JP2017190379A - プリプレグ、強化繊維、繊維強化複合材料、およびプリプレグの製造方法 - Google Patents

プリプレグ、強化繊維、繊維強化複合材料、およびプリプレグの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、優れた導電性を備える繊維強化複合材料を与えるプリプレグを提供することにある。【解決手段】少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなるプリプレグであって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むプリプレグである。本発明で用いる導電性粒子の体積固有抵抗は5.0×10−3Ωcm以下であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性に優れた繊維強化複合材料プリプレグおよび強化繊維、それらを使用した繊維強化複合材料に関する。
強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料(以下、複合材料と称する)は、軽量、高強度、高弾性率等の特長を有し、航空機、自動車、半導体、電子機器などさまざまな分野に広く応用されている。通常、複合材料に使用されるマトリクス樹脂は電気伝導性や熱伝導性が低いため、たとえ強化繊維に伝導性のある繊維を用いたとしても、繊維間に存在する樹脂により複合材料の電気伝導性、熱伝導性は、金属などの材料と比較して低いという問題がある。
複合材料の伝導性、特に電気伝導性(導電性)を改善するために、マトリクス樹脂組成物に金属粒子やカーボン粒子などの導電材を配合する方法(例えば、特許文献1、2)が提案されている。これらの方法においては、導電性を向上させるために、大量の導電材が必要とされる。しかし、これらの方法では、導電材と樹脂との接着性が低いため、得られる複合材料において、導電性粒子破壊の起点となりやすく、複合材料の機械特性が低下してしまう。
また、強化繊維を金属被覆する方法や、強化繊維に導電性ナノ材料を付着させる方法などにより強化繊維の伝導性を改善し、複合材料の導電性を改善する方法も提案されている。(例えば、特許文献3)しかし、これらの方法を用いて強化繊維自体の導電性を改善しても、強化繊維間の導電性は不十分であり、得られる複合材料の導電性は満足できるものではなかった。
そのため、より少ない導電材により複合材料の導電性を改善することのできる、プリプレグや強化繊維が求められていた。
特開平6−344519号公報 特開平8−34864号公報 特表2015−507100号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、優れた導電性を備える繊維強化複合材料を与える強化繊維およびプリプレグを提供することにある。
上記課題を解決する本発明のプリプレグは、少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなるプリプレグであって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むプリプレグである。本発明で用いる導電性粒子の体積固有抵抗は5.0×10−3Ωcm以下であることが好ましい。
本発明のもう一つの態様である強化繊維は、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物が繊維表面に付着している強化繊維である。
本発明は、少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含む繊維強化複合材料を包含する。
本発明のプリプレグの製造方法は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、繊維状物を強化繊維に付着させる工程、繊維状物が付着した強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させる工程を有するプリプレグの製造方法である。
本発明のプリプレグの製造方法のもう一つの態様は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、繊維状物をマトリクス樹脂に混合し、繊維状物を含むマトリクス樹脂を得る工程、繊維状物を含むマトリクス樹脂を強化繊維に含浸させる工程を有するプリプレグの製造方法である。
本発明のプリプレグによれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明の強化繊維は、導電粒子が局在化し通電効率が高いため、本発明の強化繊維を用いると、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた複合材料を得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料は、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えているため、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性が必要な多くの用途に適用できる。
本発明のプリプレグの製造方法によれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた複合材料を与えるプリプレグを得ることができる。
本発明のプリプレグは、少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなるプリプレグであって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むプリプレグである。このような本発明のプリプレグは、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物が、強化繊維の単繊維間の導電パスを形成するため、このようなプリプレグを成形して得られる複合材料は、厚み方向に優れた導電性を示す。
本発明では、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物のアスペクト比が3以上であることが好ましく、5〜1000であることがより好ましい。繊維状物のアスペクト比がこの範囲であると、繊維状物同士または、繊維状物と強化繊維が接触しやすくなり、より高い通電効果を得ることができる。また、繊維状物の繊維径は0.5〜100μmであることが好ましい。本発明において、繊維状物は、分岐形状を有していてもよく、径が不均一であってもよい。繊維状物がパルプ状であることも好ましい。
本発明で用いる導電性粒子としては、電気的に良好な導体として機能する導電物質であれば良く、導体のみに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が100〜10−9Ωcmである導電物質である。体積固有抵抗が低い方が、得られる複合材料の導電性をより効率よく向上させることができる。特に、体積固有抵抗が5.0×10−3Ωcm以下の導電性粒子であることが好ましい。また、高い導電性及び安定性を示すことから、金属粒子、炭素粒子が好ましく、特に金属粒子であることが好ましい。
バインダー樹脂はマトリクス樹脂と同様であることが好ましい。本発明において、繊維状物は、導電性粒子を体積占有率で20〜95体積%含む繊維状物であることが好ましい。また、プリプレグ全体に占める導電性粒子の添加量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。プリプレグ全体に占める導電性粒子の添加量の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。
導電性粒子がプリプレグ中に占める体積占有率は、複合材料の機械特性の観点から、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましい。体積占有率の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0001体積%以上であることが好ましく、0.0005体積%以上であることがより好ましく、0.001体積%以上であることがさらに好ましく、0.01体積%以上であることが特に好ましい。
本発明のプリプレグは、導電粒子が局在化し通電効率が高いため、体積占有率が低くても、厚み方向に良好な導電性を示すことができる。
上記のような本発明のプリプレグによれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた複合材料を得ることができる。
このような本発明のプリプレグは、たとえば、本発明のプリプレグの製造方法によって得ることができる。本発明のプリプレグの製造方法は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、繊維状物を強化繊維に付着させる工程、繊維状物が付着した強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させる工程を有するプリプレグの製造方法である。
また、本発明のプリプレグの製造方法のもう一つの態様は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、繊維状物をマトリクス樹脂に混合し、繊維状物を含むマトリクス樹脂を得る工程、繊維状物を含むマトリクス樹脂を強化繊維に含浸させる工程を有するプリプレグの製造方法である。
上記のような本発明のプリプレグの製造方法によれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた複合材料を与えるプリプレグを得ることができる。
導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形すると、微細なフィブリルを有するパルプ状の繊維状物が得られやすい。このような繊維状物は、強化繊維に付着させやすく、繊維状物同士または、繊維状物と強化繊維が接触しやすくなり、より高い通電効果を得ることができる。
本発明のもう一つの態様である強化繊維は、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物が繊維表面に付着している強化繊維である。強化繊維に対する繊維状物の付着量は0.3〜5wt%であることが好ましい。
本発明において、繊維状物はサイズ剤により強化繊維に付着させることが好ましい。サイズ剤に強化繊維に繊維状物を付着させる場合、用いるサイズ剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が好ましく用いられる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用してもよい。サイズ剤の付着量は0.2〜4wt%であることが好ましい。
上記のような本発明の強化繊維は、導電粒子が局在化し通電効率が高いため、本発明の強化繊維を用いると、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた複合材料を得ることができる。
本発明の更なる様態である繊維強化複合材料は、少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含む繊維強化複合材料である。このような繊維強化材料は、本発明のプリプレグまたは強化繊維を目的に応じて、成形することにより製造される。
本発明の繊維強化複合材料は、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えているため、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性の改善が必要な多くの用途に適用できる。
本発明のプリプレグに用いる各成分を以下に説明する。
(1)強化繊維
強化繊維として用いられる繊維としては、特に制限はないが、導電性を有する強化繊維であることが好ましい。導電性を有する強化繊維としては、例えば、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維が挙げられる。また、繊維表面が、例えば金属メッキ処理などの方法により、導電性物質で被覆された炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維などの強化繊維を用いることもできる。
これらの導電性繊維の中でも、比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の複合材料が得られる点で、炭素繊維がより好ましい。引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
PAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、100〜600GPaであることが好ましく、より好ましくは200〜500GPaであり、230〜450GPaであることが特に好ましい。また、引張強度は2000MPa〜10000MPa、好ましくは3000〜8000MPaである。炭素繊維の直径は4〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、得られる複合材料の機械的性質を向上できる。PAN系の炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
炭素繊維の製造方法に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造する、アクリル系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸する。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000フィラメント以上が好ましく、12000フィラメント以上がより好ましい。
得られた前駆体繊維は、200〜260℃、延伸比0.90〜1.00で耐炎化前に予備熱処理され、引き続き加熱空気中200〜260℃で10〜100分間耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95以上がより好ましい。この耐炎化処理は、前駆体繊維を繊維密度1.34〜1.38g/cmの酸化された繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
耐炎化繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化することができる。例えば、窒素雰囲気下300〜800℃で第一炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の第一炭素化をする。
次いで、より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下800〜1600℃の第二炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、第一炭素化繊維の張力を制御して焼成する。より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
炭素繊維は、電解液中で表面酸化処理を施すことが好ましい。表面処理で炭素繊維にかかる電気量は、目的の表面官能基量になるよう適時調節すればよいが、炭素繊維1gに対して10〜150クーロンになる範囲とすることが好ましい。
電解液としては、無機酸または無機塩基及び無機塩類の水溶液を用いることが好ましい。電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が40℃を超えると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
表面処理された炭素繊維は、サイジング液に通され、サイズ剤が付与される。本発明において、かかるサイジング液に導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を混合し、炭素繊維束に繊維状物を付与することが好ましい。
サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.4〜1.7質量%が好ましい。炭素繊維ストランドに付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維ストランドを浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
サイジング処理後の炭素繊維は、サイジング処理時の分散媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施される。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、水系エマルジョンの場合は100〜180℃で乾燥処理を行うことが好ましい。また、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経ることも好ましい。
強化繊維はシート状の基材に形成して用いることが好ましい。強化繊維基材シートとしては、例えば、多数本の繊維を一方向に引き揃えたシートや、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、強化繊維を抄紙した紙などを挙げることができる。
シート状の強化繊維基材の厚さは、0.01〜3mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。これらの強化繊維基材シートは、公知のサイズ剤を公知の含有量で含んでいても良い。
(2)繊維状物
本発明で用いる繊維状物は、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物である。本発明では、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物のアスペクト比が3以上であることが好ましく、5〜1000であることがより好ましい。繊維状物のアスペクト比がこの範囲であると、繊維状物同士または、繊維状物と強化繊維が接触しやすくなり、より高い通電効果を得ることができる。また、繊維状物の繊維径は0.5〜100μmであることが好ましい。繊維状物の繊維径は、強化繊維の繊維径よりも小さいことが好ましい。繊維状物の繊維径が強化繊維の繊維径よりも小さいと、強化繊維の単繊維間に繊維状物が入り込みやすくなり、強化繊維同士を密接させやすくなるため、得られる複合材料の導電性をより高めることができる。
本発明において、繊維状物は、分岐形状を有していてもよく、径が不均一であっても良い。また、繊維状物がパルプ状であると、強化繊維に付着しやすいため好ましい。
このような繊維状物の製造方法は、特に限定されるものではなく、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物から繊維状物を形成する従来公知の方法を用いることができる。例えば、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物を紡糸する方法や、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物を任意のアスペクト比の形状となるよう裁断する方法、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形する方法などがあげられる。
中でも、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形する方法が微細なフィブリルを有するパルプ状の繊維状物が得られやすいため好ましく、導電性粒子とバインダー樹脂の混合物を貧溶媒中にせん断力を与えながら滴下する方法が好ましい。導電性粒子とバインダー樹脂の混合物を貧溶媒中に滴下する場合、混合物はペースト状であることが好ましく、導電性粒子とバインダー樹脂の他に溶媒などを含んでいても良い。混合物を溶媒で希釈することにより混合物が軟化し、より繊維径の小さな繊維状物を得ることができる。また、得られる繊維状物の形状は、混合物に付与するせん断力によっても調節することができる。更に得られた繊維状物を分級して、所望の形状の繊維状物を採取してもよい。
(2−1)導電性粒子
本発明で用いる導電性粒子としては、電気的に良好な導体として機能する導電物質であれば良く、導体のみに限定されない。好ましくは体積固有抵抗が100〜10−9Ωcmであり、より好ましくは10〜10−9Ωcmであり、さらに好ましくは1〜10−9Ωcmであり、特に好ましくは10−1〜10−9Ωcmである導電物質である。体積固有抵抗が低い方が、得られる複合材料の導電性をより効率よく向上させることができる。特に、体積固有抵抗が5.0×10−3Ωcm以下の導電性粒子であることが好ましい。
本発明で用いる導電性粒子としては、その最小径が用いる強化繊維の繊維径よりも小さい導電性粒子であることが好ましい。導電性粒子の最小径が用いる強化繊維の繊維径よりも小さいと、より繊維径の小さい繊維状物が得られやすくなり、強化繊維同士を密接させやすくなるため、得られる複合材料の導電性をより高めることができる。
本発明で用いる導電性粒子としては、その最小径が1nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることがより好ましく、10nm〜0.5μmであることがさらに好ましい。
導電性粒子としては、例えば、金属材料、炭素材料、導電性高分子、無機材料又は有機材料のコア材を導電性物質で被覆した物質などを使用することができる。また、本発明において、プリプレグに使用される導電材料としては、複合材料に成形された後に導電性を電気的に良好な導体として機能する導電物質であれば良く、複合材料の成形温度で導体に転換される物質でもよい。複合材料の成形温度は、一般的に、80〜300℃であり、このような温度で導体に転換される物質としては、例えば有機金属化合物や有機金属錯体などが挙げられる。
上記の導電性粒子の中でも、高い導電性及び安定性を示すことから、金属材料、炭素材料が好ましい。金属材料としては、金属材料と炭素繊維との電位差により生じる腐食を防ぐことができるので、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン、コバルト、亜鉛、鉄、クロム、アルミニウム、又はこれらを主成分とする合金等が好ましい。更には、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム・錫(ITO)等も好ましい。これらの中でも、高い導電性及び化学的安定性を示すことから、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、チタン又はこれらを主成分とする合金が特に好ましい。
本発明で用いる導電性粒子の形態は、特に制限はないが、導電パスの形成のしやすさからフィラーであることが好ましい。本発明においてフィラーとは、不連続体状の形態を指し、好ましくはそのアスペクト比が1〜1000の導電性粒子であり、その平均粒子径は、プリプレグのマトリクス樹脂内に充填できる大きさであれば限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜3μmがより好ましく、0.01〜1μmがさらに好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。
導電性フィラーとしては、例えば、金属材料では、金属粒子、金属ファイバー、有機金属粒子、有機金属錯体粒子、金属ナノ粒子、金属ナノファイバー、有機金属ナノ粒子などが挙げられ、炭素材料では、例えば、黒鉛粒子、炭素粒子、カーボンミルドファイバー、カーボンブラック、カーボン・ナノチューブ、気相成長法炭素繊維(VGCF)を含むカーボン・ナノファイバーから成る群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなどを使用することができ、これらを2種類以上ブレンドしたカーボンブラックも好適に用いられる。
また、導電性粒子の配合量は、繊維状物において体積占有率が、20〜95体積%となるように配合することが好ましい。プリプレグ全体に占める導電性粒子の添加量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。プリプレグ全体に占める導電材の添加量の下限は、特に限定されないが、得られる複合材料の導電性の観点から、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。
(2−2)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、プリプレグの製造時、もしくは保管時に繊維状物の形状を保持できる、常温で固体もしくは粘稠体の有機化合物であれば特に制限はなく、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、エネルギー硬化性樹脂など制限なく用いることができるが、取り扱い性の観点から、熱硬化性樹脂が好ましい。また、得られる複合材料の物性の観点から、マトリクス樹脂と同種の樹脂を用いることが好ましい。
本発明でバインダー樹脂として用いる硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。
本発明でバインダー樹脂として用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンや、ナイロン6、ナイロン12、非晶性ナイロンなどのポリアミド、アラミド、アリレート、ポリエステルカーボネートなどが挙げられる。
(3)繊維状物の添加方法
本発明のプリプレグは、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むプリプレグである。繊維状物をプリプレグに添加する方法としては、特に制限がないが、プリプレグを製造する前の強化繊維に予め付着させる方法や、マトリクス樹脂に混合する方法が、繊維状物が強化繊維の繊維間に入り込みやすく、繊維層の導電性を寄り向上させやすいため好ましい。プリプレグを製造する前の強化繊維に予め付着させる方法としては、繊維状物を含む溶液に強化繊維を浸漬し付着させる方法や、強化繊維に繊維状物を振りかける方法などがあげられる。取り扱い性の観点から、繊維状物を含む溶液に強化繊維を浸漬し付着させる方法がより好ましい。
繊維状物を含む溶液に強化繊維を浸漬し付着させる場合、繊維状物を含む溶液には特に制限はないが、サイジング液を用いることが好ましい。サイジング液に含まれるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイジング液の溶媒は特に制限されず、サイズ剤を溶融できる有機溶媒を用いても良いし、水を用いてもより。溶媒として水を用いる場合、通常、乳化剤等を用いて水系エマルジョンとしてもよい。また、強化繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.2〜4質量%が好ましい。
(4)マトリクス樹脂
本発明で用いるマトリクス樹脂には特に制限はなく、例えば硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。本発明のプリプレグにおいて、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物は、マトリクス樹脂組成物に混合しても良い。
マトリクス樹脂として硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂は、高い耐熱性を有する複合材料を製造できるので、好ましい。熱硬化性樹脂としては、耐熱性および機械特性の観点から、熱により架橋反応が進行して、少なくとも部分的に三次元架橋構造を形成する熱硬化性樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂として用いる硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリイミド樹脂等が挙げられる。更に、これらの変性体および2種類以上のブレンド樹脂なども用いることができる。これらの硬化性樹脂は、加熱により自己硬化するものであっても良いし、硬化剤や硬化促進剤などを配合することにより硬化する樹脂であっても良い。
これらの硬化性樹脂の中でも、耐熱性、機械特性および炭素繊維との接着性のバランスに優れているエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂が好ましく、機械特性の面からはエポキシ樹脂がさらに好ましく、耐熱性の面からはビスマレイミド樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
更には、フェノール型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また更に、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などの各種変性エポキシ樹脂も用いることができる。
中でも、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましく、グリシジルアミン構造、グリシジルエーテル構造の何れかを有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。
グリシジルアミン構造を有するエポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−3−メチル−4−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体などが例示される。
グリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が例示される。
これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに非反応性置換基を有していても良い。非反応性置換基としては、メチル、エチル、イソプロピルなどのアルキル基、フェニルなどの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのハロゲン基などが例示される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等が挙げられる。具体的にはジャパンエポキシレジン社製jER815(商品名)、jER828(商品名)、jER834(商品名)、jER1001(商品名)、jER807(商品名)、三井石油化学製エポミックR−710(商品名)、大日本インキ化学工業製EXA1514(商品名)等が例示される。
脂環型エポキシ樹脂としては、ハンツマン社製社製アラルダイトCY−179(商品名)、CY−178(商品名)、CY−182(商品名)、CY−183(商品名)等が例示される。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製jER152(商品名)、jER154(商品名)、ダウケミカル社製DEN431(商品名)、DEN485(商品名)、DEN438(商品名)、DIC社製エピクロンN740(商品名)等、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、ハンツマン社製社製アラルダイトECN1235(商品名)、ECN1273(商品名)、ECN1280(商品名)、日本化薬製EOCN102(商品名)、EOCN103(商品名)、EOCN104(商品名)等が例示される。
各種変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性ビスフェノールAエポキシ樹脂として旭電化製アデカレジンEPU−6(商品名)、EPU−4(商品名)等が例示される。
これらのエポキシ樹脂は、適宜選択して1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。この中で、ビスフェノール型に代表される2官能エポキシ樹脂は、分子量の違いにより液状から固形まで種々のグレードの樹脂がある。従って、これらの樹脂はプリプレグ用マトリクス樹脂の粘度調整を行う目的で配合すると好都合である。
マトリクス樹脂として用いる熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、およびその共重合体やブレンド物であるポリオレフィン系樹脂、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド系樹脂、酸成分として芳香族成分を有する半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等)、あるいは、ポリ乳酸系などの脂肪族ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
(5)マトリクス樹脂組成物のその他の添加物
[硬化剤]
マトリクス樹脂として硬化性樹脂を用いる場合は、必要に応じて樹脂を硬化させる硬化剤がマトリクス樹脂組成物に配合されていてもよい。硬化剤としては、マトリクス樹脂を硬化させる公知の硬化剤が用いられる。
例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に使用される硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が挙げられる。ジシアンジアミドは、プリプレグの保存安定性に優れるため好ましい。また、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン化合物及びそれらの非反応性置換基を有する誘導体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるという観点から特に好ましい。ここで、非反応性置換基は、エポキシ樹脂の説明において述べた非反応性置換基と同様である。
アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ−p−アミノベンゾエートが好ましく用いられる。これらを用いて硬化させた複合材料は、ジアミノジフェニルスルホンの各種異性体と比較して耐熱性は劣るが、引張伸度に優れる。そのため、複合材料の用途に応じて、使用する硬化剤の種類は適宜選択される。
マトリクス樹脂組成物に含まれる硬化剤の量は、少なくとも樹脂組成物に配合されているマトリクス樹脂を硬化させるのに適する量を、用いるマトリクス樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜調節すればよい。配合量は、硬化剤・硬化促進剤の有無と添加量、硬化性樹脂との化学反応量論及び組成物の硬化速度などを考慮して、適宜、所望の配合量で用いることができる。保存安定性の観点から、樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂100質量部に対して、硬化剤を30〜100質量部配合することが好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
硬化剤として、コート剤によりマイクロカプセル化されたDDS(例えば、DDSコート10(松本油脂社製))を用いることも可能である。マイクロカプセル化されたDDSは室温状態において未硬化のエポキシ樹脂と反応することを防止するため、物理的、化学的な結合によりDDS粒子の表層をエポキシ樹脂と反応性の少ない物質、具体的には、ポリアミド、変性尿素樹脂、変性メラミン樹脂、ポリオレフィン、ポリパラフィン(変性品も含む)等のコート剤によりコートしたものである。これらのコート剤は、単独使用又は併用してもよく、また、前記以外の種々のコート剤によりマイクロカプセル化されたDDSを用いることもできる。
[熱可塑性樹脂]
マトリクス樹脂として、低粘度の樹脂を用いる場合、樹脂組成物に適切な粘度を与えるために、熱可塑性樹脂を配合してもよい。この樹脂組成物に粘度調節のために配合する熱可塑性樹脂には、最終的に得られる複合材料の耐衝撃性などの機械特性を向上させる効果もある。
マトリクス樹脂組成物に配合する上記熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物に用いるマトリクス樹脂の種類に応じて異なり、樹脂組成物の粘度が後述する適切な値になるように適宜調節すればよい。通常、樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂100質量部に対して、熱可塑性樹脂は5〜100質量部となるように配合することが好ましい。
マトリクス樹脂組成物の好ましい粘度は、80℃におけるその最低粘度が10〜450Poiseであり、より好ましくは最低粘度が50〜400Poiseである。樹脂組成物の最低粘度が10Poise以上ある場合、導電領域の導電材の流出を抑制し、導電材をプリプレグの所望の位置に局在化させる効果が高くなる。なお、粘度は、レオメーターを用いて測定される温度−粘度曲線から得られる粘度をいう。マトリクス樹脂の粘度は、熱可塑性樹脂、特に後述するマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の添加量により調整することができる。
熱可塑性樹脂としては、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂とマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂とが挙げられる。マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂とは、マトリクス樹脂に一部又は全部が加熱等により溶解し得る熱可塑性樹脂である。一方、マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂とは、FRPを成形する温度又はそれ以下の温度において、マトリクス樹脂に実質的に溶解しない熱可塑性樹脂をいう。即ち、FRPを成形する温度において、樹脂粒子をマトリクス樹脂中に投入して攪拌した際に、粒子の大きさが変化しない熱可塑性樹脂をいう。なお、一般的に、FRPを成形する温度は100〜190℃である。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂が完全に溶解していない場合は、マトリクス樹脂組成物の硬化過程で加熱されることによりマトリクス樹脂に溶解し、マトリクス樹脂組成物の粘度を増加させることができる。これにより、硬化過程における粘度低下に起因するマトリクス樹脂組成物のフロー(プリプレグ内から樹脂組成物が流出する現象)を防止することができる。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の具体的例としては、例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
マトリクス樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の含有量は、マトリクス樹脂の粘度に応じて適宜調整される。プリプレグの加工性の観点から、マトリクス樹脂100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。
マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。粒子状のマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に均一に配合することができる。また、得られるプリプレグの成形性が高い。マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の平均粒子径は、1〜50μmであることが好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
マトリクス樹脂組成物には、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の他に、マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂を含有していても良い。本発明において、マトリクス樹脂組成物はマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂及びマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の両者を含有していることが好ましい。
マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂やマトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂の一部(硬化後のマトリクス樹脂において溶解せずに残存したエポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂)は、その粒子がFRPのマトリクス樹脂中に分散する状態となる(以下、この分散している粒子を「層間粒子」ともいう)。この層間粒子は、FRPが受ける衝撃の伝播を抑制する。その結果、得られるFRPの耐衝撃性が向上する。
マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂としては、例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾールが例示される。これらの中でも、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドは、靭性及び耐熱性が高いため好ましい。ポリアミドやポリイミドは、FRPに対する靭性向上効果が特に優れている。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。また、これらの共重合体を用いることもできる。
特に、非晶性ポリイミドや、ナイロン6(登録商標)(カプロラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、ナイロン12(ラウリルラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド)、非晶性のナイロン(透明ナイロンとも呼ばれ、ポリマーの結晶化が起こらないか、ポリマーの結晶化速度が極めて遅いナイロン)のようなポリアミドを使用することにより、得られるFRPの耐熱性を特に向上させることができる。
マトリクス樹脂組成物中のマトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の含有量は、マトリクス樹脂組成物の粘度に応じて適宜調整される。プリプレグの加工性の観点から、マトリクス樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましく、15〜40質量部であることがより好ましい。マトリクス樹脂不溶性熱可塑性樹脂の好ましい平均粒子径や形態は、マトリクス樹脂可溶性熱可塑性樹脂と同様である。
[他の導電材]
マトリクス樹脂組成物は、必要に応じて、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物以外の導電材を含んでいても良い。導電材としては、前述の導電性粒子と同じものを用いることができる。導電材の配合量は、マトリクス樹脂組成物に含まれる主剤樹脂100質量部に対して、0.0001〜20質量部となるように配合することが好ましく、0.0005〜10質量部がより好ましく、0.001〜5質量部が特に好ましい。
[その他の添加剤]
マトリクス樹脂組成物は、上記成分以外に、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、適宜、酸無水物、ルイス酸、ジシアンジアミド(DICY)やイミダゾール類の如く塩基性硬化剤、尿素化合物、有機金属塩、反応希釈剤、充填剤、酸化防止剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を含むことができる。
具体的には、酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、無水ピロメリット酸等が例示される。ルイス酸としては、三フッ化ホウ素塩類が例示され、更に詳細には、BFモノエチルアミン、BFベンジルアミン等が例示される。イミダゾール類としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールが例示される。また、尿素化合物である3−[3,4−ジクロロフェニル]−1,1−ジメチル尿素(DCMU)等や、有機金属塩であるCo[III]アセチルアセトネート等を例示することができる。反応性希釈剤としては、例えば、ポリプロピレンジグリコール・ジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の反応性希釈剤が例示される。
(6)マトリクス樹脂組成物の製造方法
マトリクス樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、樹脂組成物製造時に適用される混練温度としては、10〜160℃の範囲が例示できる。160℃を超える場合は、エポキシ樹脂の熱劣化や、部分的に硬化反応が開始し、得られる樹脂組成物並びにそれを用いて製造されるプリプレグの保存安定性が低下する場合がある。10℃より低い場合は、エポキシ樹脂組成物の粘度が高く、実質的に混練が困難となる場合がある。好ましくは20〜130℃であり、更に好ましくは30〜110℃の範囲である。
混練機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を供えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混練は、大気中又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混練が行われる場合は、温度、湿度管理された雰囲気が好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混練することが好ましい。
(7)プリプレグ
本発明の製造方法により得られるプリプレグは、マトリクス樹脂組成物を、強化繊維基材を構成する各繊維基材の間隙に含浸させてなる。
マトリクス樹脂組成物の含有率は、プリプレグの全質量を基準として、15〜60質量%であることが好ましい。含有率が15質量%よりも少ない場合は、得られる複合材料に空隙などが発生し、機械特性を低下させる場合がある。含有率が60質量%を超える場合は、強化繊維による補強効果が不十分となり、実質的に質量対比機械特性が低いものになる場合がある。好ましくは、含有率は、20〜50量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。
ここで、マトリクス樹脂がエポキシ樹脂の場合は、組成物の含有率は、プリプレグを硫酸に浸漬し、必要により加熱し、エポキシ樹脂が分解して質量を減少させるために生じる質量変化量から算出される割合を樹脂組成物の含有量として求めることが出来る。
具体的には、先ず、プリプレグを100mm×100mmに切り出して試験片を作製し、その質量を測定する。次いで、このプリプレグの試験片を硫酸中で浸漬または煮沸を行い、樹脂分を分解して溶出させる。その後、残った繊維をろ別し、硫酸で洗浄し、乾燥し、乾燥繊維の質量を測定する。最後に、硫酸分解操作の前後の質量変化からエポキシ樹脂組成物の含有率を算出する。
プリプレグの形態は、強化繊維基材に、マトリクス樹脂組成物が含浸されている形状であれば、特に制限はないが、強化繊維と、前記強化繊維間に含浸されたマトリクス樹脂組成物とからなる強化繊維層と、前記強化繊維層の表面に被覆された樹脂層とからなるプリプレグであることが好ましい。樹脂層の厚みは2〜100μmが好ましい。樹脂層の厚みは、5〜50μmがより好ましく、10〜40μmが特に好ましい。
(8)繊維強化複合材料
上記方法を用いて得られるプリプレグは、目的に応じて積層され、成形並びに硬化されて繊維強化複合材料が製造される。この製造方法自体は公知である。本発明を用いて得られるプリプレグによれば、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
繊維強化複合材料は、プリプレグを目的に応じて積層し、成形並びに硬化させることで、従来公知の方法により製造することができる。複合材料の製造方法としては、例えば、マニュアルレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置、真空バギング、オートクレーブ硬化、オートクレーブ以外の硬化、流体援用加工、圧力支援プロセス、マッチモールドプロセス、単純プレス硬化、プレスクレーブ硬化、又は連続バンドプレスを使用する方法が適用される。
このようにして得られる繊維強化複合材料は、優れた導電性と機械特性とを兼ね備えているため、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性の改善が必要な多くの用途に適用できる。特に、航空宇宙部品、風力タービン、圧力容器、建物、船舶、列車、自動車、燃料タンク及びその他の分野において、電磁気的な諸問題を解決するために使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例において使用する成分や試験方法を以下に記載する。
〔成分〕
[エポキシ樹脂組成物]
(エポキシ樹脂)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(3官能基)[ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY0600(商品名)](MY0600)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂(4官能基)[ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY721(商品名)](MY721)
(エポキシ樹脂硬化剤)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン[和歌山精化社製の芳香族アミン系硬化剤](4,4’−DDS)
(熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂A
平均粒子径20μmのポリエーテルスルホン[住友化学工業(株)製PES−5003P(商品名)](エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂B
平均粒子径20μmのグリルアミド[エムスケミージャパン社製TR−55(商品名)](エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂)
[導電材料]
(導電材ペースト)
・銀ペースト
サンユレック株式会社製エレクトロニクス用導電性接着剤 GA−6278(商品名)(GA−6278)
(導電材:銀微粒子(平均粒子径:2μm)、バインダー樹脂:エポキシ樹脂 電気抵抗値:5×10−4Ωcm 導電材含有率:75wt%)
[測定方法]
<サイジング剤付着量(溶剤抽出法)>
炭素繊維束10gを取り出し、溶剤としてアセトンを用い、JIS R7604 A法(溶剤抽出法)に基づいてサイジング剤の付着量を求めた。
(1)平均粒子径
導電材ペーストに含まれる導電材の平均粒子径は、導電材ペーストを有機溶媒で希釈した後、走査型電子顕微鏡にて粒子を10000倍に拡大して写真撮影し、無作為に30個の粒子を選定し、その粒子径を測定し平均値を求めた。
(2)Z方向体積抵抗率測定
本発明において、複合材料の導電性は、Z方向(厚さ方向)の体積抵抗率を用いて評価した。体積抵抗率とは、所与の材料の固有抵抗である。三次元材料の導電率の測定の単位はオーム−cm(Ωcm)である。材料のZ方向体積抵抗率ρは、通常下式により定義される。
ρ=RA/L
R:試験片の電気抵抗値(デジタルオームメーターで測定)
L:試験片の厚さ(m)
A:試験片の断面積(m
本発明においては、体積抵抗はZ方向にのみ(複合材料の厚み方向)測定する。計算においては厚みが常に考慮されるので、すべての場合において、この値は「体積」抵抗率となる。
(Z方向体積抵抗率測定用試料の作製方法)
プリプレグをカット、積層し、積層構成[+45/0/−45/90]2Sの積層体を得た。真空オートクレーブ成形法を用い、0.49MPaの圧力下、180℃で120分間成形した。得られた成形物を幅40mm×長さ40mmの寸法に切断し、サンドペーパーを用いて、成形物の表面を炭素繊維が露出するまで研磨した。最後に、2000番のサンドペーパーを用いて表面仕上げを行い、試験片を得た。得られた試験片を、幅50mm×長さ50mmの金メッキを施した2枚の電極間に挟んだ。
両電極間に0.06MPaの荷重をかけた状態で、デジタルオームメーター(ADEX社製 AX−114N)でZ方向の試験片の抵抗値を測定し、上式から体積抵抗率を求めた。10枚の試験片について抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出し、その平均値を用いて評価した。
(実施例1)
導電材である平均粒子径2μmの銀微粒子と、バインダー樹脂であるエポキシ樹脂からなる導電材ペーストGA−6278を、導電材ペーストを70%割合で含むようエタノールで希釈した。ホモジナイザー(IKA社製 ULTRA-TURRAX T50 basic(商品名))で攪拌(回転数:7000rpm)している10Lの純水の中に、希釈した導電材ペーストを3mLずつスポイトで投入し、パルプ状の繊維状物を採取した。得られた繊維状物を分級し、平均繊維長68mm、アスペクト比13の繊維状物を採取した。
前駆体繊維であるPAN繊維ストランド(単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数12000)を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度500℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1650℃で高温炭素化させ炭素繊維を得た。得られた炭素繊維を、硫酸アンモニウム水溶液を電解液として用い、炭素繊維1g当り100クーロンの電気量で表面処理した。
得られた表面処理炭素繊維に、前記繊維状物を5%の割合で含むエポキシ系サイジング剤を付与し、120℃で乾燥させ、サイジング剤付着炭素繊維を得た。サイジング剤の付着量は2.0%であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維を一方向に引き揃えて並べ、炭素繊維シート(目付け190g/m)を得た。
混練装置で、エポキシ樹脂である50質量部のMY600と50質量部のMY721に、10質量部の熱可塑性樹脂Aを添加し、120℃で30分間攪拌機を用いて撹拌し、熱可塑性樹脂Aを完全溶解させた後、樹脂温度を80℃以下に冷ました。その後、30質量部の熱可塑性樹脂Bを混練し、さらに4,4’−DDSを45質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布して50g/mの含浸用樹脂フィルムを作製した。
炭素繊維シートの両面に、含浸用樹脂フィルムを貼り合わせ、ホットメルト法により、樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、6Ωcmと低い値を示した。
(実施例2、3)
エポキシ系サイジング剤への繊維状物の添加量を変更し、炭素繊維への繊維状物の付着量を変更した以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、いずれも低い値を示した。
(比較例1)
エポキシ系サイジング剤に繊維状物を添加せず、炭素繊維に繊維状物を付着させなかった以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、90Ωcmと高く、導電性の低い複合材料であった。
(比較例2)
導電材ペーストの代わりに、エポキシ樹脂であるMY721を用いて繊維状物を作成し、炭素繊維に繊維状物を付着させた以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、120Ωcmと高く、導電性の低い複合材料であった。
(比較例3)
導電材ペーストを硬化させ粉砕した粒子状物を繊維状物の代わりに炭素繊維に付着させた以外は実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、50Ωcmと高く、導電性の低い複合材料であった。
Figure 2017190379
(実施例4、5)
導電材ペーストの希釈率を変更し、繊維状物の形態を表2に記載の値に変更した以外は実施例2と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、いずれも低い値を示した。
(実施例6、7)
繊維状物を調整する際のホモジナイザーの回転率を変更し、繊維状物の形態を表2に記載の値とした以外は実施例2と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、複合材料の導電性を評価した。得られた複合材料の体積抵抗率は、いずれも低い値を示した。
Figure 2017190379

Claims (6)

  1. 少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなるプリプレグであって、
    さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むことを特徴とするプリプレグ。
  2. 導電性粒子の体積固有抵抗が5.0×10−3Ωcm以下である請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物が繊維表面に付着していることを特徴とする強化繊維。
  4. 少なくとも、強化繊維とマトリクス樹脂とからなる繊維強化複合材料であって、さらに、導電性粒子とバインダー樹脂からなる繊維状物を含むことを特徴とする繊維強化複合材料。
  5. 強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、
    導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、
    繊維状物を強化繊維に付着させる工程、
    繊維状物が付着した強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させる工程
    を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
  6. 強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させるプリプレグの製造方法であって、
    導電性粒子とバインダー樹脂の混合物にせん断力を与えて繊維状に賦形し繊維状物を得る工程、
    繊維状物をマトリクス樹脂に混合し、繊維状物を含むマトリクス樹脂を得る工程、
    繊維状物を含むマトリクス樹脂を強化繊維に含浸させる工程
    を有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
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