JP2017202479A - ポリイミド系樹脂膜洗浄液、ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法、ポリイミド膜を製造する方法、フィルタ、フィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法、及びリソグラフィー用薬液の製造方法 - Google Patents

ポリイミド系樹脂膜洗浄液、ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法、ポリイミド膜を製造する方法、フィルタ、フィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法、及びリソグラフィー用薬液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に残存する、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等の低減に優れるポリイミド系樹脂膜洗浄液、ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等が低減されたポリイミド膜を製造する方法、ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法、及び上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法を提供すること。【解決手段】ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、並びにこれらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶剤を含むポリイミド系樹脂膜洗浄液。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド系樹脂膜洗浄液、ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法、ポリイミド膜を製造する方法、ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法、上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法、及びリソグラフィー用薬液の製造方法に関する。
従来から、種々の多孔質膜がフィルタ等の用途で使用されている。
例えば、ポリイミドの多孔質膜として、ポリアミド酸やポリイミドの溶液中にシリカ粒子を分散させたワニスを基板上に塗布した後、必要に応じて塗布膜を加熱してシリカ粒子を含むポリイミド膜を得、次いで、ポリイミド膜中のシリカをフッ化水素水で溶出除去して得られた多孔質膜が知られている(特許文献1参照)。
特許第5605566号公報
本発明者は、ポリイミド膜(例えば、多孔質ポリイミド膜)を用いて組み立てた液体分離用フィルタに、各種有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール等)でフラッシングしたところポリイミド膜からポリマーの低分子量領域のポリイミドの溶出が見られる場合があるという問題を見出している。フィルタとして応用する上でポリイミド膜からの溶出物(例えば、ポリイミドのポリマーの低分子量領域)の低減が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に残存する、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等の低減に優れるポリイミド系樹脂膜洗浄液、ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等が低減されたポリイミド膜を製造する方法、上記ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法、上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法、及びリソグラフィー用薬液の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリイミド系樹脂膜洗浄液として特定の溶剤を用いることによりポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に残存する、例えば、ポリイミド樹脂のポリマーの低分子量領域等を溶出して低減し、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、並びにこれらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶剤を含むポリイミド系樹脂膜洗浄液である。
本発明の第2の態様は、
ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含有するポリイミド系樹脂膜に第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を接触させることにより、上記ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法である。
本発明の第3の態様は、
ポリイミド膜を製造する方法であって、
上記方法は、第2の態様のポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法による洗浄工程を含む、方法である。
本発明の第4の態様は、
ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法であって、
上記ポリイミド膜は、第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造する、方法である。
本発明の第5の態様は、
ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターメディアを製造する方法であって、
上記ポリイミド膜は、第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造する、方法である。
本発明の第6の態様は、
ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスを製造する方法であって、
上記ポリイミド膜は、第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造する、方法である。
本発明の第7の態様は、
第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を、ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスに通過させた後、上記フィルターデバイスに被処理リソグラフィー用薬液を通過させることを含む、リソグラフィー用薬液の製造方法である。
本発明の第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液は、ポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に残存する、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等の低減に優れる。
本発明の第2の態様に係るポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法は、ポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に残存する、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等の量の低減に優れる。
本発明によれば、例えば、ポリイミドポリマーの低分子量領域等の量が低減されたポリイミド膜を製造する方法、上記ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法、及び上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法、及びリソグラフィー用薬液の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明において、ポリイミド系樹脂膜とは、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含有する膜を意味する。
また、本明細書において、例えば「ポリアミド酸及び/又はポリイミド」等のように「P及び/又はQ」等の記載は、「P及びQからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。ここでP及びQは任意の用語である。
また、本発明において、「洗浄」とは、ポリイミド系樹脂膜そのもの(膜全体)を除去することを意味するものではなく、ポリイミド系樹脂膜表面又は膜中に存在する残留物等(例えばポリイミドポリマーの低分子量領域等)を溶出して低減することを意味する。
また、本発明において、ポリイミド系樹脂膜洗浄液により含有量が低減される「ポリイミドポリマーの低分子量領域」は、ポリイミドの低分子量領域及び/又はポリアミド酸の低分子量領域を意味する。例えば、後述のポリイミド膜を製造する方法において、ポリアミド酸からなる樹脂を用いたワニスによる未焼成複合膜を得た後に第2の態様に係る洗浄方法を行う場合、ポリイミド系樹脂膜洗浄液で低減される「ポリイミドポリマーの低分子量領域」は、主にポリアミド酸の低分子量領域となる。同様の未焼成複合膜を焼成した後に第2の態様に係る洗浄方法を行う場合、ポリイミド系樹脂膜洗浄液で低減される「ポリイミドポリマーの低分子量領域」は、ポリイミドの低分子量領域、又はポリイミドの低分子量領域及びポリアミド酸の低分子量領域と考えられる。
<ポリイミド系樹脂膜洗浄液>
まず、本発明の第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液について説明する。
第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液は、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、並びにこれらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶剤を含む。該「これらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒」は、下記「(A)下記(B)溶剤以外の非プロトン性極性溶媒」と同じである。
第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液は、
(A)下記(B)溶剤以外の非プロトン性極性溶媒と、
(B)ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つの溶剤(本明細書において、「(B)溶剤」ともいう。)とを含むことが好ましい。
[(A)非プロトン性極性溶媒]
上記非プロトン性極性溶媒は、下記一般式(s)で表されるアミド構造を有する溶剤、及び、アルキルスルフィニルアルカン(別名:ジアルキルスルホキシド)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒は1種であってもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2017202479
(式中、R及びRは同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、又は−NRで表される基を示す。R及びRは同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRは組み合わさって環を形成していてもよい。)
〜Rが表すアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
及びRが組み合わさって環を形成する基としては、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基であることがより好ましい。形成される環としては、2−イミダゾリドン環、2−ピロリドン環、3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン環等が挙げられる。
上記一般式(s)で表されるアミド構造を有する溶剤としては、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,1,3,3−テトラエチルウレア、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチルアセトアミド及びN−メチルホルムアミド等が挙げられる。
上記アルキルスルフィニルアルカン(別名:ジアルキルスルホキシド)としては、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド等が挙げられる。
上記非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,1,3,3−テトラメチルウレア及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
[(B)溶剤]
(B)溶剤はヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つの溶剤である。
本明細書において、脂肪族カルボン酸エステルは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステルを包含しない。
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステルとしては、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルとしては、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸n−プロピル等が挙げられる。
鎖状又は環状ケトンとしては、2−ヘプタノン(別名:メチルアミルケトン)、シクロヘキサノン等が挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ブチレングリコールモノアルキルエーテル、ペンタングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ペンタングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
(B)溶剤は、炭素原子数4〜7の化合物であることが好ましく、炭素原子数5〜7の化合物であることがより好ましい。
(B)溶剤は、乳酸エチル、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
(A)非プロトン性極性溶媒を単独で用いてもよいし、(B)溶剤を単独で用いてもよい。
(A)非プロトン性極性溶媒と上記(B)溶剤とを混合して用いる場合、混合比率としては特に制限はないが、上記(A)非プロトン性極性溶媒と上記(B)溶剤との合計に対する上記(B)溶剤の含有率[B/(A+B)]は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
また、上記(B)溶剤の含有率[B/(A+B)]は10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
<ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法>
第2の態様に係るポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法は、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含有するポリイミド系樹脂膜に第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を接触させることにより、上記ポリイミド系樹脂膜を洗浄する。
洗浄の方法としては、第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液にポリイミド系樹脂膜を室温(例えば、23℃)又は適宜加温下で浸漬した後取り出すことを1回又は複数回(例えば、3回)繰り返す方法、シャワー洗浄を1回又は複数回(例えば、3回)繰り返す方法等が挙げられる。更に、洗浄後のポリイミド系樹脂膜を乾燥するために、洗浄後のポリイミド系樹脂膜を室温で風乾する、恒温槽中で適切な設定温度まで加温する、真空乾燥する等、公知の方法が制限されることなく適用できる。例えば、ポリイミド系樹脂膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
フィルターデバイスを構成するハウジング材等に添加剤が含まれている場合であっても、ポリイミド系樹脂膜からなるフィルターメディアを備えるフィルターデバイスごと、第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を通液、浸漬する等により接触させることにより該添加剤の後工程における溶出量を低減することができる。
後述の実施例に記載のポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法により洗浄した、ポリイミド系樹脂膜を24時間浸漬させた酢酸n−ブチルを濃縮・加熱乾燥した後に残留する不揮発分(低分子量体等)が、1.0mg/300cm以下であるポリイミド系樹脂膜とすることができ、好ましくは0.8mg/300cm以下であるポリイミド系樹脂膜とすることができ、より好ましくは0.6mg/300cm以下であるポリイミド系樹脂膜とすることができ、更に好ましくは0.5mg/300cm以下であるポリイミド系樹脂膜とすることができる。
(ポリアミド酸)
第2の態様に係るポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法は、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含有するポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法である。
上記ポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物は単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミン及びその誘導体、ジアミノビフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノジフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノナフタレン及びその誘導体、アミノフェニルアミノインダン及びその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物及びその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物及びその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
フェニレンジアミンはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等であり、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−トリフェニレンジアミン等である。
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。例えば、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等である。
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。結合はエーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン又はその誘導体基による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等である。アルキレン結合は炭素数が1〜6程度のものであり、その誘導体基はアルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
ジアミノジフェニル化合物の例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ペンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基がいずれも他の基を介して結合したものであり、他の基は、ジアミノジフェニル化合物と同様のものが選ばれる。ジアミノトリフェニル化合物の例としては、1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
ジアミノナフタレンの例としては、1,5−ジアミノナフタレン及び2,6−ジアミノナフタレンを挙げることができる。
アミノフェニルアミノインダンの例としては、5又は6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンを挙げることができる。
ジアミノテトラフェニル化合物の例としては、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等を挙げることができる。
カルド型フルオレンジアミン誘導体は、9,9−ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素数が2〜15程度のものがよく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン等が挙げられる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
上記ポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
これらの溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。
ポリアミド酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリイミド)
上記ポリイミドは、後記の第3の態様において用いてもよいワニスに使用する溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドであれば、その構造や分子量が限定されることはなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチルー1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。更に、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
溶剤に溶解可能な上記ポリイミドを製造する手段に特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を化学イミド化又は加熱イミド化させ、溶剤に溶解させる方法等の公知の手法を用いることができる。そのようなポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等を挙げることができ、芳香族ポリイミドが好ましい。芳香族ポリイミドとしては、式(1)で示す繰り返し単位を有するポリアミド酸を熱又は化学的に閉環反応によって取得したもの、若しくは式(2)で示す繰り返し単位を有するポリイミドを溶媒に溶解したものでよい。式中、Arはアリール基を示す。
Figure 2017202479
Figure 2017202479
<ポリイミド膜を製造する方法>
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法は、
第2の態様のポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法による洗浄工程を含む。
上記ポリイミド膜を製造する方法は、更に、
ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と、微粒子と、溶剤とを含有するワニスを用いて塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
上記塗布膜をプリベークして未焼成複合膜を得るプリベーク工程と、
上記未焼成複合膜を焼成してポリイミド−微粒子複合膜を得る第1焼成工程と、
上記ポリイミド−微粒子複合膜から微粒子を取り除いて多孔質ポリイミド系樹脂膜1とする微粒子除去工程と、
上記多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去して多孔質ポリイミド系樹脂膜2を得るポリイミド系樹脂除去工程と、
上記多孔質ポリイミド系樹脂膜2を水洗する水洗工程と、
上記水洗後の上記多孔質ポリイミド系樹脂膜2を焼成する第2焼成工程と、
を上記の順序で含むことが好ましく、
上記洗浄工程を、上記塗布膜形成工程、上記プリベーク工程、上記第1焼成工程、上記微粒子除去工程、上記水洗工程、及び上記第2焼成工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程の後に行うことがより好ましい。これらの中でも、上記塗布膜形成工程、上記プリベーク工程及び上記第2焼成工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程の後に洗浄工程を行うことが更に好ましい。ポリイミドポリマーの低分子量領域等の低減効果の向上の点で上記第1焼成工程の前の工程(つまり、塗布膜形成工程及び/又はプリベーク工程の後、より好ましくは、プリベーク工程の後)で、上記洗浄工程を行うことが特に好ましい。また、必要に応じて、フィルターメディア又はフィルターデバイスを製造した後に再度本発明の第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液を用いてフィルターメディア又はフィルターデバイスの洗浄を行ってもよい。
ポリイミド系樹脂膜洗浄液で洗浄されるポリイミド系樹脂膜は、塗布膜、未焼成複合膜、ポリイミド−微粒子複合膜、及び多孔質膜(多孔質ポリイミド系樹脂膜1及び/又は多孔質ポリイミド系樹脂膜2)からなる群より選択される少なくとも1つであり、塗布膜、未焼成複合膜及び多孔質膜からなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、未焼成複合膜及び/又は多孔質膜であることがさらに好ましい。
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法において用いられるポリイミド系樹脂膜の製造における各成分について以下説明する。
(ワニスの製造)
第3の態様において用いてもよいワニス(以下、「多孔質ポリイミド膜製造用ワニス」ともいう。)は、上述のポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と、微粒子と、溶剤とを含有する。多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおいて、上記微粒子の含有量は、上記樹脂と上記微粒子との合計に対して65体積%以上であることが好ましい。また、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの25℃における粘度は、550mPa・s以上であることが好ましい。
上記微粒子の含有量が上記樹脂と上記微粒子との合計に対して65体積%以上であると、得られる多孔質ポリイミド膜の空孔率が下がりにくく、また、得られる未焼成複合膜の焼成時の収縮率が高くなりにくく、カールやシワの発生を抑制しやすい。
上記微粒子の含有量の上限は上記樹脂と上記微粒子との合計に対して、例えば、90体積%以下であり、80体積%以下であることが好ましい。上記微粒子の含有量の上限が上記範囲内であると、微粒子同士が凝集しにくく、また、表面にひび割れ等が生じにくいため、安定して電気特性の良好な多孔質ポリイミド膜を形成することができる。
なお、本明細書において、体積%及び体積比は、25℃における値である。
また、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおいて、微粒子とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂との合計の含有量は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニス中の固形分全体(後述の溶剤以外の各成分全体)に対し、例えば、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、実質的に99〜100質量%となるよう調整することが各種製造工程の安定性の点で更により好ましい。
多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの25℃における粘度は、例えば、300mPa・s以上である。好ましくは550mPa・s以上であり、より好ましくは600mPa・s以上であり、更により好ましくは700mPa・s以上である。上記粘度の上限は、特に限定されないが、例えば5000mPa・s以下であり、実用的な観点から、3000mPa・s以下であり、好ましくは2000mPa・s以下であり、より好ましくは1500mPa・s以下である。
なお、粘度は、E型粘度計により測定される。
多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの調製は、上述のポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含み、微粒子を分散した溶液を製造することにより行う。より具体的には、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの調製は、例えば、微粒子を予め分散した溶剤とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した溶剤中でポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を重合して行われる。上記微粒子は、ワニスに使用する溶剤に不溶であり、成膜後選択的に除去可能なものなら、特に限定されることなく使用することができる。
第3の態様において用いてもよいワニスは、予め微粒子が分散した溶剤とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した溶剤中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、更にイミド化してポリイミドとすることで製造できる。
微粒子とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを焼成してポリイミド−微粒子複合膜とした場合において、微粒子の材質が後述の無機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が2〜6(質量比)となるように、微粒子とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを混合するとよい。3〜5(質量比)とすることが、更に好ましい。微粒子の材質が後述の有機材料の場合は微粒子/ポリイミドの比率が1〜3.5(質量比)となるように、微粒子とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを混合するとよい。1.2〜3(質量比)とすることが、更に好ましい。また、ポリイミド−微粒子複合膜とした際に微粒子/ポリイミドの体積比が1.5〜4.5となるように微粒子とポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂とを混合するとよい。1.8〜3(体積比)とすることが更に好ましい。ポリイミド−微粒子複合膜とした際に微粒子/ポリイミドの質量比又は体積比が上記下限値以上であれば、セパレータとして適切な密度の孔を得ることができ、上記上限値以下であれば、粘度の増加や膜中のひび割れ等の問題を生じることなく安定的に成膜することができる。
ポリイミドは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(微粒子)
上記微粒子の材質は、ワニスに使用する溶剤に不溶で、後にポリイミド膜から除去可能なものであれば、特に限定されることなく公知のものが採用可能である。例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。
具体的に微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、中でも単分散球状シリカ粒子を選択することが、均一な孔を形成できるために好ましい。
また、上記微粒子は、真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが好ましい。これらの条件を備えた微粒子は、ワニス中での分散性に優れ、互いに凝集しない状態で使用することができる。使用する微粒子の平均粒径は、例えば、100〜2000nmであることが好ましい。これらの条件を満たすことで、微粒子を取り除いて得られる多孔質膜の孔径を揃えることができるため、セパレータに印加される電界を均一化でき好ましい。
微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(溶剤)
上記溶剤としては、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されず、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として例示したものが挙げられる。溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおいて、溶剤の含有量は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニス全体に対し、50質量%以上であること(即ち、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおける固形分濃度が50質量%以下となる量であること)が塗布性の点で好ましい。上記溶剤の含有量は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおける固形分濃度がより好ましくは5〜50質量%、更により好ましくは20〜40質量%、一層更により好ましくは25〜38質量%となる量である。
(分散剤)
第3の態様では、ワニス中の微粒子を均一に分散することを目的に、微粒子とともに更に分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、上述のポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と微粒子とを一層均一に混合でき、更には、成形又は成膜した前駆体膜中の微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られる多孔質ポリイミドの表面に稠密な開口を設け、かつ、表裏面を効率よく連通させることが可能となり、フィルムの透気度が向上する。更に、分散剤を添加することにより、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの乾燥性が向上しやすくなり、また、形成された未焼成複合膜の基材等からの剥離性が向上しやすくなる。
上記分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。また、上記分散剤は、2種以上を混合して使用することもできる。
多孔質ポリイミド膜製造用ワニスにおいて、分散剤の含有量は、例えば、成膜性の点で、上記微粒子に対し0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましく、0.1〜0.5質量%であることが更により好ましい。
以下、第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法において好ましく行うことができる各工程について説明する。
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程において、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスを用いて塗布膜を形成する。その際、塗布膜は、基材上に塗布してもよいし、上記塗布膜とは異なる下層膜上に塗布してもよい。
基材としては、例えば、PETフィルム、SUS基材、ガラス基材等が挙げられる。
(プリベーク工程)
プリベーク工程において、上記塗布膜をプリベークして未焼成複合膜を形成する。
未焼成複合膜は、例えば、基材上又は上記下層膜上に、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜100℃、好ましくは常圧10〜100℃で乾燥(プリベーク)することにより、形成することができる。
上記下層膜としては、例えば、ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と、微粒子と、溶剤とを含有し、上記微粒子の含有量が上記樹脂と上記微粒子との合計に対して65体積%超90体積%以下(好ましくは81体積%以下)である下層膜用ワニスを用いて成膜した下層未焼成複合膜が挙げられる。下層未焼成複合膜は、基材上に形成されたものであってもよい。上記微粒子の含有量が65体積%超であると、粒子が均一に分散し、また、上記微粒子の含有量が81体積%以下であると、粒子同士が凝集することもなく分散するため、多孔質ポリイミド膜において孔を均一に形成することができる。また、上記微粒子の含有量が上記範囲内であれば、下層未焼成複合膜を基材上に形成する場合、上記基材に予め離型層を設けていなくても、成膜後の離型性を確保しやすい。
なお、下層膜用ワニスに用いる微粒子と多孔質ポリイミド膜製造用ワニスに用いる微粒子とは、同じであってもよいし、互いに異なってもよい。下層未焼成複合膜における孔をより稠密にするには、下層膜用ワニスに用いる微粒子は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスに用いる微粒子よりも粒径分布指数が小さいか同じであることが好ましい。あるいは、下層膜用ワニスに用いる微粒子は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスに用いる微粒子よりも真球率が小さいか同じであることが好ましい。
また、下層膜用ワニスに用いる微粒子は、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスに用いる微粒子よりも、平均粒径が小さいことが好ましく、特に、下層膜用ワニスに用いる微粒子の平均粒径が100〜1000nm(好ましくは100〜600nm)であり、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスに用いる微粒子の平均粒径が500〜2000nm(好ましくは700〜2000nm)であることが好ましい。
また、下層膜用ワニスは、多孔質ポリイミド膜製造用ワニスよりも微粒子の含有量が多いことが好ましい。ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂、微粒子、溶剤、及び基材は、上記の通りである。下層未焼成複合膜は、例えば、基材上に、上記下層膜用ワニスを塗布し、常圧又は真空下で0〜100℃、好ましくは常圧10〜100℃で乾燥することにより、形成することができる。
また、上記下層膜としては、例えば、セルロース系樹脂、不織布(例えば、ポリイミド製不織布等。繊維径は、例えば、約50nm〜約3000nmである。)等の繊維系材料からなる下層膜や、ポリイミドフィルムも挙げられる。
更に、上記未焼成複合膜又は上記未焼成複合膜と上記下層膜との積層膜を焼成してポリイミド−微粒子複合膜を得る焼成工程に入る。上記未焼成複合膜又は上記下層未焼成複合膜を基材上に成膜した場合、そのまま焼成してもよいし、焼成工程に入る前に上記未焼成複合膜又は上記未焼成複合膜と上記下層未焼成複合膜との積層膜を基材から剥離してもよい。
なお、積層膜における上記下層膜が、下層膜用ワニスを用いて成膜した下層未焼成複合膜であり、かつ、下層膜用ワニスの組成が、上記未焼成複合膜の成膜に用いてもよい多孔質ポリイミド膜製造用ワニスの組成と同じである場合は、上記未焼成複合膜と上記下層膜との積層膜は実質1層(単層)となるが、本明細書においては積層膜という。
未焼成複合膜又は未焼成複合膜と下層未焼成複合膜との積層膜を基材から剥離する場合、膜の剥離性を更に高めるために、予め離型層を設けた基材を使用することもできる。基材に予め離型層を設ける場合は、ワニスの塗布の前に、基材上に離型剤を塗布して乾燥あるいは焼き付けを行う。ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系、フッ素系又はシリコーン等の公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。上記乾燥した未焼成複合膜を基材から剥離する際、未焼成複合膜の剥離面にわずかながら離型剤が残存するため、焼成中の変色や電気特性への悪影響の原因ともなるので、極力取り除くことが好ましい。離型剤は、例えばアルコール類で除去可能である(以下、離型剤除去工程ともいう。)。
一方、未焼成複合膜又は下層未焼成複合膜の成膜に、離型層を設けず基材をそのまま使用する場合は、上記離型層形成の工程や上記アルコール類での離型剤除去工程を省くことができる。
(水を含む溶剤への浸漬工程)
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法は、上記未焼成複合膜を水を含む溶剤に浸漬する浸漬工程を含んでいてもよい。
第3の態様に係る製造方法において、上記洗浄工程を、上記未焼成複合膜を水を含む溶剤に浸漬する浸漬工程の後に行ってもよい。
未焼成複合膜中には、通常、その製造に用いた製造用溶剤が残存している。製造用溶剤が残存したままで未焼成複合膜を焼成すると、膜中の製造用溶剤の分布にムラが発生しやすく、結果として、ポリイミド−微粒子複合膜にカールが発生しやすくなる。一方、未焼成複合膜を水を含む溶剤に浸漬すると、未焼成複合膜中に残存する製造用溶剤が上記水を含む溶剤中に溶け出し、未焼成複合膜中に残存する製造用溶剤の量が減少する。その結果、膜中の製造用溶剤の分布にムラが発生しにくくなり、ポリイミド−微粒子複合膜にカールが発生することが抑制されやすくなる。
水を含む溶剤とは、例えば、水を5質量%以上含む溶剤をいう。水を含む溶剤は、水を主成分として含む溶剤であることが好ましく、水を50質量%以上含む溶剤であることがより好ましく、水を70質量%以上含む溶剤であることが更に好ましく、水を90質量%以上含む溶剤であることが特に好ましく、100質量%水であってもよい。水を含む溶剤に含まれる水以外の溶剤としては、水溶性の有機溶剤が挙げられ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等の窒素含有極性溶媒やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。上記水溶性の有機溶剤の割合は、水を含む溶剤全体に対し、例えば0〜95質量%であり、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
浸漬時間としては、特に限定されないが、1〜10分が好ましく、3〜5分がより好ましい。浸漬時間が上記範囲内であると、ポリイミド−微粒子複合膜にカールが発生することがより抑制されやすくなる。
浸漬温度としては、特に限定されないが、例えば5〜60℃であり、15〜35℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。浸漬温度が上記範囲内であると、ポリイミド−微粒子複合膜にカールが発生することがより抑制されやすくなる。
未焼成複合膜成膜工程において基材上に未焼成複合膜を成膜した場合、浸漬工程では、上記基材から上記未焼成複合膜を剥離して水を含む溶剤に浸漬してもよいし、上記基材上に成膜された未焼成複合膜を水を含む溶剤に浸漬してもよい。上記浸漬工程後に未焼成複合膜を基材から剥離しやすいことから、浸漬工程では、上記基材から上記未焼成複合膜を剥離して水を含む溶剤に浸漬することが好ましい。
第3の態様に係る多孔質ポリイミド膜の製造方法は、更に、上記浸漬工程と後述する焼成工程との間に、浸漬工程後の未焼成複合膜から上記水を含む溶剤を除去する工程を含むことが好ましい。上記水を含む溶剤を除去する方法としては、例えば、後述のプレス工程又は乾燥工程が挙げられる。プレス工程による上記水を含む溶剤の除去は、シワ(ムラやうねり)の発生が抑制されやすい点で好ましい。
(第1焼成工程)
上記未焼成複合膜に加熱による後処理(焼成)を行ってポリイミドと微粒子とからなる複合膜(ポリイミド−微粒子複合膜)とする。上記未焼成複合膜成膜工程において、上記未焼成複合膜とは異なる下層膜上に上記未焼成複合膜を成膜した場合には、焼成工程において、上記未焼成複合膜とともに上記下層膜も焼成する。焼成工程における焼成温度は、未焼成複合膜及び下層膜の構造や縮合剤の有無によっても異なるが、120〜375℃であることが好ましく、更に好ましくは150〜350℃である。また、微粒子に、有機材料を使用するときは、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。焼成工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。
焼成条件は、例えば、室温〜375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な乾燥−熱イミド化法を用いることもできる。基材上に未焼成複合膜を成膜し、上記基材から上記未焼成複合膜を一旦剥離する場合は、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
できあがったポリイミド−微粒子複合膜の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。どのような平均膜厚が好ましいかは、ポリイミド−微粒子複合膜又は多孔質ポリイミド膜の用途によって異なるが、例えば、セパレータ等に使用する場合は、5〜500μmであることが好ましく、10〜100μmであることが更に好ましい。
(微粒子除去工程)
微粒子除去工程において、ポリイミド−微粒子複合膜から微粒子を取り除いて多孔質ポリイミド系樹脂膜1とする。
ポリイミド−微粒子複合膜から、微粒子を適切な方法を選択して除去することにより、多孔質ポリイミド系樹脂膜1を再現性よく製造することができる。
微粒子の材質として、例えば、シリカを採用した場合、ポリイミド−微粒子複合膜を低濃度のフッ化水素水等により処理して、シリカを溶解除去することが可能である。
また、微粒子の材質として、有機材料を選択することもできる。有機材料としては、ポリイミドよりも低温で分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーからなる樹脂微粒子を挙げることができる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断され、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。いずれも、低分子量体、あるいは、COまで分解することによって、ポリイミド膜から消失する。使用される樹脂微粒子の分解温度は200〜320℃であることが好ましく、230〜260℃であることが更に好ましい。分解温度が200℃以上であれば、ワニスに高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、ポリイミドの焼成条件の選択の幅が広くなる。また、分解温度が320℃未満であれば、ポリイミドに熱的なダメージを与えることなく樹脂微粒子のみを消失させることができる。
(ポリイミド系樹脂除去工程)
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法は、微粒子除去工程後に多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去して多孔質ポリイミド系樹脂膜2を得るポリイミド系樹脂除去工程を含んでいることが好ましい。微粒子除去工程後に多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去することにより、上記多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去しないものに比べて、最終製品の多孔質ポリイミド膜の開孔率を向上させることが可能となる。
上記のポリイミド部分の少なくとも一部を除去する工程、あるいは、多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去する工程は、通常のケミカルエッチング法若しくは物理的除去方法、又は、これらを組み合わせた方法により行うことができる。
ケミカルエッチング法としては、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として、例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01〜20質量%である。
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これを芳香族ポリイミドフィルムの表面に30〜100m/sの速度で照射することでポリイミドフィルム表面を処理する方法等が使用できる。
微粒子除去工程後に行うポリイミド系樹脂除去工程にのみ適用可能な物理的方法として、対象表面を液体で濡らした台紙フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)に圧着後、乾燥しないで又は乾燥した後、多孔質ポリイミド膜を台紙フィルムから引きはがす方法を採用することもできる。液体の表面張力あるいは静電付着力に起因して、多孔質ポリイミド膜の表面層のみが台紙フィルム上に残された状態で、多孔質ポリイミド膜が台紙フィルムから引きはがされる。
(水洗工程)
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法は、余剰のエッチング液成分の除去等の観点から、多孔質ポリイミド系樹脂膜2を水洗する水洗工程を含むことが好ましい。水洗単独でもよいが、酸洗浄及び/又は水洗を組み合わせてもよい。
(第2焼成工程)
第3の態様に係るポリイミド膜を製造する方法は、上記多孔質ポリイミド系樹脂膜2の表面の有機溶媒への濡れ性向上及び残存有機物除去の観点から、上記水洗後の上記多孔質ポリイミド系樹脂膜2を焼成する第2焼成工程を含むことが好ましい。第2焼成工程の焼成条件は、第1焼成工程における焼成条件と同様であり、適宜設定すればよい。
第3の態様に係る製造方法で作製した多孔質ポリイミド膜の全体の膜厚は特に限定されるものではないが、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることが更に好ましく、10μm以上30μm以下が特に好ましい。上記の膜厚は、ポリイミド−微粒子複合膜の測定時と同様、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。
多孔質ポリイミド膜は、例えば平均空孔径が100〜5000nmの多孔質ポリイミド膜として得ることができ、平均空孔径は、好ましくは200〜3000nm、より好ましくは300〜900nmである。本明細書において、平均空孔径は、ケミカルエッチング処理を行ったものはポロメーターにより平均の連通孔のサイズ変化量を求め、その値から実際の平均空孔径を求める値であるが、上述のケミカルエッチングを行わないものは、多孔質ポリイミド膜の製造に使用した微粒子の平均粒径を平均空孔径とすることができる。
多孔質ポリイミド膜は、後述の方法により求める空隙率が例えば50〜90質量%、好ましくは、55〜80質量%である多孔質ポリイミド膜として得ることができる。
多孔質ポリイミド膜製造用ワニスから作成される層の厚さは、好ましくは4.3μm以上500μm以下であり、より好ましくは4.5μm以上99.7μm以下であり、更により好ましくは5μm以上29.7μm以下である。上記プリベーク工程において、上記未焼成複合膜とは異なる下層膜上に上記未焼成複合膜を成膜する場合、下層膜から形成される層の厚さは、好ましくは0.3μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上4μm以下であり、更により好ましくは0.5μm以上3μm以下である。各層の厚さは、多孔質ポリイミド膜断面の複数箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察して平均して算出することができる。
<フィルタ、上記フィルタを備えたフィルターメディア又はフィルターデバイスを製造する方法>
第4の態様に係るポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法は、上記ポリイミド膜が、第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造される方法である。
製造されたフィルタはガス又は液体の分離用膜として使用できる。
第5の態様に係るポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターメディアを製造する方法は、上記ポリイミド膜が第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造される方法である。
製造されたフィルターメディアは、例えば半導体製造分野において用いられる金属フィルター等のフィルターメディアとして使用することができ、また、該フィルターメディアと他の濾材とを含む積層体としても使用することができ、フィルターデバイスとしても使用することができる。
第6の態様に係るポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスを製造する方法は、上記ポリイミド膜が、第3の態様のポリイミド膜を製造する方法により製造される方法である。
製造されるフィルターデバイスとしては特に限定されないが、フィルターデバイスにおいて、ポリイミド膜は、供給液と濾過液とが交差するように配置される。液体流路との関係においては、流路と並行に配置してもよいし交差するように配置してもよい。供給液が濾過液と分離されるように、ポリイミド膜を通液する前後の領域は、適宜シーリングされる。例えば、シーリングの方法として、ポリイミド膜を、必要に応じて、光(UV)硬化による接着若しくは熱による接着(アンカー効果による接着(熱溶着等)を含む))、若しくは接着剤を用いた接着等により加工してもよく、又はポリイミド膜と他の濾材(フィルタ)とを例えば組み込み法等により接着して用いることができ、これらのポリイミド膜を更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂等からなる外側容器に備えて用いることができる。
第4〜6の態様に係る製造方法において、第1の態様に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液は、フィルタ製造用、フィルターメディア製造用、又はフィルターデバイス製造用のポリイミド系樹脂膜洗浄液として使用される。
<リソグラフィー用薬液の製造方法>
本発明の第7の態様に係るリソグラフィー用薬液の製造方法は、
第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を、ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスに通過させた後、上記フィルターデバイスに被処理リソグラフィー用薬液を通過させることを含む。
第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を上記フィルターデバイスに通過させる方法としては、フィルター中に存在する全ての微細孔が、第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液で完全に満たされた状態にしてもよいし、そうでなくてもよい。さらに減圧下を保持した状態で、第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液を通過させてもよい。
被処理リソグラフィー用薬液としては、半導体デバイスの製造工程において用いられる薬液が挙げられ、例えば、基板を改質するための保護膜形成用薬液、シリコンウエハの洗浄液等の薬液、レジスト組成物等の感光性材料を含む薬液、及び樹脂溶液等の感光性材料の原料薬液、化学増幅型レジスト膜のパターニング用の現像液やリンス液(中でも有機溶媒を含む有機系現像液又は有機系リンス液)等が挙げられる。なお、被処理リソグラフィー用薬液として、第1の態様のポリイミド系樹脂膜洗浄液と同一の薬液を対象にする場合、洗浄作業とリソグラフィー用薬液の製造は連続して行われてもよいし、断続的に行ってもよいが、洗浄液として用いられた部分は、リソグラフィー用薬液に含まれないことが好ましい。
本発明の第7の態様に係るリソグラフィー用薬液の製造方法によれば、塗布欠陥及びパターン欠陥の発生が低減されるリソグラフィー用薬液を製造することができる。例えば、(P1)化学増幅型レジスト組成物により膜を形成する工程、(P2)該膜を露光する工程、及び(P3)露光した膜を、有機系現像液を用いて現像する工程、さらに任意で(P4)有機系リンス液を用いてリンスする工程を含むパターン形成方法において、有機系現像液及び/又は有機系リンス液として、本発明の第7の態様に係る製造方法に係るリソグラフィー用薬液を使用すれば、微細化パターンの形成において問題視されやすいパーティクルの発生を抑制できると考えられる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<参考例>多孔質ポリイミドフィルムの形成
以下に示すテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミド酸、有機溶剤、分散剤及び微粒子を用いた。なお、シリカ(1)の粒径分布指数は約3.3であり、シリカ(2)の粒径分布指数は約1.5である。
・テトラカルボン酸二無水物:ピロメリット酸二無水物
・ジアミン:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・ポリアミド酸溶液:ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの反応物(固形分21.9質量%(有機溶剤:N,N−ジメチルアセトアミド))
・有機溶剤(1):N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)
・有機溶剤(2):ガンマブチロラクトン
・分散剤:ポリオキシエチレン二級アルキルエーテル系分散剤
・微粒子:シリカ(1):平均粒径700nmのシリカ
シリカ(2):平均粒径300nmのシリカ
・エッチング液(1):メタノール:水(質量比3:7)の混合液のNaOH 1.1質量%溶液
(シリカ分散液の調製)
有機溶剤(1)23.1質量部及び分散剤0.1質量部の混合物に、シリカ(1)又はシリカ(2)を23.1質量部添加し、撹拌してシリカ分散液を調製した。
(ワニスの調製)
ポリアミド酸溶液41.1質量部に、シリカ分散液の調製で得たシリカ分散液を、42.0質量部添加し、更に有機溶剤(1)及び(2)をワニス全体における溶剤組成が有機溶剤(1):有機溶剤(2)=90:10となるようにそれぞれ追加し、撹拌してワニスを調製した。なお、得られたワニスにおけるポリアミド酸とシリカとの体積比は40:60(質量比は30:70)である。
(未焼成複合膜の成膜)
上記のワニスを、基材としてPETフィルムにアプリケーターを用い成膜した。90℃で5分間プリベークして、膜厚40μmの未焼成複合膜を製造した。水に3分間浸漬したのち、2本のロール間に未焼成複合膜を通して、未焼成複合膜をプレスした。その際、ロール抑え圧は3.0kg/cm、ロール温度は80℃、未焼成複合膜の移動速度は0.5m/minであった。基材から未焼成複合膜を剥離して未焼成複合膜を得た。
(未焼成複合膜のイミド化)
上記未焼成複合膜を340℃15分間加熱処理(焼成)を施すことにより、イミド化させ、ポリイミド−微粒子複合膜を得た。
(ポリイミド多孔質膜の形成)
上記で得たポリイミド−微粒子複合膜を、10%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれる微粒子を除去した後水洗及び乾燥を行い、ポリイミド多孔質膜を得た。
(ケミカルエッチング)
ポリイミド系樹脂除去工程として、ポリイミド多孔質膜をケミカルエッチング液(1)に2分間浸漬してポリイミド系樹脂除去工程を施し、多孔質ポリイミドフィルムを得た。その後、340℃15分再焼成を行った。
<実施例1>
上記得られた40μm厚の多孔質ポリイミドフィルム(300cm)をジメチルアセトアミド及び酢酸n−ブチルの質量比7:3の混合溶剤800gで3回ほど洗浄後に再度、上記混合溶剤で洗い流した後に半導体用メタノールで溶剤置換後に1昼夜真空乾燥した。
得られたフィルムの洗浄度を評価するために、ろ過対象液として酢酸n−ブチルを用い以下の評価を行った。評価中、ろ過(得られたフィルムへの通液)を行わずに、サンプル取得のためにフィルムを浸漬する試験例を比較対照とし(比較例1とする。)、比較例1における不揮発分との重量比較を容易にした。以下、実施例2〜10においても同様である。
得られたフィルムを酢酸n−ブチル800gに1日浸漬した後にフィルムを取り出し、得られた酢酸n−ブチルの溶液を5mLまで濃縮した。得られた溶液の質量を測定したアルミパンへ移し、ホットプレート上にて150°Cで酢酸n−ブチルが完全に蒸発するまで加熱した。酢酸n−ブチルが完全に蒸発した後にアルミパンの質量を測り質量差から定量した溶出物は0.26mgであった。
<実施例2>
ジメチルアセトアミド及び2−ヘプタノンの質量比6:4の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.46mgであった。
<実施例3>
ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量比6:2:2の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.55mgであった。
<実施例4>
ジメチルアセトアミド及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量比3:7の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.76mgであった。
<実施例5>
ジメチルアセトアミド及び酢酸n−ブチルの質量比3:7の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.56mgであった。
<実施例6>
ジメチルアセトアミド800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.51mgであった。
<実施例7>
ジメチルホルムアミド800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.48mgであった。
<実施例8>
ジメチルホルムアミド及び乳酸エチルの質量比7:3の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.57mgであった。
<実施例9>
N−メチルピロリドン及びシクロヘキサノンの質量比8:3の混合溶剤800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.73mgであった。
<実施例10>
2−ヘプタノン800gを用いた以外は実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ0.62mgであった。
<比較例1>
40μm厚の多孔質ポリイミドフィルム(300cm)を酢酸n−ブチル800gに1日浸漬した後に上記フィルムを取り出し、実施例1と同様の手順で溶出物を定量したところ1.50mgであった。
アルミパンをフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Nicolet6700、サーモ社製)の全反射測定法(ATR)で測定したところポリイミド(アミド酸を含む。)のカルボニル基由来のピーク1728cm−1が検出され、溶出物がポリイミドのポリマーの低分子量領域であると推察される。
上記実施例1〜10及び比較例1の結果を表1にまとめる。
Figure 2017202479
表1に示した結果から明らかなように、本発明の洗浄液を使用しない比較例1に比べ、本発明の洗浄液を使用した実施例1〜10は溶出物が低減していることが分かる。
また、(A)非プロトン性極性溶媒と、脂肪族カルボン酸エステル又は鎖状若しくは環状ケトンとの混合溶剤である実施例1、2の洗浄剤が溶出物の低減が優れていることが分かる。
(フィルターデバイス中の膜洗浄評価及びろ過評価)
ウエハ表面欠陥評価には、表面欠陥観察装置(KLAテンコール社製、製品名:KLA2371)を用いた。
(フィルターデバイス)
上記多孔質ポリイミドフィルムの形成と同様の製法により得られる膜厚40μm、空隙率約70質量%、平均空孔径300nmのポリイミド多孔質膜を備える、フィルターデバイスを用意した。
上記空隙率は、多孔質ポリイミドフィルムの製造において使用したポリイミド樹脂とシリカ微粒子との合計質量に対する、シリカ微粒子の質量を空隙率(質量%)とした。
以下、フィルターデバイス中のポリイミド多孔質膜について、本発明に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液で洗浄される前のポリイミド多孔質膜をPI多孔質膜Aという。
膜厚70μmのポリアミド(ナイロン)製多孔質膜(孔サイズ:約20nm)を備えるフィルターデバイス(Pall社製、Dispo)を用意した。
<実施例11>
PI多孔質膜Aを備えるフィルターデバイスに対し、シクロヘキサノンを洗浄液として、室温で濾過圧1.0kgf/cm(9.8N/cm)の条件で、12L通液して洗浄処理を行った。通液される最後の100mlをサンプル取得し、ウエハに塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
なお、サンプル取得するための上記最後の約100mlの通液以外の通液を行わない(すなわち、約100mlのみ通液する)試験例を比較対照とした(比較例2とする。)。以下、比較例3及び4並びに実施例12及び13においても同様である。
<比較例2>
PI多孔質膜Aを備えるフィルターデバイスを用いて、室温で濾過圧1.0kgf/cm(9.8N/cm)の条件でシクロヘキサノン約100mlを通液した。フィルターデバイス通液後のサンプル約100mlをウエハに塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
<比較例3>
ポリアミド(ナイロン)製多孔質膜(孔サイズ:約20nm)を備えるフィルターデバイスを用いる他は、比較例2と同様にして、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
<比較例4>
ポリアミド(ナイロン)製多孔質膜(孔サイズ:約20nm)を備えるフィルターデバイスを用いる他は、実施例11と同様にして、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
<実施例12>
PI多孔質膜Aを備えるフィルターデバイスに対し、シクロヘキサノンを洗浄液として、フィルターデバイス内を満たした状態で3日間保持してから、さらに室温で濾過圧1.0kgf/cm(9.8N/cm)の条件で、10L通液して洗浄処理を行った。通液される最後の100mlをサンプル取得し、ウエハに塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
<実施例13>
洗浄液を酢酸n−ブチルとした他は、実施例12と同様にして、ウエハ表面の欠陥評価を行った。
ウエハ表面の欠陥評価の結果について、表2に記載する。なお、欠陥の数値は比較例3の数値を100とした相対数値である。
Figure 2017202479
表2に示した結果から明らかなように、本発明に係るポリイミド系樹脂膜洗浄液は、ポリイミド多孔質膜を備えるフィルターデバイスの洗浄にも効果的であると確認できた。洗浄後のフィルターデバイスは、ケトン系溶媒であるシクロヘキサノンやエステル溶媒の酢酸n−ブチルの精製にも適していることからこれらの精製溶媒を、化学増幅型レジスト膜のパターニング用の有機系現像液や有機系リンス液等として使用した場合に、微細化パターンの形成において問題視されやすいパーティクルの発生を抑制できると考えられる。
<実施例14〜15及び比較例5>
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位50モル%とp−メトキシベンジルシルセスキオキサン単位22モル%とフェニルシルセスキオキサン単位28モル%とからなる共重合体(質量平均分子量7000)を100質量部と、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネートを3質量部、1,3,4,6−テトラキス(n−ブトキシメチル)グリコールウリル5質量部とを、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート300質量部に溶解することにより反射防止膜形成用組成物を調製した。この組成物を、実施例12〜13の洗浄処理後のフィルターデバイス(実施例14〜15)及びポリエチレン製多孔質膜(孔サイズ:約20nm)を備えるフィルターデバイス(比較例5)にそれぞれ通液した。通液後の組成物をそれぞれシリコンウエハ上に塗布し、100℃で90秒、続いて230℃で90秒の条件下で2段階で加熱処理を行うことにより、厚さ約70nmの反射防止膜を形成させ、表面欠陥を観測した。その結果、比較例5と比較して、実施例14〜15の欠陥数は低減されていた。

Claims (15)

  1. ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、並びにこれらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶剤を含むポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  2. (A)下記(B)溶剤以外の非プロトン性極性溶媒と、
    (B)ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つの溶剤と
    を含む、請求項1記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  3. 前記(B)溶剤は、炭素原子数5〜7の化合物である、請求項1又は2記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  4. 前記(B)溶剤は、乳酸エチル、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項3記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  5. 前記非プロトン性極性溶媒は、下記一般式(s)で表されるアミド構造を有する溶剤、及び、アルキルスルフィニルアルカンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1〜4の何れか1項記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
    Figure 2017202479
    (式中、R及びRは同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、又は−NRで表される基を示す。R及びRは同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRは組み合わさって環を形成していてもよい。)
  6. 前記非プロトン性極性溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,1,3,3−テトラメチルウレア及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項5記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  7. 前記ポリイミド系樹脂膜は、未焼成複合膜及び/又は多孔質膜である、請求項1〜6の何れか1項記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液。
  8. ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂を含有するポリイミド系樹脂膜に請求項1〜7の何れか1項記載のポリイミド系樹脂膜洗浄液を接触させることにより、前記ポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法。
  9. 前記ポリイミド系樹脂膜は、フィルターデバイスに含まれている、請求項8記載の方法。
  10. ポリイミド膜を製造する方法であって、
    前記方法は、請求項8又は9記載のポリイミド系樹脂膜を洗浄する方法による洗浄工程を含む、方法。
  11. 前記ポリイミド膜を製造する方法は、更に、
    ポリアミド酸及び/又はポリイミドからなる樹脂と、微粒子と、溶剤とを含有するワニスを用いて塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜をプリベークして未焼成複合膜を得るプリベーク工程と、
    前記未焼成複合膜を焼成してポリイミド−微粒子複合膜を得る第1焼成工程と、
    前記ポリイミド−微粒子複合膜から微粒子を取り除いて多孔質ポリイミド系樹脂膜1とする微粒子除去工程と、
    前記多孔質ポリイミド系樹脂膜の少なくとも一部を除去して多孔質ポリイミド系樹脂膜2を得るポリイミド系樹脂除去工程と、
    前記多孔質ポリイミド系樹脂膜2を水洗する水洗工程と、
    前記水洗後の前記多孔質ポリイミド系樹脂膜2を焼成する第2焼成工程と、
    を前記の順序で含み、
    前記洗浄工程は、前記塗布膜形成工程、前記プリベーク工程、前記第1焼成工程、前記微粒子除去工程、前記水洗工程、及び前記第2焼成工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程の後に行う、請求項10記載の方法。
  12. ポリイミド膜を含むフィルタを製造する方法であって、
    前記ポリイミド膜は、請求項10又は11記載の方法により製造する、方法。
  13. ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターメディアを製造する方法であって、
    前記ポリイミド膜は、請求項10又は11記載の方法により製造する、方法。
  14. ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスを製造する方法であって、
    前記ポリイミド膜は、請求項10又は11記載の方法により製造する、方法。
  15. ヒドロキシ脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、鎖状又は環状ケトン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、並びにこれらの溶剤以外の非プロトン性極性溶媒からなる群より選択される少なくとも1つの溶剤を含むポリイミド系樹脂膜洗浄液を、ポリイミド膜を含むフィルタを備えたフィルターデバイスに通過させた後、前記フィルターデバイスに被処理リソグラフィー用薬液を通過させることを含む、リソグラフィー用薬液の製造方法。

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