的に供給するにあたって、意図した領域以外に潤滑油が広がってしまうことを抑制し、これによって摩擦の大きい箇所でのロール摩耗や焼き付きを確実に抑制すると同時にスリップトラブルの発生を確実に抑制する。【解決手段】ガスアトマイズ潤滑法によってロール表面のうち被圧延材に接触する部分の一部の領域に潤滑油を供給するにあたり、被圧延材に接触する部分のロール表面の最大高さ粗さRzが0.5〜50μmの範囲内である圧延ロールを用い、前記領域におけるロール単位表面積あたり潤滑油供給量Qを0.05〜20cc/m2の範囲内とし、潤滑油供給量Qと最大高さ粗さRzとの比Q/Rzが、1.2以下となるように潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて設定して潤滑する。【選択図】図6

Description

本発明は、鋼等の金属素材を熱間圧延する際に用いられる潤滑油供給方法に関するものであり、とりわけH形鋼等の形鋼や条鋼、鋼板等の熱間圧延において、ロールの一部に集中的に潤滑油を供給する局所潤滑供給方法に関するものである。
鋼材などの熱間圧延における潤滑油供給法としては、エマルション潤滑法とガスアトマイズ潤滑法が知られている。エマルション潤滑法は、少量の潤滑油と水とを機械的撹拌により強制的に混合してなる流体(エマルション)を供給して潤滑する方法であって、一般的に熱間圧延潤滑供給法として広く普及している。一方ガスアトマイズ潤滑法は、気液2流体ノズルを用いて潤滑油原液を空気(エアー)等の不燃性ガスにより霧化し、微粒状にした状態で不燃性ガスとともにロール表面に供給する方法である(例えば特許文献1参照)。後者のガスアトマイズ潤滑法は、少量の潤滑油でエマルション潤滑法と同等以上の潤滑効果が発揮されることが知られている。
熱間圧延機の圧延ロールに対する潤滑においては、潤滑油を過剰に供給すれば、被圧延材が圧延ロールに対して滑ってしまう現象(スリップトラブル)が発生しやすい。例えば非圧延材がロールバイトに噛み込まれる際に、被圧延材が圧延ロールに対してスリップして円滑に噛み込まれなくなる現象(噛み込みスリップ)や、圧延中のスリップなどが生じやすくなる。一方、潤滑油の供給量が少な過ぎれば、潤滑の本来の目的、すなわちロールの摩耗や焼付きの防止を図ることが困難となる。そこで一般には、ロールの摩耗や焼付きを抑制し得る範囲内で、過剰供給とならないように潤滑油供給量を調整して操業している。
ところで、熱間圧延中にロールの摩耗や焼付きが発生する場所は、ロールと被圧延材とが接触する領域のうちの一部であることが多く、特に図7に示すようなH形鋼1や、図8に示すような鋼矢板2、図9に示すような溝形鋼3等の形鋼、さらに図10に示すような軌条鋼4など、異形断面を有する形鋼や軌条鋼、言い換えれば長さ方向に対して直交する断面において曲がる部分(湾曲もしくは折曲する部分)を有する鋼製品を得るための熱間圧延においては、その曲がり部分の表面に接する箇所でロールの摩耗や焼付きが生じやすい。例えば図7に示すH形鋼1では、ウエブ部1Aからフランジ部1B、1Cに向かってほぼ直角に立ち上がり/立ち下がる連続部1D、1Eが存在し、このような連続部1D、1Eの表面は、それぞれ比較的小さな曲率で90度方向に曲がる部分(表面湾曲部位)1Fとなっている。そしてこのようなH形鋼1の熱間圧延においては、圧延ロール表面のうち、上記の表面湾曲部位1Fに接する部位付近で、ロールの摩耗や焼付きが生じやすい。また、鋼板のエッジ部分のように鋼板の温度が低下して接触圧力が局所的に大きくなっている部分についても、局所的な焼付きが発生する場合がある。
具体的なH形鋼についてのユニバーサルミルによる熱間圧延の状況(圧延機出側から見た状況)を、図11に模式的に示す。
図11において、被圧延材10は、垂直な軸線0Vを中心として回転する左右一対の竪ロール12A、12B、及び水平な軸線OHを中心として回転する上下一対の水平ロール13A、13Bによって圧延されて、H形の断面形状に成形され、H形鋼1となるが、この際、水平ロール13A、13Bの表面のうち、H形鋼のウエブ部1Aからフランジ部1B、1Cに向かって立ち上がり/立ち下がる連続部1D、1Eの表面の湾曲部位1Fに接触する領域、すなわち水平ロール13A、13Bのロール軸線OHに沿った方向の両端側のコーナー部15A、15Bでは、被圧延材とロール表面との間で大きな摩擦が作用するため、ロールの摩耗や焼付きが生じやすい。これに対し、それ以外の箇所、例えば前記コーナー部15A、15Bの中間の、被圧延材を平面状に圧延するための部位(中間部)15Cでは、ロールの摩耗や焼付きが比較的生じにくい。
そこで、形鋼や軌条鋼等の熱間圧延においては、ロールの摩耗や焼付きが発生しやすい箇所、特にコーナー部に集中的に潤滑油を供給して、ロール摩耗や焼付きを抑制すると同時に、それ以外の箇所には潤滑油を供給せずに無潤滑状態、ないしは潤滑効果を発揮しない程度に潤滑油を供給するものの概ね無潤滑状態に近い状態として摩擦係数を確保することにより、スリップトラブルを引き起こすリスクを極力低減するという、いわゆる局所潤滑による操業を行うことが望まれている。
例えば図11に示したH形鋼のユニバーサル圧延機による圧延では、水平ロール13A、13Bにおけるコーナー部15A、15Bのみに潤滑油を供給し、それ以外の領域、例えば中間部15Cには潤滑油を供給せずに、熱間圧延を行うことが望まれる。
しかしながら、熱間圧延に適用されている従来のロール潤滑法のうち、エマルション潤滑法では、大量のエマルション流体をノズルからロールに供給しなければならないため、ロールの一部分だけに局所的に充分な潤滑効果を発揮し得る必要量の潤滑油を供給することは困難である。
一方、ガスアトマイズ潤滑法では、必要量の潤滑油をロールの一部分にだけ局所的に供給することは不可能ではないが、潤滑油とともに吹き付けられるガスによって、ロール表面に付着した潤滑油が、潤滑油を供給したくない箇所にまで広がりやすく、意図した部分にのみ限定して潤滑油を供給することが困難であった。すなわち、ロールの表面に潤滑油が付着したとき、もしくはその後、ロールの回転による遠心力や潤滑油を噴霧供給した時のノズルからのガス流やその随伴流によって、ロールの表面に付着した潤滑油が意図した供給領域の外側に広がりやすい。そのため、意図した潤滑油供給領域の外側の潤滑油非供給領域(無潤滑領域)で摩擦係数を確保して、スリップトラブルの発生を確実に防止することが困難であった。
したがって従来は、局所潤滑法は、ワックスのような固形潤滑剤をロールに押しつける方式で実施されることはあったが、その場合、ワックスの供給量のコントロールが困難で、かつ鋼材からの輻射熱によりワックスが溶融する問題もあり、実用化には至らず、前述のように潤滑したい領域のみを限定的に充分に潤滑することは困難であった。したがって前述のようなH形鋼等の表面湾曲部位を有する鋼材を熱間圧延するにあたっては、表面湾曲部位、すなわちロールの摩耗や焼付きが発生しやすい箇所に対しての潤滑油供給が不十分となって、ロールの摩耗や焼付きを確実に抑制することが困難となるか、又は逆にスリップトラブルの発生を確実に防止することが困難となっているのが実情である。
なお特許文献1で提案されている技術は、ガスアトマイズ潤滑法として、動粘度800cSt以下の潤滑油原液を、0.01〜30cc/m、油滴の平均粒径が5mm以下、毎分1000cc以上の流量のガスとともにロールに噴射供給することによって、被圧延材の全長にわたってほぼ均一な潤滑圧延を実施することを可能とした技術であり、前述のような局所潤滑法を意図したものではない。
特開2003−94104号公報
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、ガスアトマイズ潤滑法によって、ロール表面の一部の領域にのみ潤滑油を局所的に供給するにあたって、意図した領域以外に潤滑油が広がってしまうことを抑制し、これによって局所潤滑の効果を確実に得ること、すなわち圧延時の摩擦の大きい箇所でのロール摩耗や焼き付きを確実に抑制すると同時にスリップトラブルの発生を確実に抑制するという効果を、最大限に発揮し得るロール潤滑方法を提供することを課題としている。
上述の課題を解決するために本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、最大高さ粗さRzで表わされる圧延ロールの表面粗さと、圧延ロール表面の単位面積当たりの潤滑油供給量とを、それぞれ適切な範囲内に設定すると同時に、上記の潤滑油供給量と表面粗さとの関係を適切に調整することによって、意図した領域(特定領域)外に潤滑油が流出して広がることを防止し、これによって焼き付きやロール摩耗が生じやすい特定領域のみに十分な量の潤滑油を供給して、その特定領域内で充分な潤滑効果を得ると同時に、特定領域外への流出によってスリップトラブルが生じやすくなることを防止し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の熱間圧延における潤滑油供給方法は、
気液2流体ノズルを用いて潤滑油を不燃性ガスにより霧化した状態で、圧延ロール表面のうち、被圧延材に接触する部分のうちの一部の領域に局所的に潤滑油を供給する熱間圧延機の潤滑油供給方法において、
被圧延材に接触する部分のロール表面の最大高さ粗さRzが0.5〜50μmの範囲内である圧延ロールを用い、前記領域における圧延ロールの単位表面積あたり潤滑油供給量Qを0.05〜20cc/mの範囲内とし、
前記潤滑油供給量Qと前記最大高さ粗さRzとの比Q/Rzが、1.2以下となるように圧延ロールの表面積あたり潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて設定して潤滑することを特徴とするものである。
ここで、上記の「圧延ロール表面のうち、被圧延材に接触する部分のうちの一部の領域」とは、予め、焼き付きやロール摩耗などが生じやすい箇所として特定しておいた領域(特定領域)を意味する。具体的には、例えばH形鋼におけるウエブ部からフランジ部への立ち上がり/立下り部分等のような表面湾曲部位に接触する箇所が挙げられる。また「一部の領域に局所的に潤滑油を供給する」とは、逆に言えば、被圧延材に接触する部分のうちの、上記の特定領域以外の箇所には潤滑油を供給しないことを意味するが、潤滑効果をほとんど発揮しない極少量の潤滑油が供給された状態も実質的には潤滑油を供給しないことと同じであるので、例えば請求項1に記載の潤滑油供給量よりも更に小さい供給量の潤滑油が供給される場合も、本発明では潤滑油を供給しないことに含めることとする。
また本発明の第2の態様の熱間圧延における潤滑油供給方法は、前記第1の態様において、
前記潤滑油供給量Qと前記最大高さ粗さRzとの比Q/Rzが、1.0以下となるように圧延ロールの表面積あたり潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて設定して潤滑することを特徴とするものである。
さらに本発明の第3の態様の熱間圧延における潤滑油供給方法は、前記第1もしくは第2の態様において、
圧延ロール表面に潤滑油を局所的に供給する領域の圧延ロール軸線方向に沿った方向の長さが、被圧延材に接触する表面部分全体の圧延ロール軸線方向に沿った長さの80%以下であることを特徴とするものである。
また本発明の第4の態様の熱間圧延における潤滑油供給方法は、前記第1〜第3のいずれかの態様において、
前記潤滑油として、40℃での動粘度が100〜800cStの範囲内のものを用いることを特徴とするものである。
本発明によれば、ガスアトマイズ潤滑法により、熱間圧延時のロール表面の一部の領域にのみ潤滑油を局所的に供給するにあたって、意図した領域以外に潤滑油が広がってしまうことを抑制し、これによって局所潤滑の効果を確実に得ること、すなわちロール摩耗や焼き付きを確実に抑制すると同時にスリップトラブルの発生を確実に抑制する効果を、最大限に発揮することができる。
本発明の潤滑油供給方法をユニバーサル圧延機によるH形鋼の熱間圧延に適用する場合の、潤滑油供給領域の一例を説明するための圧延機入側要部の模式図である。 本発明の潤滑油供給方法をユニバーサル圧延機によるH形鋼の熱間圧延に適用する場合の、潤滑油供給状況の一例を示す圧延機入側要部の模式図である。 図2のIII−III線の位置で見た模式図である。 実施例1におけるモデル圧延実験の実施状況を示す、圧延機要部の模式図である。 実施例1におけるモデル圧延実験についての潤滑油供給状況と圧延後の板の潤滑油付着状況を示す模式図である。 実施例1の結果として、潤滑油の付着比率に与える潤滑油供給量と圧延ロールの表面粗さとの関係を示すグラフである。 本発明の潤滑油供給方法が適用される形鋼の一例としてのH形鋼を、その長さ方向に対する断面の位置で示す模式図である。 本発明の潤滑油供給方法が適用される形鋼の他の例としての鋼矢板を、その長さ方向に対する断面の位置で示す模式図である。 本発明の潤滑油供給方法が適用される形鋼のさらに他の例としての溝形鋼を、その長さ方向に対する断面の位置で示す模式図である。 本発明の潤滑油供給方法が適用される軌条鋼の一例を、その長さ方向に対する断面の位置で示す模式図である。 ユニバーサル圧延機によってH形鋼を圧延する状況の一例を示す、圧延機要部の略解図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の潤滑油供給方法は、基本的には熱間圧延機における圧延ロールに対する潤滑法として、エアーアトマイズ潤滑法で代表されるガスアトマイズ潤滑法を適用することを前提としている。すなわち、既に述べたようにエマルション潤滑法では、潤滑条件などを如何に調整しても、潤滑油供給領域を局所的に限定することは困難であり、そこで、気液2流体ノズルを用いて、潤滑油を空気や窒素ガスなどの不燃性ガスにより霧化した状態で圧延ロール表面に噴射・供給することを前提としている。
そして本発明の場合、局所潤滑法として、圧延ロール表面のうち、被圧延材に接触する部分のうちの一部のみに、局所的に潤滑油をアトマイズのためのガスとともに供給することとしている。すなわち、圧延ロールの表面における、被圧延材に接触する領域(ロールの軸線方向に沿った方向の領域)のうち、ロールの摩耗や焼き付きが発生しやすい部位(言い換えれば十分な潤滑が必要な部位)を判定して、その部位(ロール軸線方向に沿った方向にある長さを有する領域;特定領域)をロール表面上で予め特定しておく。そしてロール表面における上記特定領域にのみ局所的に潤滑油が付着するように狙って、アトマイズ噴射用の気液2流体ノズルの位置や向き、ノズルからの噴射流体の広がり角度、ロール表面とノズルとの間の距離等を設定する。そしてその状態で、潤滑油を空気などの不燃性ガスとともにノズルから噴射する。
例えばユニバーサル圧延機によるH形鋼の熱間圧延の場合、図11を参照して説明したように、ウェブ部1Aからフランジ部1B、1Cに連続する表面湾曲部位1Fに接する水平ロール13A、13Bのコーナー部15A、15Bで、焼き付きや水平ロールの摩耗が生じやすい。そこで、これらのコーナー部15A、15Bに接するロール表面領域を、潤滑油を局所的に供給すべき特定領域20A、20Bとし、その特定領域20A、20Bを狙って、アトマイズされた潤滑油を供給する。例えばユニバーサル圧延機によるH形鋼の熱間圧延の場合について図1に示しているように、水平ロール13A、13Bのコーナー部15A、15Bの表面の全体もしくは一部を含む領域(後述するように水平ロール13A、13Bの軸線OHに沿った断面での被圧延材10と水平ロール13A、13Bとの接触部分の線分の、長さL、Lで表わされる領域)を、潤滑油を局所的に供給すべき特定領域20A、20Bとして、その特定領域20A、20B内のみにアトマイズされた潤滑油が供給されるようにする。
この際、既に述べたように、上記の特定領域の範囲外(ロールの軸線方向に沿った方向での範囲外)に潤滑油が流出しやすく、特に十分な潤滑効果を得ようとして特定領域内への単位面積当たり潤滑油供給量を大きくすれば、その傾向が顕著となる。しかるに本発明では、圧延ロールにおける被圧延材に接触する部分の表面粗さ、及び圧延ロールの表面の上記特定領域への単位面積当たりの潤滑油供給量を、それぞれ所定の範囲内に規制すると同時に、上記の表面粗さと上記潤滑油供給量との関係を適切な範囲内に調整すること、言い換えれば、潤滑油供給量を、表面粗さに応じた適切な範囲内に調整することによって、特定した領域内に焼き付きやロールの摩耗を抑制するために十分な量の潤滑油を供給すると同時に、その特定された領域の外側にまで潤滑油が流出することを確実に回避することが可能になる。
そこで、次にこれらの条件の限定理由を説明する。
<ロール表面粗さ>
圧延ロールにおける被圧延材と接触する箇所の二次元表面粗さである最大高さ粗さRzが、ロール軸線方向に沿った方向を基準として、JIS B0601で規定される最大高さ粗さRzで、0.5〜50μmの範囲内であることが必要である。すなわち、次の(1)式を満たしている必要がある。
0.5μm≦Rz≦50μm・・・・・・(1)
最大高さ粗さRzが0.5μmよりも小さければ、ノズルから噴射された潤滑油が、ノズルから同時に噴射されたアトマイズのためのガス流もしくはその随伴流により、ロール表面上で意図した特定領域以外の所に広がりやすくなり、圧延スリップなどのトラブルを引き起こす原因となる。一方、最大高さ粗さRzが100μmよりも大きくなれば、圧延によってロール表面の粗さが被圧延材表面に転写されて、圧延製品の表面品質を悪くするおそれがある。さらに最大高さ粗さRzが50μmよりも大きくなれば、圧延進行中におけるロールの粗さの変化が大きくなり、当初設定していた潤滑油供給量とのバランスが変化して、潤滑油供給量と表面粗さとの関係が本発明で規定する範囲(後述する(3)式で規定する範囲)を外れやすくなり、安定した潤滑圧延が実施できなくなるおそれがある。
<潤滑油供給量>
圧延ロール表面のうち、潤滑油を供給するべき特定領域内での、単位表面積あたり潤滑油供給量Qを、0.05〜20cc/mの範囲内とする必要がある。すなわち、次の(2)式を満たさせる必要がある。
0.05cc/m≦Q≦20cc/m・・・・・・(2)
潤滑油供給量が0.05cc/mよりも少なければ、ロール表面粗さ等の条件に無関係に、十分なロール摩耗抑制効果や焼付き抑制効果等の潤滑効果が得られなくなる。一方、潤滑油供給量が20cc/mよりも多ければ、ロール表面に付着した潤滑油がロール1回転で焼き切れず、徐々に潤滑油がロール表面に堆積し、意図する特定領域内での潤滑油の付着量が多くなりすぎて、たとえ潤滑油供給量自体は表面粗さとの関係において下記(3)式の条件を満たしていたとしても、特定領域の外側に潤滑油潤滑油が広がりやすくなるおそれがある。
<潤滑油供給量とロール表面粗さとの関係>
圧延ロール表面のうちの潤滑油を供給するべき特定領域内での、単位表面積あたり潤滑油供給量Qと、圧延ロールにおける被圧延材と接触する箇所の二次元表面粗さである最大高さ粗さRzとの関係は、本発明にとって重要である。すなわち前記潤滑油供給量Qを、前述のように0.05〜20cc/mの範囲内とし、かつ最大高さ粗さRzを0.5〜50μmの範囲内としたうえで、それらの比Q/Rzの値が、次の(3)式、
Q(cc/m)/Rz(μm)≦1.2・・・・・・(3)
を満たすように規制することが重要である。
(1)式及び(2)式を満足させることを前提として、(3)式の関係を満たさせることによって、どのような潤滑油供給条件・圧延条件でも、ロール表面の特定領域のみに付着させるべく供給した潤滑油が、特定領域以外のところに広がることを防止することができる。
ここで、単位面積当たりの潤滑油供給量Q(cc/m)は、平均油膜厚み(μm)の値に対応する。そして最大高さ粗さRzで表現されるロール表面の凹凸の凹みが平均油膜厚みに対して相対的に大きければ、その凹み部分内に潤滑油が捕捉(トラップ)されやすくなり、逆に最大高さ粗さRzで表現されるロール表面の凹凸の凹みが平均油膜厚みに対して相対的に小さければ、ロール表面において潤滑油が流れやすくなる。
特に、平均油膜厚みが最大高さ粗さRzの1.2倍以下であれば、ロール表面に付着した潤滑油のうちの多くの割合の潤滑油が凹み部分内にトラップされた状態となって、潤滑油がロール表面上で流れにくくなり、一方、平均油膜厚みが最大高さ粗さRzの1.2倍を超えれば、ロール表面上の潤滑油が凹凸を越えて流れやすい状態となる。前述のように油膜厚みは単位面積当たりの潤滑油供給量Qに対応するから、(3)式は、最大高さ粗さRzで表現されるロール表面の凹凸のうちの凹み部分に潤滑油を確実に捕捉(トラップ)して、潤滑油の流れを阻止する条件を意味しており、この条件を満たしていれば、ロール表面に付着した潤滑油が、意図した特定領域の以外の部分にロール表面上で広がることはほとんどなくなる。
なお、Q/Rzの値は、前記(3)式では1.2以下と規定しているが、好ましくは1.0以下が良い。すなわち、
Q(cc/m)/Rz(μm)≦1.0・・・・・・(3´)
を満たすように、単位面積当たりの潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて調整することが望ましく、このようにすることによって、潤滑油が前述の特定領域の外側に広がることを、より確実に防止することができる。
なおまた、Q/Rzの値の下限は特に規定しないが、Q/Rzの値が極端に小さければ、ロール表面に付着した潤滑油のほとんどがロール表面の凹凸のうちの凹部の底部のみに存在する状態となり、充分な潤滑効果が得られなくなるおそれがある。このような観点から、Q/Rzの値は0,2以上とすることが好ましい。
以上のように、(1)式、(2)式、(3)式の条件を同時に満足させることによって、所期の目的は達成されるが、さらに望ましい条件として、潤滑油の霧化のために気液2流体ノズルから噴出されるエアー等の不燃性ガスの流速Vを、下記の(4)式で示すように、毎秒0.1m以上50m以下とすることが好ましい。また、潤滑油としては、下記の(5)式で示すように、40℃の動粘度νが100cSt以上800cSt以下の潤滑油を用いることが好ましい。さらに、圧延ロール表面に潤滑油を局所的に供給する領域(特定領域)の範囲に関し、その特定領域におけるロール軸線に沿ったロール断面における被圧延材とロールとが接触する線分の長さLについては、下記の(6)式で示すように、上記断面における被圧延材とロールとが接触する線分の全長Lに対し、80%以下となるように設定することが望ましい。
これらの望ましい条件について次に説明する。
<ガス流速>
潤滑油の霧化のために気液2流体ノズルから噴出されるエアー等の不燃性ガスの流速Vは、次の(4)式で示すように、毎秒0.1m以上50m以下とすることが好ましい。
0,1m/sec≦V≦50m/sec・・・・・・(4)
ガス流速が毎秒0.1mよりも小さければ、圧延ロールの回転による気流や飛散冷却水などにより、ノズルから噴射された潤滑油がロール表面に付着することが妨げられてしまうおそれがあり、そのため確実な潤滑効果を得ることができなくなるおそれがある。一方、ガス流速が毎秒50mよりも大きくなれば、ノズルからの不燃性ガスがロール表面において潤滑油を押し広げる力が強くなり、その結果、たとえ上記の(1)式〜(3)式の条件を満たしていても、ロールに付着した潤滑油が意図した特定領域以外の所に広がって、圧延スリップや鋼材の曲がりなどのトラブルを引き起こすおそれがある。
<潤滑油の粘度>
潤滑油としては、次の(5)式で示すように、40℃の動粘度νが100cSt以上800cSt以下の潤滑油を用いることが好ましい。
100cSt≦ν≦800cSt・・・・・・(5)
40℃での動粘度が100cStよりも小さい潤滑油では、ロールへの付着力が小さいため、圧延条件によっては、たとえ上記(1)式〜(3)式の条件を満たしていても、潤滑油を、供給領域を限定して付着させにくくなる場合がある。一方動粘度が800cStよりも大きい潤滑油は、流動性が悪いため、潤滑油タンクから配管を経てノズルまで円滑に送り出すことが困難となることがあり、好ましくない。
<潤滑油供給領域(特定領域)の範囲>
特定領域におけるロール軸線に沿ったロール断面における被圧延材とロールとが接触する線分の長さLが、次の(6)式で示すように、上記断面における被圧延材とロールとが接触する線分の全長Lに対し、80%以下となるように、特定領域の範囲を設定することが望ましい。
L≦0.8×L・・・・・・(6)
圧延ロール表面の潤滑油を供給すべき特定領域の範囲は、圧延ロール軸線に沿ったロール断面(ロール軸線方向に沿いかつロール軸線を含むロール断面)で見たときの、被圧延材とロールとが接触する線分の長さによって定義することができる。例えばH形鋼の圧延の場合の例について図1に示しているように、上記断面で、被圧延材10と上側の水平ロール13Aとが接触する部分の、上記断面での線分(接触線分)の全長をLとする。そして水平ロール13Aの一方の側のコーナー部15Aのほぼ全体を含む領域、および水平ロール13Aの他方の側のコーナー部15Bのほぼ全体を含む領域を、それぞれ潤滑油を供給すべき特定領域20A、20Bとして、これらの特定領域20A、20Bの前記断面での接触線分のそれぞれの長さをLA、で表わせば、両特定領域20A、20Bの合計の接触線分長さLは、〔L=L+L〕となる。但し、H形鋼では、一般には断面形状の左右が対称であるから、一方の特定領域20Aと、他方の特定領域20Bとは同じ範囲とするのが一般的であり、その場合、L=Lであるから、〔L=2×L〕となる。
そして本発明の実施形態では、L≦0.8×Lとなるように各特定領域20A、20Bの範囲を設定することが好ましい。
ここで、前記ロール断面で見たときの、被圧延材とロールとの接触線分について、圧延ロール表面に潤滑油を局所的に供給する特定領域の線分の長さLが、前記接触線分の全長Lの80%を超えれば、潤滑油の供給領域を限定する意味がなくなる。すなわち、この場合、潤滑油供給量を少なくして、ロールと被圧延材の接触域全面に潤滑油を供給した場合と効果が実質的に同じになってしまい、潤滑油非供給領域を設けて、無潤滑状態の摩擦係数を確保するだけのメリットがない。
なお潤滑油を限定的に供給する特定領域の接触線分の長さ(合計長さ)Lは、要は圧延形状・寸法に応じた、焼き付きやロール摩耗が生じやすい箇所の数及び各箇所の長さによって定めればよいから、特定領域の前記接触線分の長さLの下限は特に規定しないが、通常は被圧延材に接触する表面部分全体の接触線分の長さLの20%以上とすることが好ましい。
なおまた、上記の図1を参照した実施形態の説明では、上下の水平ロール13A、13Bのうち、上側の水平ロール13Aについてのみ説明したが、下側の水平ロール13Bについても、同様にコーナー部分について特定領域を設定して、前記同様のロール断面における接触線分についての条件を、上記と同様に設定することが望ましい。
次に本発明の潤滑油供給方法を、熱間圧延に適用して実施する状況の一例について、図2、図3を参照して説明する。
図2、図3では、本発明による潤滑油供給方法を、ユニバーサル圧延機を用いたH形鋼の熱間圧延に適用した実施形態として示す。
なお、実際のH形鋼の熱間圧延においては、熱間圧延温度に加熱された被圧延材(鋼材)に対して複数回の圧延パスを繰り返して、最終的に所定の形状、寸法のH形鋼製品に仕上るのが一般的であるが、ここではその過程におけるあるパスの段階についてのみ示す。
図1に示したように、予め焼き付きやロールの摩耗が生じやすい箇所として、水平ロール13A、13Bのコーナー部15A、15Bの表面を、潤滑油を局所的に供給すべき領域20A、20Bとして特定しておく。特定領域20A、20Bの範囲は、前述のように、ロール軸線に沿った断面における特定領域内の被圧延材との接触線分の長さLが、前記断面における接触線分の全長Lの80%以下となるように定める。
そして図2、図3に示しているように、これらの特定領域20A、20Bにのみ潤滑油を供給するように、潤滑油アトマイズ噴射用の気液2流体ノズル22を配置しておく。すなわちノズルの位置や向き、ノズルからの噴射流体の広がり角度、ロール表面とノズルとの間の距離等を設定する。なお一般に熱間圧延においては、ロール冷却のために冷却水をロール表面に供給するのが通常であるが、ロール冷却水によって潤滑油のロール表面への付着が妨げられたり、供給位置が乱れたりすることを防止するため、冷却水供給位置と潤滑油アトマイズ噴射用ノズルとの間に水切り板(図示せず)を配設しておくことが望ましい。
圧延用ロール、とりわけ前述の潤滑油を局所的に供給すべき特定領域を有する水平ロール13A、13Bとしては、被圧延材と接触する部位の最大高さ粗さRzが0.5〜50μmの範囲内にあるものを用いる。すなわち、最大高さ粗さRzが0.5〜50μmの範囲内にあることが既知のロールを選択して使用するか、あるいは事前に研磨等によって最大高さ粗さRzを0.5〜50μmの範囲内に調整したロールを使用する。
このように設定した上で、H形鋼の熱間圧延を行う。熱間圧延開始にあたっては、被圧延材がロールに噛み込まれる以前の時点から、潤滑油の供給を開始する。潤滑油としては、望ましくは40℃での動粘度が100cSt以上800cSt以下の範囲内にある潤滑油(原液)を用い、ノズルから不燃性ガスとともに噴出してアトマイズ化した状態で前記特定領域に供給する。またこのときのノズルから噴射させる不燃性ガスの流速は、毎秒0.1m以上50m以下とすることが好ましい。
さらに前記特定領域内でのロール表面単位面積あたりの潤滑油供給量Qが、0.05〜20cc/mの範囲内であって、しかもロール表面単位面積あたりの潤滑油供給量Qと前記最大高さ粗さRzとの関係が、前記(3)式、好ましくは(3´)式を満たすように、ノズルからの潤滑油噴射量を調整する。なお竪ロール12A、12Bについては、本実施形態では、潤滑を行わないこととしている。
このような条件下でH形鋼の熱間圧延を行えば、水平ロール13A、13Bの表面のうち、コーナー部に相当する特定領域20A、20Bを十分に潤滑して、その箇所での焼き付きやロール摩耗を確実に抑制することができると同時に、特定領域以外の箇所に潤滑油が広がってしまうことを回避して、特定領域以外の領域では、無潤滑状態によって摩擦係数を確保し、噛み込み時や圧延中のスリップを確実に防止することが可能となる。
なお以上の実施形態では、H形鋼の圧延を例示して説明したが、本発明の潤滑油供給方法は、H形鋼の圧延に限定されるものではない。すなわち、一部の領域に局所的に潤滑油を供給するとは、被圧延材に接するロール表面のうち、焼き付きやロール摩耗が生じやすい領域に限定して潤滑油を供給することであり、あらゆる形鋼や条鋼に適用可能である。この焼き付きやロール摩耗が生じやすい領域の具体例は、ロール表面が被圧延材のコーナー部等の湾曲部位に接触する領域であり、形鋼および条鋼の例として、図8〜図10に、この領域に対応する被圧延材表面部位を、各図中に符号30で示す。また、板の熱間圧延の場合には、被圧延材である板の幅方向へのメタルフローが生じる、板の両エッジ部に接するロール表面が、この領域に該当する。
本発明の作用・効果を検証するため、以下の実施例1、実施例3に示すように、一般的な平板状の鋼板の熱間圧延において本発明で規定する条件が適切か否かを調査するモデル実験を行ない、さらに実施例2に示すように、H形鋼の熱間圧延での潤滑圧延実験を行った。
〔実施例1〕
2重圧延機を使用して、図4、図5に示すような熱間潤滑圧延実験を行った。圧延ロール40A、40Bとしては、SKD51材からなる直径270mm、胴長250mmのロールを使用した。圧延ロール40A、40Bの表面粗さは、圧延前に研磨紙で所定の粗さに研磨して仕上げた。被圧延材10としては、幅220mm、厚さ5mm、長さ350mmのSUS304材を使用した。潤滑油は、エアーアトマイズ潤滑供給法により上下ロール40A、40Bの軸線方向に沿った方向においてある決まった長さだけ供給できるように、気液2流体ノズル20の位置などを調整した。潤滑油は定量送出ポンプにより潤滑油タンクからノズルに供給できるようにして、ポンプ装置の流量調整機能により一定量の潤滑油がノズルに送出できるようにした。ノズル20には2流体噴霧ノズルを使用し、ノズルで潤滑油を霧化してロールに供給するようにした。エアーは圧力調整器で元圧を調整し、配管途中の流量計で所定の流量になるようにして供給した。この流量計の値と配管内径さらにノズルの先端のエアー吐出口面積から、ノズルから噴射されるエアー流速に換算した。潤滑油のロール表面上の噴射幅L0(図5の左側参照)は40mmとなるようにした。潤滑油の供給量はロールの回転速度や潤滑油の噴射幅を考慮して、同じ潤滑油供給量、すなわちロール単位表面積当たりの潤滑油噴射量(cc/m)となるように、ポンプの流量調整機能によりポンプの供給量を変更して設定した。潤滑油には、形鋼圧延で使用されている40℃における動粘度が130cSt(130mm/s)の市販の熱間圧延潤滑油を使用した。ノズル先端におけるエアー流速は毎秒15mとした。
実験では、鋼材を900℃の加熱炉内に20分以上入れて加熱しておき、いつでも取り出せるようになったら、所定のロールギャップに設定された上下ロールを回転させて、潤滑油をロール1周分だけロール表面に噴射供給し、幅(L0)が40mmの潤滑油供給部位42を形成した。その後、加熱炉から900℃に加熱された鋼材を取り出し、圧延機に咬み込ませて圧延を実施する。このとき、潤滑油を供給したところが鋼材のほぼ中央部付近になるようにして圧延を行った。圧下率は20%、圧延速度(ロール周速度)は10m/minで潤滑圧延を行った。
圧延後の材料の表面には潤滑油が付着していたロールと接触した部分には、潤滑油が焼けて転着した黒色状の炭化物44が付着しているので、この付着炭化物44の幅を測定して材料側の潤滑油転着長さL1(mm)(図5の右側参照)とした。意図したところにのみ潤滑油を供給できていたかどうかは、ロールに供給していた潤滑油噴射幅のL0と圧延後の材料側の潤滑油転着長さL1を用いて、L1/L0の値を付着比率αとして算出し、この付着比率α=L1/L0を指標として評価した。このようにL1/L0で定義した付着比率αが1の場合に、ロールに供給した潤滑油の供給幅と、材料に転着した潤滑油の幅が等しいということになる。しかし実際には、潤滑油の噴射部位の端の部分は潤滑油の付着幅に若干のバラツキが発生するから、1.2まではほぼ意図したところにのみ潤滑油を供給することができたとみなしてよい。この実験方法で、ロール粗さ(Rz)と潤滑油供給量(Q)の条件を変更して付着比率を調べた結果を図6に示す。
ロール粗さが0.5μmRzのロールを使用して潤滑圧延を実施した場合、潤滑油供給量Qが0.5cc/mまではほぼ付着比率αがほぼ1であるが、それを超えれば付着比率αが大きくなり、ロールに供給していた潤滑油供給幅よりも材料に転着した潤滑油の幅の方が広くなった。同様にロール粗さを変えて実験を行った結果、Q/Rz≦1.2の条件を満たせば付着比率αがほぼ1で意図した部位にのみ潤滑油を供給できるが、Q/Rz>1.2となれば、材料に転着した潤滑油幅L1の方がロールに付着した潤滑油供給幅L0よりも大きくなり、意図した部位よりも広い範囲に潤滑油が広がることが判明した。
〔実施例2〕
H形鋼圧延プロセス中のユニバーサル圧延機の水平ロールのコーナー部に発生する焼付きを防止するために、エアーアトマイズ潤滑油供給実験装置を設置して、潤滑圧延実験を行った。ユニバーサル圧延機の水平ロールの鋼材との接触面全面に潤滑油を供給すると咬込みスリップが発生し、安定した潤滑圧延を行うことができないので、焼付きが発生しやすい水平ロールのコーナー部にのみ潤滑油を供給することが必要である。水平ロールのコーナー部にのみ潤滑油を供給するために、コーナー部にロール回転軸に対して45度の方向からロールに向けて潤滑油を噴射できるように、気液2流体噴霧ノズルを設置した。ロール冷却水が潤滑油噴射部位にかかるのを防ぐために、ロール冷却水側にフェルト製の水切り板を設置してその下に潤滑油噴霧用のノズルを設置し、ロール冷却水がノズルや潤滑油噴射部位にかからないようにした。水平ロールの材質は高クロム鋳鉄製で、直径1250mm、胴長150mmで、コーナー部には半径10mmのRがついている。組込前のロールの軸方向の粗さは数水準変更して実験を行った。
潤滑油の供給には定量送出ポンプを使用した。ノズル1本に対して1台のポンプ装置を接続し、上下の水平ロールのWS側とDS側の合計4箇所に潤滑油を供給するようにした。タンクから潤滑油をポンプ装置でノズル方向に送出するにあたって、ポンプとノズルの間に3方弁を設置して、ノズルから潤滑油をロールに噴霧供給しないときは3方弁からタンクに潤滑油を戻すようにし、潤滑油をノズルから噴霧供給するときには3方弁を切り替えてロールに潤滑油を噴霧供給できるようにした。潤滑油の噴射タイミングは、鋼材が当該圧延機に咬み込む1秒前から潤滑油の噴霧供給を開始し、鋼材が圧延機から抜けてから1秒後に潤滑油の噴霧供給を停止するようにした。潤滑油にはこのプロセスの他のミルで使用されている形鋼圧延用の市販の熱間圧延潤滑油を使用した。この潤滑油の40℃における動粘度は145cStである。エアーはエアーコンプレッサーから供給するようにし、4つに分岐した後に減圧器を入れて、ノズル個別に圧力調整ができるようにした。今回は実施例1のときの知見を参考にして、エアー圧力0.4MPaで実験を行った。このときのノズルからの流速は毎秒約15〜20mである。潤滑油は水平ロールのコーナーR部の中心から胴長方向には75mm、側面方向に対して約35mmずつ、両方あわせて約110mmの幅に潤滑油が供給されるようにノズルをセットした。潤滑油が供給される領域は、ロールと材料とが接触する領域に対して、約70%となる。潤滑油供給量は、ロール粗度に応じて数水準変更して実験を行った。
被圧延鋼材はH形鋼でフランジ高さが150mm、ウェブ高さが150mm、フランジ厚が10mm、ウェブ厚が8mmの製品である。この圧延機では、フランジ厚で約10%、ウェブ厚で約13%程度の1パス圧延を行った。また,圧延速度は約200m/minで、鋼材温度は約900℃であった。
それぞれの潤滑油供給量の条件で、圧延材を約100本ずつ圧延した後の水平ロールのコーナーR部の焼付き発生状況について、潤滑油を供給していないときと比較した。
潤滑を供給せずに圧延した場合、10本程度圧延した段階で、水平ロールのコーナーR部に明確な筋状の焼付き痕が発生した。また、15体積%のエマルション潤滑を用いて、ロール全体にエマルションを供給しながら圧延しようとしたが、咬込みスリップが発生し圧延ができなかった。
エアーアトマイズ潤滑供給法による潤滑圧延実験では、ロール粗度と潤滑油供給量を変更して潤滑圧延を行い、咬込みスリップや圧延スリップの発生等がなかったものについては、約100本の鋼材を圧延した後の水平ロールのコーナーR部を観察して焼付き発生有無を調査した。
その結果、表1に示すように、本発明を用いることで、咬込みスリップや圧延スリップを引き起こすこと無くコーナーR部の焼付きを抑制できることが明らかになった。咬込みスリップを引き起こした条件では、圧延開始から10本の鋼材を圧延するまでに咬込みスリップが発生したため、圧延を中断したので、焼付きの評価は行っていない。
このような実施例2から、接触領域全面に潤滑油を供給できないような圧延においても、潤滑油の供給が必要な箇所にのみ潤滑油を供給しながら圧延することで、咬込みスリップや圧延スリップなどのトラブルなく圧延ができ、潤滑圧延の効果を享受することが可能であることが明らかになった。
Figure 2017209718
〔実施例3〕
実施例1と同じ実験方法により、被圧延材料の板幅(本実施例3では前述の接触線分の全長Ltに相当する)に対するロールへの潤滑油供給長さ(本実施例3では前述の潤滑油を供給する特定領域の線分の長さLに相当する)の比率(表2において「β」で示す比率)を、20%から100%まで変化させて、スリップが発生するかどうか調査した。潤滑油供給量は1cc/mとし、ロールの粗さは0.9μmRzとした。その他の圧延条件は実施例1における各条件と同じにして実験を行った。
その結果、表2に示すように、ロールの潤滑油供給長さが被圧延材料の板幅に対して80%を超えればスリップが発生し、80%以下であればスリップが発生せず安定した潤滑圧延が可能であることが判明した。
Figure 2017209718
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
10 被圧延材
13A、13B 水平ロール
20A、20B 特定領域
22 気液2流体ノズル

Claims (4)

  1. 気液2流体ノズルを用いて潤滑油を不燃性ガスにより霧化した状態で、圧延ロール表面のうち、被圧延材に接触する部分のうちの一部の領域に局所的に潤滑油を供給する熱間圧延における潤滑油供給方法において、
    被圧延材に接触する部分のロール表面の最大高さ粗さRzが0.5〜50μmの範囲内である圧延ロールを用い、前記領域における圧延ロールの単位表面積あたり潤滑油供給量Qを0.05〜20cc/mの範囲内とし、
    前記潤滑油供給量Qと前記最大高さ粗さRzとの比Q/Rzが、1.2以下となるように圧延ロールの表面積あたり潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて設定して潤滑することを特徴とする熱間圧延における潤滑油供給方法。
  2. 請求項1に記載の熱間圧延における潤滑油供給方法において、
    前記潤滑油供給量Qと前記最大高さ粗さRzとの比Q/Rzが、1.0以下となるように圧延ロールの表面積あたり潤滑油供給量Qを最大高さ粗さRzに応じて設定して潤滑することを特徴とする熱間圧延における潤滑油供給方法。
  3. 請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の熱間圧延における潤滑油供給方法において、
    圧延ロール表面に潤滑油を局所的に供給する領域の圧延ロール軸線方向に沿った方向の長さが、被圧延材に接触する表面部分全体の圧延ロール軸線方向に沿った長さの80%以下であることを特徴とする熱間圧延における潤滑油供給方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の熱間圧延における潤滑油供給方法において、
    前記潤滑油として、40℃での動粘度が100〜800cStの範囲内のものを用いることを特徴とする熱間圧延における潤滑油供給方法。
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