本開示の第1の実施態様における、装飾部材の凹凸面に適用するための追従性粘着フィルムは、追従性基材と、粘着剤層とを含み、この粘着剤層は、約30万以下の重量平均分子量(Mw)を有する熱架橋型粘着剤、並びにエポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤を熱架橋型粘着剤100質量部に対して約0.5質量部以下含む組成物を架橋させた層であり、装飾部材の凹凸面に追従性粘着フィルムの粘着剤層を適用した場合に、この追従性粘着フィルムにおける約1時間後のエア噛み割合が約20%未満である。このような組成物を架橋させた粘着剤層を使用することで、装飾部材の凹凸面に対し、粘着層が常温で早期に高い追従性(濡れ性)を示し、寸法安定性に優れる、追従性粘着フィルムを提供できる。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムを適用する装飾部材の凹凸面が十点平均粗さ(Rz)で約5μm以上であってもよい。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムの粘着剤層は、装飾部材の凹凸面の平均粗さ(Rz)より厚くてもよい。また、粘着剤層は、約10μm〜約50μmの厚みを有していてもよい。粘着剤層が凹凸面の平均粗さに対し十分な厚みを有することで、装飾部材の凹凸面への追従性を上げることができる。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムは、熱架橋型粘着剤のガラス転移温度が、約−80℃以上、約−5℃以下であってもよい。熱架橋型粘着剤のガラス転移温度がこの範囲であると、粘着剤層の凹凸面への追従性が良好で、寸法安定性により優れた追従性粘着フィルムを提供できる。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムは、熱架橋型粘着剤が(メタ)アクリル系ポリマーを含んでもよい。熱架橋型粘着剤が(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、透明性、耐候性、接着性に優れる粘着剤層を提供することができる。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムを適用する装飾部材の凹凸面は、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット印刷物で形成されていてもよい。
第1の実施態様における追従性粘着フィルムは、追従性基材が、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含んでもよい。このような材料を含む追従性基材は伸長後に非弾性変形を示すため、追従性粘着フィルムが伸長させられたとしても、伸長後の寸法を維持するため、寸法安定性に優れる追従性粘着フィルムを提供できる。
本開示の第2の実施態様における、粘着フィルムの製造方法は、追従性基材を提供する工程と、固形分約50%以上の溶剤系粘着剤組成物を提供する工程であって、この溶剤系粘着剤組成物が、約30万以下の重量平均分子量(Mw)を有する熱架橋型粘着剤、並びにエポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤を熱架橋型粘着剤100質量部に対して約0.5質量部以下含む、工程と、溶剤系粘着剤組成物を架橋する工程と、溶剤系粘着剤組成物を架橋する前または架橋後に追従性基材上に積層する工程とを有する。
本開示の第2の実施態様における製造方法によれば、装飾部材の凹凸面に対し、常温で早期に高い追従性を示し、寸法安定性に優れる、追従性粘着フィルムを提供できる。また、この製造方法および、ここで使用される粘着剤組成物によれば、製造プロセスにおいて、固形分比率の高い溶剤系粘着剤組成物であるため、溶剤使用量を減らすことが可能となる。原料コストを低減できるとともに、溶剤使用に伴うバブルやブリスター等の欠陥の発生や、残渣の問題等を抑制するとともに、乾燥時間等を減らし、より効率的な製造プロセスを提供することも可能になる。
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
本開示において「粘着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で初期粘着性(タック)を有し、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。「感圧接着」と呼ばれる場合もある。
本開示において「追従性」とは、基材又はフィルムが柔軟で可撓性を持つと共に、一度伸長させられると、基材又はフィルムが当初の長さに戻ることのないような充分な非弾性変形性を伸長後に有することを指す。
本開示において「非弾性変形」とは、張力を加えて基材又はフィルムを15%伸長させ、この張力を散逸させた結果生じる、所定変形における永久ひずみを指す。
本開示において「早期に」とは、約1時間以内、約30分以内、約10分以内、又は約5分以内を指す。
本開示において「透明」とは、可視光領域(400nm〜800nm)において、装飾粘着フィルムが、光の平均透過率が約60%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上である領域を有することを意味する。追従性粘着フィルムの全体が透明であってもよく、一部又は複数の部分が透明であってもよい。
図1に、本開示の第1の実施態様による追従性粘着フィルム150を装飾部材110の凹凸面120に適用して形成された装飾物品100の概略断面図を示す。追従性粘着フィルム150は追従性基材140と粘着剤層130とを含む。
図1に示すように追従性基材140と粘着剤層130とは直接結合していてもよく、接合層を介して結合していてもよい。追従性基材140と粘着剤層130との間に他の層、例えば印刷層、金属層などの装飾層、例えば追従性粘着フィルムの強度向上、装飾層の担持などを目的とした中間層、これらの層を結合する接合層などが介在してもよい。追従性基材140の上に他の層、例えば印刷層、金属層などの装飾層、ハードコート層などの表面保護層、クリア層、プレマスクなどが積層されていてもよい。追従性基材140は、粘着剤層130との結合面にプライマー処理、コロナ処理などの表面処理を適用してもよい。
プレマスクは、追従性粘着フィルム150の製造時及び使用時に、その取り扱い性を高めるための支持体として機能し、追従性粘着フィルム150を被着体である装飾部材110に貼り付けた後に除去される。プレマスクは支持層及び感圧接着層の積層体である。
プレマスクの支持層として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、フッ素系ポリマーなどを含む可撓性のフィルムを用いることができる。フィルムは、透明であっても不透明であってもよく、着色されていてもよい。支持層の厚さは、例えば約5μm以上又は約10μm以上、約300μm以下又は約200μm以下とすることができる。
プレマスクの感圧接着層として、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。感圧接着層と追従性基材との間の接着力は、感圧接着層と支持層との間の接着力、及び粘着剤層と装飾部材との間の接着力よりも小さくなるように設計される。このように設計することで、追従性粘着フィルムを装飾部材に適用した後、追従性粘着フィルムを破損することなくプレマスクを除去することができる。感圧接着層の接着力を調節する目的で、感圧接着層が、ポリエステル、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタンなどを含む弾性微小球を含んでもよい。感圧接着層の厚さは、一般に、約3μm以上又は約5μm以上、約100μm以下又は約50μm以下とすることができる。
追従性粘着フィルム150は、追従性基材140とは反対側の粘着剤層130の表面にライナーを有していてもよい。ライナーとして、例えば、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料;このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、一般に、約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下である。通常、ライナーは、装飾部材への追従性粘着フィルム150の貼り付け前に剥離される。
追従性基材140は、追従性粘着フィルム150を装飾部材110に適用しプレマスクを除去した後に露出する表面となる。追従性基材140は、例えば、追従性粘着フィルム150を適用した装飾部材110表面への埃などの付着、水分の侵入などを防止する、そのような装飾部材同士を重ねたときのブロッキングを防止する、追従性粘着フィルムを適用した装飾部材に耐候性を付与する、あるいは追従性基材上に印刷を施す場合に印刷インクのレセプター層として機能する。
追従性基材140は、伸長されたときに基材がその当初の長さに回復しないような充分な非弾性変形を伸長後に有するものである。フィルムが一度その当初の長さの115%まで伸長された後、少なくとも5%の非弾性変形を有することが好ましい。追従性基材は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む。
ポリ塩化ビニル樹脂は、ポリマー成分としてポリ塩化ビニル樹脂のみであってもよく、例えば耐衝撃性などの特性を改質する目的で、追加のポリマー、例えば熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、(メタ)アクリル樹脂などを、例えば約40質量%以下、約30質量%以下、又は約20質量%以下の量で含んでもよい。ポリ塩化ビニル樹脂は、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステルなどの可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光熱安定剤、熱安定剤、顔料などの他の添加剤を含んでもよい。いくつかの実施態様では、追従性基材はポリ塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含み、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対し、可塑剤の量が約20質量部以上、又は約25質量部以上、約45質量部以下、又は約35質量部以下である。
ポリウレタン樹脂は、ポリオールと架橋剤とを重合付加させて得られる樹脂を含む。ポリオールとして、例えば(メタ)アクリルポリオール;ポリウレタンポリオール;ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールなどを使用できる。一実施態様では、追従性基材は、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選択される少なくとも1つのポリオール由来の単位を有するポリウレタン樹脂を含む。架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ポリイソシアネート、それらのビュレット体、イソシアヌレート体又はアダクト体、ポリカルボジイミドなどが使用できる。一実施態様では、ポリウレタン樹脂は無黄変型ポリイソシアネート由来の単位を有する。そのような無黄変型ポリイソシアネートとして、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。この実施態様によれば、耐候性に特に優れた追従性粘着フィルムを得ることができる。耐久性及び耐候性に優れることから、(メタ)アクリルポリオールと架橋剤との重合付加物である(メタ)アクリルウレタン樹脂を有利に使用することができる。
ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン/プロピレン共重合体、アイオノマー、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)などを使用することができる。ポリオレフィン樹脂は、ポリマー成分としてポリオレフィン樹脂のみを含んでもよく、例えば耐衝撃性などの特性を改質する目的で、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー共重合体(EPDM)等のゴム系樹脂を含んでもよい。
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチメタクリレート等のメタクリレートモノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリレートモノマーの1種又は2種以上を重合若しくは共重合して得られたアクリルポリマーが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、これらのモノマーには、本発明の効果を損なわない限り、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーが含まれてもよい。
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフタレート系ポリエステル樹脂を使用することができ、非晶性ポリエステル樹脂組成物を使用することもできる。非晶性ポリエステル樹脂組成物は、通常、フタレート系ポリエステル樹脂と、このフタレート系ポリエステル樹脂と部分的に又は全体的に相溶可能なポリエーテル化合物とを含有する樹脂組成物である。
ポリエーテル化合物は、通常、炭素数が2〜6のアルキレングリコール単位を繰り返し単位として含むアルキレングリコール系エーテル化合物である。アルキレングリコール系エーテル化合物は、例えば、(1)ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールの両末端をアルキルエーテル化したポリアルキレングリコールジエーテル、(2)アルキレングリコール単位とジカルボン酸単位とを分子内に含むポリエステルエテールである。(1)におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の比較的低級(炭素数3以下)のアルキル基を使用することができる。(2)におけるジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を使用することができる。
フッ素樹脂は、フッ素系モノマーを重合して得られるポリマーである。フッ素系モノマーは、例えば、フッ化ビニリデン、六フッ化プロピレン、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレンなどのフッ素系エチレンモノマーである。フッ素系モノマーに加えて、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリレートなどの1種又は2種以上の共重合可能なモノマーを混合してもよい。フッ素樹脂と(メタ)アクリル樹脂とをブレンドしたフッ素系樹脂組成物を用いてもよい。例えば、(メタ)アクリルポリオール樹脂は、ポリオールのヒドロキシル基と(メタ)アクリル系ポリマー中のヒドロキシル基とが、それぞれ、イソシアネート系架橋剤と反応し、それによりウレタン結合を生じることによって形成される。フッ素樹脂を含む追従性基材として、透明性の高い樹脂基材を用いることが有利である。
いくつかの実施態様では、追従性基材は、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む。これらの実施態様の追従性基材は印刷適性及び耐アルコール性に優れるため、追従性粘着フィルム上に印刷インクを用いた印刷、イソプロパノールなどの溶剤を含むクリア塗装などを施すことができる。ポリ塩化ビニル樹脂を含む追従性基材は、追従性粘着フィルムを難燃性とする上でも有利である。ポリウレタン樹脂を含む追従性基材は、耐候性に優れている。
別の実施態様では、追従性基材はフッ素樹脂を含む。この実施態様のフィルム層は、耐薬品性、耐候性などに優れており、過酷な外部環境に曝される用途に特に適している。
追従性基材は透明であってもよく、下位の層を視認できる範囲で一部又は全部において着色されていてもよい。このような追従性基材であれば、追従性粘着フィルムを装飾部材表面に適用したときに、追従性基材の下位に位置する追従性粘着フィルム内の任意の装飾層又は装飾部材表面を外部から視認することができる。
いくつかの実施態様において、追従性基材に含まれる樹脂のガラス転移温度は、約90℃以下、約85℃以下、又は約80℃以下である。追従性基材のガラス転移温度は、約30℃以上、約35℃以上、又は約40℃以上であることが望ましい。追従性基材のガラス転移温度を約30℃以上とすることにより、追従性基材のタックを低減して、埃の付着をより効果的に防止し、耐ブロッキング性を高めることができる。
追従性基材の厚さは、一般に約5μm以上、約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、約300μm以下、又は約100μm以下である。
追従性基材として、押出フィルム、押出延伸フィルム、カレンダーフィルム、キャストフィルムなど、様々な成形方法で形成されたフィルム又はこれらの積層体などを使用することができる。
追従性粘着フィルムの用途に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑材、帯電防止剤、難燃剤、充填剤などの従来公知の添加剤を、追従性基材に添加することもできる。
粘着剤層130は、約30万以下(約30万又は約30万未満)の重量平均分子量(Mw)を有する熱架橋型粘着剤、並びにエポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤を熱架橋型粘着剤100質量部に対して約0.5質量部以下含む組成物を架橋させた層であり、単層又は積層体であってもよい。熱架橋型粘着剤の重量平均分子量(Mw)は、約30万以下(約30万又は約30万未満)、約29万以下、又は約25万以下、約10万以上、約17万以上、又は約20万以上である。熱架橋型粘着剤の重量平均分子量(Mw)がこの範囲であれば、追従性粘着フィルムは装飾部材の凹凸面に対して常温で早期に高い追従性を提供できる。本開示における重量平均分子量は、GPC法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。
熱架橋型粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、約−5℃以下、約−20℃以下、又は約−40℃以下、約−80℃以上、約−70℃以上、又は約−60℃以上であってもよい。熱架橋型粘着剤のガラス転移温度(Tg)がこの範囲であれば、追従性粘着フィルムは装飾部材の凹凸面に対してより常温で早期に高い追従性を提供できる。ガラス転移温度(Tg)は、以下で示すFOXの式より求めることができる。
粘着剤層130は、約30万以下の重量平均分子量(Mw)を有する熱架橋型粘着剤を、全粘着剤成分に対して、約70質量%以上、約80質量%以上、又は約90質量%以上、約100質量%以下、約98質量%以下、又は約96質量%以下含むことができる。
熱架橋型粘着剤として、これらに限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー又は他のポリマーを使用することができる。中でも、(メタ)アクリル系ポリマーの熱架橋型粘着剤は、透明性、耐候性、接着性に優れている。粘着剤層は、このような熱架橋型粘着剤を含有する組成物の塗膜から形成することができる。
例えば、(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として含み、必要に応じてカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー又はアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーをさらに含むモノマー混合物を共重合させることにより得ることができる。
モノエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基、フェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は環状エーテル基である。)で表されるものに加えて、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類も含まれる。式CH2=CR1COOR2で表されるモノエチレン性不飽和モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。必要に応じて、例えば所望のガラス転移温度、凝集力、タック、濡れ性などを得る目的で、2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを組み合わせて使用することができる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などを挙げることができる。
アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーとして、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテル;ビニルイミダゾールなどの含窒素複素環を有するビニルモノマーなどが挙げられる。
(メタ)アクリル系ポリマーの共重合は、一般にラジカル重合により行なわれるが、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることもできる。開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。開始剤の使用量は、モノマー混合物100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
一実施態様では、粘着剤層は、ガラス転移温度(Tg)が約−5℃以下の(メタ)アクリル系ポリマー(本開示において以下「低Tg(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう。)を単独で、又は、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーと、ガラス転移温度が約5℃以上の(メタ)アクリル系ポリマー(本開示において以下「高Tg(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう。)とのポリマーブレンドの形態で含むことができる。いかなる理論に拘束されることを望む訳ではないが、高Tg(メタ)アクリル系ポリマーは用途に応じて必要な引張強度を粘着剤層に付与し、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーは粘着性ポリマーとして機能し、凹凸追従性(濡れ性)を粘着剤層に付与すると考えられている。必要に応じて、2種以上の低Tg(メタ)アクリル系ポリマー、及び/又は2種以上の高Tg(メタ)アクリル系ポリマーを用いてポリマーブレンドを形成してもよい。
いくつかの実施態様では、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーのTgは約−5℃以下、約−20℃以下、又は約−40℃以下、約−80℃以上、約−70℃以上、又は約−60℃以上である。いくつかの実施態様では、高Tg(メタ)アクリル系ポリマーのTgは約5℃以上、約20℃以上、又は約40℃以上、約150℃以下、約135℃以下、又は約120℃以下である。
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めることができる。
低Tg(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)など、単体で重合したホモポリマーが約−5℃以下のTgを有する成分を主成分として共重合させることにより得ることができる。
高Tg(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)など、単体で重合したホモポリマーが約5℃以上のTgを有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分として共重合させることにより得ることができる。
粘着剤層の形成において、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーと高Tg(メタ)アクリル系ポリマーの配合比を変化させることにより、所望の接着力を有する粘着剤層を得ることができる。例えば、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーと高Tg(メタ)アクリル系ポリマーの配合比は、低Tg(メタ)アクリル系ポリマーを100質量部としたときに、高Tg(メタ)アクリル系ポリマーを約1質量部以上、約2質量部以上、約5質量部以上、又は約8質量部以上、約90質量部以下、約50質量部以下、約20質量部以下、又は約15質量部以下とすることができる。
一実施態様では、粘着剤層は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのポリマーブレンドを含む。このようなポリマーブレンドを含む粘着剤層は、カルボキシル基とアミノ基の相互作用により高い引張強度及び優れた伸び特性を有することから、優れた凹凸追従性を有する追従性粘着フィルムを得ることができる。必要に応じて、2種以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び/又は2種以上のアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを用いてポリマーブレンドを形成してもよい。
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、これとカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合することにより得ることができる。いくつかの実施態様では、モノエチレン性不飽和モノマーを約80質量部以上、約85質量部以上、又は約90質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約95質量部以下と、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを約0.5質量部以上、約1質量部以上、又は約5質量部以上、約20質量部以下、約15質量部以下、又は約10質量部以下の割合で共重合することにより、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、これとアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーとを共重合することにより得ることができる。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えばモノエチレン性不飽和モノマーを約80質量部以上、約85質量部以上、又は約90質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約95質量部以下と、アミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを約0.5質量部以上、約1質量部以上、又は約5質量部以上、約20質量部以下、約15質量部以下、又は約10質量部以下の割合で共重合することにより得ることができる。
いくつかの実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まない。ここでいう「芳香族ビニルモノマー」には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレートなどが包含される。芳香族アミンとして、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン又はこれらの誘導体が挙げられる。水酸基含有芳香族化合物として、上記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、後述する顔料、特に白色顔料の分散性に優れている。
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの一方が高Tg(メタ)アクリル系ポリマーであり、他方が低Tg(メタ)アクリル系ポリマーであってもよい。一つの好適な実施態様では、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーが低Tg(メタ)アクリル系ポリマーであり、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーが高Tg(メタ)アクリル系ポリマーである。
粘着剤層の形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの配合比を変化させることにより、所望の接着力を有する粘着剤層を得ることができる。例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの配合比は、それらのうちTgが低い方の(メタ)アクリル系ポリマーを100質量部としたときに、Tgが高い方の(メタ)アクリル系ポリマーを約1質量部以上、約2質量部以上、約5質量部以上、又は約8質量部以上、約90質量部以下、約50質量部以下、約20質量部以下、又は約15質量部以下とすることができる。
粘着剤層130は、約30万以下の重量平均分子量(Mw)を有する熱架橋型粘着剤を含む組成物を架橋させた層であり、組成物はエポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤を熱架橋型粘着剤100質量部に対して約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、又は約0.3質量部以下、約0.01質量部以上、約0.05質量部以上、又は約0.1質量部以上含む。所定量のエポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤を用いて粘着剤層を構成する組成物を架橋させることにより、透明性、凹凸追従性(濡れ性)、接着性、寸法安定性に優れる追従性粘着フィルムを得ることができる。ビスアミド系架橋剤は、例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)を使用することができる。エポキシ系架橋剤として、例えば、四官能型のエポキシ系架橋剤である綜研化学株式会社製のE−AX、E−5XM;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)(三菱ガス化学社製:TETRAD−X);N,N’−(シクロヘキサン−1,3−ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(三菱ガス化学社製:TETRAD−C);綜研化学株式会社製のE−5Cなどを使用することができる。エポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤の使用は、透明性、耐着色性により優れた粘着剤層を形成することができる。中でも、凝集性がより優れるため、エポキシ系架橋剤の使用が好ましい。エポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤の使用は、イソシアネート系架橋剤の使用に比べて熱収縮性(寸法安定性)、耐黄変性等にも優れる。このため、組成物はエポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤以外の他の架橋剤を併用することもできるが、イソシアネート系架橋剤を併用しないことが望ましい。他の架橋剤を併用する場合の架橋剤の総配合量は、上述のエポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤の配合量の範囲と同一となるように調整すればよい。
粘着剤層は、下位の装飾部材を視認できる範囲で装飾目的に顔料を含むこともできる。顔料として従来知られている無機顔料又は有機顔料を使用することができる。無機顔料の具体例として、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、二酸化チタン(酸化チタン)などの白色顔料、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジなどの有色顔料、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックなどが挙げられる。有機顔料の具体例として、C.I.Pigment White 6、C.I.Pigment Black 7、C.I.Pigment Red 122、同202、同254、同255、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Violet 19、同23、C.I.Pigment Blue 15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、C.I.Pigment Brown 23、同25、C.I.Pigment Yellow 74、同109、同110、同128、C.I.Pigment Green 7、同36などが挙げられる。
一実施態様では粘着剤層は白色顔料を含む。白色顔料は単体で又は2種以上を混合して用いることができる。白色度が高いことから白色顔料として二酸化チタンを用いることが有利である。白色顔料と併用する添加剤としてタルク、カオリン、アルミペースト、カーボンブラック又は炭酸カルシウムを用いてもよい。白色顔料は、球状、針状、平板状又はフレーク状などの様々な形状の粒子であってよく、分散性が良好であることから球状粒子であることが望ましい。白色顔料は、分散性をより高めるために、シラン、チタネートなどのカップリング剤で表面処理されていてもよい。白色顔料は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約8質量部以上、又は約60質量部以下とすることができる。
追従性粘着フィルムの用途に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、粘着付与剤、弾性微小球、粘着性ポリマー微小球、結晶性ポリマー、難燃剤、充填剤、分散剤などの従来公知の添加剤を粘着剤層に添加することもできる。粘着剤層に可塑剤を添加することもできるが、添加しなくてもよい。
粘着剤層130は公知の方法によって、追従性基材140の上、又は追従性粘着フィルムを構成する任意の他の層(例えば、ライナー)の上に適用することができる。例えば、熱架橋型粘着剤と、エポキシ系架橋剤及び又はビスアミド系架橋剤とを有機溶媒に溶解又は分散した溶剤系粘着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどにより追従性基材140又はライナー上に塗布して未架橋の粘着剤層130を形成する。追従性基材140上に未架橋の粘着剤層130を形成した場合は、乾燥及び加熱し、粘着剤層130を架橋させて追従性粘着フィルム150を得ることができる。ライナー上に未架橋の粘着剤層130を形成した場合は、粘着剤層130を未架橋の状態で、あるいは乾燥及び加熱して粘着剤層130を架橋させた状態で、該粘着剤層130に追従性基材140をドライラミネートなどにより積層して追従性粘着フィルム150を得ることができる。乾燥及び加熱工程において、乾燥工程が粘着剤層を架橋させる加熱工程を兼ねてもよいし、乾燥工程とは別に粘着剤を架橋させるための加熱工程を別途設けてもよい。溶剤系粘着剤組成物の固形分は、約50%以上、約55%以上、又は約60%以上、約80%以下、約75%以下、又は約70%以下が望ましい。溶剤系粘着剤組成物の固形分がこの範囲であると、使用する有機溶媒の減量化、乾燥工程等のプロセスの簡略化が可能であり、コスト面等で有利である。有機溶媒としては、これらに限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、及びこれらの混合物等を使用することができる。
粘着剤層の厚さは、装飾部材の凹凸面の平均粗さ(Rz)より厚くてもよく、一般に約10μm以上、約15μm以上、又は約20μm以上である。粘着剤層の厚さがこの範囲であると、例えば、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット印刷で形成される装飾部材の凹凸面のように平均粗さ(Rz)が5μm以上の凹凸面に対し、追従性、寸法安定性に優れる追従性粘着フィルムを得ることができる。追従性粘着フィルムに不燃性が要求される用途では、粘着剤層の厚さを約80μm以下、又は約50μm以下とすることが有利である。
別の実施態様では、追従性粘着フィルムは、追従性基材と粘着剤層との間に中間層及び/又は接合層を含んでもよい。この実施態様では、中間層が強度部材として機能して追従性粘着フィルムの強度を高めることができる。中間層を装飾層の担体として用いて追従性粘着フィルム内部に装飾層を設けることで、追従性粘着フィルムに耐久性の高い装飾性を付与することもできる。中間層、接合層及び装飾層を1層又は複数層含んでもよい。
中間層として、例えば(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂などのフィルムを使用することができる。中間層が追従性基材と同様の樹脂で形成されていてもよい。中間層の厚さは、一般に約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約60μm以下、約40μm以下、又は約20μm以下である。
追従性粘着フィルムを構成する層を結合する接合層として、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層が粘着剤層と同様の材料で形成されていてもよい。接合層の厚さは、一般に、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、約40μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
装飾層は、追従性粘着フィルムに装飾性又は意匠性を付与するために使用することができる。装飾層として、印刷層、金属層などが挙げられる。装飾層は、下位の装飾部材表面を視認できる範囲で、追従性粘着フィルムの全面に対応するように配置されていてもよく、一部又は複数の部分に対応するように配置されていてもよい。
印刷層は、中間層の上にトナー、インクなどの着色剤を用いて印刷することにより形成することができる。追従性基材の粘着剤層に向かう表面上に印刷層を形成してもよい。印刷インクとして、溶剤系インク、又はUV硬化型インクを用いることができる。印刷は、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷などを用いることができる。
印刷層の厚さは様々であってよく、一般に、約1μm以上、約2μm以上、又は約5μm以上、約30μm以下、約25μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
金属層は、インジウム、スズ、クロムなどの金属を蒸着、スパッタなどによって中間層の上に堆積することによって形成することができる。蒸着又はスパッタの際に金属マスクなどを使用してパターン又は絵柄を形成することもできる。金属層の厚さは、様々であってよく、一般に、約5nm以上、約10nm以上、又は約20nm以上、約10μm以下、約5μm以下、又は約2μm以下とすることができる。
一実施態様では、中間層及び接合層を含む追従性粘着フィルムは、例えば、以下の手順で得ることができる。接合層組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、接合層を形成する。得られた接合層の上に追従性基材をドライラミネートなどにより積層して、追従性基材/接合層積層体を形成する。粘着剤層を構成する組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、未架橋の又は架橋させた粘着剤層を形成する。得られた粘着剤層の上に中間層をドライラミネートなどにより積層して、中間層/粘着剤層積層体を形成する。必要に応じて中間層の上に装飾層を形成した後、追従性基材/接合層積層体を、接合層と中間層又は中間層の上に形成された装飾層とが接触するように、追従性基材/接合層積層体の上に積層して追従性粘着フィルムを得る。粘着剤層が未架橋である場合には、得られた追従性粘着フィルムをさらに加熱して粘着剤層を架橋させる。
一実施態様では、下記に示すエア噛み評価試験において、追従性粘着フィルムの約1時間後、約30分後、約10分後、又は約5分後のエア噛み割合は、約20%未満、約10%未満、又は約5%未満である。追従性粘着フィルムの約1時間後のエア噛み割合を約20%未満とすることで、追従性粘着フィルムを装飾部材の凹凸面に追従させた後の装飾部分の色味等の外観チェックを早期に実施できる。エア噛み割合が少ないと、凹凸面と接触する面積が大きくなるため、追従性粘着フィルと装飾部材との接着力を増大させ得る。
なお、下記に示す光学評価(L*)試験において、L*値自体は追従性粘着フィルムを構成する追従性基材等の種類やベースとなる装飾部材の色等により変化するものであり、個々のフィルムにおける相対的な数値であるが、L*値の時間的変化を見ることで、追従性粘着フィルムの装飾部材の凹凸面への追従状態の時間的変化を評価することができる。L*値変化が早期に一定値に達し、飽和する場合、早期追従性を有するといえる。追従性粘着フィルムの約24時間後のL*値は、約14.0%以下、約13.0%以下、又は約12.0%以下であり、約1時間後のL*値は、約14.5%以下、約13.5%以下、又は約12.5%以下であり、約5分後のL*値は、約15.0%以下、約14.0%以下、又は約13.0%以下である。追従性粘着フィルムの、約24時間後のL*値が約14.0%以下、約1時間後のL*値が約14.5%以下、約5分後のL*値が約15.0%以下である場合、追従性粘着フィルムを装飾部材の凹凸面に追従させた後の装飾部分の色味等の外観チェックを早期に実施可能である。
一実施態様では、下記に示す熱収縮性及び寸法安定性試験において、追従性粘着フィルムのフィルム収縮は、約0.50mm以下、約0.40mm以下、又は約0.30mm以下にすることが可能である。追従性粘着フィルムのフィルム収縮が約0.50mm以下であると、追従性粘着フィルムを備える装飾部材の外観を長期に維持可能であり、装飾部材に長期間にわたって優れた保護性能を付与することができる。
一実施態様では、下記に示す接着力試験において、追従性粘着フィルムの約48時間後の接着力は、約14N/25mm以上、約20N/25mm以上、又は約25N/25mm以上にすることが可能であり、約5分後の接着力は、約13N/25mm以上、約18N/25mm以上、又は約21N/25mm以上にすることが可能である。
追従性粘着フィルムを貼り合わせる被着体の装飾部材110は、表面に凹凸面120を有する限り特に制限はないが、例えば、自動車、オートバイ、電車等の車両、航空機、船舶、建材等に使用される外装又は内装部材、容器等の包装材料、家具、電化製品、交通標識、看板、広告、ポスター、カレンダー、写真、書籍、文房具、絵画などの美術品が挙げられる。装飾には、これらに限定されないが、例えば、木目、石目などの模様、絵柄などによるパターン、ロゴ、人物又は風景等の写真、絵、数、文字、言葉などが含まれる。装飾部材の材料としては、これらに限定されないが、例えば、和紙、印刷用紙、板紙、段ボール等の紙材、単板、合板、突板等の木材、ガラス、金属、樹脂、ゴム、コンクリート、セラミックス、陶磁器、織物、編物、不織布等の布材などを使用することができる。
装飾部材110の凹凸面120は、これらに限定されないが、例えば、エンボス加工、サンドブラスト加工、切削加工、研磨加工、レーザー加工、エッチング加工等の加工処理、凹凸型を使用する射出成型、3Dプリンターによる造形、UV硬化型インクなどを用いた印刷、油絵の具などによって形成することができる。凹凸面120は、部材表面に、シール、粘着ゲル、装飾具等を別途適用して形成された凹凸面も含み得る。印刷は、インクジェットプリンター、スクリーン印刷、オフセット印刷等を使用することができる。凹凸面は、約5μm以上、約7μm以上、又は約10μm以上、約40μm以下、約35μm以下、又は約30μm以下の十点平均粗さ(Rz)を有する。特に、紫外線硬化型インクを用いたインクジェット印刷で装飾層を形成する場合、一般的な非硬化型の溶剤インクを用いる場合と異なり、印刷された装飾層は約5μm以上の厚みになり、上述する凹凸面が形成される。
十点平均粗さ(Rz)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートルで表したものをいう。
本明細書においては、表1に示す以下の略称を使用することがある。
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
本実施例における熱架橋型粘着剤は、表2に示す各成分及び反応条件により作製した。
ガラス転移温度(Tg)は、各熱架橋型粘着剤がn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めた。
表2中に示した各熱架橋型粘着剤の重量平均分子量(Mw)は、以下の測定条件を用いてGPC法により測定した。
装置:HP−1090 Series II(Hewlett−Packard社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Plgel MIXED−Bx2(300mm、外径7.5mm、内径5mm)
フローレート:1.0mL/min
検出手段:屈折率
サンプル濃度:0.1wt%
キャリブレーション標準:ポリスチレン
本明細書においては、架橋剤について表3に示す以下の略称を使用することがある。
<評価方法>
追従性粘着フィルムの特性を以下の方法に従って評価した。
1.エア噛み評価試験
コントロールタック(商標)フィルムIJ180−10(スリーエムジャパン株式会社製)上に、インクジェットプリンター(株式会社ミマキエンジニアリング製UJV500)でLUS200 UV硬化型インク(スリーエムジャパン株式会社製)を印刷し硬化させて、UV硬化型インクによる凹凸面を有する印刷物が形成された装飾部材の試料を作製した。印刷条件は、シアン67%、マゼンタ66%、イエロー66%、ブラック100%とした。装飾部材の凹凸面をハンディサーフ E−35A(株式会社東洋精密製)で測定した。カットオフ値は2.5mm、測定長さは12.5mm、測定領域は40μmとした。3回測定し、その測定値の平均値を代表値とした。その結果、装飾部材の凹凸面の大きさは、算術平均粗さ(Ra)で3.4μm、十点平均粗さ(Rz)で24.0μmであった。50mm角に切断した追従性粘着フィルムの試験片を、23℃の環境下で装飾部材の凹凸面にローラーで貼り付けた。試験片を23℃の環境下に放置し、貼り付け5分後、1時間後、24時間後のエア噛み割合を目視で評価した。エア噛み割合が、5%未満であれば「優良」、5%以上20%未満であれば「良」、20%以上50%未満であれば「悪」、50%以上であれば「劣悪」と評価した。図2の左側がエア噛み割合50%以上(劣悪)の実施態様(比較例1)を示す写真であり、右側がエア噛み割合5%未満(優良)の実施態様(例3)を示す写真である。
2.光学評価(L*)試験
エア噛み評価試験と同様の手順で凹凸面を有する装飾部材の試料を準備した。50mm角に切断した追従性粘着フィルムの試験片を、23℃の環境下で装飾部材の凹凸面にローラーで貼り付けた。試験片を23℃の環境下に放置し、貼り付け5分後、1時間後、24時間後のL*値(明度)を分光計CM−3700d(コニカミノルタ株式会社製)で測定した。
3.熱収縮性及び寸法安定性試験
50mm角に切断した追従性粘着フィルムの試験片を、23℃の環境下でアルミ板上にローラーで貼り付けた。アルミ板を備える試験片を23℃の環境下に24時間放置した。24時間放置後の試験片にカッターで十字に切り込みを入れ、65℃のオーブンに24時間放置した。オーブンからアルミ板を備える試験片を取り出し、マイクロメーターで試験片の収縮を測定した。試験片の収縮が0.30mm以下の場合は「優良」、0.30mmを超えて0.50mm以下の場合は「良」、0.50mmを超えた場合、試験片の周囲に粘着剤を残して試験片の収縮が確認された場合は「不良」と判断した。なお、アルミ板に貼り付ける前に剥離紙上で試験片の収縮が生じた場合も「不良」と判断した。
4.接着力試験
追従性粘着フィルムの試験片を長さ150mm、幅25mmに切断した。JIS Z 0237 8.2.3.に従い、試験片をメラミン焼き付け塗装板(株式会社パルテック製)に20℃の環境下で貼り付けた。試験片を20℃環境下に5分間、及び48時間放置した。20℃の環境下でテンシロン引っ張り試験機(株式会社オリエンテック製)により180度接着力を測定した。掴み間隔は100mm、剥離速さは300mm/分とした。
<追従性粘着フィルム試験片の作製>
<例1>
熱架橋型粘着剤ADH1及び架橋剤CL1からなる熱架橋型粘着剤溶液を準備した。熱架橋型粘着剤ADH1及び架橋剤CL1の質量比は固形分換算で100:0.12であった。得られた熱架橋型粘着剤溶液を両面ポリエチレンラミネート剥離紙のシリコーン処理面上にナイフコータで塗布して未架橋の粘着剤層を形成した。この粘着剤層を95℃で5分間加熱乾燥して31μm厚の架橋した粘着剤層を得た。50μm厚の透明なポリ塩化ビニル系フィルムに架橋した粘着剤層を貼り合わせて、追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
<例2>
CL1の添加量を0.15質量部に変更したこと、及び架橋後の粘着剤層の厚さを30μmとしたことを除き、例1と同様にして追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
<例3>
例1で得られた熱架橋型粘着剤溶液を50μm厚の透明なポリ塩化ビニル系フィルム上にナイフコータで塗布して未架橋の粘着剤層を形成した。この粘着剤層を95℃で5分間加熱乾燥して32m厚の架橋した粘着剤層を得た。両面ポリエチレンラミネート剥離紙のシリコーン処理面に架橋した粘着剤層を貼り合わせて、追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
<例4>
CL1の添加量を0.15質量部に変更したこと、及び架橋後の粘着剤層の厚さを31μmとしたことを除き、例3と同様にして追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
<例5〜例16>
例5から例16は、熱架橋型粘着剤及び架橋剤の種類、架橋剤の添加量、並びに架橋後の粘着剤層の厚さを表4に記載されるとおりにしたことを除き、例1と同様にして追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
<比較例1〜7>
比較例1から比較例7は、熱架橋型粘着剤及び架橋剤の種類、架橋剤の添加量、並びに架橋後の粘着剤層の厚さを表4に記載されるとおりにしたことを除き、例1と同様にして追従性粘着フィルムの試験片を作製した。
例1〜16及び比較例1〜7で得られた追従性粘着フィルムの評価結果を表4に示す。
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。