しかしながら、図18に示すような施工方法では、スリット9aにナット101を挿入してから上部空間8内においてナット101の姿勢を安定させるまでに手間がかかるという問題がある。特に上記のような作業は、作業者にとって高所作業となるため、1つの吊りボルト7の取り付け作業が完了する度に、作業者が一度床面に降りて脚立や踏み台などを次の取り付け位置へ移動させることが必要となるため、複数の吊りボルト7を取り付ける場合に多大な時間と手間を要するという問題がある。
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、スリットが設けられたデッキプレートに対して吊りボルトを取り付ける際の作業効率を従来よりも向上させた吊りボルト支持金具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、下面に所定幅(D)のスリット(9a)が形成され、該スリット(9a)の両端から上部に向かって互いの間隔を漸次拡大する一対の壁部(9b,9c)と、前記スリット(9a)から所定高さの位置で前記一対の壁部(9b,9c)の上端部を互いに連結する天板部(9d)とを有するデッキプレート(9)に取り付けられ、前記デッキプレート(9)に取り付けられた状態で吊りボルト(7)を支持する吊りボルト支持金具(1,1a,60)であって、前記デッキプレート(9)の前記スリット(9a)から前記一対の壁部(9b,9c)の間の空間に差し込まれる雄螺子部材(4,61a)と、前記雄螺子部材(4,61a)に装着され、前記雄螺子部材(4,61a)を挟んで互いに対向するように立設した一対の拡張壁部(5b,5c)を有し、前記一対の拡張壁部(5b,5c)が前記デッキプレート(9)における前記スリット(9a)の幅よりも小さい間隔に配置された拡張部材(5)と、前記雄螺子部材(4,61a)の上端に設けられ、前記雄螺子部材(4,61a)の軸方向と直交する長手方向において前記一対の拡張壁部(5b,5c)の先端と接合し、前記雄螺子部材(4,61a)の軸方向と直交する短手方向における最大幅が前記デッキプレート(9)における前記スリット(9a)の幅よりも小さく、且つ、前記最大幅の部分から下部に向かって幅が漸次縮小する形状であり、前記最大幅の部分よりも下部が前記一対の拡張壁部(5b,5c)に嵌入した状態に取り付けられる拡幅部材(6)と、前記雄螺子部材(4,61a)の下部に設けられ、前記デッキプレート(9)の下面に接合し、前記吊りボルト(7)を取り付け可能な吊りボルト支持部材(70)と、を備えることを特徴とする構成である。
この第1の構成によれば、簡単な作業で吊りボルト支持金具をデッキプレートのスリットに対して強固に固定することが可能であり、従来よりも作業効率が向上する。
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a)において、前記吊りボルト支持部材(70)は、ロングナット(2)によって構成され、前記ロングナット(2)の下面に形成された螺子孔(2b)に前記吊りボルト(7)を装着可能としたことを特徴とする構成である。
この第2の構成によれば、デッキプレートのスリットが設けられた位置に吊りボルトを垂下させた状態に取り付けることが可能である。
第3に、本発明は、上記第2の構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a)において、前記吊りボルト支持部材(70)は、前記雄螺子部材(4)に装着されるワッシャー(3)をさらに備え、前記拡幅部材(6)及び前記拡張部材(5)を前記デッキプレート(9)における前記スリット(9a)から前記一対の壁部(9b,9c)の間に挿入し、且つ、前記ワッシャー(3)を前記デッキプレート(9)における前記スリット(9a)の縁部に当接させた状態で前記ロングナット(2)が回転することに伴い、前記拡幅部材(6)を降下させて前記一対の拡張壁部(5b,5c)の内側に進入させることにより前記一対の拡張壁部(5b,5c)を拡張させ、前記一対の拡張壁部(5b,5c)を前記デッキプレート(9)における前記一対の壁部(9b,9c)に密着固定することを特徴とする構成である。
第4に、本発明は、上記第2又は第3の構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a)において、前記雄螺子部材(4)は、前記吊りボルト(7)よりも小径であることを特徴とする構成である。
この第4の構成によれば、デッキプレートにおけるスリットの隙間が狭い場合でも、吊りボルト支持金具をスリットに固定することができる。
第5に、本発明は、上記第2乃至第4のいずれかの構成を有する吊りボルト支持金具(1a)において、前記ロングナット(2)は、下面から第1の深さの位置まで所定内径の孔(30a)が形成され、前記第1の深さの位置から第2の深さの位置まで前記所定内径よりも小径であり、且つ、前記吊りボルト(7)を装着可能な螺子孔(2b)が形成され、前記所定内径の孔(30a)が形成された部分の外側の所定位置に環状の破断溝(31)を設けたことを特徴とする構成である。
この第5の構成によれば、吊りボルト支持金具をデッキプレートのスリットに取り付ける際のトルクを管理することができるため、安定した強度で吊りボルト支持金具を取り付けることが可能である。
第6に、本発明は、上記第5の構成を有する吊りボルト支持金具(1a)において、前記所定内径の孔(30a)を閉鎖するキャップ部材(30b)をさらに備え、前記破断溝(31)が破断するとき、前記キャップ部材(30b)は、前記ロングナット(2)の前記破断溝(31)よりも下端部側と共に前記ロングナット(2)から取り除かれることを特徴とする構成である。
この第6の構成によれば、吊りボルト支持金具が一定の強度以上で取り付けられていないときには、キャップ部材によって吊りボルトの装着を防止することができる。
第7に、本発明は、上記第2乃至第6のいずれかの構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a)において、前記ロングナット(2)は、前記吊りボルト(7)を装着可能な螺子孔(2b)の底部近傍位置に前記ロングナット(2)の側面に連通する連通孔(2c)を有し、前記螺子孔(2b)の底部に、前記吊りボルト(7)の装着に伴って変形する変形材(40)が設けられ、前記変形材(40)は、前記螺子孔(2b)に対する前記吊りボルト(7)の装着に伴って変形し、その一部を前記連通孔(2c)から外部に突出させることを特徴とする構成である。
この第6の構成によれば、ロングナットの下面に対する吊りボルトの装着状態を簡単に確認することができるため、作業効率が向上する。
第8に、本発明は、上記第1の構成を有する吊りボルト支持金具(60)において、前記デッキプレート(9)には、複数の前記スリット(9a)が所定間隔で配置されており、前記吊りボルト支持部材(70)は、前記デッキプレート(9)において前記複数のスリット(9a)が設けられた間隔よりも長尺のレール部材(65)と、前記レール部材(65)によって支持され、前記レール部材(65)の長手方向に沿って位置調整可能であり、前記吊りボルト(7)を取り付け可能な吊りボルト連結部材(67)と、を備えることを特徴とする構成である。
この第9の構成によれば、デッキプレートのスリットが設けられていない位置においても吊りボルトを垂下させた状態に取り付けることが可能である。
第9に、本発明は、上記第8の構成を有する吊りボルト支持金具(60)において、前記吊りボルト連結部材(67)は、前記吊りボルト(7)を装着可能な貫通螺子孔を有し、前記貫通螺子孔に装着される前記吊りボルト(7)の先端が前記レール部材(65)を押圧することにより、前記レール部材(65)の長手方向において固定されることを特徴とする構成である。
この第9の構成によれば、レール部材の任意の位置に、吊りボルトを固定することができるようになる。
第10に、本発明は、上記第1乃至第6のいずれかの構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a,60)において、前記拡張部材(5)は、前記基端部(5a)の中央に前記雄螺子部材(4)を挿通可能な挿通孔(11)を有し、前記一対の拡張壁部(5b,5c)の両端部を中央部よりも内側に向かって肉厚にした肉厚部(15)を有することを特徴とする構成である。
第11に、本発明は、上記第10の構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a,60)において、前記肉厚部(15)は、前記一対の拡張壁部(5b,5c)を構成するプレート部材を前記一対の拡張壁部(5b,5c)の内側に重ね合わせた構成であることを特徴としている。
第12に、本発明は、上記第10又は第11の構成を有する吊りボルト支持金具(1,1a,60)において、前記一対の拡張壁部(5b,5c)のそれぞれの両端部に設けられる互いに対向する前記肉厚部(15)の間隔は、前記雄螺子部材(4)の直径よりも小さいことを特徴とする構成である。
本発明によれば、スリットが設けられたデッキプレートに対して吊りボルトを取り付ける際の作業効率を改善することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である吊りボルト支持金具1の各構成部材を分離して示す斜視図であり、図2は、その吊りボルト支持金具1の各構成部材を組み付けた状態を示す斜視図である。さらに図3(a)は吊りボルト支持金具1の側面図であり、図3(b)は吊りボルト支持金具1の断面図である。この吊りボルト支持金具1は、例えば図1に示すように、ロングナット2と、ワッシャー3と、雄螺子部材4と、拡張部材5と、拡幅部材6とを備えて構成される。そして吊りボルト支持金具1は、図2に示すように、それら複数の構成部材が組み付けられた状態で使用される。例えば図5に示すように、吊りボルト支持金具1は、下面に所定幅Dのスリット9aが形成され、該スリット9aの両端から上部に向かって互いの間隔を漸次拡大する一対の壁部9b,9cと、スリット9aから所定高さの位置で一対の壁部9b,9cの上端部を互いに連結する天板部9dとを有するスチール製のデッキプレート9に取り付け可能であり、スリット9aから吊りボルト7を吊り下げた状態で支持する金具である。すなわち、吊りボルト支持金具1は、デッキプレート9のスリット9aの上部空間8において一対の壁部9b,9cと係合するように取り付けられ、図2に示すようにロングナット2の下面に形成される螺子孔2bに対して吊りボルト7が装着された状態で吊りボルト7を支持する金具である。
例えば吊りボルト支持金具1は、デッキプレート9の上面にコンクリートなどの天井スラブSが打設された後に、スリット9aの上部空間8に固定される。このとき、スリット9aの幅Dは、例えば12〜14mm程度である。一方、吊りボルト7として、例えばM10のボルトが用いられる場合、その直径は10mmよりも若干小さい寸法である。そのため、本実施形態の吊りボルト支持金具1は、吊りボルト7の直径に対して概ね20〜40%程度大きい幅Dのスリット9aを介して上部空間8に取り付けられるものである。以下、このような吊りボルト支持金具1について詳しく説明する。
吊りボルト支持金具1のロングナット2及びワッシャー3は、雄螺子部材4の下部に取り付けられ、デッキプレート9の下面と接合した状態で吊りボルト7を取り付け可能な吊りボルト支持部材70を構成する部材である。つまり、吊りボルト支持部材70は、デッキプレート9の下面から吊りボルト7を垂下させた状態に支持する部材である。
吊りボルト支持金具1のロングナット2は、雄螺子部材4の軸方向(上下方向)に沿って所定長さを有し、その上面及び下面の双方に螺子孔2a,2bが形成された六角ナットである。2つの螺子孔2a,2bは、例えば図3(b)に示すように、それぞれ異なるサイズの雄螺子と螺合するように異径の螺子孔として形成される。例えば、ロングナット2の上面に形成される螺子孔2aは、M8のボルトと螺合するようにM8のサイズの螺子孔が形成される。またロングナット2の下面に吊りボルト7を装着する場合、下面に形成される螺子孔2bは、例えばM10の吊りボルト7と螺合するようにM10のサイズの螺子孔が形成される。そして図3(b)に示すように、ロングナット2は、そのほぼ中央の位置で第1の螺子孔2aと、第2の螺子孔2bとが互いに連通するように構成される。尚、以下の説明において第1の螺子孔2a及び第2の螺子孔2bの底部とは、第1の螺子孔2aと第2の螺子孔2bとが互いに連通した部分を指している。
ただし、吊りボルト7の直径に対してデッキプレート9のスリット9aの幅Dが比較的大きい場合(例えばスリット9aの幅Dが吊りボルト7の直径に対して概ね80%程度以上大きい場合)は、第1の螺子孔2aと第2の螺子孔2bとを同サイズの螺子孔として構成しても良い。また第1の螺子孔2aと第2の螺子孔2bとは必ずしもロングナット2の内部で連通していなくても良い。
雄螺子部材4は、軸方向に沿って所定長さを有し、その軸方向の全域に亘って外周面に雄螺子4aが形成されたものである。例えば、雄螺子部材4は、吊りボルト7よりも小径であるM8のボルトによって構成される。そして雄螺子部材4は、その下部がロングナット2の面に形成された螺子孔2aに装着される。尚、本実施形態では、例えば図3に示すように雄螺子部材4の下端が螺子孔2aの底部から若干浮いた状態となるように雄螺子部材4が螺子孔2aに取り付けられる。
ワッシャー3は、その中心に雄螺子部材4を挿通可能な孔3aが形成された円盤状の部材である。ワッシャー3の外径は、デッキプレート9におけるスリット9aの幅Dよりも大きく形成される。また孔3aの内径は、雄螺子部材4の外径よりも大きく、且つ、ロングナット2の外径よりも小さく形成される。このワッシャー3は、その中心の孔3aに対して、ロングナット2の上面に装着された雄螺子部材4が挿通されることにより吊りボルト支持金具1に取り付けられる。つまり、ワッシャー3は、その下面がロングナット2の上面と接合した状態に取り付けられる。
拡張部材5は、雄螺子部材4を挿通する孔11が形成された基端部5aと、その基端部5aの両端から互いに所定間隔を隔てて略平行な状態で対向するように立設した一対の拡張壁部5b,5cとを有する。このような拡張部材5は、予め所定形状に加工された金属プレートを折曲させることにより形成される部材である。
図4は、拡張部材5の母材となる金属プレート10及び拡張部材5を上方から視た平面図を示す図である。まず拡張部材5の母材となる金属プレート10は、図4(a)に示すように、概略H字状の形状をしており、長手方向両端それぞれの2箇所(短手方向における両端側2箇所)を外側に延設した合計4つの延設部12を有している。また金属プレート10は、その中央に雄螺子部材4の外径よりも若干大きな孔11を有している。そして拡張部材5は、4つの延設部12のそれぞれをその根元で内側に180度折曲させた後、孔11の近傍2箇所の位置で金属プレート10を90度折曲させることにより、基端部5aの両端から立設する一対の拡張壁部5b,5cを形成している。これら一対の拡張壁部5b,5cは、内側から外方向への押圧力が作用すると、互いの先端を拡開方向に変位させることが可能である。
図4(b)に示すように拡張部材5は、一対の拡張壁部5b,5cの両端に延設部12が内側に折り曲げられて形成される肉厚部15を有している。この肉厚部15は、金属プレート10が2枚分重ね合わせられた厚みを有している。一方、一対の拡張壁部5b,5cの中央部16は、金属プレート10が重ね合わせられていないため、肉厚部15よりも薄くなっている。そして図4(b)に示すように、一対の拡張壁部5b,5cの中央部16の間隔は、基端部5aに形成される孔11の直径とほぼ同じであり、孔11に挿通される雄螺子部材4の外径よりも若干大きい程度の間隔である。これに対し、一対の拡張壁部5b,5cの両端の肉厚部15は中央部16の2倍の厚みがあるため、互いに対向する肉厚部15の間隔は雄螺子部材4の直径よりも小さくなる。その結果、基端部5aの孔11に雄螺子部材4が挿通されるときでも、一対の拡張壁部5b,5cの両端に設けた肉厚部15は、雄螺子部材4の周囲外側に位置するため、雄螺子部材4と干渉しないようになっている。
また拡張部材5は、一対の拡張壁部5b,5cの横方向の長さL1がデッキプレート9におけるスリット9aの間隔Dよりも若干大きい長さに形成されており、例えば15mm程度の所定長さに形成される。すなわち、一対の拡張壁部5b,5cの横方向の長さL1と、デッキプレート9におけるスリット9aの間隔Dとの関係は、L1>Dとなる。また一対の拡張壁部5b,5cは、デッキプレート9におけるスリット9aの幅Dと同等若しくはそれよりも小さい間隔W1で立設するように配置される。すなわち、略平行な状態に立設した一対の拡張壁部5b,5cの外側の側面同士の間隔W1と、デッキプレート9におけるスリット9aの間隔Dとの関係は、W1≦Dとなる。これにより、拡張部材5は、一対の拡張壁部5b,5cをスリット9aと平行な状態としたときに、スリット9aを介してスリット9aの上部空間8へ挿入可能となり、しかもスリット9aの上部空間8へ挿入させた後、雄螺子部材4の軸周りには回転しないようになる。
上記のように構成される拡張部材5は、図1に示すように、一対の拡張壁部5b,5cの先端を上向きにした状態で、基端部5aに形成された孔11に雄螺子部材4が挿通される。そのため、拡張部材5が雄螺子部材4に装着されると、基端部5aがワッシャー3の上面と接合した状態となる。
拡幅部材6は、例えば雄螺子部材4の先端(上端)に取り付けられるナット部材である。本実施形態における拡幅部材6は、例えば所定長さを有する円柱状金具を横方向に配置し、その外周面に金具の中心を通って上下方向に貫通する貫通螺子孔6aを形成した部材である。貫通螺子孔6aは、雄螺子部材4の先端と螺合する螺子孔であり、例えばM8のサイズの雄螺子部材4と螺合するようにM8のサイズの螺子孔として形成される。
拡幅部材6は、雄螺子部材4の軸方向と直交する長手方向において一対の拡張壁部5b,5cと略同一の長さL2を有している。つまり、拡幅部材6の長手方向の長さL2は、一対の拡張壁部5b,5cの横方向の長さL1と略同一である。また雄螺子部材4の軸方向と直交する短手方向における拡幅部材6の最大幅W2は、デッキプレート9におけるスリット9aの幅Dと同等若しくはそれよりも小さい幅である。すなわち、拡幅部材6の最大幅W2と、デッキプレート9におけるスリット9aの間隔Dとの関係は、W2≦Dとなる。本実施形態では、拡幅部材6の最大幅W2は、図3(a)に示すように、一対の拡張壁部5b,5cの外側の側面同士の間隔W1と略同一に形成される。すなわち、本実施形態では、一対の拡張壁部5b,5cの外側の側面同士の間隔W1と、拡幅部材6の最大幅W2との関係は、W1=W2=Wとなるように形成される。尚、拡幅部材6の最大幅W2は、円柱状金具の直径に相当する。また拡幅部材6は、円柱状金具を横方向に配置して使用されるため、雄螺子部材4の軸方向と直交する短手方向における最大幅W2の部分から下部に向かってその幅が漸次縮小する形状を有している。
上記のような拡幅部材6は、図2に示すように、貫通螺子孔6aに対して雄螺子部材4の先端4bが螺合装着される。このとき、拡幅部材6は、一対の拡張壁部5b,5cと平行な状態となるように雄螺子部材4の先端に装着されると共に、拡幅部材6の下部が一対の拡張壁部5b,5cの先端に嵌入した状態となるように雄螺子部材4の先端4bに装着される。言い換えると、図3(a)に示すように、拡幅部材6の円弧状の下部が一対の拡張壁部5b,5cにおける肉厚部15の先端部分の内側、すなわち、延設部12を折曲させたことによって生じる曲線部分の内側に係合するように雄螺子部材4に装着される。拡幅部材6の下部を一対の拡張壁部5b,5cの先端と係合した状態に装着することにより、拡幅部材6が雄螺子部材4の軸周り方向へ回転することを規制することができる。
上記のようにして各構成部材が組み付けられると、吊りボルト支持金具1は、図3(a)に示すように、ワッシャー3よりも上側の上部がスリット9aの幅Dよりも小さい幅Wとなる。そのため、吊りボルト支持金具1は、拡張部材5及び拡幅部材6から成る上部をデッキプレート9におけるスリット9aの隙間から上部空間8へ挿入することが可能な金具として構成される。尚、上記においては、ロングナット2の上面に形成した螺子孔2aに対して雄螺子部材4を装着し、その後、ワッシャー3、拡張部材5及び拡幅部材6を順に雄螺子部材4へ装着していく組み付け順序を例示したが、吊りボルト支持金具1の組み付け順序はこれに限られるものではない。すなわち、吊りボルト支持金具1は、上記とは逆に、雄螺子部材4の先端4bに対してまず拡幅部材6を装着し、その後、拡張部材5、ワッシャー3及びロングナット2を順に雄螺子部材4の下部へ装着していくようにしても良い。
次に上記のような吊りボルト支持金具1を用いてデッキプレート9に吊りボルト7を取り付ける施工方法について説明する。図5乃至図8は、吊りボルト支持金具1を用いた施工方法における各工程を示す図である。まず図5に示すように、作業者は、吊りボルト支持金具1のロングナット2の下部に、作業用工具20を取り付ける。作業用工具20は、例えば作業者が床面から作業可能なように長尺状の軸部21と、その軸部21の先端に設けられる係合部22とを有している。係合部22は、ロングナット2の下部を差し込んで保持可能な筒状部であり、その内壁が六角状に形成されており、ロングナット2の外周面と係合するように構成される。作業者は、吊りボルト支持金具1のロングナット2の下部に作業用工具20を取り付けた後、軸部21の下端を保持した状態で軸部21の先端を持ち上げ、吊りボルト支持金具1をデッキプレート9のスリット9aの近傍位置へ配置する。そして作業者は、吊りボルト支持金具1の拡幅部材6をデッキプレート9のスリット9aと略平行な状態にする。これにより、吊りボルト支持金具1の上部をスリット9aの隙間からスリット9aの上部空間8へ挿入することが可能となる。そして作業者は、作業用工具20の軸部21を持ち上げることにより、吊りボルト支持金具1の上部をスリット9aの下方から上方へ挿入する。このとき、作業者は、スリット9aの縁部にワッシャー3が当接した状態となるまで吊りボルト支持金具1の上部を挿入する。つまり、ワッシャー3は、スリット9aの上部空間8に対する吊りボルト支持金具1の過剰な挿入を防止するストッパーとしての機能を有すると共に、拡張部材5の位置をスリット9aの近傍位置に位置決めする機能を有している。これにより、図6に示すような状態となる。つまり、吊りボルト支持金具1の拡張部材5及び拡幅部材6がデッキプレート9におけるスリット9aの上部空間8へ挿入された状態となる。
そして作業者は、作業用工具20の軸部21の下端に電動工具などを取り付け、軸部21を所定の回転方向(右回り方向)Rに回転させる。作業用工具20が回転すると、吊りボルト支持金具1のロングナット2が作業用工具20と共に回転する。その結果、雄螺子部材4も作業用工具20と共に回転しようとし、さらにスリット9aの上部空間8に挿入された拡張部材5及び拡幅部材6も回転方向Rに回転しようとする。ところが、上述したように一対の拡張壁部5b,5cの横方向の長さL1及び拡幅部材6の長手方向の長さL2は、スリット9aの間隔Dよりも大きいため、一対の拡張壁部5b,5cが上部空間8における一対の壁部9b,9cと干渉する。したがって、ロングナット2が回転しても、拡張部材5及び拡幅部材6は、一対の壁部9b,9cによって回転が規制されるため、ロングナット2と共に回転することはない。また雄螺子部材4も、拡幅部材6が回転しないため、ロングナット2と共に回転することはない。その結果、雄螺子部材4は、ロングナット2の回転に伴って下方へ移動する。つまり、雄螺子部材4は、ロングナット2に形成された螺子孔2aの底部へ向かって移動するのである。これに伴い、拡幅部材6も雄螺子部材4と共に下方へ移動する。このとき、拡幅部材6は、拡張部材5の一対の拡張壁部5b,5cを外側へ押圧する。そして拡幅部材6の降下に伴い、一対の拡張壁部5b,5cは、拡幅部材6からの押圧力を受けて、その先端を互いに拡開させる方向に変形させていく。そして図7に示すように一対の拡張壁部5b,5cがスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cを押圧した状態となって吊りボルト支持金具1がスリット9aの上部空間8に固定される。
尚、仮に雄螺子部材4の下端が予め螺子孔2aの底部まで差し込まれている場合であっても上述した作用に変わりはない。すなわち、雄螺子部材4の下端が螺子孔2aの底部に達している場合、ロングナット2が回転すると、雄螺子部材4は、ロングナット2と共に回転する。このとき、雄螺子部材4は、回転しない拡幅部材6の貫通螺子孔6aと螺合した状態のままで回転するのである。これに伴い、雄螺子部材4の先端に螺合している拡幅部材6は、雄螺子部材4の軸方向に沿って下方へ移動する。そして拡幅部材6の降下に伴い、一対の拡張壁部5b,5cは、その先端を互いに拡開させる方向に変形させていき、一対の壁部9b,9cを内側から押圧する。その結果、吊りボルト支持金具1をスリット9aの上部空間8に固定することができる。
吊りボルト支持金具1は、上記のようにしてスリット9aの上部空間8に取り付けられると、拡幅部材6と一対の壁部9b,9cの間に一対の拡張壁部5b,5cの肉厚部15を挟み込んだ状態となる。つまり、吊りボルト支持金具1は、一対の拡張壁部5b,5cの肉厚部15を介してスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cを押圧することにより、拡幅部材6の下方への移動量を小さくできるため、金具全体として小型化できるという利点がある。また一対の拡張壁部5b,5cの肉厚部15を介してスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cを押圧することにより、スリット9aの間隔Dが14mm程度の比較的広い間隔となっている場合であっても、一対の拡張壁部5b,5cを確実にスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cに密着させて固定することができるという利点もある。
そして図7に示すように一対の拡張壁部5b,5cがスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cに密着した状態となって吊りボルト支持金具1が固定されると、作業者は、作業用工具20をロングナット2の下部から引き抜く。その後、作業者は、図8に示すように、吊りボルト7をロングナット2の下面に形成された螺子孔2bに装着することにより、吊りボルト7がデッキプレート9に取り付けられる。このときもまた、作業者は、床面に居ながら吊りボルト7をロングナット2の螺子孔2bに装着することが可能である。
以上で、吊りボルト支持金具1を用いて吊りボルト7をデッキプレート9に固定する施工が完了する。そして上述した各工程の作業は、全て作業者が床面から行うことができる作業である。そのため、作業者は高所作業を行う必要がないため、従来と比較すると、作業効率が著しく向上する。特に、上述した施工方法では、吊りボルト7を支持する吊りボルト支持金具1がスリット9aの上部空間8に対して強固に固定されるため、吊りボルト7を安定させた姿勢で保持することが可能であり、吊りボルト7の振動も抑制することができるという利点がある。
尚、上記においては、ロングナット2と雄螺子部材4とが別部材として構成される場合を例示したが、これに限られるものではなく、ロングナット2と雄螺子部材4とが予め一体形成された部材を用いても良い。図9は、ロングナット2と雄螺子部材4とが一体形成された部材51の一例を示す図であり、図9(a)は部材51の斜視図を、図9(b)は部材51の断面図を示している。図9に示すように、この部材51は、ロングナット2の一端に雄螺子部材4を予め接合させた一部品として構成され、ロングナット2の他端(下面)に吊りボルト7を装着するための螺子孔2bが形成される。このようにロングナット2と雄螺子部材4とを一体化させた部材51は、吊りボルト7を装着するための螺子孔2bをより深く形成することができるため、吊りボルト7を装着したときの安定性が向上する。また部材51を用いれば、ロングナット2と雄螺子部材4とを組み付ける必要がなくなるため、作業効率がより一層向上する。
図9に示すようにロングナット2と雄螺子部材4とが一体化された部材51を用いた吊りボルト支持金具1の施工時には、ロングナット2が回転すると、当然に雄螺子部材4がロングナット2と共に回転する。そのため、雄螺子部材4の先端に螺合している拡幅部材6は、雄螺子部材4の軸方向に沿って下方へ移動し、一対の拡張壁部5b,5cを拡開させる方向に変形させていく。そして一対の拡張壁部5b,5cが一対の壁部9b,9cを内側から押圧するようになり、吊りボルト支持金具1をスリット9aの上部空間8に固定することができる。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。図10は、本発明の第2実施形態である吊りボルト支持金具1aの各構成部材を組み付けた状態を示す斜視図である。また図11(a)は吊りボルト支持金具1aの断面図であり、図11(b)はロングナット2の螺子孔2bの底部に予め装着される変形材40を示す図である。この吊りボルト支持金具1aは、第1実施形態の吊りボルト支持金具1と同様に、ロングナット2と、ワッシャー3と、雄螺子部材4と、拡張部材5と、拡幅部材6とを備えている。この吊りボルト支持金具1aが、第1実施形態の吊りボルト支持金具1と異なる点は、ロングナット2の構成である。以下、第2実施形態のロングナット2の構成について詳しく説明する。
本実施形態のロングナット2は、例えば図11(a)に示すように、上面から所定深さの位置まで雄螺子部材4を装着可能な螺子孔2aが形成されると共に、下面から第1の深さの位置まで所定内径の孔30aが形成され、第1の深さの位置から第2の深さの位置まで孔30aの内径よりも小径であり、且つ、吊りボルト7を装着可能な螺子孔2bが形成された内部構造を有している。またロングナット2は、図10に示すように、孔30aが形成された部分の外側の所定位置に環状の破断溝31を設けた構成である。そしてロングナット2は、その破断溝31よりも下の部分を、作業用工具20を装着する工具装着部30としている。
破断溝31は、ロングナット2の工具装着部30に作用するトルクが所定値以上になると破断するように予め設計された薄肉部である。すなわち、破断溝31が設けられた部分のロングナット2の肉厚は、破断溝31を破断させるトルクに応じた肉厚に予め設計されている。このような破断溝31は、所定内径の孔30aから螺子孔2bへと移行する部分の近傍位置に設けられる。
またロングナット2は、吊りボルト7を装着するための螺子孔2bの底部近傍位置にロングナット2の側面に連通する連通孔2cを有している。そして螺子孔2bの底部には、図11(a)に示すように吊りボルト7の装着に伴って変形する変形材40が設けられる。この変形材40は、例えばポリプロピレンなどの可撓性のある樹脂で成型された部品であり、例えば図11(b)に示すように、円盤状に形成される装着部41と、その装着部41の周縁部に接続されて立設状態に設けられる概略L字形の可撓部42とを有している。装着部41は、螺子孔2bの内径とほぼ同径若しくはそれよりも若干小径に形成され、ロングナット2の下面の孔30aから挿入されて螺子孔2bの底部に装着される。可撓部42は、一端が装着部41の周縁部に固定されており、その中央で略L字状に折り曲げられた形状を有している。この可撓部42の他端側の先端部43は、装着部41の周縁部よりも若干外側に突き出した状態となるように予め形成される。尚、変形材40は、作業者が床面から視認可能なように例えば赤色や青色などの所定の色に着色されたものであることが好ましい。
このような変形材40は、図11(a)に示すように所定内径の孔30aから挿入されるとき、装着部41を螺子孔2bの底部に向けた状態で挿入される。また可撓部42は、その中央の折り曲げ角度を若干小さくした状態に圧縮された状態で挿入される。そして装着部41が螺子孔2bの底部まで押し込まれることにより、変形材40が螺子孔2bの底部に装着される。このとき、可撓部42の先端部43は、螺子孔2bの底部近傍から外側に連通している連通孔2cに臨んだ位置に配置される。これにより、例えば図10に示すようにロングナット2に形成された連通孔2cの奥に、変形材40の可撓部42の先端部43が位置する状態となる。
さらにロングナット2は、下面に形成された孔30aの開口部を塞ぐキャップ部材30bを備えている。キャップ部材30bは、吊りボルト支持金具1aの施工が完了していない状態で螺子孔2bに吊りボルト7が装着されることを防止するために、ロングナット2の下面の孔30aを塞ぐものである。このキャップ部材30bは、金属で形成されたものであっても良いし、また硬化樹脂で形成されたものであっても良い。そしてキャップ部材30bは、予めロングナット2の下面の孔30aに対して嵌め込まされる。このようなキャップ部材30bは、作業者が床面から視認可能なように赤色や黄色などの所定の色に着色されたものであることが好ましい。ただし、キャップ部材30bの色は、上述した変形材40の色とは異なる色を採用することが好ましい。尚、上記以外の構成は、第1実施形態で説明したものと同様である。
そして本実施形態の吊りボルト支持金具1aを用いて吊りボルト7をデッキプレート9におけるスリット9aの上部空間8に施工するとき、作業者は、ロングナット2の破断溝31よりも下方の工具装着部30に対して作業用工具20の係合部22を係合させる。そして作業者は、第1実施形態と同様にして吊りボルト支持金具1aを、スリット9aの上部空間8に固定する。すなわち、作業者は、吊りボルト支持金具1aの拡張部材5及び拡幅部材6をスリット9aの上部空間8に挿入し、ワッシャー3をスリット9aの縁部に押し当てた状態で作業用工具20の軸部21を電動工具などで回転させることにより、拡幅部材6を雄螺子部材4に沿って下方に移動させると共に、一対の拡張壁部5b,5cを拡開させて吊りボルト支持金具1aを上部空間8に固定する。このとき、拡幅部材6が雄螺子部材4に沿って下方へ移動する程、ロングナット2を回転させるときのトルクが上昇する。そして一対の拡張壁部5b,5cが上部空間8の一対の壁部9b,9cを押圧する力が増し、吊りボルト支持金具1が強固に固定された状態になると、ロングナット2を回転させるときのトルクが所定値を超える。このとき、図12に示すように、ロングナット2に形成されている破断溝31が破断する。すなわち、本実施形態の吊りボルト支持金具1aは、破断溝31が破断することにより、スリット9aの上部空間8に対して強固な状態で取り付けられたことを作業者に示すことができるのである。それ故、作業者によって締め付け強度にばらつきなどが生じることはなく、安定した施工状態を実現することができる。
また図12に示すように、破断溝31が破断すると、ロングナット2の工具装着部30は作業用工具20の係合部22に係合した状態でロングナット2から離脱する。このとき、キャップ部材30bも工具装着部30と共にロングナット2から離脱する。その結果、ロングナット2の下面は、吊りボルト7を装着するための螺子孔2bを開放した状態となる。
そして作業者は、図13に示すように、ロングナット2の下面において開放された螺子孔2bに対し、吊りボルト7を回転させながら挿入していく。吊りボルト7の先端が螺子孔2bの底部に装着された変形材40の可撓部42に接触し、更に吊りボルト7が挿入されると、変形材40の可撓部42が吊りボルト7の先端によって押圧されるため、可撓部42の先端部43がロングナット2の連通孔2cから外側に出現するようになる。そして更に吊りボルト7の先端が螺子孔2bの底部近傍の十分な深さまで進入すると、図14に示すように、可撓部42の先端部43は、連通孔2cから所定長さ突出した状態となる。これにより、作業者は、床面で作業を行いながら、吊りボルト7がロングナット2の螺子孔2bに対して十分に差し込まれた状態であることを確認することができる。したがって、作業者によって吊りボルト7の挿入深さにばらつきなどが生じることはなく、安定した施工状態を実現することができる。
このように本実施形態の吊りボルト支持金具1aは、第1実施形態と同様に作業効率に優れているだけではなく、作業者による施工作業のばらつきを抑制し、安定した施工状態を実現することができるという利点もある。特に本実施形態の吊りボルト支持金具1aでは、破断溝31が破断していない状態のときにはロングナット2の下面にキャップ部材30bが付加されているため、スリット9aの上部空間8に対して十分な強度で固定されていない状態のときに吊りボルト7がロングナット2に装着されてしまうことを防止することができるという利点もある。
尚、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、上述したロングナット2と雄螺子部材4とを予め一体形成した部材を用いるようにしても良い。
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上述した吊りボルト支持金具1,1aは、デッキプレート9においてスリット9aが設けられている位置で吊りボルト7を垂下させた状態に支持する金具である。言い換えると、上述した吊りボルト支持金具1,1aでは、スリット9aが設けられていない位置に対して吊りボルト7を垂下させた状態に支持することができない。そこで、本実施形態では、デッキプレート9の下面の任意の位置において吊りボルト7を垂下させた状態に取り付け可能な吊りボルト支持金具の一例について説明する。
図15は、本発明の第3実施形態である吊りボルト支持金具60の各構成部材を示す斜視図である。この吊りボルト支持金具60は、デッキプレート9の複数のスリット9aに対して取り付けられ、それら複数のスリット9aの間の任意の位置で吊りボルト7を垂下させた状態に支持可能な金具である。この吊りボルト支持金具60は、デッキプレート9の下面に接合し、吊りボルト7を取り付け可能な吊りボルト支持部材70を備える。この吊りボルト支持部材70として、デッキプレート9において複数のスリット9aが設けられた間隔よりも長尺のレール部材65と、レール部材65によって支持され、レール部材65の長手方向に沿って位置調整可能であり、吊りボルト7を取り付け可能な吊りボルト連結部材67とを備えている。
レール部材65は、図15に示すように、例えばC形鋼(リップ溝形鋼)によって構成される。すなわち、レール部材65は、天板部65aと、天板部65aの両側部から垂下する一対の側板部65b,65bと、一対の側板部65b,65bの下端部を内側に折曲させた一対のフランジ部65c,65cとを有し、天板部65aの複数箇所にレール部材65の長手方向に延びる長孔65d,65dが設けられた構成である。複数の長孔65d,65dは、それらの中心位置がデッキプレート9のスリット9aの間隔とほぼ一致するように形成される。また一対のフランジ部65c,65cの間隔は、例えばワッシャー3の直径よりも大きく形成される。
吊りボルト連結部材67は、矩形状の平板部67aと、その平板部67aの中央に固定されたナット部67bとを有する。平板部67aの中央には貫通孔が設けられており、その貫通孔と同軸にナット部67bが固定される。そのため、吊りボルト連結部材67は、ナット部67bが固定された位置において上下に貫通する貫通螺子孔を有している。また平板部67aの一辺は、レール部材65の一対の側板部65b,65bの間隔よりも小さく、互いに対向するフランジ部65c,65cの先端の間隔よりも大きいサイズを有している。そのため、吊りボルト連結部材67は、レール部材65の内側に収容可能であり、レール部材65の内側に収容された状態でレール部材65の長手方向に沿って移動可能である。またナット部67bは、吊りボルト7と螺合する雌螺子を有しており、吊りボルト7を取り付け可能である。
また吊りボルト支持金具60は、ワッシャー3と、ボルト61と、拡張部材5と、拡幅部材6とを備えている。これらの部材は、レール部材65に設けられた複数の長孔65d,65dのそれぞれに対して配置され、デッキプレート9に設けられた複数のスリット9aのそれぞれに対してレール部材65を固定する。ボルト61は、雄螺子部材61aと、ボルト頭部61bとを有している。そして拡張部材5及び拡幅部材6は、レール部材65に設けられる長孔65dの上側に配置され、ワッシャー3及びボルト61は長孔65dの下側からレール部材65に取り付けられる。ワッシャー3の直径は、長孔65dの幅よりも大きいため、ボルト61の雄螺子部材61aにワッシャー3が装着された状態で雄螺子部材61aが長孔65dに挿通されると、レール部材65の上側に雄螺子部材61aが突出する。拡張部材5及び拡幅部材6は、その突出した雄螺子部材61aに対して装着される。尚、雄螺子部材61aに対する拡張部材5及び拡幅部材6の装着態様は、第1実施形態で説明したものと同様である。
次に上記のような吊りボルト支持金具60を用いてデッキプレート9に吊りボルト7を取り付ける施工方法について説明する。図16は、吊りボルト支持金具60を用いて吊りボルト7の取り付けが完了した状態を示す一部切欠断面図である。図16に示すような状態に施工するためには、まず吊りボルト支持金具60を複数のスリット9aに対して固定する。すなわち、作業者は、ボルト61の雄螺子部材61aに装着した拡張部材5及び拡幅部材6をスリット9aの隙間から上部空間8へ挿入し、ボルト61のボルト頭部61bに、上述した作業用工具20を装着してボルト61を回転させる。尚、ボルト61は長孔65dに挿入されているため、拡張部材5及び拡幅部材6をスリット9aの隙間から上部空間8へ挿入するとき、レール部材65に対する拡張部材5及び拡幅部材6の相対的な位置を調整することが可能である。そしてボルト61を回転させることにより、拡幅部材6を雄螺子部材61aに沿って下方へ移動させることができる。その結果、拡幅部材6が拡張部材5の一対の拡張壁部5b,5cを外側へ押し拡げるので、一対の拡張壁部5b,5cがスリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cを押圧した状態となって固定される。作業者は、上記のような作業を複数のスリット9aのそれぞれに設けられたボルト61に対して行うことにより、レール部材65をデッキプレート9の下面に接合させた状態で固定することができる。
続いて、作業者は、例えばデッキプレート9に固定されたレール部材65の端部から、吊りボルト7の先端に装着された吊りボルト連結部材67をレール部材65の内側に挿入し、吊りボルト7の取り付け位置まで吊りボルト連結部材67を移動させる。その後、作業者は、吊りボルト7を回転させ、図16に示すように吊りボルト7の先端がレール部材65の天板部65aと接触させる。吊りボルト7の先端が天板部65aと接触し、更に吊りボルト7を回転させようとすると、吊りボルト7の先端がレール部材65の天板部65aを押圧する。このとき、吊りボルト7に作用する軸力が吊りボルト連結部材67の平板部67aを下方に押し下げようとする。この軸力により、平板部67aは、レール部材65に設けられた一対のフランジ部65c,65cと係合した状態となり、一対のフランジ部65c,65cとの間に強い摩擦力を生じさせ、レール部材65の長手方向には移動しない状態となる。つまり、吊りボルト連結部材67は、吊りボルト7から受ける軸力によってレール部材65の所定位置に固定されるのである。これにより、吊りボルト7もレール部材65の長手方向に対して移動しないように固定される。
このように本実施形態では、吊りボルト支持部材70として、レール部材65と、吊りボルト連結部材67とを用いることにより、デッキプレート9においてスリット9aが設けられていない位置であっても吊りボルト7を垂下させた状態に取り付けることができる。それ故、本実施形態の吊りボルト支持金具60は、吊りボルト7を設置する際の自由度が高く、利便性に優れている。
尚、上記においては、デッキプレート9において隣接する2つのスリット9aに対してレール部材65を取り付ける場合を例示したが、これに限られるものではない。例えばレール部材65は、3つ以上のスリット9aに跨って配置されるものであっても構わない。また本実施形態における吊りボルト支持金具60のその他の構成は、第1実施形態で説明したものと同様である。
(変形例)
以上、本発明に関する幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態において説明したものに限定されるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
例えば上記実施形態では、吊りボルト支持金具1,1a,60の施工方法における各工程の作業を、デッキプレート9の上面にコンクリートなどの天井スラブSを打設した後に行う場合を例示した。デッキプレート9の上面に天井スラブSを打設した後であれば、スリット9aの上部空間8における一対の壁部9b,9cに対して押圧力を作用させた場合であっても、一対の壁部9b,9cは変形しない。そのため、天井スラブSの打設後であれば、吊りボルト支持金具1,1aを一対の壁部9b,9cに対して強固に固定することができる。しかし、これに限られるものではなく、例えば、デッキプレート9の肉厚が比較的厚く、天井スラブSが打設される前であっても、一対の壁部9b,9cが変形しない程に強度の高いものであれば、天井スラブSの打設前に上述した各工程の作業を行うようにしても構わない。
また上記実施形態では、拡幅部材6として、所定長さを有する円柱状金具を横方向に配置したものを例示した。しかし、拡幅部材6は、必ずしも円柱状の形態に限られない。例えば、拡幅部材6は、半円柱状の形態であっても良いし、また台形状やインゴット状の形態であっても良い。
また上記実施形態では、拡幅部材6は貫通螺子孔6aを有するナット部材として構成され、貫通螺子孔6aに雄螺子部材4の先端(上端)が螺合することにより、拡幅部材6が雄螺子部材4の先端に取り付けられる形態を例示した。しかし、拡幅部材6は、必ずしもナット部材などのように雄螺子部材4とは異なる部材として設けられるものに限られない。すなわち、拡幅部材6は、雄螺子部材4の頭部として、雄螺子部材4の先端(上端)に対して一体的に設けられたものであっても構わない。ただし、拡幅部材6を雄螺子部材4の頭部として一体的に設ける場合、ロングナット2の回転に伴って拡幅部材6を降下させることが必要となるため、雄螺子部材4とロングナット2とは別部材として構成されることが必要となる。またロングナット2の回転に伴って拡幅部材6を降下させるためには、吊りボルト支持金具1,1aの各部材が組み付けられた状態において雄螺子部材4の下端が螺子孔2aの底部から少なくとも所定距離だけ浮いた状態となっていることが必要である。この場合の所定距離は、拡幅部材6の必要な降下量に合わせて予め設定される。
さらに上記第2実施形態で説明した、ロングナット2に連通孔2cを設けると共に、螺子孔2bの底部に変形材40を設ける構成は、上記第1実施形態に適用することも可能である。