[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。はじめに、図1及び図2を用い、コンクリートやサイディング等の外壁下地面53に下地調整を行う場合に用いる枠体10と、その枠体10を用いた下地調整部材40の構成とをそれぞれ説明する。
図1に示すように、枠体10は、略L字状の断面を有して所定方向に延びるL字状板部材である。枠体10は、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂を素材とし、透明又は半透明に形成されている。枠体10は、一対の外側面11,12により形成された外面13と、一対の内側面14,15により形成された内面16とを有している。外面13では、一対の外側面11,12が略直角をなしており、内面16では、一対の内側面14,15が略直角をなしている。なお、枠体10の具体的寸法の一例として、長手方向の長さL1は500mm、短手方向の長さL2はそれぞれ100mm、板厚Wは10mmとなっている。
ここで、枠体10の使用形態として、少なくとも2通りの形態が想定される。第1の使用形態は、図1に示すように、枠体10の長手方向を上下方向に向けて使用する形態である。第1の使用形態は、建物外壁51において、鉛直方向に延びる鉛直出隅部55(図3参照)に使用される。第2の使用形態は、枠体10の長手方向を水平方向に向けて使用する形態である。第2の使用形態は、建物外壁51において、水平方向に延びる水平出隅部56(図4参照)に使用される。
枠体10の長手方向の一端面(図1では上端面)には、L字の中心部分に第1水準器21が設けられている。第1水準器21は円柱状をなすものであり、前記一端面に埋め込まれるようにして設けられている。この第1水準器21は、枠体10を第1の使用形態で使用する場合に用いられる。第1水準器21を用いることにより、内面16におけるL字の中心にあって長手方向に延びる入隅部17が、鉛直方向に沿った状態となっているかどうかを確認することができる。第1水準器21は、本発明における鉛直確認用水準器に相当する。
枠体10の外面13には、各外側面11,12にそれぞれ第2水準器22及び第3水準器23が設けられている。第2水準器22及び第3水準器23は管状の気泡管を有するものであり、各外側面11,12に埋め込まれるようにして設けられている。また、第2水準器22及び第3水準器23は、外側面11,12のそれぞれにおいて、長手方向の中央部に設けられている。第2水準器22は角側に、第3水準器23はその反対の端部側に並んで設けられている。第2水準器22は、外側面11,12の短手方向と平行に延びるように気泡管が設けられ、第3水準器23は、外側面11,12の長手方向と平行に延びるように気泡管が設けられている。
第2水準器22は、前記第1水準器21と同様、枠体10を第1の使用形態で使用する場合に用いることができる。この場合、第2水準器22により、枠体10の左右への傾きを確認することができる。
また、第2水準器22及び第3水準器23は、枠体10を第2の使用形態で使用する場合に用いられる。第2水準器22を用いることにより、内面16を形成する一対の内側面14,15のうち、一方が水平で他方が鉛直方向に沿った状態となっているかどうかを確認できる。第3水準器23を用いることにより、内面16の長手方向に延びる入隅部17が水平をなす状態になっているかどうかを確認することができる。このため、第2水準器22及び第3水準器23の両者によって、本発明における水平確認用水準器が構成されている。
その他、枠体10の内面16には、その入隅部17に溝部18が形成されている。溝部18は、枠体10の長手方向の全域にわたって設けられている。溝部18は、角部が面取りされたよう形状を有しており、その溝幅L3は例えば1mmに設定されている。後述する樹脂シート材41をこの内面16に付着させる場合に、溝部18の存在により、樹脂シート材41をフィットさせることができる。
以上の構成を有する枠体10は、第1板材31と第2板材32とで構成されている。第1板材31及び第2板材32は、いずれも矩形平板状をなす板材であり、同じ板厚Wと同じ長手方向の長さL1を有している。短手方向について、第1板材31の短辺長さは、第2板材32の短辺長さよりも板厚分だけ短く形成されている。そして、第1板材31の板面に第2板材32の長辺側端面を突き合わせ、その突き合わせた面同士を接着剤等で接着させることにより、枠体10が略L字状をなすように形成される。第1板材31の板面に接合される第2板材32の前記長辺側端面には、内側面15となる側で面取りされている。このため、第1板材31と第2板材32とが接合されることにより、前記溝部18が形成される。
図2に示すように、下地調整に用いられる下地調整部材40は、前記枠体10と樹脂シート材41とを備えている。樹脂シート材41は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂を素材とし、透明又は半透明に形成されている。図2(a)に示すように、樹脂シート材41には、矩形状をなす一枚のシートの短手方向の中央部に、折り目42が形成されている。折り目42が形成されることにより、樹脂シート材41は、枠体10の内面16に合わせたL字状に形成されている。樹脂シート材41の長手方向の長さL4は、枠体10の長手方向の長さL1と略同じであり、折り目42から長辺側端縁までの短手方向の長さL5は、内面16の短手方向の長さL6よりも、若干(例えば10mm程度)長く形成されている。樹脂シート材41の厚さは100〜200μmであることが好ましく、折り目42を維持するには、150〜200μmであることがより好ましい。
なお、図2において、樹脂シート材41の側面部分は、樹脂シート材41の存在をわかりやすくするためにクロスハッチングして示されている。また、図2では、樹脂シート材41がL字状に成形された状態で示されているが、実際の樹脂シート材41はその薄さから柔軟性を有する状態にあり、図示のように成形された状態にはなっていない。
樹脂シート材41を枠体10の内面16に付着させて仮止め状態とすることにより、図2(b)に示すように下地調整部材40が構成される。前述したように、樹脂シート材41の短手方向の長さL5は、内面16の短手方向の長さL6よりも長く形成されているため、樹脂シート材41が枠体10の長辺側端部よりも外方へはみ出した状態となっている。樹脂シート材41の内面16への付着は、内面16の帯電によって生じた静電気や内面16に付着させた水分(濡れ)を利用することができる。枠体10への帯電は、内面16を布等で擦る等、適宜の方法で行えばよい。また、内面16の濡れを利用する場合は、内面16に対して水等の液体を霧状にして吹き付ける等、適宜の方法で行えばよい。
樹脂シート材41を内面16に付着させる場合には、その内面16に設けられた前記溝部18が空気の逃げ道の役目を果たし、樹脂シート材41が有する山折りの折り目42を入隅部17にフィットさせることができる。
次に、このように構成された下地調整部材40を用いて、建物外壁51が有する鉛直出隅部55又は水平出隅部56の下地調整を行う下地調整方法について説明する。なお、ここでの鉛直出隅部55及び水平出隅部56は、いずれも、各出隅部55,56を形成する一対の出隅形成面55a,55b,56a,56bが直交して直角をなしている。鉛直出隅部55の出隅形成面55a,55b及び水平出隅部56の出隅形成面56a,56bは、本発明において出隅部を形成する一対の面に相当する。
図3及び図4に示すように、建物外壁51は、鉄筋、鉄骨及びコンクリート等によって構成された外壁躯体部52を有している。外壁躯体部52の外壁下地面53には、建物外壁51をタイル仕上げするための下地調整材が設けられている。下地調整材としては、変性シリコン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等の有機系接着剤54が用いられている。有機系接着剤54が外壁下地面53に塗布されて、所定の厚さの層が形成されている。この有機系接着剤54を塗布する工程が、本発明における第1工程にあたる。
有機系接着剤54は、一般的な下地調整材であるモルタルよりも粘度が高いという性質を有しており、左官用コテ等を用いて有機系接着剤54を塗布する場合には、有機系接着剤54がコテに粘着してしまい、モルタル等に比較してコテ切れがよくない。そのため、建物外壁51の鉛直出隅部55や水平出隅部56では、先端角度の仕上がりの程度が十分でない状態にある。なお、鉛直出隅部55及び水平出隅部56が、それぞれ本発明における出隅部に相当する。
鉛直出隅部55の下地調整を行う場合、下地調整部材40の使用方法として、図3(a)及び(b)に示すように、枠体10を前述した第1の使用形態(長手方向を鉛直方向とする形態)にして使用する。その上で、下地調整部材40のうち、樹脂シート材41が付着した内面16の側を、鉛直出隅部55にあてがう。下地調整部材40をあてがうことにより、直角をなす枠体10の内面16によって、有機系接着剤54が塗布された鉛直出隅部55の先端角度(一対の出隅形成面55a,55bで形成される角度)が、直角をなす状態に整えられる。下地調整部材40をあてがうこの工程は、本発明における第2工程にあたる。また、枠体10の内面16が、本発明において、出隅部を形成する一対の面と対向する対向面に相当する。
その際、枠体10及び樹脂シート材41がいずれも透明又は半透明に形成されているため、下地調整部材40をあてがった際に、鉛直出隅部55の有機系接着剤54と樹脂シート材41との間に、空気が入り込んでいないかどうかを確認できる。仮に、空気の入り込みが確認された場合、下地調整部材40をあてがいながら、さらに押圧する等の手法により空気を抜く作業を行う。
また、下地調整部材40をあてがう際には、角形状をきれいに仕上げるために、枠体10の入隅部17が鉛直方向に沿った状態に保持されていることが必要とされる。そのため、第1水準器21が設けられた側の端面を上にした状態であてがい、第1水準器21や第2水準器22を利用して、枠体10がその状態に保持されているかを確認することができる。
その後、図3(c)に示すように、樹脂シート材41を鉛直出隅部55に付着させた状態のまま、枠体10の内面16に静電気によって付着する付着力に抗して枠体10のみを外す。有機系接着剤54は粘着性が高く、樹脂シート材41が有機系接着剤54に付着する力は、静電気によって枠体10の内面16に付着する力よりも強い。このため、下地調整部材40を鉛直出隅部55にあてがった状態から枠体10を外せば、自然に枠体10のみが外れる。そして、残った樹脂シート材41により、鉛直出隅部55の角形状は、その先端角度が直角をなす状態のまま保持される。枠体10のみを外すこの工程が、本発明における第3工程にあたる。
一方、水平出隅部56の下地調整を行う場合も、鉛直出隅部55の下地調整を行う方法とほぼ同様である。ただし、この場合、図4(a)及び(b)に示すように、下地調整部材40の使用方法としては、枠体10が前述した第2の使用形態(長手方向を水平方向とする形態)となるようにする。その上で、下地調整部材40のうち、樹脂シート材41が付着した内面16の側を水平出隅部56にあてがう。下地調整部材40をあてがうことにより、直角をなす枠体10の内面16によって、有機系接着剤54が塗布された水平出隅部56の先端角度(一対の出隅形成面56a,56bで形成される角度)が、直角をなす状態に仕上げられる。
下地調整部材40をあてがう際には、角形状をきれいに仕上げるために、枠体10の入隅部17が水平に延び、かつ内面16を形成する一対の内側面14,15のうち、一方が水平で、他方が鉛直方向に沿った状態に保持することが必要とされる。第2水準器22及び第3水準器23を利用して、枠体10がその状態に保持されているかを確認することができる。なお、一対の内側面14,15のうち、どちらを水平側とし、どちらを鉛直側とするかについては、そのどちらでもよい。これは、第2水準器22及び第3水準器23が一対の外側面11,12の両方に設けられているからである。
その後、図4(c)に示すように、樹脂シート材41を水平出隅部56に付着させた状態のまま、枠体10の内面16に静電気によって付着していた力に抗して枠体10のみを外す。残った樹脂シート材41により、水平出隅部56は、その先端角度が直角をなす状態に保持される。枠体10のみを外すこの工程が、本発明における第3工程にあたる。
鉛直出隅部55及び水平出隅部56のいずれの下地調整でも、枠体10を外した後は、新たな樹脂シート材41を各出隅部55,56に付着させる。この場合、枠体10の内面16に再び静電気を発生させ、新たな樹脂シート材41をその内面16に付着させて下地調整部材40を作製する。この新たな下地調整部材40をあてがう場合は、図3及び図4の各図に示すように、新たに付着させる樹脂シート材41aが、各出隅部55,56に付着した既存の樹脂シート材41bと一部が重なるようにする。これにより、各出隅部55,56には、多数の樹脂シート材41が相互に一部重なり合って付着した状態が形成される。
以上の手順を繰り返し、各出隅部55,56の全体に樹脂シート材41を付着させた後、有機系接着剤54が乾燥するまで放置する。有機系接着剤54が乾燥した後に、樹脂シート材41を剥がす。この樹脂シート材41を剥がす工程が、本発明における第4工程にあたる。樹脂シート材41を剥がすことにより、各出隅部55,56に塗布された有機系接着剤54を、先端角度が直角をなした状態に仕上げることができる。これにより、その後のタイル貼り作業が行いやすく、またその外観をきれいに仕上げることができる。
なお、乾燥したかどうかの判断は、用いられた有機系接着剤54の性質や建物の周辺環境等に応じて、施工者により任意になされる。また、剥がした樹脂シート材41は再利用することが可能である。
第1実施形態は以上に説明したとおりであり、まとめると、以下に示す効果を得ることができる。
(1)鉛直出隅部55又は水平出隅部56に有機系接着剤54を塗布した後に、当該出隅部55,56に下地調整部材40をあてがうようにした。これにより、枠体10が有する内面16によって鉛直出隅部55又は水平出隅部56の角形状が整えられる。次いで、樹脂シート材41を鉛直出隅部55又は水平出隅部56に付着させたまま、枠体10を外すようにした。これにより、その残された樹脂シート材41によって、角形状が整えられた状態が保持される。これらの手順で下地調整することにより、有機系接着剤54を下地調整材として用いた場合でも、鉛直出隅部55や水平出隅部56における角形成が行いやすく、かつその角形成された状態を好適に保持することができる。
(2)枠体10の内面16に樹脂シート材41を付着させて下地調整部材40を構成する上で、その付着には静電気や濡れを利用した。樹脂シート材41の付着はあくまで仮止めであって、後に枠体10と分離させることを考慮すると、静電気や濡れを利用した付着は、付着の容易さや分離させやすさの点で好適である。
(3)鉛直出隅部55又は水平出隅部56に残された樹脂シート材41を、有機系接着剤54の乾燥後に剥離させるようにした。このため、樹脂シート材41を除去した後も、鉛直出隅部55や水平出隅部56では、角形状が整えられた状態を保持できる。これにより、塗布された有機系接着剤54にタイルを貼る場合の作業が行いやすく、また、貼られたタイルをきれいな外観に仕上げることができる。
(4)下地調整部材40をあてがう場合に、枠体10に設けられた各水準器21〜23を用いてその状態を確認するようにした。すなわち、鉛直出隅部55の下地調整を行う場合には、第1水準器21や第2水準器22を利用して、内面16において長手方向に延びる入隅部17が、鉛直方向に沿った状態となるように枠体10を保持させる。
また、水平出隅部56の下地調整を行う場合には、第2水準器22及び第3水準器23を利用して、前記入隅部17が水平に延び、内面16を形成する一対の内側面14,15のうち、一方が水平で他方が鉛直をなす状態となるように枠体10を保持させる。これにより、鉛直出隅部55又は水平出隅部56の角形状をより整えた状態にすることができる。この場合、第2水準器22及び第3水準器23が両外側面11,12に設けられているため、一対の内側面14,15のうち、どちらを水平側としても、どちらを鉛直側としてもよい。そのため、枠体10を使用態様が特定されず、下地調整作業が行いやすい。
(5)下地調整部材40を構成する枠体10の内面16に、溝部18が形成されている。このため、樹脂シート材41をその内面16に付着させる場合に、溝部18が空気の逃げ道の役目を果たし、樹脂シート材41が有する山折りの折り目42を入隅部17にフィットさせることができる。また、樹脂シート材41には、予め折り目42が形成されているため、その点でも、枠体10の内面16に樹脂シート材41をフィットさせることができる。このようなフィット性により、下地調整部材40を鉛直出隅部55や水平出隅部56にあてがった際に、枠体10の内面16が有する角形状を各出隅部55,56に転写させやすくなり、角形状をきれいに整えることができる。
(6)枠体10は、第1板材31と第2板材32とを有し、第1板材31の板面に第2板材32の長辺側端面を接合させることにより、枠体10の略L字状が形成されている。このように、枠体10は、平板状をなす一対の第1板材31及び第2板材32を接合するだけの簡易な構成であるため、枠体10をL字状に一体成形する場合に比べて、枠体10の製造コスト増加を抑制できる。
また、第1板材31の板面に接合される第2板材32の長辺側端面では、内側面15となる側で面取りされ、両板材31,32の接合によって溝部18が形成される。このように枠体10を第1板材31と第2板材32とで構成したことにより、第2板材32を面取りして両板材31,32を接合するだけで、溝部18を容易に形成できる。
(7)樹脂シート材41には、予め折り目42が形成されるとともに、枠体10の内面16と同一形状かつ同一寸法に形成されている。その樹脂シート材41が、枠体10の内面16の全域に付着されて、下地調整部材40が作製されている。下地調整部材40を鉛直出隅部55又は水平出隅部56にあてがえば、枠体10の内面16によって角形状が整えられた部分の全域に樹脂シート材41を付着させることができる。そのため、枠体10を外した際にその内面16に有機系接着剤54が付着し、いったん整えた角形状が再び崩れてしまうことを防止できる。
(8)鉛直出隅部55又は水平出隅部56から枠体10を外した後、新たな樹脂シート材41を枠体10に付着させて下地調整部材40を作製する。そして、樹脂シート材41が付着していない箇所で、下地調整部材40をあてがって角形状を整え、その後、枠体10を外すという工程を繰り返して行う。新たな下地調整部材40をあてがう場合は、新たに付着させる樹脂シート材41aが、既存の樹脂シート材41bと一部が重なるようにした。したがって、鉛直出隅部55又は水平出隅部56では、多数の樹脂シート材41が相互に一部重なり合った状態となる。これにより、各出隅部55,56に、下地調整部材40があてがわれない部分が生じることを抑制し、下地調整部材40による角形成や形状保持を、各出隅部55,56の全域にわたって確実に行うことができる。
(9)下地調整部材40を構成する枠体10及び樹脂シート材41は、いずれも透明又は半透明に形成されている。このため、下地調整部材40を鉛直出隅部55又は水平出隅部56にあてがった際に、有機系接着剤54と樹脂シート材41との間に、空気が入り込んでいないかを確認することができる。仮に空気が入り込んでいれば、下地調整部材40をあてがいながら押圧する等の手法により、空気を抜く作業を行って、空気の入り込みを抑制できる。
(10)樹脂シート材41は、その折り目42から長辺側端縁までの短手方向の長さL5が、枠体10の内面16の短手方向の長さL6よりも若干長く形成されている。下地調整部材40を鉛直出隅部55又は水平出隅部56にあてがった場合に、その際の押圧力によって有機系接着剤54が樹脂シート材41の長辺側端縁からはみ出すこともあり得る。このようにはみ出した有機系接着剤54が、枠体10の長辺側端縁に付着してしまうことを防止できる。
[第2実施形態]
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。第2実施形態は、下地調整を行う方法が上記第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同じところは繰り返して説明することを省略し、以下では、第1実施形態と異なるところを中心に説明する。
前述したように、上記第1実施形態では、枠体10の内面16に樹脂シート材41を付着させて作製した下地調整部材40を用い、当該下地調整部材40を鉛直出隅部55や水平出隅部56にあてがうようにした。これに対し、第2実施形態では、枠体10と樹脂シート材41とを一体化させないで行う下地調整方法となっている。
鉛直出隅部55における下地調整方法を例に説明する。図5に示すように、有機系接着剤54が外壁下地面53に塗布された状態の鉛直出隅部55に、樹脂シート材61を予め付着させる。ここで用いられる樹脂シート材61は、第1実施形態で用いられる前記樹脂シート材41と同じ素材によって形成され、同様に折り目62も形成されている。ただ、樹脂シート材61は、枠体10の長手方向の長さL1よりも長く形成されており、一枚の樹脂シート材61が鉛直出隅部55の全域にわたって付着されている。
この状態で、図5(a)に示すように、枠体10を前述した第1の使用形態(長手方向を鉛直方向とする形態)とした上で、内面16の側を鉛直出隅部55の側に向けて、鉛直出隅部55にあてがう。枠体10をこのようにあてがうことにより、直角をなす枠体10の内面16によって、有機系接着剤54が塗布された鉛直出隅部55の先端角度が、直角をなす状態に整えられる。ここでも、枠体10の内面16に設けられた溝部18が空気の逃げ道の役目を果たすため、入隅部17を樹脂シート材61が有する折り目62にフィットさせることができる。そのため、鉛直出隅部55の先端角度の形成が行いやすい。
次いで、鉛直出隅部55にあてがった状態のまま、枠体10を鉛直出隅部55の延びる方向である上下方向に移動させる。図5(b)は、枠体10を下方向へ移動させた場合を一例として示している。枠体10を移動させる方向は、上方向又は下方向への一方向に限定されるのではなく、上下方向へ往復動させるようにしてもよい。このように、あてがった状態の枠体10を上下方向に移動させることにより、枠体10の内面16によって鉛直出隅部55の先端角度が、直角をなす状態に順次整えられる。樹脂シート材61を介して枠体10をあてがいながら上下方向に移動させるこの工程は、本発明における第2工程にあたる。
枠体10を移動させながら鉛直出隅部55の全域について先端角度を整えた後、図5(c)に示すように、樹脂シート材61を鉛直出隅部55に付着させた状態のまま、枠体10のみを外す。そして、残った樹脂シート材61により、鉛直出隅部55の角形状は、その先端角度が直角をなす状態のまま保持される。枠体10のみを外すこの工程が、本発明における第3工程にあたる。
なお、以上は鉛直出隅部55の下地調整を行う場合についての説明であるが、水平出隅部56の下地調整を行う場合も同様に行うことができる。つまり、水平出隅部56に予め樹脂シート材61を付着させておき、第2の使用形態にした枠体10の内面16を水平出隅部56にあてがい、その状態のまま枠体10を水平方向に移動させる。これにより、水平出隅部56の先端角度が直角をなすように整えられる。
第2実施の形態は以上に説明したとおりであり、特に、第1実施形態とは違った方法を採用することにより次のような効果が得られる。
(1)鉛直出隅部55又は水平出隅部56に有機系接着剤54を塗布した後に、当該出隅部55,56に樹脂シート材61を予め付着させ、その後、枠体10をあてがうようにした。第1実施形態の下地調整方法の場合、枠体10自身には樹脂シート材41を付着させる力がないため、枠体10の内面16に静電気を生じさせたり、濡れ状態を形成したりする作業が必要となる。有機系接着剤54は粘性を有するため、樹脂シート材61を付着させやすく、第1実施形態の下地調整方法に比べて、各出隅部55,56の角形成をする下地調整を行いやすい。
(2)鉛直出隅部55又は水平出隅部56の全域に予め樹脂シート材61を付着させておき、そこにあてがった枠体10を上下方向又は水平方向に移動させるようにした。枠体10を移動させることにより、その内面16によって鉛直出隅部55又は水平出隅部56の角形状が、順次整えられる。このような方法を採用すれば、枠体10をあてがうたびに樹脂シート材41を内面16に付着させ、下地調整部材40を作製するという作業が不要となる。これにより、各出隅部55,56の角形成をする下地調整がより行いやすい。
[別の実施形態]
なお、本発明は、上記した第1及び第2実施形態に限られるものではなく、例えば次のように実施してもよい。
(a)上記各実施の形態では、鉛直出隅部55及び水平出隅部56は、いずれも、一対の出隅形成面55a,55b,56a,56bが直交して直角をなすように形成されている。これに代えて、一対の出隅形成面55a,55b,56a,56bによって鋭角又は鈍角をなすように形成した出隅部に、上記実施の形態の下地調整方法を実施してもよい。この場合、一対の内側面14,15によって形成される内面16の角度も、出隅部の角度に合わせて形成される。
(b)上記各実施の形態では、枠体10は、第1板材31及び第2板材32を用いてその両者を接合して形成されているが、一体成形されたものであってもよい。また、透明又は半透明であることは必須ではなく、非透明の素材を用いて枠体10を形成してもよい。非透明であってもよいことは、樹脂シート材41,61についても同様である。
(c)上記各実施の形態では、枠体10に第1水準器21から第3水準器23が設けられているが、これらのすべて又は一部を省略してもよい。もっとも、枠体10を水平状態や鉛直方向に沿った状態にして各出隅部55,56にあてがうには、各水準器21〜23により枠体10の状態を確認できる構成を採用することが好ましい。
(d)上記各実施の形態では、樹脂シート材41,61に予め折り目42,62を付けて、その状態の樹脂シート材41,61を枠体10の内面16や各出隅部55,56に付着させている。これに代えて、折り目42,62を形成しないで枠体10の内面16に付着させたり、各出隅部55,56に付着させたりしてもよい。もっとも、枠体10の内面16へのフィット性を確保するには、折り目42,62が予め形成されていた方が好ましい。
(e)上記各実施の形態では、枠体10の内面16に溝部18が形成されているが、この溝部18を省略してもよい。もっとも、枠体10の内面16へのフィット性を確保するには、溝部18が形成されていた方が好ましい。
(f)上記各実施の形態において、樹脂シート材41,61として、多数の通気孔が形成されたものを採用してもよい。このような樹脂シート材41,61を用いれば、通気孔を通じた通気により、樹脂シート材41,61が付着した状態の鉛直出隅部55や水平出隅部56で、有機系接着剤54を乾燥させやすくなる。
(g)上記各実施の形態では、第1水準器21は、枠体10の長手方向の一端面にのみ設けられているが、他端面(図1における下端面)にも設けられた構成を採用してもよい。これにより、枠体10の上下方向が特定されないため、下地調整作業が行いやすくなる。また、上記各実施の形態では、第2水準器22及び第3水準器23を、一対の外側面11,12の両方に設けているが、一対の外側面11,12のうちの一方にのみ設けた構成を採用してもよい。
(h)上記各実施の形態では、枠体10は、L字状の断面を有して所定方向に延びるL字状板部材として構成されている。もっとも、枠体10は、各出隅部55,56を形成する一対の出隅形成面55a,55b,56a,56bに対向する内面16を有していれば足り、L字状板部材である必要はない。例えば、枠体10を、所定方向に延びる円柱状部材に、長手方向に延びる内面16が形成された構成としてもよい。
(i)上記各実施の形態では、下地調整材として有機系接着剤54が用いられているが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂を含む樹脂モルタルが用いられる場合であってもよい。樹脂モルタルを用いた場合でも、有機系接着剤54と同様にコテ切れがよくないという問題があるため、上記各実施の形態の下地調整方法を実施することで、各出隅部55,56の先端角度を好適に仕上げることができる。
(j)上記各実施の形態では、樹脂シート材41,61は、折り目42,62から長辺側端縁までの短手方向の長さL5が、枠体10の内面16の短手方向の長さL6よりも若干長く形成されているが、略同じとしてもよい。また、第1実施形態では、樹脂シート材41は、その長手方向の長さL4が枠体10の長手方向の長さL1と略同じとなっているが、より長く形成するようにしてもよい。樹脂シート材41,61の寸法を考える上では、枠体10の内面16に有機系接着剤54を付着させないようにすべく、内面16と少なくとも同一寸法を有することが好ましい。
(k)上記第1実施形態では、枠体10の内面16に樹脂シート材41を付着させて仮止めするのに、静電気又は濡れを利用するようにしたが、仮止めの手法としては、粘着テープや糊等の粘着剤を利用する等、他の適宜の方法を採用することができる。ただ、あくまで仮止めのための粘着剤等であるから、樹脂シート材41を枠体10から外せる程度の付着力が得られるものが採用される。
(l)上記第2実施形態では、一枚の樹脂シート材61を各出隅部55,56の全域にわたって付着するようにしたが、複数枚の樹脂シート材61を付着させるようしてもよい。複数枚の樹脂シート材61を付着させておく場合は、先に付着させた樹脂シート材61と一部が重なるように順次付着させ、樹脂シート材61の間に隙間が形成されないようにすることが好ましい。
このように、複数の樹脂シート材61を各出隅部55,56に付着させる場合、枠体10の移動方向は一方向に特定することが好ましい。すなわち、樹脂シート材61同士の重なり部分で重なり上側となっている樹脂シート材61の端部が、その反対側の端部よりも後に枠体10があてがわれる方向に、枠体10を移動させることが好ましい。例えば、鉛直出隅部55において、樹脂シート材61を下から上に向けて順次付着させる場合、すでに付着させた樹脂シート材61の上端部に、新たな樹脂シート材61の下端部を重ね合わせて付着させることになる。この場合、樹脂シート材61の重なり部分において重なり上側となっている樹脂シート材61の端部は、当該樹脂シート材61の下端側に存在する。このため、枠体10は、上から下の一方向に向けて移動させることが好ましい。枠体10の移動方向をこのように特定することにより、樹脂シート材61の重なり部分が移動する枠体10に引っかかり、樹脂シート材61が剥がれてしまうおそれを低減できる。