JP2017207332A - クラミジア・ニューモニエを検出する方法及びキット - Google Patents
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Abstract
Description
[1]検体に含まれるクラミジア・ニューモニエを検出する方法であって、
該検体とアルカリ溶液を接触させ、該検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原をアルカリ溶液中に抽出し、検体抽出物を得る抽出工程と、
該検体抽出物と中和液を接触させ、中和物を得る中和工程と、
該中和物を免疫クロマトグラフィー法に供し、該細胞内抗原を検出する検出工程と、
を含み、
該中和液が、非イオン性界面活性剤と、偽陽性反応抑制上有効な緩衝液を含む、
方法。
[2]前記細胞内抗原が、リボソームタンパク質L7/L12である、1に記載の方法。
[3]前記アルカリ溶液が陰イオン性界面活性剤を含み、該陰イオン性界面活性剤がデオキシコール酸ナトリウム及び/又はコール酸ナトリウムである、1又は2に記載の方法。
[4]前記非イオン性界面活性剤が
ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル、及び
ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記中和物のpHが10.0以下である、1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記検体が上気道検体である、1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記上気道検体が咽頭ぬぐい液、鼻咽腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、唾液、喀痰のいずれかである、6に記載の方法。
[8]前記偽陽性反応抑制上有効な緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及び/又はリン酸緩衝液である、1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[9]検体に含まれるクラミジア・ニューモニエを検出するキットであって、
該検体と接触させ、該検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原を抽出し、検体抽出物を得るためのアルカリ溶液と、該検体抽出物と接触させ、中和物を得るための中和液と、中和物が供され、細胞内抗原を検出するための免疫クロマトグラフィー装置を含み、
該中和液が、非イオン性界面活性剤と、偽陽性反応抑制上有効な緩衝液を含む、
検出キット。
[10]前記免疫クロマトグラフィー装置が、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12と結合する抗体を含む、9に記載の検出キット。
[11]前記アルカリ溶液が陰イオン性界面活性剤を含み、該陰イオン性界面活性剤がデオキシコール酸ナトリウム及び/又はコール酸ナトリウムである、9又は10に記載の検出キット。
[12]前記非イオン性界面活性剤が
ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル、及び
ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、9〜11のいずれか1項に記載の検出キット。
[13] 前記中和液が中和物のpHを10.0以下にするものである、9〜12のいずれか1項に記載の検出キット。
[14]前記検体が上気道検体であって、前記検体を採取するための用具をさらに含む、9〜13のいずれか1項に記載の検出キット。
[15]前記偽陽性反応抑制上有効な緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及び/又はリン酸緩衝液である、9〜14のいずれか1項に記載の検出キット。
本発明は、検体に含まれるクラミジア・ニューモニエを検出する方法であって、該検体とアルカリ溶液を接触させ、該検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原をアルカリ溶液中に抽出し、検体抽出物を得る抽出工程と、該検体抽出物と中和液を接触させ、中和物を得る中和工程と、該中和物を免疫クロマトグラフィー法に供し、該細胞内抗原を検出する検出工程とを含み、該中和液が、非イオン性界面活性剤と、偽陽性反応抑制上有効な緩衝液を含む方法を提供する。なお、「検出する」とは、クラミジア・ニューモニエの存在の有無又はその量を分析することをいう。したがって、検出の結果、クラミジア・ニューモニエが検出されなかった場合も、検出された場合と同様、本発明の方法の実施に該当する。
クラミジア・ニューモニエは呼吸器感染症の原因細菌である。市中肺炎の主要な原因菌のひとつと考えられており、市中肺炎のほか、急性気管支炎、急性上気道炎、副鼻腔炎、中耳炎などの呼吸器感染症を引き起こす。クラミジア属に分類され、同属のその他の菌としてはクラミジア・トラコマティス、クラミジア・シッタシなどがある。
クラミジア・ニューモニエは偏性細胞内寄生性細菌であり、宿主細胞の細胞質内に封入体を形成して、属共通の3つの形態の異なる菌体構造をとる。1つは感染性を有し外的刺激に対して強固な基本小体(Elementary body:EB)、1つは増殖能をもつ網様体(reticulate body:RB)、もう1つはこれらの移行菌体である中間体(intermediate form:IF)である。このうちEBは浸透圧や超音波などの物理的刺激に対して安定である。
本発明において用いられる検体は、ヒトの生体の任意の場所から採取することができ、クラミジア・ニューモニエを含む可能性があるものであればよい。好ましくは上気道から採取された検体であり、より好ましくは咽頭ぬぐい液、鼻咽腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、唾液、喀痰等である。これらの検体を採取する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば咽頭ぬぐい液、鼻咽腔ぬぐい液、唾液、喀痰は綿棒を用いて採取することができ、また鼻腔吸引液は吸引カテーテルを用いて採取することができる。
検体には測定対象であるクラミジア・ニューモニエ以外にも様々な物質が含まれている。例えば咽頭ぬぐい液にはヒト由来の組織片や分泌物の他、クラミジア・ニューモニエや他の細菌等の組織が含まれている場合がある。これらの一部は検体を処理した溶液中に浮遊又は溶解した状態で存在する。
これらを含んだ状態で免疫クロマトグラフィー法による測定に供すると、非特異反応により偽陽性が発生する場合がある。
クラミジア・ニューモニエを免疫クロマトグラフィー法で検出する場合、クラミジア・ニューモニエの抗原、好ましくは細胞内抗原を測定することが望ましい。細胞内抗原としては、リボソームタンパク質L7/L12が好ましい。
リボソームタンパク質L7/L12を検出する場合には、該タンパク質が細胞内に存在することから、細胞を覆っている外膜を破壊して該タンパク質を露出させる必要がある。
本発明者らは検討の結果、クラミジア・ニューモニエをアルカリ溶液で処理することでクラミジア・ニューモニエの基本小体(EB)の外膜を破壊して細胞内成分であるリボソームタンパク質L7/L12を抽出できること、さらに陰イオン性界面活性剤を含むアルカリ溶液で処理することで、その抽出効率が向上し、免疫クロマトグラフィー装置での検出感度が向上することを見出した。
本発明で用いることができるアルカリ溶液として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の、第1族元素又は第2族元素の水酸化物の水溶液を用いることができる。アルカリ溶液のpHは11.0〜13.5であることが好ましい。アルカリ金属の濃度は、5〜1000mM、好ましくは10〜500mMとすることができる。
本発明では、検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内成分であるリボソームタンパク質L7/L12を、陰イオン性界面活性剤を含むアルカリ溶液を用いて抽出できることを先記した。この抽出液を免疫クロマトグラフィー法に直接用いると免疫クロマトグラフィー法で用いる抗体が変性してしまい、検出することができない。そこで免疫クロマトグラフィー法で測定する前に抽出液のpHを中和することが好ましい。
本発明の方法は、免疫クロマトグラフィー法(「免疫クロマト法」ということもある)を利用した装置又はキットを用いる。キットは、免疫クロマトグラフィー装置を含み、それ以外に、検体と接触させ、検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原を抽出し、検体抽出物を得るためのアルカリ溶液、及び/又は検体抽出物と接触させ、中和物を得るための中和液を含んでいてもよい。アルカリ溶液及び中和液については、上述した。キットはさらに、検体を採取するための用具、例えば綿棒、及び/又は吸引カテーテルを含んでいてもよい。
装置基材としては、水溶液と界面を形成することが可能な固体、ならびにそれらの表面を改質してなる固体である。基材の材質としては、入手のしやすさや安定性、安全性、成形性及び滅菌性に優れるという点でポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩等の天然高分子自体ならびにそれを架橋した構造体や改質した構造体、ヒドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属を用いることができる。中でも合成高分子や天然高分子誘導体が好ましい。また基材の形状としては平板、メッシュ、織布、不織布、スポンジ状構造体、3次元成型体(ブロック状)等で用いることができ、中でも平板が好ましい。
標識抗体含浸部材には標識化された抗体が保持されている。標識としては、着色粒子、酵素、ラジオアイソトープなどが挙げられるが、特殊な設備不要で目視によって検出可能な着色粒子を使用することが好ましい。着色粒子としては、金や白金などの金属微粒子(金コロイド粒子、白金コロイド粒子ということもある。)、非金属粒子、ラテックス粒子などが挙げられ、好ましくは金コロイド粒子であるが、これらに限定されるものではない。着色粒子は、試験片の空隙内を通って下流に輸送されることができるサイズであればいかなるサイズでもよいが、直径が1nmから10μmが好ましい。より好ましくは、5nmから1μmであり、さらに好ましくは10nmから100nmである。
標識抗体含浸部材に使用する材料は、免疫クロマトグラフィーを行えるものであれば特に限定されないが、好ましくは、セルロース誘導体等の繊維マトリックス、濾紙、ガラス繊維、布、綿等であり、より好ましくはガラス繊維である。
クロマト展開用担体に使用する材料は、免疫クロマトグラフィーを行えるものであれば特に限定されないが、好ましくは、ニトロセルロース、混合ニトロセルロースエステル、ポリビニリデンフロライド、ナイロン等である。
前述したクロマト展開用担体には判定部を設けてあり、ここにはクラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12に結合する抗体が固定化されている。この判定部(すなわちクロマト展開用担体)への抗体の固定化においては、基材表面に抗体分子が直接結合していてもよいし、又は活性基を介して結合していてもよい。基材から抗体分子又は活性基が基材表面に固定化された状態であれば、いずれの結合状態であってもよい。結合状態としては、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、水素結合又は疎水結合の単独又はこれら複数の合力があげられる。特に抗体溶液と基材表面との単純な接触による物理的な吸着法は、簡便で本発明に特に好適に用いられる。また抗体の吸着後に基材表面を洗浄や乾燥させること、あるいは基材表面に抗体溶液を塗布後に水分を蒸発せしめて基材表面に抗体を固定化する方法も、本発明に極めて好適に使用することができる。
なお、判定部に固定化された抗体と、標識化された抗体は、いずれもクラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12と反応する抗体であり、1つの該タンパク質に同時に結合できることができる抗体である。したがって一方の抗体が結合するエピトープは、他方の抗体が結合するエピトープとは異なることが好ましい。
また、判定部に標識された抗原が保持されている場合には、競合法により特定物質を検出することができる(競合アッセイ法)。本発明においては、検出感度が高く、陽性で抗体検出ラインが出現するサンドイッチアッセイ法の方が好ましい。
本発明で用いる抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでもよいが好ましくはモノクローナル抗体である。
リボソームタンパク質L7/L12抗原に対する抗体は、国際公開第00/06603号公報(前掲特許文献1)に記載の方法で作製することができる。抗体は、リボソームタンパク質L7/L12の全長タンパク質あるいはその部分ペプチドを抗原として用いて作製することができるが、全長タンパク質を抗原として作製することが好ましい。この部分ペプチドあるいは全長タンパク質をそのまま、又はキャリアタンパク質と架橋した後必要に応じてアジュバントとともに動物へ接種せしめ、その血清を回収することでL7/L12リボソームタンパク質を認識する抗体(ポリクローナル抗体)を含む抗血清を得ることができる。また抗血清より抗体を精製して使用することもできる。接種する動物としてはヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等であり、特にポリクローナル抗体作製にはヒツジ、ウサギなどが好ましい。また、抗体としてはハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法により取得したモノクローナル抗体を適用することがより好ましいが、この場合はマウスが好ましい。当該モノクローナル抗体として、特定の細菌のリボソームタンパク質L7/L12と反応し、特定の細菌とは異なる種に属する細菌、又は異なる属に属する細菌のリボソームタンパク質L7/L12とは反応しないモノクローナル抗体をスクリーニングすることにより、当該細菌による感染症にかかっているかどうかの診断に役立てることが可能となる。
本態様で用いる抗体は、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12の全長あるいはその部分ペプチドを抗原として用いて作製することができる。クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12のアミノ酸配列は公知であり、例えば、WO01/057089の配列番号2に記載されている。
a)クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は公知であるため、他のリボソームタンパク質L7/L12のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列が公知な微生物における該タンパク質のアミノ酸配列との類似性が少ない領域についてアミノ酸数5個から30個ほどのペプチド断片を合成し、それを免疫原としてポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を作製することにより目的の抗体を取得することができる。
この場合、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12の全長タンパク質が抗原となるため、異なる微生物間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても本発明の目的に合致しない。したがって、本法によって取得した抗原に対しては公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。
(抗体の準備)
クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12に対する抗体は国際公開第01/057089号公報に記載の方法で作製することができる。具体的には、例えば、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12のアミノ酸配列の全部又は一部をコードしたDNAを組み込んだ発現ベクターで形質転換した大腸菌をLB培地等を用いて培養し、アフィニティカラムにより発現ベクター由来のタグ配列を利用して融合タンパク質として精製する。この部分ペプチドあるいは全長タンパク質を必要に応じてアジュバントとともに動物へ接種する。接種する動物としてはヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等であり、特にモノクローナル抗体を得る場合にはマウスが好ましい。マウスの脾臓細胞を摘出して骨髄腫細胞と細胞融合して抗体産生ハイブリドーマを作製する。ハイブリドーマより産生されるモノクローナル抗体をELISA法等を用いて選別し、クラミジア・ニューモニエと特異的に反応するモノクローナル抗体を取得できる。
クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12に対する抗体及びトレハロースをそれぞれ2.0mg/ml及び3%(v/v)となるように50mMリン酸ナトリウム緩衝液に希釈した。これを、市販のニトロセルロース膜を幅2.5cm、長さ30cmにカットしたものに1cmあたり1μl液量で塗布し、その後乾燥させて、クロマト展開用膜担体とした。
金コロイド溶液(粒径60nm)に1/10量の0.1M感作Bufferとクラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12に対する抗体を加えて混合し、室温で30分間静置して抗体を金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が0.1%となるように1%ウシ血清アルブミン水溶液を加えてブロッキングし、金コロイド標識抗リボソームタンパク質L7/L12抗体液を調製した。
この液を市販のガラス繊維シートに浸み込ませた後、湿度0〜60%の乾燥庫にて一晩乾燥させて、標識抗体浸潤部材とした。
上述した手順で作製したクロマト展開用膜担体及び金コロイド標識抗体含浸部材に加えて、さらに試料添加用部材として綿布と、吸収用部材として濾紙を用意した。そして、これらの部材を基材に貼り合せた後、6mm幅に切断し、図1と同様の免疫クロマトグラフィー装置を作製した。
HEp−2細胞を24穴プレートに単層培養し、ここにクラミジア・ニューモニエTW183株を播種して培養液を添加し36℃、5%CO2雰囲気下で3日間培養した。ラバーポリスマンを用いて細胞ごとはがし取り、クラミジア・ニューモニエ菌体を含む培養液を回収し、ウログラフィン注76%(バイエル薬品)を用いた密度勾配遠心法によりクラミジア・ニューモニエ菌体を精製した。
水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬)に陰イオン性界面活性剤としてコール酸ナトリウム(和光純薬)、デオキシコール酸ナトリウム(和光純薬)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム(ナカライテスク)を終濃度0.5%となるように添加し、下記に示す6種類のアルカリ溶液を調製した。
アルカリ溶液(1):50mM 水酸化ナトリウム(pH12.5)
アルカリ溶液(2):100mM 水酸化ナトリウム(pH13.0)
アルカリ溶液(3):50mM 水酸化ナトリウム、0.5%コール酸ナトリウム(pH12.5)
アルカリ溶液(4):100mM 水酸化ナトリウム、0.5%コール酸ナトリウム(pH13.0)
アルカリ溶液(5):50mM 水酸化ナトリウム、0.5%デオキシコール酸ナトリウム(pH12.5)
アルカリ溶液(6):50mM 水酸化ナトリウム、0.5%N−ラウロイルサルコシンナトリウム(pH12.5)
リン酸水素二カリウム(和光純薬)34.84gを蒸留水に溶解して400mlにメスアップし0.5Mリン酸水素二カリウム水溶液とした。さらにリン酸二水素カリウム(和光純薬)17.01gを蒸留水に溶解して250mlにメスアップし0.5Mリン酸二水素カリウム水溶液とした。これらを混合して0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を調製した。
ビーカーに塩化ナトリウム(和光純薬)0.58g、ウシ血清アルブミン0.25g(SIGMA)、アジ化ナトリウム(和光純薬)0.025gをそれぞれ量りとり、上記の0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解して50mlにメスアップした(中和液(1))。
また中和液(1)に非イオン性界面活性剤としてペレテックス−1224(日光ケミカルズ)、PBC−44(日光ケミカルズ)、BrijS100(SIGMA)、Brij35(SIGMA)、TritonX−405(SIGMA)、TritonX−100(SIGMA)、TritonX−114(SIGMA)、Tween20(BioRad)を終濃度0.75%となるように添加した(中和液(2)〜(9))。
中和液(1):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8)
中和液(2):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%ペレテックス−1224、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(3):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%PBC−44、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(4):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%BrijS100、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(5):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%Brij35、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(6):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%TritonX−405、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(7):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%TritonX−100、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(8):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%TritonX−114、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
中和液(9):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.75%Tween20、0.05%NaN3、0.5M リン酸K/pH6.8
ビーカーに塩化ナトリウム(和光純薬)0.58g、ウシ血清アルブミン0.25g(SIGMA)、アジ化ナトリウム(和光純薬)0.025gをそれぞれ量りとり、さらにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン3.03gを加え、PBC−44(日光ケミカルズ)を終濃度1.0%になるように添加し、塩酸(和光純薬)を滴下してpH6.6に合わせた後、蒸留水で50mlにメスアップした(中和液(10))。
中和液(10)でPBC−44(日光ケミカルズ)を添加せず、かつ塩酸の代わりにリン酸(東京化成)を滴下してpH6.6に合わせた後、蒸留水で50mlにメスアップした(中和液(11))。また中和液(11)にPBC−44(日光ケミカルズ)、TritonX−405(SIGMA)を終濃度1.0%となるように添加した(中和液(12)、(13))。
中和液(10):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、0.3M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸/pH6.6
中和液(11):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、0.3M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−リン酸/pH6.6
中和液(12):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、1.0%PBC−44、0.3M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−リン酸/pH6.6
中和液(13):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、1.0%TritonX−405、0.3M トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−リン酸/pH6.6
ビーカーに塩化ナトリウム(和光純薬)0.58g、ウシ血清アルブミン0.25g(SIGMA)、アジ化ナトリウム(和光純薬)0.025g、PBC−44(日光ケミカルズ)0.5gをそれぞれ量りとった。ここに緩衝液成分として、HEPES(同仁堂)2.38g、ホウ酸(和光純薬)1.55g、Bicine(同仁堂)2.04g、BES(同仁堂)2.67g、TES(同仁堂)2.87g、TAPSO(同仁堂)3.24gのいずれかを加え、蒸留水で50mlにメスアップした(中和液(14)〜(19))。
中和液(14):0.2M NaCl、0.5% BSA、1.0% PBC−44、0.05% NaN3、0.2M HEPES
中和液(15):0.2M NaCl、0.5% BSA、1.0% PBC−44、0.05% NaN3、0.25Mホウ酸
中和液(16):0.2M NaCl、0.5% BSA、1.0% PBC−44、0.05% NaN3、0.25MBicine
中和液(17):0.2M NaCl、0.5% BSA、1.0% PBC−44、0.05% NaN3、0.25M BES
中和液(18):0.2M NaCl、0.5%BSA、1.0%PBC−44、0.05%NaN3、0.25M TES
中和液(19):0.2M NaCl、0.5%BSA、1.0%PBC−44、0.05%NaN3、0.25M TAPSO
リン酸水素二カリウム(和光純薬)13.93gを蒸留水に溶解して400mlにメスアップし0.2Mリン酸水素二カリウム水溶液とした。さらにリン酸二水素カリウム(和光純薬)6.80gを蒸留水に溶解して250mlにメスアップし0.2Mリン酸二水素カリウム水溶液とした。これらを混合して0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を調製した。
ビーカーに塩化ナトリウム(和光純薬)0.58g、ウシ血清アルブミン0.25g(SIGMA)、アジ化ナトリウム(和光純薬)0.025gをそれぞれ量りとり、上記の0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解して50mlにメスアップした(中和液(20))。
中和液(20):0.2M NaCl、0.5%BSA、0.05%NaN3、0.75%BrijS100、0.2M リン酸K/pH7.0
実施例3で調製したアルカリ溶液(1)〜(6)300μlに実施例2で作製したクラミジア・ニューモニエ菌体液を10μl添加し、続いて実施例5で調製した中和液(12)を200μl加えて陽性サンプルとした。またクラミジア・ニューモニエ菌体液の代わりにPBS(和光純薬)を用いたものを陰性サンプルとした。
これら陽性サンプル及び陰性サンプルを実施例1で作製した免疫クロマトグラフィー装置に140μl滴下し、15分後に目視で判定を行った。結果を次に示す。
実施例3で調製したアルカリ溶液(3)300μlに実施例2で作製したクラミジア・ニューモニエ菌体液を10μl添加し、続いて実施例4、実施例5で調製した中和液(1)〜(9)、(11)〜(13)のいずれかを200μl加えて陽性サンプルとした。またクラミジア・ニューモニエ菌体液の代わりにPBS(和光純薬)を用いたものを陰性サンプルとした。
これら陽性サンプル及び陰性サンプルを実施例1で作製した免疫クロマトグラフィー装置に140μl滴下し、15分後に目視で判定を行った。結果を次に示す。
一方、非イオン性界面活性剤を含む中和液(中和液(2)〜(9)、(12)、(13))を用いた場合では免疫クロマトグラフィー装置における液の展開性が良好であり、陽性サンプルでは目視で陽性と判定され、陰性サンプルでは目視で陰性と判定された。
(検体の採取)
滅菌綿棒(平和メディク製、咽頭用)を用いてヒトの咽頭後壁を擦過し、これを検体とした。
実施例3で調製したアルカリ溶液(3)300μlに実施例2で作製したクラミジア・ニューモニエ菌体液を10μl添加し、続いて実施例4、実施例5、実施例6で調製した中和液(10)、(12)、(3)、(4)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)を200μl加えて陽性サンプルとした。またクラミジア・ニューモニエ菌体液の代わりにPBS(和光純薬)を用いたものを陰性サンプルとした。
≪工程1:検体をアルカリ溶液で処理した後に中和する工程≫
低密度ポリエチレン製のチューブの中に実施例3で調製したアルカリ溶液(3)(50mM 水酸化ナトリウム、0.5%コール酸ナトリウム(pH12.5))を300μl入れ、この中に検体を採取した綿棒を差し込んで、チューブの外側から5〜20回よく揉んだ。ここに実施例4、実施例5、実施例6で調製した中和液(10)、(12)、(3)、(4)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)のいずれかを200μl添加した後、綿棒を取り出した。得られた溶液を工程1のサンプルとした。
低密度ポリエチレン製のチューブの中に実施例3で調製したアルカリ溶液(3)(50mM 水酸化ナトリウム、0.5%コール酸ナトリウム(pH12.5))を300μl入れ、ここに実施例4、実施例5、実施例6で調製した中和液(10)、(12)、(3)、(4)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)のいずれかを200μl添加した。この中に検体を採取した綿棒を差し込んで、チューブの外側から5〜20回よく揉んだ後、綿棒を取り出した。得られた溶液を工程2のサンプルとした。
サンプルを免疫クロマトグラフィー装置に140μl滴下し、15分後に目視で判定を行った。結果を次に示す。
一方、中和液(10)、(12)、(3)、(4)(緩衝液の成分として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び/又はリン酸を含む中和液)を用いた場合、検体を≪工程2≫で処理するといずれの中和液でも偽陽性は全く発生しなかったのは上述した中和液(14)〜(19)と同じ結果であるが、検体を≪工程1≫で処理するといずれの中和液も偽陽性は全く発生せず、中和液(14)〜(19)とは異なる結果が得られた。
すなわち、中和液(10)、(12)、(3)、(4)を用いた場合には、抗クラミジア・ニューモニエリボソームタンパク質L7/L12マウスモノクローナル抗体と非特異反応を起こす成分の影響を抑制できる。
(検体の採取)
滅菌綿棒(平和メディク製、咽頭用)を用いてヒトの咽頭後壁を擦過し、これを検体とした。
≪工程1:検体をアルカリ溶液で処理した後に中和する工程≫
低密度ポリエチレン製のチューブの中に実施例3で調製したアルカリ溶液(1)(50mM 水酸化ナトリウム(pH12.5))を300μl入れ、この中に検体を採取した綿棒を差し込んで、チューブの外側から5〜20回よく揉んだ。ここに実施例4、実施例5、実施例6で調製した中和液(10)、(12)、(3)、(4)、(14)のいずれかを200μl添加した後、綿棒を取り出した。
中和液(10)、(12)、(3)、(4)(緩衝液の成分として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン及び/又はリン酸を含む中和液)で中和した場合には抗体と非特異反応を起こす成分の影響を抑制できる。
(測定用の陽性サンプル及び陰性サンプルの調製)
実施例3で調製したアルカリ溶液(3)300μlに実施例2で作製したクラミジア・ニューモニエ菌体液を10μl添加し、続いて実施例5、実施例6、実施例7で調製した中和液(4)、(12)、(13)、(20)のいずれかを200μl加えて陽性サンプルとした。またクラミジア・ニューモニエ菌体液の代わりにPBS(和光純薬)を用いたものを陰性サンプルとした。
上記の方法で調製した陰性サンプルについて、pHを測定し、中和後のpHとした。
また陽性サンプル、陰性サンプルを免疫クロマトグラフィー装置に140μl滴下し、15分後に目視で判定を行った。結果を次に示す。
(検体の採取)
クラミジア・ニューモニエ感染が疑われる患者から検体を採取した。咽頭ぬぐい液は滅菌綿棒で患者の咽頭後壁を擦過して得た。鼻咽腔ぬぐい液は滅菌綿棒を患者の鼻腔から挿入し、鼻腔の奥に到達したところで綿棒を回転させて採取した。鼻腔吸引液はトラップ付きの気管カテーテルを患者の鼻腔から挿入し、鼻腔の奥に到達したところで吸引して採取した。トラップに溜まった吸引液を滅菌綿棒でふき取り、これを鼻腔吸引液検体とした。
低密度ポリエチレン製のチューブの中に実施例3で調製したアルカリ溶液(3)を300μl入れ、この中に検体を採取した綿棒を差し込んで、チューブの外側から5〜20回よく揉んだ。ここに実施例5で調製した中和液(12)を200μl添加した後、綿棒を取り出した。得られた溶液をサンプルとした。
サンプルが入った低密度ポリエチレン製チューブに、ろ紙フィルターを備えた滴下ノズルを装着して、免疫クロマトグラフィー装置に4滴(容量としておおよそ140μl)を滴下した。15分後に目視で判定を行った。
サンプルの残液からDNAを抽出し、クラミジア・ニューモニエの16SrRNAに対するプライマーを用いてPCRを行った。手順を下記に示す。
DNAの抽出には市販のキット(QIAGEN社:DNAminiKIT)を用いた。サンプル100μlをキット付属のプロテアーゼK及びbufferALと混合して56℃10分間加熱した後、さらにエタノールを加えた。これをキット付属のスピンカラムにアプライして遠心吸着後、BufferAW1及びBufferAW2を用いて洗浄し、BufferELを100μlアプライして遠心し、DNA抽出液を得た。
得られたDNA抽出液をテンプレートとしてPCRを行った。PCRの条件はJournal of Molecular Diagnostics, Vol. 6, No. 2, May 2004を参考にした。
免疫クロマトグラフィー装置での目視判定の結果と、PCRの結果を下記に示す。
Claims (15)
- 検体に含まれるクラミジア・ニューモニエを検出する方法であって、
該検体とアルカリ溶液を接触させ、該検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原をアルカリ溶液中に抽出し、検体抽出物を得る抽出工程と、
該検体抽出物と中和液を接触させ、中和物を得る中和工程と、
該中和物を免疫クロマトグラフィー法に供し、該細胞内抗原を検出する検出工程と、
を含み、
該中和液が、非イオン性界面活性剤と、偽陽性反応抑制上有効な緩衝液を含む、
方法。 - 前記細胞内抗原が、リボソームタンパク質L7/L12である、請求項1に記載の方法。
- 前記アルカリ溶液が陰イオン性界面活性剤を含み、該陰イオン性界面活性剤がデオキシコール酸ナトリウム及び/又はコール酸ナトリウムである、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記非イオン性界面活性剤が
ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル、及び
ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 前記中和物のpHが10.0以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記検体が上気道検体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記上気道検体が咽頭ぬぐい液、鼻咽腔ぬぐい液、鼻腔吸引液、唾液、喀痰のいずれかである、請求項6に記載の方法。
- 前記偽陽性反応抑制上有効な緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及び/又はリン酸緩衝液である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 検体に含まれるクラミジア・ニューモニエを検出するキットであって、
該検体と接触させ、該検体に含まれるクラミジア・ニューモニエの細胞内抗原を抽出し、検体抽出物を得るためのアルカリ溶液と、該検体抽出物と接触させ、中和物を得るための中和液と、中和物が供され、細胞内抗原を検出するための免疫クロマトグラフィー装置を含み、
該中和液が、非イオン性界面活性剤と、偽陽性反応抑制上有効な緩衝液を含む、
検出キット。 - 前記免疫クロマトグラフィー装置が、クラミジア・ニューモニエのリボソームタンパク質L7/L12と結合する抗体を含む、請求項9に記載の検出キット。
- 前記アルカリ溶液が陰イオン性界面活性剤を含み、該陰イオン性界面活性剤がデオキシコール酸ナトリウム及び/又はコール酸ナトリウムである、請求項9又は10に記載の検出キット。
- 前記非イオン性界面活性剤が
ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)ポリ(オキシプロピレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、
ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル、及び
ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレートからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の検出キット。 - 前記中和液が中和物のpHを10.0以下にするものである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の検出キット。
- 前記検体が上気道検体であり、前記検体を採取するための用具をさらに含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の検出キット。
- 前記偽陽性反応抑制上有効な緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及び/又はリン酸緩衝液である、請求項9〜14のいずれか1項に記載の検出キット。
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