以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「パターンシート」は、「パターン板(基板)」や「パターンフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1は本発明の一実施形態による導電性発熱体5の平面図である。図1の導電性発熱体5は、例えば80mm角四方の範囲31に配置された複数の曲線発熱体32を有する発熱体列33を備えている。発熱体列33は、図2に示すように、縦横に複数個ずつ配置することができる。80mmは一例であり、その数値は任意に変更可能である。後述するように、本実施形態では、一つの発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の形状を不規則にしているが、発熱体列33を縦横に配置すると、発熱体列33の単位で各曲線発熱体32が周期的な構造となる。
各曲線発熱体32が周期的な構造となっても、光芒やチラツキが目立たないようにするには、発熱体列33のサイズをある程度以上に大きくすればよいことが知られている。具体的には、発熱体列33の1辺が50mmを超えると、複数の発熱体列33を縦横に配置しても、光芒やチラツキが目立たなくなる。以下では、一例として、発熱体列33の縦横サイズを80mmとした。
発熱体列33に含まれる各曲線発熱体32は、タングステンや銅などの導電性材料からなる線状の電熱線である。各曲線発熱体32の線幅は、例えば5〜20μm、好ましくは7〜10μmである。透明基材上に配置された複数の曲線発熱体32が視認されにくくするには、曲線発熱体32の線幅を15μm以下にするのが望ましい。ただし、線幅が小さくなるほど断線しやすくなるため、断線防止の観点では10μm以上の線幅は確保した方がよい。
図1の各曲線発熱体32は、第1方向xに離間して配置されて、第1方向xに交差する第2方向yに延びている。図1では、第1方向xと第2方向yが互いに直角である例を示しているが、必ずしも直角でなくてもよい。
図1の各曲線発熱体32は、サイン波を基にして其の1周期ごとに周期および振幅を不規則にした、即ち変調した周期曲線の複数本を第2方向yに順に繋げたものである。図1では、基とした(変調前の)周期曲線をサイン波にした例を示しているが、サイン波以外の任意の周期曲線を複数繋げてもよい。なお、周期曲線の種類は任意だが、複数繋げる周期曲線の種類は同じものであり、周期と振幅を1周期ごとに不規則にしている。尚、サイン波(sine wave)は正弦波とも呼称される。図1の如き座標系XYに於いて一般式で表すと、X=Asin{(2π/λ)X+α}となる。ここで、Aは振幅、λは波長(或いは周期、αは位相である。又、サイン波以外の周期曲線としては、楕円関数曲線、ベッセル関数曲線等を挙げることができる。
ここで、不規則とは、周期曲線の周期と振幅が1周期ごとにランダムであり、かつ80mm角四方の範囲31内では、複数の周期曲線の周期と振幅が周期性を持たないことを意味する。また、第1方向xに離隔して配置される複数の曲線発熱体32の周期および振幅も互いに不規則である。
このように、80mm各四方の複数の曲線発熱体32は、第1方向xと第2方向yのいずれにおいても、周期および振幅が不規則である。
図1の左下隅を原点O(0,0)とし、複数の曲線発熱体32の開始点(先頭位置)を、第2方向yの最小座標位置とすると、第1方向xに沿って離隔して配置される複数の曲線発熱体32の第2方向yの開始位置は、不規則になっている。これは、複数の曲線発熱体32の位相が不規則にずれていることを示している。
複数の曲線発熱体32の位相を不規則にずらす理由は以下の通りである。例えば、複数の曲線発熱体32の開始点がいずれも第2方向yの座標位置y=0であったとすると、座標位置y=0においては、複数の曲線発熱体32の振幅がいずれもゼロになる。よって、80mm四方の発熱体列33を第1方向xおよび第2方向yに複数個ずつ並べて配置したとすると、各発熱体列33の単位で、複数の曲線発熱体32の振幅がいずれもゼロになる箇所が周期的に出現してしまい、この箇所が光芒やチラツキの要因になるおそれがある。
そこで、本実施形態では、80mm角四方の発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の第2方向yの最小座標位置を不規則にずらして、複数の曲線発熱体32の位相をランダム化している。
このように、本実施形態では、例えば80mm角四方の範囲31で、複数の曲線発熱体32の周期と振幅を第1方向xと第2方向yのいずれにおいても不規則にするため、各曲線発熱体32で反射された反射光同士が干渉を起こすおそれが少なくなり、光芒を抑制できる。また、各曲線発熱体32は蛇行しており、しかも蛇行の大きさが不規則であるため、各曲線発熱体32で反射された反射光の進行方向も不規則になり、特定方向に強いチラツキを感じさせるおそれが少なくなる。
本実施形態では、例えば80mm角四方の発熱体列33を単位として、熱ムラの対策も行っている。
一般に、曲線発熱体32は、カーブが緩やかなほど、すなわち直線に近いほど発熱効率が高くなる。よって、発熱効率を向上させる観点からは、曲線発熱体32の周期を長くして、かつ振幅を小さくするのが望ましい。一方、光芒やチラツキを防止する観点からは、曲線発熱体32の周期を短くして、かつ振幅を大きくするのが望ましい。両者は相反する条件であることから、発熱効率と、光芒およびチラツキ防止との双方を考慮に入れて、曲線発熱体32の周期と振幅を設定するのが望ましい。
仮に、光芒とチラツキ防止のみを念頭に置いて、80mm角四方の複数の曲線発熱体32の周期と振幅を設定したとすると、80mm角四方の範囲31内で、部分的に発熱量が多い箇所と少ない箇所が出現して、熱ムラが生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、80mm角四方の範囲31内における第2方向yの直線距離(=80mm)に対する第2方向yの各曲線発熱体32の長さの比率が所定の上限と下限の間の範囲内になるようにしている。本発明者の検討によると、熱ムラが起きず、かつ光芒とチラツキも実用上問題無い程度に抑制できる比率の上限は1.5、下限は1.0であった。
このことから、本実施形態では、80mm角四方における各曲線発熱体32の最短距離に対する各曲線発熱体32の長さの比率を、1.0より大きく、かつ1.5にした。この比率を維持しつつ、80mm角四方における複数の曲線発熱体32の周期および振幅を不規則にし、かつ、複数の曲線発熱体32の第2方向yの開始点座標位置を不規則にすることで、光芒とチラツキも有効に防止できる。
曲線発熱体32の長さLは、曲線発熱体32の第2方向yの開始点座標をy0、終了点座標をy1、曲線発熱体32の第2方向yの両端点間の最短距離をDとすると、比率は、以下の(1)式で表される範囲内に収める必要がある。
なお、本発明者のさらなる検討によると、発電効率の低下をできるだけ防止して、かつ熱ムラを生じさせずに、光芒とチラツキをより抑制できる上述した比率は、下限が1.01、上限が1.15であることがわかった。すなわち、比率の最適範囲は、以下の(2)式で表されることがわかった。
本発明に於いて、最短距離とは、曲線発熱体32の第2方向yの両端点間を結ぶ幾何学上の測地線の長さを意味する。透明基材11が平板であり其の上に存在する曲線発熱体32が平面上に存在する場合は、測地線は直線となる。又、透明基材11が表面が球面となった彎曲板であり其の上に存在する曲線発熱体32も球面上に存在する場合は、測地線は該球面の大円となる。
尚、一般の曲面上に曲線状発熱体32が存在する場合は、該曲面上に存在する下記微分方程式(3)を満たす微分可能な曲線xi(p)が、測地線となる。
ここで、Γi jkはアフィン接続係数である。又、x1=x、x2=yは座標、pは測地線の始点からの長さを表わす弧長パラメータである。例えば、該曲面が平面である場合は、式(3)は通常の直線の方程式となる。
また、曲線発熱体32の線幅が細くなるほど、曲線発熱体32が視認されにくくなり、窓ガラス等に組み込む際には好ましいが、その一方で、断線しやすくなる。そこで、本実施形態では、第2方向yに隣接する2本の曲線発熱体32同士をバイパス発熱体34で接続してもよい。バイパス発熱体34は、各曲線発熱体32に同じ数ずつ接続されている。
また、バイパス発熱体34の配置場所が周期的であると、光芒やチラツキの要因になり得るため、バイパス発熱体34の配置場所は不規則に設定されている。さらに、バイパス発熱体34が熱ムラの要因にならないように、バイパス発熱体34は80mm各四方の範囲31内で発熱体列33に均等に配置されている。
発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の周期および振幅は、コンピュータを用いて自動的に生成することが可能である。図3は発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32を自動生成する発熱体生成装置41の概略構成を示すブロック図である。図3の発熱体生成装置41は、パラメータ取得部42と、曲線発熱体生成部43と、正規化部44と、熱ムラ判定部45と、曲線発熱体記憶部46と、発熱体群生成部47と、位相調整部48と、発熱体列記憶部49とを備えている。
図3の発熱体生成装置41は、コンピュータにより実行可能なソフトウェアとして実現可能である。あるいは、図3の発熱体生成装置41内の少なくとも一部の構成部分をハードウェアで実現してもよい。すなわち、図3の発熱体生成装置41は、必ずしも1台のコンピュータで実現されるとは限らない。
パラメータ取得部42は、複数の曲線発熱体32の形状の特徴を表す種々のパラメータからなるパラメータ群を取得する。パラメータ取得部42は、パラメータ群を予めデータベース等に記憶しておき、その中から必要なパラメータを取得してもよいし、操作者がキーボードやマウス等で入力または選択した各パラメータを取得してもよい。
パラメータ群に含まれるパラメータの一例として、例えば、下記の1)〜7)が考えられる。
1)第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32の最小距離と最大距離。
2)各曲線発熱体32の振幅の最小値と最大値。
3)各曲線発熱体32の周期の最小値と最大値。
4)各曲線発熱体32の位相の最小値と最大値。
5)第2方向yの発熱体列33の最小距離に対する各曲線発熱体32の長さの比率の最小値と最大値。
6)発熱体列33の第1方向xの長さと第2方向yの長さ。
7)発熱体列33に含まれる曲線発熱体32の数。
曲線発熱体生成部43は、第2方向yに延びる一本の曲線発熱体32を生成する。より具体的には、曲線発熱体生成部43は、各周期ごとに周期および振幅を不規則にした複数の周期曲線を第2方向yに繋げて、一本の曲線発熱体32を生成する。
正規化部44は、曲線発熱体生成部43で生成した曲線発熱体32の第2方向yの両端部間の最短距離を80mmに合わせるべく、曲線発熱体32に含まれる複数の周期曲線の周期を調整する。
熱ムラ判定部45は、正規化部44で正規化した曲線発熱体32の第2方向yにおける全長を、この曲線発熱体32の両端部間の最短距離で割った比率が所定の範囲内に収まっているか否かを判定する。所定の範囲とは、例えば、比率が1.0より大きく、かつ1.5以下の範囲である。
熱ムラ判定部45にて、比率が所定の範囲内でないと判定されると、曲線発熱体生成部43にて、再度、曲線発熱体32を生成し直す。曲線発熱体記憶部46は、比率が所定の範囲内であると判定された曲線発熱体32を記憶する。
発熱体群生成部47は、80mm角四方の範囲31内に含まれる複数の曲線発熱体32を生成する。より具体的には、発熱体群生成部47は、曲線発熱体生成部43、熱ムラ判定部45および単位圧発熱体記憶部と連携して、80mm角四方の範囲31内で第1方向xに離間して配置される複数の曲線発熱体32を生成する。
位相調整部48は、発熱体群生成部47が生成した複数の曲線発熱体32の位相を不規則にする処理を行う。より具体的には、位相調整部48は、80mm角四方の範囲31内で、複数の曲線発熱体32の第2方向yの開始位置(先頭位置)を不規則にする。発熱体列記憶部49は、位相調整部48で位相を不規則にした複数の曲線発熱体32を記憶する。
図4は図3の発熱体生成装置41の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、80mm角四方の範囲31内の発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32を生成する処理を行う。以下では、曲線発熱体32に含まれる複数の周期曲線がサイン波である例を説明する。
まず、パラメータ取得部42は、上述した1)〜7)のパラメータを取得する(ステップS1)。次に、曲線発熱体生成部43は、サイン波の第2方向yの開始点座標をゼロに設定する(ステップS2)。次に、曲線発熱体生成部43は、サイン波の第1方向xの開始点座標をゼロに設定する(ステップS3)。そして、曲線発熱体生成部43は、取得したパラメータに基づいて、サイン波の周期と振幅をランダムに設定して、第2方向yに沿って1周期分のサイン波を生成する(ステップS4)。
次に、曲線発熱体生成部43は、第2方向yの座標位置を、ステップS4で設定した1周期分足し合わせて更新する(ステップS5)。次に、曲線発熱体生成部43は、足し合わせた第2方向yの長さが80mmを超えたか否かを判定する(ステップS6)。まだ、80mmを超えていなければ、ステップS4〜S6の処理を繰り返す。
ステップS6で80mmを超えたと判定されると、正規化部44にて、曲線発熱体32の第2方向yの両端部間の最短距離が80mmになるように、曲線発熱体32に含まれる各サイン波の周期を調整する(ステップS7)。この作業を正規化処理と呼ぶ。正規化処理では、曲線発熱体32に含まれる各サイン波の周期を同じ比率で縮小する。
次に、熱ムラ判定部45は、正規化した曲線発熱体32の第2方向yの全長を、第2方向yの両端部間の最短距離(例えば80mm)で割った比率が所定の範囲内か否かを判定する(ステップS8)。ここでは、例えば、上述した(1)式に基づいて、比率が1.0より大きく、かつ1.5以下であるか否かを判定する。
比率が所定の範囲内でなければ、ステップ2に戻って、曲線発熱体32を生成し直す。
曲線発熱体32の比率が所定の範囲内でない場合に、曲線発熱体32を生成し直す理由は、比率の値が大きく異なる場合には、80mm各四方の発熱体列33を単位として、熱ムラが生じるおそれがあるためである。
ステップS8で、比率が所定の範囲内と判定されると、正規化した曲線発熱体32を曲線発熱体記憶部46に記憶する(ステップS9)。
次に、発熱体群生成部47は、パラメータ取得部42が取得したパラメータに基づいて、第1方向xに1ピッチずらした座標位置を設定する(ステップS10)。1ピッチの大きさは、ステップS1で取得したパラメータにより設定される。
次に、発熱体群生成部47は、第1方向xの長さが、80mmを超えたか否かを判定する(ステップS11)。80mmを超えていなければ、ステップS2以降の処理を繰り返して、新たな曲線発熱体32を生成する。
ステップS11で80mmを超えていると判定されると、位相調整部48は、発熱体列33に含まれる複数の曲線発熱体32の位相を不規則にする調整を行う(ステップS12)。次に、位相調整を行った複数の曲線発熱体32を発熱体列記憶部49に記憶する(ステップS13)。
図4の処理手順で生成した80mm角四方の発熱体列33は、図2に示すように、縦横に任意の数分を並べて配置することで、任意のサイズおよび形状の導電性発熱体5を作製することができる。本実施形態による導電性発熱体5は、種々の目的および用途に利用できるが、以下では、乗物のフロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウなどに本実施形態の導電性発熱体5を組み込んだ例を説明する。
図4のフローチャートでは省略しているが、導電性発熱体5には、図5に示すように、第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32同士を接続するバイパス発熱体34を設けるのが望ましい。バイパス発熱体34は、任意の曲線発熱体32が断線しても、その隣の曲線発熱体32を介して電流を流せるようにしたものである。バイパス発熱体34は、80mm各四方の範囲31内の複数の曲線発熱体32を生成した後に、生成してもよいし、あるいは、第1方向xに隣接する2本の曲線発熱体32が生成された段階で、これら2本の曲線発熱体32を接続するバイパス発熱体34を生成してもよい。
バイパス発熱体34は、曲線発熱体32と同じ線幅(例えば5〜20μm、好ましくは7〜10μm)であり、80mm角四方の発熱体列33において均一な密度で配置される。均一な密度でバイパス発熱体34を配置することで、発熱体列33における熱ムラを防止できる。各曲線発熱体32に接続されるバイパス発熱体34の数は同数であり、かつ第1方向xおよび第2方向yにおいて、バイパス発熱体34の配置場所が不規則になるように配置される。また、バイパス発熱体34の形状は特に問わない。曲線状でもよいし、直線状でもよいし、折れ線形状でもよい。各バイパス発熱体34の形状を変えてもよい。また、少なくとも一部のバイパス発熱体34の延在方向は、任意の方向に揃っていてもよいし、ランダム(不規則)に相違していてもよい。すなわち、各バイパス発熱体4の延在方向は、任意に傾斜していてもよい。
図6は乗用車のフロントウィンドウ2に本実施形態の導電性発熱体5を組み込んだ例を示している。このフロントウィンドウ2は、導電性発熱体5を組み込んだ合わせガラスである。
図6のフロントウィンドウ2は、一対のガラス板3,4と、一対のガラス板3,4の間に配置される導電性発熱体5とを備えている。導電性発熱体5は、2つのバスバー電極(一対の電極)6,7と、これらバスバー電極に接続される複数の波線導電体8とを有する。図6では、各波線導電体8を直線で描いているが、実際には、図1に示すように、各波線導電体8は、周期および振幅が不規則な周期曲線を繋げて構成されている。
より具体的には、複数の波線導電体8は、上述した発熱体列33を複数個組み合わせて形成されている。すなわち、各波線導電体8の両端は2つのバスバー電極6,7に接続されており、各波線導電体8は、図1に示したように、第2方向yに配置された複数の発熱体列33内の各1本の曲線発熱体32を繋げたものである。
図6の例では、2つのバスバー電極6,7は、フロントウィンドウ2の長手方向の両端辺に沿って配置されているが、図7に示すように、フロントウィンドウ2の短手方向の両端辺に沿って2つのバスバー電極6,7を配置し、フロントウィンドウ2の長手方向に沿って複数の波線導電体8を配置してもよい。
図6と図7における各波線導電体8の形状は、不規則であるが、各波線導電体8の基準線(図1の破線32a)の間隔(ピッチ)は略一定であり、基準線同士は略平行である。例えば、各波線導電体8は、フロントウィンドウ2の長手方向の1cm当たり8本以内の本数で配置される。すなわち、波線導電体8のピッチは、0.125cm以上が望ましい。
複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とは、共通の導電材料により一体成形されている。導電材料としては、例えば、導電性に優れてエッチング処理が容易な銅が用いられる。後述するように、本実施形態では、フォトリソグラフィにて、複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とを一体的に形成する。導電性に優れて、かつフォトリソグラフィのエッチングで容易に加工可能な材料であれば、銅以外の導電性材料を用いてもよい。
2つのバスバー電極6,7間に所定の電圧を印加することにより、これらバスバー電極6,7間の複数の波線導電体8に電流が流れ、各波線導電体8の抵抗成分によって、各波線導電体8が加熱される。これにより、一対のガラス板3,4が温められて、これらガラス板に付着した結露による曇りを除去することができる。また、外側のガラス板に付着した雪や氷を溶かすこともできる。よって、乗物内の乗員の視界を良好に確保可能となる。
このように、導電性発熱体5は、デフロスタ電極として機能する。
バスバー電極6,7には、電力損失なく各波線導電体8に電圧を印加する必要があるため、各バスバー電極6,7の短手方向の幅を、各波線導電体8の短手方向の幅よりも大きくしている。本実施形態は、銅の薄膜をエッチング処理してバスバー電極6,7と波線導電体8のパターンを形成するため、バスバー電極6,7用のパターン幅は、波線導電体8用のパターン幅よりも広く形成されている。
2つのバスバー電極6,7に印加される電圧は、例えば図8に示すように、自動車に代表される乗物に搭載されるバッテリ9や電池などから供給される。
複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とが一体成形された導電性発熱体5は、図9に示すように、透明基材11の上に形成されている。この透明基材11は、剥離されずにそのまま、一対のガラス板3,4の間に挟み込まれてもよいし、透明基材11を剥離した導電性発熱体5のみを一対のガラス板3,4の間に挟み込んでもよい。本明細書では、導電性発熱体5が形成された透明基材11を発熱体シート12と呼ぶ。
波線導電体8は、周期および振幅が不規則の複数のサイン波を第2方向yに繋げたものであり、銅箔をエッチング処理して形成されたり、あるいは、導電インキの塗布により形成される。例えば、エッチング処理により波線導電体8を形成すると、波線導電体8の側面は、上面や底面に対して直角に近い角度方向に配置される。このため、側面が平面状であると、側面からの反射光は特定方向に進行することになり、この方向にいる人間に強いチラツキを感じさせることになる。ところが、本実施形態では、波線導電体8を不規則な曲線形状にしているため、その側面も不規則な形状となり、特定方向に強いチラツキを感じさせるおそれがなくなる。
図9は透明基材11上に導電性発熱体5が形成された発熱体シート12を一対のガラス板3,4の間に挟み込んだフロントウィンドウ2の図6のA−A線断面図である。図9の場合、湾曲した一方のガラス板3の上に、接合層(第1の接合層)13を介して、発熱体シート12の透明基材11が接合されている。発熱体シート12の導電性発熱体5の上には、接合層(第2の接合層)14を介して、他方のガラス板4が接合されている。
発熱体シート12の透明基材11と導電性発熱体5はともに十分に薄いため、発熱体シート12自体が柔軟性を備えており、湾曲したガラス板3,4の湾曲形状に沿って発熱体シート12を湾曲させた状態で、ガラス板3,4に安定的に接合することができる。
ガラス板3,4は、特に乗物のフロントウィンドウ2に用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このようなガラス板3,4の材質としては、ソーダライムガラスや青板ガラス等が例示できる。ガラス板3,4は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、ガラス板3,4の可視光透過率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、ガラス板3,4の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、ガラス板3,4は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。
このような厚みであると、強度及び光学特性に優れたガラス板を得ることができる。
ガラス板3,4と、透明基材11上に形成された導電性発熱体5とは、それぞれ接合層13,14を介して接合されている。このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層13,14としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
なお、フロントウィンドウ2等の合わせガラスには、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせガラス1のガラス板3,4、接合層13,14や、透明基材11の少なくとも1つに種々の機能を付与してもよい。例えば、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、偏光機能、防汚機能等が一例として挙げられる。
透明基材11は、導電性発熱体5を支持する基材として機能する。透明基材11は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板であって、熱可塑性樹脂を含んでいる。
透明基材11に主成分として含まれる熱可塑性樹脂としては、可視光を透過する熱可塑性樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂やポリエチレンテレフタレートは、光学特性に優れ、成形性が良いので好ましい。
また、透明基材11は、製造中の導電性発熱体5の保持性や、光透過性等を考慮すると、0.02mm以上0.20mm以下の厚みを有していることが好ましい。
図10は導電性発熱体5の製造工程を示す断面図であり、図1のA−A線方向の断面構造を示している。まず、図10(a)に示すように、透明基材11上に銅の薄膜21を形成する。この薄膜21は、電界銅箔や圧延銅箔、スパッタリング、真空蒸着などにより形成可能である。
次に、図10(b)に示すように、銅の薄膜21の上面をフォトレジスト22で覆う。
フォトレジスト22は、例えば特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層である。この樹脂層は、樹脂フィルムを貼着して形成してもよいし、流動性の樹脂をコーティングすることにより形成してもよい。また、フォトレジスト22の具体的な感光特性は特に限られない。例えば、フォトレジスト22として、光硬化型の感光材が用いられてもよく、若しくは、光溶解型の感光材が用いられてもよい。
続いて、図10(c)に示すように、フォトレジスト22をパターニングして、レジストパターン23を形成する。フォトレジスト22をパターニングする方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、この例では、フォトレジスト22として、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層を用い、公知のフォトリソグラフィー技術を用いてパターニングしている。まず、フォトレジスト22上に、パターン化したい部分を開口したマスク、又は、パターン化したい部分を遮蔽したマスクを配置する。上述したように、マスクには、波線導電体8の長手方向に延びる両端面が蛇行するようなパターンが描かれている。また、場合によっては、波線導電体8の長手方向が全体として蛇行しているようなパターンがマスクに描かれていてもよい。
次に、このマスクを介してフォトレジスト22に紫外線を照射する。その後、紫外線がマスクにより遮蔽された部分、又は、紫外線が照射された部分を現像等の手段により除去する。これにより、パターニングされたレジストパターン23を形成することができる。
なお、マスクを用いないレーザーパターニング法を用いることもできる。
次に、図10(d)に示すように、レジストパターン23の上方からウェットエッチング用のエッチング液を噴射して、レジストパターン23で覆われていない銅の薄膜21をエッチング除去し、レジストパターン23で覆われた領域のみ、銅の薄膜21を残す。次に、図10(e)に示すように、レジストパターン23を剥離することで、複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とが作製される。その後、透明基材11上に形成された複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7は、一対のガラス板3,4に挟み込まれて封止される。
なお、パターニングした銅の薄膜21の表面や、あるいは銅の薄膜21の下面側に、導電性発熱体5の反射率を抑制するための暗色層を形成してもよい。暗色層を形成することで、外光が波線導電体8やバスバー電極6,7の表面に照射された場合の反射光を抑制でき、チラツキの発生をより抑制できる。
バスバー電極6,7を一体成形せずに、複数の波線導電体8のみをフォトリソグラフィにより形成する場合、フォトリソグラフィのエッチング工程で、エッチング液を噴射した際に、波線導電体8の長手方向両端部側が長手方向中央部よりもエッチングがより進行し、波線導電体8の長手方向両端部の幅が細くなりすぎて、バスバー電極6,7と導通しなくなったり、波線導電体8の長手方向両端部の抵抗が異常に高くなったりする。これに対して、本実施形態のように、複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とを一体成形する場合には、複数の波線導電体8の長手方向中央部側から両端部側に流れたエッチング液がバスバー電極6,7でせき止められるため、波線導電体8が全体として均一にエッチング液に浸漬され、波線導電体8の長手方向両端部がより多くエッチング除去される等の不具合が起きなくなる。
また、本実施形態では、複数の波線導電体8と2つのバスバー電極6,7とをフォトリソグラフィにより一体成形するため、先にフォトリソグラフィで複数の波線導電体8を形成し、その後、別体のバスバー電極6,7を波線導電体8に接合する場合と比べて、波線導電体8とバスバー電極6,7との接触性が向上し、波線導電体8とバスバー電極6,7との接合部での電力損失が少なくなり、発熱効率が向上する。
図10の製造工程により作製された発熱体シート12は、湾曲した一対のガラス板3,4の間に配置される。より詳細には、一方のガラス板3、接合層13、発熱体シート12、接合層14、ガラス板4の順に重ね合わせて、加圧しながら加熱することで、合わせガラスが作製される。
上述した図10の製造工程は、透明基材11上にエッチング等により波線導電体8等を形成した後に一対のガラス板3,4で封止して合わせガラスを形成する例を示したが、一対のガラス板3,4間に透明基材11も含まれることになり、一対のガラス板3,4間の層数が増えてしまい、厚みが増えて重量が増すとともに、各層の光学特性の相違により視認性が低下するおそれもある。さらには、透明基材11を含むことで、熱の伝達特性も低下する。また、一対のガラス板3,4は、図9のように湾曲しているため、透明基材11にしわが生じるおそれもある。
そこで、図11に示すように、透明基材11上に剥離層15を介してバスバー電極6,7と波線導電体8を含む導電性発熱体5を形成した発熱体シート12を作製し、この発熱体シート12を一方のガラス板に貼り付けた後に、透明基材を剥離し、その後に他方のガラス板を張り付けてもよい。図12〜図15は図11の発熱体シート12を用いた合わせガラスの製造工程の一例を示す断面図である。
まず、発熱体シート12に、発熱体形成面側(図12の上側)から、接合層14及びガラス板4を積層し、その後、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を接合して第1中間部材17を作製する。例えば、発熱体シート12に接合層14及びガラス板4を積層したものをオートクレーブ装置へ搬入し、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を加熱・加圧し、オートクレーブ装置から取り出すようにすることができる。この場合、発熱体シート12、接合層14及びガラス板4を加熱・加圧する前に、オートクレーブ装置内を減圧するようにすると、接合層14内や、接合層14と発熱体シート12との界面、接合層14とガラス板3との界面に、気泡が残留することを抑制することができる。
これにより、図12に示されているように、透明基材11、剥離層15、導電性発熱体5、接合層14及びガラス板4が積層された第1中間部材17が得られる。この第1中間部材17の接合層14は、第1の面14a及び第2の面14bを有しており、導電性発熱体5が、接合層14の第1の面14aに少なくとも部分的に埋め込まれている。図示された例では、導電性発熱体5は、接合層14の第1の面14aの側から接合層14内に完全に埋まり込んでいる。結果として、導電性発熱体5間の隙間を介して、接合層14が剥離層15に面接触している。さらには、接合層14は、発熱体の33内に露出している剥離層15の全域に面接触している。
なお、図12〜図16に示した例では、図示の簡略化のためにガラス板3、4を平らなもので示しているが、実際には、図9と同様に湾曲している。第1中間部材17はガラス板4に接合されるため、第1中間部材17もガラス板4の形状に合わせて湾曲した形状となる。
次に、図13に示されているように、第1中間部材17の発熱体シート12の透明基材11を除去して、第2中間部材18(合わせガラス用中間部材)を作製する。図13に示された例において、発熱体シート12の透明基材11を、剥離層15を用いて第1中間部材17から剥離し、第1中間部材17から除去する。剥離層15として、透明基材11との密着性と比べて、接合層14及び導電性発熱体5との密着性が相対的に低い層を有する界面剥離型の剥離層15を用いた場合、剥離層15と接合層14及び導電性発熱体5との間で剥離される。この場合、剥離層15が、接合層14と導電性発熱体5側に残らないようにすることができる。すなわち、透明基材11は、剥離層15とともに、第1中間部材17から除去される。このようにして透明基材11及び剥離層15が除去された第1中間部材17において、導電性発熱体5間の隙間内に、接合層14が露出するようになる。
その一方で、剥離層15として、接合層14及び導電性発熱体5との密着性と比べて、透明基材11との密着性が相対的に低い界面剥離型の剥離層15を用いた場合には、剥離層15と透明基材11との間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、複数層のフィルムを有し、接合層14及び導電性発熱体5や、透明基材11との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い層間剥離型の剥離層15を用いた場合には、当該複数層間で剥離が生じるようになる。一方、剥離層15として、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた凝集剥離型の剥離層15を用いた場合には、剥離層15内での凝集破壊による剥離が生じる。
第2中間部材18においても、接合層14は、第1の面14a及び第2の面14bを有しており、導電性発熱体5が、接合層14の第1の面14aに少なくとも部分的に埋め込まれている。
以上のようにして製造された合わせガラス10を図14に示す。合わせガラス10は、一対のガラス板3,4と、一対のガラス板3,4の間に配置され、一対のガラス板3,4を接合する接合層14と、接合層14と一対のガラス板3,4の一方との間に配置された導電性発熱体5と、を有している。この合わせガラス10は、上述したように、発熱体シート12を用いて製造することができる。発熱体シート12の導電性発熱体5は、種々の材料および種々の方法を用いて、透明基材11上に作製することができ、さらに、所望のパターンを高精度に付与することもできる。したがって、導電性発熱体5を構成する波線導電体8での光の拡散や回折による視認性への悪影響を低減させることが可能となる。また、導電性発熱体5と一対のガラス板3,4の一方とが接触しているので、導電性発熱体5によるガラス板3,4の加熱効率を上げることができる。さらに、合わせガラス10内の界面数を低減することができ、且つ、合わせガラス10全体の厚みを小さくすることができる。したがって、光学特性の低下すなわち視認性の低下を抑制することができる。加えて、合わせガラス10全体の重量を軽くすることができ、車両の燃費改善に寄与する。
また、図示した発熱体シート12は、ガラス板3,4と面接触している。このような合わせガラス10では、発熱体シート12によるガラス板11の加熱効率を一層上げることができる。
また、図14の合わせガラス10では、湾曲したガラス板3,4と発熱体シート12との間に透明基材11が存在しないので、一対のガラス板3,4が湾曲していても、接合層14及び導電性発熱体5がガラス板3,4の湾曲に追従しやすくなる。すなわち、透明基材11が,一対のガラス板3,4間でしわを発生させてしまうといった不具合を解消することができる。
また、図12〜図14に示した製造方法は、透明基材11と、透明基材11上に設けられた剥離層15と、剥離層15上に設けられた導電性発熱体5と、を有する発熱体シート12に、導電性発熱体5の側から、接合層14を介してガラス板4を接合する工程と、透明基材11を除去する工程と、接合層14に、ガラス板4に対面する側とは反対の側から、他のガラス板3を接合する工程と、を有する。この例では、透明基材11を第1中間部材17から剥離する際に、接合層14及び導電性発熱体5がガラス板4に保持されているので、透明基材11の剥離が容易となる。また、発熱体シート12への接合層14及びガラス板4の接合を一度に行うので、工程数を削減できる利点がある。
なお、上述のように、剥離層15として、接合層14及び発熱体シート12との密着性と比べて、透明基材11との密着性が相対的に低い界面剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層15と透明基材11との間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、複数層のフィルムを有し、接合層14及び発熱体シート12や、透明基材11との密着性と比べて、当該複数層間相互の密着性が相対的に低い層間剥離型の剥離層を用いた場合には、当該複数層間で剥離が生じるようになる。剥離層15として、連続相としてのベース樹脂中に分散相としてのフィラーを分散させた凝集剥離型の剥離層を用いた場合には、剥離層15内での凝集破壊による剥離が生じる。これらの剥離層15を用いた場合、剥離層15を用いて透明基材11が除去された第2中間部材18において、剥離層15の少なくとも一部が接合層14及び発熱体シート12側に残る。したがって、波線導電体8間の隙間内に、接合層14が露出していない状態が生じる。この場合、第2中間部材18にガラス板11を積層する際、第2中間部材18とガラス板11との間に更なる接合層13を設けることが、ガラス板11の確実な接合を確保する上で、好ましい。この場合、接合層14及び発熱体シート12側に残った剥離層15は、発熱体シート12を支持する支持層19となる。その結果得られる合わせガラス10は、図15に示すように、一対のガラス板11,12と、一対のガラス板11,12の間に配置された一対の接合層14,13と、一対の接合層14,13の間に配置された支持層19と、一対の接合層14,13の一方と支持層19との間に配置され、支持層19に支持された発熱体シート12と、を有するようになる。
上述したように、本実施形態による曲線発熱体32は、各曲線発熱体32の第2方向yにおける全長を、各曲線発熱体32の両端部間の最短距離で割った比率を、1.01以上で、かつ1.15以下の範囲に設定している。発熱体シート12内の各曲線発熱体32の比率が上述した範囲に含まれるか否かは、例えば、図16の処理手順にて判断できる。
まず、対象となる発熱体シート(以下、対象物)内の発熱体の外観を2次元スキャナで撮像する(ステップS21)。次に、撮像した画像データの中から個々の発熱体を抽出し、抽出した発熱体上の任意の2点を選択する(ステップS22)。このとき、2点間の距離は30cm以上とする。次に、2点を結ぶ最短距離を検出する(ステップS23)。次に、2点間の発熱体の線幅を最小化(細線化)する(ステップS24)。次に、細線化した発熱体の形状に沿って、2点間の距離を検出する(ステップS25)。次に、ステップS25で検出した距離をステップS23で検出した最短距離で割った比率を求める(ステップS26)。次に、ステップS26で求めた比率が上述した範囲内か否かを判定する(ステップS27)。これにより、比較的容易に、対象物内の発熱体の比率が上述した範囲内か否かを判定できる。
このように、本実施形態では、導電性発熱体5における各曲線発熱体32の第2方向yにおける全長を、各曲線発熱体32の両端部間の最短距離で割った比率が、1.01より大きく、かつ1.15以下に設定する。これにより、各曲線発熱体32の全長が抑えられて、発電効率がよくなる。また、複数の曲線発熱体32を含む発熱体列33の範囲内では熱ムラを確実に抑制できる。
さらに、本実施形態では、各曲線発熱体32を構成する複数の周期曲線の周期および振幅を、一周期ごとに不規則にするため、光芒およびチラツキが目立ちにくくなる。さらに、各曲線発熱体32の第2方向yにおける開始位置座標も不規則にずらすため、複数の曲線発熱体32を含む発熱体列33を複数個並べても、光芒やチラツキが目立ちにくくなる。
尚、以上で説明した実施形態に於いては、透明基材11は表面が平面となった平板を用い、合わせガラスの用途は乗物の窓とした。
但し、本発明は、これに限定されるわけでは無く、本発明の主旨を逸脱し無い範囲内で様様な変形形態とすることが可能である。
透明基材11は平面では無く表面が曲面となった彎曲板とすることが出來る。彎曲面の曲率半徑は、通常の自動車のフロントウィンドウの場合では、1例として、曲率半徑を水平方向で4m、鉛直方向で1mとすることが出来る。
又、導電発熱体及び合わせガラスの用途は、 自動車のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。又、自動車以外の、鉄道車輛、航空機、船舶、宇宙船等の乗り物の窓或いは透明な扉に用いてもよい。
更に、乗り物以外にも、建物の室内と室外とを区画する箇所、例えば店舗、住宅、事務所、病院等の窓或いは透明な扉等に使用することもできる。