以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料等の試料と各検査項目の試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する分析部23を備えている。分析部23は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットからなり、これらのユニットを駆動する駆動部40を備えている。また、駆動部40を制御して分析部23の各ユニットを作動させる分析制御部50を備えている。
また、自動分析装置100は、分析部23で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成するデータ処理部70を備えている。また、データ処理部70で生成された検量データや分析データを出力する出力部80を備えている。
また、自動分析装置100は、検査項目毎に測定に必要な試料及び試薬の量等の分析パラメータを設定する入力、空気中の所定の成分が混入して試薬が汚染される検査項目毎に当該試薬を計測する計測パラメータを設定する入力、分析部23を立ち上げるスタートアップを実行させる入力、検量データを生成するキャリブレーションを実行させる入力、分析データを生成する検査を実行させる入力等を行う操作部90を備えている。また、分析制御部50、データ処理部70及び出力部80を制御するシステム制御部91を備えている。
図2は、分析部23の構成を示した斜視図である。この分析部23は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。また、複数の試薬容器6を格納し、試薬容器6に収容されている試薬を保冷する試薬庫1を備えている。試薬容器6は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬、例えば1試薬系及び2試薬系の第1試薬等を収容する。試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aを備えている。また、複数の試薬容器7を格納し、試薬容器7に収容されている試薬を保冷する試薬庫2を備えている。試薬容器7は、各検査項目の2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬等を収容する。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aを備えている。
また、円周上に配置された複数の反応容器3と、この反応容器3を回転移動可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
また、分析部23は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応容器3内へ吐出する分注を行う試料分注プローブ16を備えている。また、試料分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持する試料分注アーム10を備えている。また、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる試料分注ポンプユニット16aを備えている。また、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に試料分注プローブ16が接触することにより当該液面を検出する試料液面検出器16bを備えている。また、試料分注プローブ16の洗浄が行われる洗浄槽16cを備えている。
また、分析部23は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の第1試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の第1試薬を、試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14を備えている。また、第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する第1試薬分注アーム8を備えている。
また、分析部23は、第1試薬分注プローブ14に第1試薬の吸引及び吐出を行わせる第1試薬分注ポンプユニット14aを備えている。また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面に、この液面の上方から下降した第1試薬分注プローブ14の下端が接触することにより当該液面を検出する第1試薬液面検出器14bを備えている。また、第1試薬分注プローブ14の洗浄が行われる洗浄槽14cを備えている。
また、分析部23は、試薬庫1内の試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬のうち、計測パラメータが設定された検査項目の第1試薬中の特定の成分を計測する計測部30を備えている。なお、計測部30の校正を行うための標準液が収容された試薬容器6が試薬ラック1aの所定の位置に保持され、第1試薬分注プローブ14により試薬容器6内の標準液が吸引されて計測部30に吐出され、計測部30は吐出された標準液を用いて校正を行う。
また、分析部23は、反応容器3内に分注された試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子17を備えている。また、第1撹拌子17を回動及び上下移動可能に支持する第1撹拌アーム18を備えている。また、第1撹拌子17の洗浄が行われる洗浄槽17aを備えている。
また、分析部23は、試薬ラック2aに保持された各検査項目の試薬容器7内の第2試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の第2試薬を、第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15を備えている。また、第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に支持する第2試薬分注アーム9を備えている。
また、第2試薬分注プローブ15に第2試薬の吸引及び吐出を行わせる第2試薬分注ポンプユニット15aを備えている。また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面に、この液面の上方から下降した第2試薬分注プローブ15の下端が接触することにより当該液面を検出する第2試薬液面検出器15bを備えている。また、第2試薬分注プローブ15の洗浄が行われる洗浄槽15cを備えている。
また、分析部23は、試薬庫2内の試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬のうち、計測パラメータが設定された検査項目の第2試薬中の特定の成分を計測する計測部35を備えている。なお、計測部35の校正を行うための標準液が収容された試薬容器7が試薬ラック2aの所定の位置に保持され、第2試薬分注プローブ15により試薬容器7内の標準液が吸引されて計測部35に吐出され、計測部35は吐出された標準液を用いて校正を行う。
また、分析部23は、反応容器3内に分注された試料、第1試薬及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、この第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に支持する第2撹拌アーム20とを備えている。また、第2撹拌子19の洗浄が行われる洗浄槽19aを備えている。また、第1撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応容器3や、第2撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応容器3に光を照射して光学的に測定する測光部13を備えている。また、測光部13による測定が終了した反応容器3を洗浄する洗浄ノズル12を備えている。
そして、測光部13は、回転移動している反応容器3に光を照射し、その照射により反応容器3内の標準試料を含む混合液や、被検試料を含む混合液を透過した光を検出する。そして、検出した信号に基づいて吸光度で表される標準データや被検データを生成してデータ処理部70に出力する。
図1に示した駆動部40は、分析部23のサンプルディスク5を駆動して各試料容器11を回動移動させる。また、試薬ラック1aを駆動して各試薬容器6を回動移動させる。また、試薬ラック2aを駆動して各試薬容器7を回動移動させる。また、反応ディスク4を駆動して各反応容器3を回転移動させる。また、試料分注アーム10を回動及び上下移動させる機構を有し、試料分注プローブ16を試料容器11と反応容器3との間で移動させる。また、試料分注ポンプユニット21aを駆動して試料分注プローブ16に試料容器11の試料を反応容器3に分注させる。
また、駆動部40は、第1試薬分注アーム8を回動させる回動機構及び上下移動させる上下移動機構を有し、第1試薬分注プローブ14を試薬容器6と反応容器3や計測部30との間で移動させる。また、第1試薬分注ポンプユニット21bを駆動して第1試薬分注プローブ14に試薬容器6の第1試薬を吸引させ、反応容器3や計測部30に第1試薬を吐出させる。
また、駆動部40は、第1撹拌アーム18を駆動して第1撹拌子17を反応容器3内に移動させ、第1撹拌子17を駆動して反応容器3内の試料及び第1試薬の撹拌を行わせる。また、第2試薬分注アーム9を回動させる回動機構及び上下移動させる上下移動機構を有し、第2試薬分注プローブ15を試薬容器7と反応容器3又は計測部30の間で移動させる。また、第2試薬分注ポンプユニット21cを駆動して第2試薬分注プローブ15に試薬容器7の第2試薬を吸引させ、反応容器3や計測部30に第2試薬を吐出させる。
また、駆動部40は、第2撹拌アーム20を駆動して第2撹拌子19を反応容器3内に移動させ、第2撹拌子19を駆動して反応容器3内の試料、第1試薬及び第2試薬の撹拌を行わせる。
分析制御部50は、図3に示すように、第1試薬分注プローブ14を破線で示した円軌道に沿って試薬ラック1a、反応容器3、洗浄槽14c及び計測部30の各上停止位置へ移動させる。また、第1試薬分注プローブ14を各上停止位置から下降させる。そして、試薬ラック1aの上停止位置から下降させた第1試薬分注プローブ14を、図4に示すように、第1試薬液面検出器14bに試薬容器6内の第1試薬の液面が検出された位置から、第1試薬の吸引に必要な例えば2mm程度の短い距離D1下方の吸引位置P1で停止させる。そして、分析パラメータとして設定された量に基づいて、第1試薬分注プローブ14に試薬容器6内の液面層の第1試薬を吸引させる。
このように、第1試薬分注プローブ14を吸引位置P1で停止させて第1試薬を吸引させることにより、第1試薬分注プローブ14の第1試薬に接触する面積を低減して、異なる検査項目の第1試薬間でのキャリーオーバを防ぐことができる。
また、分析制御部50は、第2試薬分注プローブ15を円軌道に沿って試薬ラック2a、反応容器3、洗浄槽15c及び計測部35の各上停止位置へ移動させる。また、第2試薬分注プローブ15を各上停止位置から下降させる。そして、試薬ラック2aの上停止位置から下降させた第2試薬分注プローブ15を、第2試薬液面検出器15bに試薬容器7内の第2試薬の液面が検出された位置から距離D1下方の吸引位置P1で停止させる。そして、分析パラメータとして設定された量に基づいて、第2試薬分注プローブ15に試薬容器7内の液面層の第2試薬を吸引させる。
このように、第2試薬分注プローブ15を吸引位置P1で停止させて第2試薬を吸引させることにより、第2試薬分注プローブ15の第2試薬に接触する面積を低減して、異なる検査項目の第2試薬間でのキャリーオーバを防ぐことができる。
また、分析制御部50は、操作部90からスタートアップを実行させる入力が行われると、反応容器3、試料分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、第1撹拌子17、第2試薬分注プローブ15、及び第2撹拌子19の洗浄を行わせる。また、試薬庫1,2内の試薬ラック1a,2aに保持された試薬容器6,7内の第1及び第2試薬のうち、計測パラメータが設定された検査項目の第1及び第2試薬を計測部30,35に分注させ、計測部30,35に当該第1及び第2試薬の計測を行わせることができる。
また、分析制御部50は判定部60を備えている。そして、判定部60は、計測部30により計測された計測値が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。また、計測部35により計測された計測値が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。
また、分析制御部50は、スタートアップが終了した後、操作部90からキャリブレーションを実行させる入力が行われると、標準試料、第1試薬及び第2試薬の反応容器3への分注を開始させる前に、計測パラメータが設定された検査項目の第1及び第2試薬を計測部30,35に分注させて、当該第1及び第2試薬の計測を行わせることができる。その後、キャリブレーションを開始させて、各検査項目の標準試料の分注と、第1試薬の分注と、標準試料及び第1試薬の混合液の撹拌と、第2試薬の分注と、標準試料、第1試薬及び第2試薬の混合液の撹拌と、混合液の測定とを行わせて、標準データを生成させる。
また、分析制御部50は、キャリブレーションが終了した後、操作部90から検査を実行させる入力が行われると、計測パラメータが設定された検査項目の第1及び第2試薬を計測部30,35に分注させて、計測部30,35に当該第1及び第2試薬の計測を行わせることができる。その後、検査を開始させて被検試料の分注と、第1試薬の分注と、被検試料及び第1試薬の混合液の撹拌と、第2試薬の分注と、被検試料、第1試薬及び第2試薬の混合液の撹拌と、撹拌された混合液の測定とを行わせて、被検データを生成させる。
また、分析制御部50は、計測パラメータが設定されていると、検査中に計測パラメータが設定された検査項目の第1及び第2試薬を計測部30,35に分注させ、計測部30,35に第1及び第2試薬の計測を行わせることができる。
データ処理部70は、演算部71及びデータ記憶部72を備えている。そして、演算部71は、測光部13で生成された標準データ及びこの標準データの標準試料に設定された標準値から、標準値と標準データの関係を示す検量データを生成する。また、測光部13で生成された被検データから、この被検データに対応する検査項目の検量データを用いて濃度値や活性値として表される分析データを生成する。また、データ記憶部72は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部71で生成された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部71で生成された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
出力部80は、データ処理部70で生成された標準データや分析データを印刷出力する印刷部81及び表示出力する表示部82を備えている。そして、印刷部81は、プリンタなどを備え、検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷出力する。
表示部82は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための画面を表示する。また、試薬が汚染される検査項目の計測パラメータを設定するための画面を表示する。また、検査対象の被検試料を識別する氏名やID等の識別情報及び検査項目を設定するための画面を表示する。また、検量データや分析データを表示する。
操作部90は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力を行う。また、計測パラメータを設定するための入力を行う。また、被検試料の識別情報及び検査項目を設定するための入力を行う。また、スタートアップ、キャリブレーション、検査等を実行させるための入力を行う。
システム制御部91は、CPU及び記憶回路を備え、操作部90から入力された各検査項目の分析パラメータの情報、計測パラメータの情報、識別情報及び検査項目等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部50、データ処理部70及び出力部80を統括してシステム全体を制御する。
次に、分析部23の計測部30を詳細に説明する。なお、計測部35は、計測部30と同様に構成されるので、その説明を省略する。
試薬庫1内の試薬容器6は開封された状態で試薬ラック1aに保持されている。使用されずに長時間放置されると、試薬庫1内の空気中の所定の成分が試薬容器6内の液面から混入して液面層が汚染される第1試薬がある。計測部30は、第1試薬分注プローブ14により吸引される試薬容器6内の汚染されやすい液面層の第1試薬を計測するために設けられている。
分析制御部50では、計測部30により計測された第1試薬の計測値が許容範囲を外れている場合、試薬容器6を往復間移転移動させて第1試薬を撹乱させる。そして、汚染された第1試薬の液面層の成分を強制的に液面層以外に分散させる。
以下では、試薬庫1内の空気中の例えば二酸化炭素が試薬容器6内の液面から混入して液面層のpH値が予め設定された許容範囲よりも低下する第1試薬のpHの計測、及びこの計測に関連する動作の例について説明する。pHが低下した試薬を用いると、試料中の検査項目成分の濃度や活性値に応じた化学反応が起こらないため、標準データや被検データの精度が低下し、延いては検量データや分析データの悪化の原因となる。
図5は、計測部30の構成を示した図である。この計測部30は、第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬を収容する計測容器31を備えている。また、計測容器31に配置され、第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬中の特定の成分である水素イオンを検出するセンサ部32を備えている。また、計測容器31の下側に配置され、計測容器31内に吐出された第1試薬をセンサ部32で計測可能な位置まで吸引した後、計測容器31から廃棄させるポンプ33を備えている。また、センサ部32により検出された信号をA/D変換して処理する信号処理部34を備えている。
計測容器31は、内側の面が上下方向の中心軸に向けてロート状に縮径するように形成されている。そして、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬のうち、計測パラメータが設定された検査項目の第1試薬が第1試薬分注プローブ14に吸引され、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の第1試薬が計測容器31内に吐出される。
センサ部32は、分析パラメータとして設定された僅かな量の第1試薬中の水素イオンを検出するISFET(Ion Selective Field Effect Transistor)型のpHセンサを有する。そして、第1試薬分注プローブ14により計測容器31内に吐出され、ポンプ33により吸引された標準液中の水素イオンを検出する。標準液の水素イオン検出後に、第1試薬分注プローブ14により計測容器31内に吐出され、ポンプ33により吸引された第1試薬中の水素イオンを検出する。
信号処理部34は、標準液中の水素イオンを検出したセンサ部32の検出信号及び予め設定された標準液の値に基づいてセンサ部32の校正を行う。そして、第1試薬中の水素イオンを検出したセンサ部32の検出信号に基づいて、第1試薬の計測値であるpH値を算出する。
このように、計測部30は、第1試薬分注プローブ14に吸引される試薬容器6内の液面層の第1試薬のpHを計測することができる。
なお、試薬庫1は、第1試薬分注プローブ14が第1試薬を吸引するために進入する開口部以外は閉鎖されている。このため、試薬庫1内の2つの検査項目の試薬容器6間で、一方の試薬容器6内の第1試薬から蒸発又は気化して空気中から他方の試薬容器6内の第1試薬に混入し、検量データや分析データの悪化の原因となる成分を計測して実施するようにしてもよい。
以下、図1乃至図8を参照して、自動分析装置100の動作の一例について説明する。
図6は、表示部82に試薬が汚染される検査項目に設定された計測パラメータが表示された画面の一例を示した図である。この画面83は、「項目」の欄、「試薬」の欄、「スタートアップ」の欄、「キャリブレーション」の欄、「検査」の欄、及び「対処」の欄により構成される。
「項目」の欄には、長時間分注されないと試薬が汚染される検査項目を複数設定可能なように複数のダイアログボックスが表示されている。そして、分析パラメータが設定された検査項目の中から、試薬が汚染される検査項目を選択入力することにより設定された検査項目Aの名称である「A」等がダイアログボックス内に表示されている。
「試薬」の欄には、「項目」の欄に設定された検査項目の汚染される試薬を第1試薬と第2試薬に分けて設定するための2つのダイアログボックスが表示されている。そして、検査項目Aの試薬が2試薬系であり、汚染される試薬が第1試薬のみである場合に選択入力された第1試薬を示す「R1」が一方のダイアログボックス内に表示され、他方のダイアログボックス内は空白になっている。
「検査」の欄は、「開始」の欄及び「間隔」の欄により構成されている。そして、「開始」の欄には、検査を実行させたときに、「項目」の欄に設定された検査項目の試薬の反応容器3への分注を開始させる前に、当該試薬の計測を行わせるか否かを設定するためのダイアログボックスが表示されている。そして、検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注を開始させる前に、当該第1試薬の計測を実行させることを示す「有」がダイアログボックス内に表示されている。
また、「間隔」の欄には、検査中に「項目」の欄に設定された検査項目の試薬の反応容器3への分注の間隔を、試薬庫1,2内で試薬容器6,7内の第1及び第2試薬が使用されずに放置されていても汚染されない時間を設定するための2つのダイアログボックスが表示されている。
そして、検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注の間隔が例えば1時間であることを示す「1.0」が一方のダイアログボックス内に表示され、他方のダイアログボックス内は空白になっている。これにより、検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注を開始させる前に検査項目Aの第1試薬の計測部30への分注が行われてから、1時間の間、検査項目Aの第1試薬が反応容器3に1度も分注されなかった後に当該第1試薬が反応容器3に分注される場合、当該第1試薬が反応容器3に分注される前に当該第1試薬の計測を行わせる。また、検査中の1時間の間、検査項目Aの第1試薬が反応容器3に1度も分注されなかった後に当該第1試薬が反応容器3に分注される場合、当該第1試薬が反応容器3に分注される前に当該第1試薬の計測を行わせる。なお、「0」を設定すると、第1試薬の反応容器3への分注が開始された後、検査中に第1試薬の計測は実行されない。
「スタートアップ」の欄には、スタートアップを実行させたときに、「項目」の欄に設定された検査項目の試薬の計測の有無を設定するためのダイアログボックスが表示されている。そして、スタートアップの実行により分析部23の各ユニットの洗浄が終了した後、スタートアップの最後に検査項目Aの第1試薬の計測を実行させることを示す「有」がダイアログボックス内に表示されている。
「キャリブレーション」の欄には、キャリブレーションを実行させたとき、「項目」の欄に設定された検査項目の試薬の反応容器3への分注を開始させる前に、当該試薬の計測を行わせるか否かを設定するためのダイアログボックスが表示されている。そして、キャリブレーションが開始される前に検査項目Aの第1試薬の計測を実行させないことを示す「無」がダイアログボックス内に表示されている。ここでは、スタートアップのときに計測値が許容範囲に入る検査項目Aの試薬を用いて、スタートアップが終了してから1時間以内にキャリブレーションを実行させる運用としている。このため、キャリブレーションの実行により、検査項目Aの第1試薬の計測を不要としている。
「対処」の欄には、計測部30の第1試薬の計測値又は計測部35の第2試薬の計測値のいずれかが許容範囲から外れている場合、計測後も反応容器3へ試薬の分注を行わせるか否かを設定するためのダイアログボックスが表示されている。そして、検査項目Aの第1試薬の計測値が許容範囲から外れている場合、計測後も当該第1試薬を反応容器3に分注させ、当該第1試薬を含む混合液の測定により生成される標準データ、この標準データに基づいて生成される検量データ、被検データ、及びこの被検データに基づいて生成される分析データに対してエラーフラグを付加することを示す「フラグ」がダイアログボックス内に表示されている。
このように、エラーフラグを付加することにより、汚染された試薬を用いて生成されたデータであることを識別することができる。
なお、計測値が許容範囲から外れて、計測後に反応容器3へ試薬の分注を停止させる場合、中止を選択入力して設定することによりダイアログボックス内に「中止」が表示される。このように、計測後に計測値が許容値を外れた試薬を用いて得られたデータの生成を未然に防ぐことができる。
次に、スタートアップを実行させたときの試薬庫1内の試薬ラック1aに保持された検査項目Aの試薬容器6内の第1試薬の計測及びこの計測に関連する動作について説明する。
図7は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。
1日の最初に自動分析装置100のスタートアップが行われる。分析部23の試薬ラック1aには、計測部30の校正を行うための標準液を収容する試薬容器6が、試薬ラック1aの所定の位置に保持されている。操作部90からスタートアップを実行させる入力が行われると、自動分析装置100は、動作を開始する(ステップS1)。
システム制御部91は、分析制御部50、データ処理部70及び出力部80にスタートアップを指示する。分析制御部50は、反応容器3、試料分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、第2試薬分注プローブ15、第1撹拌子17、及び第2撹拌子19の各ユニットの洗浄を行わせる。各ユニットの洗浄後、図6の画面83に示した計測パラメータに基づいて、計測部30の校正及び検査項目Aの第1試薬の計測を行わせる。
第1試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の標準液を計測部30に分注する。計測部30は、標準液のpHを検出して校正する。計測部30の校正終了後、第1試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aの上停止位置から下降して、第1試薬液面検出器14bに検査項目Aの試薬容器6内の第1試薬液面が検出された位置から、距離D1下方の吸引位置P1で停止する。そして、試薬容器6内の第1試薬を反応容器3内に分注する際に吸引する量と同量の第1試薬を試薬容器6内の液面層から吸引して、反応容器3に吐出する量と同量の第1試薬を計測部30に吐出する。計測部30は、第1試薬分注プローブ14から吐出された第1試薬のpHを計測する(ステップS2)。
なお、空気中の成分は試薬容器6内の第1試薬液面から混入するため、液面層の空気と接触している液面に近いほど汚染が進んでいる。このため、反応容器3に分注させる場合よりも多い量の第1試薬を検査項目Aの試薬容器6から吸引させて、反応容器3内に吐出させる量よりも多い量の第1試薬を計測部30に吐出させると、試薬容器6内の液面層の汚染されていない第1試薬が含まれる可能性があり、反応容器3に分注させた場合に試料との反応に係る第1試薬のpHを精度よく計測することができない。また、反応容器3に分注させる場合よりも少ない量の第1試薬を検査項目Aの試薬容器6から吸引させて、反応容器3内に吐出させる量よりも少ない量の第1試薬を計測部30に吐出させると、試薬容器6内の液面層の汚染されていない第1試薬が含まれない可能性があり、反応容器3に分注させた場合に試料との反応に係る第1試薬のpHを精度よく計測することができない。
このように、第1試薬分注プローブ14を吸引位置P1で停止させることにより、検査項目Aの試薬容器6内の第1試薬を反応容器3内に分注させる場合と同じ液面層の第1試薬を吸引させることができる。そして、反応容器3に分注させる場合と同量の第1試薬を検査項目Aの試薬容器6から吸引させて、反応容器3内に吐出させる量と同量の第1試薬を計測部30に吐出させることにより、反応容器3に分注させた場合に試料との反応に係る第1試薬のpHを精度よく計測することができる。
判定部60は、計測部30に計測されたpH値が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。そして、pH値が許容範囲から外れている場合(ステップS3のいいえ)、ステップS4に移行する。また、pH値が許容範囲内である場合(ステップS3のはい)、ステップS7に移行する。
ステップS3の「いいえ」の後、試薬容器6内の第1試薬が撹乱される前である場合(ステップS4のはい)、ステップS5に移行する。また、試薬容器6内の第1試薬が撹乱された後である場合(ステップS4のいいえ)、ステップS6に移行する。
ステップS4の「はい」の後、駆動部40は、試薬ラック1aを駆動して検査項目Aの試薬容器6を一方向及び他方向に往復回転移動させて、試薬容器6内の第1試薬を撹乱する(ステップS5)。その後、ステップS2に戻る。
ステップS4の「いいえ」の後、分析制御部50は、試薬容器6内の汚染された液面層の第1試薬を撹乱させても回復の見込みがないため、検査項目Aの試薬容器6内の第1試薬を汚染された試薬として判断する。そして、表示部82に検査項目Aの試薬容器6の交換を促すメッセージを表示させる(ステップS6)。
図8は、表示部82にメッセージが表示された画面の一例を示した図である。この画面84には、例えば「検査項目Aの試薬容器内の第1試薬が汚染されています。新しい試薬容器に交換してください。」のメッセージが表示されている。また、「交換」及び「続行」のボタンが表示されている。
ここで、自動分析装置100の操作者が、検査項目Aの未使用の試薬容器6を、蓋を取り除いてから試薬ラック1aに設置する。そして、画面84に表示された「交換」のボタンを指定する入力を操作部90から行う。
このように、表示部82にメッセージを表示させることにより、試薬容器6が交換され、検量データや分析データの生成を未然に防ぐことができる。
図7に示したステップS3の「はい」の後、又はステップS6において画面84に表示された「交換」のボタンを指定する入力が行われた後、システム制御部91が分析制御部50、データ処理部70及び出力部80にスタートアップの終了を指示することにより、自動分析装置100は動作を終了する(ステップS7)。
次に、キャリブレーションを実行させたときの検査項目Aの第1試薬の計測並びにこの計測に関連する動作について説明する。
スタートアップが終了した後、キャリブレーションを実行させると、図6の画面83に示した計測パラメータに基づいて、検査項目Aの第1試薬の計測は行われない。そして、検査項目Aの標準試料、第1試薬及び第2試薬の分注が反応容器3に行われた後、反応容器3内の標準試料、第1試薬及び第2試薬の混合液の測定により標準データが生成され、標準データに基づいて検量データが生成される。
このように、スタートアップで計測値が許容範囲に入る検査項目Aの第1試薬又は交換された第1試薬を用いることにより、検査項目Aの混合液を精度よく測定することができる。
なお、図8に示した画面84の「続行」を指定する入力が行われていた場合、計測値が許容範囲から外れている第1試薬を用いて標準データが生成され、標準データに基づいて検量データが生成されることになるため、図6に示した画面83の「対処」の欄に設定された「フラグ」に基づいて標準データ及び検量データにエラーフラグが付加されることになる。
このように、標準データ及び検量データにエラーフラグを付加することにより、汚染された試薬を用いて得られたデータであることを識別することができる。
次に、検査を実行させたときの検査項目Aの第1及び第2試薬の計測及びこの計測に関連する動作について説明する。
キャリブレーションの動作が終了した後、検査を実行させると、図6の画面83に示した計測パラメータに基づいて、検査の実行の入力が行われてからn回目(nは1以上の整数)の計測として図7に示したステップS2乃至S6を実行する。そして、ステップS3の「はい」の後、又はステップS6において画面84に表示された「交換」のボタンを指定する入力が行われて試薬が交換された後、n回目の計測が行われてから1時間以内に検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注が行われた場合、及びn回目の計測が行われた後の査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注の間隔が1時間に内である場合、反応容器3内の被検試料、第1試薬及び第2試薬の混合液の測定により生成された被検データ及びこの被検データに基づいて生成された分析データにはエラーフラグが付加されない。
このように、計測値が許容範囲に入る検査項目Aの第1試薬又は交換された第1試薬を用いることにより、検査項目Aの混合液を精度よく測定することができる。
また、検査の実行の入力が行われてからn回目(nは1以上の整数)の計測として図7に示したステップS2乃至S6を実行する。そして、計測値が許容範囲から外れてステップS6で画面84に表示された「続行」のボタンを指定する入力が行われた後、n回目の計測が行われてから1時間以内に検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注が行われた場合、及びn回目の計測が行われた後の査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注の間隔が1時間に内である場合、反応容器3内の被検試料、第1試薬及び第2試薬の混合液の測定により生成された被検データ及びこの被検データに基づいて生成された分析データにエラーフラグが付加される。
このように、被検データ及び分析データにエラーフラグを付加することにより、汚染された試薬を用いて得られたデータであることを識別することができる。
n回目の計測又は検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注が行われた後、1時間を超えてから検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注が行われる場合、当該第1試薬の分注が行われる前にステップS2乃至S6を実行して検査項目Aの第1試薬の計測が行われる。
以上述べた実施形態によれば、キャリブレーションや検査を実行させる入力が行われると、検査項目Aの第1試薬の反応容器3への分注を開始させる前に、検査項目Aの第1試薬を計測することができる。そして、第1試薬の計測値が許容範囲から外れている場合、表示部82に検査項目Aの第1試薬の交換を促すメッセージを表示させることができる。
また、検査の実行の入力が行われてからn回目(nは1以上の整数)の計測で計測値が許容値から外れた第1試薬を反応容器3に分注させた場合、当該反応容器3内の当該第1試薬を含む混合液の測定により生成された被検データ及びこの被検データに基づいて生成された分析データにエラーフラグを付加させることができる。これにより、汚染された試薬を用いて生成されたデータであることを識別することができる。
また、検査の実行の入力が行われてからn回目(nは1以上の整数)の計測で計測値が許容値から外れた場合、計測後に第1試薬の反応容器3への分注を停止させることができる。これにより、汚染された試薬を用いての検量データや分析データの生成を未然に防ぐことができる。
以上により、汚染された試薬を用いて生成される分析データの見落としを防ぐことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。