JP2017193601A - 光硬化型粘着剤前駆体組成物、光硬化型粘着剤、及び光硬化型粘着剤の製造方法 - Google Patents
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本発明の光硬化型粘着剤前駆体組成物は、いわゆる、無溶剤型(シロップ型)の粘着剤前駆体組成物であり、重合性コモノマーと、プレポリマーと、プレポリマーからのランダム分岐(共)重合を起こすための光開始剤と、を含んでおり、溶媒を実質的に含有しないものである。具体的には、本発明の光硬化型粘着剤前駆体組成物は、(A)エチレン性不飽和モノマーと、(b1)水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を有する(B)プレポリマーと、(C)水素引き抜き型光開始剤と、を含む。
エチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を含むモノマーである。エチレン性不飽和モノマーは、後述する水素引き抜き型光開始剤の存在下で、紫外線等の活性エネルギー線を照射された結果、系内に発生したラジカル反応点により、ラジカル重合反応を生起しうるものである。
光硬化型粘着剤前駆体組成物に含有されるプレポリマーは、水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を少なくとも有するものである。また、プレポリマーは、好ましくは水素供与性モノマーと、共重合性モノマーとを含むモノマー組成物を、従来公知の光開始剤又は熱開始剤を用いて熱重合又は光重合させることにより得られるものである。本発明においては、プレポリマーが水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を有することにより、光重合反応において、プレポリマー中の水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を基点としたラジカル重合反応が生じ、最終的に生成されるランダム分岐(共)重合体の分岐度が好適に維持される。
水素供与性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合と、水素供与性が良好な原子団とを含むモノマーである。水素供与性モノマーは、少なくともプレポリマー中に(共)重合成分として取り込まれるので、当該プレポリマーを含む系に対し、後述する水素引き抜き型光開始剤の存在下で紫外線等の活性線を照射すると、水素供与性の原子団から水素が容易に引き抜かれ、これがラジカル反応点となる。その結果、系内にプレポリマーを基にしたランダム分岐(共)重合体が生成可能となる。すなわち、本発明においては、水素供与性モノマーを使用することにより、光硬化型粘着剤の製造に当たって、エージング工程を設けなくても、耐熱性等の諸特性に優れた光硬化型粘着剤を提供することができる。
水素供与性モノマーとの共重合に任意に用いられる共重合性モノマーは、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有するものであって、前述の「(A)エチレン性不飽和モノマー」の項で挙げたモノマーと同一のものでもよいし、異なるものでもよい。
本発明の光硬化型粘着剤前駆体組成物は、水素引き抜き型光開始剤を含有する。この水素引き抜き型光開始剤は、上述のプレポリマー中の水素供与性モノマーに由来する構成単位から水素を引き抜き、ラジカルを生成して、このラジカルにより光ラジカル重合反応を生起させるものである。水素引き抜き型光開始剤としては、ベンゾフェノン型光開始剤、キサントン型光開始剤、及びチオキサントン型光開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の光開始剤を挙げることができ、より具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、アントラキノン、チオキサントン、及びそれらの誘導体を挙げることができる。これらの中でも、特に、下記式(I)及び(II)で示されるベンゾフェノン型光開始剤(式中、Rは水素又はメチル基、R’はアルキレンオキシド基を示す)を用いることが好ましい。これらの水素引き抜き型光開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の光硬化型粘着剤前駆体組成物は、任意で多官能性モノマーを含有していてもよい。ここで、多官能性モノマーとは、分子内にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有するモノマーを指し、光硬化型粘着剤前駆組成物に光照射し、光硬化型粘着剤を得る過程で、系内に強固な三次元架橋構造を形成し得るものである。
本発明のひとつの態様による光硬化型粘着剤前駆体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意で他の成分を有していてもよい。他の成分としては、開裂型光開始剤等の、水素引き抜き型光開始剤以外の光開始剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、有機又は無機の各種フィラー等が挙げられる。なかでも、本発明において、光硬化型粘着剤の重合反応をスムーズに進行させるためには、開裂型の光開始剤を添加することが好ましい。
本発明の光硬化型粘着剤は、上記の光硬化型粘着剤前駆体組成物に含まれるプレポリマーの水素供与性モノマーに由来する部位を基点として重合してなる、枝分かれしたランダム分岐(共)重合体を含むものである。ランダム分岐(共)重合体の分岐度は、好ましくは0.25以上0.44以下、より好ましくは0.33以上0.40以下となるものである。
本発明の光硬化型粘着剤の製造方法は、エチレン性不飽和モノマーと、水素供与性モノマーとを含むモノマー組成物を部分共重合させ、エチレン性不飽和モノマー及び水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を有するプレポリマーを含む組成物を形成する工程(第1の工程)と、このプレポリマーを含む組成物に水素引き抜き型光開始剤を配合し、上述した光硬化型粘着剤前駆体組成物を調製する工程(第2の工程)と、この光硬化型粘着剤前駆体組成物に光照射を行う工程(第3の工程)と、を有する。
コンデンサー、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を備えた容量2Lの丸底フラスコに、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA;水素供与性モノマー)5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート87質量部、及びアクリル酸8質量部を投入し、窒素パージ後、50℃に加温した。ここに、熱開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V70:和光純薬社製)を0.003質量部を攪拌下に添加して、重合熱により反応溶液が120℃まで達したときに、この混合液を、40℃にまで急冷し、重量平均分子量250,000のプレポリマー溶液1を得た。なお、プレポリマー溶液1の重合率は40質量%であり、重合に供されなかった残部は本発明でいうところの重合性コモノマーである。
コンデンサー、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を備えた容量2Lの丸底フラスコに、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA;水素供与性モノマー)5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート87質量部、及びアクリル酸8質量部を投入し、窒素パージ後、50℃に加温した。ここに、熱開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V70:和光純薬社製)を0.003質量部を攪拌下に添加して、重合熱により反応溶液が120℃まで達したときに、この混合液を、40℃にまで急冷し、重量平均分子量240,000のプレポリマー溶液2を得た。なお、プレポリマー溶液2の重合率は38質量%であり、重合に供されなかった残部は本発明でいうところの重合性コモノマーである。
コンデンサー、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を備えた容量2Lの丸底フラスコに、アクリロイルモルフォリン(ACMO;水素供与性モノマー)5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート87質量部、及びアクリル酸8質量部を投入し、窒素パージ後、50℃に加温した。ここに、熱開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V70:和光純薬社製)を0.003質量部を攪拌下に添加して、重合熱により反応溶液を120℃まで達したときに、この混合液を、40℃にまで急冷し、重量平均分子量240,000のプレポリマー溶液3を得た。なお、プレポリマー溶液3の重合率は38質量%であり、重合に供されなかった残部は本発明でいうところの重合性コモノマーである。
コンデンサー、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を備えた容量2Lの丸底フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート92質量部、アクリル酸8質量部を投入し、窒素パージ後、50℃に加温した。ここに、熱開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V70:和光純薬社製)を0.003質量部を攪拌下に添加して、重合熱により反応溶液が120℃まで達したときに、この混合液を、40℃にまで急冷し、重量平均分子量200,000の、比較製造例のプレポリマー溶液1を得た。なお、比較製造例のプレポリマー溶液1の重合率は40質量%であり、重合に供されなかった残部は本発明でいうところの重合性コモノマーである。
プレポリマー溶液1の100質量部に対して、多官能性モノマー(架橋剤)として、トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部と、開裂型光開始剤として、BASF社製、「IRGACURE651」0.1質量部、及び水素引き抜き型光開始剤として、ジエチルチオキサントン0.1質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。
プレポリマー溶液1の100質量部に対して使用する、開裂型光開始剤及び水素引き抜き型光開始剤の含有量を、それぞれ0.2質量部(実施例2)又は0.3質量部(実施例3)とした点以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
プレポリマー溶液2の100質量部に対して、多官能性モノマー(架橋剤)として、トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部と、開裂型光開始剤として、BASF社製、「IRGACURE651」0.1質量部、及び水素引き抜き型光開始剤として、ジエチルチオキサントン0.3質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。
プレポリマー溶液3の100質量部に対して、多官能性モノマー(架橋剤)として、トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部と、開裂型光開始剤として、BASF社製、「IRGACURE651」0.1質量部、及び水素引き抜き型光開始剤として、ジエチルチオキサントン0.3質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。
プレポリマー溶液1の100質量部に対して、多官能性モノマー(架橋剤)として、トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部と、光開始剤として、BASF社製、「IRGACURE500」0.4質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。なお、「IRGACURE500」に含まれるベンゾフェノンは、水素引き抜き型光開始剤としての作用を有する。
プレポリマー溶液1の100質量部に対して、架橋剤としてN,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(TetradX) 0.2質量部と、開裂型光開始剤として、Lamberti社製、「ESACURE ONE」を0.2質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。
プレポリマー溶液1の100質量部に対して、BASF社製、「IRGACURE651」及びジエチルチオキサントンに代えて、開裂型光開始剤として、Lamberti社製、「ESACURE ONE」を0.2質量部用いた点以外は、実施例1と同様にして粘着テープを得た。
プレポリマー溶液1に代えて、比較製造例のプレポリマー溶液1の100質量部を用いた点以外は、比較例1と同様にして粘着テープを得た。
比較製造例のプレポリマー溶液1の100質量部に対して、多官アクリレートとして、トリメチロールプロパントリアクリレート0.1質量部と、開裂型光開始剤として、Lamberti社製、「ESACURE ONE」0.2質量部を添加した。これを、剥離フィルム上に膜厚が400μmとなるように塗布し、0.8J/cm2で365nmの紫外線を照射して光硬化させて粘着テープを得た。
実施例1から6、比較例1から4の光硬化型粘着剤について、以下のとおり評価を行った。
JIS Z 1541に準拠し、20mm幅に裁断した粘着テープをステンレス板に20mm×20mmの面積が接するように貼付け、温度80℃の条件で1kgの荷重をかけて1時間放置したときのズレ量を観察した。なお、表中の「X分↓」はX分で落下したものを指す。
粘着テープを20mm×50mmの大きさに裁断して試験片を作成した。この試験片から剥離紙を剥離して、表面を研磨し溶剤で清浄したステンレス板に貼り合わせ、温度80℃で90°の方向に荷重500gをかけ、60分間放置したときの剥がれ距離(mm)又は落下までの時間を測定した。なお、表中の「X分↓」はX分で落下したものを指す。
粘着テープを70mm×25mmの大きさに裁断して試験片を作成した。試験片から剥離紙を剥離し、ラミネーターロールを用いて、粘着テープを厚さ2mmのガラス板の片面に、粘着剤層とガラス板とが接するように貼着した。得られた積層体を、50℃/5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持した。次いで23℃/50%RH環境下に1時間放置した後、被着体のガラス板表面に対して90°方向に300mm/minの速度で粘着テープを引っ張り、粘着力(剥離強度;N/m)を測定した。なお、表中、「af」は界面破壊を、「cf」は凝集破壊を示す。
粘着テープから、粘着剤約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定し、次式によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥後重量/粘着剤採取重量)×100(%)
多角度光散乱検出器DAWN HELEOSII(Wyatt製)を用いて分岐度の測定を行った。
Claims (6)
- エチレン性不飽和モノマーと、水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を有するプレポリマーと、水素引き抜き型光開始剤と、を含む、光硬化型粘着剤前駆体組成物。
- 前記水素供与性モノマーが、エチレン性不飽和二重結合と、アミノ基、アミド基、水酸基、チオール基、複素環、及びアルキレンオキシド鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を有する、請求項1に記載の光硬化型粘着剤前駆体組成物。
- 前記水素引き抜き型光開始剤が、ベンゾフェノン型光開始剤、キサントン型光開始剤、及びチオキサントン型光開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の光開始剤である、請求項1又は2に記載の光硬化型粘着剤前駆体組成物。
- さらに多官能性モノマーを含有する、請求項1から3のいずれかに記載の光硬化型粘着剤前駆体組成物。
- 請求項1から4のいずれかに記載の光硬化型粘着剤前駆体組成物に含まれるプレポリマーが、水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を基点として枝分かれした、ランダム分岐(共)重合体を含む光硬化型粘着剤であって、
前記ランダム分岐(共)重合体の分岐度が0.25以上0.44以下である、光硬化型粘着剤。 - エチレン性不飽和モノマーと、水素供与性モノマーとを含むモノマー組成物を部分共重合させ、エチレン性不飽和モノマー及び水素供与性モノマーに由来するモノマー単位を有するプレポリマーを形成する工程と、
前記プレポリマーを含む組成物に水素引き抜き型光開始剤を配合し、光硬化型粘着剤前駆体組成物を調製する工程と、
前記光硬化型粘着剤前駆体組成物に光照射を行う工程と、を有する光硬化型粘着剤の製造方法。
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